特許第5692875号(P5692875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5692875-平坦な頂上部を有する光学的構造体 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692875
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】平坦な頂上部を有する光学的構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/054 20140101AFI20150312BHJP
【FI】
   H01L31/04 620
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-532601(P2012-532601)
(86)(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公表番号】特表2013-507756(P2013-507756A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2010065054
(87)【国際公開番号】WO2011042517
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年7月12日
(31)【優先権主張番号】09172546.5
(32)【優先日】2009年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】コー ヘルマンス
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン スラーハー
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/059998(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/112406(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/054 − 31/056
H02S 40/20 − 40/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの活性層と、1つの側面上に幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有し且つ光起電力素子の前記少なくとも1つの活性層の受光面と光学的に接触している透明なカバープレートとを含む光起電力素子であって、前記光学的レリーフ構造体が底面及び単一の平坦な頂上部を含み、これらが少なくとも3つのn角形表面(nは5以上である)によってつながっていることを特徴とする、光起電力素子。
【請求項2】
少なくとも1つの活性層と、第1の側面上に幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有し且つ第2の側面で光起電力素子の前記少なくとも1つの活性層の受光面と光学的に接触している透明なカバープレートとを含む光起電力素子であって、前記光学的レリーフ構造体が底面及び単一の平坦な頂上部を含み、これらが少なくとも3つのn角形表面(nは5以上である)によってつながっていることを特徴とする、光起電力素子。
【請求項3】
光学的レリーフ構造体の底面がm辺の多角形形状であり且つ前記光学的レリーフ構造体が少なくともm+2個の表面を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光起電力素子。
【請求項4】
透明なカバープレートが、隣接する構造体が互いに接触している幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の光起電力素子。
【請求項5】
光学的レリーフ構造体のアレイの表面がコーティングで被覆されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の光起電力素子。
【請求項6】
1つの側面に幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有する透明なカバープレートがガラス又はポリマー材料で作られていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の光起電力素子。
【請求項7】
ポリマーがポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートであることを特徴とする、
請求項6に記載の光起電力素子。
【請求項8】
ポリマーがUV吸収剤及び/又はヒンダードアミン光安定剤によって安定化されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の光起電力素子。
【請求項9】
発光染料が、光学的レリーフ構造体のアレイを含有する透明なカバープレートに存在することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の光起電力素子。
【請求項10】
発光染料が、光学的レリーフ構造体のアレイを含有する透明なカバープレートと光起電力素子の活性層の受光面との間の層に存在することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の光起電力素子。
【請求項11】
発光染料の濃度が、カバープレート表面m当たり及びカバープレート厚さmm当たり染料0.001〜50グラムの間であることを特徴とする、請求項9に記載の光起電力素子。
【請求項12】
発光染料が有機染料又は無機染料であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の光起電力素子。
【請求項13】
発光染料がポリマーを安定化するためのUV吸収剤として作用するが、但し、少なくとも1つの側面上に幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有する透明なカバープレートがポリマー材料で作られていることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の光起電力素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1つの活性層及び少なくとも1つの側面上に光学的構造体のアレイを含有するカバープレートを含み、且つ活性層の受光面と光学的に接触して前記面の反射損失を低減させる光起電力素子に関する。前記プレート又はシートは、発光分子と組み合わせて使用してもよく、これは内側であるか又は前記プレートと接触しており、光起電力素子のスペクトル反応を改善する。
【0002】
光起電力素子は一般に光エネルギーを電気エネルギーに変換するために使用される。これらの素子は、光曝露時に荷電担体を生成する光吸収材料からなる活性層を含有する。現在、光起電力素子において一般的な活性層はシリコンである。しかしながら、例えば、ガリウム砒素(GaAs)、テルル化カドミウム(CdTe)又はジセレン化銅インジウムガリウム(CIGS)などの種々の材料が生じ得る。活性層に生じる荷電は、電気を送る導電性接触子に分離される。活性層の薄く且つ脆い性質のために、これは通常、例えば、ガラス製の透明なカバープレートによって外的影響から保護される。活性層及びカバープレートの両方が光起電力素子への光入射の一部を反射することは当該技術分野から公知である。特に高い屈折率の活性層は、大きな反射損失を引き起こし、これはケイ素の場合、入射光の22%までであり得る。反射光を電気エネルギーに変換することができないので、これらの反射損失は光起電力素子の効率の大幅な低下を引き起こす。
【0003】
光起電力素子の効率を低下させる別の要因は、例えば、紫外線(UV)又は青色光などの通常短波長の活性層の低量子効率である。この低反応は、材料のバンドギャップによって引き起こされる。バンドギャップとは、価電子帯の上部と伝導帯の底部との間のエネルギー差を意味し、そこでは電子は1つのバンドから別のバンドへと飛越すことが可能である。このバンドギャップのために、活性層は最適な波長を有し、その周りでは光エネルギーは最も効率良く電気エネルギーに変換される。最適な波長よりも高い又は低い波長を有する光は、低効率で電気エネルギーに変換される。短波長範囲での光起電力素子のスペクトル反応を低減させ得る第2の効果は、カバープレートによる光の吸収である。カバープレートは通常、可視光に対して透過性であるが、これはUV範囲で吸収することが多い。結果的に、この光は光起電力素子の活性層に到達できず、電気エネルギーに変換できない。
【0004】
これらの反射損失を低減するために、反射防止コーティングを、光吸収材料又はいわゆる活性層の上に適用することができる。反射防止コーティングは、活性層とカバープレートの間の屈折率を有する、単一の四分の一波長層の透明材料からなる。これは理論的に中心波長でゼロの反射率を与え且つ中心周りの広いバンドで波長の反射率を低下させるが、これらの層の処理及び材料のコストは比較的高い。またコーティングを創り出すための処理技術(例えば、化学蒸着)は広範であり且つ時間がかかる。更に、反射防止コーティングはこれを適用する表面上でのみ働く。従って、活性層とカバープレートの両方の反射を、これらの表面のいずれかの上に1つの反射防止コーティングを使用して低減することは不可能である。
【0005】
反射損失を低減する別の方法は、活性層の表面を構造化することである。これは、材料自体の直接的な構造化によって又は前記材料が堆積される基板の表面構造化によって行うことができる。通常ピラミッド又はV字形構造を有する、活性層の構造化によって、活性層での反射損失の低下は、光がパネルに入る機会をより多く与える表面での多重反射により得られる。この効果は活性層の表面での反射損失を低下させ、従って、しばしば反射防止効果と呼ばれる。第2に、この構造は、場合によっては、活性層に吸収されず且つ基板の表面で反射されない光を部分的に捕捉し得る。その結果、活性層による光の吸収の機会が増加する。活性層の構造化は光電池の効率を有意に向上させるが、製造方法は非常に複雑で且つ極めて費用がかかる。湿式化学エッチング、機械的エッチング又は反応性イオンエッチングなどのプロセスは、しばしば所望の効果を実現するために使用されている。活性層の構造化もカバープレートの反射損失を低下させない。
【0006】
先の段落に記載されたのと同じ理論を、ガラスプレート、即ち、カバープレートの光透過性を改善するために使用できることが当該技術分野より公知である。ここで、V字形(G.A. Landis, 21st IEEE photovoltaic specialist conference, 1304-1307 (1990))又はWO03/046617号に開示されたピラミッド構造がガラスプレートに適用されると、前記プレートの反射損失を低下させ、従ってその透過性を高める。これらの構造は、例えば、キャスティング又はプレッシングによってガラスプレートに適用できる。しかしながら、光起電力素子のカバープレートとしてプレートを使用する場合、モデル研究によれば、前記素子の最大効率は6%だけ増加し、これは約30%の反射損失の低下である(U. Blieskeら、3rd World Conference on Photovoltaic Energy Conversion, 188-191 (2003年))。実際には、結果はさらに低く、わずか3%のみ得られる。これらの構造は、活性層の反射損失を幾らか低下させるが、主にカバープレートの反射損失を低下させる。従って、反射損失の全体的な低下、及び光起電力素子の効率の増加は小さい。
【0007】
文献FR2916901号及びさらにWO2008/122047号には、集光装置型の構造体が開示されている。これらの文献の頂上部を切った光学的構造体は、この頂上部を切った光学的構造体の平坦な頂上部に取り付けられた太陽電池に光を集めるために使用される。
【0008】
文献FR2915834号には、太陽パネルの活性層のテクスチャリング方法が開示されている。この方法では、頂上部を切った光学的構造体の層は、ガラスと活性化層の境界面との間に配置されて活性化層をテクスチャリングする。
【0009】
文献FR2916901号、WO2008/122047号及びFR2915834号の全ての場合に、太陽電池は頂上部を切った光学的構造体に取り付けられる。これは、頂上部を切った光学的構造体が太陽電池の活性層とつながっていることを意味する。
【0010】
本発明の課題は、光起電力素子の効率を改善することと、素子の機械的統合性及び屋外耐久性を低下させずに、反射損失、特に活性層の反射損失が更に低減された光起電力素子を提供することである。
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を含む光起電力素子によって達成される。
【0012】
光起電力素子は、少なくとも1つの活性層と、1つの側面上に幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有し且つ光起電力素子の少なくとも1つの活性層の受光面と光学的に接触している透明なカバープレートとを含み、それによって前記光学的レリーフ構造体が底面及び単一の平坦な頂上部を含み、これらは少なくとも3つのn角形表面(nは5以上である)によってつながっている。
【0013】
光起電力素子は、少なくとも1つの活性層と、第1の側面上に幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有し且つ第2の側面で光起電力素子の少なくとも1つの活性層の受光面と光学的に接触している透明なカバープレートとを含み、それによって前記光学的レリーフ構造体が底面及び単一の平坦な頂上部を含み、これらが少なくとも3つのn角形表面(nは5以上である)によってつながっている。
【0014】
カバープレートの第1の側面及び第2の側面は、好ましくは互いにほぼ平行であり、従って第1の側面は第2の側面の反対側である。
【0015】
平坦な頂上部は幾何的構造体の上部領域として定義される。頂上部は単一の小さな平坦領域であり、これは該構造体の1つ以上の表面に配置されている。これが配置されているのは、構造体の表面を横切る底面からの基準の長さが最も長い所である。
【0016】
幾何学的構造体の頂上部を切った部分は、好ましくは幾何学的構造体の平坦な頂上部である。頂上部を切った部分又は平坦な頂上部は、好ましくは光起電力素子の活性層と直接接触していない。
【0017】
透明なカバープレートはたった1つの別個の幾何光学的レリーフ構造体を含有し得るが、好ましいのは、透明なカバープレートが幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有することである。アレイは要素の集まり又は群として理解されるべきであり、この場合、個々の光学的レリーフ構造体は、互いに隣接して配置されるか又は基板上に行及び列に配列されている。好ましくは、アレイは少なくとも4つの幾何光学的レリーフ構造体を含有する。
【0018】
驚くことに、光学的レリーフ構造体を含むカバープレートが、光起電力素子の活性層の受光面の反射損失を低減させることが示され得るが、但し、前記カバープレートは前記活性層の受光側に光学的に接触して配置されている。この要求が満たされない場合、前記プレートを通して前記活性層への透過は、非構造化表面と比較して同等か又はそれより低いように低下する。
【0019】
更に驚くことに、平坦な頂上部を有する光学的レリーフ構造体を有するカバープレートは、衝撃などの機械的応力に対して感度が低いことが見出された。このために、カバープレート自体が頑強であり且つピーク頂上構造を有するカバープレートよりも長い寿命を示す。
【0021】
好ましくは、光学的レリーフ構造体の底面はmの多角形形状を含み且つ光学的構造体が全部で少なくともm+個の表面を有する。
【0022】
本発明による光学的レリーフ構造体は2つの主要な機能を有する:
1.nの多角形底面を介して構造体に入る光は、前記構造体の表面によってその元の方向に少なくとも部分的に反射される。
2.前記構造体の表面を介して構造体に入る光は、少なくとも部分的に透過される。
【0023】
本発明の好ましい実施態様において、単一の構造体は好ましくは、構造体が含まれる頂上部を除いて、全表面の上で収束しなければならない。底面と任意の表面との間の角度が90°以下でなければならないことを特徴とする。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、透明なカバープレートは、隣接する構造体が互いに接触している幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有する。この構造体は、全ての構造体の配向が互いに同じ、交互又はランダムであるように配置され得る。
【0025】
多角形底面の端が円の周辺ライン上にある円によって光学的構造体のn角形底面を描く場合、円の直径Dは好ましくは30mm未満、更に好ましくは10mm未満、最も好ましくは3mm未満である。
【0026】
構造体の高さは、底面の直径Dに依存し、好ましくは0.1D〜2Dの間である。
【0027】
本発明による光起電力素子の好ましい実施態様において、光学的レリーフ構造体のアレイの表面はコーティングで被覆されている。コーティングは防曇コーティング、防汚コーティング、耐引掻きコーティング等であってよい。
【0028】
本発明による光起電力素子の更に好ましい実施態様において、コーティングは光学的レリーフ構造体とは異なる屈折率を有し、コーティングの形状は幾何光学的レリーフ構造体のアレイと相補的であり、そしてコーティングを有する光起電力素子はさらに非レリーフ構造体を有する。例えば、高屈折率の材料で光学的レリーフ構造体を作り出して、被覆後にレリーフ構造体がなくなるようにこれを低屈折率の材料で被覆することが可能である。換言すれば、高屈折率の光学的レリーフ構造体は、低屈折率の材料で「満たされる」。
【0029】
光学的レリーフ構造体を含むカバープレートは、任意の透明な材料で作られてよい。透明な材料は400〜1200nmの範囲内で0.2mm-1未満の線吸収を有する材料として理解されるべきである。好ましくは、光学的レリーフ構造体はポリマー材料で作られている。ポリマー材料の例は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリルアミド又はそれらの任意の組み合わせである。ポリマーは好ましくはUV吸収剤及び/又はヒンダードアミン光安定剤によって安定化される。
【0030】
別の好ましい実施態様において、光学的レリーフ構造体はガラス、例えば、ケイ酸塩ガラス又は石英ガラスで作られている。
【0031】
プレートの厚さは、好ましくは30mm未満、更に好ましくは10mm未満、最も好ましくは3mm未満である。
【0032】
本発明による光学的レリーフ構造体を含むカバープレートは、当該技術分野で公知のプロセス、例えば、射出成形、熱記録、レーザ構造化、フォトリソグラフィー法、粉末プレス成形、キャスティング、粉砕又はホットプレスによって得られてよい。
【0033】
低いスペクトル反応、特に低い波長の、光起電力素子の活性層の影響を克服するために、発光染料を活性層の上又はその上部に適用してよい。前記発光染料は、素子のスペクトル反応を、前記層によって効率的に使用されない波長を、更に効率的に使用される波長に変換することによって改善する。染料の発光分子は短波長を吸収して長い波長で再び発光する。
【0034】
従って、本発明は、発光染料が、光学的レリーフ構造体のアレイを含有する透明なカバープレートに存在することが最初に記載された、光起電力素子にも関する。
【0035】
しかしながら、発光染料の発光分子によって発光された光の一部は、先行技術の光起電力素子の活性層によって使用できない。なぜなら、光が活性層から離れる方向に向かうか、又は光がその高い屈折率のために前記層によって反射されるからである。その結果、発光染料は、実際には、先行技術の光起電力素子の効率を約2%だけ向上させ得る(H.J. Hovelら、Solar energy materials, 2, 19-29 (1979年))。
【0036】
本発明による光起電力素子と当該技術分野で公知の発光染料とを組み合わせた場合、驚くことに、光起電力素子のスペクトル反応が、発光染料の発光分子の単純な付加から予想され得ることを超えて改善されるという相乗効果が生じる。
【0037】
しかしながら、発光分子が透明なカバープレートに付加される場合、前記プレートが400〜1200nmの間の少なくとも1部の波長範囲内で不透明になり得ることに留意すべきである。
【0038】
発光分子を本発明による光学的レリーフ構造体を含む透明なカバープレートに付加する場合、光起電力素子のスペクトル反応は非構造化表面と比較して改善される(図2を参照のこと)。光学的構造体を含む透明なカバープレートは、発光光の反射損失を低減し且つ活性層から発光された発光光を活性層に向け直すことによって、光起電力素子の活性層の受光表面で、発光分子によって発光される光の吸収を増加させる。発光分子は、好ましくはプレートの内部に分布されるが、光学的レリーフ構造体のアレイを含有する透明なカバープレートと、光起電力素子の活性層の受光面との間の分離層にも存在し得る。光学的レリーフ構造体及び/又は発光分子を含有する層を含む透明なカバープレートと、光起電力素子の活性層の受光面との間の光学的接触が要求されている。
【0039】
本発明による光学的構造体のアレイも、要求された発光染料の濃度及び層厚さを低下させ得る。発光染料によって別の波長に変換される光の量は、前記染料によって吸収される光の量に関連し、これは同様にランベルト・ベールの法則による層厚さ及び染料濃度に関連する:
吸収=ε[C]I (1)
ε=モル吸光係数[Lモル−1cm−1
[C]=染料の濃度[モルL−1
I=層厚さ[cm]
【0040】
殆どの入射光が確実に吸収されるために、発光分子は、ε、I又は[C]のいずれかが大きくなるように最適に使用される。εは染料の固有の特性であり且つ変更できないので、[C]は、発光染料がポリマーなどのマトリックス材料への制限された溶解性を有するために制限されており、従って、これは厚い層(I)を有する必要がある。要求される厚い層及び発光染料自体の高い費用のために、これは比較的高価である。
【0041】
従って、本発明による光学的構造体のアレイと組み合わせた発光分子の相乗効果は、出力の増加に制限されない。光学的構造体のアレイも、発光染料を含有する層への入射光の光路長を増大させる。その結果、より低い濃度の発光分子及び薄層を、効率を低下させずに使用することができる。
【0042】
発光分子は、例えば、蛍光又はリン光に使用してよく、前記分子はダウンコンバージョン発光及びアップコンバージョン発光の両方であってよい。有利な分子は蛍光性であり且つ例えば、ペリレン、クマリン、ローダミン、ナフタルイミド、ベンゾキサンテン、アクリジン、アウラミン、ベンズアントロン、シアニン、スチルベン、ルブレン、レシフェリン(leciferin)又はそれらの誘導体であってよい。
【0043】
従って、発光分子を含有する発光染料は好ましくは有機染料である。しかしながら、発光染料は、無機染料であってもよい。好ましくは、発光染料は、透明なカバープレートを形成するポリマーを安定化するためのUV吸収剤として作用する。
【0044】
発光染料は、複数の発光染料の混合物を含んでよい。発光染料の濃度は、好ましくは、カバープレート表面m当たり及びカバープレート厚さmm当たり染料0.001〜50グラムの間にある。
【0045】
光学的接触が達成されるかどうかは、光学的レリーフ構造体のアレイ及び光起電力素子を含む透明なプレートを接続する媒体又はメディアの屈折率に依存する。前記構成要素間にメディアが存在していない場合、光学的接触はデフィニション毎に達成される。他の全ての場合、光学的接触は、構成要素間の媒体又はメディアの屈折率が平均少なくとも1.2である時に達成される。更に好ましくは、媒体又はメディアの屈折率は平均少なくとも1.3であり、最も好ましくは媒体の屈折率は少なくとも1.4である。媒体の屈折率を測定するためには、アッベ屈折計を使用すべきである。
【0046】
例えば、光学的構造体を含む透明なカバープレートがn=1.5(nは屈折率である)のポリメチルメタクリレートで作られ、光起電力素子の活性層がn=3.8(nは屈折率である)のシリコンで作られ、且つこれらの2つの構成要素間の媒体がn=1(nは屈折率である)の空気である場合、光学的接触は達成されない。
【0047】
光学的構造体のアレイを含む透明なカバープレートがn=1.5(nは屈折率である)のポリメチルメタクリレートで作られ、光起電力素子の活性層がn=3.8(nは屈折率である)のシリコンで作られ、且つ媒体がn=1.5(nは屈折率である)の屈折率を有する接着剤である場合、光学的接触は達成される。
【0048】
光学的接触が達成されるかどうかは、透明なカバープレート及び/又は発光分子を含む層と光起電力素子の活性層の受光面との間の距離に依存しない。
【0049】
本発明は、少なくとも1つの活性層と、1つの側面上に幾何光学的レリーフ構造体のアレイを含有し且つ光起電力素子の少なくとも1つの活性層の受光面と光学的に接触する透明なカバープレートとを含み、それによって前記光学的レリーフ構造体が底面及び単一の平坦な頂上部を含み、これらが少なくとも3つのn角形表面(nは3以上である)によってつながっている光起電力素子に関する。本発明を考慮すると、光起電力素子と組み合わせて使用するために、幾何光学的レリーフ構造体のアレイを少なくとも1つの側面上に含むプレートも本発明の範囲内にある。
【0050】
本発明は以下の図面によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、底面及び平坦な頂上部を含み、これらが少なくとも3つのn角形表面(nは3以上である)によってつながっている光学的構造体を概略的に示す。
【0052】
図1に示す通り、この構造体は平坦な頂上部を示し、この平坦な頂上部の寸法は変数である。平坦な頂上部の表面は、1ミクロン〜10mm、好ましくは10ミクロン〜5mm、最も好ましくは100ミクロン〜1mmの寸法であってよい。平坦な頂上部の表面にある全ての点が構造体の底面に対して同じ距離を有することが好ましい。更に、平坦な頂上部の表面(平坦領域)は、底面に対して垂直な直線で測定して、底面までの距離が最も長い所に配置される。これは平坦な頂上部の表面を構成する全ての点が、底面に対して垂直な直線で測定して、底面までの距離が最も長い所に配置されることを意味する。
図1