特許第5692895号(P5692895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692895
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】溶湯金属配湯車両
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/12 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   B22D41/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-190899(P2010-190899)
(22)【出願日】2010年8月27日
(65)【公開番号】特開2012-45588(P2012-45588A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 和樹
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−263828(JP,A)
【文献】 特開平07−285371(JP,A)
【文献】 特開2001−259826(JP,A)
【文献】 特開2007−083312(JP,A)
【文献】 特開2008−229636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/12,39/04,47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋳造装置が配設された工場内の所定の通路を走行して、溶融金属を内部に保持した配湯用容器を前記鋳造装置の保持炉まで搬送し、前記配湯用容器の内部に加圧気体を注入することで、該配湯用容器に設けた配湯用ノズルを介して前記溶融金属を前記保持炉に供給する溶融金属配湯車両であって、
牽引車両と、該牽引車両の後方に連結され、前記配湯用容器を載置した被牽引車両とを具備し、前記被牽引車両は、載置した状態の前記配湯用容器を鉛直軸まわりに回転させる回転機構を有すると共に、
外部電源との接続部をさらに具備し、該接続部に前記外部電源を接続して該外部電源からの電力供給を受けることで、前記回転機構を駆動させ、かつ前記加圧気体を注入する加圧気体注入装置を起動できるようにしたことを特徴とする溶融金属配湯車両。
【請求項2】
前記被牽引車両の停止位置を検知する停止位置検知装置をさらに具備し、前記外部電源を前記接続部に接続することで、前記停止位置検知装置を作動させるようにし、
前記停止位置検知装置により前記被牽引車両が配湯可能位置に停止していることを検知した場合、前記回転機構および加圧気体注入装置を起動可能とし、前記配湯可能位置から外れて停止していることを検知した場合、前記回転機構と前記加圧気体注入装置の何れも起動させないようにした請求項1に記載の溶融金属配湯車両。
【請求項3】
複数の鋳造装置が配設された工場内の所定の通路を走行して、溶融金属を内部に保持した配湯用容器を前記鋳造装置の保持炉まで搬送し、前記配湯用容器の内部に加圧気体を注入することで、該配湯用容器に設けた配湯用ノズルを介して前記溶融金属を前記保持炉に供給する溶融金属配湯車両であって、
牽引車両と、該牽引車両の後方に継手部を介して連結され、前記配湯用容器を載置した被牽引車両とを具備し、前記被牽引車両は、載置した状態の前記配湯用容器を鉛直軸まわりに回転させる回転機構を有し、かつ前記牽引車両と前記被牽引車両に載置された前記配湯用容器との間には、前記回転機構で前記配湯用容器に設けた前記配湯用ノズルを回動させることにより前記配湯用ノズルを配置可能な大きさのスペースが設けられていることを特徴とする溶融金属配湯車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属配湯車両に関し、特に、加圧気体の注入により溶融金属を鋳造装置の保持炉に供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム溶湯などの溶融金属を鋳造装置の保持炉に供給(配湯)するための車両として、フォークリフトが使用されている。そして、フォークリフトの前方部に設けられたフォーク上に配湯用容器を保持した状態でフォークを昇降し、あるいは傾動させることにより、配湯用容器内の溶融金属を保持炉に供給している。
【0003】
しかし、フォークリフトを扱うには専用の免許が必要となるため、作業者が限定される問題があった。また、この種の配湯作業には、上述の如くフォークの昇降、傾動動作に加えて、フォークリフトの走行動作を同時に行う必要があるため、ある程度の作業経験が必要となる。よって、この点でも、作業者が限定される問題があった。また、フォークリフトの前方に巨大な配湯用容器が保持され、走行時や配湯作業時に作業者の視界が配湯用容器によって遮られるため、安全性の面でも良いとはいえない状況にあった。特に、この種の配湯作業では、数トンにも及ぶ配湯用容器をフォークで上昇させた上にこれを傾動させる必要があるため、僅かな操作ミスが大きな事故を招くおそれがあった。
【0004】
一方、この他の配湯車両として、フォークリフトの前方部に加圧式の配湯用容器を具備したものも知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。このように加圧気体を配湯用容器の内部に注入することにより内部に保持した溶融金属をノズルを介して外部(保持炉)に供給する場合には、配湯用容器をフォークで数m上方にまで持ち上げて、傾けたりせずに済むため、上述した傾動式と比べれば安全性の面で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−316225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この種の配湯車両もフォークリフトであることには変わりないため、傾動式の場合と同様、操作には免許が必要となる。また、フォークリフトの前方部に配湯用容器を保持した状態で配湯作業を行う点も何ら変わっていないため、視界不良の点も改善されていない。
【0007】
また、この種の配湯用容器を具備した配湯車両で配湯を行おうとすると、図7に示すように、所定の通路100上を走行してきた配湯車両101を左側(通路100の保持炉102とは反対の側)から大きく回り込ませて、その前方部に保持した配湯用容器103を保持炉102と真正面から向き合う位置まで移動させる必要が生じる(図7中実線矢印で示す軌道)。配湯用ノズル104が配湯車両101の前方側に向けて突出した状態で保持されているからである(上記特許文献1の図2等を参照)。このように、作業者は前方の視界が配湯用容器103により遮られた状態で配湯車両101を保持炉102に接近させる動作が必要となるため、僅かな操作ミスが接触事故を引き起こすおそれがある。また、配湯作業後には、当然に配湯車両101を後退させて元の通路100上に戻す必要がある。このように操作が複雑になり、また面倒な操作が増えると、その分操作ミスが生じ易くなり、事故の危険性も高まる。また、周辺設備との兼ね合いで、配湯用容器103の配湯用ノズル104を保持炉102に近づけるために大きく回り込むことのできない箇所には本配湯車両を使用できない(使用箇所が限定される)不具合もある。
【0008】
上述した問題は、配湯用ノズル104を例えば配湯車両101の前後方向に対して直交する向きに設置することにより解消できるようにも思えるが、この場合には、配湯用ノズル104と周辺設備との干渉を回避するために、配湯用ノズル104の車幅方向への飛び出し分だけ通路100の幅を拡げる必要が生じる。これでは、上記と同様、周辺設備との兼ね合いで、通路100のスペース(幅方向寸法)を確保できない箇所には上記配湯車両を使用できない問題が生じる。
【0009】
以上の事情に鑑み、誰にでも簡単で安全に操作することができ、かつ設備スペースの広狭に関係なく使用することのできる溶湯金属配湯車両を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の解決は、本発明の第一の側面に係る溶融金属配湯車両により達成される。すなわち、この配湯車両は、複数の鋳造装置が配設された工場内の所定の通路を走行して、溶融金属を内部に保持した配湯用容器を鋳造装置の保持炉まで搬送し、配湯用容器の内部に加圧気体を注入することで、配湯用容器に設けた配湯用ノズルを介して溶融金属を保持炉に供給する溶融金属配湯車両であって、牽引車両と、牽引車両の後方に連結され、配湯用容器を載置した被牽引車両とを具備し、被牽引車両は、載置した状態の配湯用容器を鉛直軸まわりに回転させる回転機構を有すると共に、外部電源との接続部をさらに具備し、接続部に外部電源を接続して外部電源からの電力供給を受けることで、回転機構を駆動させ、かつ加圧気体を注入する加圧気体注入装置を起動できるようにした点をもって特徴付けられる。
また、前記課題の解決は、本発明の第二の側面に係る溶融金属配湯車両によっても達成される。すなわち、この配湯車両は、複数の鋳造装置が配設された工場内の所定の通路を走行して、溶融金属を内部に保持した配湯用容器を鋳造装置の保持炉まで搬送し、配湯用容器の内部に加圧気体を注入することで、配湯用容器に設けた配湯用ノズルを介して溶融金属を保持炉に供給する溶融金属配湯車両であって、牽引車両と、牽引車両の後方に継手部を介して連結され、配湯用容器を載置した被牽引車両とを具備し、被牽引車両は、載置した状態の配湯用容器を鉛直軸まわりに回転させる回転機構を有し、かつ牽引車両と被牽引車両に載置された配湯用容器との間には、回転機構で配湯用容器に設けた配湯用ノズルを回動させることにより配湯用ノズルを配置可能な大きさのスペースが設けられている点をもって特徴付けられる。
【0011】
このように、配湯車両を、牽引車両と、牽引車両の後方に連結された被牽引車両とで構成し、この被牽引車両に配湯用容器を載置した状態で搬送するようにしたので、従来に比べて作業者の前方視界が向上し、これにより安全性を格段に高めることができる。また、被牽引車両に、載置した状態の配湯用容器を鉛直軸まわりに回転させる回転機構を設けるようにしたので、配湯車両を保持炉の側方で停止させ、この位置で回転機構を駆動させて配湯用容器に設けたノズルを保持炉の上方位置まで旋回移動させることにより、フォークリフトを使用しないで保持炉への配湯を行うことができる。また、配湯車両を保持炉に横付けした状態で回転機構によりノズルを旋回移動させることで配湯を行うことができるので、保持炉への配湯作業に際して、配湯車両は工場内に設けられた所定の通路上を前進走行するだけでよく、従来のように、配湯車両を大きく回り込ませてその向きを変えなくても済む。また、配湯後も配湯車両を後退させることなく、ノズルを元の位置(例えば牽引車両の前後方向に沿った位置)に戻した状態でそのまま前進させることができる。このように、配湯車両の前進、停止動作と、回転機構の駆動操作だけで配湯を行うことができるので、従来に比べて操作が非常に簡単となり、操作ミスを減らすことができる。そのため、フォークリフトの免許がなく、作業経験の浅い者であっても、簡単でかつ安全に配湯作業を行うことができる。
【0012】
また、本発明に係る配湯車両によれば、配湯用ノズルを牽引車両側に向けた状態(車両前後方向に沿った向きに配向した状態)で走行する限りにおいて、その通路幅は、牽引車両又は被牽引車両の幅方向寸法と同等あるいは僅かに大きい程度で足りるので、鋳造装置が密集して幅方向に通路スペースがとれないような箇所であっても、周辺設備と干渉することなくスムーズに走行して、目的の保持炉に配湯車両(配湯用容器)を横付けすることができる。
【0013】
この場合、本発明に係る溶融金属配湯車両は、外部電源との接続部をさらに具備し、この接続部に外部電源を接続して外部電源からの電力供給を受けることで、回転機構を駆動させ、かつ加圧気体を注入する加圧気体注入装置を起動できるようにしたものであってもよい。
【0014】
外部電源であれば、通常、停止時に外部電源と接続可能となるので、車両が停止して、配湯が必要なときのみに容器を回転させてノズルを保持炉上に配置し、かつ、加圧気体を注入して溶融金属を保持炉内に供給する(配湯を行う)ことができる。言い換えると、走行中などに作業者の操作ミスにより、誤って配湯用ノズルを旋回させて周辺設備と干渉し、あるいは溶湯を外部に誤って排出する事態を確実に回避できる。これにより、作業時の安全性をさらに高めることができる。加えて、外部電源であればバッテリーを牽引車両に搭載するよりも高出力(工場供給電圧は通常200V)を得ることができ、また長時間駆動させることができる。また、バッテリーを搭載しないで済むので、当該バッテリーを搭載する場合と比べて配湯車両を軽量化することができる。以上より、配湯用容器の如き重量物を搬送、回転するのに適している。さらには、外部電源からの電力供給を受けるようにすることで、バッテリーに比べて使用可能な電気部品の種類が増えるため、言い換えると、工場内設備に使用できる汎用品が使用できるため、回転機構を含めた配湯車両を安価に製作することができる。
【0015】
また、上述のように外部電源から電力供給を受ける場合、本発明に係る配湯車両は、被牽引車両の停止位置を検知する停止位置検知装置をさらに具備し、外部電源を接続部に接続することで、停止位置検知装置を作動させるようにし、停止位置検知装置により被牽引車両が配湯可能位置に停止していることを検知した場合、回転機構および加圧気体注入装置を起動可能とし、配湯可能位置から外れて停止していることを検知した場合、回転機構と加圧気体注入装置の何れも起動させないようにしたものであってもよい。
【0016】
これは、いわゆるインターロックと呼ばれる安全装置であって、配湯作業を行うための条件を満たしていない場合に、誤って配湯用容器から溶融金属を外部に供給(排出)することのないように各電気部品の起動を制御したものである。ここでは、第一に、外部電源からの電力供給により停止位置検知装置を作動させるようにしたので、配湯車両を停止させ、外部電源を接続部に接続しないことには検知装置は作動しない。また、検知装置が作動しないことには当然に回転機構も駆動しないし、加圧気体注入装置も起動しない。そして、第二に、停止位置検知装置を作動させた状態で、当該検知装置により、被牽引車両が配湯可能位置に停止していることを検知した場合、回転機構および加圧気体注入装置を起動可能とし、配湯可能位置から外れて停止していることを検知した場合、両者を何れも起動させないようにしたことで、被牽引車両が少なくとも保持炉に溶融金属を供給できない位置に停止している場合には、配湯用ノズルを保持炉上まで旋回移動させることもできないし、配湯用容器内に加圧気体を注入することもできない。このように、配湯用ノズルを保持炉上まで旋回移動させて配湯を行う動作(操作)には、いわば2重のインターロックが設けられているため、作業者が操作を誤ったり、あるいは適切な操作を行わなかったりした場合には、配湯動作に係る機能を停止させることができる。これにより、溶湯漏れや周辺設備との干渉を回避して、操作時の安全性を一層高めることができる。
【0017】
なお、上記構成は、配湯車両が目的とする保持炉に到着して配湯を行うまでの間の不適切な操作を防止するためのインターロックであるが、配湯を終えて走行を再開するまでの間の不適切な操作を防止するためのインターロックを設けてもよい。具体的には、回転機構や加圧気体注入装置は外部電源からの電力供給を受けて起動するものであるから、外部電源と接続部とを接続状態を解消すれば、これらは起動しない。そのため、配湯後のインターロックとして、外部電源を接続したまま走行できないようにするためのインターロックを設けるようにしてもよい。あるいは、配湯用ノズルを元の位置に戻さないまま(通路から飛び出した状態のまま)走行できないようにするためのインターロックを設けるようにしてもよい。このうち、後者のインターロックについては、外部電源との接続を解消した状態で、電気的に配湯用ノズルの位置を検知することができないため、例えば牽引車量の走行用電源の操作スイッチや駆動用キーを機械的にロックする機構を設けて、配湯用ノズルが元の位置に戻らない場合には、これらのスイッチやキーが使用できないようにする、機械的なインターロックを設けるのがよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、誰にでも簡単で安全に操作することができ、かつ設備スペースの広狭に関係なく使用することのできる溶湯金属配湯車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る溶融金属配湯車両を用いた出湯および配湯システムの全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る溶融金属配湯車両の側面図である。
図3】溶融金属配湯車両の平面図である。
図4】溶融金属配湯車両の配湯時の動作を概念的に説明するための要部平面図である。
図5】停止位置検知装置を溶融金属配湯車両の正面側から見た図である。
図6】上蓋脱着ステーションにおける配湯用容器の上蓋部の脱着作業を概念的に説明する図である。
図7】従来技術に係る溶融金属配湯車両の配湯時の動作を説明するための要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る溶融金属配湯車両の一実施形態を図面に基づき説明する。この実施形態では、溶解炉から鋳造材料となる溶融金属の供給を受けて(出湯して)、当該供給を受けた溶融金属を各鋳造装置の保持炉に配湯するための、出湯および配湯システムに本発明に係る配湯車両を適用する場合を例にとって説明する。なお、これ以降の説明においては、特に断りのない限り、鉛直方向を単に上下方向というものとする。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る溶融金属配湯車両を用いた出湯および配湯システムの全体構成を示している。同図に示すように、この出湯および配湯システムは、溶解炉11で出湯作業を行うための出湯ステーション10と、この出湯ステーション10と連絡通路12を介して隣接しており、各鋳造装置21の保持炉22に対して配湯作業を行うための配湯ステーション20とを有する(同一建屋内、同一敷地内の有無は問わない。)。そして、連絡通路12を介して、出湯ステーション10内の通路13と、配湯ステーション20内の通路23とに跨がって走行可能な溶融金属配湯車両30により、出湯ステーション10で出湯された溶融金属を、配湯ステーション20内に複数配設された鋳造装置21の保持炉22に供給(配湯)するようになっている。
【0022】
ここで、溶融金属配湯車両30は、図2に示すように、牽引車両31と、牽引車両31の後方に連結され、配湯用容器32を載置した被牽引車両33とを具備する。また、牽引車両31と被牽引車両33とは継手部34を介して連結されており、これにより、被牽引車両33を、牽引車両31に対して水平方向ないし鉛直方向に傾動自在となるように牽引して走行できるようになっている。
【0023】
このうち牽引車両31は、例えば、各保持炉22の近傍に配設された外部電源24(図4を参照)との接続部35と、加圧気体(例えば加圧エア)を配湯用容器32の内部に注入する加圧気体注入装置36、及び制御盤37を有する。接続部35は、この実施形態では、配湯ステーション20内の通路23上から見て保持炉22側となる、制御盤37の右側面部に取り付けられている。また、加圧気体注入装置36は、コンプレッサ38と、コンプレッサ38により圧縮された気体を所定の圧力に調整する圧力調整装置39とで構成されている。コンプレッサ38と圧力調整装置39とは、ホース40などの配気管を介して接続されており、コンプレッサ38で加圧した気体を圧力調整装置39に圧送できるようになっている。
【0024】
被牽引車両33は、載置した状態の配湯用容器32を鉛直軸まわりに回転させる回転機構41を有する。回転機構41は、被牽引車両33のフレーム部に固定された基部42と、基部42に対して鉛直軸まわりに相対回転する回転台43、および回転台43に回転駆動力を付与するモータ(図示は省略)とで構成されている。このうち、回転台43は、図2に示すように、配湯用容器32を載置する載置台を兼ねており、回転台43の上面から上方に突出した複数の保持部によって回転台43上に載置した配湯用容器32を保持できるようになっている。この実施形態では、図3に示すように、回転機構41のモータを駆動させることにより、回転台43が基部42(被牽引車両33のフレーム部)に対して昇降することなく、鉛直軸まわりに相対回転するようになっている。これにより、後述する配湯用容器32の配湯用ノズル44が、牽引車両31の前後方向に沿った向きに配向した状態から時計回りに少なくとも90°旋回移動できるように構成されている。
【0025】
この回転台43上に載置される配湯用容器32は、溶融金属を内部に保持するための有底筒部45と、有底筒部45の上端開口部を塞ぐための上蓋部46とを有する。上蓋部46には、有底筒部45内に保持した溶融金属を保持炉22へ供給するための配湯用ノズル44が取り付けられている。この配湯用ノズル44は、上蓋部46の上方部からその外径側へと伸びた形状を呈しており、その下端部は有底筒部45の内部に挿入されると共に、その外径側端部は、配湯時以外(走行時)には、牽引車両31の側に配向している。そして、この上蓋部46と、牽引車両31に設けた圧力調整装置39とがホース47などの配気管で接続され、所定の圧力に調整された加圧気体が配湯用容器32の内部に供給されるようになっている。
【0026】
なお、この実施形態では、上蓋部46は、有底筒部45に対して脱着可能に取り付けられており、例えば出湯ステーション10内に設けた上蓋脱着ステーション14において、上蓋部46の脱着作業が行われるようになっている。詳述すると、図6に示すように、上蓋脱着ステーション14には、上蓋部46を保持して上方へ取り外すためのロボットアーム15が設置されており、配湯ステーション20から走行してきた溶融金属配湯車両30の配湯用容器32から上蓋部46を取り外すと共に、その後、上蓋部46を取り外した状態で出湯ステーション10内を走行し、出湯作業を終了した溶融金属配湯車両30の配湯用容器32に上蓋部46を装着するようになっている。
【0027】
また、この配湯車両30は、被牽引車両33の停止位置を検知する停止位置検知装置50をさらに具備している。この図示例では、図5に示すように、牽引車両31の側に設けた複数個の光センサ51と、保持炉22の側に設けた1又は複数個の対応する反射板52とで構成される。そして、図4に示すように、溶融金属配湯車両30を、保持炉22の開口部25に対して配湯用容器32内の溶融金属を供給可能な所定位置に停止させた場合に、光センサ51と反射板52とが車幅方向に対向し、光センサ51が反射板52からの反射光を受光できるように、溶融金属配湯車両30の停止位置が定められると共に、光センサ51と反射板52の取り付け位置がそれぞれ設定される。
【0028】
また、この実施形態では、停止位置検知装置50と制御盤37とで、配湯操作に係るインターロックが設けられている。すなわち、外部電源24を接続部35に接続することで、制御盤37を起動させ、然る後、停止位置検知装置50を構成する光センサ51を作動させる。この際、制御盤37は光センサ51と電気的に接続されており、かつ、インターロックの対象となる回転機構41のモータや加圧気体注入装置36とも電気的に接続されている。そして、この光センサ51により、被牽引車両33が上記配湯可能位置に停止していることを検知した場合、この結果を受けた制御盤37からの指令によって、作業者による回転駆動操作(例えば対応するボタンの押圧操作)が有効となる。言い換えると、作業者の操作により、回転機構41および加圧気体注入装置36を起動させることができる。一方、上記配湯可能位置から外れて停止していることを検知した場合、この結果を受けた制御盤37からの指令によって、作業者による回転駆動操作(例えば対応するボタンを押す操作)が無効となる。言い換えると、たとえ作業者が正規の操作を行ったとしても、配湯可能位置に配湯用容器32が位置していない場合には、回転機構41と加圧気体注入装置36の何れも起動させることができないようになっている。
【0029】
また、上述した光センサ51を複数配置し、これに対応する反射板52との組合せにより、検知時、何れの保持炉22の側方に位置しているのかを識別するようにしている。すなわち、図5に示すように、複数個の光センサ51を鉛直方向に沿って配設すると共に、1又は複数の反射板52を対応する位置(配湯可能位置に配湯用容器32を停止させた場合に車幅方向で光センサ51と対向する位置)に配設する。ここで、保持炉22ごとに異なる配列態様で1又は複数の反射板52を配設するようにする。この配列態様は予め制御盤37に入力しておく。そして、全ての光センサ51を作動させて、反射板52のある位置でのみ反射光を検出すると共に、検出した光センサ51の組合せを、予め入力しておいた保持炉22ごとの反射板52の配列情報と照らし合わせることにより、現在、溶融金属配湯車両30が何れの保持炉22の側方に位置しているのか、との情報を取得することができるようになっている。
【0030】
さらに、この実施形態では、被牽引車両33と保持炉22何れか一方の側にQRコード53を取り付けると共に、他方の側にQRリーダー54を取り付け、上記配湯可能位置に溶融金属配湯車両30が停止した際、QRリーダー54でQRコード53の情報を読み取るようにしている。ここで、QRコード53には、配湯用容器32内に充填した溶融金属の種類に関する情報が入力されており、これをQRリーダー54で読み取ることで、これから配湯を行おうとする溶融金属の種類を識別することができる。従って、上記した複数の光センサ51と反射板52との組合せによる位置認識システムと組合せることにより、今目の前にある保持炉22に供給すべき材料が、配湯用容器32の内部に保持されている溶融金属であるか否かを識別できるようになっている。従って、この識別結果に基づき、配湯用容器32の内部に保持されている材料(溶融金属)が配湯すべき材料でない場合には、制御盤37からの指令により、以後の配湯操作(ボタン操作)が無効となるように設定される。なお、これら一連の判定、識別動作は、牽引車両31に搭載された制御盤37で行われる。なお、QRコード53とQRリーダー54とは、上記以外の配置が可能であり、例えばQRコード53を配湯用容器32に、QRリーダー54を被牽引車両33の側に設けて、上記配湯可能位置に溶融金属配湯車両30が停止した際、あるいは、配湯用ノズル44を配湯可能位置まで旋回させた際、QRコード53に入力された上記情報をQRリーダー54で読み取るようにしてもよい。
【0031】
また、この実施形態では、配湯後の誤操作を防止するためのインターロックが設けられている。具体的には、外部電源24を差込んだまま走行できないようにするため、制御盤37に機械式のインターロックを設けている。例えば、牽引車両31の制御盤37内部に外部電源24の接続部35を設け、この制御盤37の扉を牽引車両31の駆動用キーで開ける場合、このキーの差込み口に予め機械的な係止手段を設けておき、先に外部電源24と接続部35との接続状態を解消しないと上記係止手段と駆動用キーとの係止状態が維持され、結果、駆動用キーが抜けないようになっている。そのため、先に外部電源24との接続状態を解除することではじめて駆動用キーが抜けるようになっている。配湯用ノズル44についても同様に、配湯用ノズル44を保持炉22側に回転させたままの状態で走行できないようにするための機械式のインターロックを設けている。具体的には、駆動用キーを機械的にロックする機構を設けておき、例えば配湯用ノズル44が元の位置(牽引車両31に向けて伸びる位置)に戻った際に機械的なロックが解除される一方、配湯時の位置から戻し忘れた状態では、上記機械的なロックが維持され、結果、駆動用キーが抜けないようになっている。
【0032】
また、配湯用容器32が載置される回転台43の下方(正確には、回転台43の下方に位置する回転機構41の基部42と、被牽引車両33のフレーム部との間)には、重量計測手段55としてのロードセルが複数個配設されている。この重量計測手段55は制御盤37と電気的に接続されており、制御盤37からの指令を受けた場合に、その上方に位置する物体(ここでは、溶融金属を含めた配湯用容器32と回転機構41)の重量を計測できるようになっている。なお、上記重量の計測作業は、例えば作業者による制御盤37に設けたボタン操作によって行われるのが好ましい。また、この際、重量計測のための専用ボタンを設けてもよいし、配湯作業の際に必ず押圧操作されるボタンを、重量計測指令を送るためのボタンと兼用させてもよい。例えば重量計測は、配湯の前後で行うことから、後述するように、溶融金属配湯車両30を配湯可能位置に停止させ、外部電源24と接続部35とを接続した後に、運転準備ボタンを押圧操作した際に重量計測指令を送り、また、配湯作業終了後、電源オフスイッチを押圧操作した際に、あるいは配湯用ノズル44を元の位置に戻した際に自動的に再度重量計測指令を送るようにしてもよい。これにより、配湯作業の前後で確実かつ自動的に、溶融金属を含む配湯用容器32の重量を計測することができ、その差分から、配湯量を算出することができる。なお、算出した配湯量に関するデータは、例えば溶融金属配湯車両30側に設けた無線通信手段で湯量管理手段56とデータ通信を行うことにより(図1中、一点鎖線矢印)、湯量管理手段に送信される。従って、この際、上述のように保持炉22に関する情報を併せて送信することにより、保持炉22(鋳造装置21)ごとに使用した1回あたりの配湯量を管理できるようになっている。
【0033】
また、この実施形態では、出湯ステーション10における出湯量の管理を、重量計測手段55と湯量管理手段56とによって行うようにしている。具体的には、出湯ステーション10内の上蓋脱着ステーション14において、出湯前の所定位置(上蓋取外し位置)P2に停止した際、外部電源(図示は省略)を接続部35と接続する。そして、上述の如きボタン操作により出湯前の配湯用容器32の重量を計測する。そして、溶解炉11からの出湯が終わり、上蓋脱着ステーション14に戻ってきた溶融金属配湯車両30を出湯後の所定位置(上蓋装着位置)P4で停止させ、外部電源と接続して、上述の如きボタン操作により出湯後の配湯用容器32の重量を計測する。これにより、出湯作業の前後で、溶融金属を含む配湯用容器32の重量を計測できると共に、重量データを湯量管理手段56に送ってその差分を計算することで、1回の出湯量を算出することができるようになっている。このように、配湯用容器32が載置された回転台(載置台)の下方に設けられた重量計測手段55と、この重量計測手段55により出湯又は配湯の前後で計測した重量データに基づき配湯用容器32内の湯量の変化量を算出及び管理する湯量管理手段56とによって、湯量管理システムが形成される。
【0034】
以下、上記構成の溶融金属配湯車両を用いた場合の出湯及び配湯作業の一例を説明する。
【0035】
まず、出湯ステーション10にて溶融金属の供給を受けた配湯用容器32を載置した溶融金属配湯車両30を、配湯ステーション20内の通路23に沿って走行させ、配湯が必要な保持炉22に向けて配湯用容器32を搬送する。そして、図4に示すように、目的となる保持炉22の付近に到着したら、配湯用容器32を保持炉22に横付けして、配湯用容器32と保持炉22とが凡そ車幅方向に向き合う位置P1に被牽引車両33を停止させる。この際、作業者は通路23上に示した目印(ここでは停止ライン)に合せて牽引車両31を停めることで、上記の所定位置(配湯可能位置)P1に被牽引車両33を停止させることができる。なお、上述のように正確な位置に停止することで、共に停止位置検知装置50を構成し、牽引車両31側に設けた光センサ51と、保持炉22側に設けた反射板52とが車幅方向に対向する。
【0036】
そして、この状態で、保持炉22側の外部電源24を牽引車両31の接続部35に接続して制御盤37に外部電源24から電力を供給し、然る後、制御盤37に設けた運転準備ボタンを作業者が押すことで、光センサ51を起動させる。この際、上述のように、光センサ51は対応する反射板52からの反射光を検知できる位置にあり、かつ、この際、被牽引車両33の側に取り付けたQRコード53を保持炉22の側に取り付けたQRリーダー54で読み取り、上述した材料間違いがなければ、制御盤37によるインターロックは作動しない(解除される)。これにより、以後の作業者による回転駆動操作(ここでは対応するボタン操作)が有効となる。従って、この後、作業者がコンプレッサ起動ボタンを押すことでコンプレッサ38により気体が圧縮され、また、回転ボタンを押すことで被牽引車両33の回転台43を基部42(被牽引車両33のフレーム部)に対して鉛直軸回りに回転駆動させ、回転台43上に保持された状態の配湯用容器32を軸回転させる。これにより配湯用容器32の上蓋部46に取り付けられた配湯用ノズル44を所定角度分だけ旋回移動させ(図4中、二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで)、保持炉22の開口部25上方に配湯用ノズル44の先端部を配置する。そして、最後に、加圧エアのバルブ開放ボタンを押すことにより、コンプレッサ38で加圧したエアが圧力調整装置39を介して配湯用容器32内に注入され、配湯用容器32内を加圧する。これにより、配湯用容器32の内部に保持している溶融金属の液面を押下げ、当該溶融金属を配湯用ノズル44を通じて外部に排出することで配湯を行う。このようにして、配湯が終了したら、回転ボタンを押して、配湯用ノズル44を元の位置(図4中、二点鎖線で示す位置)に戻した上で、電源オフスイッチを押し、最後に外部電源24と接続部35との接続状態を解消する。これにより、上述した配湯後の機械的インターロックが解除され、牽引車両31による走行(前進操作)が可能となる。
【0037】
このようにして、1又は複数箇所の保持炉22を回って、所定の配湯作業を行った後、連絡通路12を介して配湯ステーション20から出湯ステーション10に移動する。そして、出湯ステーション10内の通路13を走行して、溶融金属配湯車両30を上蓋脱着ステーション14内の上蓋取外し位置P2で停止すると、ロボットアーム15が駆動して、配湯用容器32の上蓋部46を取り外す。そして、上蓋部46を取り外した状態の配湯用容器32を載置した溶融金属配湯車両30を引き続き通路13に沿って走行させ、図1に示すように、溶解炉11前の出湯可能位置P3で溶融金属配湯車両30を停止させる。ここで、上蓋部46が取り除かれて上方に開口した状態の配湯用容器32内部を所定の引き込み用治具を用いて真空状態とし、これにより溶解炉11内の溶融金属を配湯用容器32の内部に充填する。このようにして出湯作業が完了したら、溶融金属配湯車両30の前進を開始し、引き続き通路13上を走行させる。そして、再び上蓋脱着ステーション14内の上蓋装着位置P4で溶融金属配湯車両30を停止させる。ここで、ロボットアーム15が軸まわりに回転して、先ほど上蓋取外し位置P2で取り外した上蓋部46を再び有底筒部45の上端開口部に取り付ける。このようにして溶融金属を補給し、加圧配湯が可能な状態に戻した上で、再び配湯ステーション20に移動して、必要とする保持炉22に対して配湯を行う。なお、回転機構41をさらに昇降させる機構を被牽引車両33に設けることで、例えば上蓋部46を固定したままの状態でも(上蓋部46が脱着不能に取付けられた場合でも)出湯作業を行うことは可能である。
【0038】
このように、溶融金属配湯車両30を、牽引車両31と、牽引車両31の後方に連結された被牽引車両33とで構成し、この被牽引車両33に配湯用容器32を載置した状態で搬送するようにしたので、従来に比べて作業者の前方視界が向上し、これにより安全性を格段に高めることができる。また、被牽引車両33に、載置した状態の配湯用容器32を鉛直軸まわりに回転させる回転機構41を設けることで、溶融金属配湯車両30を配湯ステーション20内の通路23上を前進走行して、保持炉22の側方で停止させるだけでよく、また、この停止位置で回転機構41を駆動させて配湯用容器32に設けた配湯用ノズル44を保持炉22の上方位置まで旋回移動させ、加圧気体を注入させるための操作だけで、配湯を行うことができる。また、配湯後も溶融金属配湯車両30を後退させることなく、配湯用ノズル44を元の位置に戻した状態でそのまま前進させることができる。このように、溶融金属配湯車両30の前進、停止動作と、回転機構41の駆動操作だけで配湯を行うことができるので、従来に比べて操作が非常に簡単となり、操作ミスを減らすことができる。そのため、フォークリフトの免許がなく、作業経験の浅い者であっても、簡単でかつ安全に配湯作業を行うことができる。
【0039】
また、この実施形態では、図1に示すように、常に溶融金属配湯車両30の一側方(図中、進行方向に対して右手側)に保持炉22が位置するように通路23を構成しているので、配湯用ノズル44の旋回動作を含め、作業者は常に同じ操作を行うだけで済む。これにより、作業者の操作ミスを一層少なくして、更なる操作性及び安全性の向上を図ることができる。また、溶融金属配湯車両30に要求される機能についても、例えば回転台43の回転方向(配湯用ノズル44の旋回範囲)を限定でき、あるいは停止位置検知装置50に関しても、溶融金属配湯車両30側、保持炉22側ともに、その一側方のみに対応する検知手段(光センサ51、反射板52)を設けるだけで済む。そのため、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0040】
また、上述のように、ボタン操作のみで溶融金属配湯車両30による加圧配湯動作を実施できるように構成したので、経験の浅い作業者であっても簡単かつ確実に配湯作業を行うことができる。
【0041】
また、上蓋部46を脱着可能に構成し、かつ、出湯前に上蓋部46を取り外した状態で溶解炉11からの出湯作業を行うようにしたので、出湯ステーション10における出湯から配湯ステーション20における配湯までの一連の作業を、従来のフォークリフトを使用しないで簡単かつ安全に実施することができる。
【0042】
また、停止位置検知装置50を構成する光センサ51で配湯前のインターロックを構成することで、配湯可能位置以外で停止し、電力供給を受けた場合にはインターロックが作動して配湯操作が行えないので、例えば上蓋脱着ステーション14においてロボットアーム15の駆動(上蓋部46の脱着)、あるいは重量計測のために外部電源を接続する場合にもそのまま上記配湯車両30を問題なく使用できる。
【0043】
以上、本発明に係る溶融金属配湯車両の一実施形態を説明したが、溶融金属配湯車両及びこの配湯車両を用いた配湯システムは、上記例示の形態に限定されることなく、本発明の範囲内において任意の形態を採ることが可能である。
【0044】
例えば、加圧気体注入装置36を構成する圧力調整装置39に電動レギュレータを用いて、加圧開始から配湯までのタイムラグを低減するようにしてもよい。溶融金属配湯車両30の走行時、配湯用容器32の内圧上昇による溶湯漏れ対策として、配湯完了時に配湯用容器32内を常圧に戻す方法が考えられるが、このような手段を採る場合、配湯用容器32内の溶融金属が残り少ない場合、加圧気体注入装置36による加圧開始から配湯開始までに相当の時間を要することになり作業効率上好ましくない。そこで、圧力調整装置39として電動レギュレータを用い、加圧気体の圧力を数段階に変動させつつ配湯用容器32内に当該加圧気体を注入するように制御することで、配湯開始に要する時間を削減できる。具体的には、配湯用容器32の内圧を測定しながら加圧気体を注入し、未だ内圧が低い状態では、高圧に調整した加圧気体を注入し、配湯圧力付近まで内圧が上昇した時点では相対的に低圧に調整した加圧気体を注入することにより、作業時間の削減と安全性の双方を確保することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、停止位置検知装置50として、牽引車両31の側に光センサ51を、保持炉22の側に反射板52を設けた場合を例示したが、もちろんこれ以外の構成を採ることも可能である。例えば距離センサなどの検知手段を使用することで、牽引車両31の側に設けた検知手段のみで停止位置検知装置50を構成することもできる。また、所定位置に停止したか否かを検知する装置に限らず、実際の保持炉22に対する位置を検出するような装置を停止位置検知装置50としてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、出湯および配湯システムに対して、本発明に係る配湯車両を適用する場合を説明したが、これ以外のシステム、例えば配湯ステーション20における配湯システムのみに本発明に係る配湯車両を適用しても構わない。
【0047】
また、上記以外の事項についても、本発明の技術的意義を没却しない限りにおいて他の具体的形態を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0048】
10 出湯ステーション
11 溶解炉
12 連絡通路
13 通路
14 上蓋脱着ステーション
15 ロボットアーム
20 配湯ステーション
21 鋳造装置
22 保持炉
23 通路
24 外部電源
30 溶融金属配湯車両
30 配湯車両
31 牽引車両
32 配湯用容器
33 被牽引車両
35 接続部
36 加圧気体注入装置
37 制御盤
38 コンプレッサ
39 圧力調整装置
41 回転機構
43 回転台
44 配湯用ノズル
46 上蓋部
50 停止位置検知装置
51 光センサ
52 反射板
53 QRコード
54 QRリーダー
55 重量計測手段
56 湯量管理手段
100 通路
101 配湯車両
102 保持炉
103 配湯用容器
104 配湯用ノズル
P1 配湯可能位置
P2 上蓋取外し位置
P3 出湯可能位置
P4 上蓋装着位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7