(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692816
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
B66B7/06 H
B66B7/06 K
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-67086(P2012-67086)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199335(P2013-199335A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2012年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和宏
【審査官】
筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−027241(JP,U)
【文献】
特開昭48−064654(JP,A)
【文献】
特開平03−003884(JP,A)
【文献】
特開2007−022673(JP,A)
【文献】
特開昭62−288769(JP,A)
【文献】
特開2003−294083(JP,A)
【文献】
特公昭33−005922(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00 − 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に、それぞれガイドレールによって昇降可能に設けられた乗りかご及び釣合錘をロープにより釣瓶状に連結し、このロープが巻き掛けられた巻上機により相互に昇降駆動するエレベータ装置であって、
前記ロープが1本ずつ挿通される貫通孔を有し、このロープの長さ方向には移動可能で、かつこのロープの横方向の振れを1本ずつ拘束する拘束ブロックを一体的に取り付け、前記乗りかごとは別体の状態でローラガイドを介して前記ガイドレールにより昇降可能に支持された振れ止め機構と、
前記振れ止め機構と前記乗りかごとの間に設けられ、上下端にボールジョイントを有するロッドにより、前記振れ止め機構と前記乗りかごとの横方向の相互移動を許容し、かつ前記振れ止め機構を前記乗りかごから前記ロープの長さ方向に所定の間隔を保って支持する支持機構と、
を備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記振れ止め機構は、前記乗りかごの下側に設けられるコンペンロープに対して設けられたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、昇降路内に、それぞれガイドレールによって昇降可能に設けられた乗りかご及び釣合錘をロープにより釣瓶状に連結し、このロープが巻き掛けられた巻上機により相互に昇降駆動するエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置は、建物に設けられた昇降路内に、乗りかごと釣合錘をそれぞれガイドレールによって昇降可能に取り付け、巻上機に巻き掛けられたロープにより、乗りかごと釣合錘とを釣瓶状に連結して構成されている。このようなエレベータ装置において、地震や強風などによって建物が揺れると、乗りかごや釣合錘を吊っているロープが大きく振れることがある。このようにロープが大きく振れた状態でエレベータを走行させると、ロープの振れが乗りかごに伝わり、乗りかごに横揺れが生じ、乗客に不安感を与えたり、乗りかごの走行に支障をきたしたりすることがある。
【0003】
乗りかごの横揺れは乗りかごとガイドレールとの間に設けられるローラガイドのバネ乗数を大きくしたり、そのストロークを小さくするなどの対策を実施することで、ある程度軽減することはできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−97654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、乗りかごに対するロープからの振動絶縁について根本的な解決にはならず、より効果的な対策が望まれている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ロープの横揺れを拘束することにより、乗りかごに対する振動絶縁を効果的なものとしたエレベータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係るエレベータ装置は、昇降路内に、それぞれガイドレールによって昇降可能に設けられた乗りかご及び釣合錘をロープにより釣瓶状に連結し、このロープが巻き掛けられた巻上機により相互に昇降駆動するエレベータ装置であって、前記ロープ
が1本ずつ挿通される貫通孔を有し、このロープの長さ方向には移動可能で、かつこのロープの横方向の振れを
1本ずつ拘束する拘束ブロックを一体的に取り付け、前記乗りかごとは別体の状態で
ローラガイドを介して前記ガイドレールにより昇降可能に支持された振れ止め機構と、前記振れ止め機構と前記乗りかごとの間に設けられ、
上下端にボールジョイントを有するロッドにより、前記振れ止め機構と前記乗りかごとの横方向の相互移動を許容し、かつ前記振れ止め機構を前記乗りかごから前記ロープの長さ方向に所定の間隔を保って支持する支持機構とを備えたことを特徴とする。
【0008】
上記実施の形態によれば、振れ止め機構により、ロープを拘束してロープに生じた振れが乗りかごに伝わらないように構成したので、ロープの振れに起因する乗りかごの横揺れを抑止して、支障をきたすことなく走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るエレベータ装置の昇降路内の構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に用いる振れ止め機構を説明する平面図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態に係るエレベータ装置の昇降路内の構成を示す正面図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータ装置の昇降路内の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1及び
図2は建物内に形成された昇降路11の内部構成を示す正面図及び平面図である。これらの図において、昇降路11内には、ガイドレール12が設けられており、このガイドレール12により乗りかご13が昇降可能に設けられている。なお、この昇降路11内には図示しないが釣合錘もガイドレールにより昇降可能に設けられており、これら、乗りかご13と釣合錘とは、図示しない巻上機に巻き掛けられたロープ14により釣瓶状に連結されている。すなわち、ロープ14の先端には接続具14aが一体的に設けられており、この接続具14aにより乗りかご13の外枠を構成する上梁13aに連結している。なお、図示しない釣合錘側のロープも同様の接続具により釣合錘と接続している。このロープ14は、それが巻き掛けられた巻上機により長さ方向に駆動され、乗りかご13と釣合錘とは相互に昇降駆動される。
【0012】
ロープ14に対しては、このロープ14と係合して、その横方向の振れを拘束する振れ止め機構15を設けている。この振れ止め機構15は、
図2で示すように一対の梁部材16を有し、その長さ方向中央部には、ロープ14と係合してその横方向の振れを拘束する拘束ブロック17が一体的に設けられている。この拘束ブロック17は、樹脂材など、比較的軟質の材料で板状に形成されており、ロープ14と同数の貫通孔18が設けられている。これらの貫通孔18にはロープ14が1本ずつ挿通係合しており、ロープ14の横方向の振れを拘束している。
【0013】
また、梁部材16の長さ方向両端部には、ローラガイド19が設けられ、梁部材16を含む振れ止め機構15全体を、ガイドレール12へ昇降可能に取り付けている。すなわち、ローラガイド19は、
図2で示すように、3個のローラ19a,19b,19cを有し、これらによりガイドレール12を挟み付けるようにして転動可能に取り付けられており、振れ止め機構15をガイドレール12に沿って移動可能に支持している。
【0014】
なお、乗りかご13の、ガイドレール12との対向部分にも、上述したローラガイド19と同様なガイド機構が設けられ、乗りかご13をガイドレール12に沿って移動可能に支持しているが、図示は省略している。
【0015】
振れ止め機構15は、その横方向の動きが、両端のローラガイド19を介して左右に設けられたガイドレール12により強固に拘束されている。すなわち、振れ止め機構15は、両端のローラガイド19によりガイドレール12に沿って昇降自在ではあるが、横方向には左右のガイドレール12により強固に固定されている。したがって、拘束ブロック17に係合しているロープ14が横方向に触れても、このロープ14の振れを拘束し、このロープ14の振れが乗りかご13に伝わらないように機能する。
【0016】
図1で示す実施形態では、振れ止め機構15は、乗りかご13との間に設けられた支持機構21により、乗りかご13の上方に、所定の間隔を保って配置され、この位置にてロープ14と係合している。支持機構21は、上述のように、振れ止め機構15を、乗りかご13の上方に所定の間隔を保つべく上下方向には固定するが、横方向には互いに移動可能に支持する。この実施の形態では、乗りかご13の上梁13aと振れ止め機構15の梁部材16との間に立設された合計4本(
図1の奥行き方向にも2本設けられている)のロッド21aとその上下端に設けたボールジョイント21bとで構成され、振れ止め機構15を横方向には移動可能に支持している。
【0017】
ここで、ロープ14を挿通させている貫通孔18の孔径は、ロープ14の外径より僅かに大きく設定し、拘束ブロック17を含む振れ止め機構15が、ロープ14の長さ方向に沿って移動できるように構成している。これは乗りかご13の加速に伴い、ロープ14に伸びが生じた場合、支持機構21を構成するボールジョイント21bに無理な力が加わらないようにするためである。すなわち、拘束ブロック17の貫通孔18は、ロープ14の横方向の移動を拘束できる孔径であればよい。仮に、ロープ14の外径と等しい孔径にすると、拘束ブロック17の貫通孔18ははロープ14に一体的に係合するので、ロープ14の長さ方向への移動が困難になる。ロープ14は乗りかご13の加速時に多少の延びが生じる。この延びが生じた場合、上述のように拘束ブロック17の貫通孔18がロープ14と一体的に係合していると、振れ止め機構15と乗りカゴ13との間に設けられた支持機構21に延び方向の力が加わり、そのボールジョイント21b部分を分解させようとする無理な力として加わる。このため、ボールジョイント21b部分に損傷が生じることが考えられる。このような不具合を防止するために、上述したように、ロープ14を挿通させている貫通孔18の孔径を、ロープ14の外径より僅かに大きく設定し、拘束ブロック17を含む振れ止め機構15が、ロープ14の長さ方向に沿って移動できるように構成している。
【0018】
なお、支持機構21は、上記構造に限定されるものではなく、例えば、図示しないが、下端を乗りかご13の上梁13a上に立設したロッドの上端を、バネ又は弾性材を介して振れ止め機構15の梁部材16の下面に当接させた構造でもよい。
【0019】
このほか、
図3で示すように、乗りかご13の上梁13a上に、上端が振れ止め機構15の上方に達する支柱21cを立設し、その上端に支持梁21dを設け、この支持梁21dによりワイヤ21eにより振れ止め機構15を吊り下げるように構成してもよい。このように構成しても振れ止め機構15は乗りかご13の上梁13aから所定の間隔を保った位置において横方向には移動可能な状態で支持されることとなる。
【0020】
上述した実施の形態では、何れも、振れ止め機構15を、乗りかご13側との間に設けた支持機構21により支持した構成であったが、振れ止め機構15の拘束ブロック17に設けた貫通孔18の孔径を、ロープ14の直径と同じか或いは僅かに小さくすることで、ロープ14を拘束ブロック17の貫通孔18内に一体的に締め付けて固定してもよい。このように構成すれば、乗りかご13との間に支持機構21を設けなくとも、振れ止め機構15は、乗りかご13の上方に所定の間隔を保った状態で、乗りかご13に対して横方向には相互に移動可能な状態で固定され、乗りかご13と共に昇降することになる。
【0021】
このように、振れ止め機構15が、乗りかご13から、ロープ14の長さ方向に所定の間隔を保った位置でロープ14と係合し、ロープ14を横方向に拘束しているので、地震や強風などにより建物が揺れ、昇降路11内のロープ14が横方向に大きく振れても、このロープ14の振れは、乗りかご13の近くにおいて振れ止め機構15及びガイドレール12により抑止され、乗りかご13に伝わることはない。したがって、ロープ14の振れで乗りかご13が揺れ、乗りかご13の走行に支障を与えたり、乗客に不安を与えたりすることを有効に防止できる。
【0022】
上記実施の形態は、何れも振れ止め機構15を乗りかご13の上方に所定の間隔を保って配置したものであるが、振れ止め機構15を、乗りかご13側から切り離して、昇降路11の高さ方向中間部に係止させておいてもよい。すなわち、昇降路11の高さ方向中間部の内壁に、
図4で示すように、係止部22を取り付け、その上に、振れ止め機構15の両端部を分離可能に載置しておく。この場合、振れ止め機構15の拘束ブロック17に設けた貫通孔18の孔径を、ロープ14の直径より大きめにする。すなわち、ロープ14の横方向の動きは拘束するが、長さ方向には自由に通過できるように孔径を設定する。
【0023】
上記構成において、乗りかご13が昇降路11内の下階部分に位置するとき、昇降路11内の高さ方向中間部の係止部22上に載置された振れ止め機構15は、乗りかご13の上方に遠く離れて位置するが、ロープ14の長さ方向中間部を横方向に拘束するので、建物が揺れても、ロープ14自体が大きく振れることは無く、したがって乗りかご13の揺れも抑止することができる。乗りかご13の上昇時には、乗りかご13の上昇に伴って振れ止め機構15との間隔は近くなり、乗りかご13が昇降路11の高さ方向中間位置に達すると、乗りかご13の上面に設置された支持体21の上端が振れ止め機構15の下面と当接する。この状態で乗りかご13がさらに上昇すると、振れ止め機構15は係止部22上から離れて乗りかご13の所定の間隔を保った状態で共に上昇する。したがって、乗りかご13が、昇降路11の高さ方向中間部より高い位置にあるときは、振れ止め機構15は、
図1の場合と同様に、常に乗りかご13と所定の間隔を保った位置にあり、ロープ14の振れが乗りかご13に伝わることを防止できる。
【0024】
乗りかご13の下降時には、乗りかご13が昇降路11の高さ方向中間部より下降すると、振れ止め機構15は再び係止部22上に載置され、乗りかご13とは分離される。この状態においては、前述したように、ロープ14の長さ方向中間部を横方向に拘束することとなる。したがって、建物が揺れても、ロープ14自体が大きく振れることは無く、乗りかご13の揺れも抑止することができる。
【0025】
なお、振れ止め機構15は、図示しないが、乗りかご13の下側に設けられるコンペンロープに対しても前述した構成で設けてもよい。
【0026】
さらに、振れ止め機構15は、図示しないが、釣合錘側のロープに対しても同じく前述した構成で設けてもよい。釣合錘については、乗りかご13における揺れには直接的に影響しないが、ロープが振れた場合、ロープ先端の接続具と釣合錘との間に大きな曲げ方向の力が加わり、この部分に大きなストレスが加わる。しかし、振れ止め機構15を設けることによりロープの振れが抑止されるので、上述したロープ先端の接続具と釣合錘との間の曲げがほとんど生じなくなり、この部分の損傷を有効に防止することができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
11・・・昇降路
12・・・ガイドレール
13・・・乗りかご
14・・・ロープ
15・・・振れ止め機構
16・・・一対の梁
17・・・拘束ブロック
19・・・ローラガイド
21・・・支持機構
22・・・係止部