(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケース本体内の底面に前記第1の開口部の下端又はそれよりも下方に位置して設けられた第1の凸条をさらに備えた、請求項4〜6のいずれか1項に記載の建築物の外壁構造。
前記ケース本体内に形成される凹所の内周壁は、屋内側から屋外側に向かうにしたがって前記ケース本体の開口面と平行な面方向に拡がる勾配をもって形成されている、請求項9に記載の建築物の外壁構造。
前記補強材は、ポリビニルアルコール、ナイロン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)及びポリエチレンから選ばれる少なくとも1つであり、ネット状に形成されている請求項1〜14のいずれか1項に記載の建築物の外壁構造。
前記樹脂塗膜の材料に、第2の補強材として透明なフィラーが分散されており、前記フィラーは、ナイロン及び/又はガラスである請求項1〜15のいずれか1項に記載の建築物の外壁構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のような、タイル壁面を覆うようにして形成され、透明な補強材が埋設された透明な樹脂塗膜を備えたものにあっては、タイルの目地部の白化が問題となっていた。そして、この目地部の白化は、当初、建築物の屋上、ベランダ等のコンクリート下地面の防水処理の欠陥に起因するものと考えられていた。
【0011】
しかし、本発明者の調査の結果、建築物の屋上、ベランダ等のコンクリート下地面の防水処理には欠陥はなく、タイルの目地部の白化は何か他の現象に起因していると考えられるに至った。
【0012】
本発明者は、さらに調査・検討を重ね、タイルの目地部の白化が結露現象による溜まり水(結露水)に起因している事をつきとめた。より具体的には、本発明者は、屋内と屋外との温度差(約15℃以上)によって、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に結露水が溜まり、この結露水が目地部に滲み込んで白化を引き起こす事をつきとめた。また、建築物は屋内と屋外で息をさせる(通気を良好なものにする)必要があるが、上記のような、タイル壁面を覆うようにして形成され、透明な補強材が埋設された透明な樹脂塗膜を備えた建築物は、この条件を満たさないものとなっていた。そして、このように、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に結露水が溜まり、建築物の屋内と屋外の通気が良好なものとなっていなければ、カビ・ダニの発生の原因ともなり、居住者の健康を害うことにもなりかねない。尚、このようなカビ・ダニの発生を防止するためには、住宅内を適当な湿度・温度に設定しておく必要があり、特に、湿度を50%〜55%以下となるように調整しておく必要がある。
【0013】
そこで、本発明者は、以上のようなタイルの目地部の白化の問題と通気性の問題とカビ・ダニの発生の問題とを同時に解消すべく鋭意研究を重ね、本発明をするに至った。
【0014】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、既設のタイル壁面の持つ色調や色合いの外観を残したまま、タイルの剥離・脱落防止効果を付与することができると共に、タイルの目地部の白化の問題と通気性の問題とカビ・ダニの発生の問題とを同時に解消することができる建築物の外壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の建築物の外
壁は、躯体に下地モルタルを介して貼り付けられた複数のタイルからなるタイル壁面と、前記タイル壁面を覆うようにして形成され、透明な補強材が埋設された透明な樹脂塗膜とを備えた建築物の外壁構造であって、前記下地モルタルから一群の前記タイルを剥離し、
前記剥離した箇所に脱気盤が埋め込まれていることを特徴とする。
ここで、「一群のタイル」とは、一箇所にかたまって配置されたタイルを意味し、1枚であっても複数枚であってもよい。
【0016】
本発明の建築物の外壁の施工方法は、前記の建築物の外壁を施工する方法であって、躯体に下地モルタルを介して貼り付けられた複数のタイルからなるタイル壁面と、前記タイル壁面を覆う透明な補強材が埋設された透明な樹脂塗膜を備えた建築物の外壁の前記下地モルタルから一群の前記タイルを剥離し、前記剥離した箇所に建築物内の湿気を放出するための脱気盤を埋め込むことを特徴とする。
【0017】
この建築物の外壁構造の構成によれば、タイル壁面を覆うようにして形成され、透明な補強材が埋設された透明な樹脂塗膜により、既設のタイル壁面の持つ色調や色合いの外観を残したまま、タイルの剥離・脱落防止効果を付与することが可能となる。また、下地モルタルから一群のタイルを剥離され、その剥離した箇所に脱気盤が埋め込まれていることにより、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を屋外に排出することができるので、結露水が目地部に滲み込んで目地部の白化を引き起こすことを防止することができる。また、この脱気盤を埋め込むことにより、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることもできる。そして、このように、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を屋外に排出し、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることができれば、住宅内の湿度を、カビ・ダニの発生を防止し得る50%〜55%以下に調整しておくことが可能となり、カビ・ダニの発生の問題も解消することができる。すなわち、本発明によれば、既設のタイル壁面の持つ色調や色合いの外観を残したまま、タイルの剥離・脱落防止効果を付与することができると共に、タイルの目地部の白化の問題と通気性の問題とカビ・ダニの発生の問題とを同時に解消することができる建築物の外壁構造を提供することができる。
【0018】
前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記脱気盤と前記躯体との間の前記下地モルタルが、その周縁部を残した状態で除去されていることが好ましい。この好ましい例によれば、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を下地モルタルに形成された空洞を介して脱気盤内に導入し、そのまま屋外に排出させることができる。また、この場合には、前記脱気盤が、除去されずに残された前記下地モルタルの周縁部の表面に接着材により固着されていることが好ましい。この好ましい例によれば、建築物の外壁の施工中に脱気盤が外れてしまうことを防止することができる。
【0019】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記脱気盤は、中空の略直方体状に形成され、かつ、前記脱気盤は、屋内側の面と屋外側の面とが通気性及び透水性を有すると共に、屋外からの雨水の前記下地モルタル側への浸入を防止する機構を備えていることが好ましい。この好ましい例によれば、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を脱気盤内に導入して、そのまま屋外に排出させることができる。また、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることもできる。さらに、屋外から脱気盤内に吹き込んだ雨水が屋内に侵入することを防止することもできる。
【0020】
また、この場合には、前記脱気盤が、屋内側に位置するケース部と、屋外側に位置する蓋部とからなり、前記ケース部は、屋外側の面が開口した直方体状のケース本体と、前記ケース本体の底板に形成された第1の開口部と、前記ケース本体内の底面の下部に設けられ、屋内側から屋外側への下り勾配をもって前記ケース本体の屋外側の開口面から突出した排水プレートと、前記排水プレートを避けた状態で前記ケース本体の屋外側の開口面を覆う遮蔽プレートとを備え、前記蓋部は、屋内側の面が開口した蓋本体と、前記蓋本体の天板の下部に形成された、前記排水プレートを突出させるための第2の開口部と、前記蓋本体の天板に形成された複数の脱気孔とを備えていることが好ましい。この好ましい例によれば、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を、第1の開口部を介して脱気盤内に導入し、排水プレートを伝って屋外に排出させることができる。また、第1の開口部と複数の脱気孔とにより、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることができる。また、遮蔽プレートにより、複数の脱気孔を介して屋外から脱気盤内に吹き込んだ雨水等が第1の開口部を介して屋内に侵入することを防止することができる。また、排水プレートがケース本体の屋外側の開口面から突出していることにより、排水プレートを伝って排出される結露水によって樹脂塗膜が汚染されることを防止することができる。
【0021】
この場合にはさらに、前記ケース本体と前記蓋本体とが一体化されていることが好ましい。
【0022】
また、この場合にはさらに、前記遮蔽プレートの下端が前記第1の開口部よりも下方に位置していることが好ましい。この好ましい例によれば、複数の脱気孔を介して屋外から脱気盤内に吹き込んだ雨水等が第1の開口部を介して屋内に侵入することを確実に防止することができる。
【0023】
また、この場合にはさらに、前記ケース本体内の底面に前記第1の開口部の下端又はそれよりも下方に位置して設けられた第1の凸条をさらに備えていることが好ましい。この好ましい例によれば、排水プレートを突出させるための第2の開口部から脱気盤内に雨水等が入り込んだとしても、第1の凸条によって、その雨水等が第1の開口部を介して屋内に侵入することを防止することができる。
【0024】
また、この場合にはさらに、前記排水プレートの左右両側に位置して設けられた第2の凸条をさらに備えていることが好ましい。この好ましい例によれば、結露水を、排水プレートを伝って屋外に排出させる際に、当該結露水が前記排水プレートから脱気盤内に零れ落ちることを防止することができる。
【0025】
また、この場合には、前記脱気盤が、屋内側に位置するケース部と、屋外側に位置する蓋部とからなり、前記ケース部は、屋外側の面が開口した略直方体状のケース本体と、前記ケース本体の底板に形成された開口部と、前記ケース本体の底板を隆起させて形成された少なくとも1つの隆起部とを備え、前記蓋部は、前記ケース本体の開口面の大きさよりも小さい矩形状のプレートからなり、前記ケース本体の前記隆起部の先端面において前記ケース本体に固定されていることが好ましい。この好ましい例によれば、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を、開口部を介して脱気盤内に導入し、蓋部の周縁とケース本体の開口面の縁部との間の隙間を介して蒸気として屋外に排出させることができる。また、開口部と、蓋部の周縁とケース本体の開口面の縁部との間の隙間とにより、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることができる。
【0026】
この場合にはさらに、前記ケース本体内に形成される凹所の内周壁は、屋内側から屋外側に向かうにしたがって前記ケース本体の開口面と平行な面方向に拡がる勾配をもって形成されていることが好ましい。この好ましい例によれば、蓋部の周縁とケース本体の開口面の縁部との間の隙間を介して屋外から脱気盤内に吹き込んだ雨水等は、ケース本体内に形成される凹所の内周壁に当たるため、雨水等が開口部を介して屋内に侵入することを防止することができる。また、ケース本体内に形成される凹所の上側の内周壁は、屋外側から屋内側への下り勾配をもって形成され、ケース本体内に形成される凹所の下側の内周壁は、屋内側から屋外側への下り勾配をもって形成されることになるため、脱気盤内に吹き込んだ雨水等をケース本体内に形成される凹所の上側と下側の内周壁を伝って屋外へ排出させることができる。
【0027】
また、この場合にはさらに、前記蓋部は、前記ケース本体にビス留めによって固定されていることが好ましい。
【0028】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記脱気盤が非腐食性の材料からなることが好ましい。この好ましい例によれば、脱気盤が雨水等にさらされて錆びたりすることを防止することができる。また、この場合には、前記非腐食性の材料がステンレス鋼又はプラスチックであることが好ましい。
【0029】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記樹脂塗膜の材料が、ポリエステル系樹脂エマルション、ポリカーボネート系樹脂エマルション、ポリアミド系樹脂エマルション、ポリイミド系樹脂エマルション、ポリエーテルスルホン系樹脂エマルション、ポリスルホン系樹脂エマルション、ポリスチレン系樹脂エマルション、ポリノルボルネン系樹脂エマルション、ポリオレフィン系樹脂エマルション、アクリル系樹脂エマルション及びアセテート系樹脂エマルションから選ばれる少なくとも1つを主成分として含むことが好ましい。そして、中でも、比較的低温で硬化し、かつ、良好な耐候性、耐水性、耐酸性、高い平滑性、及び、高い硬度などの塗膜特性が容易に得られる点で、ポリエステル−ウレタン樹脂エマルションなどのポリエステル系樹脂エマルション、あるいは、アクリル−シリコン樹脂エマルション又はアクリル−ウレタン樹脂エマルションなどのアクリル系樹脂エマルションが好ましい。
【0030】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記補強材が、ネット状に形成されていることが好ましく、織布あるいは不織布を用いることができる。
【0031】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記補強材の材料が、ポリビニルアルコール、ナイロン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)及びポリエチレンから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0032】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記樹脂塗膜の材料に、第2の補強材として透明なフィラーが分散されていることが好ましい。この好ましい例によれば、樹脂塗膜の引っ張り強度をさらに向上させることができるので、タイルの剥離・脱落防止効果をより確実に達成することができる。また、この場合には、前記フィラーの材料が、ナイロン及び/又はガラスであることが好ましい。
【0033】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記タイル壁面を覆うようにして形成された透明な防水プライマー層をさらに備え、前記樹脂塗膜が前記防水プライマー層の表面を覆うようにして形成されていることが好ましい。この好ましい例によれば、躯体からタイルの目地部を通って染み出してくる水分を遮断して、樹脂塗膜が白化することを防止することができるので、タイル壁面の持つ色調や色合いの外観を残したままの状態にすることができる。また、この場合には、前記防水プライマー層の材料がアクリル系塗料であることが好ましい。この場合にはさらに、前記アクリル系塗料が、アクリル−シリコン系塗料又はアクリル−ウレタン系塗料であることが好ましい。
【0034】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、頭部が前記樹脂塗膜に固定されていると共に、前記タイル壁面を貫いて前記躯体に打ち込まれたアンカーピンをさらに備えていることが好ましい。この好ましい例によれば、補強材が埋設された樹脂塗膜(引っ張り強度の高い樹脂塗膜)と当該樹脂塗膜を躯体に強固に固定するアンカーピンとにより、建築物の外壁面にタイルのさらなる剥離・脱落防止効果を付与することが可能となる。そして、このような外壁構造とすることにより、タイル壁面としての3年ごとの打診調査、補修、報告が不要となり、長期的に見た場合に建築物のライフサイクルコストを大幅に低減することが可能となる。また、この場合には、前記アンカーピンの頭部が前記タイルと同色であることが好ましい。この好ましい例によれば、アンカーピンを目立たなくして、タイル壁面の持つ色調や色合いの外観を損なうことがないようにすることができる。
【0035】
また、前記本発明の建築物の外壁構造の構成においては、前記樹脂塗膜の表面に透明性トップコートがさらに塗布されていることが好ましい。この好ましい例によれば、建築物の外壁面の耐久性及び耐候性を向上させることができると共に、汚染を防止することもできる。また、この場合には、前記トップコートの材料が、親水性のフッ素系塗料であることが好ましい。尚、このように、トップコートの材料として親水性の材質のものを使用すれば、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、既設のタイル壁面の持つ色調や色合いの外観を残したまま、タイルの剥離・脱落防止効果を付与することができると共に、タイルの目地部の白化の問題と通気性の問題とカビ・ダニの発生の問題とを同時に解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0039】
〈建築物の外壁構造〉
まず、本発明に係る建築物の外壁構造について、
図1を参照しながら説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施の形態における建築物の外壁構造を示す垂直断面図である。尚、
図1において、左側が屋内側、右側が屋外側である。
【0041】
図1に示すように、コンクリート躯体1には、下地モルタル(「貼付けモルタル」を含む)2を介して複数のタイル3が縦横に貼り付けられており、これにより、タイル壁面4が形成されている。タイル壁面4には、当該タイル壁面4を覆うようにして透明な防水プライマー層(図示せず)が形成されている。この防水プライマー層は、コンクリート躯体1からタイル3の目地部17を通って染み出してくる水分を遮断するためのものである。また、防水プライマー層の表面には、当該防水プライマー層の表面を覆うようにして透明な樹脂塗膜5が形成されている。尚、樹脂塗膜5には透明な補強材6が埋設されており、これにより、引っ張り強度の高い樹脂塗膜5が実現されている。ここで、樹脂塗膜5は3層に分けて塗布されており、
図1中、5aは第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料を示しており、5bは第3層目の樹脂塗膜材料を示している。
【0042】
コンクリート躯体1には、タイル壁面4を貫いて、ワッシャ8が取り付けられた状態のアンカーピン7が打ち込まれている。ここで、アンカーピン7の頭部及びワッシャ8は、樹脂塗膜5に固定されている。また、アンカーピン7としては、引抜き強度が高くなるように、下端部分(コンクリート躯体1に打ち込まれる部分)に雄ネジが切られた、ステンレス鋼(SUS304)製の、所謂『ハイタップアンカーピン』(日本パワーファスニング株式会社製)が用いられている。尚、
図1においては、タイル3を貫いてアンカーピン7が打ち込まれているが、タイル3の目地部17を貫いてアンカーピン7を打ち込むようにしてもよい。
【0043】
以上の建築物の外壁構造の構成によれば、補強材6が埋設された樹脂塗膜5(引っ張り強度の高い樹脂塗膜)と当該樹脂塗膜5をコンクリート躯体1に強固に固定するアンカーピン7とにより、建築物の外壁面にタイル3の剥離・脱落防止効果を付与することが可能となる。また、防水プライマー層、補強材6及び樹脂塗膜5は全て透明であり、さらに、タイル壁面4と樹脂塗膜5との間に防水プライマー層を介在させることにより、コンクリート躯体1からタイル3の目地部17を通って染み出してくる水分を遮断して、樹脂塗膜5が白化することを防止するようにしたので、タイル壁面4の持つ色調や色合いの外観を残したままの状態にすることができる。すなわち、以上の建築物の外壁構造の構成によれば、タイル壁面4の持つ色調や色合いの外観を残したまま、タイル3の剥離・脱落防止効果を付与することのできる建築物の外壁構造を提供することができる。そして、このような外壁構造とすることにより、タイル壁面としての3年ごとの打診調査、補修、報告が不要となり、長期的に見た場合に建築物のライフサイクルコストを大幅に低減することが可能となる。この場合、アンカーピン7の頭部及びワッシャ8をタイル3の色と同一の色に塗装しておけば、アンカーピン7の頭部及びワッシャ8を目立たなくして、タイル壁面4の持つ色調や色合いの外観を損なうことがないようにすることができる。
【0044】
また、本実施の形態の建築物の外壁構造においては、下地モルタル2から95mm角の四角形状に隣接した4枚のタイル3を剥離し、その剥離した箇所に95mm角の脱気盤22が嵌め込まれている。また、脱気盤22とコンクリート躯体1との間の下地モルタル2は、その周縁部を残した状態で矩形状に除去され、そこに空洞18が形成されている。ここで、除去されずに残された下地モルタル2の周縁部は、脱気盤22を嵌め込んだときに当該脱気盤22を支持する役目を果たすものである。尚、脱気盤22は、除去されずに残された下地モルタル2の周縁部の表面に接着材(図示せず)により固着するようにされている。これにより、建築物の外壁の施工中に脱気盤22が外れてしまうことを防止することができる。
【0045】
そして、このように、タイル3を剥離した箇所に脱気盤22を嵌め込み、当該脱気盤22とコンクリート躯体1との間に空洞18を形成したことにより、タイル壁面4と下地モルタル2との境界付近に溜まった結露水を、空洞18を介して脱気盤22内に導入し、そのまま屋外に排出させることができるので、結露水が目地部17に滲み込んで目地部17の白化を引き起こすことを防止することができる。また、この脱気盤22を嵌め込むことにより、建築物の屋内と屋外との通気を、コンクリート躯体1、空洞18、脱気盤22を介して良好に行うことができる。そして、このように、タイル壁面4と下地モルタル2との境界付近に溜まった結露水を屋外に排出し、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることができれば、住宅内の湿度を、カビ・ダニの発生を防止し得る50%〜55%以下に調整しておくことが可能となり、カビ・ダニの発生の問題も解消することができる。
【0046】
すなわち、脱気盤22を含めた建築物の外壁構造の構成によれば、既設のタイル壁面4の持つ色調や色合いの外観を残したまま、タイル3の剥離・脱落防止効果を付与することができると共に、タイル3の目地部17の白化の問題と通気性の問題とカビ・ダニの発生の問題とを同時に解消することができる建築物の外壁構造を提供することができる。
【0047】
次に、脱気盤22の構造について、具体的に説明する。
【0048】
図2は、本発明の一実施の形態における建築物の外壁構造に用いられる脱気盤を示す斜視図、
図3は、当該脱気盤を示す分解斜視図、
図4(a)は、当該脱気盤を示す正面図、
図4(b)は、
図4(a)のIVb−IVb線断面図、
図5(a)は、当該脱気盤を構成するケース部を示す正面図、
図5(b)は、
図5(a)のVb−Vb線断面図、
図6(a)は、当該脱気盤を構成する蓋部を示す正面図、
図6(b)は、
図6(a)のVIb−VIb線断面図である。
【0049】
脱気盤22は、中空の略直方体状に形成されている。また、脱気盤22は、屋内側の面と屋外側の面とが通気性及び透水性を有すると共に、屋外からの雨水の前記下地モルタル2側への浸入を防止する機構を備えている。この脱気盤22の構成によれば、タイル壁面4と下地モルタル2との境界付近に溜まった結露水を脱気盤22内に導入して、そのまま屋外に排出させることができる。また、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることもできる。さらに、屋外から脱気盤22内に吹き込んだ雨水が屋内に侵入することを防止することもできる。
【0050】
より具体的には、
図1〜
図4に示すように、脱気盤22は、建築物の外壁に嵌め込んだ状態において、屋内側(コンクリート躯体1側)に位置するケース部20と、屋外側に位置する蓋部21とにより構成されている。
【0051】
図1〜
図5に示すように、脱気盤22を建築物の外壁に嵌め込んだ状態において、ケース部20は、屋外側の面が開口した直方体状のケース本体23と、ケース本体23の底板に形成された4つの矩形状の第1の開口部26と、ケース本体23内の底面の下部に固着され、屋内側から屋外側への下り勾配をもってケース本体23の屋外側の開口面から突出した排水プレート24と、排水プレート24を避けた状態でケース本体23の屋外側の開口面を覆う遮蔽プレート25とにより構成されている。
【0052】
図1〜
図4、
図6に示すように、脱気盤22を建築物の外壁に嵌め込んだ状態において、蓋部21は、屋内側の面が開口した直方体状の蓋本体27と、蓋本体27の天板の下部に形成され、蓋本体27をケース本体23に被せたときに排水プレート24を突出させるための長方形状の第2の開口部28と、蓋本体27の天板のほぼ全体にわたって形成された複数の脱気孔29とにより構成されている。
【0053】
脱気盤22を以上のように構成すれば、タイル壁面4と下地モルタル2との境界付近に溜まった結露水を、第1の開口部26を介して脱気盤22内に導入し、排水プレート24を伝って屋外に排出させることができる。また、第1の開口部26と複数の脱気孔29とにより、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることができる。また、遮蔽プレート25により、複数の脱気孔29を介して屋外から脱気盤22内に吹き込んだ雨水等が第1の開口部26を介して屋内に侵入することを防止することができる。また、排水プレート24がケース本体23の屋外側の開口面から突出していることにより、排水プレート24を伝って排出される結露水によって樹脂塗膜5が汚染されることを防止することができる。
【0054】
遮蔽プレート25の下端は、第1の開口部26よりも下方に位置していることが望ましい。この望ましい構成によれば、複数の脱気孔29を介して屋外から脱気盤22内に吹き込んだ雨水等が第1の開口部26を介して屋内に侵入することを確実に防止することができる。
【0055】
また、
図1〜
図5に示すように、排水プレート24の固着部分には、その上端に第1の凸条24aが「反し」として一体的に設けられていることが望ましい。この望ましい構成によれば、排水プレート24を突出させるための第2の開口部28から脱気盤22内に雨水等が入り込んだとしても、第1の凸条24aによって、その雨水等が第1の開口部26を介して屋内に侵入することを防止することができる。
【0056】
また、
図1〜
図5に示すように、排水プレート24の左右両側に第2の凸条30が設けられていることが望ましい。この望ましい構成によれば、結露水を、排水プレート24を伝って屋外に排出させる際に、当該結露水が排水プレート24の左右両側から脱気盤22内に零れ落ちることを防止することができる。
【0057】
脱気盤22(ケース部20及び蓋部21)は、非腐食性の材料からなっている。脱気盤22の材料として非腐食性の材料を用いれば、脱気盤22が雨水等にさらされて錆びたりすることを防止することができる。ここでは、脱気盤22としてステンレス鋼(SUS304)製のものが用いられている。尚、ステンレス鋼製の脱気盤22は、タイル3の色と同一の色に塗装されておらず、建築物の外壁面の模様として用いられている。
【0058】
さらに、樹脂塗膜5の表面には透明性トップコート(図示せず)が塗布されている。このように樹脂塗膜5の表面にトップコートを塗布すれば、建築物の外壁面の耐久性及び耐候性を向上させることができると共に、汚染を防止することもできる。
【0059】
防水プライマー層の材料としては、アクリル系塗料等を用いることができる。中でも、アクリル−シリコン系塗料又はアクリル−ウレタン系塗料が、防水プライマー層の材料として好ましい。アクリル−シリコン系塗料としては、例えば、神東塗料株式会社製の『マイルドハイテンクリヤー』等を用いることができ、アクリル−ウレタン系塗料としては、例えば、セラスター塗料株式会社製の二液反応硬化形アクリルウレタン系塗材である『フォック・LC185クリア』等を用いることができる。尚、防水プライマー層の材料としては透光率の高いもの(透明であるもの)が好ましいが、透明にこだわらなければ、アクリル−ウレタン系塗料としてセラスター塗料株式会社製の二液反応硬化形アクリルウレタン系塗材である『フォック・LC185各色』等を使用することもできる。
【0060】
樹脂塗膜5の材料としては、ポリエステル系樹脂エマルション、ポリカーボネート系樹脂エマルション、ポリアミド系樹脂エマルション、ポリイミド系樹脂エマルション、ポリエーテルスルホン系樹脂エマルション、ポリスルホン系樹脂エマルション、ポリスチレン系樹脂エマルション、ポリノルボルネン系樹脂エマルション、ポリオレフィン系樹脂エマルション、アクリル系樹脂エマルション及びアセテート系樹脂エマルション等を主成分として含むものを用いることができる。中でも、ポリエステル−ウレタン樹脂エマルションなどのポリエステル系樹脂エマルション、あるいは、アクリル−シリコン樹脂エマルション又はアクリル−ウレタン樹脂エマルションなどのアクリル系樹脂エマルションは、比較的低温で硬化し、かつ、良好な耐候性、耐水性、耐酸性、高い平滑性、及び、高い硬度などの塗膜特性が容易に得られる点で、樹脂塗膜5の材料として好ましい。特に、シリコン含有量7〜30%のアクリル−シリコン樹脂エマルション(アクリル組成=メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸2エチルヘキシル(2EHA))が好ましく、旭化成ケミカルズ株式会社製の『水性無機用ラテックスH7600シリーズ』又は『ポリトロンE−2050』等を用いることができる。この場合のエマルションの透明造膜の温度を下げるための造膜助剤としては、協和発酵ケミカル株式会社製のブチルセロソルブ約10phr、チッソ株式会社製のテキサノール20phr等が使用される。以上のような組成の樹脂塗膜5の材料は、タイル面に対する接着性も良好である(タイル面に対する付着強さは、約0.82〜1.75N/mm
2)。また、水系のエマルションであるため、臭気も殆ど無く、環境に優しい材料である。
【0061】
補強材6は、ネット状に形成されており、その材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)及びポリエチレン等を用いることができる。補強材6としては、特に、ポリビニルアルコール(PVA)の割布を用いてネット状に形成したもの(ケン化率98%)(以下単に『PVA割布ネット』という)(透光率約85%)、ポリエチレン製、ナイロン製又はポリプロピレン(PP)製のネット(目開き1〜15mm)が好ましい。PVA割布ネットは、格子目を構成した低伸度の構造体であり、樹脂塗膜5に対して縦方向、横方向の安定性と強度補強効果とを与える。PVA割布ネットとしては、例えば、ダイオ化成株式会社製のPVA系変性透明割布ネット・DT550を用いることができる。尚、補強材6としては透光率の高いもの(透明であるもの)が好ましいが、透明にこだわらなければ、補強材6の材料としてビニロン、カーボン等を使用することもできる。補強材6として、ネット状に形成したものを用いることにより、当該補強材6を樹脂塗膜5の材料中に十分絡めて、補強材6と樹脂塗膜5とを一体化することができる。
【0062】
トップコートの材料としては、親水性のフッ素系塗料等を用いることができる。このように、トップコートの材料として親水性の材質のものを使用すれば、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【0063】
また、樹脂塗膜5の材料に、第2の補強材として透明なフィラー(図示せず)を分散すれば、樹脂塗膜5の引っ張り強度をさらに向上させることができる。そして、これによれば、タイルの剥離・脱落防止効果をより確実に達成することが可能となる。
【0064】
透明なフィラーの材料としては、ナイロン6、ナイロン66等からなるナイロン繊維及び/又はガラス繊維等を用いることができる。繊維の太さは1〜3デニール、長さは3〜6mmであることが好ましい。尚、フィラーとしては透光率の高いもの(透明であるもの)が好ましいが、透明にこだわらなければ、フィラーの材料としてビニロン繊維等を使用することもできる。
【0065】
防水プライマー層、補強材6が埋設された樹脂塗膜5、及び、トップコートの透光率は、それぞれ80%以上であることが好ましく、さらには95%以上であることが好ましい。ここで、透光率は、JIS Z 8722に準拠した方法で測定される。
【0066】
フィラーが分散され、かつ、補強材6が埋設された樹脂塗膜5の透光率は、80%以上であることが好ましく、さらには95%以上であることが好ましい。
【0067】
下地モルタル2とそれに貼り付けられたタイル3との合計厚みは約60mm、防水プライマー層の厚みは30〜100μm、樹脂塗膜5の塗布量は0.7〜1.9kg/m
2、トップコートの塗布量は0.2〜0.3kg/m
2である。
【0068】
アンカーピン7としてのハイタップアンカーピンは、下地モルタル2とそれに貼り付けられたタイル3との合計厚みが約60mmの場合、その大きさが直径6.0mm×長さ95mmであり、埋め込み深さ(コンクリート躯体1に打ち込まれる部分の長さ)は35mmである。
【0069】
〈建築物の外壁の施工方法〉
次に、上記した建築物の外壁構造の施工方法について、
図7〜
図12を参照しながら説明する。ここでは、既設タイル壁面の補修方法を例に挙げて説明する。
【0070】
図7は、一実施の形態における、下地モルタル等の浮きが発生している場合の補修方法を示す垂直断面図、
図8は、一実施の形態における建築物の外壁構造の施工方法の一部を示す工程垂直断面図、
図9は、一実施の形態における建築物の外壁構造の施工方法の他の一部を示す工程垂直断面図、
図10は、一実施の形態における建築物の外壁構造の施工方法のさらに他の一部を示す工程垂直断面図、
図11は、一実施の形態における建築物の外壁構造の施工方法を示すフローチャート、
図12は、一実施の形態における建築物の外壁構造の施工方法に用いるアンカーピンの打込み位置(アンカーピン用の孔の位置)及び脱気盤の嵌め込み位置(空洞の位置)を示す概略正面図である。
【0071】
まず、事前調査として、タイル3の欠落、浮き部等の調査、付着力の測定などを行う(
図11のステップ1)。
【0072】
次に、事前調査によってタイル3の欠落が発見された場合には、タイル欠落部の補修を行い、下地モルタル2等の浮きが発生していることが発見された場合には、エポキシ樹脂の注入を行う(
図11のステップ2)。例えば、下地モルタル2の浮きが発生している場合には、
図7に示すように、タイル壁面4を貫いて、電気ドリルでコンクリート躯体1にパイプアンカーピン用の孔を穿孔し、ワッシャ13が取り付けられた状態の樹脂注入用のパイプアンカーピン9(ステンレス鋼(SUS304)製)(吉野精機株式会社製)を前記孔に挿入する。そして、パイプアンカーピン9にエポキシ樹脂10を注入することにより、パイプアンカーピン9に設けられた吐出口11を介して、コンクリート躯体1と下地モルタル2との間隙14にエポキシ樹脂10を充填する。尚、パイプアンカーピン9の頭部及びワッシャ13は、タイル3の色と同一の色に塗装しておく。パイプアンカーピン9は、ロックピン15を打ち込んでコンクリート躯体1に固定する開脚型のピンである。パイプアンカーピン9は、その大きさが直径6.0mm×長さ40〜90mmであり、埋め込み深さ(コンクリート躯体1に打ち込まれる部分の長さ)は30mm以上である。尚、
図7中、16はキャップを示している。
【0073】
次に、アンカーピンとしてハイタップアンカーピンを使用する場合について説明する。
【0074】
図8(a)に示すように、タイル3、下地モルタル2を貫いて、電気ドリルでコンクリート躯体1に直径5.5mmのアンカーピン用の孔12を穿孔し(
図11のステップ3)、孔12に残っている削粉を清掃する。また、下地モルタル2から95mm角の四角形状に隣接した4枚のタイル3を剥離し、その剥離した箇所の下地モルタル2を、周縁部を残した状態で矩形状に除去して、空洞18を形成する(
図11のステップ3)。
図12に示すように、アンカーピン用の孔12(○で表示)は1m
2当たり4個穿孔され、隣接する孔12の間隔は縦、横共に500mmである。また、95mm角の四角形状に隣接した4枚のタイル3の剥離(
図12に■で表示)は、9m
2当たり一箇所の割合で行われる。
【0075】
次に、
図8(b)に示すように、アンカーピン用の孔12を発泡スチロール製の栓19で密閉した後、タイル壁面4、タイルを剥離した箇所及び空洞18内を低圧洗浄して、タイル壁面4の汚れ、並びに、タイルを剥離した箇所及び空洞18内に残っているタイルの破片等を除去する(
図11のステップ4)。
【0076】
次に、タイル壁面4に、ローラを用いて、透明性プライマーとしての神東塗料株式会社製の『マイルドハイテンクリヤー』を塗布することにより、透明な防水プライマー層(厚み約50μm)(図示せず)(透光率約90%以上)を形成する(
図11のステップ5)。ここで、透明性プライマーの塗布量は、約0.2kg/m
2である。
【0077】
次に、
図8、(b)、(c)に示すように、下地モルタル2から95mm角の四角形状に隣接した4枚のタイル3を剥離した箇所に脱気盤22を嵌め込む(
図11のステップ6)。ここで、除去されずに残された下地モルタル2の周縁部の表面には接着材(図示せず)が塗布されており、これにより、脱気盤22は建築物の外壁に埋め込まれた状態で固着される。
【0078】
次に、
図9(d)に示すように、防水プライマー層が乾燥した後に、当該防水プライマー層の表面に、コテやローラを用いて、透明な樹脂塗膜5(
図1参照)を形成するための第1層目の樹脂塗膜材料(塗布量約0.5kg/m
2)を塗布する(
図11のステップ7)。第1層目の樹脂塗膜材料としては、第2の補強材として繊維の太さ1.7デニール、長さ約3mmのナイロン繊維が1〜5質量%の割合で均一に分散された旭化成ケミカルズ株式会社製の『ポリトロンE−2050』を用いる。次いで、第1層目の樹脂塗膜材料の上に、コテやローラを用いて、透明な樹脂塗膜5(
図1参照)を形成するための第2層目の樹脂塗膜材料(塗布量約0.5kg/m
2)を塗布する(
図11のステップ8)。第2層目の樹脂塗膜材料は、第1層目の樹脂塗膜材料と同じものである。尚、
図9(d)においては、第1層目の樹脂塗膜材料と第2層目の樹脂塗膜材料を、1つの参照符号5aによって示している。また、第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5aは、脱気盤22の周縁部に載った状態で塗布されている。
【0079】
次に、
図9(e)に示すように、第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5aを塗布した後、直ちに、当該第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5aの上に、ダイオ化成株式会社製のPVA系変性透明割布ネット・DT550からなる複数枚の補強材6(各補強材6の大きさ1.05m×1.05m)を、50mmずつ重ねた状態で縦横に貼り付け(
図12参照)、金ゴテでしごいて、当該補強材6を第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5aに埋め込む(
図11のステップ9)。
【0080】
次に、
図9(e)、
図10(f)に示すように、アンカーピン用の孔12から発泡スチロール製の栓19を抜き取り、当該アンカーピン用の孔12に、ワッシャ8が取り付けられた状態のアンカーピン7(ハイタップアンカーピン)をインパクトドリルで打ち込み(捩じ込み)(
図11のステップ10)、ワッシャ8で補強材6を押え付ける。すなわち、補強材6、第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5a並びにタイル壁面4を貫いてコンクリート躯体1にアンカーピン7を打ち込む。アンカーピン7の頭部及びワッシャ8は、タイル3の色と同一の色に塗装しておく。
【0081】
次に、コンクリート躯体1に打ち込んだアンカーピン7の頭部、ワッシャ8及びその周辺に透明な樹脂塗膜5(
図1参照)の材料(第2の補強材として繊維の太さ1.7デニール、長さ約3mmのナイロン繊維が1〜5質量%の割合で均一に分散された旭化成ケミカルズ株式会社製の『ポリトロンE−2050』)を用いて下塗りする(
図11のステップ11)。このように下塗りするのは、アンカーピン7の頭部、ワッシャ8及びその周辺にも透明な樹脂塗膜5の材料を十分に行き渡らせるためである。
【0082】
次に、
図10(g)に示すように、第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5aの上に、コテやローラを用いて、透明な樹脂塗膜5を形成するための第3層目の樹脂塗膜材料5b(塗布量約0.5kg/m
2)を塗布する(
図11のステップ12)。第3層目の樹脂塗膜材料5bは、第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5aと同じものである。以上により、第2の補強材(フィラー)として繊維の太さ1.7デニール、長さ約3mmのナイロン繊維が1〜5質量%の割合で均一に分散され、かつ、PVA系変性透明割布ネット・DT550が埋設された、旭化成ケミカルズ株式会社製の『ポリトロンE−2050』からなる塗布量約1.3kg/m
2の樹脂塗膜5が得られる。このようにして得られた樹脂塗膜5の透光率は約80%である。そして、アンカーピン7の頭部及びワッシャ8は、樹脂塗膜5中に固定された状態となる。
【0083】
以上の施工方法によれば、上述した建築物の外壁構造を容易に実現することができる。すなわち、タイル壁面4の持つ色調や色合いの外観を残したまま、タイル3の剥離・脱落防止効果を付与することができると共に、タイル3の目地部17の白化の問題と通気性の問題とカビ・ダニの発生の問題とを同時に解消することができる建築物の外壁の施工方法を提供することが可能となる。
【0084】
最後に、第1層目及び第2層目の樹脂塗膜材料5aと第3層目の樹脂塗膜材料5bが乾燥した後、樹脂塗膜5の表面に、ローラ又はエアーレススプレーを用いて、透明な親水性のフッ素系塗料からなる超耐候性トップコートを2回に分けて塗布する(塗布量0.1kg/m
2×2)(
図11のステップ13)。親水性のフッ素系塗料としては、株式会社ハマキャスト製の「ニューハマトップ(商品名)」を用いた。このように、樹脂塗膜5の表面を超耐候性トップコート仕上げによって被覆したことにより、建築物の外壁面の耐久性及び耐候性を向上させることができると共に、汚染を防止することもできる。また、このように、トップコートとして親水性の材質のものを使用すれば、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。その結果、長期間美装状態を保ち、かつ、メンテナンスが不要で耐久性の高い建築物の外壁面が得られる。すなわち、20年を越え、好ましくは30年を越え、さらに好ましくは40年を越える耐久性の高い非汚染仕上げ面が得られる。
【0085】
図13に、上記のようにして得られた樹脂塗膜5(樹脂+フィラー+ネット)の引っ張り強度を、フィラーのみを含む場合(樹脂+フィラー)、及び、フィラーもネットも含まない場合(樹脂のみ)と比較して示す。引っ張り強度は、インストロン社製の"インストロン万能材料試験機"を用いて測定した。
図13に示すように、樹脂+フィラー+ネットからなる樹脂塗膜は、樹脂のみからなる樹脂塗膜の場合に比較して(樹脂+フィラーからなる樹脂塗膜の場合と比較しても)引っ張り強度がかなり向上していることが分かる。
【0086】
また、本工法における、タイルの剥離・脱落を防止するために設けられた樹脂塗膜5(樹脂+フィラー+ネット)及びハイタップアンカーピンが、建築物の外壁全体を支持する強度について計算すると、以下のようになる。
【0087】
まず、下地モルタル2とそれに貼り付けられたタイル3との合計厚みが60mm(ここでは、比重2.2とする)、樹脂塗膜5(樹脂+フィラー+ネット)の塗布量が約1.3kg/m
2(比重1.0)の場合、壁面全体の自重は133kg/m
2=1.30kN/m
2となる。
【0088】
一方、ハイタップアンカーピン(直径6.0mm、埋め込み深さ35mm、コンクリート躯体1のコンクリート圧縮強度24.0N/mm
2)の引抜き強度は8.7kN/本であり、安全性を考慮して「各種合成構造設計指針、メカニカルアンカーボルトの設計」の低減係数0.6を乗じると、ハイタップアンカーピンの耐力は5.22kN/本となる。そして、1m
2当たり4本のハイタップアンカーピンが使用されるので、ハイタップアンカーピンの1m
2当たりの引抜き強度は5.22kN/本×(4本/m
2)=20.88kN/m
2となる。
【0089】
従って、本工法によれば、タイルの剥離・脱落を確実に防止することができる。また、(樹脂+フィラー+ネット)の引っ張り強度は最大450N/45mm幅であり(
図13参照)、1m幅当たり10000N(1020kgf/1m幅)の強度があり、タイルの脱落の予防保全効果がある。
【0090】
尚、本実施の形態においては、既設タイル壁面を補修する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、タイル壁面を備えた建築物を新しく造る場合にも有用である。
【0091】
また、上記実施の形態においては、別体のケース部20と蓋部21とにより構成された脱気盤22を用いる場合を例に挙げて説明したが、脱気盤としては必ずしもかかる構成のものに限定されるものではない。例えば、ケース本体23と蓋本体27とが一体化された構成の脱気盤を用いることもできる。
【0092】
また、上記実施の形態においては、下地モルタル2から95mm角の四角形状に隣接した4枚のタイル3を剥離し、その剥離した箇所に95mm角の脱気盤22を嵌め込む場合を例に挙げて説明したが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、1枚のタイルを剥離し、その剥離した箇所に1枚のタイルとほぼ同じ大きさの脱気盤を嵌め込むようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態においては、95mm角の脱気盤22を、9m
2当たり1個の割合で埋め込む場合を例に挙げて説明したが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。例えば、脱気盤の大きさに応じて、3m
2〜15m
2当たり1個の割合で脱気盤22を埋め込むようにしてもよい。より好ましくは、4m
2〜9m
2当たり1個の割合で脱気盤22を埋め込むようにするのがよい。
【0094】
また、上記実施の形態においては、第1の凸条24aが、排水プレート24の固着部分の上端に一体的に設けられている場合を例に挙げて説明したが、第1の凸条は、ケース本体23内の底面に設けられていればよい。
【0095】
また、上記実施の形態においては、脱気盤22とコンクリート躯体1との間の下地モルタル2を、周縁部を残した状態で除去し、そこに空洞18を形成する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を屋外に排出させるためには、脱気盤22の屋内側の面に第1の開口部26が形成されていれば十分である。但し、空洞18を形成すれば、タイル壁面と下地モルタルとの境界付近に溜まった結露水を、空洞18を介して効率良く脱気盤22内に導入することができる。
【0096】
また、上記実施の形態においては、アンカーピン7として所謂『ハイタップアンカーピン』を用いる場合を例に挙げて説明したが、アンカーピン7は必ずしもハイタップアンカーピンに限定されるものではない。例えば、
図14に示すように、アンカーピン7として下端部分(コンクリート躯体1に打ち込まれる部分)が湾曲した所謂『コブラアンカーピン』を用いてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態においては、
図2〜
図6に示す構成の脱気盤22を用いる場合を例に挙げて説明したが、脱気盤としては必ずしもかかる構成のものに限定されるものではない。脱気盤としては、タイル壁面4と下地モルタル2との境界付近に溜まった結露水を蒸気として屋外に排出させることができ、かつ、建築物の屋内と屋外との通気を良好に行うことができるものであればよい。例えば、
図15〜
図17に示す構成の脱気盤31を用いることもできる。
【0098】
以下、この脱気盤31について、
図15〜
図17を参照しながら説明する。
【0099】
図15(a)は、本発明の一実施の形態における建築物の外壁構造に用いられる脱気盤の他の例を示す正面図、
図15(b)は、
図15(a)のXVb−XVb線断面図、
図16(a)は、当該脱気盤を構成するケース部を示す正面図、
図16(b)は、
図16(a)のXVIb−XVIb線断面図、
図16(c)は、
図16(a)のXVIc−XVIc線断面図、
図17(a)は、当該脱気盤を構成する蓋部を示す正面図、
図17(b)は、
図17(a)のXVIIb−XVIIb線断面図、
図17(c)は、
図17(a)のXVIIc−XVIIc線断面図である。
【0100】
図15に示すように、脱気盤31は、建築物の外壁に嵌め込んだ状態において、屋内側(
図15(b)の右側)に位置するケース部32と、屋外側(
図15(b)の左側)に位置する蓋部33とにより構成されている。
【0101】
図15、
図16に示すように、脱気盤31を建築物の外壁に嵌め込んだ状態において、ケース部32は、屋外側の面が開口した略直方体状のケース本体32aと、ケース本体32aの底板に形成された3つの開口部37と、ケース本体32aの底板の開口部37間に形成された2つのビス孔36とにより構成されている。ここで、ケース本体32aは、ビス孔36が形成された部分が隆起しており、その結果として形成される凹所32bの内周壁は、屋内側から屋外側に向かうにしたがってケース本体32aの開口面と平行な面方向に拡がる勾配をもって形成されている。すなわち、
図15(b)、
図16(c)に示すように、脱気盤31を建築物の外壁に嵌め込んだ状態において、ケース本体32a内の凹所32bの上側の内周壁は、屋外側から屋内側への下り勾配をもって形成され、ケース本体32a内の凹所32bの下側の内周壁は、屋内側から屋外側への下り勾配をもって形成されている。また、凹所32bの左右の内周壁は、屋内側から屋外側に向かうにしたがってそれぞれ左右に拡がる勾配をもって形成されている。
【0102】
図15、
図17に示すように、蓋部33は、矩形状のプレートからなり、当該矩形状のプレートからなる蓋部33には、ケース本体32aのビス孔36と対応する部位にビス孔34が形成されている。
【0103】
ビス孔36にビス孔34を合わせた状態で、ケース本体32aに蓋部33を被せ、ビス35を用いて両者を固定することにより、脱気盤31が組み立てられる(
図15参照)。そして、このようにして組み立てられた脱気盤31は、上記脱気盤22の場合と同様に、除去されずに残された下地モルタル2の周縁部の表面に接着材により固着される(
図1参照)。ここで、矩形状のプレートからなる蓋部33の大きさは、ケース本体32aの開口面の大きさよりも多少小さくなっており(蓋部33の大きさは88mm×38mm、ケース本体32aの開口面の大きさは95mm×45mm)、蓋部33の周縁とケース本体32aの開口面の縁部との間には隙間が形成されている。尚、蓋部33は、必ずしもビス留めによってケース本体32aに固定される必要はなく、固定手段としては溶接等の他の公知の手段を用いることもできる。
【0104】
脱気盤31を以上のように構成すれば、タイル壁面4と下地モルタル2との境界付近に溜まった結露水を、開口部37を介して脱気盤31内に導入し、蓋部33の周縁とケース本体32aの開口面の縁部との間の隙間を介して蒸気として屋外に排出させることができる。また、開口部37と、蓋部33の周縁とケース本体32aの開口面の縁部との間の隙間とにより、建築物の屋内と屋外の通気を良好なものにすることができる。また、ケース本体32a内の凹所32bの内周壁が、屋内側から屋外側に向かうにしたがってケース本体32aの開口面と平行な面方向に拡がる勾配をもって形成されていることにより、蓋部33の周縁とケース本体32aの開口面の縁部との間の隙間を介して屋外から脱気盤31内に吹き込んだ雨水等は、ケース本体32a内の凹所32bの内周壁に当たるため、雨水等が開口部37を介して屋内に侵入することを防止することができる。また、ケース本体32a内の凹所32bの上側の内周壁は、屋外側から屋内側への下り勾配をもって形成され、ケース本体32a内の凹所32bの下側の内周壁は、屋内側から屋外側への下り勾配をもって形成されているため、脱気盤31内に吹き込んだ雨水等をケース本体32a内の凹所32bの上側と下側の内周壁を伝って屋外へ排出させることができる。尚、屋外からの雨水の下地モルタル2側への浸入を他の機構によって防止することができれば、ケース本体32a内の凹所32bの内周壁は、必ずしも屋内側から屋外側に向かうにしたがってケース本体32aの開口面と平行な面方向に拡がる勾配をもって形成されている必要はない。
【0105】
また、上記実施の形態においては、脱気盤22、31の屋内側の面に第1の開口部26(開口部37)を形成し、屋外側の面に脱気孔29(蓋部33の周縁とケース本体32aの開口面の縁部との間の隙間)を形成することにより、脱気盤の屋内側の面と屋外側の面とが通気性及び透水性を有するようにしているが、必ずしもかかる構成のものに限定されるものではなく、通気性及び透水性を確保できる構成であればよい。
【0106】
脱気盤31(ケース部32及び蓋部33)は、非腐食性の材料からなっている。脱気盤31の材料として非腐食性の材料を用いれば、脱気盤31が雨水等にさらされて錆びたりすることを防止することができる。ここでは、脱気盤31としてステンレス鋼(SUS304)製のものが用いられている。
【0107】
また、上記実施の形態においては、脱気盤22(31)としてステンレス鋼製のものを用いる場合を例に挙げて説明したが、脱気盤22(31)は必ずしもステンレス鋼製のものに限定されるものではない。但し、脱気盤22(31)は非腐食性の材料からなることが望ましく、非腐食性の材料としては他にプラスチック等が考えられる。