(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692871
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】発作患者における神経保護治療のためのシチコリンと尿酸を含む薬剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/522 20060101AFI20150312BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20150312BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20150312BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150312BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20150312BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
A61K31/522
A61K31/706
A61P25/00
A61P43/00 121
A61K47/02
A61K47/10
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-502476(P2012-502476)
(86)(22)【出願日】2010年3月1日
(65)【公表番号】特表2012-522025(P2012-522025A)
(43)【公表日】2012年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2010001239
(87)【国際公開番号】WO2010112113
(87)【国際公開日】20101007
【審査請求日】2013年1月29日
(31)【優先権主張番号】P200900856
(32)【優先日】2009年3月30日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】510335465
【氏名又は名称】オスピタル・クリニック・イ・プロビンシアル・デ・バルセロナ
【氏名又は名称原語表記】HOSPITAL CLINIC I PROVINCIAL DE BARCELONA
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】チャモロ サンチェス,エンジェル
【審査官】
澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】
特表平11−511732(JP,A)
【文献】
CHAMORRO ANGEL,URIC ACID ADMINISTRATION FOR NEUROPROTECTION IN PATIENTS WITH ACUTE BRAIN ISCHEMIA,MEDICAL HYPOTHESES,2004年,V62 N2,P173-176
【文献】
AMARO SERGIO,A PILOT STUDY OF DUAL TREATMENT WITH RECOMBINANT TISSUE PLASMINOGEN ACTIVATOR 以下備考,STROKE,2007年 7月,V38 N7,P2173-2175,AND URIC ACID IN ACUTE ISCHEMIC STROKE
【文献】
ROMANOS EDUARDO,URIC ACID REDUCES BRAIN DAMAGE AND IMPROVES THE BENEFITS OF RT-PA IN A RAT MODEL 以下備考,JOURNAL OF CEREBRAL BLOOD FLOW & METABOLISM,2007年 1月,V27 N1,P14-20,OF THROMBOEMBOLIC STROKE
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72,
A61K31/−31/80,
A61K47/00−47/48,
A61K36/00−36/9068,
A61P1/00−43/00
CAplus (STN),
REGISTRY(STN),
MEDLINE (STN),
EMBASE (STN),
BIOSIS (STN),
Pubmed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発作患者の低酸素及び低グルコースによって引き起こされる神経細胞のアポトーシスを含む細胞死を減少させるための、500〜2000mgの尿酸又はその薬学的に許容できる塩、及び500〜2000mgのシチコリン又はその薬学的に許容できる塩の治療上有効な量を含む薬剤組成物。
【請求項2】
尿酸又はその薬学的に許容できる塩の治療上有効な量が1〜4mg/mlの範囲である請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項3】
シチコリン又はその薬学的に許容できる塩の治療上有効な量が2〜4mg/mlの範囲である請求項1又は2記載の薬剤組成物。
【請求項4】
水性媒体を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
水性媒体が生理的血清である請求項4に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
生理的血清が炭酸リチウムとマンニトールを含む請求項5に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
非経口投与で適用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
静脈内に投与されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
尿酸又はその薬学的に許容できる塩とシチコリン又はその薬学的の許容できる塩の同時投与又は連続投与の形態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
尿酸の投与が、炭酸リチウムとマンニトールを含む生理的血清に溶解された1〜4mg/mlの量で実施される、請求項9に記載の薬剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医薬の分野、特に、発作患者の神経保護治療のための、尿酸とシチコリンを含む新しい薬剤組成物及びその使用に言及する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中後の細胞死は、興奮毒性、アシドーシス、炎症、酸化ストレス、虚血辺縁脱分極及びアポトーシスの複合的相互作用の結果である。
【0003】
アポトーシスという用語は、プログラム細胞死(PCD)の同義語として使用される。しかしながら、アポトーシスは元来、PCD後に起こる1セットの形態学的な変化と定義されていた。発生中のニューロンにおいて、これらの変化にはクロマチンの凝集と切断及びいわゆるアポトーシス小体の形成が含まれる。これらの変化は、細胞質小器官の壊死によって引き起こされる炎症やミトコンドリアと細胞膜の破壊を特徴とする形態学的な変化とは異なる。
【0004】
通常、軽度な虚血障害により、壊死を介する代わりにアポトーシス様メカニズムを介して細胞死が生じる。アポトーシスを活性化するものには、酸素フリーラジカル、細胞死受容体への結合物質、DNA損傷、プロテアーゼ活性化及びイオンバランスの調整不良が含まれる。いくつかの実験的研究で、アポトーシスの阻害が虚血性病変の重症度を低下させることが示された。
【0005】
カスパーゼの活性化は、ミトコンドリアのアポトーシスの結果である。ミトコンドリアの機能不全とミトコンドリア膜透過性遷移孔の開口は、細胞質へのシトクロームC放出を介したカスパーゼの活性化をもたらすことがある。しかし、ミトコンドリアの機能不全が虚血性神経細胞死の一因となり得るという他の異なるメカニズムが存在している。ひどく破壊されたミトコンドリアは、呼吸とグルコース酸化に必要な電気化学的勾配を維持できないことがある。このように、ミトコンドリアの機能不全は、エネルギー不全の増悪により虚血障害をさらに悪化させることがある。
【0006】
また、ミトコンドリアの機能不全は他の細胞小器官とDNAを傷害する酸素フリーラジカルを生産する。したがって、ミトコンドリアの機能不全を防ぐ処置は、カスパーゼの阻害よりも強力な神経保護戦略となり得る。
【0007】
細胞内Ca
2+,Na
+及びADPが高レベルになると、ミトコンドリアは有害なレベルの活性酸素種を生産する。他の器官と異なり、ニューロンの内在性の抗酸化物質のレベルは比較的低いので、特に脳は活性酸素種からの損傷を受けやすい。多量の酸素ラジカルは、細胞巨大分子の破壊を引き起こし、それらはアポトーシス細胞死を生じるシグナル伝達機構に関わる。虚血は一酸化窒素合成酵素(NOS)を活性化し、一酸化窒素(NO)の生成を増加させる。そのNOはスーパーオキシドと結合し、強力な酸化剤である過酸化亜硝酸を生成する。また、DNA修復のための酵素であるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP−1)の過剰な活性化によって一酸化窒素の生成と酸化ストレスが関連する。
【0008】
再潅流後、スーパーオキシド、NO及び過酸化亜硝酸の生成が増加する。血管近傍におけるこれらのラジカルの形成は、再潅流によって引き起こされる障害に大きく関与する。これらのラジカルはメタロプロテアーゼ(MMP)を活性化し、基底板中のコラーゲンやラミニンを分解し、血管壁の完全性を破壊し、血液脳関門(HEB)の透過性を増加させる。また、酸化とニトロシル化のストレスは脳血管系への好中球と他の白血球の補充と移動を活性化し、さらに基底板の分解と血管透過を増加させる酵素を遊離させる。これらの事象は脳内での実質性出血、血管性脳浮腫及び白血球浸潤を引き起こすことがある。
【0009】
脳卒中や頭蓋外傷性障害に関連する神経学的な認知障害の予防的処置のためにシチコリンを使用することが知られている。磁気共鳴分光法を用いて実施された研究で示されているように、シチコリンは神経膜の構造的なリン脂質の生合成を促進する。この活性を通して、シチコリンはイオン交換ポンプとそれに組み込まれた受容体の機能などの他の膜メカニズムの機能を改善し、その調節機能は正常な神経伝達に不可欠である。シチコリンは、その膜安定化活性により、脳浮腫の再吸収を助ける性質を有する。実験的研究により、シチコリンが特定のホスホリパーゼ(A1、A2、C及びD)の活性化を抑制し、フリーラジカルの形成を減少させ、膜システムの破壊を防ぎ、グルタチオンなどの抗酸化防御システムを保持することが示されている。
【0010】
シチコリンは神経的なエネルギー保存を保持し、アポトーシスを抑制し、アセチルコリン合成を促進する。また、シチコリンには局所的脳虚血モデルにおいて予防的な神経保護効果があることが実験的に証明されている。臨床的な評価では、シチコリンが急性の虚血性脳卒中患者の機能進化を顕著に改善し、同時に神経イメージングテストにおいて、脳の虚血障害の成長がより小さくなることが示された。外傷性の頭蓋内障害を有する患者では、シチコリンがこれらの患者の回復を促進し、脳震盪後症候群の持続期間と重症度を減少させる。シチコリンは注意レベルと意識レベルを改善し、また、脳虚血に関連する記憶喪失及び認知障害や神経障害に有効である。
【0011】
尿酸は、タンパク質のチロキシン残基をニトロシル化する際に細胞を傷害するスーパオキシドアニオンと一酸化窒素の反応を妨げる強力な抗酸化物質である。尿酸(UA)の血漿中濃度はビタミンC又はEなどの他の抗酸化物質よりも約10倍高く、その抗酸化能力は高い。そのうえ、尿酸(UA)は内皮機能を正常にするための必須酵素である細胞外のスーパオキシドジスムターゼの分解を抑制する。海馬細胞の培養において、尿酸(UA)はグルタミン酸による興奮毒性を抑制し、カルシウム恒常性を安定させ、ミトコンドリア機能を保持させる。また、尿酸(UA)はフェントン反応の阻害も示した。
【0012】
成体ラットにおいて、中大脳動脈の閉塞の2時間前又は再潅流の1時間後の尿酸(UA)の投与は結果として起こる脳梗塞を顕著に減少させ、ROS蓄積を抑制し、過酸化脂質を減少させた。ラットの局所的脳虚血の血栓塞栓症モデルにおいて、尿酸(UA)の投与は神経保護効果があり、この神経保護の効果はrtPAによって得られる有利な効果と相乗的に働く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発作の瞬間における血液中のより高い尿酸レベルと、前記発作によって引き起こされる神経的な重篤性の減少との既存の関係を示す研究がある。
【0014】
神経学の分野での重要な研究の結果として、発明者らは尿酸とシチコリンの共同投与が壊死とアポトーシスに関連する細胞死の保護に対して相乗効果を有することを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明の第一の態様は、発作患者の神経保護治療のための、治療上有効な量の尿酸又はその薬学的に許容できる塩及びシチコリン又はその薬学的に許容できる塩を含む薬剤組成物について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】低酸素・低グルコース(OGD)によって引き起こされる細胞死に対する尿酸とシチコリンの効果を示す。
【
図2】OGDによって誘発されるクロマチン凝集に対する尿酸とシチコリンの効果を示す。
【
図3】OGDの24時間後のカスパーゼ−3の活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、「神経保護治療」は、細胞死へと導く生化学的及び分子的な事象の進行を止めるか又は減速させる治療を意味する。
【0018】
本発明において、「発作患者」は、脳への血流の突然の変化を有する脳卒中患者を意味する。特に、虚血性の発作又は脳梗塞、血栓症、塞栓症、出血性の発作、動脈瘤又は一時的な虚血性発作を有する者について言及する。
【0019】
より特定の態様では、本発明の薬剤組成物の尿酸又はその薬学的に許容できる塩の治療上有効な量は1〜4mg/mlの範囲である。
【0020】
より特定の態様では、本発明の薬剤組成物のシチコリン又はその薬学的に許容できる塩の治療上有効な量は2〜4mg/mlの範囲である。
【0021】
より特定の態様では、本発明の薬剤組成物は水性媒体を含む。より具体的には、その水性媒体は生理的血清である。より具体的には、生理的血清は0.1%の炭酸リチウムと5%のマンニトールを含む。
【0022】
より特定の態様では、本発明の薬剤組成物は非経口投与で適用され、より具体的には、本発明の薬剤組成物は静脈内に投与される。
【0023】
第2の態様では、本発明は発作患者の神経保護治療のための、併用療法における使用のための尿酸又はその薬学的に許容できる塩とシチコリン又はその薬学的に許容できる塩の相乗的組み合わせについて言及する。
【0024】
より特定の態様では、併用療法は尿酸又はその薬学的に許容できる塩とシチコリン又はその薬学的に許容できる塩の同時投与を介して実施され、より特定の態様では、併用療法は尿酸とシチコリンの連続投与を介して実施される。
【0025】
本発明において、「同時投与」とは、尿酸の投与がシチコリンの投与と同時に実施されることを意味する。
【0026】
本発明において、「連続投与」は、シチコリン投与の直前に尿酸を投与すること又は尿酸投与の直前にシチコリンを投与することを意味する。
【0027】
より特定の態様では、尿酸又はその薬学的に許容できる塩の投与は、0.1%の炭酸リチウムと5%のマンニトールを含む生理的血清に溶解された1〜4mg/mlの量で実施される。より特定の態様では尿酸は非経口で投与され、さらに特定の態様ではそれは静脈内に投与される。
【0028】
より特定の態様では、シチコリン又はその薬学的に許容できる塩の投与は500〜2000mgの量で実施される。より特定の態様ではシチコリンは非経口で投与され、さらに特定の態様ではそれは静脈内に投与される。
【0029】
より特定の態様では、併用療法は尿酸とシチコリンの共同投与によって行われる。
【0030】
本発明において、「共同投与」は、尿酸とシチコリンを混合することを意味する。
【0031】
より特定の態様では、シチコリン又はその薬学的に許容できる塩とシチコリン又はその薬学的に許容できる塩の共同投与は本発明の薬剤組成物の形態で行われる。
【0032】
図面の説明
図1は、低酸素・低グルコース(OGD)によって引き起こされる細胞死に対する尿酸とシチコリンの効果を示す。値は中央値±標準誤差(n=4)である。有意差:
*対 対照、$対 OGD。(C:対照;UA:尿酸;Cit:シチコリン;UA+Cit:尿酸+シチコリン;OGD:低酸素・低グルコース)
【0033】
図2は、OGDによって誘発されるクロマチン凝集に対する尿酸とシチコリンの効果を示す(ヘキスト染色)。値は中央値±標準誤差(n=6)である。
【0034】
図3は、OGDの24時間後のカスパーゼ−3の活性を示す。値は中央値±標準誤差(n=2〜3)である。
【0035】
発明の詳細な説明
Sprague‐Dawley系ラットの18日目の胎児胚のニューロン/神経膠の混合培養は、「Petegnief,V.Saura,J.De Gregorio−Rocasolano,N.,and Paul,S.M.(2001)Neuroscience 104,223-234」に記載の通り準備した。その細胞を10%のウシ胎児血清と100μg/mlのゲンタマイシンを加えた最小必須培地(MEM)に懸濁し、前もってポリ−L−リジン(5μg/ml)で覆われた24穴プレート(Nunc,Roskilde,Denmark)に0.6x106細胞/ウエルの密度で置き、95%外気/5%CO
2のインキュベータ中37℃で培養した。4、7及び10日目(DIV)に、in vitro培養液を、B27を加えたMEM培地と部分的に交換した。培養細胞は、11/13日目(DIV)に使用された。11.9mMの尿酸を1.35mM炭酸リチウムと、5%マンニトールで調製した。OGD(低酸素・低グルコース)処理の60分前に尿酸を100μMの濃度で培養液に加え、OGD又は酸素正常状態の間とその後に、対応するHEPES緩衝剤中と培養液中にも存在させた。シチコリンを、OGD又は酸素正常状態の60分前、その間及びその後に、100μMの濃度で加えた。その培養細胞を尿酸単独、シチコリン単独又は両薬剤の組み合わせで処理した。同じ培養細胞は媒体(1.35mM炭酸リチウム、5%マンニトール)で処理した。
【0036】
低酸素・低グルコース(OGD)処理のために、培養細胞を5%CO
2/0.6%O
2の低酸素インキュベータで90分間、グルコースを含まないHEPES緩衝剤(10mM HEPES,pH7.4,135nM NaCl,5mM KCl,1.8 CaCl
2,0.62mM MgSO
4)中でインキュベートした。対照培養細胞は、95%外気/5%CO
2のインキュベータ内で、5.5mM D−グルコースを含む同じインキュベータにおいて酸素正常状態でインキュベートした。低酸素又は酸素正常状態の終了時に緩衝剤を抗酸化物質のないMEM+B27培地に交換し、細胞を95%外気/5%CO
2のインキュベーターに戻した。
【0037】
乳酸デヒドロゲナーゼ活性試験のために、OGDの3時間30分後に細胞死を評価し、次に培地中に放出される乳酸脱水素酵素(LDH)活性を「Wroblewski and LaDue,1995」の変法に従って測定した。基質としてのピルビン酸4.2mMの存在下で、0.75 NADHに続いてリン酸緩衝液(50nM、pH7.4)中で340nmでの吸光度が減少した。
【0038】
ヘキスト染色のために、培養細胞をPBSで洗浄し、それらを4%のパラホルムアルデヒド中で20分間4℃で固定し、PBSで洗浄した。その後、0.1μg/mlの濃度の核染色試薬であるHoechst 33258と共に細胞を30分間インキュベートした。洗浄後、UVライト下で、その細胞を蛍光顕微鏡で調べた。アポトーシスした細胞核の半定量分析は、analySIS softwareを用いて実施した。凝集したアポトーシス細胞核の鮮明な染色と、正常細胞の正常な核の染色とを判別するために、その閾値を選択した。凝集クロマチンの染色に対応する領域(鮮明な染色)を各視野における全体の領域の割合として算出した。結果は対照に対する割合で表わした。
【0039】
カスパーゼ−3活性を測定するために、100μgのタンパクと25μMのAc−DEVD−AMCを基質として用い、「Valencia,A.and Moran,J.(2001)J.Neurosci.Res.64,284−297 Wrobleswski,F.,and LaDue,J.S.(1955)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.90,210-213」に従って評価を行った。ジェミニXSマイクロプレート蛍光分光光度計(Molecular Probles)を用いて、Ac−DEVD−AMCの分解によって生じるAMCの蛍光[励起波長/蛍光波長(excitement/emission) 380/460nm]を2分間隔で30分間モニタリングした。その酵素活性は、蛍光/タンパクのmg/分のトライアングル(triangle)として算出した。
【0040】
グループ間で有意差があるかどうかを調べるために、ポストホックボンフェローニ検定を用いて単変量分散分析(ANOVA)を実施した。有意差:
***P<0.001、
**P<0.01、
*P<0.05 対 対照。$$P<0.01 対 OGD。
【実施例】
【0041】
実施例1:OGDで誘発される細胞死に対する尿酸とシチコリンの効果。
虚血性発作は劇的な細胞死を誘導した。実際には、再酸素添加の3時間30分と正常酸素状態とを比べたとき、乳酸デヒドロゲナーゼの活性が288%(P<0.001)増加した。
図1に示されるように、尿酸単独又はシチコリン単独での処理では虚血状態における細胞生存率は改善されなかった。しかし、両方の組み合わせの処理では細胞死が有意に減少した(OGDに比べて38%、P<0.01)。このことは、同時に両化合物で処理したときの相乗効果を示した。
【0042】
実施例2:尿酸/シチコリンを用いた混合処理は、OGDで誘発されるクロマチンの凝集を抑制した。
クロマチン濃度はアポトーシスの指標であることから、虚血損傷の48時間後にこのパラメータを測定した。正常酸素状態と比べて、OGD処理はアポトーシスした細胞核の数を増加させた。
図2に示されるように、尿酸+シチコリンを用いた混合処理の下で、アポトーシスした細胞核の数は有意に減少し(P<0.01 対 OGD)、それらを組み合わせて投与したときの両化合物の相乗効果を示している。
【0043】
実施例3:尿酸/シチコリンの混合処理はOGDで誘発されるカスパーゼ−3活性を抑制した。
カスパーゼ−3活性は、アポトーシスによる細胞死の原因となり得ることから、発明者らのモデルにおいて、OGDの24時間後の本プロテアーゼの酵素活性を測定した。予備データでは、虚血性発作によりカスパーゼ−3活性が40%増加し、尿酸/シチコリンの混合処理によりこの影響が取り除かれた。
図3は、両化合物の相乗効果を示す。
【0044】
実施例4:尿酸とシチコリンの薬剤組成物
【0045】
【表1】