(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金型はバネを用いた金型であって、最大型締力の10〜50%の型締力が検出されたオフセット位置Eにて、成形サイクル毎または成形サイクル複数回につき1回、制御原点を補正することを特徴とする請求項1に記載の薄板の射出プレス成形方法。
固定金型と可動金型の間に圧縮可能なキャビティが形成されるアプローチ位置Fに可動盤を停止させ、前記キャビティに射出された溶融樹脂を可動盤を前進させて圧縮する薄板の射出プレス成形装置において、
金型は周囲の可動枠部が中央のコアブロックに対して相対的に移動され型当接後にキャビティに射出された溶融樹脂を圧縮可能な金型であって、
パーティング面当接位置Cと前記コアブロックが前記可動枠部に対してこれ以上前進できなくなる位置である型前進限位置Dとの間に設定される前記アプローチ位置Fへの可動盤の位置決め制御は、
前記型前進限位置Dを越えて更に型閉方向に可動盤を移動させ、最大型締力以下の設定型締力が検出されたオフセット位置Eにて可動盤を停止して制御原点を補正し、
前記オフセット位置Eから設定値分だけ型開方向に移動させることにより行うことを特徴とする薄板の射出プレス成形装置。
【背景技術】
【0002】
導光板に代表される樹脂製の薄板の成形は、射出圧縮成形の一種である射出プレス成形により行われることが多い。射出プレス成形では固定金型と可動金型の間に圧縮可能なキャビティが形成されるアプローチ位置に可動盤を停止させ、前記キャビティに射出された溶融樹脂を圧縮して成形を行う。従って射出プレス成形は、成形金型内のキャビティが拡大された状態で射出開始でき、導光板等の薄板の成形に適した成形方法である。
【0003】
射出プレス成形において、前記アプローチ位置へ可動金型を停止する方法については二つの方法がある。一つ目の方法は、型開位置からそのままアプローチ位置まで可動金型を移動させて停止させる方法である。また二つ目の方法は、可動金型を一旦、型当接させてから開き方向に移動させて、アプローチ位置に停止させる方法である。前者の方法については、可動金型を一旦型当接位置まで移動させてから開く工程がないので、成形サイクルを短縮することができるというメリットがあり、ディスク成形などでは採用されている。しかしながら前者の方法は、可動金型は比較的高速で目標位置に到達され、型同士が当接していない状態で停止されるので、アプローチ位置への停止精度に点で問題があった。また後者の方法は、アプローチ位置へ到達するまでの時間は長くなるがアプローチ位置への停止精度の点では優れている。
【0004】
ところで射出プレス成形を含む射出成形全般における問題として、成形開始時から成形サイクルを重ねるにつれて成形金型を中心に、固定盤、可動盤、タイバ、ベッドなどの各部材が加熱され、熱膨張を起こし成形に影響を与えるという問題がある。このような成形金型等の熱膨張の問題に対処するものとして、特許文献1、特許文献2に記載されたものが知られている。
【0005】
特許文献1に記載されたものは、型締完了確認後に型位置検出手段によって検出された可動金型の位置に基づいて型厚寸法を補正するものである。しかし特許文献1は、一般的な射出成形に関するものであって射出プレスに関するものではない。そのため段落番号0037に記載されるように型厚補正のための型位置データのサンプリングが型締完了後の大きな圧締力を及ぼした状態で行われる。また特許文献1は射出プレス成形におけるアプローチ位置に可動盤等をどのようにして移動させ停止させるかを含めた開示がなく、射出プレス成形には適用することができないものであった。また特許文献2に記載されたものは、射出プレス成形における型厚寸法を補正するものであるが、前記の型開位置からそのままアプローチ位置まで可動金型を移動させて停止させる方法に関するものであり、次のような問題を有するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち特許文献2では、前記のように可動金型は比較的高速で目標位置(アプローチ位置)に到達し、型同士が当接していない状態で停止されるので、上記のようにアプローチ位置への停止精度の点で問題があった。また測定された位置は、記憶されて補正に用いられるが、測定された成形サイクルにおいては反映されずに次回の成形サイクルに用いられる。そのため各成形サイクルについては、測定された成形に位置が反映されずに、成形品の精度が低くなりがちである。
【0008】
そこで本発明では、成形金型等が熱膨張の影響を受けた場合にも、正確なアプローチ位置に可動金型を停止でき、良好な射出プレス成形を実施可能な薄板の射出プレス成形方法および薄板の射出プレス成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
固定金型と可動金型の間に圧縮可能なキャビティが形成されるアプローチ位置
Fに可動盤を停止させ、前記キャビティに射出された溶融樹脂を可動盤を前進させて圧縮する薄板の射出プレス成形方法において、
金型は周囲の可動枠部が中央のコアブロックに対して相対的に移動され型当接後にキャビティに射出された溶融樹脂を圧縮可能な金型であって、
パーティング面当接位置Cと
前記コアブロックが前記可動枠部に対してこれ以上前進できなくなる位置である型前進限位置Dとの間に設定される前記アプローチ位置Fへの可動盤の位置決め制御は、
前記型前進限位置Dを越えて更に型閉方向に可動盤を移動させ、最大型締力以下の設定型締力が検出されたオフセット位置Eにて可動盤を停止して制御原点を補正し、
前記オフセット位置Eから設定値分だけ型開方向に移動させることにより行うことを特徴とする薄板の射出プレス成形方法。
【0010】
本発明の請求項2に記載の
薄板の射出プレス成形方法は、請求項1において、
金型はバネを用いた金型であって、最大型締力の10〜50%の型締力が検出されたオフセット位置
Eにて、成形サイクル毎または成形サイクル複数回につき1回、制御原点を補正することを特徴とする。
【0011】
固定金型と可動金型の間に圧縮可能なキャビティが形成されるアプローチ位置Fに可動盤を停止させ、前記キャビティに射出された溶融樹脂を可動盤を前進させて圧縮する薄板の射出プレス成形装置において、
金型は周囲の可動枠部が中央のコアブロックに対して相対的に移動され型当接後にキャビティに射出された溶融樹脂を圧縮可能な金型であって、
パーティング面当接位置Cと
前記コアブロックが前記可動枠部に対してこれ以上前進できなくなる位置である型前進限位置Dとの間に設定される前記アプローチ位置Fへの可動盤の位置決め制御は、
前記型前進限位置Dを越えて更に型閉方向に可動盤を移動させ、最大型締力以下の設定型締力が検出されたオフセット位置Eにて可動盤を停止して制御原点を補正し、
前記オフセット位置Eから設定値分だけ型開方向に移動させることにより行うことを特徴とする薄板の射出プレス成形装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薄板の射出プレス成形方法および射出プレス成形装置は、固定金型と可動金型の間に圧縮可能なキャビティが形成されるアプローチ位置
Fに可動盤を停止させ、前記キャビティに射出された溶融樹脂を可動盤を前進させて圧縮する薄板の射出プレス成形方法および射出プレス成形装置において、
金型は周囲の可動枠部が中央のコアブロックに対して相対的に移動され型当接後にキャビティに射出された溶融樹脂を圧縮可能な金型であって、パーティング面当接位置Cと
前記コアブロックが前記可動枠部に対してこれ以上前進できなくなる位置である型前進限位置Dとの間に設定される前記アプローチ位置Fへの可動盤の位置決め制御は、前記型前進限位置Dを越えて更に型閉方向に可動盤を移動させ、最大型締力以下の設定型締力が検出されたオフセット位置Eにて可動盤を停止して制御原点を補正し、前記オフセット位置Eから設定値分だけ型開方向に移動させることにより行うので、各成形サイクル時に正確なアプローチ位置に可動金型を停止できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の射出プレス成形装置11の概略について、
図1を参照して説明する。射出プレス成形装置11は、ベース12上の一側に設けられた型締装置13とその他側に設けられた射出装置14から基本的な部分が構成される。射出装置14は公知のものであり、加熱筒内に設けられたスクリュにより樹脂材料を可塑化し、可塑化された溶融樹脂をノズルから射出可能なものである。固定盤15の反可動盤側の面の中央に形成されるノズル孔15aの両側の位置に、ノズルタッチ機構16のシリンダ機構または電動機構が取付けられている。また射出装置は、プリプラ式の射出装置などを用いてもよい。
【0015】
型締装置13について説明すると、ベース12上には、固定金型19が取付けられる固定盤15が配設されている。また固定盤15に対して一側寄り(反射出装置側)のベース12上には受圧盤18が配設されている。固定盤15と受圧盤18はそれぞれの四隅近傍がナット36により固定されたタイバ20により連結されている。また固定盤15と受圧盤18との間には、可動金型22が取付けられる可動盤21が型開閉方向に移動可能に設けられている。4本のタイバ20の材質や固定盤15や受圧盤18への固定方式については公知のものである。射出プレス成形装置11は、上記の構造を備えるので射出圧縮成形(型閉状態から射出を行う場合)や、一般的な射出成形にも利用できる。
【0016】
固定盤15と固定盤15のベース12への取付けについて説明する。固定盤15の両側面の外側には内側に向けて水平方向に爪状の突出部がある案内部材23がボルト28によりベース12に固定されている。そして固定盤15の側面の凹部に前記案内部材23の突出部が挿入されている。固定盤15は、ボルト等によりベース12に固定されておらず、案内部材23によりガイドされ型開閉方向への移動が制限されない形となっている。従ってここでは固定盤15という名称を用いるが、厳密な意味では固定金型19が取付けられるがベース12に対して固定されていない盤である。
【0017】
次に受圧盤18と型締シリンダ37について説明する。受圧盤18は型締機構である型締シリンダ37をベース12上で載置する盤であって、中央部に型締シリンダ37のシリンダ部38が固定されている(本実施形態において受圧盤18は型締シリンダ37の一部でもある)。そして図示は省略するがシリンダ部38のシリンダ筒37の内部には高速でラム39を前進させる型閉機構であるブースタシリンダと、型開機構および型締機構である大径の増圧シリンダのピストンが設けられ、前記ピストンに固定されたラム39が可動盤21の背面21bの中央部に固定されている。従って本実施形態の型締機構は、可動盤21の中央部に直接加圧力が加えられることにより固定金型19と可動金型22を型締する方式であり、可動盤の外側近傍にリンクが取付けられるトグル型締装置と比較すると型締力により可動盤21に反りが発生することが少ない。型締シリンダ37の油圧機構については説明を省略するが、サーボバルブを用いて高精度な制御が可能なものが望ましい。なお本発明の型締装置は、前記のトグル型締装置やハーフナットを用いた型締シリンダ方式等の他の型締機構を除外するものではない。
【0018】
次に受圧盤18のベース12への取付けについて説明する。受圧盤18の下部の両側には、型開閉方向と直交する方向に取付部29がそれぞれ張出している。そして取付部29には上下方向に貫通孔が形成されている。そして貫通孔の上方から下方のベース12に向けてショルダーボルト32が挿通され、受圧盤18がデース12に取付けられている。また受圧盤18の下面中央部は、受圧盤18を軸支する軸支部である球面軸受34を介してベース12に取付けられている。従って受圧盤18は、ベース12に対して型開閉方向には移動不可能となっているが、球面軸受34の中心を中心に盤の角度が僅かに変更可能となっている。なお受圧盤18の下方のボス部をベース12側の孔に挿入することによっても、受圧盤18を、ベース12に対して型開閉方向には移動不可能であって僅かに角度変更させることも可能である。また型締シリンダ37のシリンダ部38は反固定盤側に向けて一定の長さがあり、その後端には受圧盤18の角度調整機構40が取付けられている。そして受圧盤18は、角度調整機構40により、盤の角度が各方向に変更可能となっている。
【0019】
次に可動盤21について説明する。可動盤21は一定の板厚を有する盤体であり、その前面は可動金型22の取付面21aであり、背面21bにはラム39が固定されている。
図1に示されるようにベース12上の固定盤15と受圧盤18の間であって、固定盤15の側面の位置よりも外側の位置には、リニアガイド機構57のガイドレール58が型開閉方向の軸Xとそれぞれ平行に1本づつ設けられている。一方可動盤21の下面両側の脚部59にはリニアガイド機構57のハウジング60が固定されている。そして可動盤21の脚部59は、固定盤側と受圧盤側にそれぞれ張出して設けられており、脚部59の固定盤側と受圧盤側にそれぞれハウジング60が取付けられている。可動盤21の脚部59へのハウジング60の取付けは、図示しない型開閉方向と直交しかつ水平方向に設けられた偏芯軸を介して取付けられている。従って前記偏芯軸を回転させ固定させることにより可動盤21に対してハウジング60の上下高さを変更させることができ、可動盤21の高さが調節できるようになっている。
【0020】
また可動盤21の四隅近傍にはタイバ20を挿通する貫通孔56が形成されている。本実施形態では可動盤21の貫通孔56にはブッシュは挿入されておらず、可動盤21は型締時も含めて直接タイバ20に負荷がかからない非接触状態に設けられている。換言すれば可動盤21はリニアガイド機構57によってベース12上に直立し、リニアガイド機構57のみにガイドされて移動されるようになっている。なお可動盤についてもガイドブッシュに介してタイバに挿通される公知の形式のものでもよく、またはタイバに挿通されないものでもよい。
【0021】
本実施形態では、受圧盤18と可動盤21の間に可動盤21の位置(受圧盤18と可動盤21との距離)を検出する位置センサ42が設けられている。位置センサ42は、
図2における型開完了位置Aと型締位置Gの間の可動盤21の移動を検出する。位置センサ42を設ける位置は、前記のように受圧盤18と可動盤21の間の他、受圧盤18の側方のベース12上の部材(ベース12の一部)と可動盤21の間に設けることが好ましい。実施形態では位置センサ42はリニアスケールが用いられるが、ロータリエンコーダやポテンショメータ等、他の位置センサを用いてもよい。また後述するシリンダ切換位置Cや金型保護開始位置B等はリミットスイッチを用いて設定してもよい。
【0022】
本実施形態のように受圧盤18がベース12に固定され固定盤15が移動する配置の型締装置13において、受圧盤18と可動盤21(または可動金型22)の間に位置センサ42を設けることの長所は、固定盤15にセンサの一方が取付けられないので、固定盤15が傾いたり撓み等により変形したとしてもその影響を受けないことである。また固定盤15(またはその側方のベース12)と可動盤21の間は、金型交換や成形品取出し用のスペースとなるが、位置センサ42がそれらの作業の邪魔にならないという長所がある。しかし欠点としては直接に固定盤15と可動盤21の間の距離を検出していないので、タイバ20の伸びの影響を受けやすいという問題や、
図2、
図5に示されるアプローチ位置F(射出開始前の可動金型22等の待機位置)において射出充填開始され可動盤21が射出圧によって受圧盤18側に向けて後退したとしても、固定盤15も射出装置14側に向けて後退していると、位置センサ42により可動盤21の状態を捉えることが難しいという問題がある。
【0023】
なお本発明において型締装置13における盤の形状や固定方式については前記したものに限定されない。一般的な射出成形機のように固定盤がベースに固定され、受圧盤が型開閉方向に移動可能なものでもよい。固定盤がベースに固定されるタイプでは、固定盤と可動盤の間に位置センサを設けた場合は、金型間の距離をより正確に測定できるとともに、射出プレスのアプローチ位置F付近における射出充填時の可動盤の変位を捉えやすい。またタイバの熱膨張の影響を受けにくいという長所がある。しかし上記のように型締時の固定盤の傾きや撓み等の変形をした際の影響を受ける。
【0024】
更にまた特許文献2のように、固定金型と可動金型の間に位置センサを設ける場合は、金型の熱膨張の影響を受けずに金型間の距離をより正確に測定できるという長所がある。しかし金型からの熱によりセンサが劣化しやすいという欠点がある。また成形される導光板の変更に応じて成形金型が交換されるので、それらの金型毎に位置センサを設ける必要があるという欠点がある。そしてまた成形金型に対して位置センサを着脱可能に設けたとしても、取付および調整に作業時間がかかる。
【0025】
次に本実施形態の射出プレス成形方法において薄物である導光板を成形するのに使用する成形金型19,22について該略を説明する。ここで薄物とは、必ずしもこれに限定されないが目安として、ゲートから端部までの溶融樹脂の流動長さが板厚の30倍以上のものであり、薄さの上限は射出プレスでキャビティ内に充填可能な薄さのものまでを指す。成形品の種類としては、導光板のほか、拡散板、レンズ、光ディスク、ガラスの代用とする板状体、車用部品、テレビの枠材等、各種のものが該当する。
【0026】
成形金型の可動金型22においては、金型本体部61(主型)の略中央にはキャビティ形成面62aが形成されるコアブロック62が固定されている。また金型本体部61には可動枠部63がバネ64を介して取付けられている。そして中央のコアブロック62に対して周囲の可動枠部63は、前記バネ64が伸縮することにより相対的に移動可能に設けられている。そして可動枠部63の固定金型19側の面は固定金型19と当接するパーティング面63aとなっている。また可動金型22には図示しないゲートカッタ部材やエジェクタ機構や温調流路が配設されている。従って本発明において可動盤21と可動金型22の金型本体部61およびコアブロック62は一体であり共に移動する。
【0027】
一方固定金型19においては、キャビティ形成ブロック65と当接ブロック66は、金型本体部68(主型)に固定されている。キャビティ形成面65aが形成されるキャビティ形成ブロック65の周囲に当接ブロック66が配設され、可動金型22のコアブロック62のキャビティ形成面62aとキャビティ形成ブロック65のキャビティ形成面65aが対向する位置に設けられている。そして当接ブロック66の当接面であるパーティング面66aと可動金型22の可動枠部63の当接面であるパーティング面63aが当接され、その内側にキャビティ67が形成されるようになっている。また固定金型19には、図示しないスプルブッシュや温調流路が形成されている。可動金型22の可動枠部63は、コアブロック62に対して相対的に移動されることから、前記型当接後にキャビティ形成面65aに対するキャビティ形成面62aの距離が可変となり、キャビティ67内の溶融樹脂が圧縮可能となっている。
【0028】
また本発明に使用される成形金型は、上記のパーティング面63a,66a同士が当接される射出プレス金型(圧縮成形金型)以外に、可動金型のコアブロックが固定金型のキャビ部に挿入されて容積が可変のキャビティが形成される、いわゆるインロー金型という金型も使用可能である。インロー金型の場合は可動金型全体が、固定金型に対して移動してキャビティ内の溶融樹脂が圧縮される。
【0029】
次に本発明の射出成形装置11による射出プレス成形方法、とりわけアプローチ位置F等の設定についてまず説明する。上記の背景技術の欄において記載したように、射出成形(射出プレス成形を含む)の場合、成形を開始してから成形サイクルを重ねる間に、成形金型や射出プレス成形装置11の各部の温度が上昇し、熱膨張するという問題がある。また射出プレス成形の場合、圧縮を開始する際に固定金型19から可動金型22を離隔した位置であってキャビティ67の容積が拡大したアプローチ位置Fに正確に可動金型22を停止させる必要がある。しかし前記のように成形金型等が熱膨張すると固定金型19と可動金型22が当接する位置等が変更されてしまい、アプローチ位置Fから型締位置Gまでの実質的な距離が変更されてしまうという問題がある。
【0030】
そこでまず最初にオフセット位置Eを検出するための設定型締力fを設定入力する。本実施形態では設定型締力fは、型締シリンダ37またはその管路における図示しない圧力センサにより検出される油圧の値を設定入力する。この設定型締力fは最大型締力以下であって、射出プレス成形装置11の大きさ等により相違するが最大型締力の5〜50%、本実施形態のようにバネを用いた金型にあっては10〜50%の間とすることが望ましい。前記設定型締力Fは、最大型締力(100%)としても成形においては問題ないが無駄が多い。オフセット位置Eを検出する設定型締力fは、金型に応じて作業員が入力するようにしてもよく、機械出荷時から最大型締力との関係で一定の比率に設定しておいてもよい。そしてオフセット位置Eが位置センサ42とその検出値を用いて制御を行うコントローラにおける制御原点0となる。次にオフセット位置Eから型開方向への距離により、型前進限位置D、アプローチ位置F、シリンダ切換位置C、金型保護開始位置B、型開閉の高速・低速切替位置、型開完了位置Aなどを設定入力する。
【0031】
アプローチ位置Fは射出プレス成形において、固定金型19と可動金型22の間に圧縮可能なキャビティ67が形成される位置(射出前の可動盤21等の待機位置)であって、
図2および
図5に示されるように、型前進限位置Dやオフセット位置Eよりも可動金型22が後退した位置に設定される。換言すれば、型前進限位置Dに対して溶融樹脂が圧縮されるストロークを加えた位置となる。そして本実施形態ではアプローチ位置Fは、オフセット位置Eを0として型開位置に向けて正の数で設定される。従って金型の熱膨張が生じたとしても、オフセット位置Eさえ修正すれば、常時固定金型19に対して一定の距離を隔てたアプローチ位置Fに可動盤21や可動金型22のコアブロック62等を停止することができる。またオフセット位置Eからアプローチ位置Fまではごく僅かの距離であるので、可動盤21および可動金型22の金型本体部61等をサーボバルブ等のクローズドループ手段によりごく低速で移動させればよく、停止精度が向上する。
【0032】
またシリンダ切換位置C(LS−C)は、型締シリンダ37のうちのブースタシリンダのみによる型閉作動に加えて増圧シリンダによる型締作動を追加する位置であり、固定金型19と可動金型22のパーティング面66a,63aが当接される位置に設定される(厳密には完全に一致しない場合もある)。トグル機構を用いた型締装置の場合はシリンダ切換位置Cの設定はされないが、リンクの伸張に応じて可動金型の前進量が減少する代わりに型締力が増大するので、最適の位置で型の当接が行われるように調整がなされる。
【0033】
次に
図2ないし
図5により、本発明の射出成形装置11による射出プレス成形方法、取分けアプローチ位置Fへの可動盤21の位置決め制御を成形サイクルに沿って説明する。まず型閉用のブースタシリンダを作動させ、型開完了位置Aから可動盤21と可動金型22の型閉を行う(S1)。金型保護開始位置Bからシリンダ切換位置C(パーティング面当接位置)までの間は、型閉金型保護区間であって、型閉用のブースタシリンダに送る作動油に圧力制限を行って、樹脂等の異物の挟み込み等による金型破損を防止する。その際には可動盤21の金型保護開始位置Bを通過と同時にタイマにより計時を行い所定時間経過してもシリンダ切換位置Cに到達しない場合は異常と判断して機械を停止する(
図3のフローチャートでは型閉金型保護区間についてはフローを省略する)。そしてシリンダ切換位置C(LS−C)に到達すると(S2)、図示しないサージバルブを閉鎖することによりタンクからの増圧シリンダ内への送油は停止され、代わりにポンプから増圧シリンダへ高圧の作動油が供給され、増圧が開始される(S3)。
【0034】
これらの金型保護開始位置B、シリンダ切換位置Cは、前回の成形時のオフセット位置Eにおいて補正した原点0からの値に設定値を加えた値により演算された位置に制御される。しかし前回までに複数回成形された際のオフセット位置Eの平均値に設定値を加えた値により演算された位置を用いて制御してもよい。
【0035】
更にシリンダ切換位置Cから可動金型22のコアブロック62等を前進させ、コアブロック62が最前進し、型前進限位置Dに到達するまでの間は、射出プレス金型保護区間であって、型締シリンダ37(ブースタシリンダおよび増圧シリンダ)に送る作動油を可動金型22の最低限バネ64を圧縮可能な値に圧力制限を行って、金型間のカジリ、キャビティ67内の樹脂残留等による金型破損を防止する。その際にはバネ64の力に対抗して最大型締力の5〜20%程度の型締力が加えられ、その分タイバ20が伸張する。そしてその際、次に記載する型前進限位置Dに到達するまでに金型保護異常値を検出した場合(S4)は、金型保護を働かせて装置を停止する(S13)。また所定時間がタイムアップしても前記型前進限位置Dに到達しない場合(S5)についても、金型保護を働かせて装置を停止する(S13)。
【0036】
型前進限位置Dは、前回のオフセット位置Eや、前回までのオフセット位置Eの平均値から予め設定された僅かに型開側の位置に設けられ、可動金型22の可動枠部63が相対的に後退して可動枠部63と金型本体部61の間のバネ64がこれ以上収縮できなくなる位置(コアブロック62が可動枠部63に対してこれ以上前進できなくなる位置)と略一致する位置か、その位置よりも僅かに型閉側の位置に設けられる。そして型前進限位置Dに到達すると射出プレス金型保護区間は終了し(S6)、更に可動盤21を型閉方向に移動させようとするとタイバ20の伸びが顕著になり油圧シリンダ等の昇圧も急速に進行する。なお前進限位置Dの設定は必須ではなく、タイマ等により射出プレス金型保護区間を終了させ、その後に設定型締力fが検出された際は、オフセット位置Eに到達したと判断するようにしてもよい。なお
図4においてシリンダ切換位置Cに対して前進限位置Dの固定盤15の位置が右側に記載されているのは、固定盤15が射出装置14の方向に移動したことを示している。固定盤がベッドに対して固定されたタイプでは型締力の上昇とともに受圧盤が後退する。
【0037】
そして次に型締シリンダ37(またはその管路)に設けられた圧力センサにより予め設定された設定型締力fの値が検出されると(S7)、オフセット位置Eに到達したと判断して可動盤21の前進を一旦停止させる(S8)。オフセット位置Eや後述するアプローチ位置Fにおける可動盤21等の位置や成形金型の状態は、
図5に示される通りである。オフセット位置Eを検出するための設定型締力fはほとんどの場合、最大型締力以下であるので、成形サイクルに与える影響は僅かであり、エネルギーのロスも小さい。しかし型当接ではなく、一定以上の設定型締力fを加えるので、金型間の摩擦による停止位置のムラなどを排除して、安定的な位置を求めることができる。
【0038】
本実施形態においてはオフセット位置Eにおいて位置センサ42によって検出された値nが0となるよう(n→0)、制御原点0を成形サイクルごと毎回補正し更新する(S9)。その理由は、成形を重ねるにつれて成形金型が熱膨張するが、そのまま同じ設定値で成形しているとアプローチ位置Fが型締位置Gに近づくことになる。そしてその結果、型締力が必要以上に加わってしまい、成形品が薄くなったり未充填に生じる。また型締力が必要以上に加わるため機械や金型を破損や寿命を縮めたりするからである。なおオフセット位置Eにおける制御原点0の更新は、成形回数複数回につき1回、または数学的に偏差を用いて行うようにしてもよい。更には時間の経過、金型の温度変化といった所定の条件に応じて、オフセット位置Eを測定して制御原点を補正するものでもよい。ただし毎回オフセット位置Eを補正した方が、オフセット位置Eにおいて修正した制御原点0に対してアプローチ位置Fまでの設定値aを加えてアプローチ位置Fに可動盤21等を停止させるので、固定金型15との関係において可動金型22をより正確なアプローチ位置Fに停止することができる。また位置センサ42の制御原点0の更新は、本実施形態のようにオフセット位置Eを0位置として更新することが好ましいが、他の位置を0位置とし、オフセット位置Eを常に同じ数値に更新するものでもよい。
【0039】
オフセット位置Eにおいて制御原点0がリセットされたら(S9)、次に型締シリンダ37の開き側に作動油を送り、可動盤21および可動金型22(金型本体部61とコアブロック62)を型開方向に移動させる(S10)。そして型開中に前記オフセット位置Eから型開方向に予め設定値aだけ離隔したアプローチ位置Fが検出されたら(S11)、可動盤21等の型開を停止させる(S12)。このことにより成形金型が熱膨張しても、常時固定金型19に対して可動金型22のコアブロック62を一定距離隔てたアプローチ位置Fに停止させることができる。これらの停止制御は、位置センサ42の検出値をクローズドループ制御してサーボバルブを制御することにより正確に行うことができる。そしてアプローチ位置Fにおいては型締シリンダ37の型締側と型開側は両方作動油が封入されて均衡した状態にある。
【0040】
そしてアプローチ位置Fでは、固定金型19のパーティング面66aに対して可動金型22の可動枠部63のパーティング面63aが当接されバネ64が閉めシロがある状態で、容積可変のキャビティ67に対して射出装置14から溶融樹脂の射出(射出充填)を行う。本実施形態ではスクリュの前進位置を検出して、型締シリンダ37を再作動させ、射出充填中に可動盤21等を急速に前進させ、キャビティ67内の溶融樹脂の圧縮を行う。なお射出開始と圧縮開始の関係は、射出中に限らず、射出開始と同時または射出後に圧縮を開始するものでもよい。型締シリンダ37による型締は、所定の条件に従い、一段圧または多段圧で行われるが最初は最大型締力により型締される場合がほとんどである。本実施形態のように固定盤15が移動し、受圧盤18と可動盤21の間の距離を検出することにより可動盤21の位置を求めるものでは、最大型締力により型締された際の可動盤21等の型締位置G(成形品が冷却収縮した後の型締完了位置)については、タイバ20が伸張されてオフセット位置Eよりも更に前進した位置となることがほとんどである(ただし成形品や成形金型の種類によってはこの限りではない。)また特に固定盤が固定され固定盤と可動盤の間の距離を検出するタイプにおける可動盤の型締位置は、オフセット位置よりも締め方向(固定盤の側)となるとは限らない。
【0041】
また本実施形態では、射出プレス成形装置11は型締シリンダ37を用いたものであるが、それ以外に電動または油圧により型締を行うトグル機構を用いたものでもよい。トグル機構の場合、成形金型取付時の金型厚みに応じて受圧盤の位置が決定される。そして可動盤の位置は、型締用のサーボモータのロータリエンコーダまたはクロスヘッドの位置に基づいて検出され、型締力は、タイバセンサ(歪みセンサ)の値やロードセルの値、または電動モータのトルク(電流値)などから検出される。従って成形開始後には前記のタイバセンサ等によりオフセット位置Eを検出し、毎回オフセット位置Eにおけるロータリエンコーダ等の制御原点をリセットする。その際には受圧盤の位置は移動させないので、サイクルが延長されることはない。なお成形開始時から一定以上成形金型が熱膨張すると、オフセット位置Eからのアプローチ位置Fまでの値は正確であっても、リンクの屈曲角度の変化に伴って型締力が変更されてしまうので、その際には受圧盤の位置を後退させることが望ましい。