(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692765
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
H01L 41/107 20060101AFI20150312BHJP
H01L 41/047 20060101ALI20150312BHJP
H01L 41/083 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
H01L41/107
H01L41/047
H01L41/083
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-538233(P2013-538233)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-501038(P2014-501038A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】EP2011070141
(87)【国際公開番号】WO2012065989
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2013年5月14日
(31)【優先権主張番号】102010051444.6
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】カルタシェフ、イゴール
(72)【発明者】
【氏名】クラクスナー、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】プフ、マルクス
【審査官】
上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−266040(JP,A)
【文献】
特開2000−294851(JP,A)
【文献】
特開2002−324923(JP,A)
【文献】
特開平06−312505(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/023686(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102006049873(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/107,41/047,41/083,
H02M 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素材からなり、長手方向の一方の端部近傍の領域から構成された入力部と反対側の端部近傍の領域から構成された出力部とを有し、当該入力部と当該出力部とは機械的に結合している、多層構造を有する矩形の基板と、
前記入力部の前記多層構造が有する層に挟まれるように配置された第一及び第二の一次電極と、
前記出力部の前記多層構造が有する層に挟まれるように配置された第一及び第二の二次電極と、を有し、
前記一次電極と前記基板の長手方向に対して平行な側面の少なくともいずれか一方との距離が、前記出力部から離間した領域よりも前記出力部に近接した領域において、より大きく、
前記二次電極と前記基板の長手方向に対して平行な側面の少なくともいずれか一方との距離が、前記入力部から離間した領域よりも前記入力部に近接した領域において、より大きいこと、
を特徴とする圧電素子。
【請求項2】
前記出力部直近の前記一次電極は、前記出力部から最も離間した前記一次電極に比べて、前記基板の長手方向に対して平行な側面の少なくともいずれか一方からの距離がより大きいこと、
を特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記入力部直近の前記二次電極は、前記入力部から最も離間した前記二次電極に比べて、前記基板の長手方向に対して平行な側面の少なくともいずれか一方からの距離がより大きいこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記一次電極の長さが、前記入力部から前記出力部の方向にかけて連続的に減少すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記二次電極の長さが、前記出力部から前記入力部の方向にかけて連続的に減少すること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記出力部に近接した前記入力部の一部分の、前記一次電極と前記基板の長手方向に対して平行な側面の少なくともいずれか一方との間に配置された一次絶縁部、又は、
前記入力部に近接した前記出力部の一部分の、前記二次電極と前記基板の長手方向に対して平行な側面の少なくともいずれか一方との間に配置された二次絶縁部、又は、
前記入力部と前記出力部との間に配置されたさらなる絶縁部、
のうち少なくとも1つの絶縁部を有すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項7】
前記多層構造が、前記基板の上面に平行に複数積層された複数の矩形の層を有し、
前記基板の前記上面は矩形の前記基板の最大の断面として定義され、
前記一次及び二次電極は前記層の間で前記基板の長手方向に対して平行な側面に実質的に垂直に配置されること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項8】
前記第二の一次電極と前記第二の二次電極との電極が、前記一次及び二次電極の間で最小の空間的距離を有し、
前記第二の一次電極と前記第二の二次電極とがそれぞれ異なる層に配置されること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項9】
前記第一の一次電極と前記第二の二次電極との電極が第一の層に配置され、
前記第二の一次電極と前記第一の二次電極との電極が第二の層に配置されること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項10】
前記第一の一次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記入力部内部に配置される、第一の付加的一次電極と、
前記第二の一次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記入力部内部に配置される、第二の付加的一次電極と、をさらに有し、
前記第一及び第二の一次電極が櫛形に互いに内部に配置されること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項11】
前記第一の二次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記出力部内部に配置される、第一の付加的二次電極と、
前記第二の二次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記出力部内部に配置される、第二の付加的二次電極と、をさらに有し、
前記第一及び第二の二次電極が櫛形に互いに内部に配置されること、
を特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項12】
前記第一の一次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記入力部内部に配置される、第一の付加的一次電極と、
前記第二の一次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記入力部内部に配置される、第二の付加的一次電極と、をさらに有し、
前記第一及び第二の一次電極が櫛形に互いに内部に配置され、
前記第一の二次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記出力部内部に配置される、第一の付加的二次電極と、
前記第二の二次電極と電気的に結合し、少なくとも部分的に前記出力部内部に配置される、第二の付加的二次電極と、をさらに有し、
前記第一及び第二の二次電極が櫛形に互いに内部に配置され、
前記第一の付加的一次電極と電気的に結合し、前記基板の長手方向に対して平行な側面の一方に配置される第一の外部一次電極と、
前記第二の付加的一次電極と電気的に結合し、前記基板の長手方向に対して平行な側面の他方に配置される第二の外部一次電極と、
前記第一の付加的二次電極と電気的に結合し、前記基板の長手方向に対して平行な側面の一方に配置される第一の外部二次電極と、
前記第二の付加的二次電極と電気的に結合し、前記基板の長手方向に対して平行な側面の他方に配置される第二の外部二次電極と、
のうち少なくとも1つの電極を有すること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項13】
前記基板の上記上面及び下面にさらなる絶縁層が積層されること、
を特徴とする請求項7に記載の圧電素子。
【請求項14】
前記圧電素材が前記基板の長手方向に分極し、
前記第一及び第二の一次及び/又は二次電極の間の隣接するセグメント間で前記圧電素材の前記分極の方向が逆となること、
を特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項15】
前記基板の長手方向に沿って前記圧電素子の振動が励起され、
前記圧電素子が前記基板の基本周波数の倍音相当の振動数において作動し、
前記振動数は、前記倍音のノードの位置が前記第一及び第二の外部一次及び/又は二次電極が配置されている位置となるように選択されること、
を特徴とする請求項12に記載の圧電素子の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電素子、特に変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子の効率は機械的品質係数Q
m及び機械的結合定数K
ijの値に依存する。機械的結合定数K
ijは、電気的エネルギーの機械的エネルギーへの、又はその逆方向への変換効率の指標である。多くの圧電素材では結合定数K33が最も高い値を示す。これは、圧電素子の力学的振動が圧電基板の長手方向に沿って励起されている構成に相当する。さらに、電極は圧電基板の長手軸に対して垂直に配置される。また、圧電素材は基板の長手方向に分極する。従来のその種の素子の多くにおいて、セラミック層が圧電変圧器内部で電極に平行に配置され、圧電基板の長手軸に沿って積層される。よって圧電層も同様に基板内部で基板の長手軸に対して垂直に配置される。然るにその様ないわゆる積層型圧電変圧器においては、製造過程に関する諸問題と、変圧器の入力側・出力側間の電気的絶縁に関する問題とがある。熱処理中の積層の剥離を回避するため、これらの変圧器は特別の焼結工程を必要とする。入力及び出力側の良好な絶縁が達成された場合でも、圧電素子の正確なサイズを保証するためには焼結後にさらなる特別な機械的処理が必要である。
【0003】
圧電変圧器の製造法に関するその他の技術について、非特許文献1に記載がある。製造工程については特に899頁で説明されている。圧電素子は、圧電基板の長手方向に配置され、圧電基板の長手軸に垂直に積層される複数のセラミック層を有する。電極は圧電基板内部の層の表面に配置される。圧電変圧器のこの構造は多層セラミックコンデンサの構成に相当しているため、従来の方法によって製造可能である。この製造工程には、特に熱処理中の層の剥離に関して、また正確なサイズの確保に関して利点がある。
【0004】
層の表面上に配置された電極は複数の垂直電極を同時に構成し、圧電基板に対して適正な角度をなして配置される。この構成の問題点は、層の同一面内に配置された変圧器の入力部と出力部の電極間で電圧フラッシュオーバが起こる確率が比較的高いことである。この問題は特に分極時に、一般的に入力及び出力部の電極間電圧が高い際に起こる。しかしながら絶縁部を拡大すれば圧電変圧器の効率は低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】勝野超史、布田良明著「Piezoelectric Transformer Using Inter−Digital Internal Electrodes(インターデジタル内部電極を用いた圧電変圧器)」、IEEE Ultrasonics Symposium 1998、897〜900頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、圧電素子の入力と出力部との高い絶縁性と、またそれに伴う高いフラッシュオーバ電圧とを有し、同時に稼働部が小さい場合でも効率が高い圧電素子を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に係る圧電素子が提供され、圧電素子は圧電素材から成る矩形の基板と、第一及び第二の一次電極と、及び第一及び第二の二次電極とを有する。入力部及び出力部は、基板長手方向の一方の端部と反対側の端部とに配置され、機械的に互いに接続している。また、矩形基板は多層構造を有する。本発明によれば、入力部内部に配置された一次電極と基板長手方向側面との距離は、出力部から離間した領域においてよりも、出力部に近接した領域において大きい。さらに、出力部内部に配置された二次電極と基板長手方向側面との距離は、入力部から離間した領域においてよりも、入力部に近接した領域において大きい。
【0008】
一次及び二次電極のこのような特徴的構成によれば、圧電素子の入力部と出力部との間に大きな絶縁部が提供されるため、フラッシュオーバ電圧は実質的に高くなる。また、基板の長手方向両端部の近傍の一次及び二次電極は、圧電基板の幅と同じ長さを有しているため、同様に圧電素子の効率は高くなる。さらに、圧電素子は従来の多層技術を利用できるため、単純かつ安価に製造できる。
【0009】
さらなる構成と様態とはそれぞれ独立請求項の目的である。
【0010】
圧電素子においては正のみでなく逆圧電効果も利用される。
【0011】
入力部の第一及び第二の一次電極に交流電流を印加すれば、圧電素材からなる圧電基板に機械的振動が起こる。入力部は出力部と機械的に結合しているため、この機械振動は出力部に伝播する。正の圧電効果により、出力部において第一及び第二の二次電極に出力電圧が出力される。
【0012】
ある実施形態において圧電素子は一次絶縁部を有し、出力部に近接した入力部の一部分の、一次電極と基板長手方向側面との間に配置される。
【0013】
さらなる構成において圧電素子はさらに二次絶縁部を有し、入力部に近接した出力部の一部分の、二次電極と基板長手方向側面との間に配置される。一次及び二次絶縁部は圧電基板側面のさらなる絶縁を提供し、これにより圧電素子のフラッシュオーバ電圧が高くなる。
【0014】
ある実施形態において出力部直近の一次電極は、基板の長手方向の両側面から離間している。これにより、一次電極と基板長手方向側面との間にそれぞれ配置され、互いに分離した二つの一次絶縁部が形成される。さらに、入力部直近の二次電極は基板の長手方向の両側面から離間してよく、これにより二次電極と基板長手方向側面との間にそれぞれ配置され、互いに分離した二つの二次絶縁部が形成されてよい。
【0015】
ある実施形態において、入力部と出力部との間にさらなる絶縁部が配置される。
【0016】
さらなる実施形態において、出力部直近の一次電極は、出力部から最も離間した一次電極に比べて基板長手方向側面との距離が大きい。さらに、入力部直近の二次電極は、入力部から最も離間した二次電極に比べて基板長手方向側面との距離が大きくてよい。
【0017】
圧電素子はさらに、一次電極の長さが入力部から出力部方向にかけて連続的に減少するように設計されてよい。一次電極のそれぞれの長さは例えば、入力部により近く配置された全ての一次電極の長さよりも短い又は同一であってよい。
【0018】
さらに、二次電極の長さはそれぞれ出力部から入力部方向にかけて連続的に減少してよい。二次電極のそれぞれの長さは例えば、出力部により近く配置された全ての二次電極の長さよりも短い又は同一であってよい。
【0019】
さらなる実施形態において、圧電素子の多層構造は、基板上面に互いに平行に積層された矩形の層を複数有する。一次及び二次電極は、層間で実質的に基板長手方向側面に垂直に配置されてよい。
【0020】
さらなる構成において入力及び出力部の直近の電極は、異なる層に配置されてよい。第二の一次電極及び第二の二次電極のうち、一次電極と二次電極との空間的距離が最小となるものは、好適にはそれぞれ異なる層に配置されてよい。本明細書では、「空間的距離」との表記は好適には基板の層と平行な空間的距離を表す。さらに、第一の一次電極と第二の一次電極のうち、一次及び二次電極の空間的距離が最小となるものは、それぞれ異なる層に配置されてよい。同一の層に配置された電極間の空間的距離はこれにより拡大する。この方法により、圧電素子の入力部と出力部との絶縁が向上し、これによりフラッシュオーバ電圧が高くなる。
【0021】
さらなる構成において、第一の一次電極と第二の二次電極との電極は第一の層上に、第二の一次電極と第一の二次電極との電極は第二の層上に配置される。
【0022】
さらなる実施形態において圧電素子は、入力部内部に配置された第一の付加的一次電極と第二の付加的一次電極とを有する。ここで、第一の付加的一次電極は第一の一次電極に、第二の付加的一次電極は第二の一次電極に電気的に接続している。第一及び第二の一次電極は櫛形に互いに内部に配置できる。
【0023】
さらなる構成において圧電素子は、出力部内部に第一及び第二の付加的二次電極を有する。第一の付加的二次電極は第一の二次電極と、第二の付加的二次電極は第二の二次電極と電気的に接続している。第一及び第二の二次電極は櫛形に互いに内部に配置できる。
【0024】
さらなる構成において、圧電素子は第一及び第二の外部一次電極を有し、これはそれぞれ第一及び第二の付加的一次電極と電気的に接続し、基板の対面する長手方向側面に配置される。
【0025】
さらに、圧電素子は第一及び第二の外部二次電極を有してよく、これはそれぞれ第一及び第二の付加的二次電極と電気的に接続し、基板の対面する長手方向側面に配置される。この特徴的な構成により、付加的一次及び二次電極は外部一次及び二次電極との空間的距離が長くなる。これにより圧電素子のフラッシュオーバ電圧がさらに高くなる。
【0026】
圧電素子のさらなる構成において、基板の上面と下面とにさらなる絶縁層が積層される。この特徴によって、基板の上面と下面との絶縁が良好となり、圧電素子のフラッシュオーバ電圧が高くなる。
【0027】
さらなる実施形態において、基板の圧電素材は基板の長手方向に分極する。圧電素材の、第一及び第二の一次及び/又は二次電極の間の隣接するセグメント間では、分極方向が逆となる。
【0028】
本発明の他の側面は、上記実施形態のいずれかに係る圧電素子の作動方法に関する。
【0029】
この方法において、圧電素子の基板長手方向の振動が励起される。この振動の周波数は、基板の基本周波数の倍音に相当する。さらに周波数は、倍音のノードの位置が第一及び第二の外部一次及び/又は二次電極が配置されている位置となるように選択される。これにより力学的エネルギーの消失が無くなり、力学的エネルギーは非常に効率的に電気的エネルギーに変換される。
【0030】
本発明は以下において多数の実施例と図とによってさらに説明される。同一の機能又は効果を有する構成要素には同一の符号を付した。次の各図において、機能の範疇として同一の構成要素には説明は繰り返されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、第一の実施形態に係る圧電素子の1つの層を示す。
【
図2A】
図2Aは、第二の実施形態に係る圧電素子の第一の層を示す。
【
図2B】
図2Bは、第二の実施形態に係る圧電素子の第二の層を示す。
【
図3A】
図3Aは、第一の実施形態に係る圧電素子の断面図を表す。
【
図3B】
図3Bは、第二の実施形態に係る圧電素子の断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
個々の実施形態が図において模式的に示され、個々の構成要素は概略図の観点から省略される。個々の構成要素はさらに、良好な理解と明確な表示のために他の構成要素に比べて強調又は拡大して表示される場合がある。当業者は、実施形態の単一の観点を組み合わせたり補完したりできることが想定される。特に圧電基板の入力部と出力部における電極の様々な位置や様態の組み合わせがなされてよい。
【0033】
図1には、基板1を有し長手軸振動で作動する圧電変圧器の、圧電変圧器の上面に平行な縦断面が描かれている。圧電素材からなる矩形基板1は入力部2及び出力部3を有し、それらは基板1の長手方向の一方の端部と反対側の端部とに配置されている。入力部2は出力部3と機械的に結合している。矩形基板1は多層構造を有し、基板1上面に平行に互いに上下に積層された矩形層11を有する。基板1の上面は矩形基板1の最大の断面として定義される。
【0034】
圧電素子はさらに、入力部2内部に第一及び第二の一次電極4、5を、出力部3内部に第一及び第二の二次電極6、7を有し、それらは多層構造内に配置されている。ここで一次及び二次電極4、5、6、7は層11間に、基板1の長手方向側面に実質的に垂直に配置される。垂直に互いに上下に配置された一次又は二次電極4、5、6、7は垂直な電極を構成し、圧電基板1の長手軸に実質的に垂直に並んでいる。
【0035】
本発明によれば、一次電極4、5と基板1の長手方向側面との距離は、出力部3から離間した領域においてよりも、出力部3に近接した領域において大きい。特に出力部3直近の一次電極4、5は、出力部3から最も離れた一次電極4、5に比べて基板1長手方向側面との距離が大きい。二次電極6、7もまた、入力部2と離間した領域においてよりも入力部2に近接した領域において基板1長手方向側面との距離が大きい。これにより入力部2直近の二次電極6、7は、入力部2から最も離間した二次電極6、7よりも基板1の長手方向側面との距離が大きい。これにより一次絶縁部8が形成され、これは出力部3に近接した入力部2の一部分にあって、一次電極4、5と基板1の長手方向側面との間に配置されている。さらに二次絶縁部9は、二次電極6、7と基板1の長手方向側面との間の、入力部2に近接した出力部3の一部分に形成される。入力部2と出力部3との間にはさらなる絶縁部10が形成される。
【0036】
圧電素子はさらに、第一の一次電極4と電気的に接続された第一の付加的一次電極12と、第二の一次電極5と電気的に接続された第二の付加的一次電極13とを有する。第一及び第二の付加的一次電極は部分的に入力部2内部に配置される。
【0037】
圧電素子はさらに、第一の二次電極6と電気的に接続された第一の付加的二次電極14と、第二の二次電極7と電気的に接続された第二の付加的二次電極15とを有する。第一の付加的二次電極14及び第二の付加的二次電極15は部分的に出力部3内部に配置される。
【0038】
第一及び第二の一次電極4、5は、第一及び第二の二次電極6、7と同様に櫛形に互いに内部に配置できる。
【0039】
圧電素子はさらに、第一の付加的一次電極12と電気的に接続された第一の外部一次電極16と、第二の付加的一次電極13と電気的に接続された第二の外部一次電極17と、第一の付加的二次電極14と電気的に接続された第一の外部二次電極18と、第二の付加的二次電極15と電気的に接続された第二の外部二次電極19とを有する。第一及び第二の外部一次電極16、17及び第一及び第二の外部二次電極18、19は、基板1の長手方向側面上に配置される。
【0040】
素子の圧電素材は基板1の長手方向に分極され、第一及び第二の一次及び/又は二次電極4、5、6、7の間の隣接するセグメントでは分極の方向が逆となる。
【0041】
ある不図示の実施形態において、基板1の上面及び下面にさらなる絶縁層を積層してよい。
【0042】
第一及び第二の外部一次電極16、17への交流電圧の印加に際して、逆圧電効果によって圧電基板1に長手方向の振動が励起される。第一及び第二の一次電極4、5の、第一及び第二の付加的一次電極12、13へのの並列接続によって、電気的エネルギーの機械的エネルギーへの変換が高効率で達成される。第一及び第二の一次電極4、5が、外部一次電極16、17の位置から基板1の長手方向端部にかけて、圧電基板1の全幅を利用しているため、圧電素子の効率はさらに向上する。
【0043】
圧電基板1に生成された長手方向振動は、機械的接続のために出力部3に伝播する。正の圧電効果のために、第一及び第二の外部二次電極18、19の間に出力電圧が生じる。出力部3においても、第一及び第二の二次電極が並列接続されているため、また圧電基板1の全幅が利用されているために、圧電素子の効率は向上する。
【0044】
フラッシュオーバ電圧の値は、外部一次及び二次電極16、17、18、19間の距離と、それらの間に配置された絶縁部8、9、10とによって決定する。多くの利用状態において、例えば家庭用ネットワーク部門において、フラッシュオーバ電圧は技術規格によって規定されており、外部電極間の距離もまた例えば6mmに規制されている。結果的に、低稼働レベルで作動する変圧器は、高い稼働レベルで作動する変圧器と同等の絶縁部を必要とする。絶縁部が広い場合、圧電変圧器の効率が低下する。
【0045】
これに基づき、
図1に図示の実施例では、一次絶縁部8及び二次絶縁部9が特徴的な構成をとっている。これにより、入力部2の一次電極4、5と出力部3の二次電極6、7との良好な絶縁が確実となる。外部一次電極16、17と外部二次電極18、19とが空間的に大きく離間しているため、フラッシュオーバ電圧の値が高くなる。一次及び二次電極4、5、6、7が、外部一次及び二次電極16、17、18、19の位置から圧電基板1のそれぞれの長手方向端部にかけて、圧電基板1の全幅を利用しているため、第一及び第二の絶縁部8、9があるにもかかわらず、圧電素子の高い効率が保証される。第一及び第二の絶縁部8、9の大きさは、圧電変圧器に要求されるフラッシュオーバ電圧に応じて定まる。
【0046】
図2A及び
図2Bは、圧電素子の第二の実施形態を示し、2つの隣接する層11に配置された電極を図示する。
図2Aは、第一の層11に配置された第一の一次電極4と第二の二次電極7の電極を示す。
図2Bはさらに、第一の層11に隣接する第二の層11に配置された、第二の一次電極5と第一の二次電極6の電極を示す。これらの特徴的な配置のために、電極のうち、一次電極と二次電極、4、5、6、7の間の空間的距離が最小となるものは、すなわち第二の一次電極5と第二の二次電極7は、それぞれ異なる層11に配置される。これにより、第二の一次電極5と第二の二次電極7は、層11の厚みによってさらに離間する。これによって圧電素子のフラッシュオーバ電圧はさらに高くなる。層厚は通常10〜50μmの範囲であり、一次及び二次電極4、5、6、7の距離に依存する。
【0047】
図3Aは、第一の実施形態に係る圧電素子の、圧電基板側面に平行な断面図である。
図3Bは同様の観点から第二の実施形態に係る圧電素子を描いたものである。
図3Aと
図3Bとの比較によって明らかなように、一次電極4、5と二次電極6、7との空間的距離は、圧電素子の第二の実施形態において拡大している。第二の一次電極5と第二の二次電極7の間には層11の厚みがさらに加わっている。
【0048】
この方法によれば、圧電素子の外部一次電極16、17に交流電圧を印加した際、基板1の長手方向の振動が励起される。この振動の周波数は基板1の基本周波数の倍音に相当する。周波数は、倍音のノードの位置が第一及び第二の外部一次及び/又は二次電極16、17、18、19が配置されている位置となるように選択される。周波数をこのように選択すれば、外部一次及び/又は二次電極16、17、18、19は機械的振動の伝播に負の影響を及ぼさない。これにより、電気的エネルギーが非常に効率的に機械的エネルギーに(又はその逆方向に)変換される。圧電素子の効率はこれによりさらに向上する。
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 入力部
3 出力部
4、5 第一及び第二の一次電極
6、7 第一及び第二の二次電極
8 一次絶縁部
9 二次絶縁部
10 さらなる絶縁部
11 層
12 第一の付加的一次電極
13 第二の付加的一次電極
14 第一の付加的二次電極
15 第二の付加的二次電極
16 第一の外部一次電極
17 第二の外部一次電極
18 第一の外部二次電極
19 第二の外部二次電極