(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の限定されない実施形態を、図を参照しながら例示により説明するが、図は概略図であり正確な比率で描くよう意図されていない。これらの図において提示された、同一又はほとんど同一の各構成要素は、通常、単一の数字で示す。明瞭にするため、あらゆる図のあらゆる構成要素には標識をしておらず、当業者が本発明を理解する上で図示の必要がない場合、本発明の各実施形態のあらゆる構成要素は示してはいない。
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般に、通常、液体(例、懸濁液)に囲まれた流体種の制御及び処理に関する。本発明のさまざまな様態は、流体小滴を形成すること、小滴を複数の小滴に分割すること、小滴上に電荷を生成すること、小滴に双極子を誘起すること、小滴を結合又は融合させること、小滴内で混和を生じさせること、小滴をソート及び/又は分離すること、ならびに/もしくは、小滴及び/又は小滴内の成分を感知及び/又は判別することに関する。また、これらの、及び/又は他の流体種を制御、処理するシステム及び方法の組み合わせも、例えば、リンクらにより2003年8月27日に出願された米国仮特許出願第60/498,091号、ストーンらにより2002年6月28日に出願された米国仮特許出願第60/392,195号;リンクらにより2002年11月5日に出願された米国仮特許出願第60/424,042号;1996年4月30日にクマーらに授与された米国特許第5,512,131号;ホワイトサイズらにより1996年6月26日に公表された国際特許公報WO96/29629号;2002年3月12日にキムらに授与された米国特許第6,355,198号;アンダーソンらにより2001年5月25日に国際特許出願第PCT/US01/16973号として出願され、2001年11月29日に公示されたWO01/89787号;ストーンらにより2003年6月30日に国際特許出願PCT/US03/20542号として出願され、2004年1月8日に公示されたWO2004/002627号;リンクらにより2004年4月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2004/010903号;及びリンクらにより2003年4月10日に出願された米国仮特許出願第60/461,954号に描かれており、これらの各々は本明細書中に参考として援用される。
【0025】
本発明のさまざまな様態において、本明細書に開示する流体システムには、小滴形成システム、感知システム、コントローラ、及び/又は、小滴ソート及び/又は分離システム、又はこれらシステムの任意の組み合わせを含めることができる。このようなシステム及び方法は、特定の用途によって、任意の妥当な順序に位置させることができ、場合によって、例えば、2つ以上の小滴形成システム、2つ以上の小滴分離システム等といった所定のタイプの複数のシステムを使うことができる。配置の例として、本発明のシステムを、小滴を形成し、流体を希釈し、小滴内の種の濃度を制御し、小滴をソートして所望濃度の種又は成分を持つもの(例、各々が反応物質の一分子を含有する小滴)を選定し、個別の小滴を融合させて、個別の小滴に含有されている種の間で反応を起こさせ、1つ以上の小滴中の反応及び/又は反応速度を判別、等々をするように配置することができる。本発明に沿って、他の多くの配置を実施することができる。
【0026】
(小滴の生成/形成)
本発明の1つの様態は液体に囲まれた流体の小滴を生成するためのシステム及び方法に関する。流体と液体とは、多くの場合、対象となる時間幅(例、流体小滴が特定のシステム又は装置を通って搬送される時間幅)において基本的に不混和である。ある場合において、後記でさらに説明するように、小滴をほとんど同一の形状とサイズにすることができる。また、流体に他の種、例えば特定の分子種(例、後記で論じるように)、細胞、粒子等を含有させることができる。
【0027】
実施形態の1つのセットにおいて、液体に囲まれている流体に電荷を生成することができ、これにより流体を液体内で個別の小滴に分離させることができる。特定の実施形態において、流体と液体とを、チャンネル例えばマイクロ流体チャンネル、又は、例えば液体に対する流体の移動を制限することによって流体に電界(「AC」交流、又は「DC」直流とすることができる)を印加しやすくした制限スペース、に置くことができる。そこで、流体を、個別に帯電した及び/又は電気的に誘導可能な、液体内の小滴として存在させることができる。1つの実施形態において、流体小滴に働く電気力を十分に大きくして小滴を液体内で移動させることができる。特定の例において、流体小滴に加えられる電気力を使って、液体内の小滴を所望の動きに、例えば、チャンネル又はマイクロ流体チャンネル(例、さらに本明細書で説明)等に、又はその中を導くことができる。1つの例として、
図3Aの装置5において、流体源10から生成された小滴15は、電界発生器20が生成した電界を使って帯電される。
【0028】
任意の妥当な技法を使い、例えば、流体を電界(AC、DC等とすることができる)に置き、及び/又は、流体に電荷を帯びさせる反応、例えば化学反応、イオン反応、光触媒反応等を起こさせて、液体中の流体中に電荷を生成することができる。1つの実施形態において、流体は導電体である。本明細書で用いる「導電体」とは、少なくとも約18メガオーム水(Mオーム又はMΩ)導電率の導電率を持つ材料である。流体を囲む液体が、流体よりも低い導電率を有するようにすることができる。例えば、液体を、流体に対する絶縁体とする、あるいは、少なくとも「漏電性絶縁体」すなわち、液体が、短時間の間、流体を少なくとも部分的に電気絶縁できるようにすることができる。当業者は、流体の導電率を識別することができよう。1つの限定されない実施形態において、流体を実質的に親水性とし、流体を囲む液体を疎水性とすることができる。
【0029】
特定の実施形態において、流体(例えば、一連の流体小滴)に生成される電荷を、少なくとも約10
−22C/マイクロメータ
3とすることができる。ある例において、電荷を少なくとも約10
−21C/マイクロメータ
3とすることができ、他の例においては、電荷を、少なくとも約10
−20C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−19C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−18C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−17C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−16C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−15C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−14C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−13C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−12C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−11C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−10C/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−9C/マイクロメータ
3、又はそれ以上とすることができる。ある実施形態においては、流体に生成する電荷を、少なくとも約10
−21C/マイクロメータ
2、とすることができ、特定の例においては、電荷を、少なくとも約10
−20C/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−19C/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−18C/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−17C/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−16C/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−15C/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−14C/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−13C/マイクロメータ
2又はそれ以上とすることができる。他の実施形態において、電荷を少なくとも約10
−14C/滴とし、特定の例において少なくとも約10
−13C/滴とし、他の例では少なくとも約10
−12C/滴、他の例では少なくとも約10
−11C/滴、他の例では少なくとも約10
−10C/滴、又はさらに他の例においては、少なくとも約10
−9C/滴とすることができる。
【0030】
特定の実施形態において、電界は、電界発生器、すなわち流体に印加可能な電界を生成することができる装置又はシステムによって生成される。電界発生器は、AC電界(すなわち、時間とともに規則的に変化する電界、例えば、正弦、のこぎり歯、方形波形)、DC電界(すなわち、時間的に一定の電界)、パルス電界等を生成することができる。チャンネル又はマイクロ流体チャンネル内に包含された流体内に電界を生成するように、電界発生器を構築、配置することができる。個別の実施形態によって、電界発生器を、チャンネル又はマイクロ流体チャンネルを含む流体システムと一体化することも、又はこれと別にすることもできる。ここで用いる「一体化」とは、相互に不可欠な複数構成要素の部分が、少なくとも1つの構成要素を切断又は壊すことなしに、相互を手動で分離することができないように連結されていることをいう。
【0031】
適切な電界(AC、DC等とすることができる)を生成する技法は、当業者に周知のものである。例えば、1つの実施形態において、電界は、一対の電極を通して電圧を印加することにより生成され、電極を流体システム上に配置、又はシステムに内蔵、及び/又は、電界の少なくとも一部が流体と相互作用するように流体に近接させて配置することができる。以下に限定はされないが、銀、金、銅、カーボン、プラチナ、銅、タングステン、すず、カドミウム、ニッケル、酸化インジウムすず(「ITO」)等及びこれらの組み合わせを含め、当業者に周知の適切な任意の電極材料で電極を構成することができる。特定の例において、透明又はほぼ透明な電極を使用することができる。ある実施形態において、流体への印加電界を、少なくとも約0.01V/マイクロメータ、また特定の例においては、少なくとも約0.03V/マイクロメータ、少なくとも約0.05V/マイクロメータ、少なくとも約0.08V/マイクロメータ、少なくとも約0.1V/マイクロメータ、少なくとも約0.3V/マイクロメータ、少なくとも約0.5V/マイクロメータ、少なくとも約0.7V/マイクロメータ、少なくとも約1V/マイクロメータ、少なくとも約1.2V/マイクロメータ、少なくとも約1.4V/マイクロメータ、少なくとも約1.6V/マイクロメータ、又は少なくとも約2V/マイクロメータの強度を生成するように、電界発生器を構築し配置(位置付け)することができる。特定の実施形態において、例えば、少なくとも約2V/マイクロメータ、少なくとも約3V/マイクロメータ、少なくとも約5V/マイクロメータ、少なくとも約7V/マイクロメータ、少なくとも約10V/マイクロメータ又はそれ以上、さらに高い電界強度を使用することができる。
【0032】
特定の実施形態において、流体小滴に電界を印加し、小滴が電気力を受けるようにすることができる。特定の例において、流体小滴に働く電気力を少なくとも約10
−16N/マイクロメータ
3とすることができる。ある例においては、流体小滴に働く電気力をさらに大きくすることができ、例えば、少なくとも約10
−15N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−14N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−13N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−12N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−11N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−10N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−9N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−8N/マイクロメータ
3、少なくとも約10
−7N/マイクロメータ
3、又はそれ以上とすることができる。他の実施形態において、流体の表面積に対し流体小滴に働く電気力を、少なくとも約10
−15N/マイクロメータ
2とすることができ、ある例においては、少なくとも約10
−14N/マイクロメータ
2、特定の例においていは、少なくとも約10
−13N/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−12N/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−11N/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−10N/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−9N/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−8N/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−7N/マイクロメータ
2、少なくとも約10
−6N/マイクロメータ
2又はそれ以上とすることができる。さらに他の実施形態において、流体小滴に働く電気力を、少なくとも約10
−9N、少なくとも約10
−8N、少なくとも約10
−7N、少なくとも約10
−6N、少なくとも約10
−5N、少なくとも約10
−4N、又は、特定の例においてはそれ以上とすることができる。
【0033】
特定の実施形態において、流体小滴、例えば前述の電荷を有する流体小滴、に存在する電荷を、少なくとも部分的に中和するためのシステムと方法とを提供する。例えば、本明細書に記載するような技法を使って、流体小滴に電界を通過させ、及び/又はこれを電極近くに移動させて、電荷を少なくとも部分的に中和することができる。流体小滴が電界の外に出る(すなわち、電界が実質的に流体小滴に影響を及ぼすことができなくなる)及び/又はその他で電界が排除されると、流体小滴は電気的に中和され、及び/又は有する電荷が低減される。
【0034】
実施形態の別のセットにおいて、流体の個別小滴形成を誘導するような仕方で、チャンネルの寸法を変更することによって、チャンネル内で液体に囲まれた流体から流体の小滴を生成することができる。例えば、チャンネルを流れ方向に垂直に拡大し、流体がチャンネル壁に付着せず、個々の小滴形成するようにすることができ、又はチャンネルを流れ方向垂直に狭くして、強制的に流体が個々の小滴に凝結するようにすることができる。1つの例を
図7Aに示すが、この図で、チャンネル510は、液体505に囲まれた流体フロー500(下向きに流れている)を含む。チャンネル510は501位置で狭くなり、流体500が一連の個別流体小滴515を形成するようにさせている。また、他の実施形態において、内部の障害物を使って小滴の形成を生じさせることができる。例えば、バッフル、うね、内柱又は類似物を使って、流体を流体小滴に合体させるようにすることができる。
【0035】
特定の例において、チャンネルの寸法を時間的に変えて(例えば、機械的に、電気的に、空気圧で等)個別流体小滴の形成が生じるようにすることができる。例えば、チャンネルを機械的に収縮(「圧縮」)して小滴を形成させることができ、又は、例えば、動くバッフル、回転するブレード又は類似物を使い、流体の流れを機械的に乱して小滴を形成させることができる。限定はされない例として、
図7Bにおいて流体500は、チャンネル510を下方向に流れている。流体500は、液体505に囲まれている。チャンネル510の近くに配置されるか、又はチャンネル510と一体になった圧電デバイス520は、チャンネル510を機械的に締め付け又は「圧縮」し、流体500を個別の流体小滴515に分裂させる。
【0036】
実施形態のさらなる別のセットにおいて、本質的に相互に不混和性(対象とする時間範囲において不混和)の3つの流体を含むシステム中に、個別流体小滴を生成して維持することができ、このうち1つの流体は液体のキャリヤであり、第二流体及び第三流体は、液体キャリヤ中に個別流体小滴として交互に並んでいる。このようなシステムにおいて、第二及び第三流体を流体小滴の分離を確実にするため、必ずしも界面活性剤を必要としない。例として、
図14Aを参照すると、チャンネル700内で第一流体701及び第二流体702はどれぞれ液体キャリヤ705に搬送されている。第一流体701及び第二流体702は、チャンネル700内で液体キャリヤ705にそれぞれ搬送され、一連の交互配置された個別小滴として交互に並んでいる。第一流体、第二流体及び液体キャリヤは本質的に相互に不混和なので、これら流体のどの2つも(又は3つすべての流体とも)小滴どうしの合体が生じることなしに接触することはできない。このようなシステム例の顕微鏡写真が
図14Bに示され、交互配置された個別小滴として存在し、各々液体キャリヤ705内に包含された第一流体701及び第二流体702が図示されている。
【0037】
本質的に相互に不混和な3つの流体を含むシステムの1つの例は、シリコンオイル、ミネラルオイル及び水溶液(水、又は中に溶解及び/又は懸濁させた他の種を含む水、例えば、食塩水、マグネシウム水溶液、粒子又は細胞又は同様物を含む懸濁水)である。システムの別の例は、シリコンオイル、フルオリカーボンオイル及び水溶液である。システムのさらなる別の例は、炭化水素(例、ヘキサデカン)、フルオリカーボンオイル及び水溶液である。これらの例において、これら流体のどれでも液体キャリヤとして用いることができる。適切なフルオロカーボンの、限定されない例には、オクタデカフルオロデカヒドロナフタレン
【0038】
【化1】
又は、1−(1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ウンデカフルオロシクロヘキシル)が含まれる。
【0039】
【化2】
このようなシステムの限定されない例が
図14Bに示されている。この図において、流体ネットワーク710は、液体キャリヤ705と第一流体701と第二流体702とを包含しているチャンネルを含む。液体キャリヤ705は、取入れ口725を通して流体ネットワーク710に取り入れられ、第一流体701は取入れ口721を通して取り入れられ、第二流体702は、取入れ口722を通して取り入れられる。流体ネットワーク710内のチャンネル716は、取入れ口725から取り入れられた液体キャリヤ715を包含している。最初に、第一流体701が液体705に取り入れられ、そこで流体小滴を形成する。次に、第二流体702が液体705中に取り入れられ、そこで流体小滴を形成し、第一流体701を含有する流体小滴の間に散在して組み入れられる。こうして、チャンネル717に到達したとき、液体キャリヤ705は、第二流体702を含む流体小滴の第二セット間に散在する第一流体701を含む流体小滴の第一セットを含有する。図示した実施形態において、チャンネル706は、オプションとして、一連の屈曲を含み、後記でさらに説明するように、これにより各々の流体小滴の内部で混和が生じることを可能にする。しかしながら、この実施形態においては、第一流体701と第二流体702とは本質的に不混和なので、第一流体701を含む小滴と第二流体702を含む小滴との顕著な融合及び/又は混和は、通常予期されないことに注意すべきである。
【0040】
液体に囲まれた流体小滴生成の他の例が、リンクらにより2004年4月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2004/010903号、及びストーンらにより2003年6月30日に国際特許出願第PCT/US03/20542号として出願され、2004年1月8日に公示されたWO2004/002627号に記載されており、これらの各々を参考として本明細書に組み込む。
【0041】
特定の実施形態において、流体小滴の各々をほぼ同一の形状及び/又はサイズとすることができる。形状及び/又はサイズを、例えば、小滴の平均直径又は他の特徴的寸法を測定することによって判別することができる。ここで用いる「判別」という用語は、一般に、種を、例えば定量的又は定性的に解析又は測定すること、及び/又は種の存在又は不在を検知することをいう。また、「判別」が、2つ以上の種の間の相互作用を、例えば定量的又は定性的に解析又は測定すること、及び/又は相互作用の存在又は不在を検知することをいうこともある。適切な技法の例には、以下に限定はされないが、赤外、吸収、蛍光、UV/可視光線、FTIR(フーリエ変換赤外分光分析)又はラマンのような分光法;重量法;偏光解析法;圧電測定;免疫測定;電気化学測定;光学密度測定のような光学的測定;円偏光二色法;擬電気光錯乱のような光錯乱測定;偏光分析法;屈折計法;又は濁度測定が含まれる。
【0042】
複数又は一連の小滴の「平均直径」は、各々の小滴の平均直径の算術平均である。当業者は、例えば、レーザ光錯乱、顕微鏡検査、又は他の知られた技法を使って、複数又は一連の小滴の平均直径(又は他の特徴的寸法)を判別することができよう。非球形の小滴の直径は、表面全体にわたって積分され、数学的に定義された小滴の平均直径である。一滴(及び/又は複数の又は一連の小滴)の直径を、例えば、約1mmより小さく、さらに約500マイクロメータより小さく、約200マイクロメータより小さく、約100マイクロメータより小さく、約75マイクロメータより小さく、約50マイクロメータより小さく、約25マイクロメータより小さく、約10マイクロメータより小さく、又は約5マイクロメータより小さくすることができる。また、平均直径を、少なくとも約1マイクロメータに、さらに少なくとも約2マイクロメータに、少なくとも約3マイクロメータに、少なくとも約5マイクロメータに、少なくとも約10マイクロメータに、少なくとも約15マイクロメータに、又は、場合によっては少なくとも約20マイクロメータにすることができる。
【0043】
本発明の特定の実施形態において、流体小滴に追加の成分、例えば他の化学的、生化学的、又は生物学的成分(例、流体に溶解又は懸濁させて)、細胞、粒子、ガス、分子、又は類似物を包含させることができる。特定の例において、前記で説明したように、小滴をほぼ同じ形状又はサイズにすることができる。ある例において、本発明は、基本的にほぼ均一な数の種成分(分子、細胞、粒子等)で構成される小滴の生成を提供する。例えば、複数の又は一連の小滴の約90%、さらに約93%、約95%、約97%、約98%、又は約99%以上に、同一数の特定種の成分を含ませることができる。例えば、相当数の流体小滴を生成し、前記のように、各々に1成分、さらに2成分、3成分、4成分、5成分、7成分、10成分、15成分、20成分、25成分、30成分、40成分、50成分、60成分、70成分、80成分、90成分、100成分等々を包含させ、これら成分は分子又は高分子、細胞、粒子等とすることができる。特定の例において、小滴は、各々自由に、ある範囲の数の成分、例えば20成分より少ない、15成分より少ない、10成分より少ない、7成分より少ない、5成分より少ない、又は場合によっては3成分より少ない成分を含有している。実施形態の1つのセットで、流体の小滴を包含する液体であって、その小滴の一部は対象種を含有しており一部は対象種を含有していない液体において、以下に説明するように、流体の小滴中から、種含有する流体の小滴を選別又はソートすることができ(例、前記のような蛍光法又は他の技法を使って)、特定の例においては、例えば前記のような、所定数又は所定数範囲の対象種成分を含有する流体小滴を選別又はソートすることができる。こうして、特定の例において、一部が種を含有し一部は含有しない複数の又は一連の流体小滴を、種を含有する小滴の比率を、例えば少なくとも約2倍、さらに少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約125倍、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約2000倍、又は場合によって少なくとも約5000倍以上に濃縮(又は減耗)することができる。他の例では、この濃縮(又は減耗)の比率を、少なくとも約10
4、少なくとも約10
5、少なくとも約10
6、少なくとも約10
7、少なくとも約10
8、少なくとも約10
9、少なくとも約10
10、少なくとも約10
11、少なくとも約10
12、少なくとも約10
13、少なくとも約10
14、少なくとも約10
15、又はそれ以上とすることができる。例えば、特定の種を含有する流体小滴を、さまざまな種を含有する流体小滴の集合体から選び取ることができ、この集合体は、約10
5、約10
6、約10
7、約10
8、約10
9、約10
10、約10
11、約10
12、約10
13、約10
14、約10
15又はそれ以上の種目が含まれる、例えば、DNA集合体、RNA集合体、たんぱく質集合体、コンビナトリアル、ケミストリ集合体等とすることができる。ある実施形態において、前記の後、後記するように例えば反応を開始させる又はこれを判別するために、種を有する小滴を融合させ、反応させ又は別途使用又は処理することができる。
【0044】
(小滴の分割)
別の様態において、本発明は、流体小滴を2つ以上の小滴に分割するためのシステム及び方法に関する。流体小滴を、例えば前記のように液体で囲むことができ、特定の例においては、流体と液体とは本質的に不混和である。元の小滴を分割するため用いた条件いかんによって、元の流体小滴を分割して生成された2つ以上の小滴の各々をほぼ同一の形状及び/又はサイズとすることができ、もしくは、これら2つ以上の小滴を異なった形状及び/又はサイズとすることができる。多くの例において、元の流体小滴を分割するために用いる条件を、特定の仕方、例えば手動又は自動で制御することができる(例、後記で説明するようにプロセッサを使って)。特定の例において、複数の又は一連の流体小滴中の各小滴を他と関係なく制御することができる。例えば、一部の小滴を、均等な部分に又は不均等な部分に分割し、他の小滴は分割しないでおくことができる。
【0045】
実施形態の1つのセットによれば、電界印加を用いて流体小滴を分割することができる。電界をAC電界、DC電界等とすることができる。この実施形態における流体小滴に、取り囲む液体よりも大きな導電性を持たせることができ、特定の例においては、流体小滴を中性に帯電させることができる。特定の実施形態において、元の流体小滴から生成された小滴はほぼ等しい形状及びサイズである。ある実施形態において、印加された電界中で、電荷を促して、流体小滴の内部から表面に移動し分布させることができ、これにより、小滴内部の電界の影響をキャンセルすることができる。特定の実施形態において、流体小滴の表面電荷に対しても、印加電界による力を影響させることができ、これにより反対極性の電荷が生じ、相互に反対の方向に移動する。特定の例において、電荷の移動によって、小滴を2つの別個の流体小滴に引き離すことができる。流体小滴に加える電界を、例えば、電界発生器の作用といった前記の技法を使って生成することができる。
【0046】
限定されない例として、電界が印加されていない
図1Aにおいて、チャンネル230に包含された流体小滴215は、周囲の液体に運搬され交点240に向かって流れ、チャンネル250及び255に導かれている。この例において、周囲液体は、チャンネル250及び255を等しい流速で流れる。こうして、流体小滴215は、交点240において、選好する方位又は方向性を持たず、周囲流体フローに従って等しい確率で出口チャンネル250及び255中に移動する。これに対し、
図1Bにおいては、周囲液体は
図1Aと同じ流れ方であるが、流体小滴215は、印加された1.4V/マイクロメータの電界の影響を受けて、交点240において2つの小滴に分割され、新しい小滴216及び217を形成する。小滴216はチャンネル250の中を左に移動し、一方、小滴217はチャンネル255中を右に移動する。
【0047】
このプロセスの概要を
図5に見ることができ、チャンネル540中の液体535に囲まれた中性流体小滴530は、電極526と527とによって生成された印加電界525の影響を受ける。電極526はチャンネル542の近傍に置かれ、電極527はチャンネル544の近傍に置かれる。電界525の影響を受けて流体小滴530内に電荷分離が誘起され、正電荷は小滴の一端に誘導され、一方、負電荷は小滴の他方の端に誘導される。そこで小滴を負に帯電した小滴545と、正に帯電した小滴546とに分割することができ、これらはそれぞれチャンネル542と544とに進む。特定の例において、前記したように、生成された帯電小滴上の電荷の1つ又は両方を中和することもできる。
【0048】
流体小滴を2つの小滴に分割する他の例が、リンクらにより2004年4月9日に出願された国際特許出願番号PCT/US2004/010903号;リンクらにより2003年8月27日に出願された米国仮特許出願番号60/498,091号;及びストーンらにより2003年6月30日に国際特許出願番号PCT/US03/20542として出願され、2004年1月8日に公示されたWO2004/002627号美記載されており、これらを参考として本明細書に組み込む。
【0049】
(小滴の融合)
さらに別の様態において、本発明は、2つ以上の流体小滴を1つの小滴に結合又は融合するためのシステム及び方法に関する。例として、実施形態の1つのセットにおいて、例えば、組成、表面張力、滴サイズ、界面活性剤の存在又は不在等に起因して、通常は2つ以上の小滴の結合又は融合することができない場合に、2つ以上の小滴(例、流体の不連続な流れにより発生)を1つの小滴に結合又は融合させることを可能にするシステムと方法とを提供する。ある種のマイクロ流体システムにおいて、小滴のサイズと関連して、小滴の表面張力により小滴の結合又は融合が妨げられる場合がある。
【0050】
1つの実施形態において、2つの小滴に反対の電荷(正及び負電荷、必ずしも同じ強さではない)を与えることができ、これら電荷が2つの小滴の電気的相互作用を増大させこれらの反対電荷により、例えば前記の技法を使って、小滴の結合又は融合を可能にすることができる。例えば、小滴に電界を印加することができ、小滴にコンデンサを通過させることができ、化学反応によって小滴を帯電させることができる。一例として、概略的に
図13Aに示すように、無帯電の小滴651及び652は、マイクロ流体チャンネル653内に包含された液体654に搬送され、相互に接触させられる、だが、小滴は、例えばそのサイズ及び/又は表面張力により結合又は融合できない。特定の例において、小滴の表面張力を低下させるために界面活性剤を加えたとしても、小滴が融合できないことがある。しかしながら、流体小滴が反対電荷(同一の強さにできるが必ずしもそうでなくてよい)に帯電していれば、小滴は結合又は融合することができる。例えば、
図13Bにおいて、正に帯電した小滴655及び負に帯電した小滴656は、一様に、お互いの方向に導かれ、反対電荷に帯電された小滴間の電気的相互作用によって、双方小滴は、融合体小滴657に融合される。
【0051】
別の実施形態において、流体小滴を必ずしも反対電荷に帯電させる必要はなく(ある場合には電荷をまったく与えないことも可能)流体小滴中に誘起され流体小滴を結合させる双極子を用いて、流体小滴を融合させる。
図13Cに示す例において、小滴660及び661(これらは、それぞれ荷電されていても中性でもよい)チャンネル670中で液体665に囲まれてチャンネルを通って移動し、印加電界675の影響を受ける。電界675をAC電界、DC電界等とすることができ、例えば、この図に示すように電極676及び677を使って生成することができる。
図13Cに示すように、流体小滴の各々の中の誘起双極子によって、流体小滴が、それらの持つ部分的な反対電荷により相互に電気的に誘引され、小滴660と661とを融合させて小滴663を生成することができる。
図13Dの小滴660及び661もそうである。
【0052】
さまざまな実施形態において、2つ以上の小滴は、必ずしも「真向かいに」接触する必要なくして融合できることに注意すべきである。少なくとも初期の一部の融合が生じるならば、どのような角度でも差し支えない。1つの例として、
図12Hにおいて、小滴73と74とは各々ほぼ同一方向に(例えば、異なった速度で)進んでおり、接触し融合することができる。別の例として、
図12Iにおいて、小滴73と74はある角度で接触し融合する。
図12Jにおいて、3つの小滴73、74及び68は会合し、融合して小滴79を生成する。
【0053】
流体小滴の結合又は融合の他の例が、リンクらにより2004年4月9日に出願された国際特許出願番号PCT/US2004/010903に記載されており、これを参考のため本明細書に組み込む。
【0054】
(小滴内部での混和)
関連する様態において、本発明は、流体小滴内において生じる複数の流体の混和を可能にするシステムと方法とに関する。例えば、本発明のさまざまな実施形態において、前記のように、2つ以上の流体小滴の結合又は融合を可能にできるが、そこで、融合した小滴内の、2つ以上の元の流体小滴からの2つ以上の流体を混和させることができる。2つの小滴が結合又は融合した場合小滴内の完全な混和は直ちには生じないことに注意すべきである。そうでなく、例えば、
図12Bに示すように、融合した小滴は、当初は、(第一小滴73からの)第一流体領域71、(第二小滴74からの)第二流体域72によって形成されている。しかして、特定の例において、流体領域は、例えば、流体小滴内の内部「反転運動」流(
図12G中に小滴968で示し、方向を矢印977で示す)によって別個の領域のままになっており、
図12Aに示すように、不均一な流体小滴75を生じる。
【0055】
しかしながら、他の例において、流体小滴内の流体領域を、
図7Bに示すように、相互に混和、反応又は他の方法で相互作用させることができ、混和した又は部分的に混和した流体小滴78を得ることができる。自然的方法を通して、例えば、拡散(例、領域間の界面を通して)、流体相互の反応を通して、小滴内の流体の流れ(対流)等を通して混和を行うことができる。しかしながら、特定の例において、流体小滴の外部の特定のシステムを介して領域71と72との混和を促進することができる。例えば、流体小滴を、小滴の速度及び/又は動きの方向が変わるような1つ以上のチャンネル又は他のシステムを通過させることができる。方向の変化によって小滴内の対流のパターンを変化させ、これにより流体を少なくとも部分的に混和させることができる。例として、
図12Cにおいて、小滴76にチャンネル内の1つ以上の屈曲部を通過させ、小滴76内の流体を少なくとも部分的に混和させて、小滴79を得ることができる、もしくは、小滴76にチャンネル等の内部の1つ以上の障害を通過させることができる。別の例として、
図12Dにおいて、小滴76にチャンネル内の1つ以上の拡大域77を通過させ、小滴76内の流体を少なくとも部分的に混和させて、小滴79を得ることができる。
図12Eにおいて、小滴76にチャンネル内の1つ以上の狭窄域69を通過させ、小滴76内の流体を少なくとも部分的に混和させて、小滴79を得ることができる。また、組み合わせも可能である。例えば、
図12Fにおいて、小滴76に屈曲部70、拡大域77及び狭窄域69を通過させ、小滴内で流体域の混和を生じさせることができる。さらに別の例では、
図14B中のチャンネル706は、一連の屈曲部を含み、これにより、チャンネル706内の小滴内部の流体の混和を生じさせることができる。
【0056】
実施形態の1つのセットにおいて、流体を流体小滴に注入することができ、これにより注入されたされた流体と流体小滴内の他の流体とを混和することができる。特定の例において、例えばマイクロ針又は他の類似のデバイスを使って、流体を流体小滴にマイクロ注入することができる。他の例において、流体チャンネルを使い、流体小滴が流体チャンネルに接触した際に、流体を流体小滴に直接注入することができる。例えば、
図14Cを参照すると、チャンネル750は一連の流体小滴760を含む搬送液755を包含する。小滴761は流体チャンネル752に接触している。そこで、流体チャンネル752を通して、流体を流体小滴761に取り入れることができ、この流体を流体小滴761内の流体と同じもの又は異なるものとすることができる。
【0057】
小滴内の流体混和の他の例が、リンクらにより2004年4月9日に出願された国際特許出願番号PCT/US2004/010903に記載されており、これを参考のため本明細書に組み込む。
【0058】
(小滴の選別/ソート)
さらに別の様態で、本発明は、特定の例においては高い流速の、液体中の流体小滴を選別又はソートするためのシステムと方法とを提供する。例えば、小滴の特性を特定の方法(例、以下でさらに説明するような)で感知及び/又は判別することができ、そこで、例えばソート又は選別のために、装置の特定部位に導くことができる。
【0059】
特定の実施形態において、流体小滴の特性を、例えば本明細書に記載するような特定の方法で感知又は判別することができ(例、流体小滴の蛍光特性を判別することができる)、これに応じて、流体小滴に電界を印加したり、除去したりして、流体小滴を特定の部位(例、チャンネル)に導くことができる。特定の例において、本発明の所定システム及び方法を用いて、高いソート速度を達成することができる。例えば、特定の例において、秒あたり少なくとも約10滴の、判別し及び/又はソートをすることができ、他の例においては、秒あたり少なくとも約20滴、さらに秒あたり少なくとも約30滴、秒あたり少なくとも約100滴、秒あたり少なくとも約200滴、秒あたり少なくとも約300滴、秒あたり少なくとも約500滴、秒あたり少なくとも約750滴、秒あたり少なくとも約1000滴、秒あたり少なくとも約1500滴、秒あたり少なくとも約2000滴、秒あたり少なくとも約3000滴、秒あたり少なくとも約5000滴、秒あたり少なくとも約7500滴、秒あたり少なくとも約10,000滴、秒あたり少なくとも約15,000滴、秒あたり少なくとも約20,000滴、秒あたり少なくとも約30,000滴、秒あたり少なくとも約50,000滴、秒あたり少なくとも約75,000滴、秒あたり少なくとも約100,000滴、秒あたり少なくとも約150,000滴、秒あたり少なくとも約200,000滴、秒あたり少なくとも約300,000滴、秒あたり少なくとも約500,000滴、秒あたり少なくとも約750,000滴、秒あたり少なくとも約1,000,000滴、秒あたり少なくとも約1,500,000滴、秒あたり少なくとも約2,000,000滴以上、又は、秒あたり少なくとも約3,000,000滴以上を、このような方法で、判別し及び/又はソートをすることができる。
【0060】
実施形態の1つのセットにおいて、(例えば、前記のように)小滴上に電荷を生成することによって、流体小滴を方向付けし、印加電界を使って小滴を導くことができ、電界をAC電界、DC電界等とすることができる。例として、
図2−4を参照すると、必要に応じ、電界を選択的に印加したり除去したりして(又は、例えば、
図4Aに示す逆電界のような、異なる電界を印加して)、流体小滴を特定の部位に導くことができる。特定の例において、流体小滴を包含する液の流れをほとんど変化させずに、必要に応じて電界を選択的に印加し、除去することができる。例えば、液体を、ほとんど定常状態ベース(すなわち、流体小滴を包含する液体平均流速は、液体の定常状態又は要求されるの流れの値から、時間的に20%より小さいか又は15%より小さくしか逸脱せず、特定の例では、逸脱は10%より小さいか又は5%より小さい)又は他の所定ベースで、本発明の流体システムに通す(すなわち、チャンネル又はマイクロ、チャンネルを通す)ことができ、例えば電界を使って、流体システムを通る液流をほとんど変化させずに、液体内に含有される流体小滴をさまざまな部位に導くことができる。特定の例として、
図2A、3A及び4Aにおいて、流体小滴15を包含する液体は、液源10からチャンネル30を通って交点40に流れ、チャンネル50及び55を通って抜け出る。
図2Aにおいて、流体小滴15はチャンネル50及び55の両方を通って導かれるが、
図3Aにおいては、流体小滴15はチャンネル55だけを通って導かれ、
図4Aにおいては、流体小滴15はチャンネル50だけに導かれる。
【0061】
実施形態の別のセットにおいて、流体小滴に双極子を誘起させる(初期的に帯電させておくことも無帯電とすることもできる)ことによって流体小滴をソート又は誘導し、印加電界を使って流体小滴をソート又は誘導することができる。電界はAC電界、DC電界等とすることができる。例えば、
図9Aを参照すると、流体小滴530及び液体535を包含するチャンネル540は、チャンネル542及び544に分かれる。流体小滴530に電荷を帯びさせることも、無帯電とすることもできる。電極526はチャンネル542近傍に置かれており、電極527はチャンネル544近傍に置かれている。電極528はチャンネル540、542及び544の接合点近傍に置かれている。
図9C及び9Dにおいて、電極526、527、及び/又は528を使って、流体小滴中に双極子が誘起される。
図9Cにおいて、電極527と528とを用い、電界525を印加することによって、小滴530中に双極子を誘起する。電界の力によって、小滴は強く右に引かれチャンネル544に入る。同様に、
図9Dにおいて、電極526と528とを用い、電界525を印加することによって、小滴530中に双極子が誘起され、これにより小滴をチャンネル542中に引き入れる。このように、妥当な電界を印加することによって小滴530を、所望通りに、チャンネル542又は544のいずれかに導くことができる。
【0062】
但し、他の実施形態において、本発明の流体システム内で、小滴を包含する液体の流れを変化させることによって流体小滴を選別又はソートすることができる。例えば、実施形態の1つのセットにおいて、流体小滴を囲んでいる液体を第一チャンネル、第二チャンネル等に導くことによって、流体小滴選別又はソートすることができる。限定されない例として、
図10Aを参照すると、流体小滴570はチャンネル580中で液体575に囲まれている。製品580は3つのチャンネル581、582、及び583に分かれている。液体575の流れを、当業者に熟知のフロー制御デバイス、例えば、バルブ、ポンプ、ピストン等を使って、必要に応じチャンネル581、582、及び583のどれにでも導くことができる。このように、
図10Bにおいて、液体575をチャンネル581に流れるよう導くことによって、流体小滴570をチャンネル581に導く(矢印574で示す)。
図10Cにおいては、液体575をチャンネル582に流れるよう導くことによって、流体小滴570をチャンネル582に導き(矢印574で示す)、
図10Dにおいては、液体575をチャンネル583に流れるよう導くことによって、流体小滴570をチャンネル583に導く(矢印574で示す)。
【0063】
実施形態の別のセットにおいて、流体システム内の、例えば異なるチャンネル内又はチャンネルの異なる部分における圧力を制御して、流体小滴の流れを導くことができる。例えば、小滴を、先の流れ方向について複数の選択肢を持つチャンネル接合点に導くことができる(例、下流チャンネルの選択肢を設定するチャンネルの枝分かれ又は分岐への誘導)。1つ以上の選択肢下流チャンネルの圧力を制御し、小滴を選択的に1つのチャンネルに導くことができ、接合点に引き続き到着する小滴に対し必要な時間順序で圧力を変化させ、引き続く小滴各々のたどる下流経路を別個に制御することができる。1つの仕組みにおいて、液体貯蔵槽の膨張及び/又は収縮を使って、例えば、流体小滴を包含する液体の動きを方向付けることによって、流体小滴を誘導又はソートしてチャンネルに入れることができる。貯蔵槽が作動したときに、液体が望む方向に(流体小滴を望む方向に搬送しながら)流れるように、液体を動かすよう液体貯蔵槽を配置することができる。例えば、液体貯蔵槽の膨張により液体は貯蔵層の方向に流れ、液体貯蔵槽の収縮により、液体の流れが貯蔵層から遠ざかるようにすることができる。特定の例において、液体貯蔵槽の膨張及び/又は収縮を、例えば前記のような他のフロー制御デバイス及び方法と組み合わせることができる。液体貯蔵槽を膨張及び/又は収縮をさせることができるデバイスの、限定されない例には、ピストン及び圧電部品が含まれる。特定の例において、圧電部品は、例えば、電気信号に対する応答性など、比較的に速い反応時間のゆえに特に有用であろう。
【0064】
限定されない例として、
図11Aにおいて、流体小滴600はチャンネル610中の液体605に囲まれている。チャンネル610は、チャンネル611及び612に分かれている。チャンネル611及び612と流体がつながっている貯蔵槽617及び618があり、これらは、例えば、圧電部品615及び616、ピストン(図示せず)等により膨張及び/又は収縮させることができる。
図11Bにおいて、液体貯蔵槽617は膨張しており、液体貯蔵槽618は収縮している。貯蔵槽の膨張/収縮の影響により、矢印603で示すように液体の正味の流れはチャンネル611の方向となる。かくて、流体小滴600はチャンネルの接合点に到達すると液体605の動きによってチャンネル611に導かれる。逆の状況が
図11Cに示されており、液体貯蔵槽617は収縮しており、液体貯蔵槽618は膨張している。液体の正味の流れはチャンネル612方向となり(矢印603で示す)、流体小滴600をチャンネル612内に移動させる。ただし、流体小滴600をチャンネル611又は612に導くために、貯蔵槽617及び618の双方が作動する必要はないことに注意されたい。例えば、1つの実施形態において、液体貯蔵槽617の膨張によって(貯蔵槽618に一切変化なく)、流体小滴600をチャンネル611に導くことができ、別の実施形態においては、液体貯蔵槽618の収縮によって(貯蔵槽617に一切変化なく)、流体小滴600をチャンネル611に導くことができる。特定の例において、2つより多い液体貯蔵槽を使用することができる。
【0065】
特定の実施形態において、流体小滴を2より多いチャンネルにソートすることができる。本発明の実施形態の、小滴の配分のため流体システム内に複数の部位を持つ限定されない例を、
図6A及び6Bに示す。他の仕組みを10A−10Dに示す。
図6Aにおいて、電極321/322、323/324、及び325/326をそれぞれ使って電界を印加し、交点340、341、及び342において小滴の移動を制御することによって、チャンネル330中の帯電した小滴315を、必要に応じ出口チャンネル350、352、354、又は356のいずれにでも導くことができる。
図6Aでは、小滴315は、前記で説明したと同じ原理によって、印加電界300及び301を使いチャンネル354に導かれる。同様に、
図6Bにおいて、電極421/422、423/424、425/426、及び427/428をそれぞれ使って電界を印加し、交点440、441、442、及び443において小滴の移動を制御することによって、チャンネル430中の帯電した小滴415を、出口チャンネル450、452、454、456、又は458のいずれにでも導くことができる。この図では、小滴415はチャンネル454に導かれているが、当然ながら、必要に応じ帯電した小滴を他のどのチャンネルにでも導くことができる。
【0066】
別の例の、
図2Aに概略が図示された装置5において、流体源10によって生成された流体小滴15は、2つの電極22、24を含む電界発生器20を使って生成された印加電界によって正に帯電されている。流体小滴15は、小滴を包含する液体によってチャンネル30を通って導かれ、交点40に向かう。交点40において、流体小滴は、選好する方位又は方向を持たず、等しい確率で出口チャンネル50と55とに移動する(この実施形態では、液体は、双方の出口チャンネル50及び55からほぼ等しい割合で排出される)。同様に、流体源110によって生成された流体小滴115は、2つの電極122、124を含む電界発生器120を使って生成された印加電界によって負に帯電されている。交点140に向かいチャンネル130を進んだ後、流体小滴は、選好する方位又は方向を持たず、液体がほぼ等しい割合で出口チャンネル150と155とを通って抜け出るので、等しい確率で出口チャンネル150及び155に移動する。交点140の代表的顕微鏡写真を
図2Bに示す。
【0067】
図3Aの概略図において、1.4V/マイクロメータの電界100が、装置5の右に向かって
図2Aの装置5に印加されている。チャンネル30中の正に帯電した流体小滴15は、交点40に達すると、印加電界100によってチャンネル55中を右に導かれ、一方、小滴を含有する液体は、継続してほぼ等しい割合で出口チャンネル50と55とを通って抜け出る。同様に、チャンネル130中の負に帯電した流体小滴115は、交点140に達すると、印加電界100によってチャンネル150中を左に導かれ、一方、小滴を含有する液体は、継続してほぼ等しい割合で出口チャンネル150と155とを通って抜け出る。このように、電界100を使って、必要に応じ、流体小滴を特定のチャンネルに導くことができる。交点140の代表的顕微鏡写真を
図3Bに示す。
【0068】
図4Aは、これも1.4V/マイクロメータの電界100を持つ
図2Aの装置5の概略図であるであるが、方向が反対である(すなわち、−1.4V/マイクロメータ)。この図では、チャンネル30中の正に帯電した流体小滴15は、交点40に達すると、印加電界100によってチャンネル50中を左に導かれ、チャンネル130中の負に帯電した流体小滴115は、交点140に達すると、印加電界100によってチャンネル155中を右に導かれる。小滴を包含する液体は、ほぼ等しい割合で、出口チャンネル50及び55と、150及び155とを抜け出る。交点140の代表的顕微鏡写真を
図4Bに示す。
【0069】
本発明の特定の実施形態において、例えば特定の用途によって、流体小滴をソートしたり及び/又は2つ以上の別個の小滴に分割したりすることができる。前記で説明した技法の任意のものを使って、小滴を分割及び/又はソートすることができる。限定されない例として、デバイス(又はその一部)に第一電界を印加(又は除去)することによって、流体小滴を第一部位又はチャンネルに導くことができ;デバイス(又はその一部)に第二電界を印加(又は除去)することによって、流体小滴を第二部位又はチャンネルに導くことができ;デバイス(又はその一部)に第三電界を印加(又は除去)することによって、流体小滴を第三部位又はチャンネルに導くこと等ができ、これら電界を、何らかの点で、例えば電界強度、方向、周波数、継続時間等を異なったものとすることができる。一連の小滴において、各小滴を個別にソート、及び/又は分割することができ、例えば、一部の小滴をどこかの場所に導くことができ、他の小滴を複数の小滴に分割して2箇所以上の場所に導くことができる。
【0070】
ある1つの例として、
図8Aにおいて、チャンネル560中の流体小滴550及び周囲液体555を、チャンネル556、チャンネル557に導くか、又は、何らかの方法でチャンネル562と564に分割することができる。
図8Bにおいて、周囲液体555をチャンネル562に向かわせることによって、流体小滴550を左向きにチャンネル562内に導くことができ、
図8Cにおいては、周囲液体555をチャンネル564に向かわせることによって、流体小滴550を右向きにチャンネル564内に導くことができる。
図8Dにおいて、流体小滴550を取り囲む液体555の流れの制御と組み合わせて、電界を印加し、これにより小滴を接合点561に衝突させ、小滴を2つの別個の流体小滴565、566に分割することができる。流体小滴565はチャンネル562に導かれ、流体小滴566はチャンネル566に導かれる。印加電界の高度な制御を構築して小滴形成を制御することができ、例えば、流体小滴565が小滴565と566とに分割された後に、小滴565と566がほぼ同じサイズになるか、又は例えば
図8E及び
図8Fに示すように、小滴565と566のいずれかがより大きくなるようにすることができる。
【0071】
別の例として、
図9Aにおいて、流体小滴530及び液体535を搬送するチャンネル540は、チャンネル542と544に分かれる。流体小滴530を帯電させることも無帯電とすることもできる。電極526はチャンネル542の近傍に置かれ、電極527はチャンネル544の近傍に置かれる。電極548はチャンネル540、542及び544の接合点の近傍に置かれる。流体小滴530が接合点に達すると、小滴は電極の影響を受け、及び/又は、例えば取り囲む液体をチャンネルに向かわせるなどして、あるチャンネル又は他の部位に導かれる。
図9Bに示すように、電極526及び527を使って、電界525を電極に印加することによって、流体小滴530を2つ別個の小滴565及び566に分割することができる。
図9Cにおいて、電極527及び528を使って小滴に電界525を印加することによって、小滴530中に双極子を誘起することができる。印加された電界の力によって小滴は強く右に引き付けチャンネル544に入れることができる。同様に、
図9Dにおいて、電極526及び528を使って小滴に電界525を印加することによって、小滴530中に双極子を誘起することができ、これにより小滴530をチャンネル542に引き入れることができる。どちらの電極を使って小滴530を通る電界を誘起するかによって、及び/又は印加される電界の強度を制御することによって、チャンネル540内の1つ以上の流体小滴を、ソートしたり及び/又は2つの小滴に分割することができ、また、各小滴を、他と関係なく自由にソート及び分割することができる。
【0072】
(小滴の感知;小滴の成分の感知)
本発明の特定の様態において、流体小滴の1つ以上の特性、及び/又は流体小滴を包含する流体システムの一部(例、流体小滴を囲む液体)の特性を(流体小滴の1つ以上の特性を判別できるような方法で)、感知及び/又は判別することができるセンサを提供する。当業者には、小滴に関して判別可能で本発明で使えるような特性は明確であろう。このような特性の限定されない例には、蛍光特性、分光特性(例、光学、赤外線、紫外線等)、放射能、質量、体積、密度、温度、年度、pH、生体物質(例、たんぱく質、核酸等)のような物質の濃度、又は類似特性が含まれる。
【0073】
特定の例において、センサをプロセッサに接続し、これに、例えば、前記で説明したように、小滴をソートし、小滴に電荷を加え又は除去し、小滴を別の小滴と融合させ、小滴を分割し、小滴内で混和を生じさせること等によって、流体小滴に操作を施すことができる。例えば、センサによる流体小滴の測定に応じて、プロセッサは、流体小滴を分割したり第二流体小滴と融合させること等ができる。
【0074】
流体小滴と感知コミュニケーションを取るために、1つ以上のセンサ及び/又はプロセッサを配置することができる。本明細書で用いる「感知コミュニケーション」とは、流体システム内の(例、チャンネル内の)流体小滴及び/又は流体小滴を含む流体システム部分を何らかの方法で感知及び/又は判別することができるように、センサを必要箇所に配置することをいう。例えば、センサは、流体小滴及び/又は流体小滴を含む流体システム部分と、流体的に、光学的に、視覚的に、熱的に、空気圧的に、電子的に、又は類似の方法で感知コミュニケーションを取ることができる。センサを流体システムの最も近くに配置し、例えば、内蔵すなわちチャンネルの壁に一体化して結合するか、あるいは、流体システムとは別にして配置するが、流体小滴及び/又は流体小滴を含む流体システム部分(例、チャンネル又はマイクロチャンネル、流体小滴を包含する液体等)を感知及び/又は判別できるように、流体システムと電気的及び/又は光学的コミュニケーションを取れるようにする。例えば、センサを、小滴を包含するチャンネルと直接には一切接続させないが、赤外線、紫外線、又は可視光線のような、小滴又は流体システムから発生する電磁放射を検知するように配置することができる。電磁放射線を小滴に生成させ、及び/又は、流体システムの他の部分に(又は流体システムの外部で)発生させて、流体小滴及び/又は流体小滴を包含する流体システム部分と反応させ、例えば、吸収、反射、回折、屈折、蛍光、燐光、極性変化、相変化、時間的な変化等を通して流体小滴の1つ以上の特性を表すようにすることができる。例として、流体小滴及び/又は流体小滴を囲んでいる液体に向けてレーザを当て、流体小滴及び/又は周囲液体の蛍光特性を判別することができる。本明細書で用いる「感知コミュニケション」は、直接的にも間接的にもできる。例として、流体小滴からの光をセンサに導くこともでき、まず光ファイバ、システム、導波路等を通してからセンサに導くこともできる。
【0075】
本発明に有用なセンサの限定されない例には、光又は電磁気ベースのシステムが含まれる。例えば、センサを、蛍光センサ(例、レーザ誘導)、顕微鏡システム(カメラ又は他の記録装置を含めることができる)又は類似のものとすることができる。別の例として、センサを、電子センサ、例えば電界又は他の電気特性を判別できるセンサとすることができる。例えば、センサは、流体小滴及び/又は流体小滴を包含する流体システム部分の静電容量、インダクタンス等を検知することができる。
【0076】
本明細書で用いる「プロセッサ」又は「マイクロプロセッサ」は、1つ以上のセンサから信号を受理し、信号を格納し、及び/又は、例えば、数学式又は電子又は計算回路を使って、1つ以上の応答(例、前記のような)を命令することのできる一切の部品又は装置である。信号は、例えば、空気圧信号、電気信号、光信号、機械的信号等、センサが判別した環境ファクタを表すための、適切な任意の信号とすることができる。
【0077】
限定されない特定の例として、本発明のデバイスに、1つ以上の細胞を含有する流体小滴を包含させることができる。細胞を、蛍光信号マーカーに曝し、特定の条件が存在する場合、これと結合させることができる、例えば、マーカーは第一細胞種とは結合できるが第二細胞種とは結合できない、マーカーは表現されたたんぱく質に結合できる、マーカーは細胞の生存状態(細胞が生きてるか死んでるか)を示すことができる、マーカーは細胞の発達及び分化の状態を示すことができる等々が可能で、蛍光信号マーカーの存在/不在、及び/又は強度に基づき、本発明の流体システムを通して細胞を導くことができる。例えば、蛍光信号マーカーが識別されるものを、細胞を装置の1つの部位(例、収集チャンバ)に導くことができ、蛍光信号マーカーのないものを別の装置部位(例、廃棄チャンバ)に導くことができる。このように、この例では、1つ以上の判別可能な又は目標とできる細胞の特性をベースとして、細胞の集団を選別及び/又はソートすることができ、例えば、生存細胞、特定のたんぱく質を表現している細胞、特定の細胞種等を選別することができる。
【0078】
(定義)
ここで、本発明のさまざまな名様態の理解の上で助力となる各種の定義を提示する。以下に、また及び散在して組み入れた定義事項は、本発明をさらに十分に説明するための追加開示である。前記したように、本発明のさまざまな様態は、流体に囲まれた(例、懸濁された)流体の小滴に関する。特定の用途に応じて、小滴を、ほぼ同じ形状及び/又はサイズ、又は異なった形状及び/又はサイズにすることができる。本明細書で用いる「流体」という用語は、一般に、流れる性質、容器の輪郭に適合する性向をもつ物質、すなわち液体、ガス、粘弾性的流体等をいう。典型的には、流体は、静的剪断応力に耐えられない材料であり、剪断応力が加わると、流体は連続的にどこまでも変形する。流体は、「流れる」ことが可能な任意の妥当な粘度を持つことができる。2つ以上の流体が存在する場合、当業者は、流体間の関係を考慮しながら、基本的にはどのような流体(液体、ガス、及び類似)からでも、他の流体と関係なく、各々の流体を選定することができる。流体は相互に混和性又は不混和性である。例えば、流体の流れ形成の時間枠内、又は反応又は相互作用の時間枠内で、基本的に不混和であるような2つの流体を選定することができる。一部を相当に長い期間液体中にとどめるのであれば、それら流体は本質的に不混和であるべきである。接触及び/又は形成の後、分散した部分が、重合又は同様な作用ですばやく硬化するような場合には、流体は不混和である必要はない。当業者は、接触角測定などを使って適切な混和性又は不紺和性の流体を選択して、本発明の技法を実施することができる。
【0079】
本明細書では、第二要素中を通るだけで、第一要素周りの二次元の閉ループを描ける場合に、第一要素は第二要素「囲まれている」ことになる。どの方向(ループの方位)かにかかわらず、第二要素を通るだけで第一要素の周りに閉ループを描ける場合、第一要素は「完全に囲まれている」ことになる。1つの実施形態において、例えば、第一要素は細胞であり、媒体に浮遊する細胞は、媒体に囲まれている。別の実施形態において、第一要素は粒子である。さらに別の実施形態において、第一要素は流体である。特定の例において、第二要素を流体とすることができる(例、懸濁状態又はエマルジョン等)、例えば、疎水性の液体を疎水性の液体中に懸濁させることができ、疎水性の液体を親水性の液体中に懸濁させることができ、ガス泡を液体中に浮遊させることができる、等々。一般に、疎水性の液体と親水性の液体とは、基本的には相互に不混和であり、親水性液体は、疎水性液体よりも、水に対する高い親和性を有する。親水性の液体の例には、以下に限定されないが、細胞又は生体媒質、食塩水等のような水及び水を含む水溶液、ならびに、エタノールのような他の親水性液体が含まれる。疎水性の液体の例には、以下に限定されないが、炭化水素のようなオイル、シリコンオイル、鉱物オイル、フッ化炭素オイル、有機溶剤等が含まれる。他の適切な流体の例は前記のとおりである。
【0080】
同様に、本明細書で用いる「小滴」とは、第二流体に完全に囲まれた第一流体の分離された一部である。小滴は必ずしも球状ではなく、例えば、環境にしたがって他の形状を取ることができることに注意すべきである。1つの実施形態において、小滴は、小滴が存在する流体の流れと垂直方向のチャンネルの最大寸法にほぼ等しい最小断面寸法を有する。
【0081】
前記のように、すべてではないが、一部の実施形態において、本明細書に記載した方法にマイクロ流体構成要素、例えば1つ以上のマイクロ流体チャンネルを含めることができる。本明細書で用いる「マイクロ流体」とは、長さと最大断面寸法との比が少なくとも3:1で、1mmより小さい断面寸法を持つ、少なくとも1つのチャンネルを含むデバイス、装置又はシステムをいう。本明細書で用いる「マイクロ流体チャンネル」とは、これらの基準を満たすチャンネルをいう。チャンネルの「断面寸法」はチャンネル内の流れ方向と垂直に測定される。このように本発明のマイクロ流体実施形態中の流体チャンネルの一部又は全部を2mmより小さい断面寸法とすることができ、特定の例においては1mmより小さくできる。実施形態の1つのセットにおいて、本発明の実施形態を包含するすべての流体チャンネルは、マイクロ流体規模、又は最大断面寸法が2mm又は1mm以下である。特定の実施形態において、流体チャンネルを部分的に単一の構成要素で形成することができる。(例、エッチングされた基板、モールド、ユニット)。当然ながら、もっと大きなチャンネル、チューブ、チャンバ、貯蔵槽等を使って、流体を貯蔵、及び/又は本発明のさまざまな構成要素又はシステムの流体に配送することができる。実施形態の1つのセットにおいて、本発明の実施形態を含むチャンネルの最大断面寸法は、500ミクロンより小さく、200ミクロンより小さく、100ミクロンより100ミクロンより小さく、50ミクロンより小さく、又は25ミクロンより小さい。
【0082】
本明細書で用いる「チャンネル」とは、部品(基板)の上又はその中の、少なくとも部分的に流体の流れを導く機能をいう。チャンネルはどのような断面形状(円、楕円、三角、不規則形、矩形又は長方形、又は類似の形状)にもでき、カバーすることもしないこともできる。完全にカバーした実施形態において、チャンネルの少なくとも一部を、完全な閉鎖形にすること、もしくは、取り入れ口及び/又は取り出し口を除いて、その長さ全体にわたって完全な閉鎖形にすることができいる。また、チャンネルを少なくとも2:1、さらに典型的には、少なくとも3:1、5:1、10:1、15:1、20:1、又はそれ以上のアスペクト比にすることができる。開放形チャンネルには、通常、流体の移送をし易くするための特徴、例えば、構造特徴(細長いくぼみ)及び/又は物理的又は化学的特徴(疎水性対親水性)、又は流体に力(例、封じ込め力)を働かせる他の特徴を含めることになる。チャンネル内の流体で、部分的又は完全に、チャンネルを満たすことができる。開放チャンネルが用いられる特定の例において、流体を、例えば、表面張力を使ってチャンネル内に保持することができる(凹又は凸形メニスカス)。
【0083】
チャンネルをどのようなサイズにも、例えば、流体流れと垂直方向最大寸法を約5mm又は2mmより小さく、又は約1mmより小さく、又は約500ミクロンより小さく、さらに約200ミクロンより小さく、約100ミクロンより小さく、約60ミクロンより小さく、約50ミクロンより小さく、約40ミクロンより小さく、約30ミクロンより小さく、約25ミクロンより小さく、約10ミクロンより小さく、約3ミクロンより小さく、約1ミクロンより小さく、約300nmより小さく、約100nmより小さく、約30nmより小さく、又は約10nmより小さくすることができる。特定の例において、流体が、部品又は基板を通って自由に流れられるようにチャンネル寸法を選定することができる。また、例えば、特定の容積的又は線形的チャンネル内流速となるようにチャンネルの寸法を選択することもできる。当然ながら、当業者の知悉する任意の方法によって、チャンネルの数及びチャンネル形状を変えることができる。特定の例において、1つ以上のチャンネル又は毛細管を使うことができる。例えば、2つ以上のチャンネルを使って、それらを相互に入り込み配置、相互に隣接配置、相互に交差配置等させることができる。
【0084】
実施形態の1つのセットにおいて、流体小滴に、たんぱく質、ビールス、高分子、粒子等を含有させることができる。本明細書で用いる「細胞」は生物学で用いる通常の意味を持つ。細胞を任意の細胞種とすることができる。例えば、細胞を、バクテリア又は他の単細胞生物、植物細胞、又は動物細胞とすることができる。細胞が単細胞生物の場合、細胞を、例えば、原生動物、トリパノゾーマ、アメーバ、イースト細胞、藻類等とすることができる。細胞が動物細胞の場合、細胞を、例えば、無脊椎動物細胞(例、ショウジョウバエの細胞)、魚類細胞(例、ゼブラの細胞)、両生類細胞(例、蛙の細胞)、爬虫類細胞、鳥類細胞、又は霊長類細胞、牛属細胞、馬属細胞、豚属細胞、山羊属細胞、犬属細胞、猫細胞のような哺乳類細胞、もしくはラットやマウスのようなげっ歯類の細胞とすることができる。細胞が多細胞生物のものである場合、細胞を、生物のどの部位のものともすることができる。例えば、細胞が動物のものである場合、細胞を、心臓細胞、繊維芽細胞、ケラチン生成細胞、肝細胞、軟骨細胞、神経細胞、骨細胞、筋肉細胞、血液細胞、内皮細胞、免疫細胞(例、T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、好塩基球、肥満細胞、好酸球)、幹細胞等とすることができる。特定の例において、細胞を遺伝子組み換え細胞とすることができる。特定の実施形態において、細胞をチャイニーズハムスター由来の樹立細胞株(「CHO」)又は3T3細胞とすることができる。
【0085】
(材料)
本発明の特定の様態による、さまざまな材料及び方法を使って、本発明システムの前記構成要素のいずれをも形成することができる。特定の例において、選定されたさまざまな材料を各種の方法に役立てることができる。例えば、本発明の各種構成要素を固体材料で形成することができ、マイクロマシニング、回転塗布及び化学気相蒸着のような成膜処理、レザー加工、写真平板技法、化学液又はプラズマ処理を含むエッチング、及び類似技法によって、チャンネルを形成することができる。例えば、「サイエンティフィック・アメリカン」248:44−455、1983年(エンジェルら)を参照すること。1つの実施形態において、流体システムの少なくとも一部は、シリコン・チップの必要部分をエッチングしたシリコンで形成される。シリコンから本発明の各種の流体システム及び装置を、高精度で効率的に加工するための技術はよく知られている。別の実施形態において、本発明のシステム及び装置のさまざまな構成要素をポリマー、例えば、ポリメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」又はテフロン(登録商標))のようなエラストマー・ポリマー、又は類似材料で形成することができる。
【0086】
異なる構成要素を異なる材料で製作することができる。例えば、底部壁及び側壁を含むベース部を、シリコン又はPDMSのような不透明材料で製作し、上面部を、流体プロセスの観察又は制御のため、ガラス又は透明ポリマーのような透明又は部分的に透明な材料で製作することができる。ベース支持材料が精度ある所望機能性を持たない場合、チャンネルの内部壁に接触する流体に所望の化学機能性を及ぼすため構成要素をコートすることができる。例えば、構成要素を説明したように製作し、その内壁に別の材料をコートすることができる。本発明のシステム及び装置の各種の構成要素、例えば流体チャンネルの内壁コートするのに用いた材料は、望ましくは、流体システムを通って流れる流体に悪影響を与えず、これからも悪影響受けないもの、例えば、装置内で使用される流体の存在に対して化学的に不活性な材料から選択することができる。
【0087】
1つの実施形態において、本発明の各種構成要素をポリマー及び/又は柔軟性及び/又はエラスマー材料で製作することができ、成型方式(例、レプリカ成型、インジェクション成型、キャスト成型等)によって加工を容易にするために、硬化性流体で便利に形成することができる。硬化性流体を、基本的には、流体ネットワーク内で使用を予定している流体を封じ込め及び/又は移送できる硬度に、硬化できる、あるいは自発的に硬化する任意の流体とすることができる。1つの実施形態において、硬化性流体は、ポリマー液又は液状ポリマー前駆体(プレポリマー)を含む。適切なポリマー液に、例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、又は融点より高い温度に加熱されたこのようなポリマーの混合物を含めることができる。別の例として、適切な溶剤に溶融させ、例えば蒸発によって溶剤が除去されると固形ポリマー材料を形成する1つ以上のポリマーの溶液を、適切なポリマー液の中に含めることができる。例えば、融解させた状態から又は溶剤の蒸発によって硬化の可能な、こういったポリマー材料は当業者には熟知のものである。多様なポリマー材料は、その多くはエラストマーであるが、使用に適しており、また、1つ又は両方の成型マスターがエラストマー材料で構成されている実施形態において、成型品又は成型マスターの形成に適している。このようなポリマーの例の限定されないリストには、シリコン・ポリマー、エポキシ・ポリマー、及びアクリル・ポリマーの汎用クラスのポリマーが含まれる。エポキシ・ポリマーは、一般にエポキシ基1,2エポキシド、又はオキシランといわれる、3部分からなる環状エーテル基の存在で特徴付けられる。例えば、芳香族アミン、トリアジン及び油環式の基幹材ベースの合成物に、ビスフェノールAのジグリシジル・エタノールを加えて使うことができる。別の例には、よく知られたノボラック・ポリマーが含まれる。本発明に夜使用に適したシリコン・エラストマーの限定されない例には、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシラン等といったクロロシラン類を含有する前駆体から形成されるものが含まれる。
【0088】
実施形態の1つのセットにおいて、シリコン・ポリマー、例えばシリコン・エラストマー・ポリジメチルシロキサンが望ましい。PDMSの、限定はされない例には、ミシガン州ミッドランド、ダウケミカル社の商標「シルガード」、特にシルガード182、シルガード184及びシルガード186名で販売されているものが含まれる。PDMSを含むシリコン・ポリマーは、本発明のマイクロ流体構造の製作を容易にするためのいくつかの有益な特質を有する。例えば、このような材料は、安価で簡単に入手でき、プレポリマー液を加熱処理することにより硬化することができる。例えば、PDMSは、通常、プレポリマー液を、例えば、約65℃から約75℃の温度に、例えば、約1時間曝すことにより硬化できる。また、PDMSのようなシリコン・ポリマーは、弾性的にすることができ、これによって、本発明の特定の実施形態で必要な、比較的高いアスペクト比で非常の小さな構造を形成するのには有用である。この点について、柔軟な(例、弾性のある)成型品又はマスターは有利である。
【0089】
PDMSといったシリコン・ポリマーによって本発明のマイクロ流体構造のような構造を形成することの1つの利点として、例えば、エアプラズマのような酸素含有プラズマへの曝露によって、このようなポリマーを酸化させることができることがあり、これによって酸化された構造体は、その表面に、他の酸化されたシリコン・ポリマー表面、又は、さまざまな他のポリマー及び非ポリマー材料の酸化表面と架橋結合できる化学基を含有するようになる。こうして、構成要素を加工しこれを酸化させて、他のシリコン・ポリマー表面、又はシリコン・ポリマー酸化表面反応性のある他の基材の表面に、別の接着剤又は他の接着手段の必要なく、基本的に不可逆に接合をさせることができる。ほとんどの例では、接合させるための補助圧力を加える必要なく、単に、シリコン酸化面を別の面に接触させるだけで接合を完了することができる。すなわち、予備酸化されたシリコン表面は、適切な合わせ面に対して接合接着剤として機能する。特に、酸化されたPDMSのような酸化シリコンは、それ自体に不可逆的に接合するばかりでなく、例えば、PDMSと同じような方法(例えば、酸素含有プラズマへの曝露)で酸化された、ガラス、シリコン、酸化シリコン、水晶、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス炭素、及びエポキシポリマーを含むそれ自体と異なるさまざまな酸化材料と不可逆的に接合することができる。本発明に関連して有用な酸化及び接合方法ならびに成型技法は、論文、例えば、題名「Rapid Prototyping of Microfluidic Systems and Polydimethylsiloxane」、Anal. Chem、70:474−480、1998(ダフィら)に記載されており、これは本明細書中に参考として援用される。
【0090】
本発明のマイクロ流体構造を酸化シリコン・ポリマーで形成する別の利点は、これらの表面を、通常のエラスマー・ポリマーよりもはるかに高い親水性にできることである(親水性のある内部面が必要な場合)。しかして、このような親水性のチャンネル内面は、通常の無酸化エラスマー・ポリマー又は他の疎水性の材料よりも、水溶液を満たし易く水溶液に濡れ易い。
【0091】
1つの実施形態において、底面壁は、1つ以上の側面壁又は上面壁あるいは他の構成要素と異なる材料で形成される。例えば、底面壁に、シリコン・ウエハ又はマイクロチップ、又は他の基板の表面を含めることができる。このような別の基板に対し、前記のように、他の構成要素を接合させることができる。異なる材料の基板(底面壁)に対しシリコン・ポリマーを含む構成要素を接合する必要がある場合、酸化シリコン・ポリマーが不可逆に接合可能な材料群(例、酸化された、ガラス、シリコン、酸化シリコン、水晶、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス炭素、及びエポキシポリマーの表面)から基板を選定することができる。当業者には明白であろうが、これに換えて、以下に限定はされないが、別個の接着剤、熱ボンディング、溶剤ボンディング、紫外線溶接等を含めたの接合技法を用いることができる。
【実施例】
【0092】
下記の例は、本発明の特定の実施形態の説明を意図したものであって、本発明の全体範囲を体現するものではない。
【0093】
(実施例1)
図15Aは、前記の特質の一部を持つ流体システムの例を示す。この例において、流体小滴はシステム800(概略的に
図15Aに示す)に取り入れられる。流体システム800は、取り入れ領域801(「a」で標示)、分岐領域802(「b」)、ポストを含む領域803(「c」)、及び回収領域804(「d」)を含む。取り入れ領域801は、液体815に包含された一連の小滴810を生成する。小滴は約20マイクロメータの平均直径を持つ。この例では、液体は水であり、流体小滴は、約3wt%のSPAN80(界面活性剤)を含むヘキサデカンを含有する。一連の小滴が
図15Bに示されており、これは、
図15Aに概略を示した取り入れ領域801の拡大図である。
【0094】
図15Cにおいて、一連の分岐点(顕微鏡写真の左側に示す)は、流体小滴を一連のチャンネルに分流させている。小滴は、どの特定のチャンネルにも意図的に導かれていないので、小滴は、ランダムにチャンネルに分散されている。次に、小滴は、一連のポスト818を含む領域に移送される。この領域の拡大図を15Dに示す。図から分かるように、個々の小滴は、界面活性剤が存在するため、個別の独自性を維持しており融合しない。
図15Eにおいて、小滴は回収領域804で回収される。
【0095】
(実施例2)
この例において、マイクロ流体デバイスによる流体流れの高精度の操作を明らかにする。この技術は、微量の試薬を使いながら高処理能力の反応装置を可能にする。これらの反応装置はその規模が縮小するにつれ、表面吸収及び拡散による汚染の影響によって、使用可能最小量が制限されることがある。不混和性の搬送流体の中の小滴内に試薬を封じ込めることによってこのような制限を乗り越えることができるが、新しい流体処理技術が必要となる。電気的に取り扱える小滴の生成、高い効率の小滴融合、高い精度の小滴の分割及び再帯電、及び制御可能な小滴ソートを可能にする、帯電小滴と電界とに基づくプラットフォーム技術の例を提供する。
【0096】
この例において、マイクロ流体デバイス中の個別の小滴を操作、制御するための、包括的でしっかりしたプラットフォーム技術を提供する。小滴の静電荷と装置の電界とを組み合わせて、小滴を個別に生成し、再結合し、分割し、ソートすることによって、高い純度を維持し、非常に高い処理能力を可能としながら個別のマイクロ反応装置に対する精緻な制御を具えるモジュールを説明する。電界E中で水溶性流体を帯電させて得られる力を組み入れることにより、表面張力を克服するため粘性力だけに頼る他の方式で実行できるよりも、もっと精度のある個別タイミングでより小さな小滴が生成される。このことにより、フェムトリッター位小さい量のマイクロ反応装置を生成できるしっかりした小滴生成モジュールが提供される。異なる小滴に反対の電荷を組み入れることで、小滴を、表面張力及び潤滑による安定化力に打ち勝って、制御可能に信頼できるように融合させることができる。このことにより試薬等分量の高精度な混合を可能とする、しっかりした小滴融合モジュールが提供される。電界が誘起する外延的な力を組み入れることにより、さらなる分析のため、大きな小滴をより小さな等分量に、制御可能に分割することができ、場合によっては、同時に、以降の処理のため中性の小滴に再帯電することができる。このことにより、同一の材料に対し複数の分析を実施することを可能にするしっかりした分割及び帯電モジュールが提供される。電界が帯電した小滴に及ぼす力を組み入れることによって、個々の小滴を選定したチャンネルに導くことができる。このことにより、所望の反応生成物を選択することを可能にするしっかりした小滴ソートモジュールが提供される。これらのモジュールは、個別小滴の高速での操作と制御のため有用であり、小滴ベースのマイクロ流体デバイスのための技術として役立てることができる。さらに、電界を切り替えることによりすべての制御を実施できるので、運動部分がなく、10
6Hzのような高い周波数が実施可能である。このことにより、非常に高い能力の組み合わせ技術が促進される。
【0097】
透明なポリマー材料であるポリジメチルシロキサン(PDMS)にチャンネルのパターンを形成するためソフト・リソグラフィを用いた。ガラス・スライドがチャンネルの上面を形成する。チャンネルに隣接するガラス・スライドの表面に、酸化インジウムすず(ITO)電極をパターン形成し、酸素プラズマを使いスライドをPDMSに接合して、電極を組み入れた。PDMS材で製作されたデバイスは強い疎水性を持ち、オイル搬送媒体はその表面を濡らし水の小滴はチャンネル壁に接触せず、生体分子の分離性及び表面相互作用による交差汚染の排除が円滑に行われることを確実にする利点を有する。
【0098】
流れを集束させる幾何配置を用いて小滴を形成した。水流は1つのチャンネルから小さな狭窄部分を通って注入され、オイル流の対抗圧力により、水流が狭窄部を通る際に流体力学的に水流を集束させサイズを小さくする。この小滴生成器を、均一な水小滴の安定した流れをオイル中に生成する方式のため使うことができる。水小滴のサイズを、オイルと水との流速比で制御した。粘性力が表面張力を凌駕して、均一な小滴を生成する。水の流速が高すぎると、より長い流体のジェットが開口部を通過し、下流でさらに小滴に分離するが、サイズの均一性が悪くなる。水の流速が低すぎると、開口部における分離が、不規則になって、広範囲の小滴サイズバラツキが生じる。
【0099】
電界を組み入れて、電気的に取り扱える乳化処理システムを作成した。これを実現するために、水流に高い電圧を印加し、オイルと水との界面に荷電した。水は導電体として振る舞い、オイルが絶縁体となり、電気化学的反応によって流体界面がコンデンサのようになって帯電した。分離時に、界面の電荷は小滴にとどまる。さらに、オイル又は水の注入速度を変化させずに、小滴の体積V
dを少なくとも3桁以下、生成数fを少なくとも3桁以上に調整することができた。この例では、小滴サイズと生成数とは相互に独立的ではなく、これらの積は、Qd=fV
dとして、分散段階の流入速度で決まる。電界強度の増大とともに小滴のサイズは縮小した。低い電界強度においては、小滴サイズは流速の連続相によって決まった。しかしながら、高い電界強度では、小滴サイズは電界により決まり、E上昇とともに急速に縮小した。
【0100】
3つの流速における、小滴サイズの印加電圧への依存性は、次の通りである。低い印加電圧においては電界の影響はごくわずかであり、小滴の形成は表面張力と流れの粘性との間の競合により促進された。対照的に、高い電界においては、できかかっている小滴に、相当な付加的力、F=qEが加わった、ここでqは小滴の電荷である。小滴の界面はコンデンサとして振舞うので、qは印加電圧Vに比例する。これにより、この力にV
2への依存性が生じ、印加電圧増大とともに小滴サイズが縮小する原因となった。さらに強い電界においても、帯電した小滴は、水流の帯電した界面に反発した。
【0101】
1つの実施形態において、オイル及び水の流れは、30ミクロンの開口部で合流する。ガラス上の酸化インジウムすず(ITO)電極に印加された電圧Vは、電界Eを生成し、水−オイル界面を静電容量的に充電した。低い電界強度においては、小滴のサイズは電荷量と無関係であるが、高い電界では縮小することが観察された。小滴サイズは電圧の関数であり、3つの異なる連続相オイル流速(Q
c=80nL/s、110nL/s、140nL/s)に対して、流量が支配的な小滴分離と電界が支配的小滴分離との間のクロスオーバーを示した。水の注入速度は一定で、Qd=20nL/sであった。
【0102】
この例において、電界誘導の小滴形成により提供される電子的制御によりさらなる利点が得られ、これにより小滴の生成分離のフェーズを生成サイクル内に調整することができた。これは、小滴が必要となった瞬間にだけ、分離生成限界電界以上に電界強度を増大することによって達成した。これにより、生成と、個別小滴の特定箇所への到着とを正確に同期させるための便利な手段が得られた。
【0103】
特定の小滴ベース封じ込め型反応システムにおける重要な構成要素は、2つ以上の試薬を組み合わせて化学反応を開始させるためのミキサーである。ミキサーのある例は、静電荷を使用し、各小滴に異なる符合の電荷を帯電させ、電界を印加することによって、これらの融合を引き起こす。ある例には、2つ別個のノズルを持ち、異なる組成と反対電荷を持つ小滴を生成するデバイスが説明されている。小滴はともに、2つの流れの合流点に運ばれた。また、小滴の形成時の荷電に使用された電極が電界を提供し、小滴に流れラインを越えさせ融合に導く。2つのノズルの構造のわずかのバラツキ差異によって、電界がない中で、その小滴生成の回数及び相にわずかの差異が生じた。これによって、注入速度が同一であったとしても、小滴のサイズは違ったものとなった。さらに、小滴はぴったり同一の時間には合流点に到達しなかった。結果として、小滴は融合しなかった。これに対して、電界を印加することにより、小滴形成はおおむね同期されるようになり、同一にサイズされた小滴の対が同時に合流点に到達するようになった。さらに、小滴は反対極に荷電され、これにより流れラインを越えて相互接触し、融合するようになった。電界の介在によって、2つの小滴の分離生成が対になることにより小滴形成の同期化がもたらされた。2つの小滴の先端の間で分離時点が変わると電界の強度が変化し、小滴の分離頻度数は、電界にモードロックされている。この例においては、おそらくは界面活性剤塗膜の安定化効果によって、小滴が融合するためには最小限の電荷が必要となる。接触した小滴が実際に融合するパーセントはE電界いかんによる。
【0104】
1つの実施形態において、電圧を2つの水流を横切って電圧を印加することにより、異なった符号の静電荷を持つ小滴を生成することができる。別の実施形態において、電界が存在しない中で、2つのノズルにおける小滴形成の回数とタイミングが相互に無関係となり、各ノズルで異なった頻度で異なったサイズの小滴を生成することがある。両方のノズルにおける注入流量は同一である。2つの流れが合流した後、上部及び下部ノズルからの小滴は流れのそれぞれの半分側にとどまる。大きな栓流がチャンネル幅を満たした場合であっても、界面活性剤が原因で融合は生じない。さらに別の実施形態において、500ミクロン離れたノズルを横切って200Vの電圧が印加されており、2つのノズルから同時に分離する小滴は、基本的に同一である。たとえ体積で2倍差まで両水流の注入流量に違いがあっても、同時の小滴形成を成就することができる。ソルビトン・モノオレート3%の界面活性剤が存在下で、相互に遭遇し融合する小滴の割合は、限界電界を超えると直線的に増加する。
【0105】
反対極性に帯電した小滴と電界とを使って、試薬を組み合わせて混合するやり方は、非常にしっかりしており、2つの流れからのほとんど100%の小滴が、反対流からきた相手方小滴と融合した。ただし、融合した後生成された小滴は、基本的には無電荷である。小滴を形成する時に帯電させるのは便利であるが、小滴ベースのしっかりした任意のマイクロ流体システムにおいて、さらなる処理のため、必要に応じ混和した小滴を再帯電させる他の方法を用いることができる。これは、例えば、延長フローを用いて、小滴を分極するような電界が存在する中で中性小滴を分割し、2つの反対電荷の子小滴を得ることによって達成できる。1つの実施形態において、中性小滴は分岐線に入り帯電された子小滴に分割される。特定の例において、電界中で帯電粒子の非対称な伸長を観察することができる。垂直の点線は、小滴が対称的な球状形に戻ったときの電極の縁を示す。また、電界によって、小滴分割の高精度制御が可能となり、しっかりした小滴分割モジュールのベースが提供され、それによって小滴の中味を同一の試薬の2つ以上の等分量分割することができ、同一のマイクロ反応装置の中味の多重分析が容易となった。
【0106】
別の実施形態において、電界の存在中で中性小滴を分割することにより再帯電させることができる。分岐された延長フローにおいて、印加電界Esが十分に大きい電界(Esがゼロでない)中で、無電荷の小滴(q=0)は分極され2個の反対電荷を持つ子小滴に分割された。帯電した小滴は電界Es中で引き伸ばされたが、電極に接触すると球形に戻った。
【0107】
マイクロ流体小滴反応システムの構築のため有用なもう1つの構成要素は、小滴ソート装置である。個別小滴の成分を探査することができ、選定した小滴を別々の流れにソートすることができる。マイクロ流体デバイスにおけるこのようなソートは、この例で示すように、機械的バルブを使用することによって達成することができる。小滴の静電帯電を用いることによって、高精度での制御が可能で、高頻度の切り替えができ、運動部品の不要な代替手段を提供できる。小滴上の静電荷によって、電荷と外部電界との線形結合に基づき一滴ごとのソートが可能となる。搬送流体の流れを等しく分割するT字交差分岐点は、小滴集団をもランダムに、等しく2つの流れに分割することになる。しかしながら、分岐点に小さな電界を印加し、電界の方向を変化させて小滴のソート方向を変えることによって、どちらのチャンネルに小滴が流入するかを正確に指定することができる。小滴に加えることのできる大きな力と高い切り替え頻度とは、これを、運動部品のない迅速でしっかりしたソートエンジンにしている。かくして、処理速度は、主として小滴を生成する速度に制限される。
【0108】
1つの実施形態において、帯電した小滴は、電界が印加されていない場合(Es=0)右と左のチャンネルに交互に流入する。右に電界が印加されている場合、小滴は、分岐点で右分岐に流入した。電界が反転すると、小滴は左分岐に流入した。分岐点を過ぎると、小滴間の距離は過ぎる前の半分に縮まり、オイルの流れが等しく分かれていることを示している。特定の例において、電界中で高圧に帯電された小滴の形状変形が観察されることがある。
【0109】
マイクロ流体デバイスにおいて静電荷が小滴にもたらす機能性の向上によって、マイクロ流体装置の応用範囲を大きく拡大することができる。この、小滴を操作するための技法のツール・キットによって、少数の分子を移動させ反応させるためのシステムのモジュールの統合が可能になろう。高い処理能力のソート、組み合わせ化学、及び一連の希少な生物学的機能の研究は、すべてマイクロ・チャンネル中での小滴の静電気操作から利益を得ることができよう。また、例えば、小滴ベースのマイクロ流体技術を使って、蛍光を超えさらに識別機能を強化した、チップ・スケールの蛍光染色細胞分取(FACS)を開発し、小滴形成とソート工程との間における複数の試薬に基づく分析を含めることができよう。さらに、フェモトリッターの小滴、その直径は数ミクロンであるが、を使うことによって、単一の生体分子であっても、「>>1nM」の成分量を示し、これは効率的化学反応及び単一の分子を分析するのに十分な量である。
【0110】
小滴ベースのマイクロ流体デバイスの用途の多くは、分子、細胞又は粒子の種々の群又は試料セットをミクロ反応装置に封入し、おそらくは試薬を加えることによって、含有物の分析を行い、最終的に、希少事象の研究における収集試料から特定のマイクロ反応装置を選択的に取り出すことへの必要性によって促進されている。このためには、最小の試料セットを合理的な時間内にソートするためには、秒あたり10
3の処理速度が必要となり、より大きな試料セットに対しては秒あたり10
5の速度が望ましい。本明細書で説明するように、こういった速度は実行可能である。さらに、例えば本明細書に記載したように、マイクロ流体デバイスをスタンピング工法で作製できるので、並行した流れ又は流体システムを製作し、さらに全体的処理能力を高めることことができる。小滴の利点と高い処理操作能力とを組み合わせれば、幅広い用途に対して大きな機会が提供される。
【0111】
本明細書に、本発明のいくつかの実施形態を説明し図示したが、当業者は、本明細書に記載された機能を実施し、及び/又は、その結果及び/又は1つ以上の利点を取得するための、他のさまざまな手段及び/又は構造を容易に描くことができようが、そのような変形及び/又は変更の各々は、本発明の範囲内であるとみなされる。さらに一般的には、本明細書に記載したすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成は代表例であって、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、特定の用途又は本発明の教示が使用される用途いかんによることは当業者にとって自明であろう。平凡な実験をするだけで、当業者は、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認知し又は確かめることができよう。従って、前記の実施形態は例示目的のためだけに提示されたものであって、添付の請求項及びこれと同等事項の範囲内で、具体的に記載され請求されたものと別の方法で本発明が実行可能であることを理解すべきである。本発明は、本明細書に記載した各個別の機能、システム、製品、材料、キット、及び/又は方法を対象としている。さらに、これら機能、システム、製品、材料、キット、及び/又は方法のどの2つ以上の組み合わせも、それら機能、システム、製品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾していない場合、本発明の範囲に含まれる。
【0112】
本明細書で定義し使用したすべての定義は、辞書の定義、参考として組み込んだ文書における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味に優先することを理解すべきである。
【0113】
本明細書及び請求項で使用される請求不定冠詞「a」及び「an」は、そうでないことが明確に示されていなければ、「少なくとも1つ」を意味することを理解すべきである。
【0114】
本明細書及び請求項で使用される「及び/又は」という語句は、これにより結合された要素の「どちらか又は両方」を意味すること、すなわち、要素は、ある場合には、合同で存在し、他の場合には、離接して存在することを理解すべきである。「及び/又は」とともに記載されている多数の要素も同様に解釈すべきである、すなわち、連結された要素の「1つ以上」である。「及び/又は」句で特に識別された要素以外に、状況に応じて、これら特に識別された要素に関係のある又は関係のない他の要素が存在することがある。かくして、限定されない例として、「A及び/又はB」という表現は、「を含む」のような制約のない語句と併せて使用された場合、1つの実施形態においてはAだけ(状況に応じてこれにB以外の要素を含む)、別の実施形態においてはBだけ(状況に応じてこれにA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態においてはA及びBの両方(状況に応じてこれに他の要素を含む)等を意味することになる。
【0115】
本明細書及び請求項で使用される「又は」という語句は、前記で定義したように「及び/又は」と同一の意味を持つものと理解すべきである。例えば、リストされた項目を分けている場合、「又は」又は「及び/又は」は、包含的であると解釈するものとする、すなわち、複数の又はリストされた要素の少なくとも1つを含むが、またその複数をも含み、状況によっては、リストされていない追加項目を含むものとする。「1つだけの」又は「きっちり1つの」のように、前記説明と異なることが明示されている用語の場合だけ、又は、請求項の「…から成る」句の中で使われている用語の場合においてだけ、複数又はリスト要素の、厳密に1つを含むことを意味する。一般に、本明細書で用いる「又は」は、「どちらか1つの」、「…の1つ」又は「…のきっかり1つ」のような排他的用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち「一方か、他方かであって両方ではない」)と解釈するものとする。請求項の中で用いられる「基本的に…で構成される」は、特許法の分野で用いられる通常の意味を持つものとする。
【0116】
本明細書及び請求項において、1つ以上の要素に関連して使用される「少なくとも1つ」という語句は、リストされた要素のどれか1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも、要素リストとして特に記載されたありとあらゆる要素の少なくとも1つを含むわけではなく、また、要素リスト中の要素のどのような組み合わせも排除しないものと理解すべきである。また、この定義により、特に識別されている要素に関係あるかないかにかわらず、状況に応じて、「少なくとも1つ」句が言及するリストの中で特に識別されている要素以外の要素を含めることができる。しかして、限定されない例として、「A及びBの少なくとも1つ」句によって(又は同等に「A又はBの少なくとも1つ」、又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」句によって)、1つの実施形態においては、状況に応じて一より多くも含め少なくとも1つのAと、Bの不在とを(状況に応じB以外の要素が含まれる)意味することがあり;別の実施形態においては、状況に応じて一より多くも含め少なくとも1つのBと、Aの不在とを(状況に応じA以外の要素が含まれる)意味することがあり;さらに別の実施形態においては、状況に応じて一より多くも含め少なくとも1つのAと、状況に応じて一より多くも含め少なくとも1つのBとを(状況に応じ、他の要素を含む)意味することがある。
【0117】
また、本文書で請求される、一を上回る工程又は作業を含む一切の方法において、特にそうでないことが明記されている場合を除き、方法の工程又は作業の順序は、必ずしも、その方法の工程又は作業を列挙した順序に限定されない。
【0118】
請求項、及び前記明細書において、「を含む(comprising)」、「を含め(including)」、「を帯び(carrying)」、「を有し(having)」、「包含し(containing)」、「を伴い(involving)」、「を保持し(holding)」、「から成る(composed of)」、及び類似句のような、すべての移行句は、非限定、すなわち、「含むがこれに限定されない」と理解するものとする。米国特許局特許審査手順マニュアル、セクション2111.03に述べられているように、移行句のうち「から成る(consisting of)」及び「基本的に…から成る(consisting essentially of)」だけを、それぞれ限定又は半限定句とするものとする。