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特許5692883熱蛍光体、及び熱蛍光放射線検出デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5692883
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】熱蛍光体、及び熱蛍光放射線検出デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/00 20060101AFI20150312BHJP
   G01T 1/11 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C09K11/00 C
   G01T1/11 A
   C09K11/64CPB
   C09K11/67CQE
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-38797(P2014-38797)
(22)【出願日】2014年2月28日
【審査請求日】2014年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(73)【特許権者】
【識別番号】591031430
【氏名又は名称】株式会社千代田テクノル
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】眞正 浄光
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−127930(JP,A)
【文献】 特開2011−052179(JP,A)
【文献】 特開2012−052072(JP,A)
【文献】 特開2012−052070(JP,A)
【文献】 特開2012−052071(JP,A)
【文献】 特開2012−211258(JP,A)
【文献】 Journal of Alloys and Compounds,(2013), 579,259-262
【文献】 Journal of Luminescence,(2013), 144,133-138
【文献】 Indian journal of pure and applied physics,(2006), 44(6),446
【文献】 Indian journal of pure and applied physics,(2008), 46(10),695-697
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
G01T 1/00− 7/12
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を主成分としてなるセラミックスからなり、
微量の発光中心成分を含有し、
上記金属酸化物は、Alと、MgOとSiOとの混合物を含み、
上記発光中心成分は、Cr又はDyである
ことを特徴とする熱蛍光体。
【請求項2】
上記熱蛍光体は板状体であることを特徴とする請求項1記載の熱蛍光体。
【請求項3】
上記Alは、構成成分中10〜98重量%含有される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱蛍光体。
【請求項4】
上記発光中心成分の含有量である上記微量は、熱蛍光体全体中1重量%未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱蛍光体。
【請求項5】
上記発光中心成分がCrであり且つAlの含有量が90〜96重量%であるか、
又は
上記発光中心成分がDyであり、上記金属酸化物がさらにMgO及びFeを含み、且つAlの含有量が10〜30重量%である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱蛍光体。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の熱蛍光体を用いてなる熱蛍光放射線検出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱蛍光体に関し、さらに詳細には、取扱いが容易で、繰り返し利用することが可能で、感度と解像度が高く放射線の測定に用いることができ、ダイナミックレンジが広い熱蛍光体、及び上記熱蛍光体からなる熱蛍光放射線検出デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線検出デバイスは、人間の目では直接見ることができない放射線を可視化する技術であり、放射線線量計、放射線イメージング、放射線治療など科学分野、医療分野、工業分野等の幅広い分野で使用され、種々提案がなされている。
例えば、放射線の被ばく線量を計測のための線量計として、ガラス管に封入された熱蛍光体やペレット状の熱蛍光体を利用した熱蛍光個人被曝線量計などが使用されている。
また、例えば、特許文献1には、熱蛍光板状体を利用した線量計であって、かつ放射線の3次元線量分布を取得することができる放射線線量計として、母体としての四ホウ酸リチウムと、この母体中に存在するマンガン及びアルミニウム(III)とを含む熱蛍光板状体が、複数枚積層されて形成されているものが提案されている。
また、例えば、特許文献2には、放射線の3次元線量分布を取得することが可能である熱蛍光積層体として、四ホウ酸リチウム、酸化マンガン(IV)、及び酸化アルミニウムを含有するものが提案されている。
また、例えば、特許文献3には、放射線に対する相対感度の低下を抑制でき、局所被曝時の線量分布を精度良くかつ簡便に行える生体等価型熱蛍光体二次元素子として、LiFの単位重量に対し、バインダーとして耐熱性樹脂(例えば四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂)を5〜70重量%添加したものを主体としてシート形状に成型し、次いで260℃以下の温度で加熱硬化させるものが提案されている。
また、非特許文献1には、酸化アルミニウムを母体とし、C、Mg及びY、Si及びTi、Cr、Cr及びNi、Na及びTi、をドープした熱蛍光体が開示されている。
【0003】
また、熱蛍光体以外のものとして、例えば、特許文献4及び5には、光輝尽発光(photostimulated luminescence:PSL)を示すイメージングプレート(IP)を利用するオートラジオグラフィーの提案がされている。
また、例えば、特許文献6には、放射線の積算吸収線量を測定するに用いる平板状蛍光ガラス線量計として、ファントム内に設置した線量計に放射線を照射し、その線量計への積算吸収線量を測定する方法に用いる平板状蛍光ガラス線量計が提案されている。
また、例えば、特許文献7には、極めて軽量で、全方向から飛来する中性子に対する正確な評価が可能な積算型中性子線量当量測定器として、含水素有機高分子物質で形成された回転対称形状のボディ(ポリエチレンブロック)と、その表面から第1の所定深さ以上の深さ位置で、回転対称な同一深さ位置に3つ以上配設された、中性子との原子核反応により含水素有機高分子物質から放出される反跳陽子を検出する速中性子検出器と、前記ボディの表面から第2の所定深さ以内の深さ位置で、回転対称な同一深さ位置に3つ以上配設された、中性子との原子核反応によりα線またはγ線を放出する中性子変換材(例えばα線コンバータ)を有する熱中性子検出器と、を備えるものが提案されている。
また、例えば、特許文献8には、蛍光特性を大きく損なう事無く、又、ガンマ線補償用蛍光ガラス素子に対する影響を与える事無く、一般的に使われている熱ルミネセンス線量計と同等の熱中性子感度を持つ新たな蛍光ガラス線量計用ガラスとして、銀活性りん酸塩ガラスに、熱中性子・アルファ線変換剤を添加することにより、放射線照射後に紫外光励起をすると波長500〜800nm領域の蛍光を放出し、蛍光の時間特性が熱中性子・アルファ線変換剤の濃度に依存しないことを特徴とする熱中性子に有感な蛍光ガラス線量計用ガラスが提案されている。
また、上述の放射線治療等の用途においては、放射線治療装置の放射線照射位置、範囲、出力等の調整や治療計画の作成等にも放射線検出デバイスが用いられており、一般的には、放射線誘起架橋反応を利用して放射線の検出を行う、ガフクロミックフィルムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−127930号公報
【特許文献2】特開2011−052179号公報
【特許文献3】特開2004−317136号公報
【特許文献4】特開2002−049110号公報
【特許文献5】特開2000−230902号公報
【特許文献6】特開2006−047009号公報
【特許文献7】特開2010−276406号公報
【特許文献8】特開2010−210336号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Thermoluminescence Dosimetry Materials:Properties And Uses, S.W.S.Mckeever et . al., Nuclear Technology Publishing, 1995, ISBN 1 870965 19 1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の従来提案されている熱蛍光体ではいまだ十分な実用性がなかった。
たとえば、熱蛍光個人被曝線量計は、固体差が大きく補正が困難で、また、1つの素子に対してフィルターを複数設置できないため、誤差が生じる要因を有するという問題や、ポイント測定は可能であるが2次元の測定には用いることができないという問題があった。
があった。
特許文献1〜3の提案は、人体や皮膚など特定の部分の吸収線量の測定を目的として設計されたものであり、汎用性が十分でなく、また感度が不十分であり、また操作性に難があるという問題があった。
特許文献4及び5の提案では、位置確認に必要な画像を取得することができないなどの問題があった。
特許文献6〜8の提案は、解像度の点で不十分であり、測定システムが複雑で高価となるという問題もあった。
また、放射線治療装置の調整等の用途において、一般的に用いられるガフクロミックフィルムは、使い捨てのため高価であること、放射線照射開始から測定までに時間がかかること、ダイナミックレンジが狭く実際の治療で用いる線量より低い線量で調整などの検証を行うこと等の問題があった。
また、非特許文献1には、単に熱蛍光活性を示すことが開示されているにすぎず、放射線検出のための熱蛍光体については何ら開示されていない。
要するに、ガフクロミックフィルムと異なり、放射線検出デバイスとして取扱いが容易で、繰り返し利用することが可能であり、さらには感度と解像度が高く、ダイナミックレンジが広い放射線検出デバイスは、いまだ提案されていないのが現状であり、そのような放射線検出デバイスに利用できる材料の開発が要望されているのが現状である。
したがって、本発明の目的は、取扱いが容易で、繰り返し利用することが可能で、感度と解像度が高く、ダイナミックレンジが広い、放射線検出デバイスとして利用可能な材料としての熱蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、セラミックスであっても放射線検出デバイスとして利用可能なものがあることを知見し、さらにその原因について検討した結果特定の元素を含む場合に優れた熱蛍光特性が得られることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.金属酸化物を主成分としてなるセラミックスからなり、
微量の発光中心成分を含有する
ことを特徴とする熱蛍光体。
2.上記セラミックスは、上記金属酸化物と他の酸化物とからなる群より選択される2種以上を構成成分として用いて構成されていることを特徴とする1記載の熱蛍光体。
3.上記金属酸化物における必須成分としてAlを用いてなる2記載の熱蛍光体。
4.上記Alは、上記構成成分中10〜98重量%含有される
ことを特徴とする3に記載の熱蛍光体。
5.上記発光中心成分は、遷移金属又は希土類金属元素である
ことを特徴とする1〜4のいずれかに記載の熱蛍光体。
6.上記発光中心成分が、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素であることを特徴とする5に記載の熱蛍光体。
7.上記遷移金属又は上記希土類金属が、Dy、Cr、Mn又はCuである
ことを特徴とする5に記載の熱蛍光体。
8.上記発光中心成分の含有量である上記微量は、熱蛍光体全体中1重量%未満であることを特徴とする1〜7のいずれかに記載の熱蛍光体。
9.上記金属酸化物は、Alを必須成分として用いてなり、
上記発光中心成分は、Crである
ことを特徴とする3に記載の熱蛍光体。
10.上記金属酸化物は、Al
と、少なくともZrO又はZrSiO、MgO、SiO
との混合物であり、
上記発光中心成分は、Dyである
ことを特徴とする3に記載の熱蛍光体。
11.1〜10のいずれかに記載の熱蛍光体を用いてなる
熱蛍光放射線検出デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱蛍光体は、取扱いが容易で、繰り返し利用することが可能で、感度と解像度が高く、ダイナミックレンジが広い放射線検出デバイスとして利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、試験例1の熱蛍光スペクトルのチャート図である。
図2図2は、試験例2のグロー曲線のチャート図である。
図3図3は、試験例3の放射線照射強度と熱蛍光強度との関係を示すグラフである。
図4図4のAは、試験例4において、熱蛍光体に形成されたUSBメモリー及び1円玉の写真(図面代用写真)であり、Bは一部を拡大したものである。
図5図5のAは、試験例4において、熱蛍光体に形成された魚の写真(図面代用写真)であり、Bは一部を拡大したものである。
図6図6は、試験例5のサイバーナイフの照射位置の測定に対する適性試験における結果であり、Aは得られた熱蛍光画像、Bは熱蛍光画像を2値化した画像である。
図7図7は、試験例5のサイバーナイフの治療計画の作製に対する適性試験における結果の画像であり、Aはガフクロミックフィルム、Bは本発明の熱蛍光体、における画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
<全体構成>
本発明の熱蛍光体は、金属酸化物を主成分としてなるセラミックスからなり、
微量の発光中心成分を含有するものである。
【0011】
〔セラミックス〕
本明細書において、セラミックスとは、上記金属酸化物を主成分としてなる焼結体を意味し、このようなものとしては、例えば、多結晶体、非晶質ガラス、セラミック−ガラスなどが挙げられ、特に放射線イメージングデバイスとして用いた場合の感度と解像度との両立の観点から、多結晶体であるのが好ましい。
上記セラミックスが多結晶体である場合においては、セラミックスを構成する各結晶の平均結晶径は、特に制限されない。
上記セラミックスの密度は、特に制限されず、使用目的に応じて任意である。
【0012】
(金属酸化物)
本発明の熱蛍光体を構成する上記セラミックスは上記金属酸化物をその主成分とする。
ここで、上記主成分とは、上記セラミックスがその全重量に対して50重量%以上含有することを意味し、好ましくは70重量%以上である。
上記金属酸化物は、セラミックスを形成するものであれば、特に制限されず、例えば、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Fr、Ra、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、Lrなどの金属の酸化物を挙げることができ、これらの金属酸化物は単体または混合物を使用することができる。
上記セラミックスは、上記金属酸化物と他の酸化物とからなる群より選択される2種以上を構成成分として用いて構成されているのが好ましい。すなわち、本発明の熱蛍光体を構成する上記セラミックスは、上記金属酸化物のうち2種以上の金属酸化物を構成成分として用いて構成されているか、又は1種又は2種以上の上記金属酸化物と他の酸化物との混合物を構成成分として用いて構成されているのが好ましい。特に本発明の熱蛍光体を放射線イメージングデバイス等の放射線検出デバイスとして用いる場合には、上記セラミックスが該構成成分により構成されているのが好ましい。特に主たる金属酸化物と電荷が異なり、混合する金属酸化物、および酸化物のイオン径が主たる金属酸化物のイオン径に近いもの又は、混合する金属酸化物や他の酸化物の電荷が等しくイオン径の大きさが主たる金属酸化物と異なる金属酸化物を含む酸化物とを混合して用いるのが好ましい。
ここで「他の酸化物」としては、SiO、H3PO4、酸化ホウ素、酸化ヒ素、酸化硫黄、酸化セレン等を挙げることができる。
主たる金属酸化物としてはAlを必須成分として好ましく用いることができ、その使用量は、上記構成成分中10〜98重量%とするのが、放射線イメージングデバイスとした場合の感度と解像度との両立の観点から好ましい。ここで「主たる」とは必ずしも多量成分であることを意味せず、セラミックス全体の結晶構造において基本となる成分であればよい。
Alと共に用いられる成分としては、ZrO、ZrSiO、SiO、MgOなどが好ましく挙げられ、好ましい組み合わせとしては、Al(含有量90〜96重量%)とSiO、MgOとの組み合わせ(以下この組み合わせを「組み合わせ1」という)、Al(含有量10〜30重量%)とZrO、SiO、MgO、Feとの組み合わせ(以下この組み合わせを「組み合わせ2」という)等が挙げられる。
【0013】
(発光中心成分)
本明細書において、上記発光中心成分とは、放射線を照射した熱蛍光体において励起され光を放出する成分をいう。
上記発光中心成分は、特に制限されず、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、 Au、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属元素を挙げることができる。
これらの中でも、熱蛍光体の放射線に対する感度が良好になる点、放射線の測定において高解像度になる点から、遷移金属又は希土類金属元素が好ましく、中でもDy、Cr、Mn、Cuなどの300〜800nm、好ましくは450〜800nmに発光準位を有する金属元素であるのが、熱蛍光体の放射線に対する感度が良好になる点に加え、CCDの一般的な検出波長であり検出がしやすく、検出器の感度も高い点、放射線の計測において高解像度になる点からさらに好ましく、Dy、Crであるのが特に好ましい。
また、金属酸化物が、上記の組み合わせ1の場合Crであるのが好ましく、組み合わせ2n場合にはDyであるのが好ましい。
また、上記発光中心成分の含有割合は、熱蛍光活性の観点から、熱蛍光体の放射線に対する感度が良好になる点、放射線の計測において高解像度になる点、から、微量であり、具体的にはその配合量はセラミックス全体中1重量%未満であるのが好ましく、0.001重量%以上であるのが好ましい。
すなわち、本明細書において微量とは、熱蛍光体全体の重量に対して、1重量%未満のことをいう。
また、上記発光中心成分の含有形態は、原子やイオンとして配合されていても、酸化物など何らかの化合物として配合されていてもよい。
上記発光中心成分の配合の方法は、特に制限されず、例えば、上記セラミックスに固溶分散させる、上記セラミックスの表面のみに分散させる等により配合させることができる。
【0014】
(第3成分)
また、本発明においては上記熱蛍光体に本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々成分を上記セラミックスに添加することができる。たとえば10B、Li等を含む酸化物などの中性子捕獲材、Cd等を含む酸化物などの中性子コンバータ等を挙げることができる。
また、成形および格子欠陥の生成、密度の制御などを目的として、炭素や有機化合物などの成形補助剤や還元剤を焼成前にセラミックスの構成成分と混入させてもよい。
【0015】
(形状・大きさなど)
本発明の上記熱蛍光体の大きさは、特に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、用途や目的に合わせて任意にすることができる。
本発明の上記熱蛍光体の形状は、特に制限されず、用途や目的に応じて任意の形状にすることができるが、放射線計測に用いる場合、板状体であるのが好ましい。
本発明の上記熱蛍光体の厚みは、特に制限されず、用途や目的に応じて任意の厚みにすることができるが、放射線計測に用いる場合、熱蛍光体の放射線に対する感度、解像度が良好になる点等の点から、0.1〜5mmであるのが好ましく、0.5〜2mmであるのが好ましい。
【0016】
<製造方法>
本発明の熱蛍光体の製造方法の一例を以下に説明する。
本発明の熱蛍光体の製造は、一般的なセラミックスの製造方法などを用いて行うことができる。また、市販のセラミックス材料を用いることもできる。
具体的には、本発明の熱蛍光体の製造は、上記金属酸化物及び上記発光中心成分の原料を、粉砕および混合した後、焼結することなどにより実施することができる。
上記原料としては、上記金属酸化物においては、上記金属酸化物そのものを原料とすることができ、例えば、上述の「ZrO又はZrSiOと、xMgO・yAl・zSiOとの混合物」の一つであるZrO・SiO−2MgO・2Al・5SiO(ジルコン−コージライト)を製造する場合は、金属酸化物のZrO・SiO(ジルコン)及び、MgO・Al・SiO(コージライト)出発材料として用いることができる。
また、上記金属酸化物の他の原料として、後に続く焼結処理により酸化物を形成する原料、例えば、上記金属酸化物を構成する金属元素の炭酸塩;水酸化物などを用いることもできる。
また、上記発光中心成分の原料については、上記発光中心成分を構成する元素を含有する炭酸塩、水酸化物などを用いることができ、例えば、上記発光中心成分がDyの場合は、炭酸ディスプロシウム二水和物などの炭酸塩、三水酸化ディスプロシウムなどの水酸化物を用いることができる。
上記粉砕および混合は、一般的なセラミックスの製造において用いられる方法により行うことができる。
具体的には、原料および溶媒としての水などを、ボールミルなどの装置に投入し、粉砕および混合を行う。
これにより、原料の粉砕混合物を得ることができる。
混合の後、得られた粉砕混合物を、焼結処理を行うなどして、本発明の熱蛍光体を得ることができる。
上記焼結処理の条件は、原料の組成などの条件により適宜決定される。
上記の例の場合、具体的には、上記主たる金属酸化物の融点の温度の0.8倍の温度程度の温度条件で他の金属酸化物や上記発光中心成分を混合しドープする等することができる。
また、上述した以外にも趣旨を逸脱しない範囲で、他の処理も行うことができる。
そのような例としては、成形処理などが挙げられ、焼結処理の前または後に、公知の方法で行うことができる。
上記成形は、本発明の熱蛍光体の用途に応じて適宜決定される任意のものであるが、乾式成形などの公知の成形方法を用いて行うことができ、板状、四角形状、円形状、線状、曲線状などの任意の形状を用いることができる。
【0017】
<使用方法・用途>
本発明の熱蛍光体は、X線、電子線、α線、β線、γ線、中性子線などの放射線を吸収させて放射線のイメージングデバイスとして用いることができる。その際、上記放射線吸収後の上記熱蛍光体を100〜450℃の加熱処理を1〜10分程度、行うことにより、その吸収した放射線の量に応じて蛍光を発生させ、得られた蛍光を、蛍光読取装置、熱蛍光画像取得装置で検出、定量などを行うことで、放射線の1〜3次元の定量解析などを行うことができる。本発明の熱蛍光体は、実施例に後述するように、簡便に使用することができ、また、解析結果も迅速に得ることができるものである。
また、本発明の熱蛍光体は、放射線照射後のものを、熱蛍光を発する温度で熱蛍光が検出されないようになるまで加熱処理を行い、捕捉した放射線をすべて熱蛍光に変換することで再利用することができる。例えば、各実施例の本発明の熱蛍光体の場合、100〜450℃、1〜10分の加熱処理を行うことにより再利用を行うことができる。これにより、上述の放射線治療装置の調整や治療計画の作製等の用途において一般的に用いられているラジオクロミックフィルムのような使い捨てのものを用いる場合よりも、格段にコストを安くすることができる。
本発明の熱蛍光体は、上記の熱蛍光特性を有することから、個人の放射線被ばく量や環境における放射線量を測定する放射線線量計に好適に使用することができる。また、上記の熱蛍光特性に加え、放射線の計測などに用いた場合において高い解像度の熱蛍光特性を有するものであり、放射線の1〜3次元計測に使用することができるものであり、放射線イメージングデバイスなどに用いる放射線の2次元線量計として好適に用いることができる。
【0018】
以下、本発明の熱蛍光放射線検出デバイスについて説明する。
ここで、上記熱蛍光放射線検出デバイスとは、放射線の各種検出、計測に用いることが可能なものであり、放射線の1次元〜3次元計測に使用することができるものである。
本発明の熱蛍光放射線検出デバイスは、上記熱蛍光体を用いてなるものである。
本発明の熱蛍光放射線検出デバイスにおいては、本発明の上記熱蛍光体をそのまま用いることができる。
本発明の熱蛍光放射線検出デバイスは、上記の熱蛍光特性を有する熱蛍光体を用いるため、放射線計測などに用いた場合において、高い解像度の熱蛍光特性を有し、好適に用いることができる。
【0019】
本発明は上述した実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、本発明の上記熱蛍光体を粉末状にしてバインダーなどと混合して、既存の板状材料やフィルム材料に塗布し、使用時に板状体やシート状になるように用いてもよい。
また、例えば、本発明の上記熱蛍光体は、単層だけではなく、多層で構成をしてもよい。例えば、各層に放射線の吸収特性や熱蛍光特性が異なる材料を用いて多層構造にし、複数種の放射線を測定するような構成にしてもよい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0021】
〔実施例1〕
(熱蛍光体、熱蛍光放射線検出デバイス)
実施例1〜3における本発明の熱蛍光体は、表1に示す金属酸化物の組成及び含有量、並びに、発光中心成分及び含有量であるセラミックス材料を常法に従って製造し、得られたセラミックスを8cm×8cm×0.1cmの板状体に成形し、本発明の熱蛍光体を製造した。
なお、表1に示す割合は、合計量で100重量%となる割有である。実施例1においてはAl、SiO 、MgOの合計量が100重量%未満99重量%以上であり、発光中心成分が1重量%未満含有されており、実施例3においてはその他の成分3.20重量%中に1重量%未満のDyが含有されていることを意味する。
また、得られた本発明の熱蛍光体を、本発明の熱蛍光放射線検出デバイスとして下記の各測定を行った。

【表1】
【0022】
〔試験例1〕熱蛍光スペクトル
本発明の熱蛍光体の特性を調べるため、熱蛍光スペクトルを調べた。
熱蛍光スペクトルは、本発明の熱蛍光体に、放射線を照射した後、加熱した際に発する光のスペクトルを測定することにより調べた。
具体的には、実施例1〜3の本発明の熱蛍光体に放射線(X線)を5Gy照射した後、測定装置(装置名:「PHOTONIC MULTI−CHANNEL ANALYZER PMA−12」浜松ホトニクス社製)で、330℃に加熱し、スペクトル測定を行った。
なお、比較試料としてのCaSO:Dy(硫酸カルシウムのモル数に対して0.1mol%)についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図1に示す。
【0023】
〔試験例2〕グロー曲線
本発明の熱蛍光体における熱蛍光体のグロー曲線を調べた。
グロー曲線は、本発明の熱蛍光体に、放射線を照射した後、徐々に加熱した際に発する光の強度を測定することにより調べた。
具体的には、実施例1〜3の本発明の熱蛍光体に放射線(X線)を5Gy照射した後、グロー曲線測定装置で、室温〜330℃までの温度において7.5℃/分の速度で徐々に加熱し、発光する光の強度を測定した。
なお、比較試料としてのCaSO:Tm(型名:UD110S、松下電器社製)についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図2に示す。
【0024】
〔試験例3〕放射線照射強度と熱蛍光強度
本発明の熱蛍光体における放射線照射強度と熱蛍光強度との特性を調べた。
放射線照射強度と熱蛍光強度との特性は、本発明の熱蛍光体に、放射線を照射した後、加熱した際に発する光の強度を測定することにより調べた。
具体的には、実施例1及び3の本発明の熱蛍光体に放射線(6MVのX線照射装置、Varian社製「CLINAC−21EX Linear Accelarator)を1,10,50,100Gyそれぞれ照射した後、グロー曲線測定装置で、330℃に加熱し、全熱蛍光量を積算した。
なお、比較試料としてのCaSO:Tm(通常の紛体型熱ルミネッセンス線量計型名:UD110S、松下電器社製)についても、同様に試験を行った。
得られた結果を図3に示す。
図3に示す結果から明らかなように、成形体であるにも関わらず、本発明の熱蛍光体は紛体型の熱ルミネッセンス線量計と同等の感度を有するものであることが判る。
【0025】
〔試験例4〕放射線の2次元計測試験
本発明の熱蛍光体の上に物体を載せて放射線を照射することにより、放射線の2次元計測試験を行い、画像提供物としての特性を調べた。
具体的には、実施例1で得られた本発明の熱蛍光体の上にUSBメモリー及び1円玉、並びに、魚類のシシャモを載せ、放射線照射装置(商品名:MS−80Labo、メディエックステックジャパン社製)で放射線(X線)を5Gy照射し、放射線照射後の上記熱蛍光体を、熱蛍光画像取得装置により330℃、2分の条件で加熱し、上記熱蛍光体を発光させ画像を取得し、得られた画像の解像度を解析した。
条件:
フィルター:赤外カットフィルターのみを使用
得られた画像を図4(USBメモリー及び1円玉)、及び図5(魚)に示す。
【0026】
〔試験例5〕サイバーナイフの照射位置調整及び治療計画における適性試験
本発明の熱蛍光体のサイバーナイフの照射位置の測定、及び治療計画の作製における適性試験を行った。
(サイバーナイフの照射位置の測定に対する適性試験)
サイバーナイフの照射位置の測定に対する適性試験は、下記のように行った。
実施例1で得られた本発明の熱蛍光体を放射線照射部分に開閉部を有するファントムにファントムの蓋を開けて設置した。設置した本発明の熱蛍光体に、油性インクを用いて点状の印をつけ、サイバーナイフ「サイバーナイフラジオサーチェリーシステム(日本アキュレイ社製)の放射線の照射中心にレーザーがドット照射されるように設けられているレーザーポインタを該印に当てて、レーザーを照射した。
レーザーの照射後、ファントムの蓋を閉じ、サイバーナイフで、放射線(X線)を下記条件で照射した。放射線の照射の後、ファントムから本発明の熱蛍光体を取出し、熱蛍光画像取得装置により330℃、2分の条件で加熱し、熱蛍光体を発光させて画像を取得し、得られた画像を解析した。
放射線照射条件:
線種:X線
線量:10Gy
線束:6MV
得られた熱蛍光画像を図6のA、熱蛍光画像を2値化した画像を図6のBに示す。
【0027】
(サイバーナイフの治療計画の作製に対する適性試験)
本発明の熱蛍光体のサイバーナイフの治療計画の作製に対する適性試験は、上記サイバーナイフの照射位置の測定と同様にして、本発明の熱蛍光体を設置し、放射線の照射条件を下記条件に変えて、放射線(X線)の照射を行い、熱蛍光画像取得装置で熱蛍光体を発光させ画像を取得し、得られた画像を解析することにより行った。試験は、放射線の照射条件を変えて二度行った。
また、比較試験として、本発明の熱蛍光体の代わりに、ラジオクロミックフィルムとしてのガフクロミックフィルム(商品名)を用いた試験を同時に行った。なお、ガフクロミックフィルムを用いた試験においては、ダイナミックレンジが狭いため、放射線量を減らして行った。
得られた結果を図7(放射線照射条件1、A:治療計画、B:本発明の熱蛍光体による実測)に示す。なお、計測は300℃、2分で計測した。
放射線照射条件1:
線種:X線
線量:中心20Gy
【0028】
以下、得られた結果及び考察を説明する。
(熱蛍光スペクトル)
本発明の熱蛍光体の特性を調べるため、熱蛍光スペクトルを調べた。
図1に示すように、実施例1及び2の本発明の熱蛍光体は、発光中心成分としてのCrに起因するCr3+の発光準位である693nmに鋭いピークを有する高強度の熱蛍光スペクトルが観察された。
また、実施例3の本発明の熱蛍光体は、発光中心成分としてのDyに起因するDy3+の発光準位である483nm及び570nmの2つの鋭いピーク、並びに300〜480nmのなだらかな390nmを中心とするピークを有する高強度の熱蛍光スペクトルが観察された。
また、対象として用いたDyを含有するCaSOにおいては、483nm及び570nmの2つの鋭いピークを有する熱蛍光スペクトルが観察された。
以上の結果から、本発明の熱蛍光体は、高強度の熱蛍光を発するものであることがわかる。
【0029】
(グロー曲線)
本発明の熱蛍光体における熱蛍光体のグロー曲線を調べた。
図2に示すように、実施例1の本発明の熱蛍光体は、110〜230℃において170℃に高強度のピーク、及び、250〜350℃において300℃に高強度のピークを有するグロー曲線であった。
また、実施例2の本発明の熱蛍光体は、110〜190℃において150℃に高強度のピーク、及び、250〜350℃において300℃に高強度のピークを有するグロー曲線であった。
また、実施例3の本発明の熱蛍光体は、40〜140℃において90℃に高強度のピークを有するグロー曲線であった。
また、対象として用いたTmを含有するCaSOにおいては、60〜140℃において100℃のピーク、及び、150〜350℃において240℃にピークを有するグロー曲線であった。
以上の結果から、本発明の熱蛍光体は、室温より高い温度に、高強度の熱蛍光のピークを有するものであることがわかり、操作しやすいものであることがわかる。また、グロー曲線から、実施例1及び2は酸化アルミニウム(Al)を主成分とするものであるが、形成成分や結晶構造などを変えることにより放射線捕捉特性を制御することが可能なことがわかる。
また、これらの実施例の実施中でも実施例2のように酸化アルミニウムの純度が高い場合には、焼成温度が高くなり、また原料が高価である。これらの点においては実施例1や3のように、上記構成成分により構成されるセラミックスを用いてなる熱蛍光体の方が、安価に原料を入手でき、かつ純度が低いので焼成温度も低く、結果として生産コストが低くなる点で有利である。さらに実施例1及び3のように上記構成成分により構成されている熱蛍光体の方が、放射線のイメージング特性も高くなる傾向にある。
更に、板の透過性を高めると感度は高くなるものの、画像のボケを生じやすく、かつ、高純度の材料を使用して時間をかけて結晶化を進めなければならないため生産コストがとても高くなるが、実施例1や3のように上記構成成分により構成されている熱蛍光体では、後述するように鮮明な画像を得ることができる。
【0030】
(放射線照射強度と熱蛍光強度)
本発明の熱蛍光体における放射線照射強度と熱蛍光との特性を調べた。
図3に示すように、実施例1及び3の本発明の熱蛍光体は、放射線(X線)の照射量が1〜100Gyにおいて、放射線の照射線量に依存して直線的に発光量が増加するものであった。一方、対象のUD110Sにおいては、放射線照射量が1Gy、10Gyにおいては放射線の照射線量に依存した直線的な発光量の増加がみられるが、100Gyにおいてその直線的な増加性が失われている。
以上の結果から、本発明の熱蛍光体は、ダイナミックレンジが広く、放射線の定量性にすぐれ、熱蛍光強度が高く感度の高いものであり、放射線の定量に好適に使用できるものであることがわかる。また、放射線治療などで用いられる1〜100Gyの放射線量において好適に使用できるものであることがわかる。
【0031】
(2次元計測試験)
本発明の熱蛍光体(実施例1の熱蛍光体)の2次元計測試験を行い、本発明の熱蛍光体の画像提供物としての特性を調べた。
図4及び5に示すように、X線を透過する量が場所によって異なり、その異なる放射線の量に応じた熱蛍光による画像が得られていることがわかる。
また、画像の解像度は、約80μmであった。
このように、本発明の熱蛍光体は、X線の吸収量及び位置を高い解像度で把握することができるため、放射線の1次元測定だけではなく2次元測定にも有用なものであることがわかる。
【0032】
(サイバーナイフの照射位置の測定における適性試験)
本発明の熱蛍光体(実施例1の熱蛍光体)のサイバーナイフの照射位置の測定における適性試験を行った。
図6のA及びBに示すように、本発明の熱蛍光体を用いて、照射位置が正確に測定されていることがわかる。
また、従来のガフクロミックフィルムを用いた場合は、試験をするたびにレーザーポインターの照射位置をマーキングする操作が必要であるのに対し、本発明の熱蛍光体を用いた本試験では、繰り返し使用することができるため耐熱マジックの使用や金属マーカー等を埋め込むことにより照射位置のマーキング操作は不要であり、簡便に行うことが可能であることがわかる。
以上から、本発明の熱蛍光体は、サイバーナイフの照射位置の測定に好適に用いることが可能であることがわかる。
【0033】
(サイバーナイフの治療計画の作製に対する適性試験)
本発明の熱蛍光体(実施例1の熱蛍光体)のサイバーナイフの治療計画の作製に対する適性試験を行った。
図7に示すように、本発明の熱蛍光体を用いた結果は、治療計画の検証等に有用であることがわかる。
従来のガフクロミックフィルムはダイナミックレンジが狭いため、実際に治療に用いるレベルの放射線量を用いることができず、照射する放射線量を減らして治療計画のための試験を行わなければならないのに対し、本発明の熱蛍光体は、実際に治療に用いるレベルの放射線量を用いて、従来のガフクロミックフィルム以上の結果が得られることがわかる。
また、従来のガフクロミックフィルムは、一度しか使用できないものであるが、本発明の熱蛍光体は熱処理により繰り返し再利用できるものであり、再利用の場合においても同様の結果を得ることができた(図示せず)。
以上から、本発明の熱蛍光体は、サイバーナイフの治療計画の作製に好適に用いることが可能であることがわかる。
【0034】
(熱蛍光放射線検出デバイス)
以上の結果から、本発明の熱蛍光体を用いてなる、本発明の熱蛍光放射線検出デバイスは好適に、放射線イメージングなどの放射線の2次元測定にも用いることができるものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の熱蛍光体は、取扱いが容易で、繰り返し利用することが可能で、感度と解像度が高く、ダイナミックレンジが広いため、個人被曝線量計、放射線の2次元測定(放射線イメージング)、放射線の3次元測定、サイバーナイフやリニアックの照射位置の測定や治療計画の作製等に応用できる。
【要約】
【課題】取扱いが容易で、繰り返し利用することが可能で、感度と解像度が高く、ダイナミックレンジが広い、放射線検出デバイスとして利用可能な材料としての熱蛍光体を提供すること。
【解決手段】金属酸化物を主成分としてなるセラミックスからなり、微量の発光中心成分を含有し、上記セラミックスは、上記金属酸化物と他の酸化物とからなる群より選択される2種以上を構成成分として用いて構成されていることを特徴とする熱蛍光体、及びそれを用いてなる熱蛍光放射線検出デバイス。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7