(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記操作機構は、一端部が上記ランナに回動可能に取り付けられ、他端部が上記第1の脚アームに回動可能に取り付けられた第1の操作アームと、一端部が上記第1の操作アームに回動可能に取り付けられ、他端部が上記第2の脚アームに回動可能に取り付けられた第2の操作アームとを有する請求項1記載の走行ロボット。
【背景技術】
【0002】
大規模地震等の大規模災害が発生した現場では、二次災害の防止のため、救急隊も直ちに突入することができないことがある。そこで、災害現場では、被害者や救助隊の安全確保のためにも、事前に、安全な経路の探索、危険物や被害者の捜索等の情報収集が重要である。これらが生起する環境は、市街地や建物内の比較的平坦な場所ばかりではなく、砂地や草地等の自然環境、地下鉄構内や地下道等人工的な凹凸の多い場所も想定される。人に代わって危険な情報収集を行うロボットとして、小型・軽量で携行性も良く、どのような環境でも安定的に走行できる対地適応性の高い走行ロボットが望まれる。
【0003】
これまで様々な情報収集ロボットの開発がされてきたが、近年の傾向としては、装備として隊員の負担にならない程度の小型・軽量のものが増えつつある。
【0004】
例えば、三菱電機特機システム株式会社と総務省消防庁は、クローラー型の移動ロボットとしてFRIGO−Mを共同開発した(下記非特許文献1参照)。この移動ロボットは、全長0.437[m]、全幅0.350[m]、全高0.152[m]、質量約12[kg]であり、走行速度は約1.1[m/s]と速く、不整地走破性も高い。
【0005】
しかしながら、携行に人員一名を要するため携行性が良いとは言い難い。
【0006】
また、RECON ROBOTICS社(米国)は、小型・軽量で実用的なRECON SCOUT THROWBOTを開発し、警察等で実用試験を行っている(下記非特許文献2参照)。車輪径0.076[m]、全幅0.187[m]、バランサ(尻尾)長0.102[m]、質量約0.6[kg]であり、走行速度は約0.3[m/s]である。非常に小型・軽量で構造も簡素であるが、二輪型であるため、建物内にあるケーブル等の小さな凹凸も乗り越えることが難しく、不整地走破性が低い。また、後部についているバランサ(尻尾)は、動力を持たないため走行中は抵抗であり、バランサ(尻尾)を破損してしまった場合には、走行不可能となってしまう。構造的にも、走行中の様々な衝撃をモータに直接に伝えてしまい、動力伝達部の故障を引き起こしやすい。
【0007】
更に、また、DRAPER研究所(米国)が開発した可変型のSPINY BALLは、ソフトボール程度の大きさで携行し、使用時に車輪から刺を広げ不整地走破性を向上させるものだが、車輪径を無段階に変更できないため、環境の狭隘状況に細かく対応できない(下記非特許文献3参照)。
【0008】
なお、これら2つのロボットは、災害、犯罪現場のほか、車下、床下、天井裏等狭隘な空間での情報収集を目的としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、不整地走破性にも優れた走行ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る走行ロボットは、略円筒形状をなす本体部と、上記本体部の周囲にベアリングを介して回転自在に取り付けられる回転枠と、上記本体部の相対する各側面部に設けられる走行部とを備える。
【0013】
上記走行部は、上記本体部にベアリングを介して取り付けられた回転枠を回転する駆動部と、一端が上記回転枠に回動可能に取り付けられる第1の脚アームと上記一端が上記第1の脚アームに回動可能に取り付けられる第2の脚アームとを有する展開脚が、上記回転枠に等間隔に複数設けられた展開脚車輪と、周囲にねじ部が形成され、駆動源によって回転するスクリューと、上記スクリューのねじ部に係合されて、上記スクリューの軸線方向に移動するランナと、上記第1及び第2の脚アームと上記ランナとの間を連結し、上記ランナの移動に従って上記第1の脚アームと上記第2の脚アームを回動する操作機構とを有する。
【0014】
上記スクリューが回転し、上記ランナが上記軸線方向に移動することで、上記操作機構は、上記第1の脚アームと第2の脚アームとをそれぞれ回動して上記展開脚車輪を開閉し、上記駆動部によって、上記回転枠が回転することで、上記回転枠に取り付けられている上記展開脚車輪が回転し、走行する。
【0015】
上記操作機構は、例えば、一端部が上記ランナに回動可能に取り付けられ、他端部が上記第1の脚アームに回動可能に取り付けられた第1の操作アームと、一端部が上記第1の操作アームに回動可能に取り付けられ、他端部が上記第2の脚アームに回動可能に取り付けられた第2の操作アームとを有する。
【0016】
また、上記操作機構は、上記ランナと一体の環状のベアリング機構と接続され、展開脚車輪とともに回転するようになっている。
【0017】
上記スクリューの駆動源は、一の駆動モータであり、上記スクリューは、一方の側に、第1のねじ部が形成され、他方の側に第2のねじ部が形成され、上記第1のねじ部と第2のねじ部は、互いに逆向きに形成されている。上記スクリューは、上記一の駆動モータによって回転され、上記第1のねじ部と上記第2のねじ部のそれぞれに上記ランナが係合され、上記スクリューが回転したとき、それぞれのランナが互いに近接離間する方向に移動する。これにより、上記操作機構は、それぞれの上記走行部の展開脚車輪を同期して開閉する。
【0018】
また、上記第1のねじ部と第2のねじ部は、互いに同じ向きに形成されている。上記スクリューは、上記一の駆動モータによって回転され、上記第1のねじ部と上記第2のねじ部のそれぞれに上記ランナが係合され、上記スクリューが回転したとき、それぞれのランナが上記スクリューの軸線方向を同方向に移動する。これにより、上記操作機構は、それぞれの上記走行部の展開脚車輪を開閉方向が互いに逆向きとなるように開閉し、該走行ロボットが曲がることできるようにする。これは、回転枠を回転する駆動部が一つの駆動モータで構成されるときに、特に有効である。
また、上記スクリューは、上記展開脚車輪の回転軸の軸線と同方向に配置されており、上記スクリューの先端部は、上記本体部の側面部に回転自在に支持されていても良い。
また、上記スクリューは、複数であり、上記一の駆動源によって同期して回転され、それぞれのスクリューの第1のねじ部と第2のねじ部のそれぞれに上記ランナが係合され、それぞれの上記ランナと上記第1及び第2の脚アームとの間に、上記ランナの移動に従って上記第1の脚アームと上記第2の脚アームを回動する操作機構が設けられ、上記スクリューが回転したとき、上記スクリューの軸線方向に移動することで、上記操作機構が、それぞれの上記走行部の展開脚車輪を開閉するようにしても良い。この場合の各スクリューの第1のねじ部と第2のねじ部の向きは、逆向きでも、同じ向きであっても良い。
更に、上記駆動部は、上記本体部の各側面部に設けられた走行部のそれぞれに対して、駆動モータを有するスキッドステア方式とし、超信地旋回を可能としても良い。
【0019】
また、該走行ロボットは、連結機構によって、複数台連結され、先行する走行ロボットが段差を上がったとき、該先行する走行ロボットは、上記展開脚車輪を閉じるように小径化し、上記段差下の走行ロボットは、上記展開脚車輪を開くように大径化する。これにより、本体部の上下変動を小さくすることができる。
【0020】
本発明によれば、本体部に対してベアリング機構を介して回転可能な回転枠が取り付けられた展開脚車輪が開閉して直径が変化することから、乗り越えられる凹凸の大きさや走行速度を早くできる等、路面の状況に応じた効率のよい走行を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明が適用された走行ロボットについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.走行ロボットの概要
2.走行ロボットの構成
2−1 全体構成
2−2 展開脚車輪方式
3.変形例
3−1 変形例1
3−2 変形例2
3−3 変形例3
3−4 変形例4
3−5 変形例5
【0023】
1.走行ロボットの概要
発明者らが、ここで提案する走行ロボットは次の通りである。
【0024】
(1) 小型:爆発物等の不審物は、車下に設置されることも多く、この様な狭隘な場所の捜索を可能とするため、ロボットの全高は、一般的な自動車の最低地上高を考慮した0.12[m]以下とする。
【0025】
(2) 軽量:救助隊員は、約26〜27[kg]にもなる様々な救助器材を携行しなければならない。隊員一人が携行できる限界質量は約30[kg]と言われている。すなわち、新たな装備となるロボットに許される質量は、数kg程度と考えられる。そこで、隊員の負担を極力軽減させるために、ロボットの質量は、1.5[kg]以下とする。
【0026】
(3) 機動性:協働する隊員の歩行速度と操縦性を考慮し、走行速度は0.3〜1.1[m/s]程度とする。また、建物内にあるケーブルや段差等の小さな凹凸、屋外にある砂地、草地、水溜り等の不整地を安定的に走破できるように、路面の状況に応じて車輪径を2倍まで任意に変更可能とする。そして、狭隘な空間で超信地旋回を可能とする2輪独立駆動のスキッドステア方式とする。
【0027】
2.走行ロボットの構成
(2−1) 全体構成
図1に示すように、本発明が適用された走行ロボット1は、略円筒形状をなす本体部11を有する。この本体部11は、内部に、走行箇所を撮像する撮像部12、電源となるバッテリ13、複数の駆動モータ、駆動モータを駆動制御するモータドライバ14等が設けられている。
【0028】
撮像部12は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを撮像素子に用いた小型カメラであって、撮像レンズを、本体部11より外部に臨ませるように取り付けられている。
【0029】
バッテリ13は、例えば、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等である。なお、バッテリ13は、一次電池であっても良い。
【0030】
以上のように構成された本体部11内には、図示しないが、撮像データや制御データの送受信を行う無線ユニット、全体の動作を制御するコントローラ等が内蔵されている。無線ユニットは、遠隔操作装置と無線でデータをやりとりするものであり、走行ロボット1を走行、停止等させるための制御データを送受信するとともに、撮像部12で撮像した動画像データを、遠隔操作装置に送信する。また、コントローラは、例えば、無線ユニットで、駆動モータの制御データを受信すると、受信した制御データをモータドライバ14に出力し、モータドライバ14によって駆動モータを駆動制御する。また、コントローラは、撮像部12で撮像した動画像データ等の撮像データを、無線ユニットを介して遠隔操作装置等に送信する。
【0031】
なお、走行ロボット1には、以上説明したユニットの他に、又は選択的に、GPS(Galileo positioning system,Global Positioning System)ユニットやマイクユニットやライト等の他のユニットを設けるようにしても良い。また、遠隔操作装置との通信は、有線や赤外線通信であっても良い。また、送受信データは、暗号化されていても良い。この場合、送信機に暗号化処理部を設け、受信機に復号処理部を設けるようにする。
【0032】
(2−2) 展開脚車輪方式
図1及び
図2に示すように、この走行ロボット1では、略円筒状をなす本体部11の相対する側面部に走行部21,21が設けられ、それぞれの走行部21に、展開脚車輪方式が採用されている。なお、走行部21,21のそれぞれは、同じ構成を備えているため、以下の説明では、一方の走行部21を例に取り説明する。
【0033】
略円筒形状をなす本体部11には、周囲に、回転枠22が回転自在に取り付けられている。この回転枠22は、ベアリング機構23,23を介して取り付けられている。ベアリング機構23,23は、外輪23aと内輪23bとでボール23cを挟み込んで構成されており、ここでは、外輪23aが回転枠22に取り付けられ、内輪23bが本体部11の本体枠15に取り付けられている。
【0034】
この回転枠22は、側面部22aにおいて、本体部11の内部に設けられた走行用駆動モータ24の駆動軸24aに取り付けられている。具体的に、本体部11内の走行用駆動モータ24の駆動軸24aは、本体枠15の側面部15aの貫通孔15bを貫通して、回転枠22の側面部22aの中心に固定される。したがって、回転枠22は、走行用駆動モータ24を駆動源として、本体部11の本体枠15の周囲を、ベアリング機構23を介して回転する。走行用駆動モータ24は、本体部11の相対する側面部にある展開脚車輪に応じてそれぞれ設けられており、独立制御される。したがって、この走行ロボット1では、超信地旋回が可能となっている。
【0035】
この回転枠22には、展開脚車輪25が設けられている。この展開脚車輪25は、第1の脚アーム26と第2の脚アーム27とで構成される展開脚28を複数有する。そして、この展開脚28は、回転枠22の外周部に、等間隔に複数、ここでは8つ設けられている。各展開脚28を構成する第1の脚アーム26は、直線状の棒状部材であり、一端部が回転枠22の外周部に、回動軸26aを中心に回動可能に取り付けられている。また、第1の脚アーム26の他端部側には、第2の脚アーム27の一端部が回動軸27aを中心に回動可能に取り付けられている。この第2の脚アーム27も、直線状の棒状部材であり、他端部が、地面への接地端部となる。この接地端部は、走行ロボット1が安定した姿勢を維持できるように、例えば先端部を折り曲げて地面と略平行となるようにしても良い。また、接地端部には、弾性体等を取り付けても良い。
【0036】
以上のような展開脚28を複数備えた展開脚車輪25は、第1の脚アーム26が回動軸26aを中心に回動するとともに第2の脚アーム27が回動軸27aを中心に回動することで、開閉し、車輪の直径を可変することができる。
【0037】
本体部11内には、この回転脚を開閉操作するための駆動源として、展開脚用駆動モータ31が設けられ、この展開脚用駆動モータ31によって、スクリュー32が回転されるようになっている。この展開脚用駆動モータ31の駆動軸31aには、第1のギヤ33が取り付けられ、第1のギヤ33は、スクリュー32の長手方向略中央に固定された第2のギヤ34と噛合されている。
【0038】
スクリュー32は、本体部11の長手方向に亘って配設されるものであり、略中央より一方の側に、本体部11の一方の側面部22a側に設けられた走行部21の展開脚車輪25を開閉するための第1のねじ部35が設けられ、略中央より他方の側に、本体部11の他方の側面部22a側に設けられた走行部21の展開脚車輪25を開閉するための第2のねじ部36が設けられている。第1のねじ部35と第2のねじ部36とは、互いに逆向きのねじ溝が形成されている。
【0039】
第1のねじ部35と第2のねじ部36とには、それぞれ第1のランナ37と第2のランナ38が取り付けられている。
【0040】
第1及び第2のランナ37,38は、それぞれ貫通孔の内周面に、ナット部が形成されており、ナット部が第1及び第2のねじ部35,36と係合されている。したがって、第1のランナ37と第2のランナ38は、スクリュー32が回転されると、互いに近接離間する方向に移動する。
【0041】
第1のランナ37と第2のランナ38のそれぞれには、環状のベアリング機構39が取り付けられている。ベアリング機構39は、例えばドライベアリングであって、内輪39aが第1のランナ37と第2のランナ38のそれぞれに取り付けられている。また、外輪39bは、展開脚28の数に対応して、展開脚28と同数の操作機構の第1の操作アーム42の一端部が回動軸42aを中心に回動可能に取り付けられている。したがって、このベアリング機構39は、第1及び第2のランナ37,38と一体的にスクリュー32の軸線方向に移動し、更に、外輪39bが回転枠22とともに本体部11に対して回転することになる。
【0042】
このベアリング機構39の外輪39bには、第1及び第2の脚アーム26,27と連結し、それぞれのアーム26,27を回動操作する操作機構41が設けられている。操作機構41は、第1の操作アーム42によって、ベアリング機構39の外輪39bと第1の脚アーム26とを接続し、第2の操作アーム43によって、第1の操作アーム42と第2の脚アーム27とを接続する。
【0043】
具体的に、第1の操作アーム42は、直線状の棒状部材であり、一端部が第1及び第2のランナ37,38と一体的なベアリング機構39の外輪39bに回動軸42aを中心に回動可能に取り付けられている。また、他端部が第1の脚アーム26の中程に、回動軸42bを中心に回動可能に取り付けられている。第2の操作アーム43は、一端部が第1の操作アーム42の中程に回動軸43aを中心に回動可能に取り付けられ、他端部が第2の脚アーム27一端部に回動軸43bを中心に回動可能に取り付けられている。
【0044】
以上のように構成される展開脚車輪25は、車輪径を、例えば0.12〜0.24[m]の範囲で任意に変更できる。
【0045】
ところで、本体部11の本体枠15や回転枠22には、ベアリング機構39や操作機構41を外部に臨ませる開口部44及び/又は開口部45が第1及び第2のランナ37,38の移動範囲に亘って形成されている。そして、開口部44及び/又は開口部45の第1及び第2のランナ37,38の移動方向の両端部は、第1及び第2のランナ37,38の移動範囲を規制するメカ端となっている。
【0046】
なお、本体部11には、
図1に示すように、進行方向上流側に尻尾となるバランサ29が設けられ、二輪で、走行ロボット1が走行できるようになっている。
【0047】
以上のように構成された展開脚車輪方式では、
図2に示すように、展開脚用駆動モータ31が駆動されて、スクリュー32が
図2中矢印A方向に回転すると、第1及び第2のランナ37,38は互いに離間する
図2中矢印C方向に移動する。すると、回転枠22に回動可能に取り付けられている第1の脚アーム26と第2の脚アーム27は、ともに、開く方向に回動する。これにより、展開脚車輪25は、
図2中矢印E方向に開く、すなわち直径が大きくなり、
図3に示す状態となる。
【0048】
一方、スクリュー32が
図2中矢印B方向に回転すると、第1及び第2のランナ37,38は互いに近接する
図2中矢印D方向に移動する。すると、回転枠22に回動可能に取り付けられている第1の脚アーム26と第2の脚アーム27は、ともに、閉じる方向に回動する。これにより、展開脚車輪25は、
図2中矢印F方向に閉じる、すなわち直径が小さくなり、
図4に示す状態となる。
【0049】
以上のように、展開脚車輪25が開閉する展開脚車輪方式において、走行用駆動モータ24が正転又は逆転駆動することによって、回転枠22は、回転する。これにより、回転枠22に取り付けられている展開脚車輪25,25は、回転枠22の回転方向と同方向に回転することになる。この際、固定側の本体部11内部の第1及び第2のランナ37,38と第1及び第2の脚アーム26,27とを接続する操作機構41の第1の操作アーム42と第2の操作アーム43は、ベアリング機構39外輪39bに取り付けられているので、展開脚車輪25と同じように回転する。
【0050】
以上のような展開脚車輪方式では、平地や不整地など路面の状況に応じて車輪径を変更できる。したがって、車下等の狭隘な空間には車輪径を縮小することで侵入でき、また、砂地、草地、水溜りなど凹凸のある不整地では、車輪径を拡大することで効率的に走行でき、高い対地適応性を有することになる。また、この走行ロボット1では、車輪径も本設計では約2倍まで拡大できるため、乗り越えられる凹凸の大きさや走行速度を2倍程度まで速くできる等、路面の状況に応じた効率のよい走行を行うことができる。また、これを、以下に説明するように、4輪車や6輪車等に応用することで、不整地の走破性を更に向上させることもできる。
【0051】
なお、直線走行する場合、コントローラは、モータドライバ14によって、走行部21,21のそれぞれの走行用駆動モータ24を同方向に同速度して駆動し、進行方向を曲げる場合には、左右の展開脚車輪25,25の回転速度を変える。具体的に、走行ロボット1は、展開脚車輪25の速度を遅くした方に曲がることになる。また、超信地旋回をする場合、コントローラは、モータドライバ14によって、走行部21,21の走行用駆動モータ24を同速度で互いに反対に回転させることになる。
【0052】
なお、発明者らは、具体的に表1に示す走行ロボット1を試作した。
【0054】
以上のように、本発明が適用された走行ロボット1では、救助隊員が携行する際の負担を軽減できる全長0.264[m]、全幅0.234[m]、全高0.120[m]と小型化、質量1.46[kg]と小型化、軽量化が図れ、優れた高い対地適応性を有することになる。
【0055】
3.変形例
(3−1) 変形例1
なお、ここでは、1本のスクリュー32に第1及び第2のねじ部35,36を設け、展開脚用駆動モータ31を1つとした例を説明したが、第1及び第2のねじ部35,36に応じて、スクリュー32を2本設け、展開脚用駆動モータ31を2本のスクリュー32に応じて2つ設けるようにしても良い。この場合には、左右で展開脚車輪25の直径を個別に変えることができ、これにより、走行用駆動モータ24の回転速度が同じであっても、走行ロボット1の進行方向を曲げることができる。
(3−2) 変形例2
以上のように構成された走行ロボット1は、更に複数台を連結することで、単体では走破できない大きな障害を走破できるようになる。
【0056】
すなわち、
図5に示すように、本発明が適用された走行ロボット1a,1aは、リンク機構46,46に連結されている。各走行ロボット1a,1aは、上記
図1−
図4を用いた走行ロボット1の本体部11に、多自由度リンク機構46a,46aが設けられ、多自由度リンク機構46a,46aは、例えば柔軟性を有する連結部材47,47によって連結されている。
【0057】
また、段差50を乗り越える場合、段差50を乗り越えた先行する先頭の走行ロボット1aは、展開脚車輪25を小径にし、段差50を乗り越えていない走行ロボット1aの展開脚車輪25を大径にする。これにより、段差50を乗り越えた走行ロボット1aと段差50を乗り越えていない走行ロボット1aの本体部11の高さの変化量を小さくすることができる。例えば、走行ロボット1aが撮像部12を有する場合には、本体部11の高さの変化量を小さくすることで、撮像データの高さ方向の像ぶれを小さくすることができる。
【0058】
なお、以上のように、走行ロボット1aを連結した場合には、4輪以上となることから、尻尾となるバランサ29は不要となる。
【0059】
(3−3) 変形例3
図6に示すように、スクリュー32は、第1及び第2のねじ部51,52を同じ向きのねじ溝で形成するようにしても良い。この場合には、スクリュー32が一方向に回転すると、第1のランナ37と第2のランナ38とはスクリュー32の軸線方向に同じ向きに移動することになる。すなわち、スクリュー32が
図6中矢印A方向に回転したとき、第1及び第2のランナ37,38は、ともに、
図6中矢印C方向に移動し、第1のランナ37側の展開脚車輪25は、
図6中矢印E方向に開く、すなわち直径が大きくなり、第2のランナ38側の展開脚車輪25は、
図6中矢印F方向に閉じる、すなわち直径が小さくなる。
【0060】
これとは逆に、スクリュー32が
図6中矢印B方向に回転したとき、第1及び第2のランナ37,38は、ともに、
図6中矢印D方向に移動し、第1のランナ37側の展開脚車輪25は、
図6中矢印F方向に閉じる、すなわち直径が小さくなり、第2のランナ38側の展開脚車輪25は、
図6中矢印E方向に開き、すなわち直径が大きくなる。
【0061】
以上のように、左右の展開脚車輪25,25は、大きさが異なることになり、走行用駆動モータ24の回転数が同じであっても、走行ロボット1の進行方向を曲げることができる。
図6の例のように、第1及び第2のねじ部51,52を同じ向きのねじ溝で形成し第1のランナ37と第2のランナ38とが同じ方向に移動するようにした場合、回転枠22を回転する走行用駆動モータ24を1つにし、この1つの駆動モータ24で左右の展開脚車輪を駆動するようにしたときに、特に有効である。
【0062】
なお、
図6に示す走行ロボット1についても、
図5に示すように、リンク機構46で複数台を連結するようにしても良い。
(3−4) 変形例4
また、上述した
図2及び
図6では、1本のスクリュー32を回転させることによって、操作機構41を介して両側の展開脚車輪25,25を開閉させる例を説明したが、
図7に示すように、スクリュー32を複数本用いるようにし、展開脚車輪25,25を円滑に開閉できるようにしても良い。
ここで、
図7は、
図2に示した展開脚車輪方式のスクリュー32を2本にした例を示している。
図7の例では、互いに平行な2本のスクリュー32,32のそれぞれに第2のギヤ34,34が設けられており、第2のギヤ34,34は、展開脚用駆動モータ31の第1のギヤ33と噛合されている。これにより、2本のスクリュー32,32は、同方向に同期して回転する。
各スクリュー32,32の各先端部は、本体部11を構成する本体枠15の側面部15aに回転自在に支持されている。具体的に、各スクリュー32,32の先端部は、ドライベアリングやボールベアリグといったベアリング32a,32aに取り付けられている。これにより、各スクリュー32,32は、長尺でありながら、本体枠15内に、展開脚車輪25,25と回転軸線と平行に、回転自在に安定した状態で取り付けられる。なお、上記
図2の例においても、スクリュー32の各先端部を、本体部11を構成する本体枠15の側面部15aに回転自在に支持するようにしても良い。
図7の例では、各スクリュー32,32の第1のねじ部35と第2のねじ部36とは、
図2の場合と同様に、互いに逆向きのねじ溝が形成されている。そして、それぞれのスクリュー32,32の第1のねじ部35と第2のねじ部36には、それぞれ第1のランナ37と第2のランナ38が取り付けられている。第1のランナ37と第2のランナ38は、スクリュー32,32が回転されると、互いに近接離間する方向に移動する。
第1のランナ37と第2のランナ38のそれぞれには、環状のベアリング機構39が取り付けられている。ベアリング機構39は、内輪39aが第1のランナ37と第2のランナ38のそれぞれに取り付けられている。また、外輪39bは、展開脚28の数に対応して、展開脚28と同数の操作機構の第1の操作アーム42の一端部が回動軸42aを中心に回動可能に取り付けられている。したがって、このベアリング機構39は、第1及び第2のランナ37,38と一体的にスクリュー32,32の軸線方向に移動し、更に、外輪39bが回転枠22とともに本体部11に対して回転することになる。
そして、このベアリング機構39の外輪39bには、第1及び第2の脚アーム26,27と連結し、それぞれのアーム26,27を回動操作する操作機構41が設けられている。操作機構41は、第1の操作アーム42によって、ベアリング機構39の外輪39bと第1の脚アーム26とを接続し、第2の操作アーム43によって、第1の操作アーム42と第2の脚アーム27とを接続する。第1の操作アーム42は、一端部が第1及び第2のランナ37,38と一体的なベアリング機構39の外輪39bに回動軸42aを中心に回動可能に取り付けられている。また、他端部が第1の脚アーム26の中程に、回動軸42bを中心に回動可能に取り付けられている。第2の操作アーム43は、一端部が第1の操作アーム42の中程に回動軸43aを中心に回動可能に取り付けられ、他端部が第2の脚アーム27一端部に回動軸43bを中心に回動可能に取り付けられている。
以上のように構成された展開脚車輪方式では、スクリュー32,32が
図7中矢印A方向に回転すると、スクリュー32,32のそれぞれの第1及び第2のランナ37,38は互いに離間する
図7中矢印C方向に移動する。すると、回転枠22に回動可能に取り付けられている第1の脚アーム26と第2の脚アーム27は、ともに、開く方向に回動する。これにより、展開脚車輪25は、
図2中矢印E方向に開く、すなわち直径が大きくなり、
図3に示す状態となる。一方、スクリュー32が
図7中矢印B方向に回転すると、スクリュー32,32のそれぞれの第1及び第2のランナ37,38は互いに近接する
図7中矢印D方向に移動する。すると、回転枠22に回動可能に取り付けられている第1の脚アーム26と第2の脚アーム27は、ともに、閉じる方向に回動する。これにより、展開脚車輪25は、
図7中矢印F方向に閉じる、すなわち直径が小さくなり、
図4に示す状態となる。
以上のような
図7の展開脚車輪方式は、
図2の例と同様な効果を有することに加え、展開脚車輪25,25の開閉を、複数のスクリュー32,32のそれぞれに設けられている第1及び第2のランナ37,38で行うようにしている。このため、
図7の展開脚車輪方式は、
図2の1本のスクリュー32の第1及び第2のランナ37,38で展開脚車輪25,25の開閉を行うより、展開脚車輪25,25の開閉を安定して円滑に行うことができる。
(3−5) 変形例5
図8は、
図6及び
図7の変形例であり、スクリュー32を複数本用いるようにし、展開脚車輪25,25を円滑に開閉できるようにしながら、各スクリュー32の第1及び第2のねじ部51,52を同じ向きのねじ溝で形成し第1のランナ37と第2のランナ38とが同じ方向に移動するようにしたものである。
図8の例でも、互いに平行な2本のスクリュー32,32のそれぞれに第2のギヤ34,34が設けられており、第2のギヤ34,34は、展開脚用駆動モータ31の第1のギヤ33と噛合されている。これにより、2本のスクリュー32,32は、同方向に同期して回転する。また、各スクリュー32,32は、各先端部が本体部11を構成する本体枠15の側面部15aに回転自在に支持され、本体枠15内に、展開脚車輪25,25と回転軸線と平行に、回転自在に安定した状態で取り付けられる。なお、上記
図6の例においても、スクリュー32の各先端部を、本体部11を構成する本体枠15の側面部15aに回転自在に支持するようにしても良い。
この場合、スクリュー32が一方向に回転すると、第1のランナ37と第2のランナ38とはスクリュー32の軸線方向に同じ向きに移動する。すなわち、スクリュー32,32が
図8中矢印A方向に回転したとき、第1及び第2のランナ37,38は、ともに、
図8中矢印C方向に移動し、第1のランナ37側の展開脚車輪25は、
図8中矢印E方向に開く、すなわち直径が大きくなり、第2のランナ38側の展開脚車輪25は、
図8中矢印F方向に閉じる、すなわち直径が小さくなる。
これとは逆に、スクリュー32,32が
図8中矢印B方向に回転したとき、第1及び第2のランナ37,38は、ともに、
図8中矢印D方向に移動し、第1のランナ37側の展開脚車輪25は、
図8中矢印F方向に閉じる、すなわち直径が小さくなり、第2のランナ38側の展開脚車輪25は、
図8中矢印E方向に開き、すなわち直径が大きくなる。
以上のような
図8の展開脚車輪方式は、
図6の例と同様な効果を有することに加え、展開脚車輪25,25の開閉を、複数のスクリュー32,32のそれぞれに設けられている第1及び第2のランナ37,38で行うようにしている。このため、
図8の展開脚車輪方式は、
図6の1本のスクリュー32の第1及び第2のランナ37,38で展開脚車輪25,25の開閉を行うより、展開脚車輪25,25の開閉を安定して円滑に行うことができる。