特許第5692959号(P5692959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5692959改善された電極層を有する溶液処理された有機電子構造素子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692959
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】改善された電極層を有する溶液処理された有機電子構造素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/26 20060101AFI20150312BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150312BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150312BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   H05B33/26 A
   H05B33/14 A
   C09K11/06 690
   C08F8/42
   H05B33/22 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2008-240682(P2008-240682)
(22)【出願日】2008年9月19日
(65)【公開番号】特開2009-76461(P2009-76461A)
(43)【公開日】2009年4月9日
【審査請求日】2011年8月2日
(31)【優先権主張番号】102007045518.8
(32)【優先日】2007年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス カニッツ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ペッツォルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィープケ ザルフェルト
(72)【発明者】
【氏名】リーカ スホネン
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−303681(JP,A)
【文献】 特開平07−089928(JP,A)
【文献】 特開昭63−230795(JP,A)
【文献】 特開2007−088015(JP,A)
【文献】 特開2004−335137(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069539(WO,A1)
【文献】 特開2007−059243(JP,A)
【文献】 特開2004−014511(JP,A)
【文献】 特開2004−014512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/26
C08F 8/42
C09K 11/06
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、少なくとも2つの単層もしくは複層の電極、該電極間にある少なくとも1つの活性有機半導体層、及び電極層と活性有機半導体層との間にある中間層及び/又は界面層を含む溶液処理された有機電子構造素子であって、
セシウム塩が、前記の中間層/界面層中にn型ドーパントとして含まれており、
前記セシウム塩が、以下の酸:
ジカルボン酸:
【化1】
、および、
ポリマーに結合されたカルボン酸:
【化3】
[式中、
1は、アルキレン(C2〜C20を有する、非分枝鎖状の、分枝鎖状の、飽和のもしくは不飽和の並びにヒドロキシ置換されたもの)を表し、
、前駆体材料の市販の任意の重合度を表す]
のうちの少なくとも1つであることを特徴とする有機電子構造素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機電子構造素子であって、セシウム塩が含まれている中間層/界面層が、溶液処理により適用されていることを特徴とする有機電子構造素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機電子構造素子であって、セシウム塩が含まれている中間層/界面層が、蒸着されていることを特徴とする有機電子構造素子。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の有機電子構造素子であって、前記活性有機半導体層が、0.1nm〜15nmの範囲の厚さを有することを特徴とする有機電子構造素子。
【請求項5】
溶液処理された有機電子構造素子の製造方法であって、
第1の単層の又は複層の電極を基板上に設けるステップと、
活性有機半導体層を設けるステップと、
極性溶剤中で加熱しつつセシウムカーボネートと、ジカルボン酸またはポリマーに結合されたカルボン酸を反応させることによって、有機のジカルボン酸またはポリマーに結合されたカルボン酸のセシウム塩の溶液を製造するステップと、
中間層および/又は界面層の形成のために、スピンコートにより前記セシウム塩の溶液を適用するステップと、なお、前記中間層および/又は界面層は前記セシウム塩をn型ドーパントとして含んでおり、
第2の単層の又は複層の電極を前記中間層および/又は界面層上に設けるステップと、
を含み
前記セシウム塩が、以下の酸:
ジカルボン酸:
【化4】
、および、
ポリマーに結合されたカルボン酸:
【化6】
[式中、
1は、アルキレン(C2〜C20を有する、非分枝鎖状の、分枝鎖状の、飽和のもしくは不飽和の並びにヒドロキシ置換されたもの)を表し、
、前駆体材料の市販の任意の重合度を表す]
のうちの少なくとも1つであることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記極性溶剤は、ブタノール、エタノールまたはアセトニトリルから選択される、請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された電極層を有する溶液処理された有機電子構造素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電子構造素子、例えば有機光検出器、有機エレクトロクロミック装置及び/又は有機発光ダイオードであって、いわゆる"小分子"を基礎として構成されているものは、それぞれの電荷担体の注入を容易にするn型ドープされた及び/又はp型ドープされた有機半導体層を含有することによって、すなわち、例えばOLEDが、より低い駆動電圧で同じルミネッセンスを達成することによって特に改善された。前記の技術は、例えばWO2005086251号A2から公知である。
【0003】
溶液処理された有機電子構造素子、例えばポリマーOLEDの場合に、電荷注入層のドーピングは十分には知られていない。それというのも、複数の有機材料を溶液から、その下にある1つ以上の層を再び剥離もしくは部分溶解することなく重ねて堆積させることが困難だからである。
【0004】
有機電子構成部材のポリマー層中の良好な電子注入を保証するために、例えばカソードは、複層で、特に好ましくはバリウムとアルミニウムから作成される。その際、バリウムは、その低い仕事関数に基づき電子源として用いられる。
【0005】
前記技術の欠点は、バリウムが強く酸化感受性であり、従って不安定であることと、アルミニウムが高すぎる注入障壁/仕事関数を有するため単独でカソード材料として使用できないことである。
【0006】
その際、複層電極におけるアルミニウムとバリウムとの使用は、酸化感受性のバリウム層のマスクの場合の一次酸化保護のためにのみ用いられる。
【特許文献1】WO2005086251号A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、金属層から、電子構造素子のポリマー活性有機半導体層への電子の注入のための電極を提供することであり、これはn型ドーピングに相当する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の対象は、基板、少なくとも2つの単層もしくは複層の電極、その間にある少なくとも1つの活性有機半導体層、電極層と活性有機半導体層との間の中間層及び/又は界面層(Interface)を含む溶液処理された有機電子構造素子であって、有機のモノ−、オリゴ−もしくはポリ−カルボン酸又はスルホン酸のセシウム塩が、中間層/界面層中のn型ドーパントとして含まれていることを特徴とする有機電子構造素子である。
【0009】
界面層とは、必ずしも明確に区別されて存在しない2つの隣接した層の層状領域であって、前記それぞれの層の表面条件に相応してもしくは他の理由から、例えば層の中央もしくはその反対の層表面と比較して厳密な材料組成が変更されている領域を指す。例えば、電荷担体を備えた層の両側に電圧を印加することによって、正電荷を有する電荷担体は負極に移動し、かつ負電荷を有する電荷担体は反対側に移動し、それに対して層の中央では、電荷単体の同じ分布が認められている。界面層とは、その際には、1種の電荷担体の増大が認められる層の部分を指す。
【0010】
例示した容易かつ廉価に得られる、本発明により使用できるセシウム塩の一般式を、以下に示す:
1) モノカルボン酸の塩:
【化1】
【0011】
2) アルカンスルホン酸の塩:
【化2】
【0012】
3) ジカルボン酸の塩:
【化3】
【0013】
4) ジスルホン酸の塩:
【化4】
【0014】
5) ポリマーに結合されたカルボン酸の塩:
【化5】
【0015】
6) ポリマーに結合されたスルホン酸の塩:
【化6】
[式中、Rは、アルキル(C1〜C20を有する、非分枝鎖状の(normal)、分枝鎖状の、飽和のもしくは不飽和の及び/又はヒドロキシ置換されたもの)、フェニル(アルキル化及び/又はヒドロキシ置換及び/又はアルコキシ置換されたもの)及び/又はピリジルを表し、R1は、アルキレン(C2〜C20を有する、非分枝鎖状の、分枝鎖状の、飽和のもしくは不飽和の並びにヒドロキシ置換されたもの)、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレンもしくは2,6−ピリジレンを表し、n及びmは、任意の自然数であり、前駆体材料の市販の重合度を表し、その際、前駆体材料とは、例えば遊離のオルガノポリ酸もしくはオルガノポリスルホン酸を表す]。
【0016】
ポリマーの有機電子構成部材とは、溶液処理された長鎖の有機層を含む有機電子構成部材を指す。
【0017】
液体処理に適した材料の特性は、例えばアルキル基の長さによって達成される。同様に、種々の溶剤を使用することができる。
【0018】
半導体有機材料は、例えば溶液から、好ましくは極性溶剤から適用でき、使用されるセシウム塩にも応じて蒸着することもできる。その適用は、好ましくは公知の被覆法、例えばスピンコート、吹き付け、スパッタリングなどによって行われる。
【0019】
電子構成部材の構築のために、基板上に、単層もしくは複層の下部電極を適用し、その上に有機の半導体性活性層を、そしてその上に最後に、本発明によるセシウム塩が使用される層を適用する。金属電極からの、例えばアルミニウム電極からのより良好な電子注入のための前記の中間層上に、電極層が適用される。
【0020】
材料の製造は、遊離酸を、加熱しつつ極性溶剤(ブタノール、エタノールもしくはアセトニトリルなど)中でセシウムカーボネートと反応させることによって行う。
【0021】
発光層の層厚は、発光体材料に応じて、かつ一般的に、15nm未満、また0.1〜15nmの範囲にあり、特に10nm未満、特に好ましくは3〜5nmの範囲にある。
【0022】
電極層としては、好ましくは金属電極層、例えばアルミニウム、銀、金、パラジウム、クロム、亜鉛、白金など並びにそれらの任意の合金からなる層が使用される。
【0023】
以下に、本発明をさらに実施例をもとに詳細に説明する。
【0024】
a) セシウムステアレートの製造:
【化7】
【0025】
Cs2CO3とステアリン酸との混合物を、1:2の比率でブタノール中に添加し、そしてCO2がもはや形成されなくなるまで還流温度に保持する。次いで、ブタノールを回転蒸発器上で分離除去し、残留物をエーテルと混合し、吸引分離する。融点:263〜269℃。
【0026】
b) ジセシウムセバシネートの製造
Cs2CO3とセバシン酸との混合物を、1:1の比率でブタノール中に添加し、そしてCO2がもはや形成されなくなるまで還流温度に保持する。次いで、ブタノールを回転蒸発器上で分離除去し、残留物をエーテルと混合し、吸引分離する。
【0027】
c) ポリスチレンスルホン酸のセシウム塩の製造:
Cs2CO3とポリスチレンスルホン酸の20%水溶液との混合物を、1:2の比率で添加し、そしてCO2がもはや形成されなくなるまで短時間加熱する。次いで、ブタノールを添加し、そして水並びにブタノールを回転蒸発器上で分離除去し、残留物をエーテルと混合し、そして吸引分離する。
【0028】
d) カルボン酸官能化されたポリイミドのセシウム塩の製造:
d1) コポリマーの合成
d1a) ラジカル重合
絶対的無水条件下で、かつ酸素不含の不活性ガスですすぎながら、0.5モルの無水マレイン酸と0.5モルのトリメチルアリルシランを500mlのジオキサン中に溶解させ、そしてラジカル開始剤として2モル%のAIBN(アゾイソ酪酸ニトリル)を添加しつつ撹拌しながら、50℃に温度調節して10時間にわたり反応させる。引き続き、溶剤を真空中で回転蒸発器上で完全に除去する。Tg:200℃;収率は定量的。
【0029】
【化8】
【0030】
D1b) イミド化縮合
21.4gの実施例d1aにより得られたコポリマーを、撹拌しつつ40mlのジメチルホルムアミド中に溶解させ、そして50℃で2時間温める。次いで、エタノール中に沈殿させる。沈殿した生成物を、150℃で乾燥棚において乾燥させ、脱水させる。
【0031】
【化9】
【0032】
d2) セシウム塩の合成:
Cs2CO3とポリ[トリメチルシリルアリル−コ−N−(4−カルボキシフェニル)マレイン酸イミドとの混合物を1:2の比率でアセトニトリル中に添加し、そしてもはやCO2が形成されなくなるまで還流温度で加熱する。次いで、アセトニトリルを回転蒸発器上で分離除去し、残留物をエーテルと混合し、吸引分離する。
【0033】
e) ポリマーOLEDの層の構築及び適用(技術水準との比較、セシウムステアレートを蒸着によって堆積させ、セシウムステアレートをスピンコートによって堆積させる):
電子構成部材のための例示的製造方法:
− PEDOT:PSS60〜80nmをITO基板(ガラス)上にスピンコートする。
【0034】
− 該PEDOT層を熱処理する。
【0035】
− LEP(発光性ポリマー)70〜100nmをスピンコートする。
【0036】
− 有機セシウム塩層をスピンコートするか、あるいは有機セシウム塩層を蒸着させるか、あるいはバリウム層を蒸着させる。
【0037】
− アルミニウム層を蒸着させる。
【0038】
図面は、上述の実施例で得られたデバイスの特性曲線を示している:
構成部材の構造は、基板:ITO/PEDOT:PSS(60nm)/白色ポリマー(70nm)/CsSt/Alを含んでいた。
【0039】
図1は、電流−電圧の特性曲線を示している。
【0040】
図2は、ルミネッセンスの特性曲線を示している。
【0041】
図3は、効率の特性曲線を示している。
【0042】
図4は、他の効率の特性曲線を示している。
【0043】
図1及び2に認められるように、該構成部材は、バリウム−アルミニウム電極を有する参考に対して若干劣るが、ほぼ同じ電流−電圧値及びルミネッセンス値を示している。
【0044】
図3及び4において、セシウム層の適用の種類及び様式が、構成部材の効率に対して相当の影響をなおも与えうることが認められる。
【0045】
本発明により、はじめて、有機電子構成部材中でバリウムを使用することで、複層電極の代替が提供される。その際、少なくとも1つのセシウム塩からなる中間層が取り付けられ、それによって、有機構成部材、従って例えばOLEDの駆動電圧及びルミネッセンスは、電子注入層としてバリウムを有するOLEDに対して、少なくとも同じ効率となることが可能である(特性曲線の図面を参照のこと)。
【0046】
本発明は、有機半導体材料のその電気的特性の変更のためのドーピング用のn型ドーパントとしてのアルカリ金属塩の使用を記載しており、その際、前記アルカリ金属塩は、隣接する材料に関してn型ドーパントである。
【0047】
本発明は、改善された電極層を有する溶液処理された有機電子構造素子に関する。活性有機層と電極層との間には、界面層もしくは中間層のいずれかが存在し、従ってセシウム塩が含まれる中間層が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、電流−電圧の特性曲線を示している。
図2図2は、ルミネッセンスの特性曲線を示している。
図3図3は、効率の特性曲線を示している。
図4図4は、他の効率の特性曲線を示している。
図1
図2
図3
図4