(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロリング状のシリカ系無機酸化物粒子が、粒子径10〜500nmの1次粒子で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロリング状無機酸化物粒子。
前記マイクロリング状のシリカ系無機酸化物粒子が、粒子径0.5〜20μmの2次粒子で構成され、前記2次粒子に含まれる1次粒子の粒子径が3〜100nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリング状無機酸化物粒子。
前記Rが、ハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、カルボキシル基、ケトン基、エーテル基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1種以上の有機官能基を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロリング状無機酸化物粒子。
前記有機樹脂系マトリックス成分が、(メタ)アクリル酸類、γ‐グリシルオキシ類、ウレタン類、ビニル類から選ばれる少なくとも1種以上の紫外線硬化性官能基を有することを特徴とする請求項9に記載の透明被膜付基材。
前記有機樹脂系マトリックス形成成分が、(メタ)アクリル酸類、γ‐グリシルオキシ類、ウレタン類、ビニル類から選ばれる少なくとも1種以上の紫外線硬化性官能基を有することを特徴とする請求項14に記載の透明被膜形成用塗布液。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、先ず、マイクロリング状無機酸化物粒子について説明する。
[マイクロリング状無機酸化物粒子]
本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子は、平均外径(D
O)が10nm〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(D
I)が1nm〜12μmの範囲にあり、リング幅(W
R)と平均外径(D
O)との比(W
R)/(D
O)が0.2〜0.45の範囲にあることを特徴としている。本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子は貫通孔を有している。
【0016】
図1に、本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子の平面モデル図を示す。
図1中、D
Oは外径を表し、D
Iは貫通孔の径を表し、W
Rはリング幅を表す。
マイクロリングを構成する無機酸化物としては、マイクロリング状無機酸化物粒子が得られれば特に制限はないが、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・ボリア等の酸化物、複合酸化物等が挙げられる。
【0017】
本発明では、シリカまたはシリカとシリカ以外の酸化物とからなる複合酸化物が好ましい。複合酸化物としてはシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・ボリア等が挙げられる。複合酸化物の場合、シリカの含有量が50質量%以上のものが好ましい。
【0018】
このようなシリカ、あるいはシリカを主成分とする複合酸化物(以下、シリカ系無機酸化物ということがある。)以外の酸化物、複合酸化物では、必ずしも所望のマイクロリング状無機酸化物粒子を得ることができないこともある。
【0019】
マイクロリング状粒子は、貫通孔が少なくとも1個以上で構成する粒子であってもよい。さらに、1次粒子がリング状であってもよく、また2次粒子(すなわち複数の粒子の集合体)がリング状を形成していてもよい。このような本発明に係るマイクロリング状粒子の電子顕微鏡写真を
図2、3および4に示す。
図2、3は実施例1、
図4は実施例2で得られたマイクロリング状粒子の電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0020】
1次粒子からリング状粒子を構成する場合、その粒子径は、10〜500nm、さらには10〜300nmの範囲にあることが望ましい。2次粒子からリング状粒子を構成する場合、2次粒子を構成する1次粒子の粒子径は、通常3〜100nm、さらには5〜50nmの範囲にあることが望ましい。
【0021】
本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(D
O)は10nm〜20μmの範囲にあり、さらには20nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。平均外径が前記範囲の下限未満のものは、得ること自体が困難であり、また貫通孔を設けることも難しくなる。平均外径の上限は特に制限されるものではないが、前記範囲の上限を越えると、透明被膜形成用塗布液に用いた場合に容易に沈降したり分離する場合があり、得られる透明被膜の透明性やヘーズ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。但し、用途によっては、上記上限を超えたものでも使用可能である。
【0022】
貫通孔の平均径(D
I)は、外径にもよるが、1nm〜12μm、さらには2nm〜10μmの範囲にあることが好ましい。また、リング幅(W
R)と平均外径(D
O)との比(W
R)/(D
O)が0.2〜0.45、さらには0.25〜0.4の範囲にあることが好ましい。
【0023】
貫通孔を前記範囲の下限未満にすること自体が困難であり、また平板状の粒子と何ら代わることが無く、発明の耐擦傷性、膜強度、基材との密着性等を向上させる効果が得られない場合がある。貫通孔が大きすぎると、外径にもよるが、リング形状の効果が乏しく、粒子の強度が低くなり、充分な膜強度、耐擦傷性等が得られない場合がある。(W
R)/(D
O)が小さすぎると、粒子径の割にリング幅が狭いので粒子強度が低く、透明被膜に用いても充分な膜強度、耐擦傷性等が得られない場合がある。(W
R)/(D
O)が大きすぎると、平均外径の大きさによっては貫通孔が小さすぎてしまい、貫通孔を設ける効果が発現できない場合もあり、透明被膜に応力を加えた場合にボイドが生成する場合がある。
【0024】
また前記した平均外径(D
O)、貫通孔の平均径(D
I)およびリング幅(W
R)は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について平均外径(D
O)、貫通孔の平均径(D
I)およびリング幅(W
R)測定し、その平均値として得られる。
【0025】
表面処理
本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子は、必要に応じて有機ケイ素化合物等で処理されていてもよい。
【0026】
有機ケイ素化合物で表面処理されていると、マトリックス中に均一に分散し、マトリックスが貫通孔に浸入した透明被膜を形成することができ、ボイドの生成が抑制され、膜強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜を得ることができる。さらには、マトリックス成分と基材調製時に共に重合反応する官能基を有する有機ケイ素化合物で表面処理を行うことで、形成された塗膜の膜強度、耐擦傷性、密着性の増加することが期待される。
有機ケイ素化合物としては、下記式(1)で表されるものが好ましい。
R
n-SiX
4-n (1)
【0027】
但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素を示す。nは0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0028】
かかる有機ケイ素化合物は、少なくも1個の炭化水素基を有するため、特に互いに混合しにくい疎水性マトリックス成分との親和性が高く、マトリックス中に金属酸化物粒子を偏在させることなく分散させることができ、基材との密着性、耐擦傷性等が向上したハードコート膜付基材を得ることができる。
【0029】
前記Rが、ハロゲン置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、ケトン基、エーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ホスフェート基、ハロゲン基、チオール基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機官能基を含むことが好ましい。このような有機官能基を有することで、特にマトリックス成分として有機官能基を有するものと組合わせたときに、耐擦傷性、膜強度、密着性等に優れ、また応力がかかってもボイドを生じにくく、このため被膜付基材の透明性、ヘーズが悪化しない。また、このように組合わせることで、非常に少量であっても本発明のマイクロリング状粒子を使用する効果を高く発現される。
【0030】
このような式(1)で表される有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0031】
これらの有機ケイ素化合物は、マトリックス成分との反応性を鑑み、適宜選択される。
有機ケイ素化合物による処理方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、マイクロリング状無機酸化物粒子のアルコール分散液に有機ケイ素化合物を必要量加え、これに水を加え、必要に応じて加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機ケイ素化合物を加水分解することによって表面処理することができる。
【0032】
有機ケイ素化合物の使用量はマイクロリング状無機酸化物粒子の大きさにもよるが、R
n-SiO
(4-n)/2としてマイクロリング状無機酸化物粒子の概ね2〜50質量%、さらには5〜20質量%の範囲にあることが好ましい。
【0033】
マイクロリング状無機酸化物粒子の製造方法
このようなマイクロリング状無機酸化物粒子は、上記した粒子径(平均外径)、貫通孔等を有する粒子が得られれば特に制限はないが、本発明のマイクロリング状無機酸化物粒子の製造方法としては、以下の方法が好ましい。
【0034】
第1の製造方法
先ず、平均粒子径が概ね3〜100nmの従来公知の前記無機酸化物ゾルを噴霧乾燥して、少なくとも表面に窪み(凹部)を有する粒子を調製する。噴霧乾燥方法としては、例えば、本願出願人の出願による特開昭61−174103号公報に開示した方法に準拠して製造することができる。
【0035】
この時、噴霧乾燥雰囲気の温度は、噴霧する無機酸化物ゾルの濃度によっても異なるが、概ね20〜150℃、好ましくは30〜120℃の範囲にあることが好ましい。
噴霧乾燥雰囲気の温度が20℃未満の場合は所望の貫通孔または凹部ができない場合があり、150℃を越えるとリングが薄くなりすぎたり、破壊した破片状(お椀状)の粒子となる場合がある。
【0036】
また、無機酸化物ゾルの濃度は、無機酸化物ゾルの種類、粒子の大きさによっても異なるが0.1〜50質量%、さらには1〜20質量%の範囲にあることが好ましい。
無機酸化物ゾルの濃度が低過ぎても、高すぎても噴霧乾燥で貫通孔または凹部を有する粒子が得られず、単なる微粒子が得られる場合がある。
【0037】
また、必要に応じて噴霧乾燥雰囲気の湿度を調節することができる。この時の湿度は、乾燥速度を補助的に調節し、所望の貫通孔を生成させるためで、湿度は概ね3〜13vol%、好ましくは5〜9vol%の気流中に噴霧して乾燥する。
【0038】
なお、噴霧方法は特に制限はないが、アトマイザー法、ノズル法等従来公知の方法を採用することができる。
ついで、得られた粒子を酸または塩基で処理する。酸としては、粒子を構成する酸化物の種類によっても異なるが、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、有機酸等が挙げられ、塩基としてNaOH、KOH、アンモニア、第4級アンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0039】
酸または塩基で処理すると、凹部が浸食されて貫通孔が形成され、さらに貫通孔の大きさ、リング幅等を前記所望の大きさに調整することができる。
上記した第1の製造方法で得られるマイクロリング状無機酸化物粒子の大きさは、平均粒子径が概ね0.5〜20μmである。
【0040】
第2の製造方法
第2の製造方法は、例えば、本願出願人の出願による特開2001−233611号公報、特開2004−203683号公報等に開示した中空シリカ系微粒子の製造方法に準拠して製造することができる。
【0041】
具体的には、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物微粒子を核として使用する。このとき、必要に応じて10nm以下のシリカ被覆層(1)を形成してもよい。
そして、かかる核粒子からシリカ以外の無機酸化物を酸にて除去する。
【0042】
酸でシリカ以外の無機酸化物を除去すると、スポンジのようなスカスカした粒子となり、これが前駆体となる。この前駆体に、さらに必要に応じてシリカ被覆層(2)を形成してもよい。
【0043】
得られたリング状粒子の前駆体を酸または塩基で処理するか、水熱処理することによって得ることができる。
上記において、シリカ以外の無機酸化物を酸にて除去した段階で表面に凹部を有する粒子が得られ、ついで酸または塩基で処理するか、水熱処理することによって貫通孔を有するマイクロリング状無機酸化物粒子が得られる。なお、このような処理することなく、単にシリカ被覆層を形成しただけでは、中空粒子となる。
【0044】
酸(無機酸化物を溶解するものおよび、後段の処理に使用されるもの)およびアルカリとし種類としては、特に制限されないが、前記第1の製造方法で例示したものと同じものが挙げられる。
【0045】
この方法で得られるマイクロリング状無機酸化物粒子の大きさ(粒子外径)は、平均粒子径が概ね10〜500nm(0.5μm)である。
なお、以上のようにして貫通孔形成の処理を行う前の粒子は凡球状粒子であり、貫通孔形成後のリング粒子の厚みは平均外径(D
O)以下となる。
【0046】
こうして調製したマイクロリング状無機酸化物粒子を必要に応じて、前記したような有機ケイ素化合物で表面処理してもよい。
つぎに、本発明に係る透明被膜付基材について説明する。
【0047】
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材であって、該透明被膜が前記したマイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス成分とからなり、透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が0.01〜80質量%の範囲にあることを特徴としている。
【0048】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等が挙げられる。中でも樹脂系基材を好適に用いることができる。また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、高屈折率膜、導電性膜等が挙げられる。
【0049】
マイクロリング状無機酸化物粒子
マイクロリング状無機酸化物粒子としては前記のマイクロリング状無機酸化物粒子が用いられる。
【0050】
透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が固形分として0.01〜80質量%、さらには0.05〜75質量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が少ないと、耐擦傷性、膜強度等が不充分となる場合があり、多すぎてもマトリックス成分が少なく、基材との密着性、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。
【0051】
本発明では、目的に応じて、前記マイクロリング状無機酸化物粒子以外に、従来公知の粒子を混合して用いることができる。例えば、低屈折率無機酸化物粒子、高屈折率無機酸化物粒子、導電性無機酸化物粒子等を使用することができる。
【0052】
マトリックス成分
マトリックス成分としては、有機樹脂系マトリックス成分が好適に用いられる。
有機樹脂系マトリックス成分として、具体的には塗料用樹脂として公知の紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。たとえば、従来から用いられている(メタ)アクリル酸系樹脂、γ‐グリシルオキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂をはじめとする紫外線硬化性樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0053】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂、あるいは紫外線等電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0054】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量は固形分として20〜99.99質量%、さらには25〜99.95質量%の範囲にあることが好ましい。マトリックス成分の含有量が少ないと、基材との密着性、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。マトリックス成分の含有量が多すぎても、却って粒子の量が少なくなり耐擦傷性、膜強度等が不充分となる場合がある。しかしながら、マトリックス成分と基材調製時に重合反応する官能基を有する有機ケイ素化合物で表面処理を行った粒子を用いた場合、含有量が少なくても形成された塗膜は高い膜強度、耐擦傷性、密着性が増加する。
【0055】
本発明に係る透明被膜の膜厚(Th)は、使用するリング状粒子の大きさにもよるが、50nm〜20μm、さらには100nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。但し、膜厚はリング状粒子の大きさを越えることはない。
【0056】
透明被膜の膜厚が薄過ぎると、耐擦傷性、膜強度が不充分となる場合がある。膜厚が厚すぎると、膜の厚さが不均一になったり、透明被膜にクラックやボイドを生じたり、このため膜強度が不充分となったり、プラスチック等の基材ではカーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。
【0057】
本発明では、透明被膜の膜厚(Th)が50nm〜20μmの範囲にある場合、マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(D
O)が10nm〜20μmの範囲にあり、平均外径(D
O)と膜厚(Th)との比(D
O)/(Th)が0.3〜1.0、好ましくは0.5〜0.9の範囲にある透明被膜とすることが好ましい。
【0058】
前記(D
O)/(Th)が小さいと、基材との密着性を向上させる効果、硬度、耐擦傷性を向上させる効果等が不充分となり、前記(D
O)/(Th)が大きくすると透明被膜表面に凹凸が形成される場合があり、耐擦傷性、鉛筆硬度等が低下する場合がある。(D
O)/(Th)が前記範囲にあれば、より基材との密着性、硬度、耐擦傷性等に優れた透明被膜付基材を得ることができる。つぎに、本発明に係る透明被膜形成用塗布液について説明する。
【0059】
[透明被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、前記マイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス形成成分と有機溶媒とからなることを特徴としている。
マイクロリング状無機酸化物粒子
マイクロリング状無機酸化物粒子としては前記したマイクロリング状無機酸化物粒子が用いられる。
【0060】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、前記した有機樹脂系マトリックス形成成分が好適に用いられる。なお、熱硬化型、電子線硬化型などの硬化性樹脂の場合は、マトリックス形成成分は、反応前のモノマーであり、マトリックス成分は重合・反応したポリマーである。
【0061】
有機溶媒
本発明に用いる有機溶媒としては前記マトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに前記したマイクロリング状無機酸化物粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。
【0062】
重合開始剤
本発明では、重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)2、4、4−トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシメチル-2-メチルフェニル-プロパン-1-ケトン、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0063】
塗布液組成
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分とマイクロリング状無機酸化物粒子との合計濃度は特に制限されないが、固形分として1〜60質量%、さらには2〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
【0064】
前記合計濃度が少なすぎると、一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となったり、経済性において不利である。
前記合計濃度が高すぎると、得られる透明被膜の厚さが不均一になる場合がある。
【0065】
透明被膜形成用塗布液中のマイクロリング状無機酸化物粒子の濃度は、得られる透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が前記したように固形分として0.01〜80質量%、さらには0.05〜75質量%の範囲となるように用いる。
【0066】
また、透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、得られる透明被膜中のマトリックス成分の含有量が前記したように固形分として20〜99.99質量%、さらには25〜99.95質量%の範囲となるように用いる。
【0067】
さらに具体的には、透明被膜形成用塗布液中のマイクロリング状無機酸化物粒子の濃度は、固形分として0.05〜48質量%、さらには0.1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、固形分として0.2〜57質量%、さらには0.5〜54質量%の範囲にあることが好ましい。
【0068】
上記した透明被膜形成用塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
得られた透明被膜の膜厚は、50nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。
【0069】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
マイクロリング状無機酸化物粒子(1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid
TM SI−30、平均粒子径12nm、SiO
2濃度30質量%)を噴霧乾燥装置の対向式2流体ノズルに供給し、処理液量120L/Hr、ノズル圧力0.40MPa、乾燥雰囲気温度50℃、湿度7.2VOl%、の条件下に噴霧乾燥して、表面に凹部を有する無機酸化物粒子を調製した。
【0071】
ついで、濃度25質量%のテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液10gに、表面に凹部を有する無機酸化物粒子1gを添加し、25℃で12時間撹拌した後、濾過し、充分に洗浄し、ついで120℃で10時間乾燥してマイクロリング状無機酸化物粒子(1)を調製した。得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(1)について、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影し、平均外径(D
O)、貫通孔の平均径(D
I)を測定し、結果を表1に示す。また、かかるマイクロリング状無機酸化物粒子のSEM写真および一部を拡大したものを
図2および3に示す。
【0072】
[実施例2]
マイクロリング状無機酸化物粒子(2)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid
TM SI−550、平均粒子径5nm、SiO
2濃度20質量%)100gに純水3900gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO
2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液13345gとAl
2O
3としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液13345gを添加して、SiO
2・Al
2O
3粒子分散液(平均粒子径35nm)を得た。このときの反応液のpHは12.0であった。
【0073】
ついで、SiO
2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液109830gとAl
2O
3としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液36610gを添加して複合酸化物微粒子(2)(平均粒子径60nm)の分散液を得た。このときの反応液のpHは12.0であった。
【0074】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった複合酸化物微粒子(2)の分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0075】
ついで、シリカ系中空微粒子の水分散液150gと、純水500g、エタノール1750gおよび濃度28質量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO
2濃度28質量%)47gを添加してシリカ被覆層を形成し、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0076】
つぎに、シリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却した。ついで、水酸化ナトリウムを添加してpHを12に調整し、80℃で12時間撹拌した後、充分に洗浄し、固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(2)の水分散液を得た。
【0077】
得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(2)について、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影し、平均外径(D
O)、貫通孔の平均径(D
I)を測定し、結果を表1に示す。また、SEM写真を
図4に示す。
【0078】
[実施例3]
有機ケイ素化合物処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(3)の調製
実施例1で調製したマイクロリング状無機酸化物粒子(固形分濃度10質量%)200gと純水400g、エタノール400gおよび濃度28質量%のアンモニア水0.68gを加えた後、メタクリル酸系有機ケイ素化合物 (3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学(株)製: KBM―503)30gを添加して液温を50℃に加温して、シリカ被覆層を形成し、エタノール5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ被覆層を形成したマイクロリング状無機酸化物粒子(3)のエタノール分散液を得た。
【0079】
【表1】
[実施例4]
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
実施例1で調製したマイクロリング状無機酸化物粒子(1)をエタノールに分散させた固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液7.5gとアクリル樹脂(DIC(株)製: UNIDIC
TM 17−824−9 固形分濃度77質量%)17.53gおよびイソプロパノールとエチレングリコールモノブチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒25.0gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0080】
透明被膜付基材(F-1)の製造
透明被膜形成用塗布液(1)をPETフィルム(東洋紡(株)製:コスモシャインA−4300、厚さ:188μm、屈折率1.65、基材透過率90.0%、ヘーズ0.6%))にバーコーター法(バー#20)で塗布し、80℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池(株)製UV照射装置: CS30L21−3)で600mJ/cm
2照射して硬化させ、透明被膜付基材(F-1)を調製した。このときの透明被膜の厚さは8μmであった。
【0081】
得られた透明被膜の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(日本電色工業(株)製)により測定し、結果を表2に示す。さらに、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表2に示す。
【0082】
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm
2で50回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示す。
評価基準:
筋条の傷が認められない : ◎
筋条に傷が僅かに認められる: ○
筋条に傷が多数認められる : △
面が全体的に削られている : ×
【0083】
密着性
透明被膜付基材(F-1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表2に示す。
残存升目の数100個 : ◎
残存升目の数93〜97個: ○
残存升目の数85〜92個: △
残存升目の数84個以下 : ×
【0084】
可撓性(ボイド)
透明被膜付基材(F-1)の幅1cm、長さ5cmの切片を作成し、切片の一端を固定し、他端を上下5cmの幅で湾曲させる操作を20回繰り返した後、目視観察し、以下の基準で評価した。
透明被膜は元のまま透明性を維持していた : ◎
透明被膜の透明性が僅かに低下していた : ○
透明被膜に白化が認められた : △
透明被膜にボイドの生成による白化が認められた : ×
【0085】
[実施例5]
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液3.75gとアクリル樹脂(DIC(株)製: UNIDIC
TM 17−824−9 固形分濃度(質量)77%)18.51gおよびイソプロパノールとエチレングリコールモノブチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒27.66gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0086】
透明被膜付基材(F-2)の製造
実施例4において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-2)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-2)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0087】
[実施例6]
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液15.0gとアクリル樹脂(DIC(株)製: UNIDIC
TM 17−824−9 固形分濃度(質量)77%)15.58gおよびイソプロパノールとエチレングリコールモノブチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒19.42gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0088】
透明被膜付基材(F-3)の製造
実施例4において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-3)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-3)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0089】
[実施例7]
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例2で調製した固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(2)の水分散液を限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(2)アルコール分散液を調製した。
【0090】
ついで、固形分濃度20質量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(2)アルコール分散液100gにアクリル酸系有機ケイ素化合物 (3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学(株)製:KBM-5103)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(2)アルコール分散液を調製した。
【0091】
ついで、表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(2)アルコール分散液75gとアクリル樹脂(DIC(株)製: UNIDIC
TM 17−824−9 固形分濃度77質量%)19.48gおよびイソプロパノールとエチレングリコールモノブチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒5.52gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0092】
透明被膜付基材(F-4)の製造
透明被膜形成用塗布液(4)をPETフィルム(東洋紡(製):コスモシャインA−4300、厚さ:188μm、屈折率1.65、基材透過率90.0%、ヘーズ0.6%))にバーコーター法(バー#20)で塗布し、80℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池製UV照射装置: CS30L21−3)で600mJ/cm
2照射して硬化させ、透明被膜付基材(F-4)を調製した。このときの透明被膜の厚さは7μmであった。得られた透明被膜付基材(F-4)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0093】
[実施例8]
透明被膜形成用塗布液(5)の調製
実施例7において、表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(2)アルコール分散液50gとアクリル樹脂(DIC(株)製: UNIDIC
TM 17−824−9 固形分濃度77質量%)29.87gおよびイソプロパノールとエチレングリコールモノブチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒30.13gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0094】
透明被膜付基材(F-5)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-5)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-5)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0095】
[実施例9]
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例7において、表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(2) アルコール分散液85gとアクリル樹脂(DIC(株)製 UNIDIC
TM 17−824−9 固形分濃度77質量%)14.68gおよびイソプロパノールとエチレングリコールモノブチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒1.39gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0096】
透明被膜付基材(F-6)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-6)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-6)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0097】
[実施例10]
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
実施例3において、有機ケイ素化合物処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液3.75gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM DPE−6A)12.83gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM 1.6HX−A)1.42g、およびイソプロパノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒33.75gと光重合開始剤(CIBA・JAPAN KK製:IRGACURE
TM 184)0.86gを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0098】
透明被膜付基材(F-7)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-7)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-7)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0099】
[実施例11]
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
実施例3において、有機ケイ素化合物処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液7.5gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM DPE−6A)12.15gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM 1.6HX−A)1.35g、およびイソプロパノールとプロピレングリコールモノメチルエーテル14.5gおよびイソプロパノールとn−ブタノールの1/1(重量比)混合溶媒29.0gと光重合開始剤(CIBA・JAPAN KK製:IRGACURE
TM 184)0.81gを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(8)を調製した。
【0100】
透明被膜付基材(F-8)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-8)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-8)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0101】
[実施例12]
透明被膜形成用塗布液(9)の調製
実施例3において、有機ケイ素化合物処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液0.08gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM DPE−6A)13.49gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM 1.6HX−A)1.50g、およびイソプロパノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒34.93gと光重合開始剤(CIBA・JAPAN KK製:IRGACURE
TM 184)0.90gを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(9)を調製した。
【0102】
透明被膜付基材(F-9)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-9)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-9)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0103】
[実施例13]
透明被膜形成用塗布液(10)の調製
実施例3において、有機ケイ素化合物処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液0.75gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM DPE−6A)13.37gとアクリル樹脂(共栄社化学(株)製: LIGHT−ACRYLATE
TM 1.6HX−A)1.48g、およびイソプロパノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルの1/1(重量比)混合溶媒34.4gと光重合開始剤(CIBA・JAPAN KK製:IRGACURE
TM 184)0.89gを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(10)を調製した。
【0104】
透明被膜付基材(F-10)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(10)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-10)を製造した。得られた透明被膜付基材(F-10)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0105】
[比較例1]
無機酸化物粒子(R1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid
TM S-20L、平均粒子径15nm、SiO
2濃度20質量%)を噴霧乾燥装置の対向式2流体ノズルに供給し、処理液量20L/Hr、ノズル圧力0.38MPa、乾燥雰囲気温度120℃、湿度7.2VOl%、の条件下に噴霧乾燥して、無機酸化物粒子(R1)を調製した。得られた無機酸化物粒子(R1)には貫通孔はなく、平均粒径は5μmであった。
【0106】
[比較例2]
無機酸化物粒子(R2)の調製
シリカ・アルミナゾル(日揮触媒化成(株)製: Fine Cataloid
TM USBB−120、平均粒子径25nm、SiO
2・Al
2O
3濃度20質量%、固形分中Al
2O
3含有量27質量%)100gに純水3900gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO
2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液1750gとAl
2O
3としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1750gを添加して、SiO
2・Al
2O
3粒子分散液(平均粒子径35nm)を得た。このときのMO
X/SiO
2モル比=0.2、であった。また、このときの反応液のpHは12.0であった。
【0107】
ついで、SiO
2として濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液6,300gとAl
2O
3としての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2,100gを添加して複合酸化物微粒子(2)(平均粒子径50nm)の分散液を得た。
【0108】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった複合酸化物微粒子(2)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0109】
ついで、シリカ系中空微粒子の水分散液150gと、純水500g、エタノール1,750gおよび濃度28質量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO
2濃度28質量%)140gを添加してシリカ被覆層を形成し、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子の水分散液を得た。
【0110】
つぎに、シリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DIAION
TM SK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DIAION
TMSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DIAION
TM SK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%の無機酸化物粒子(R2)の水分散液を得た。得られた無機酸化物粒子(R2)には貫通孔はなく、平均粒径は60nmであった。
【0111】
[比較例3]
透明被膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例4において、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)の代わりに無機酸化物粒子(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0112】
透明被膜付基材(RF-1)の製造
実施例4において、透明被膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-1)を製造した。得られた透明被膜付基材(RF-1)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0113】
[比較例4]
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例7において、マイクロリング状無機酸化物粒子(2)の代わりに比較例2で調製した無機酸化物粒子(R2)用いた以外は同様にして表面処理した無機酸化物粒子(R2) アルコール分散液を調製し、ついで、透明被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0114】
透明被膜付基材(RF-2)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-2)を製造した。得られた透明被膜付基材(RF-2)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。
【0115】
[比較例5]
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例7において、マイクロリング状無機酸化物粒子(2)の代わりにシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid
TM SI−45P、平均粒子径45nm、SiO
2濃度30質量%)を用いた以外は同様にして表面処理した無機酸化物粒子(R3) アルコール分散液を調製し、ついで、透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0116】
透明被膜付基材(RF-3)の製造
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-3)を製造した。得られた透明被膜付基材(RF-3)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、可撓性、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表2に示す。