特許第5692974号(P5692974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワイテックの特許一覧 ▶ 株式会社富士技研の特許一覧 ▶ 株式会社山本水圧工業所の特許一覧

<>
  • 特許5692974-筒状体の成形方法及び成形装置 図000002
  • 特許5692974-筒状体の成形方法及び成形装置 図000003
  • 特許5692974-筒状体の成形方法及び成形装置 図000004
  • 特許5692974-筒状体の成形方法及び成形装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5692974
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】筒状体の成形方法及び成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/043 20110101AFI20150312BHJP
【FI】
   B21D26/043
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-178108(P2009-178108)
(22)【出願日】2009年7月30日
(65)【公開番号】特開2011-31261(P2011-31261A)
(43)【公開日】2011年2月17日
【審査請求日】2012年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(73)【特許権者】
【識別番号】509215776
【氏名又は名称】株式会社富士技研
(73)【特許権者】
【識別番号】390004905
【氏名又は名称】株式会社山本水圧工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(72)【発明者】
【氏名】枝廣 毅志
(72)【発明者】
【氏名】竹中 正寿
(72)【発明者】
【氏名】上野 宰
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠章
(72)【発明者】
【氏名】山本 知弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 守
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健二郎
【審査官】 間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−126923(JP,A)
【文献】 特開平01−228618(JP,A)
【文献】 特開昭61−037924(JP,A)
【文献】 特開2002−126827(JP,A)
【文献】 特開2001−321846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033 − 26/051
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形機にセットした筒状体を加熱する工程、
前記筒状体を加熱する前、加熱している最中、及び加熱完了後の少なくとも1のタイミングで前記筒状体内に連通する連通孔を通じて水を供給し、前記筒状体を加熱した熱により当該水を蒸発させて当該筒状体内が所定圧力となるように水蒸気を充満させる工程、及び、
前記水蒸気が充満している前記筒状体を、相対して配置された一対の成形型により、その径方向に押し潰すようにプレス成形する工程、
前記筒状体を前記一対の成形型によってプレスした状態で、前記筒状体内に前記連通孔を通じて水を供給することにより、当該筒状体の外側を前記一対の成形型によって冷却しながら、前記筒状体の内側を前記水によって冷却する工程を備えている筒状体の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形方法において、
前記筒状体は、一様断面の筒状体であり、
前記加熱工程では、前記プレス成形機にセットした前記筒状体に電気を流す通電加熱によって、前記筒状体を加熱する成形方法。
【請求項3】
両端開口の筒状体を間に挟むように相対して配置されて、当該筒状体を、その径方向に押し潰すようにプレス成形を行う一対の成形型、
前記筒状体のプレス成形を行う前に、当該筒状体を加熱する加熱手段、及び、
前記筒状体の内部に連通孔を通じて水を供給する供給手段を備え、
前記供給手段は、前記筒状体を加熱する前、加熱している最中、及び加熱完了後の少なくとも1のタイミングで前記筒状体内に前記連通孔を通じて水を供給することにより、前記筒状体を加熱した熱により当該水を蒸発させて当該筒状体内が所定圧力となるように水蒸気を充満させるように構成され
前記供給手段はまた、プレス成形完了後に前記筒状体内に前記連通孔を通じて水を供給することによって、前記筒状体の外側を前記一対の成形型によって冷却しながら、前記筒状体の内側を前記水によって冷却するように構成されている成形装置。
【請求項4】
請求項に記載の成形装置において、
前記加熱手段は、前記筒状体に電気を供給する電極を含みかつ、通電加熱によって前記筒状体を加熱するように構成されている成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、筒状体の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を抑制する観点から、自動車においては燃費向上によるCOの排出量削減が求められている。そのための方策の例として、自動車の軽量化やハイブリッド化が挙げられる。自動車の軽量化を実現する観点からのサスペンション形式の選択としては、例えばトーションビームアクスルを選択することが考えられる。トーションビームアクスルは、例えばマルチリンク等の他の形式のサスペンションと比較して、車重に対するサスペンション重量を、より軽量化し得る。また、ハイブリッド車両においては、バッテリ等の配置のために床下スペースを確保する観点から、リヤサスペンションとして、トーションビームアクスルが採用される傾向にある。このように、トーションビームアクスルは、今後ますます採用が増えると予想される。
【0003】
トーションビームアクスルは、車輪を支持するトレーリングアームと、車幅方向両側のトレーリングアームを互いに連結するように、車幅方向に延びるトーションビームとを含んで構成されている。トーションビームには、ねじり剛性及び曲げ剛性が要求され、例えば特許文献1には、筒状体を径方向に押し潰すようにプレス成形することによって、その横断面をU字乃至V字状の閉断面にしたトーションビームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−123227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1にも記載されているように、こうしたトーションビームは、断面円形状を有する筒状の素管(ワーク)を、プレス成形機によって押し潰してU字乃至V字状の閉断面にし、その後、加熱炉等における加熱と散水室等における冷却とによる熱処理を施して、完成に至る。
【0006】
しかしながらこうした製造手順は、プレス成形、加熱、及び冷却が互いに独立した工程となっているため、それぞれ個別の設備が必要になると共に、工程間のワークの搬送等に要する時間を含めて全体の所要時間が長くなってしまう。また、例えば加熱炉から散水室への搬送中にワークの温度が低下してしまうことから、ワークを余分に過熱しておく必要があったりして、その製造に係るエネルギの増大をも招いてしまう。つまり、従来の製造方法は、時間及び消費エネルギの点で、生産効率が低いという問題がある。
【0007】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状体の成形に関して、その生産効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する成形方法は、筒状体の成形方法であり、プレス成形機にセットした筒状体を加熱する工程、前記筒状体を加熱する前、加熱している最中、及び加熱完了後の少なくとも1のタイミングで前記筒状体内に連通する連通孔を通じて水を供給し、前記筒状体を加熱した熱により当該水を蒸発させて当該筒状体内が所定圧力となるように水蒸気を充満させる工程、及び、前記水蒸気が充満している前記筒状体を、相対して配置された一対の成形型により、その径方向に押し潰すようにプレス成形する工程、を備えている。
【0009】
これによると、加熱工程では、プレス成形機にセットした筒状体を加熱するため、その加熱後にそのまま、プレス成形機において筒状体のプレス成形を行うことが可能になる。このことは、筒状体を、例えば加熱炉内で加熱した後にプレス成形機まで搬送して、プレス成形を行う、ということを無くし、加熱炉及びプレス成形機それぞれへの筒状体のセットや、加熱炉とプレス成形機との間の搬送時間を省略する。また、加熱炉とプレス成形機との間の搬送中に筒状体の温度が低下することが回避されるため、筒状体の温度低下分を見込んだ加熱が不要になり、省エネルギ性に優れる。また、筒状体(材料)が低強度かつ高延性となる熱間乃至温間でのプレス成形であるから、筒状体の成形性が向上する。
【0010】
その成形の際には、筒状体内に連通する連通孔を通じて水を供給すると共に、前記加熱した筒状体の熱によってそれを蒸発させて、筒状体内に水蒸気を充満させているため、成形中における筒状体の内圧が高く設定されて、筒状体の形状安定性が高まる。
【0011】
前記成形工程では、相対して配置された一対の成形型により前記筒状体を径方向に押し潰すようにプレスし、前記筒状体を前記一対の成形型によってプレスした状態で、前記筒状体内に前記連通孔を通じて水を供給することにより、当該筒状体の外側を前記一対の成形型によって冷却しながら、前記筒状体の内側を前記水によって冷却する工程をさらに備えている。
【0012】
成形完了後に、筒状体内に、成形前と同じ連通孔を通じて水を供給することによって、成形後の筒状体は、その内側から直接冷却される。このことは、例えば散水室等の筒状体の冷却設備を不要にすると共に、その散水室等への筒状体の搬送が無くなることで、加工時間が短縮する。さらに、散水室等への筒状体の搬送中に筒状体の温度が低下する、ということも無くなるため、前記の筒状体の加熱は必要最低限の加熱温度に設定すればよく、省エネルギ性にも優れる。
【0013】
また、冷却工程では、筒状体をその内側から直接冷却し得る一方で、冷却工程では、前記筒状体を一対の成形型によってプレスした状態のままで行うことにより、筒状体の外側は、それに当接する成形型によって冷却され得る。従って、成形後の筒状体は、外側及び内側の双方から効率的に冷却され得る。
【0014】
前記筒状体は、一様断面の筒状体であり、前記加熱工程では、前記プレス成形機にセットした前記筒状体に電気を流す通電加熱によって、前記筒状体を加熱する、としてもよい。
【0015】
通電加熱は、加熱対象物(ここでは筒状体)の温度を効率的に高め得るため、エネルギ効率の点で有利である。また通電加熱は、加熱に要する時間が短いため、加工時間を短縮する上でも有利である。また、成形前の筒状体は一様断面の筒状体であるため、通電加熱によって均一に加熱される。つまり、筒状体の加熱手法として通電加熱を採用しても、筒状体の加熱温度ムラが回避される。
【0016】
ここに開示する成形装置は、両端開口の筒状体を間に挟むように相対して配置されて、当該筒状体を、その径方向に押し潰すようにプレス成形を行う一対の成形型、前記筒状体のプレス成形を行う前に、当該筒状体を加熱する加熱手段、及び、前記筒状体の内部に連通孔を通じて水を供給する供給手段を備えている。
【0017】
そして、前記供給手段は、前記筒状体を加熱する前、加熱している最中、及び加熱完了後の少なくとも1のタイミングで前記筒状体内に前記連通孔を通じて水を供給することにより、前記筒状体を加熱した熱により当該水を蒸発させて当該筒状体内が所定圧力となるように水蒸気を充満させるように構成されている。
【0018】
この構成によると、成形装置が加熱手段を有していることで、筒状体の加熱後にそのまま、筒状体のプレス成形を行うことが可能になり、前述したように、筒状体の加工時間及び省エネルギの点で、有利になる。また、熱間乃至温間でのプレス成形を行うため、筒状体の成形性が高まる。
【0019】
また、プレス成形時には、筒状体の内部に充満させた水蒸気により筒状体の内圧を高くしているため、筒状体の形状安定性が高まる。
【0020】
前記供給手段は、プレス成形完了後に前記筒状体内に前記連通孔を通じて水を供給することによって、前記筒状体の外側を前記一対の成形型によって冷却しながら、前記筒状体の内側を前記水によって冷却するように構成されている。
【0021】
成形完了後には、供給手段によって筒状体内に水を供給することによって、成形装置において筒状体をその内側から直接冷却し得るため、別途の冷却設備が不要になると共に、加工時間及び省エネルギ性の点で、有利になる。
【0022】
前記加熱手段は、前記筒状体に電気を供給する電極を含みかつ、通電加熱によって前記筒状体を加熱するように構成されている、としてもよい。
【0023】
筒状体の加熱に通電加熱を採用することは、消費エネルギの節約及び加熱時間の短縮の上で有利である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、前記の成形方法及び成形装置は、成形装置(プレス成形機)において、加熱及びプレス成形を連続して行うことで、加工時間の短縮及び省エネルギ性の向上が図られる。
【0025】
また、内部に充満させた水蒸気によって筒状体の内圧を高くして熱間乃至温間でのプレス成形を行うことにより、筒状体の成形性及び形状安定性が高まる。
【0026】
さらに、加熱、プレス成形及び冷却の3つの工程を連続して行うようにすれば、加工時間のさらなる短縮と共に、省エネルギ性が大幅に向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】トーションビームアクスルの斜視図である。
図2図1のII−II端面図である。
図3】成形装置の概略構成を示す断面図である。
図4】成形装置による成形工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、成形方法及び成形装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0029】
図1は、トーションビームアクスル式のサスペンションを示しており、このトーションビームアクスル1は、図示省略の車輪を支持する2つのトレーリングアーム11,11と、車幅方向に延びて、この2つのトレーリングアーム11,11を互いに連結するトーションビーム2と、を含んで構成されている。トレーリングアーム11は、図示は省略するが、閉断面形状を有するパイプ状の部材からなり、前後方向に延びる車体中心線に対して左右対称となるように、形成及び配置されている。
【0030】
トーションビーム2もまた、概略円形の閉断面形状を有する筒状体からなる。このトーションビーム2における車幅方向の中央部には、図2に示すように、筒状体が径方向に押し潰されることによって横断面がU字状乃至V字状となるように凹陥した凹部21が、下向きに開口して形成されている。この凹部21は、車幅方向の両端部から中央部に向かって、その深さが次第に深くなる徐変部を有している。
【0031】
図3は、トーションビーム2の成形に係る成形装置3の概略構成を示している。成形装置3は、基本的には、相対して配置された上型31及び下型32を有するプレス成形機である。この成形装置3は、両端開口でかつ、横断面形状が略円形状の筒状体4の長手方向中央部を径方向に押し潰すようにして、前記凹部21を有するトーションビーム2を成形する。成形装置3の上型31は、筒軸が水平方向となるように支持された筒状体4の、概ね上半分を成形する型であり、その下面が成形面311を成している。一方、下型32は、前記筒状体4の、概ね下半分を成形する型であり、その上面からなる成形面321は、前記トーションビーム2の凹部21を形成するための凸部322を有している。尚、上型31と下型32とを入れ替えて、上型31に、トーションビーム2の凹部21を形成するための凸部を設けてもよい。また、図3は成形装置3の構成を概略的に示しており、ここに示す上型31及び下型32の形状は、例えば図2等に示すトーションビーム2の断面形状とは必ずしも対応していない。
【0032】
成形装置3はまた、前記筒状体4の各端部開口に取り付けられる電極33,33を有している。この電極33は、例えば超高張力鋼からなる筒状体4の各端部開口に取り付けられることで、この筒状体4に対して電気的に接続される一方、電源34に対して接続されている。電極33を通じて筒状体4に電気を流すことによって、当該筒状体4の内部抵抗による発熱でもって、筒状体4を加熱する(通電加熱)。この一対の電極33,33はまた、筒状体4を成形装置3において支持する機能も有しており、電極33,33は、上型31及び下型32を開いている状態では、支持部35に支持されることによって、筒状体4を上型31及び下型32とは非接触の状態に配置する。このことにより、電極33を通じて筒状体4に電気を流したときに、成形型31,32への通電を回避して、筒状体4を効果的に加熱し得る。
【0033】
この各電極33にはまた、連通孔331が貫通形成されている。この連通孔331は、電極33が筒状体4に取り付けられた状態で、筒状体4の内部と外部とを互いに連通させる。この連通孔331は、水の供給源(図示省略)に接続されており、詳しくは後述するが、筒状体4内に水を供給する供給孔として機能すると共に、筒状体4内の水を排出する排出孔としても機能する。
【0034】
次に、この成形装置3を用いたトーションビーム2の製造方法について、図4を参照しながら説明する。先ず、工程P1に示すように、横断面略円形状の筒状体4の両端開口それぞれに電極33を取り付け、その電極33を支持部35に支持させることによって、筒状体4を成形装置3にセットする。こうして、筒状体4を、上型31及び下型32とは非接触の状態で通電し(同図の矢印参照)、筒状体4を所定温度に加熱する。通電加熱は、対象物の加熱効率が高く、省エネルギ性に優れると共に、対象物を短時間で加熱することができるという利点がある一方で、対象物が例えば貫通孔を有していたり、例えば台形等の一様な形状でなかったり(台形は幅が一様でない)すれば、加熱温度ムラが生じる。前記の筒状体4は、成形前であることから横断面円形状の一様断面を有する筒状体であるため、そうした加熱温度ムラは生じない。このためこの成形装置3において通電加熱を採用することは、加熱炉での加熱と比較して加熱時間及び消費エネルギを大幅に削減しつつ、筒状体を均一に加熱し得る点で有効である。
【0035】
筒状体4の加熱完了後に、工程P2に示すように、前記電極33に形成されている連通孔331を通じて、筒状体4内に所定量の水を供給する(同図の白抜きの矢印参照)。このときに、2つの電極33のそれぞれから水を供給してもよいし、いずれか一方の電極33から水を供給してもよい。そうして筒状体4の熱によって供給した水を蒸発させて、筒状体4の内部を水蒸気で充満させる。尚、図4等では図示を省略するが、各連通孔331に逆止弁や開閉弁等を設けておくことで、筒状体4内は密閉状態にされる。こうして筒状体4内を水蒸気で充満させることは、プレス成形時の内圧を高くする効果がある。従って、筒状体4への水の供給量は、成形時に所望の内圧となるように適宜調整すればよい。また、筒状体4への水の供給は、筒状体4の加熱後に限らず、その加熱前に行ってもよいし、加熱している最中に行ってもよい。また、前記の通電を停止した後には、工程P2に示すように、上型31を下降して筒状体4を上型31及び下型32それぞれと接触させてもよい。
【0036】
筒状体4の内部が水蒸気で充満すれば、工程P3に示すように、上型31を下降させることによって、筒状体4を下型32に押し付ける。そのことにより、下型32の凸部322が筒状体4の下部に当接して、当該下部を上向きに押すようになり、筒状体4の下部に、凹部21が成形されることになる。このプレス成形は、筒状体4の加熱により、筒状体4が低強度及び高延性となることで冷間成形に比べて成形が容易になるという利点があると共に、筒状体4の内圧を高めた状態でプレス成形を行うため形状安定化が図られる(図中の矢印参照)。さらに、水蒸気は筒状体4の温度を高く維持することが可能であり、成形時に筒状体4の温度が低下することも抑制し得る。
【0037】
そうしてプレス成形が完了すれば、工程P4に示すように、上型31及び下型32をそのままにした状態で、一方の電極33の連通孔331を通じて筒状体4の内部に水を供給すると共に、他方の電極33の連通孔331を通じて、筒状体4の内部の水を排出する。そうして筒状体4の内部に通水をして、筒状体4の内側を直接的に冷却する。一方、筒状体4の外側は、接触している上型31及び下型32によって冷却される。こうして、筒状体4を急冷することにより焼き入れが行われる。このように、成形後の筒状体4を成形装置3から搬送することなく冷却するため、例えばその搬送中に筒状体4の温度が低下すること等は未然に回避される。従って、筒状体4の加熱温度は最低限の温度に設定し得る。
【0038】
以上説明したように、ここに示す成形方法及び成形装置3では、筒状体4の加熱、プレス成形及び冷却の3つの工程を、同じ成形装置3において連続して行う。このため、各工程を独立して行う場合に筒状体4の搬送等に要する時間が省略され、加工時間の短縮が図られる。また、搬送中に筒状体4の温度が低下する等の不都合も回避し得るため、例えば筒状体4を温度低下分を見込んで加熱することは不要であり、省エネルギ化が図られる。
【0039】
また、筒状体4の加熱を通電加熱によって行うことは、加熱時間の短縮と共に、加熱エネルギの削減を可能にする。
【0040】
さらに、筒状体4のプレス成形を熱間乃至温間で行うと共に、内部に充満させた水蒸気によって筒状体4の内圧を高くして行うことで、筒状体4の成形性及び形状安定性が高まる。
【0041】
加えて、成形後の筒状体4の冷却を、成形装置3内の筒状体4に対して行うことで、加熱温度を最低限の温度に設定して省エネルギ化の点で有利になる。また、筒状体4をその内側から直接的に水冷すると共に、上型31及び下型32によって筒状体4を外側からも冷却することで、筒状体4の冷却効率が高まる。尚、必要に応じて、上型31及び下型32を冷却(例えば水冷)するように構成してもよい。また、筒状体4の内部に通水しなくても、筒状体4内に水を供給するだけでもよい。
【0042】
また、従来は、加熱、プレス成形及び冷却の3つの工程を実施するために必要であった、加熱炉、プレス成形機及び散水室が不要になり、製造設備費用の点及び設置面積の点で、大幅に有利になる。
【0043】
尚、前記の構成では、筒状体4を通電加熱により加熱しているが、その加熱方法は、特に限定されるものではなく、種々の加熱方法を採用し得る。尚、筒状体4の材料等については特に制限はない。但し、通電加熱を採用する場合は、筒状体4は導電性材料に限定される。
【0044】
また、前記の構成では、筒状体4の内部に供給した水を蒸発させてその内部に水蒸気を充満させた状態でプレス成形を行うようにしているが、筒状体4の内圧を高めずにプレス成形を行うようにしてもよい。
【0045】
また、前記の構成では、成形完了後の筒状体4の冷却を、筒状体4の内部に水を供給することによって行っているが、成形装置3における筒状体4の冷却手法は、これに限定されるものではない。また、成形後の筒状体4を、成形装置3から散水室に搬送した後に、これを冷却するようにしてもよい。
【0046】
さらに、前記の構成では、電極33に形成した連通孔331を通じて水を供給することで、水蒸気の発生及び筒状体4の冷却の双方を行うようにしているが、水蒸気の発生用の水の供給口と、冷却用の水の供給口とを個別に形成してもよい。また、筒状体4の内部に水を供給するための口は、電極33に形成することには限定されない。
【0047】
加えて、この成形方法及び成形装置3は、トーションビームアクスルのトーションビームの製造に適しているが、これに限定されず、その他の自動車部品、例えば、ドアインパクトビームやインパネメンバー等の筒状の自動車部品、また、バンパーレインフォースメント、Aピラー、及びBピラー等の、筒状にし得る自動車部品の製造に広く適用することが可能である。さらに、自動車部品に限らず、その他の種々の部品等の製造に、この技術を広く適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、ここに開示した成形方法及び成形装置は、筒状体の成形において、加工時間の短縮及び省エネルギ化に有効であり、例えばトーションビームの製造を始めとして、ドアインパクトビーム、インパネメンバー等の、各種の自動車構成部品や、自動車構成部品以外の様々な部品等の製造に有用である。
【符号の説明】
【0049】
3 プレス成形機
31 上型(成形型)
32 下型(成形型)
33 電極(加熱手段)
331 連通孔(供給手段)
34 電源(加熱手段)
4 筒状体
図1
図2
図3
図4