特許第5692915号(P5692915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692915
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   E02B5/08 103E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-96702(P2011-96702)
(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公開番号】特開2012-229519(P2012-229519A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591114102
【氏名又は名称】大同プラント工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】安藤 秀哲
(72)【発明者】
【氏名】大貫 直人
(72)【発明者】
【氏名】大貫 富雄
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭42−16115(JP,Y1)
【文献】 特開昭56−20217(JP,A)
【文献】 実開昭50−23036(JP,U)
【文献】 実開昭61−71616(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00−13/02
E02C 1/00− 5/02
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン面に沿って昇降する開閉可能なレーキ、該レーキの昇降を担い且つ少なくとも1本は該レーキの開閉をも担う複数のロープ、該複数のロープの基端側を巻き付けた複数のドラム及び該複数のドラムを一体的に回転させるモータを備え、スクリーン面に引っ掛かった塵芥類を、上昇時の閉じた状態のレーキで掻き上げて除去するようにした除塵装置において、機枠にガイド部材が取付けられており、該ガイド部材に架台が昇降可能に摺嵌されていて、該架台にパワーシリンダが支持され、該パワーシリンダのシリンダロッドの先端部にシーブが回転可能に軸受されており、該シーブにレーキの開閉をも担う1本のロープが係合されていて、シーブと係合する1本のロープによりパワーシリンダが機枠に対し宙吊りの浮遊状態で支持されて成ることを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
機枠にセンサが取付けられており、該センサでレーキの過開口によるシーブの下降動作を検知することによりドラムを回転させるモータの駆動を停止し、レーキの自動復帰不能状態を回避するようにした請求項1記載の除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除塵装置に関する。例えば、水力発電施設の取水口には、水と共に運ばれてきた枯れ草や枯れ枝等の塵芥類を引っ掛けて取り除くためのスクリーンが取付けられている。取水を支障なく継続して行なうためには、スクリーン面に引っ掛かった塵芥類を該スクリーン面から繰り返し除去することが必要であり、そのために除塵装置が使用されている。かかる除塵装置には、スクリーン面からの塵芥類の除去を円滑且つ確実に行なうだけではなく、その性質上、環境を汚染する危惧のないものであることが求められる。本発明は、かかる要求に応える除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような除塵装置として、開閉可能なレーキを複数のロープ、通常はワイヤロープを介してスクリーン面に沿い昇降させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。これらの従来装置は、複数のロープの先端側をレーキに接続し、また基端側をモータの駆動により回転するドラムに巻き付けて、モータの駆動によりドラムや複数のロープを介してレーキをスクリーン面に沿い昇降させる一方で、いずれかのロープを他のロープよりも余分に進退させることによりレーキを開閉させ、その上昇時に閉じた状態のレーキでスクリーン面の塵芥類を掻き上げて除去するようになっている。
【0003】
しかし、前記のような従来の除塵装置には、次のような問題がある。
1)いずれかのロープを他のロープよりも余分に進退させることによりレーキを開閉させる手段として、油圧シリンダが採用されることが多いが、油圧シリンダはその性質上、環境を汚染する危惧が高い。
2)レーキを開いた状態でスクリーン面に沿い下降させる途中で、該レーキが流木等に引っ掛かってしまうことがあるが、このようなときでも例えばモータ駆動のドラムがロープを前進させる方向(レーキを下降させる方向)に巻き出すため、ロープに弛みが生じ、これによってドラムに巻き付けられたロープが乱巻状態になって、これが原因で故障が発生し易い。
3)レーキを閉じた状態でスクリーン面に沿い上昇させ、該レーキでスクリーン面の塵芥類を掻き上げて除去するとき、例えばモータ駆動のドラムがロープを後退させる方向(レーキを上昇させる方向)に一定速度で巻き取るため、スクリーン面に不規則に引っ掛かっている塵芥類により、レーキが波打つようにバウンドし、そのためセンターワイヤーに弛みと緊張が交互に発生し、センタードラムの乱巻状態を起こして故障につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−057725号公報
【特許文献2】特開平09−228343号公報
【特許文献3】特開2002−105929号公報
【特許文献4】特開2010−189907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、除塵作業時の機械的故障につながるワイヤーの弛みを解消して、スクリーン面からの塵芥類の除去を円滑且つ確実に行なうことができ、しかも環境を汚染する危惧のない除塵装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決する本発明は、スクリーン面に沿って昇降する開閉可能なレーキ、該レーキの昇降を担い且つ少なくとも1本は該レーキの開閉をも担う複数のロープ、該複数のロープの基端側を巻き付けた複数のドラム及び該複数のドラムを一体的に回転させるモータを備え、スクリーン面に引っ掛かった塵芥類を、上昇時の閉じた状態のレーキで掻き上げて除去するようにした除塵装置において、機枠にガイド部材が取付けられており、該ガイド部材に架台が昇降可能に摺嵌されていて、該架台にパワーシリンダが支持され、該パワーシリンダのシリンダロッドの先端部にシーブが回転可能に軸受されており、該シーブにレーキの開閉をも担う1本のロープが係合されていて、シーブと係合する1本のロープによりパワーシリンダが機枠に対し宙吊りの浮遊状態で支持されて成ることを特徴とする除塵装置に係る。
【0007】
本発明に係る除塵装置も、従来の除塵装置と同様、スクリーン面、例えばバースクリーン面に沿って昇降する開閉可能なレーキ、該レーキの昇降を担い且つ少なくとも1本は該レーキの開閉をも担う複数のロープ、該複数のロープの基端側を巻き付けた複数のドラム及び該複数のドラムを一体的に回転させるモータを備え、スクリーン面に引っ掛かった塵芥類を、上昇時の閉じた状態のレーキで掻き上げて除去するようになっている。ロープの本数は2本以上であれば任意であるが、1本のセンターロープとその両側の2本のサイドロープとの合計3本とし、かかる合計3本のロープでレーキの昇降を担い、1本のセンターロープでレーキの開閉をも担うようにしたものが好ましい。
【0008】
本発明に係る除塵装置は、機枠にガイド部材が取付けられている。通常は左右で2本の柱状のガイド部材が鉛直方向に取付けられている。ガイド部材には架台が昇降可能に摺嵌されている。通常は上下で2枚の板状の架台が水平方向に摺嵌されている。架台にはパワーシリンダ(電動シリンダ)のシリンダ筒が支持され、該パワーシリンダのシリンダロッドの先端部にシーブが回転可能に軸受されている。
【0009】
パワーシリンダのシリンダロッドの先端部に回転可能に軸受されたシーブにはレーキの開閉をも担う1本のロープが係合されている。前記したようにロープが2本のサイドロープと1本のセンターロープとからなっていて、1本のセンターロープがレーキの開閉をも担うようにしたものの場合には、かかる1本のセンターロープがパワーシリンダのシリンダロッドの先端部に回転可能に軸受されたシーブと係合している。レーキの開閉をも担う1本のロープは、その基端側が機枠上部に回転可能に軸受された他のシーブを介してドラムに巻き付けられており、またその先端側が機枠上部に回転可能に軸受された更に他のシーブを介してレーキに接続されていて、したがって結果として、パワーシリンダのシリンダロッドの先端部に回転可能に軸受されたシーブと係合する1本のロープにより、パワーシリンダは機枠に対し宙吊りの浮遊状態で支持されている。
【0010】
本発明に係る除塵装置の作用を、便宜上、複数のロープが1本のセンターロープとその両側の2本のサイドロープとの合計3本のロープからなり、かかる合計3本のロープでレーキの昇降を担い、1本のセンターロープでレーキの開閉をも担うようにしたものについて説明する。3本のロープはその基端部がモータ駆動で一体的に回転する3台のドラムに巻き付けられており、またその先端部がレーキに接続されているので、ドラムを正転させ、3本のロープをドラムに巻き取って後退させると、レーキがスクリーン面に沿って上昇し、逆にドラムを反転させ、3本のロープをドラムから巻き出して前進させると、レーキが自重によりスクリーン面に沿って下降する。レーキの上昇時には、事前に、パワーシリンダのシリンダロッドを後退させ、1本のセンターロープを前進させると、レーキが自重により閉じ、逆にレーキの下降時には、事前に、パワーシリンダのシリンダロッドを前進させ、1本のセンターロープを後退させると、レーキが開く。スクリーン面に引っ掛かった塵芥類は、上昇時の閉じた状態のレーキで掻き上げて除去する。
【0011】
本発明に係る除塵装置によると、油圧シリンダを使用せず、パワーシリンダを使用するため、環境を汚染する危惧がない。また本発明に係る除塵装置によると、下降時の開いた状態のレーキに流木等が引っ掛かっても、レーキの開閉を担う1本のロープには機枠に対して宙吊りの浮遊状態で支持されているパワーシリンダ等の質量が常時かかっているため、該1本のロープが弛むことはなく、したがってこれを巻き取るドラムのロープが乱巻状態になることもなく、結果として故障の発生を未然に防止できる。更に本発明に係る除塵装置によると、閉じた状態のレーキがスクリーン面を上昇するとき、該スクリーン面に引っ掛かった塵芥類による不規則な起伏状態によって発生するロープの伸縮を、機枠に対して宙吊りの浮遊状態で支持されているパワーシリンダ等が下向に作用する自重によって吸収するため、レーキが波打つような状態にあってもスクリーン面からの塵芥類の除去を確実に行なうことができる。
【0012】
本発明に係る除塵装置においては、機枠にセンサを取付け、該センサでパワーシリンダのシリンダロッドの先端部に回転可能に軸受したシーブの下降動作を検知させ、これによりパワーシリンダのモータ駆動を停止させる。下降時の開いた状態のレーキが流木等により下降を阻害されると、該レーキはより開いた状態になるが、限度を超えて更に開くと、該レーキは反転して引っ繰り返った状態になってしまう。このような状態になると、レーキは自動的に復帰せず、厄介な手作業で復帰させることになる。かかる事態が生じるのを未然に防止するため、例えばレーキが反転する直前に相当するシリンダロッドの先端部のシーブの位置をレーキの開口限度に相当する下限位置とし、これをリミットスイッチや光電管等のセンサで検知して、ドラムを回転させるモータの駆動を停止させるのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る除塵装置によると、スクリーン面からの塵芥類の除去を他の動力を再度追加することなく自重を利用することによって円滑且つ確実に行なうことができ、しかも環境を汚染する危惧がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る除塵装置を例示する正面図。
図2図1の除塵装置において、レーキが開いて下降している状態を示す側面図。
図3図1の除塵装置において、レーキが閉じて上昇している状態を示す側面図。
図4図1の除塵装置において、レーキが開いて下降している途中で水面の流木に下降を阻害された状態を示す側面図。
【実施例】
【0015】
図1は本発明の一実施例を一部省略して示す正面図である。機枠11の上部の左右両側にシーブ21,22が回転可能に軸受されており、シーブ21,22に左右両側のサイドロープ31,32が係合されている。サイドロープ31,32の基端側は機枠11の下部に設置されたドラム41,42に巻き付けられており、またサイドロープ31,32の先端側はレーキシーブ51a,51bを介してレーキ51に接続されている。レーキシーブ51a,51b及びレーキ51には、レーキ51のスクリーンA面に沿う昇降を円滑に行なうためのローラ61〜64が回転可能に軸受されている。
【0016】
シーブ21とシーブ22との間の機枠11の上部に下向きで2本の円柱状のガイド部材71,72が鉛直方向に取付けられており、ガイド部材71,72に板状の架台73が水平方向に摺嵌されている。架台73にパワーシリンダ81が支持されており、パワーシリンダ81のシリンダロッド82の先端部にシーブ23が回転可能に軸受されている。
【0017】
シーブ23には1本のセンターロープ33が係合されており、センターロープ33の基端側は機枠11の上部に回転可能に軸受されたシーブ24を介して機枠11の下部に設置されたドラム43に巻き付けられていて、センターロープ33の先端側は機枠11の上部に回転可能に軸受されたシーブ25を介しレーキ51に接続されている。
【0018】
ガイド部材71,72と摺嵌する架台73に支持されたパワーシリンダ81及びシーブ23は、シーブ24とシーブ25との間でセンターロープ33により宙吊りの浮遊状態で支持されており、かかる状態で架台73及びパワーシリンダ81と共にシーブ23が自在に昇降することによって、センターロープ33にそれが弛まないようにするための一定の力が常時加わるようになっている。またドラム41〜43には1本の共通するシャフト44が通されており、シャフト44の基端部は機枠11の下部に設置されたモータ45に接続されていて、モータ45の駆動によりドラム41〜43が一体的に回転するようになっている。そして図示した一実施例の場合、機枠11の下部にセンサとしてリミットスイッチ91が取付けられており、シーブ23の軸受部からは棒状片92が延設されていて、シーブ23が巨大浮遊塵芥等に阻害され過開口になったときに棒状片92がリミットスイッチ91に当接して、モータ45の駆動を停止するようになっている。
【0019】
図2図1と同じ一実施例において、レーキが開いて下降している状態を一部省略して示す側面図である。パワーシリンダ81を作動させ、シリンダロッド82と共にシーブ23を下降させると、シーブ23と係合するセンターロープ33が後退し(ドラム43側に引き込まれ)、これによってレーキ51が持ち上がって開いた状態になる。この状態でモータ45の駆動によりドラム41〜43を一体的に回転(反転)させ、ドラム41〜43からサイドロープ31,32及びセンターロープ33を巻き出してこれらを前進させると(レーキ51側へ引き出すと)、これによって開いた状態のレーキ51がローラ61,62で誘導されつつスクリーンA面を下降する。
【0020】
図3図1と同じ一実施例において、レーキが閉じて上昇している状態を一部省略して示す側面図である。パワーシリンダ81を作動させ、シリンダロッド82と共にシーブ23を上昇させると、シーブ23と係合するセンターロープ33が前進し(レーキ51側に引き出され)、これによってレーキ51がその自重により下がって閉じた状態になる。この状態でモータ45の駆動によりドラム41〜43を一体的に回転(正転)させ、ドラム41〜43にサイドロープ31,32及びセンターロープ33を巻き取ってこれらを後退させると(ドラム41〜43側へ引き込むと)、これによって閉じた状態のレーキ51がローラ61,62で誘導されつつスクリーンA面を上昇する。図1図3に示した一実施例では、図3の状態、すなわちレーキ51が閉じて上昇している状態で、かかるレーキ51によりスクリーンA面に水圧で圧着されている塵芥類を掻き上げて除去する。
【0021】
図4図1と同じ一実施例において、レーキが開いて下降している途中でスクリーンA面の巨大浮遊塵芥等に阻害された状態を一部省略して示す側面図である。図2の場合と同様に、パワーシリンダ81を作動させ、シリンダロッド82と共にシーブ23を下降させると、シーブ23と係合するセンターロープ33が後退し(ドラム43側に引き込まれ)、これによってレーキ51が持ち上がって開いた状態になる。この状態でモータ45の駆動によりドラム41〜43を一体的に回転(反転)させ、ドラム41〜43からサイドロープ31,32及びセンターロープ33を巻き出してこれらを前進させると(レーキ51側へ引き出すと)、これによって開いた状態のレーキ51がローラ61,62で誘導されつつスクリーンA面を下降する。下降途中で、開いた状態のレーキ51が水面の流木Bに引っ掛かると、レーキ51はより開いた状態になり、その分だけセンターロープ33が後退し、後退分を架台73及びパワーシリンダ81と共にシーブ23が下降して吸収するが、レーキ51が限度を超えて更に開き、反転して引っ繰り返ろうとする直前で、すなわち自動的には復帰しなくなる直前でシーブ23の軸受部から延設された図1の棒状片92がリミットスイッチ91に当接して、ドラム41〜43を回転(反転)させるモータ45の駆動を停止させるのである。必要に応じて、更にモータ45を再駆動させ、ドラム41〜43を回転(正転)させて、レーキ51を上昇させることもできる。
【符号の説明】
【0022】
11 機枠
21〜26 シーブ
31,32 サイドロープ
33 センターロープ
41〜43 ドラム
45 モータ
51 レーキ
61〜64 ローラ
71,72 ガイド部材
73 架台
81 パワーシリンダ
82 シリンダロッド
91 リミットスイッチ
図1
図2
図3
図4