(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693062
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】研削砥石
(51)【国際特許分類】
B24D 5/00 20060101AFI20150312BHJP
B24D 5/06 20060101ALI20150312BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
B24D5/00 P
B24D5/06
B24B53/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-150917(P2010-150917)
(22)【出願日】2010年7月1日
(65)【公開番号】特開2012-11507(P2012-11507A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年6月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510183224
【氏名又は名称】有限会社新村工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(72)【発明者】
【氏名】新村 得夫
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−113971(JP,U)
【文献】
特開2000−354969(JP,A)
【文献】
特開平8−243928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密研削用の研削砥石において、
略台形で板状の砥石シートを、所定間隔をおいて台金に貼付して砥石層を形成し、該砥石シートの間隔が0.5mmから3mmで、斜辺の傾斜が40度〜50度であり、
該砥石シートの回転方向に対する進入側の角部の物理的な粒度が、該砥石シートの面部分の物理的な粒度より粗いことを特徴とする研削砥石。
【請求項2】
前記砥石シートの回転方向に対する進入側の角部の物理的な粒度と、該砥石シートの面部分の物理的な粒度との差が、30番手分〜70番手分の差であることを特徴とする請求項1記載の研削砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密研削用の
研削砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焼入鋼の精密切削のために、ダイヤモンドやCBN砥粒の研削砥石が用いられている(非特許文献1参照)。そして、精密切削の場合、まず、荒削りを行うために粒度の粗い切削砥石を用いて切削を行い、次に粒度の細かい切削砥石に交換して、精密な切削を行うようにしている。
【0003】
また、切削においては、機械的・熱的影響から、加工表面に研削焼けや研削割れといった損傷が発生する場合がある。その対策として、研削油剤を注ぎながら研削を行うのが一般的である。そして、非特許文献1の
図3に示されるように、研削油剤の効果を高め、温度をより一層抑え、削り粉をスムーズに排除するために、砥石面に溝を入れるケースもある。尚、この砥石面の溝は、非特許文献1の
図3に示されるように、溝が互いに平行し、回転方向に対して一定の角度を持たせるようにしている。尚、溝は砥石面に後から穿設されたものである(非特許文献1の
図3では、溝が砥石面の表面にのみ設けられていることが示されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】愛 恭輔、「教えて愛先生! 研削ワンポイントレッスン」、砥粒加工学会誌、砥粒加工学会、2008年7月、第52巻、第7号、p.423
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の研削砥石は、溝を穿設することにより設けているので、固い砥石層の切削は困難で、製造手間やコストを抑えることが困難である。また、溝が互いに平行し、回転方向に対して一定の角度だと研削砥石の回転方向に対する左右でバランスが悪く、均一な研削が困難である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、溝を切削する場合に比べ、製造手間やコストが抑えられ、また、研削砥石の回転方向に対する左右でバランスよく研削することができ、精度の高い研削が可能な
研削砥石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の研削砥石は、略台形で板状の砥石シートを、所定間隔をおいて台金に貼付して砥石層を形成し、砥石シートの間隔が0.5mmから3mmで、斜辺の傾斜が40度〜50度であり、砥石シートの回転方向に対する進入側の角部の
物理的な粒度が、砥石シートの面部分の
物理的な粒度より粗いことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の研削砥石は、砥石シートの回転方向に対する進入側の角部の
物理的な粒度と、砥石シートの面部分の
物理的な粒度との差が、30番手分〜70番手分の差であることを特徴とする。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、略台形で板状の砥石シートを、所定間隔をおいて台金に貼付して砥石層を形成することから、砥石層の表面に溝を設けたい場合には、溝を切削する場合に比べ、製造手間やコストが抑えられる。また、砥石シートが略台形で、砥石シートの間隔が0.5mmから3mmで、砥石シートの間に設けられる溝が40度〜50度に傾き、その傾きが進行方向に対して交互になっていることから、研削砥石の回転方向に対する左右でバランスよく研削することになり、精度の高い研削が可能である。さらに、砥石シートの回転方向に対する進入側の角部の
物理的な粒度が、砥石シートの面部分より粗いことから、進入側の角部で荒削りを行い、面部分で精密削りを行うため、粒度(番手)が違う研削砥石に交換することなく1つの研削砥石で荒削りから精密削りまで可能で、作業効率を向上させることができる。
【0014】
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る研削砥石の一例を示す斜視図である。
【
図3】同研削砥石の砥石面の配置を示す説明図である。
【
図4】同研削砥石の砥石面の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係る研削砥石の一例を示す斜視図である。
図2は、同研削砥石の砥石面の拡大図である。
図3は、同研削砥石の砥石面の配置を示す説明図である。
図4は、同研削砥石の砥石面の様子を示す説明図である。
【0018】
図において、本発明の形態における研削砥石1は、主に焼入鋼の精密切削用に用いられる円盤状の砥石であり、平面研削用のものである。研削砥石1は、円盤状で中央に平面研削盤へ固定するための装着穴12が穿設された台金10と、台金10の外周に貼付された複数の砥石シート20とから構成されている。
【0019】
砥石シート20(20a、20b、20c・・・)は、形状が台形状で、厚みが3mm〜6mmの砥石である。砥石シート20の砥粒は、特にこだわるものではないが、精密切削用であれば、ダイヤモンドやCBN砥粒が好ましい。砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の台形状の大きさは、研削砥石1の直径がφ205の場合(
図3参照)、例えば上辺Aが15.5mm、下辺Bが23.5mmで、斜辺の傾斜角度Dが45度である。砥石シート20(20a、20b、20c・・・)は、所定の間隔をおいて向きが交互になるように、台金10の外周面に貼付されており、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の相互の間隔C(溝22,24,26)は、
図3の場合、1mmである。この台形状の大きさや間隔は、特に限られるものではないが、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の間隔が0.5mmから3mmで、斜辺の傾斜が40度〜50度であることが、後述の効果を考慮すると望ましい。
【0020】
そして、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の粒度(番手)は、精密研削の場合、例えば、面部分Fでは200(研削砥石1のカタログ値的な番手)で、研削砥石1の回転方向に対する進入側角部22aでは機能的に140(番)である。その他、面部分Fでは220(研削砥石1のカタログ値的な番手)で、研削砥石1の回転方向に対する進入側角部22aでは機能的に170(番)あたりであってもよい。このように、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の面部分F(進入側角部22aと逃げ側角部22b以外の部分)と進入側角部22aとの粒度には相対的な差があり、進入側角部22aの粒度が、面部分Fより粗くなっている。具体的な砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の面部分Fと進入側角部22aとの粒度の相対的な差は、30〜70程度である。
【0021】
進入側角部22aと面部分Fとの粒度の違いは、砥粒自体の大きさが異なるもので構成させることにより生じさせることも可能であるが、本実施の形態の研削砥石1では、同一の砥粒を均一に用いた砥石シート20(20a、20b、20c・・・)で、実現させている。より具体的に説明すると、進入側角部22aと面部分Fとの粒度の違いは、加工面に対する切れ味により相対的に(機能的に)形成させているものである。進入側角部22aは、面部分Fに比べ自生作用が強く働き、鋭利な切れ味を維持しやすいため、進入側角部22aによる削る機能が高まり、研削荷重が大きく加工効率が高くなり、進入側角部22aと面部分Fとの間で粒度の相対的な違いが生じることになる。尚、ダイヤモンドやCBN砥粒の場合の研削の適合材料は、合金鋼(SCM、SNCM、SCr等)、工具鋼(SKH、SKD、SK等)、ベアリング鋼(SUJ等)等である。
【0022】
このように構成された研削砥石1を用いて、例えば焼入鋼の精密切削を行う方法を説明する。まず、通常は、研削表面の荒削りを行うために粒度の粗い研削砥石(例えば粒度140)を平面研削盤に装着して荒削りを行い、次に研削砥石を粒度の細かいもの(例えば粒度200)に交換して精密削りを行うところであるが、本実施の形態の場合に用いるのは、研削砥石1のみである。その研削砥石1を平面研削盤に装着して、荒削りから行うべき焼入鋼の研削を開始する。
【0023】
そして、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の回転方向に対する進入側角部22aの相対的な粒度が、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の面部分Fより粗いことから、進入側角部22aで荒削りを行い、面部分Fで精密削りを行うこととなり、粒度(番手)が違う研削砥石に交換することなく1つの研削砥石で荒削りから精密削りまで可能で、作業効率を向上させることができる。砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の面部分Fと進入側角部22aとの粒度の相対的な差は、平面研削盤の負担を考慮すると30〜70程度が好ましい。
【0024】
尚、研削を繰り返し行っていくと、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の面部分Fや進入側角部22aで目詰まりが生じ、作業効率が落ちたり、加工精度が低下するが、この場合には、進入側角部22aの相対的な粒度が、面部分Fより粗くなるようにドレッシングするようにすればよい。
【0025】
また、研削では、砥石シート20(20a、20b、20c・・・)の間の溝22,24,26に研削油剤が流れることで、研削する焼入鋼の加工表面の研削焼けや研削割れといった損傷の発生を抑えることが可能である。さらに、溝22,24,26が40度〜50度に傾き、その傾きが進行方向に対して交互になっていることから、研削砥石1の回転方向に対する左右でバランスよく研削することになり、精度の高い研削が可能である。
【0026】
さらに、略台形で板状の砥石シート20(20a、20b、20c・・・)を、所定間隔をおいて台金10に貼付して砥石層を形成することから、砥石層の表面に溝22,24,26を設けたい場合には、溝を切削する場合に比べ、製造手間やコストが抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、溝を切削する場合に比べ、製造手間やコストが抑えられ、また、研削砥石の回転方向に対する左右でバランスよく研削することができ、精度の高い研削が可能な
研削砥石を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・・・研削砥石
10・・・・台金
12・・・・装着穴
20・・・・砥石シート
20a・・・砥石シート
20b・・・砥石シート
20c・・・砥石シート
22・・・・溝
22a・・・進入側角部
22b・・・逃げ側角部
24・・・・溝
26・・・・溝