【実施例】
【0060】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1−1)
使用する基板は、合成石英ガラス基板(大きさ152.4mm×152.4mm、厚さ6.35mm)である。この合成石英ガラス基板の端面を面取加工、及び研削加工し、更に酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理および精密研磨を終えたガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、以下の条件で研磨加工(超精密研磨)を行った。
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
研磨液:コロイダルシリカ砥粒(平均粒径100nm)+水
加工圧力:50〜100g/cm
2
加工時間:60分
【0061】
超精密研磨終了後、ガラス基板をフッ酸中に浸漬させてコロイダルシリカ砥粒を除去する洗浄を行った。次に、ガラス基板の主表面および端面に対してスクラブ洗浄を、純水によるスピン洗浄、およびスピン乾燥を行った。スピン乾燥後、ガラス基板の主表面をレーザー干渉コンフォーカル光学系による60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。次に、欠陥検査を行ったガラス基板の中から、凹状欠陥が検出されず、かつ60nm相当の凸状欠陥の検出数が一桁レベルのものを10枚選定した。以下、この選定したガラス基板を用いて、各実施例の洗浄条件に対する洗浄能力の評価を行った。
【0062】
前記の選定したガラス基板の主表面に対して、疑似異物として粒径60nmのPSL粒子を散布した。次に、60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)で60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、凹状欠陥は検出されなかったが、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、3430個検出された。
【0063】
続いて、
図1に示す洗浄装置を用いて超音波洗浄を行った。洗浄水として純水を使用し、周波数が1.6MHzの超音波を印加した。また、超音波洗浄ノズルから基板の表面(主表面)に向かって流下する超音波が印加された洗浄水の流量は1.5リットル/分に調節した。なお、洗浄中の基板回転数、および洗浄ノズルの移動速度は適宜設定した。
【0064】
以上の条件で5分間の基板洗浄を行った。洗浄後のガラス基板の主表面を上記60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、凹状欠陥は検出されなかったが、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、69個検出された。
同様にして、全部で10枚のガラス基板に対して、疑似異物の散布、洗浄および欠陥検査を行った。
【0065】
以上の洗浄を終えた10枚のガラス基板について、前述の関係式に基づき、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出した結果、10枚のガラス基板の平均で98.0%と高いパーティクル除去率であり、高い洗浄効果が得られることが分かった。
また、上記の洗浄を終えた10枚のガラス基板をアルカリ薬液中に20分間浸漬、洗浄した後、再度、ガラス基板の主表面を上記60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、欠陥検査を行った結果、10枚のいずれの基板についても凹状欠陥は検出されなかった。従って、上記の本発明による超音波洗浄を行っても、ガラス基板内部に潜傷が発生していないことが確認できた。
【0066】
(実施例1−2〜1−7、参考例1)
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、2.0MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った(実施例1−2)。
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、2.5MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った(実施例1−3)。
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、3.0MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った(実施例1−4)。
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、3.5MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った(実施例1−5)。
【0067】
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、4.0MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った(実施例1−6)。
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、5.0MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った(実施例1−7)。
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、6.0MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った(参考例1)。
【0068】
実施例1−1と同様に、洗浄前および洗浄後の基板主表面の欠陥検査を行い、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出した。その結果、実施例1−2の場合、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、4080個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、90個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で97.8%と高いパーティクル除去率であり、実施例1−2の場合でも高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0069】
実施例1−3の場合、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、2840個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、71個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で97.5%と高いパーティクル除去率であり、実施例1−3の場合でも高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0070】
実施例1−4の場合、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、2545個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、76個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で97.0%と高いパーティクル除去率であり、実施例1−4の場合でも高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0071】
実施例1−5の場合、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、2911個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、99個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で96.6%と高いパーティクル除去率であり、実施例1−5の場合でも高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0072】
実施例1−6の場合、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、5133個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、185個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で96.4%と高いパーティクル除去率であり、実施例1−6の場合でも高い洗浄効果が得られることが分かった。
実施例1−7の場合、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、3256個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、163個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で95.0%と高いパーティクル除去率であり、実施例1−7の場合でも高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0073】
一方、参考例1の場合、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、4874個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、370個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で92.4%と、他の実施例に比べて洗浄効果は若干低下することが分かった。なお、参考例1については、洗浄条件で、粒径200nmのPSL粒子を用いた洗浄性能評価も行ったが、粒径60nmのPSL粒子で行った洗浄性能評価よりも欠陥の検出率が明らかに上昇するという結果が得られた。
【0074】
また、実施例1−1と同様に、洗浄を終えたガラス基板をアルカリ薬液中に20分間浸漬、洗浄した後、再度、ガラス基板の主表面の欠陥検査を行った結果、実施例1−1〜1−7、参考例1のいずれの基板についても凹状欠陥は検出されなかった。従って、上記の本発明による超音波洗浄を行った場合に、ガラス基板内部に潜傷が発生していないことが確認できた。
【0075】
(実施例2)
実施例1−1と同様に、スピン乾燥後のガラス基板の主表面を60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて検査し、凹状欠陥が検出されず、かつ60nm相当の凸状欠陥の検出数が一桁レベルのものを選定した。選定したガラス基板を用いて、以下のように位相シフトマスクブランクを作製した。
上記ガラス基板上に、まず窒化されたモリブデン及びシリコンからなる光半透過膜を成膜した。
具体的には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N
2:He=5:49:46)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン及び窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。次いで、上記MoSiN膜が形成された基板に対して、加熱炉を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。なお、このMoSiN膜は、ArFエキシマレーザーにおいて、透過率は6.16%、位相差が184.4度となっていた。
【0076】
次に、上記光半透過膜の上に、以下の遮光膜を成膜した。
具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO
2)と窒素(N
2)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO
2:N
2:He=20:35:10:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚30nmのCrOCN層を成膜した。続いて、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比 Ar:N
2=25:5)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚4nmのCrN層を成膜した。最後に、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO
2)と窒素(N
2)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO
2:N
2:He=20:35:5:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚14nmのCrOCN層を成膜し、合計膜厚48nmの3層積層構造のクロム系遮光膜を形成した。
【0077】
この遮光膜は、上記光半透過膜との積層構造で光学濃度(OD)がArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0となるように調整されている。また、前記露光光の波長に対する遮光膜の表面反射率は20%であった。
【0078】
以上のようにして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を積層したマスクブランクに対し、マスクブランクの主表面を60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。次に、欠陥検査を行ったガラス基板の中から、凹状欠陥が検出されず、かつ60nm相当の凸状欠陥の検出数が一桁レベルのものを10枚選定した。選定したマスクブランクの主表面に対して、疑似異物として粒径60nmのPSL粒子を散布した。次に、60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)で60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、凹状欠陥は検出されなかったが、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、3377個検出された。
【0079】
続いて、
図1に示す洗浄装置を用いて超音波洗浄を行った。洗浄水として純水を使用し、周波数が1.6MHzの超音波を印加した。また、超音波洗浄ノズルからマスクブランクの薄膜表面に向かって流下する超音波が印加された洗浄水の流量は1.5リットル/分に調節した。なお、洗浄中のマスクブランク回転数、および洗浄ノズルの移動速度は適宜設定した。
【0080】
以上の条件で5分間の超音波洗浄を行った。洗浄後のマスクブランクの主表面を上記60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、凹状欠陥は検出されなかったが、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、74個検出された。
同様にして、全部で10枚のマスクブランクに対して、疑似異物の散布、洗浄および欠陥検査を行った。
【0081】
実施例1−1と同様に、洗浄を終えた10枚のマスクブランクについて、前述の関係式に基づき、洗浄後のマスクブランク主表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出した結果、97.8%と高いパーティクル除去率が得られ、高い洗浄効果が得られることが分かった。
以上のようにして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有する位相シフトマスクブランクを作製した。
【0082】
次に、上記の位相シフトマスクブランクを用いて、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。
まず、上記マスクブランク上に、レジスト膜として、電子線描画用化学増幅型ポジレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。上記レジスト膜を塗布後、所定の加熱乾燥処理を行った。レジスト膜の膜厚は150nmとした。
【0083】
次に上記マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンをマスクとして、遮光膜のエッチングを行った。ドライエッチングガスとして、Cl
2とO
2の混合ガスを用いた。続いて、光半透過膜(MoSiN膜)のエッチングを行って光半透過膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとして、SF
6とHeの混合ガスを用いた。
【0084】
次に、残存するレジストパターンを剥離して、再び全面に上記と同じレジスト膜を形成し、マスクの外周部に遮光帯を形成するための描画を行い、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成した。このレジストパターンをマスクとして、遮光帯領域以外の遮光膜をエッチングにより除去した。
残存するレジストパターンを剥離して、位相シフトマスクを得た。
こうして得られた位相シフトマスクは、45nmハーフピッチの微細パターンが良好なパターン精度で形成されていた。
【0085】
また、得られた位相シフトマスクをアルカリ薬液中に20分間浸漬、洗浄した後、再度、マスク欠陥検査装置を用いて、位相シフトマスクの欠陥検査を行った結果、マスクパターンのない透光部に凹状欠陥は検出されなかった。また、パターンの脱落も検出されなかった。従って、上記のガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を積層したマスクブランクに対し、本発明による超音波洗浄を行っても、ガラス基板内部に潜傷が発生していないことが確認できた。
【0086】
(実施例3)
実施例1−1と同様に、スピン乾燥後のガラス基板の主表面を60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて検査し、凹状欠陥が検出されず、かつ60nm相当の凸状欠陥の検出数が一桁レベルのものを選定した。選定したガラス基板を用いて、以下のようにバイナリマスクブランクを作製した。
上記ガラス基板上に、遮光膜として、MoSiN膜(遮光層)、MoSiN膜(表面反射防止層)をそれぞれ形成した。
具体的には、MoとSiとの混合ターゲット(Mo:Si=13at%:87at%)を用い、ArとN
2との混合ガス雰囲気で、モリブデン、シリコン、窒素からなるMoSiN膜(膜組成比 Mo:9.9at%,Si:66.1at%,N:24.0at%)を47nmの膜厚で形成した。
【0087】
次いで、Mo:Si=13at%:87at%のターゲットを用い、ArとN
2との混合ガス雰囲気で、モリブデン、シリコン、窒素からなるMoSiN膜を13nmの膜厚で形成した。遮光膜の合計膜厚は60nmとした。
遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
【0088】
次に、上記MoSi系遮光膜の上に、以下のCr系エッチングマスク膜を成膜した。
具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)との混合ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚5nmのCrN膜(膜組成比 Cr:75.3at%,N:24.7at%)を成膜した。なお、遮光膜の各層とCr系エッチングマスク膜の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
【0089】
以上のようにして、ガラス基板上にMoSi系遮光膜とCr系エッチングマスク膜を積層したマスクブランクに対し、マスクブランクの主表面を60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。次に、欠陥検査を行ったガラス基板の中から、凹状欠陥が検出されず、かつ60nm相当の凸状欠陥の検出数が一桁レベルのものを10枚選定した。選定したマスクブランクの主表面に対して、疑似異物として粒径60nmのPSL粒子を散布した。次に、60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)で60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、凹状欠陥は検出されなかったが、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、3892個検出された。
【0090】
続いて、
図1に示す洗浄装置を用いて超音波洗浄を行った。洗浄水として純水を使用し、周波数が1.6MHzの超音波を印加した。また、超音波洗浄ノズルからマスクブランクの薄膜表面に向かって流下する超音波が印加された洗浄水の流量は1.5リットル/分に調節した。なお、洗浄中のマスクブランク回転数、および洗浄ノズルの移動速度は適宜設定した。
【0091】
以上の条件で5分間の超音波洗浄を行った。洗浄後のマスクブランクの主表面を上記60nm感度の欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)を用いて、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥および凹状欠陥について欠陥検査を行った。その結果、凹状欠陥は検出されなかったが、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、70個検出された。
同様にして、全部で10枚のマスクブランクに対して、疑似異物の散布、洗浄および欠陥検査を行った。
【0092】
実施例1−1と同様に、洗浄を終えた10枚のマスクブランクについて、前述の関係式に基づき、洗浄後のマスクブランク主表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出した結果、98.2%と高いパーティクル除去率が得られ、高い洗浄効果が得られることが分かった。
以上のようにして、ガラス基板上にMoSi系遮光膜およびCr系エッチングマスク膜を有するバイナリマスクブランクを作製した。
【0093】
次に、上記のバイナリマスクブランクを用いて、バイナリマスクを作製した。
まず、上記マスクブランク上に、レジスト膜として、電子線描画用化学増幅型ポジレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。上記レジスト膜を塗布後、所定の加熱乾燥処理を行った。レジスト膜の膜厚は100nmとした。
【0094】
次に上記マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンをマスクとして、エッチングマスク膜のエッチングを行った。ドライエッチングガスとして、Cl
2とO
2の混合ガスを用いた。続いて、エッチングマスク膜に形成されたパターンをマスクとして、上記MoSi系遮光膜(MoSiN/MoSiN)のエッチングを行って遮光膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとして、SF
6とHeの混合ガスを用いた。
【0095】
次に、残存するレジストパターンを剥離し、さらに上記エッチングマスク膜パターンをエッチングにより除去した。
こうして得られたMoSi系バイナリマスクは、32nmハーフピッチの微細パターンが良好なパターン精度で形成されていた。
また、得られたバイナリマスクをアルカリ薬液中に20分間浸漬、洗浄した後、再度、マスク欠陥検査装置を用いて、バイナリマスクの欠陥検査を行った結果、マスクパターンのない透光部に凹状欠陥は検出されなかった。また、パターンの脱落も検出されなかった。従って、上記のガラス基板上にMoSi系遮光膜およびCr系エッチングマスク膜を積層したマスクブランクに対し、本発明による超音波洗浄を行っても、ガラス基板内部に潜傷が発生していないことが確認できた。
【0096】
(比較例1)
超音波洗浄において、洗浄水に印加する超音波の周波数を、1.5MHzに変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、洗浄能力の評価を行った。
実施例1−1と同様に、洗浄前および洗浄後の基板主表面の欠陥検査を行い、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出した。その結果、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、3119個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、37個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で98.8%と高いパーティクル除去率であり、高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0097】
しかし、実施例1−1と同様に、洗浄を終えたガラス基板をアルカリ薬液中に20分間浸漬、洗浄した後、再度、ガラス基板の主表面の欠陥検査を行った結果、10枚中2枚の基板について凹状欠陥が検出された。つまり、洗浄前の基板表面には凹状欠陥は検出されていないため、上記の比較例による超音波洗浄を行った場合に、ガラス基板内部に潜傷が発生し、これがアルカリ薬液の作用により凹欠陥として顕在化してしまうことが確認できた。
【0098】
(比較例2)
実施例2と同様にして光半透過膜と遮光膜を積層したマスクブランクに対し、洗浄水に印加する超音波の周波数を、1.5MHzに変更したこと以外は実施例2と同様にしてマスクブランクの超音波洗浄を行った。
実施例2と同様に、洗浄前および洗浄後のマスクブランク主表面の欠陥検査を行い、洗浄後のマスクブランク主表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出した。その結果、洗浄前の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、2774個検出された。一方、洗浄後の基板主表面の欠陥検査では、凹状欠陥は検出されず、60nm相当以上の大きさの凸状欠陥は、22個検出された。さらに、洗浄後の基板表面における粒径60nm相当以上のパーティクルの除去率を算出したところ、10枚のガラス基板の平均で99.2%と高いパーティクル除去率であり、高い洗浄効果が得られることが分かった。
以上のようにして、ガラス基板上に光半透過膜と遮光膜の積層構造のパターン形成用薄膜を有する位相シフトマスクブランクを作製した。
【0099】
次に、実施例2と同様に、上記の位相シフトマスクブランクを用いて、ハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。
得られた位相シフトマスクをアルカリ薬液中に20分間浸漬、洗浄した後、再度、位相シフトマスクの表面の欠陥検査を行った結果、マスクパターンのない透光部に凹状欠陥が検出された。つまり、使用したガラス基板表面にはもともと凹状欠陥は検出されていないため、上記のガラス基板上に光半透過膜と遮光膜を積層したマスクブランクに対し、上記の比較例2による超音波洗浄を行った場合に、ガラス基板内部に潜傷が発生し、この潜傷が透光部ではアルカリ薬液の作用により凹欠陥として顕在化してしまうことが確認できた。
【0100】
従って、比較例2では、マスクブランクの製造時には確認できない潜傷の発生が、このマスクブランクを用いて転写用マスクを作製した後に、凹欠陥として顕在化してしまうことで初めて発見されるという重大な問題が発生するため、マスクブランクの洗浄の場合、ガラス基板内部に潜傷を発生させないことの重要性が非常に高い。これに対し、本発明によれば、前述したように、マスクブランクの洗浄時にガラス基板内部に潜傷が発生することを抑制できるため、このマスクブランクを用いて転写用マスクを作製した後に、潜傷が凹欠陥として顕在化して初めて発見されるという問題が生じることはなく、本発明による効果は非常に大きい。