【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、従来の抵抗体における感歪部に相当する部分を薄膜状に形成することによって、高感度、高精度、高強度な感歪抵抗体の実現を可能にしたものであり、さらに好ましくは、マトリックス材料に鉛を用いることなく感歪特性を実用上充分に高いレベルで発現させることを可能にしたものである。
【0014】
本発明の第1の態様である力学量センサ素子は、請求項1に記載のように、応力の印加によって電気的特性が変化する感応力体(1)と、電気絶縁性を有する絶縁体(2)とが密着して形成された構造を有する力学量センサ素子(10)において、前記感応力体(1)が
、導電性元素の酸化物を用いたパルスレーザデポジションにより原子状に固溶してなる前記導電性元素を含んで形成されてなるガラス薄膜からな
ることを特徴とするものである。
【0015】
かかる第1の態様は、従来の抵抗体の感歪部に相当する部分を、原子状に固溶してなる導電性元素を含んで薄膜状に形成することにより、高感度、高精度、高強度な感歪抵抗体の実現を可能にしたものである。
【0016】
第1の態様
は、ガラス薄膜が、前記導電性元素の酸化物を用いた
パルスレーザデポジションにより、前記原子状に固溶してなる導電性元素を含んで形成されたものであることを特徴とする、力学量センサ素子
である。
【0017】
かかる
態様によれば、原子状に固溶してなる導電性元素を含んで薄膜状により確実に形成することにより、より高感度、高精度、高強度な感歪抵抗体の実現が可能である。
【0018】
第1の態様
の一つの好ましい形態として、前記ガラス薄膜が、前記原子状に固溶してなる導電性元素を1〜60atm%の範囲で含むものであることを特徴とする、力学量センサ素子(請求項
2参照)が挙げられる。
【0019】
かかる形態によれば、高感度な特性が得られるとともに、簡便なプロセスで感歪膜を形成することが可能である。
【0020】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、前記導電性元素がルテニウムであることを特徴とする、力学量センサ素子(請求項
3参照)が挙げられる。かかる形態によれば、ガラス中における導電性元素の原子価を制御することが可能である。
【0021】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、前記ガラス薄膜が、ビスマス元素を少なくとも10atm%の範囲で含むものであることを特徴とする、力学量センサ素子(請求項
4参照)が挙げられる。
【0022】
かかる形態によれば、ガラス中における導電性元素の原子価を制御することとともに、導電性元素の安定状態を維持することが可能である。
【0023】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、前記ガラス薄膜が鉛を含まないものであることを特徴とする、力学量センサ素子(請求項
5参照)が挙げられる。かかる形態によれば、高感度・高精度で環境負荷物質を含まない力学量センサ素子を提供ことが可能である。
【0024】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、前記導電性元素の酸化物を用いた
パルスレーザデポジションが、前記導電性元素の酸化物を含む導電性粒子が分散してなるガラス焼成体をターゲットに用いた
パルスレーザデポジションであることを特徴とする、力学量センサ素子(請求項
6参照)が挙げられる。
【0025】
かかる形態によれば、ガラス中に導電性元素を固溶させ、かつ、その原子価を制御することが可能である。
【0026】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、前記導電性元素の酸化物を用いた
パルスレーザデポジションが、前記導電性元素の酸化物およびガラスの双方を別々のターゲットに用いた
パルスレーザデポジションであることを特徴とする、力学量センサ素子(請求項
7参照)が挙げられる。
【0027】
かかる形態によれば、ガラス中における導電性元素の原子価および量を容易に制御することが可能である。
【0028】
第1の態様
は、レーザデポジションがパルスレーザデポジションであることを特徴とする、力学量センサ素子
である。かかる
態様によれば、ガラス中に導電性元素が固溶した均一な膜を形成することが可能である。
【0029】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、前記感応力体(1)が、前記絶縁体(2)上に具備された一対の電極(3,3’)の少なくとも一方を部分的に挟んで、前記絶縁体(2)上に積層されており、前記感応力体(1)の少なくとも一部の上に、必要に応じて接合材層(4)を挟んで、前記応力の印加を受けるための受応力体(5)が具備されることを特徴とする、力学量センサ素子(請求項
8参照)が挙げられる。
【0030】
かかる形態によれば、受圧体に印加される荷重を圧縮力で感知することができ、高荷重領域まで検知することが可能である。
【0031】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、前記感応力体(1)がピエゾ抵抗膜である、力学量センサ素子(請求項
9参照)が挙げられる。かかる形態によれば受圧体に印加される荷重を圧縮力で感知することができ、高荷重領域まで検知することが可能である。
【0032】
本発明の第2の態様である力学量センサ素子の製造方法は、請求項
10に記載のように、応力の印加によって電気的特性が変化する感応力体(1)と、電気絶縁性を有する絶縁体(2)とを密着させて力学量センサ素子(10)を形成する、力学量センサ素子の製造方法において、導電性元素の酸化物を含むターゲット(11)を用いて、
パルスレーザデポジション法により、原子状に固溶してなる前記導電性元素を含むガラス薄膜を、前記絶縁体(2)上に形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0033】
かかる第2の態様では、
パルスレーザデポジション法を用いることにより、ルテニウム元素等の導電性元素が原子レベルでガラス中に固溶したピエゾ抵抗膜を絶縁体(2)の上に堆積形成することを可能にして、高感度、高精度、高強度な感歪抵抗体を備えた力学量センサ素子の製造を可能にしたものである。
【0034】
第2の態様の一つの好ましい形態として、前記導電性元素の酸化物を含むターゲット(11)として、前記導電性元素の酸化物を含む導電性粒子を分散してなるガラス焼成体を含むターゲットを用いることを特徴とする、力学量センサ素子の製造方法(請求項
11参照)が挙げられる。
【0035】
かかる形態によれば、例えば、ビスマス元素を含有させたガラスマトリックスとルテニウム酸化物(RuO
2)からなる導電性粒子の混合物をペースト化した材料を平板にスクリーン印刷し焼成することにより、簡便なプロセスで作製したターゲットを用いることによって、より簡単に力学量センサ素子を製造することが可能である。
【0036】
第2の態様のもう一つの好ましい形態として、前記導電性元素の酸化物を含むターゲット(11)の使用に加えて、ガラスを含むターゲット(12)を更に使用することを特徴とする、力学量センサ素子の製造方法(請求項
12参照)が挙げられる。
【0037】
かかる形態によれば、ガラスと導電性酸化物を個別に制御することができ、その存在形態を任意に制御することが可能である。
【0038】
第2の態様
は、レーザデポジション法がパルスレーザデポジション法であることを特徴とする、力学量センサ素子の製造方法
である。かかる形態によれば、ターゲットを昇華して成膜するため、膜組成にターゲット組成を反映したものにすることが可能である。
【0039】
第2の態様のもう一つの好ましい形態として、前記ガラスが鉛を含まないものであることを特徴とする、力学量センサ素子の製造方法(請求項
13参照)が挙げられる。かかる形態によれば、高感度・高精度で環境負荷物質を含まない力学量センサ素子を容易に製造することが可能である。
【0040】
第2の態様のもう一つの好ましい形態として、前記導電性元素がルテニウムであることを特徴とする、力学量センサ素子の製造方法(請求項
14参照)が挙げられる。かかる形態によれば、ガラス中にルテニウムが原子状に固溶したピエゾ抵抗膜を形成することが可能である。
【0041】
本発明の第3の態様であるピエゾ抵抗膜は、請求項
15に記載のように、
ルテニウムの酸化物を用いたパルスレーザデポジションにより原子状に固溶してなるルテニウムを含んで形成されてなるガラス薄膜を含
むことを特徴とするものである。かかる第3の態様では、原子状に固溶してなるルテニウムを含むガラス薄膜を用いることにより、印加応力に対して導電率が変化するルテニウム‐酸素の結合構造の割合を多くすることができるため、高感度にすることが可能である。
【0042】
第3の態様の一つの好ましい形態として、前記ガラスがビスマス系ガラスを主体とすることを特徴とする、ピエゾ抵抗膜(請求項
16)が挙げられる。かかる形態によれば、膜の熱膨張係数を基材に整合させること、および基材との密着性向上が可能である。
【0043】
第3の態様のもう一つの好ましい形態として、前記ガラス薄膜が、2atm%以上のRuおよび30atm%以上のOを含むことを特徴とする、ピエゾ抵抗膜(請求項
17)が挙げられる。かかる形態によれば、膜の導電率とピエゾ抵抗感度を調整することが可能である。
【0044】
本発明の第4の態様であるピエゾ抵抗膜の製造方法は、請求項
18に記載のように、ルテニウムの酸化物を含むターゲットを用いて、パルスレーザデポジション法により、原子状に固溶してなる前記ルテニウムを含むガラス薄膜を、絶縁体上に形成することを特徴とするものである。かかる第4の態様では、膜中の組成および構造の均一化が可能である。
【0045】
第4の態様の一つの好ましい形態として、前記ルテニウムの酸化物を含むターゲットとして、前記ルテニウムの酸化物を含む導電性粒子を分散してなるガラス焼成体を含むターゲットを用いることを特徴とする、ピエゾ抵抗膜の製造方法(請求項
19)が挙げられる。かかる形態によれば、膜中にルテニウムが凝集することなく、構造の均一化が可能である。
【0046】
第4の態様のもう一つの好ましい形態として、前記ルテニウムの酸化物を含むターゲットの使用に加えて、ガラスを含むターゲットを更に使用することを特徴とする、ピエゾ抵抗膜の製造方法(請求項
20)が挙げられる。かかる形態によれば、ガラス構造とガラス中にルテニウムが固溶した構造を独立に膜中に形成することが可能である。
【0047】
第4の態様のもう一つの好ましい形態として、前記絶縁体上に形成されたガラス薄膜を700°K以上でアニール処理することを更に含む、ピエゾ抵抗膜の製造方法(請求項
21)が挙げられる。かかる形態によれば、ルテニウム原子に酸素が配位し、膜の導電率を向上すると共に、ピエゾ抵抗感度を増大することが可能である。