特許第5692772号(P5692772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5692772表面保護膜、接ガス部材、ガス処理装置及びメカニカルポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692772
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】表面保護膜、接ガス部材、ガス処理装置及びメカニカルポンプ
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/00 20060101AFI20150312BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20150312BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20150312BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20150312BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C01F17/00 B
   F04C25/02 M
   F04C29/00 U
   H01L21/302 101G
   H01L21/205
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-269201(P2009-269201)
(22)【出願日】2009年11月26日
(65)【公開番号】特開2011-111363(P2011-111363A)
(43)【公開日】2011年6月9日
【審査請求日】2012年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】391005824
【氏名又は名称】株式会社日本セラテック
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100082924
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 修一
(72)【発明者】
【氏名】大見 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】梅木 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 功
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−081223(JP,A)
【文献】 特開2009−234877(JP,A)
【文献】 特開2008−088912(JP,A)
【文献】 特開2000−159619(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/017766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00
F04C 25/02
F04C 29/00
H01L 21/205
H01L 21/3065
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イットリア(Y)を主成分とし、セリウムを酸化物換算の原子比で1%〜5%含有する表面保護膜を少なくとも接ガス部に有することを特徴とする接ガス部材。
【請求項2】
請求項に記載の接ガス部材を用いたことを特徴とするガス処理装置。
【請求項3】
排出すべきガスに接触する部分である接ガス部の表面上に、酸化セリウムを酸化物換算の原子比で1〜5%添加したイットリア膜である表面保護膜を有することを特徴とするメカニカルポンプ。
【請求項4】
ロータを収納したケーシングに気体の吸入ポートと吐出ポートを形成した本体を有し、
前記本体のうち、前記気体と接触する部分である接ガス部の表面に、0.1乃至10μmの厚さで前記表面保護膜がコーティングされていることを特徴とする請求項に記載のメカニカルポンプ。
【請求項5】
前記本体の温度を80℃乃至250℃の範囲内に維持する温度制御手段を有することを特徴とする請求項に記載のメカニカルポンプ。
【請求項6】
前記温度制御手段は、加熱手段を含むことを特徴とする請求項に記載のメカニカルポンプ。
【請求項7】
前記温度制御手段は、前記メカニカルポンプの動作によって発生する気体圧縮熱および動作部材の摩擦熱の少なくも一方を利用するものであることを特徴とする請求項に記載のメカニカルポンプ。
【請求項8】
請求項のいずれか一項に記載のメカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室とメカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室および前記配管の少なくとも一方の内表面上に、前記表面保護膜を有することを特徴とする半導体製造装置。
【請求項9】
請求項のいずれか一項に記載のメカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室とメカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室および前記配管の少なくとも一方の内表面上に、前記表面保護膜を有することを特徴とする薄型ディスプレイ製造装置。
【請求項10】
請求項のいずれか一項に記載のメカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室とメカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室および前記配管の少なくとも一方の内表面上に、前記表面保護膜を有することを特徴とする太陽電池製造装置。
【請求項11】
請求項のいずれか一項に記載のメカニカルポンプを製造するメカニカルポンプの製造方法であって、前記表面保護膜をゾルゲル法によって形成することを特徴とするメカニカルポンプの製造方法。
【請求項12】
250〜1000℃の範囲の熱処理を伴うゾルゲル法によって前記表面保護膜を形成することを特徴とする請求項11記載のメカニカルポンプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面保護膜、接ガス部材、ガス処理装置、およびメカニカルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス処理装置、例えばメカニカルポンプ等の排気装置やプロセス処理にガスを用いた装置においては、排出すべき気体と接触する接ガス部の部材は、その表面を保護膜で覆う必要がある。
【0003】
これは、例えば、減圧中で有毒ガスまたは腐食性ガス等を放出する半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置における処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)の装置やその排気部に用いられる真空ポンプ等において、これらのガスが装置やポンプ内などで反応して接ガス部を腐食させる恐れがあるためである。
【0004】
また、これらのガスが接ガス部表面を構成する材料の触媒作用によって分解解離し、反応生成物が蓄積して装置やポンプなどの正常な動作を阻害させるといった問題があるためである。
【0005】
より具体的には、例えば従来のメカニカルポンプの接ガス部はニッケル系の処理がなされている場合があるが、ニッケルは半導体製造装置、大型薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置の処理工程(プラズマエッチング、減圧気相成長)におけるガスである、SiH、AsH、PH、B、等の水素化合物分子に対する触媒効果がある。
【0006】
そのため、半導体プロセスで頻繁に使用されるSiH、AsH、PH、B、等の水素化合物分子がポンプ内の接ガス部のニッケルの触媒効果で分解し、Si、As、P、B等が発生し、化学反応によって生成物としてメカニカルポンプ内に堆積するという問題があった。
【0007】
そのため、接ガス部の表面を、耐食性に優れ、触媒効果のないイットリア(酸化イットリウム、Y)膜で覆うことによって、ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑えた構造が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−88912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の技術は、ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑える効果が得られるという点で、優れた技術である。
【0010】
しかしながら、イットリア(Y)膜は膜中に微細なボアなどの欠陥が存在し、腐食性のガスの接ガス部表面への侵入を阻止しにくい場合があり、これを改善できればより望ましい。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、従来よりも腐食性ガスの侵入を抑制することのできる、表面保護膜を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、腐食性ガスへの耐性の高い、接ガス部材およびそのような部材を用いたガス処理装置およびメカニカルポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、イットリア(Y)を主成分とし、セリウムを含有することを特徴とする表面保護膜が得られる。
【0014】
上記表面保護膜において、セリウムの添加量は、酸化物換算の原子配合比で1〜5%とするのが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に記載の表面保護膜を少なくとも接ガス部に有することを特徴とする接ガス部材が得られる。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様に記載の接ガス部材を用いたことを特徴とするガス処理装置が得られる。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、排出すべきガスに接触する部分である接ガス部の表面上に、酸化セリウムを添加したイットリア膜である表面保護膜を有することを特徴とするメカニカルポンプが得られる。
【0018】
上記メカニカルポンプにおいても、前記表面保護膜のセリウムの添加量は、酸化物換算の原子配合比で1〜5%とするのが好ましい。
【0019】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様に記載のメカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室と前記メカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室および前記配管の少なくとも一方の内表面上に、前記表面保護膜を有することを特徴とする半導体製造装置が得られる。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、第4の態様に記載のメカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室とメカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室および前記配管の少なくとも一方の内表面上に、前記表面保護膜を有することを特徴とする薄型ディスプレイ製造装置が得られる。
【0021】
本発明の第7の態様によれば、第4の態様に記載のメカニカルポンプと、該メカニカルポンプによってガスが排出される処理室と、前記処理室とメカニカルポンプとの間に設けられた配管とを有し、前記処理室および前記配管の少なくとも一方の内表面上に、前記表面保護膜を有することを特徴とする太陽電池製造装置が得られる。
【0022】
本発明の第8の態様によれば、第4の態様に記載のメカニカルポンプを製造するメカニカルポンプの製造方法であって、前記表面保護膜をゾルゲル法によって形成することを特徴とするメカニカルポンプの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来よりも腐食性ガスの侵入を抑制することのできる、表面保護膜を提供することができる。
【0024】
また、本発明によれば、腐食性ガスへの耐性の高い、接ガス部材およびそのような部材を用いたガス処理装置およびメカニカルポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るスクリューポンプ(メカニカルポンプ)の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る表面保護膜を有するガス処理装置としてのスクリューポンプ(メカニカルポンプ)の構造、および表面保護膜の構造について説明する。
【0028】
図1に示すように、スクリューポンプは、スクリューポンプ本体A、モータM、およびスクリューポンプ本体Aの接ガス部(後述)を所定の温度に維持する温度制御手段(図示せず)を有している。
【0029】
スクリューポンプ本体Aには、複数の螺旋状の陸部と溝部を有し、互いにかみ合いながら実質的に平行な二軸の回りを回転する一対のスクリューロータa1(a2)が具備されている。
【0030】
また、スクリューロータa1(a2)は、ケーシングa3内に収納され、スクリューロータa1(a2)を支持するシャフトa4の一方のみの軸受けによって回転可能に支持されている。
【0031】
シャフトa4の一端部には、タイミングギアa6が取り付けられ、このタイミングギアa6を介して一対のスクリューロータa1(a2)が同期して回転されるように構成されている。なお、シャフトa4の他端部にはモータMが取り付けられる。
【0032】
一方、前記スクリューロータa1(a2)を収納するケーシングa3の上端部には吸入ポートa7が形成されており、またケーシングa3の下端部側には吐出ポートa8が形成されており、モータMの回転により、前記スクリューロータa1(a2)が同期して回転することにより、気体を吸入ポートa7から吸入し、吐出ポートa8より排気する真空ポンプの作用がなされるように構成されている。
【0033】
さらに、スクリューロータの回転軸方向のほぼ中央部におけるケーシングa3の一部には、不活性ガス注入口a10が穿設されており、この不活性ガス注入口a10より注入されるガスは、一対のスクリューロータa1(a2)に侵入し、両者の間の隙間のガスを希釈し、分子量の小さなガスの排気を向上させると共に生成物の発生、腐食を抑える。
【0034】
ここで、スクリューポンプ本体Aのスクリューロータa1(a2)、ケーシングa3、吸入ポートa7、吐出ポートa8、内部等は排気ガスに接触する部材(接ガス部)の表面に表面保護膜がコーティングされている。
【0035】
表面保護膜は、イットリア(Y)を主成分とし、セリウムを含有する膜である。
【0036】
より具体的には、表面保護膜は、酸化セリウム(CeO)を含有する膜であり、セリウムの含有量は、酸化物換算の原子比で1%乃至5%であるのが望ましい。
【0037】
上記範囲で、酸化セリウムをイットリア(Y)に含有させることにより、イットリア膜中の微細なボアなどの欠陥を減少させることができ、従来のイットリア(Y)膜と比較して、腐食性ガスの侵入を抑制することができる。
【0038】
なお、表面保護膜のコーティング厚さは0.1乃至10μmとするのが望ましい。これはコーティング厚さが0.1μm以下の場合、貫通ポアにより下地が露出されるポイントが存在する可能性があり、10μm以上の場合は、膜ストレスにより膜剥離が発生する可能性があるからである。
【0039】
また、表面保護膜のコーティングは、例えば構成部材(本実施形態では接ガス部を構成する部材)の表面に酸化セリウムを含むイットリア(Y)をゾルゲルコーテング後、窒素と酸素の比率80:20の雰囲気下で250℃乃至1000℃の熱処理をすることによって得られるが、必ずしも上記方法に限定されるものではない。
【0040】
このようにして得られた表面保護膜は、耐食性に優れ、触媒効果がなく、さらに表面欠陥が従来よりも少ない膜であるため、ポンプの接ガス部の部材の表面保護膜とすることで排気ガスの分解解離を抑制し、ポンプ内への生成物の堆積を抑える。
【0041】
このように、本発明の表面保護膜を接ガス部の部材に施すことにより、ポンプ等のガス処理装置の信頼性を向上させることができる。
【0042】
そのため、反応生成物の蓄積が抑制され、ポンプの正常な動作を長期間保証することができる。
【0043】
なお、スクリューポンプ内部における生成物の堆積をさらに抑制させるためには、スクリューポンプ本体A(の接ガス部)の温度を80℃以上に維持するのが好ましい。一方、スクリューポンプの性能を維持するためには、スクリューポンプ本体Aの温度は250℃以下に維持するのが好ましい。
【0044】
そのため、スクリューポンプ本体A(の接ガス部)の温度を80℃〜250℃の範囲内に維持することが好ましく、さらに好ましくは、スクリューポンプ本体Aの温度は略150℃に維持するのが好ましい。
【0045】
接ガス部の温度を80〜250℃の範囲内に維持するために、スクリューポンプは、前述のように、温度制御手段を有している。
【0046】
例えば、この温度制御手段は、図示はしないが、電気ヒータと、冷却構造とを有している。冷却構造は、ケーシングa3に空洞部を形成し、そこに冷却用の水やオイル等の冷媒を循環させるものである。電気ヒータと冷却構造は、スクリューポンプ本体Aの所定箇所に設けられた温度センサによる監視温度に基づいて、接ガス部の温度をフィードバック制御するようになっている。
【0047】
なお、電気ヒータに代えて、スクリューポンプの動作によって発生する気体圧縮熱や動作部材の摩擦熱などを熱源として利用するものであってもよい。
【0048】
また、本実施形態に係るスクリューポンプは、例えば半導体製造装置、液晶ディスプレイなどの薄型ディスプレイ製造装置、あるいは太陽電池製造装置等の処理室内から排出すべき気体を排気するために用いられる。これら装置の処理室の内表面や、処理室とスクリューポンプの間に設けられた配管の内表面上にも、本実施形態に係る表面保護膜を形成することが好ましい。
【0049】
このように、本実施形態によれば、スクリューポンプの接ガス部に、イットリア(Y)を主成分とし、セリウムを含有する保護膜がコーティングされている。
【0050】
そのため、従来よりも腐食性ガスの侵入を抑制することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
【0052】
基板上に種々の比率でセリウムを含有させた表面保護膜を形成したサンプルをゾルゲル法を用いて作製し、表面保護膜への腐食性ガスの侵入量を測定した。
具体的には以下の手順で試験を行った。
【0053】
[サンプルの作製]
まず、直径33mmのSi基板上にMOD(Metal Organic Decomposition)塗布型Y-Ceコート溶液として、株式会社高純度化学研究所製のMOD塗付型Y-03とCe-03を酸化物換算でCeOが原子比で1〜5%と所定比となるように混合したものをスピンコーターにより回転速度1500rpmで60秒間塗付を行った。
塗付を行った後に、サンプルをIR炉(遠赤外線加熱炉)を用いて加熱した。
【0054】
加熱の具体的な手順は以下の通りである。
初めにコート材中の有機物成分を除去するために、IR炉を400℃まで5℃/minの昇温速度で昇温し、5Torr(6.7×10Pa)減圧下でNガスを1L/minフローさせた状態で行い、400℃で8時間保持した。
その後、圧力を大気圧まで戻した後に100%Oの雰囲気下で1時間酸化を行った。
酸化を行った後は室温まで自然冷却を行った。
以上の手順により、基板上に表面保護膜を形成したサンプルを作製した。
【0055】
[サンプルの腐食性ガスへの暴露]
次に、サンプルを以下の手順で腐食性の高い100%Clガスに暴露した。
まず、内表面をAl処理したSUS配管内部にサンプルをセットし、1000L/minでNフローを行いながら5℃/minで150℃まで昇温した後、150℃で1時間保持し、サンプル表面に吸着した水分を除去した。
次に、NガスをClガスに切替え、圧力3kgf/cm(2.9×10Pa)で24時間暴露を行った。
【0056】
[サンプルの評価]
次に、Clガスに暴露したサンプルについて、日本電子株式会社(JEOL)製の光電子分光装置(XPS、X-ray Photoelectron Spectroscopy)であるJPS−9010−MXによりClの検出深さ(侵入量)を測定した。
具体的には直径1mm範囲について面内任意3ケ所の測定を行い、平均値をとった。
結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、試験番号1(Y単膜)の膜と比較して、試験番号2〜7のCeO添加を行った膜はClガス侵入量が少なくなっていた。
【0059】
これはCeO添加により膜中の微小ポアなどの欠陥が減少したことによると考えられる。
【0060】
以上より、イットリア(Y)にCeOを添加することにより、腐食性ガスの侵入を抑制できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上述した実施形態では本発明をスクリューポンプに適用した場合について説明したが、本発明は特にこれに限定されることなく、ル−ツポンプ等のメカニカルポンプ一般や、他のガス処理装置、ガス導通管等にも当然適用することができ、本発明を適用したガス処理装置は、長時間安定した性能を維持するため、システムの安定稼動ができる。
【0062】
また、本発明によるメカニカルポンプは、半導体製造装置、薄型ディスプレイ製造装置、太陽電池製造装置等の排気を必要とする装置全般に適用可能である。
【0063】
さらに、本発明によるメカニカルポンプは、その排出対象が気体の場合のみならず、液体など媒体全般を排出する構造にも適用可能である。
【0064】
また、上記した実施例では基板としてSi基板を用いたが、基板はSUS系材料やAl系材料を用いても同様の結果が得られる。
【0065】
さらに、上記した実施例ではスピンコーターで塗布を行ったが、ディップ法やスプレー法により塗付しても同様の結果が得られる。
【0066】
また、上記した実施例ではIR炉でサンプルを加熱したが、実際の加熱は外部ヒータ(オーブン)を用いて加熱を行っても同様の結果が得られる。
【符号の説明】
【0067】
A スクリューポンプ本体
a1、a2 スクリューロータ
a3 ケーシング
a4 シャフト
a6 タイミングギア
a7 吸入ポート
a8 吐出ポート
a10 不活性ガス注入口
M モータ
図1