(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693119
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】移送ローラ及びプリンタ
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
B65H5/06 B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-220266(P2010-220266)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2012-71981(P2012-71981A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 仁
【審査官】
西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−056354(JP,U)
【文献】
特開昭60−015337(JP,A)
【文献】
特開2010−082915(JP,A)
【文献】
実開平04−005436(JP,U)
【文献】
特開平04−116056(JP,A)
【文献】
特開2006−199448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を移送する移送ローラであって、
前記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、
この軸に配置した円柱状の複数の本体ローラと、
この本体ローラ間において、少なくとも互いの間、あるいは前記本体ローラとの間に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え、
この傾斜ローラは、
前記軸に配置し、弾性体でできているコア部と、
このコア部の外周に沿って、少なくともその一部分が前記本体ローラの径方向外方に突出し、かつ前記軸方向に変形するよう形成し、前記コア部よりも弾性力が弱い弾性体でできているスカート部と、から構成すること
を特徴とする移送ローラ。
【請求項2】
前記傾斜ローラは、径方向に加えられた外力に対して軸方向に変形し、前記ローラ本体と均一表面を形成することを特徴とする請求項1に記載の移送ローラ。
【請求項3】
前記本体ローラおよび前記傾斜ローラは、一体形成していることを特徴とする請求項1ないし2にいずれかに記載の移送ローラ。
【請求項4】
前記傾斜ローラの前記スカート部および前記コア部は、一体形成していることを特徴とする請求項1ないし3にいずれかに記載の移送ローラ。
【請求項5】
前記本体ローラおよび前記傾斜ローラは、
それぞれの表面に、前記シート状部材の裏面に塗布された粘着剤に対しての剥離処理が施してあることを特徴とする請求項1ないし4にいずれかに記載の移送ローラ。
【請求項6】
前記移送ローラは、これをプラテンローラとし、サーマルヘッドと対向配置していることを特徴とする請求項1ないし5にいずれか記載の移送ローラ。
【請求項7】
前記移送ローラは、これを駆動ローラとし、従動ローラと対向配置していることを特徴とする請求項1ないし5にいずれか記載の移送ローラ。
【請求項8】
シート状部材を供給するラベル供給部と、
シート状部材に印字を行うラベル印字部と、が備えられたプリンタであって、
前記ラベル印字部はサーマルヘッドと、
このサーマルヘッドと対向配置されたプラテンローラとからなり、
このプラテンローラは、
前記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、
この軸に配置した円柱状の複数の本体ローラと、
この本体ローラ間において、少なくとも互いの間、あるいは前記本体ローラとの間に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え、
この傾斜ローラは、
前記軸に配置し、弾性体でできているコア部と、
このコア部の外周に沿って、少なくともその一部分が前記本体ローラの径方向外方に突出し、かつ前記軸方向に変形するよう形成し、コア部よりも弾性力が弱い弾性体でできているスカート部と、から構成することを特徴と
するプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送ローラ及びプリンタに係り、詳しくはシート状部材の移送に適した移送ローラ及びプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート状部材を移送するローラとして、裏面が粘着層であり、表面に剥離剤が塗布された感熱層を有する台紙無しラベルの表面に、印字を行うプリンタの移送ローラを例として説明する。
【0003】
図12は、台紙無しラベルに印字行う従来の台紙無しラベルプリンタ60の側面図である。この台紙無しラベルプリンタ60は、ラベル供給部61と、ラベル移送部62と、ラベル検出部63と、ラベル印字部64と、ラベル切断部65と、制御部66とから構成されている。
【0004】
ラベル供給部61は、ラベル供給リール67に、ロール状の台紙無しラベル連続体Lを装填させ、ラベル移送部62に帯状に台紙無しラベル連続体Lを供給するよう構成されている。
【0005】
ラベル移送部62は、ガイドローラ68と、従動ローラ69と、駆動ローラ70とで構成されている。ガイドローラ68はラベル印字部64の上流側に回動自在に配置されており、台紙無しラベル連続体Lがラベル印字部64へ移送されるよう案内させる。従動ローラ69と駆動ローラ70は、ラベル印字部64の上流側、ガイドローラ68の下流側に、台紙無しラベル連続体Lを挟持し、蛇行を防止しながらラベル印字部64へ移送するよう対向配置されている。駆動ローラ70の軸の一端は、図示しないモータと、ベルトを介して接続されており、駆動源からの力が伝達され、移送方向およびその逆方向に回動するようになっている。
【0006】
ラベル検出部63は、発光器71と、受光器72とで構成されている。発光器71と受光器72は、ラベル印字部の上流側、ラベル移送部62の下流側に台紙無しラベル連続体Lの裏側に配置されている。台紙無しラベル連続体Lの裏面には、この発光器71から発光される光を反射するマーク(図示せず)が等間隔に印字されており、前記ラベル検出部63は、発光器71から台紙無しラベル連続体Lの裏側に発光させ、受光器72で前記マークからの反射光を受光させることによって、台紙無しラベル連続体Lの位置と移送量を検知する。
【0007】
ラベル印字部64は、サーマルヘッド73と、プラテンローラ74とで構成されている。サーマルヘッド73とプラテンローラ74は互いに対向配置され、台紙無しラベル連続体Lを所定の押圧力で挟みこみ、台紙無しラベル連続体Lに印字を行うとともに、台紙無しラベル連続体Lを移送するようになっている。プラテンローラ74には剥離剤が塗布されており、粘着層がプラテンローラ74に粘着し、台紙無しラベル連続体Lがプラテンローラ74に巻き込むことを防止する。
【0008】
ラベル切断部65は、上カッタ75と、下カッタ76とを備え、上カッタ75の刃と下カッタ76が噛み合うようラベル印字部64の下流側に対向配置されている。上カッタ75と下カッタ76との間に台紙無しラベル連続体Lを挟み、下カッタ76を駆動することにより、台紙無しラベル連続体Lを切断するようになっている。
【0009】
制御部66は図示省略のCPUやROM、RAMなどを備えており、前記各部61、62、63とデータバス(図示せず)で接続されており、各部の動作の制御を行う。
【0010】
従来の台紙無しラベルプリンタ60は以上の構成を有し、台紙無しラベル連続体Lは、ラベル供給部61にて供給され、供給された台紙無しラベル連続体Lはラベル移送部62により、ラベル印字部64にガイド移送される。ラベル印字部64では、台紙無しラベル連続体Lをヘッドおよびプラテンローラ74で押圧して、サーマルヘッド73の発熱体と台紙無しラベル連続体Lの印字面が接触し、熱を受けることにより設定した位置に情報が印字面に印字される。印字が行われた後、台紙無しラベル連続体Lは、ラベル切断部65にて、上カッタ75と下カッタ76が駆動され、設定された位置で切断が行われる。
【0011】
ところで、上述した台紙無しラベルプリンタ64では、プラテンローラ74に塗布された剥離剤は、使用に伴って消耗され、剥離効果が減少する。よってラベル印字部64にてプラテンローラ74で、台紙無しラベル連続体Lの粘着層を押圧して、サーマルヘッド73に印字面を接触させ、印字を行い、ラベル切断部65に台紙無しラベル連続体Lが移送される際、剥離作用が減少している場合、プラテンローラ74に台紙無しラベル連続体Lが貼り付いたまま移送され易くなり、ジャムなどの不具合も発生し易くなる。特に台紙無しラベル連続体Lの粘着強度が大きな場合にはさらに不具合が起こり易くなる。
【0012】
図13は、台紙無しラベルプリンタ60の、プラテンローラ74の斜視図である。従来ではこのような問題を解決するため、プラテンローラ74の、台紙無しラベル連続体Lの裏面と接触する面に、複数の周溝78を設けて、粘着層と接触する表面積を減らし、巻き込みを防止する対策が採用されている。また、巻き込み防止板をプラテンローラ74の下流側に設け、プラテンローラ4に貼付したラベルを剥離する方法が採用されている。特許文献1にはプラテンローラ74に複数の周溝78を設けて、その周溝78間に非粘着処理が施された無端ベルトを掛設し、プラテンローラ74への台紙無しラベル連続体Lの巻き込みを防止する発明が開示されている。
【0013】
しかしながら、プラテンローラ74に複数の周溝78を設けて印字を行うと、周溝78部分が押圧される台紙無しラベル連続体Lの印字面部分では、適切な印字圧力が付与されず、サーマルヘッド73の発熱が印字面に伝わらないため、その部分では印字されない現象が起こる。また、サーマルヘッド73とプラテンローラ74による圧接部分では、周溝78部分にはラベル連続体Lが粘着しないので、移送および印字に適切な摩擦力がプラテンローラ74と台紙無しラベル連続体Lの間に生じず、プラテンローラ74上で台紙無しラベル連続体Lが前後左右にすべり、台紙無しラベル連続体Lが適切に移送されない現象が起こり、ジャムや適切な位置に印字されないという不具合が発生する。また、周溝78に無端ベルトを配置して、剥離させる部材を用いた場合、部品数が増加し、スペースも取るので、コスト高、装置大型化等の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平09−048414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、シート状部材の移送ローラへの巻き込みを、簡素な構成で防止する移送ローラおよびプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、シート状物材を移送する移送ローラを本体ローラと傾斜ローラとに分割したもので、第一の発明の要旨は、シート状部材を移送する移送ローラであって、上記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、この軸に配置した円柱状の複数の本体ローラと、この本体ローラ間において、少なくとも互いの間、あるいは上記本体ローラとの間に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え、この傾斜ローラは、上記軸に配置
し、弾性体でできているコア部と、このコア部の外周に沿って、少なくともその一部分が上記本体ローラの径方向外方に突出し、かつ上記軸方向に変形するよう形成し、
上記コア部よりも弾性力が弱い弾性体でできているスカート部と、から構成することを特徴とする移送ローラにある。
また、上記傾斜ローラは、径方向に加えられた外力に対して軸方向に変形し、上記ロー
ラ本体と均一表面を形成するという構成にしてもよい
。
また、上記本体ローラと上記傾斜ローラは一体形成しているという構成にしてもよい。
また、上記傾斜ローラの上記スカート部と上記コア部は一体形成しているという構成にしてもよい。
また、上記本体ローラおよび上記傾斜ローラは、表面に上記シート状部材の裏面に塗布された粘着剤に対しての剥離処理が施してあるという構成にしてもよい。
また、上記移送ローラは、これをプラテンローラとし、サーマルヘッドと対向配置しているという構成にしてもよい。
また、上記移送ローラは、これを駆動ローラとし、従動ローラと対向配置しているという構成にしてもよい。
第二の発明の要旨は、シート状部材を供給するラベル供給部と、シート状部材に印字を行うラベル印字部と、が備えられたプリンタであって、上記ラベル印字部はサーマルヘッドとこのサーマルヘッドと対向配置されたプラテンローラとからなり、このプラテンローラは、上記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、この軸に配置した円柱状の複数の本体ローラと、この本体ローラ間において、少なくとも互いの間、あるいは上記本体ローラとの間に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え、この傾斜ローラは、上記軸に配置
し、弾性体でできているコア部と、このコア部の外周に沿って、少なくともその一部分が上記本体ローラの径方向外方に突出し、かつ上記軸方向に変形するよう形成
し、上記コア部よりも弾性力が弱い弾性体でできているスカート部と、から構成することを特徴とするプリンタにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の移送ローラおよびプリンタは、簡易な構成で、シート状部材のローラへの巻き込みを、防止することを可能とする。特に第一の発明の移送ローラによれば、安定した移送を実現することができる。特に第二の発明のプリンタによれば、印字においてジャムを防ぎ、印字品質を所定レベルに保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係る移送ローラをプラテンローラ1に応用した正面図である。
【
図4】同、
図1のプラテンローラ1がサーマルヘッド73に押圧された際の側面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る移送ローラをプラテンローラ20に応用した正面図である。
【
図6】同、プラテンローラ20の軸21の正面図である。
【
図7】同、プラテンローラ20の第一傾斜ローラ23を説明する図であって、
図7(1)は斜視図、
図7(2)は側面図、
図7(3)は
図7(2)のIII−III線断面図、
図7(4)はコア部30が截頭円錐体である変形例であり、
図7(3)と同様の断面図である。
【
図8】同、プラテンローラ20がサーマルヘッド73に押圧された際の正面図である。
【
図9】同プラテンローラ20に剥離部材40を組み合わせた上面図である。
【
図10】本発明の実施例3に係る移送ローラを駆動ローラ50に応用した正面図である。
【
図11】同、駆動ローラ50が従動ローラ69に押圧された際の正面図である。
【
図12】従来の台紙無しラベルプリンタ60を説明する側面図である。
【
図13】同、プラテンローラ74を説明する斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施例1を
図1ないし
図4に基づいて説明する。なお、以下において、従来と同様の部分は、同一符号を付すに止め、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る移送ローラとしてのプラテンローラ1の正面図であって、図示のようにプラテンローラ1は、軸2と、本体ローラ3と、第一傾斜ローラ4と、第二傾斜ローラ5とで構成されている。
【0021】
軸2は、円柱形状のステンレス等の金属である。形状は円柱形状に限定されず、例えば円筒形状等であってもよい。素材は金属に限らず、樹脂などでもよい。軸の両端は、図示しない台紙無しラベルプリンタの軸受けに、サーマルヘッド73と対向配置するよう軸支されている。また、軸2の一端は、図示しないモータ等の駆動源と、ベルトを介して接続されており、駆動源からの力が伝達され、搬送方向およびその逆方向に回動するようになっている。
【0022】
本体ローラ3は、中心軸が空孔の、例えばウレタンゴムやシリコーンゴムなどでできた弾性体である。素材は弾性体に限定されないが、台紙無しラベル連続体Lの裏面の粘着層が接触しても粘着しないように、剥離処理が施されている弾性体であることが望ましい。空孔に軸2が所定の間隔をもって挿通して固定されており、軸2が回転駆動されると、本体ローラ3も共に回転駆動するようになっている。
【0023】
図2は、
図1のII−II線断面図であって、プラテンローラ1の断面図である。図示のように傾斜ローラとしての第一傾斜ローラ4および第二傾斜ローラ5はそれぞれ、コア部7と、スカート部8とで構成されている。第一傾斜ローラ4および第二傾斜ローラ5は互いに対となり、本体ローラ3の間において互いの間に間隙6を介して対向配置されている。
【0024】
図3は、要部の拡大断面図であり、コア部7は、円筒形状の弾性体であり、軸2に挿通、固定されている。その直径E1は、本体ローラ3の直径E2より小さく、軸2の直径E3よりも大きい。互いに対向配置された第一傾斜ローラ4および第二傾斜ローラ5のそれぞれのコア部7は、一体形成されている。
【0025】
一対のスカート部8は、コア部7と一対であって、コア部7の外周部に位置しており、断面弧状の外周面を有する円錐台形の弾性体であり、互いの大径部と相対し、互いに間隙6を空けて対向配置されている。スカート部8の小径部の直径F1は、本体ローラ3の直径E2と等しく、本体ローラ3と一体形成されている。大径部の直径F2は本体ローラ3の直径E2よりも大きい。また、本体ローラ3とスカート部8の接合点8Aと大径部の最外端点8Bとを結ぶ外周8Cは弧状であり、外力に対して内側に弾性変形して、間隙6を埋めるようになっている。
【0026】
なお、スカート部8は、外力によって、第一傾斜ローラ4および第二傾斜ローラ5が内方に変形し、間隙6の間隙幅Dが埋まればよく、例えば、
図4に示すように、外力によって第一傾斜ローラ4および第二傾斜ローラ5が間隙6を埋める長さに弾性変形するものであれば、特に限定されない。
【0027】
実施例1に係るプラテンローラ1は以上の構成を有し、ラベル印字部64(
図12)に移送された台紙無しラベル連続体Lは、
図4に示すように押圧スプリング9によって押圧されたサーマルヘッド73とプラテンローラ1に圧接挟持され、サーマルヘッド73の発熱体と台紙無しラベル連続体Lの印字面の接触点で熱を受けることにより、設定した所定位置に設定した情報が印字される。プラテンローラ1はサーマルヘッド73から径方向の外力を受けると、圧接箇所におけるスカート部8の外方に突出した部分が軸方向に変形し、間隙6が埋まることで、本体ローラ3と均一平面を成し、印字が正常に行われる。印字後はプラテンローラ1にかかる外力が解除され、スカート部8が弾性力によって元の位置に戻ることにより、台紙無しラベル連続体Lはプラテンローラ1から押し出され、プラテンローラ1から剥離される。
【0028】
このように実施例1に係れば、印字中にスカート部8が弾性変形し、間隙6を埋めることができるので、裏面が粘着層の台紙無しラベル連続体Lを印字する際に生じる、印字抜け、印字縮み防止と同時に、間隙6によって生じる台紙無しラベル連続体Lの巻き込み防止を、コスト高で場所をとる制御装置を用いることなく、プラテンローラ1の構造のみで可能とさせる。
【0029】
次に、実施例2を
図5ないし
図9に基づいて説明する。
図5は本発明の実施例2に係る移送ローラとしてのプラテンローラ20の正面図であり、プラテンローラ20は、軸21と、本体ローラ22と、第一傾斜ローラ23と、第二傾斜ローラ24で構成されている。本体ローラ22は実施例1に係る発明と同じ構成であるので説明を省略する。
【0030】
図6は、プラテンローラ20の軸21の正面図であって、軸21は、前記軸2と同様に、円柱形状のステンレス等の金属製であり、所定の間隔をもって第一傾斜ローラ用周溝26および第二傾斜ローラ用周溝27を形成している。形状は、円柱形状に限定されず、円筒形状、断面がD型にカットされたD型形状等であってもよい。
【0031】
図7(1)は、第一傾斜ローラ23の斜視図であり、
図7(2)は第一傾斜ローラ23の側面図である。図示のように、傾斜ローラとしての第一傾斜ローラ23および第二傾斜ローラ24は、それぞれ別部材のコア部28およびスカート部29で構成されている。
【0032】
第一傾斜ローラ23と第二傾斜ローラ24はそれぞれ対となり、本体ローラ22の間において、互いの間に間隙25を介して対向配置されている。
【0033】
図7(3)は、
図7(2)のIII−III線断面図である。コア部28は、中心が空孔の円筒状の弾性体でできている。その直径G1は本体ローラ22の直径と略一致する。その空孔を有した内面には軸21の第一および第二傾斜ローラ用周溝26、27と嵌合する幅を持った凸部28Aが形成され、軸21と嵌合するようになっている。素材は弾性体に限定されず、例えば金属、樹脂等でもよい。
【0034】
スカート部29は、中心にコア部28を内包する空孔を有した截頭円錐状の弾性体である。本体ローラ22よりも弾性力が弱い素材でできている。一対のスカート部29の底面は互いに間隙25(
図5)を開けて対峙されている。スカート部29とコア部28は摩擦力により嵌合しており、コア部28が回転するとスカート部29も回転するようになっている。摩擦力でなく、スカート部29に凸部と、コア部28に溝を設けて、嵌合させてもよい。
【0035】
スカート部29の上面の直径は、コア部28の直径G1と略一致し、底面の直径G2はコア部28の直径G1よりも大きい。また、本体ローラ22とスカート部29の接合点を23Aと、底面の最外端点23Bとを結ぶ外周23Cは直線であり、外力に対して内方に弾性変形し、間隙25を埋めるようになっている。
【0036】
実施例1と同様に、スカート部29は、外力によって、傾斜ローラが内方に変形し、間隙が埋まればよく、
図8に示すように、外力によって、ローラが間隙を埋める長さに延びるものであれば、特に限定されない。
【0037】
実施例2に係るプラテンローラ20の構成は以上の構成を有し、
図8に示すように、実施例1と同様、印字の際に、プラテンローラ20のスカート部29は、押圧スプリング9により押圧されたサーマルヘッド73から径方向の外力を受けると軸方向に変形し、間隙25を埋め、本体ローラ22と均一表面を成す。また、印字後は、弾性力による元に戻る力を利用して、プラテンローラ20から台紙無しラベル連続体Lを剥離させる。実施例2に係れば、サーマルヘッド73の押圧により、スカート部29の突出部分は磨耗が本体ローラ22やコア部28よりも早くなると予測されるが、別部材としたことで、交換が容易に行える。また、スカート部29の弾性力を本体ローラより弱くしたことで、サーマルヘッド73の押圧による損傷が軽減される。また、台紙無しラベル連続体Lの幅や長さ、粘着剤の粘着力、プリンタの種類等により、適正な印字、ラベルを剥がす最適な弾性力、摩擦力、硬度がそれぞれ異なるが、条件を満たすスカート部29を交換すれば良いので、色々な種類の台紙無しラベル連続体Lに対応することができる。
【0038】
なお、実施例2では本体ローラ22と第一傾斜ローラ23および第二傾斜ローラ24のコア部28、スカート部29を全て別部材としたが、本体ローラ22とコア部28を一体形成させ、スカート部29のみを交換可能とさせても良い。また、本体ローラ22およびコア部28を交換可能とさせた場合、つまり焼付け等により軸21と固着されていない場合は、軸21との嵌合する力が弱く、軸21の回転が、コア部28と軸21の接触面で空回りする等などの原因により伝わらない現象が発生し易くなると予測されるので、軸21の形状はD型形状であることが望ましい。また、コア部28を本体ローラ22と同半径の円柱状の弾性部材としたが、半径はそれに限定されず、例えば
図7(4)に示したように截頭円錐型の弾性部材であっても良い。
【0039】
図7(4)は傾斜ローラとしての第一傾斜ローラ23のコア部28を截頭円錐状のコア部30に変形した場合の、
図7(3)と同様の断面図である。截頭円錐状のコア部30は弾性体でできている。コア部30の底面の直径H1は、本体ローラ22の直径と略一致しており、上面の直径H2は、本体ローラ22の直径よりも小さく、軸21の直径よりも大きな構成をとる。
【0040】
スカート部31は、コア部30の外周に位置しており、コア部30よりも弾性力が弱い弾性体である。コア部30が回転するとスカート部31も回転するようになっている。スカート部31は、外力に対して、内方に弾性変形し、前記間隙25を埋めるようになっている。
【0041】
なお、コア部30の形状は、截頭円錐状に限らず、スカート部31に内包するものであればよい。このように、コア部30の形状を適宜変更することにより、様々なスカート部31に対応することができ、様々な台紙無しラベル連続体Lの印字に対応が可能となる。
【0042】
図9は、実施例2に係るプラテンローラ20に剥離部材40を組み合わせた上面図である。プラテンローラ20は実施例2に記したプラテンローラ20と同じ構成とし、その説明を省略する。
【0043】
剥離部材40は一対の支持枠41と、支持板42と、剥離片43で構成される。
【0044】
一対の支持枠41は、プラテンローラ20の
図9中左右に位置し、プラテンローラ20の軸21を回動自在に支持する軸受けを有すると共に、支持板42を支持する。
【0045】
支持板42は、プラテンローラ20の下流側において、その両端を支持枠41に支持されており、プラテンローラ20の軸21と平行に配置されている。
【0046】
剥離片43は、間隙25の幅と略一致する幅、およびプラテンローラ20の間隙25部分に配置できるほどの長さを有し、サーマルヘッド73とプラテンローラ20の圧接箇所より下流側の間隙26に侵入するよう支持板42に立設されている。上記支持板42およびこの剥離片43のそれぞれの表面には剥離処理が施されていることが望ましい。
【0047】
剥離部材40は以上の構成を有し、印字がなされた台紙無しラベル連続体Lがプラテンローラ20に巻き込まれる前に、剥離片43によりプラテンローラ20から確実に剥離させ、剥離片43上、支持板42上を通過して、ラベル切断部65(
図12)に到達させる。また、弾性力が弱いスカート部29を選択した場合、印字後に台紙無しラベル連続体Lをスカート部29の弾性力により剥離させる際、弾性力が弱いと剥離が正常に行われないことがあるが、この剥離部材40を用いることで確実に台紙無しラベル連続体Lを剥離することができる。
【0048】
実施例3を
図10および
図11に基づいて説明する。
図10は、実施例3に係る移送ローラとしての駆動ローラ50の正面図である。駆動ローラ50は、軸51と、本体ローラ52と、第一傾斜ローラ53と、第二傾斜ローラ54とで構成されている。本体ローラ52は実施例2と同じ構成であるので説明を省略する。
【0049】
軸51は棒状の金属でできており、前記従動ローラ69(
図11、
図12)と対向配置した状態で、軸受けに取り付けられている。図示しない駆動モータとベルトを介して繋がれ、回転駆動するようになっている。素材は金属に限らず、樹脂などでもよい。
【0050】
第一傾斜ローラ53および第二傾斜ローラ54は本体ローラ52の間に間隙55を開けて、本体ローラ52と交互に配置されている。第二傾斜ローラ54は第一傾斜ローラ53と逆の軸方向を向いた配置となる。
【0051】
第一傾斜ローラ53および第二傾斜ローラ54は、既述した実施例1による傾斜ローラ4、5(
図1)と同様に、スカート部およびコア部を一体形成して構成されている。
【0052】
第一傾斜ローラ53および第二傾斜ローラ54は、外力に対して内方に弾性変形し、間隙55を埋めるようになっている。なお、ラベル連続体Lの移送の妨げにならなければ、間隙55は全て埋まるようにしなくともよい。
【0053】
従動ローラ69は軸56と、本体ローラ57で構成されている。
【0054】
軸56は棒状の金属でできており、前記ラベル印字部64(
図12)の上流の図示しない軸受けに、移送方向と垂直に、回動自在に取り付けられている。素材は金属に限らず、樹脂などでもよい。
【0055】
本体ローラ57は例えば円筒状の弾性部材でできており、空孔が軸56に挿通して固定されており、軸56が回動すると共に回転するようになっている。
【0056】
実施例3に係る駆動ローラ50と従動ローラ69は以上の構成を有し、ラベル供給部61より供給された台紙無しラベル連続体Lは、ガイドローラ68によって前記ラベル印字部64方向に案内され、駆動ローラ50と従動ローラ69に挟持され前記ラベル印字部64に移送される。
【0057】
以上の構成にすることによって、圧接移送された台紙無しラベル連続体Lは、第一および第二傾斜ローラ53、54の弾性力により、駆動ローラ50への巻き込みが防止され、正常に移送が行われる。また、互いに隣り合う本体ローラ52の間に単一の傾斜ローラ53(54)を取り付ければよいので、実施例1および2で示した、一対の傾斜ローラの弾性力を利用してプラテンローラから剥離させる構成の場合には、傾斜ローラの数が多くなるので、損傷、交換の頻度が高くなるが、上記の構成にすることによって部品数が少なくなり、コスト削減、交換の頻度が少なくなると共に、取り付けも容易になる。
【0058】
なお、実施例3では駆動ローラ50を従動ローラ69の下側に対向配置させたが、従動ローラ69の上側に対向配置させてもよい。また、従動ローラ69に、本体ローラ52と傾斜ローラ53(54)を装着させてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 プラテンローラ(実施例1、
図1)
2 軸
3 本体ローラ
4 第一傾斜ローラ
5 第二傾斜ローラ
6 間隙
7 コア部
8 スカート部
9 押圧スプリング
20 プラテンローラ(実施例2、
図5)
21 軸
22 本体ローラ
23 第一傾斜ローラ
24 第二傾斜ローラ
25 間隙
26 第一傾斜ローラ用周溝
27 第二傾斜ローラ用周溝
28 コア部(
図7(1))
28A 凸部
29 スカート部
30 コア部(
図7(4))
31 スカート部
40 剥離部材(
図9)
41 支持枠
42 支持板
43 支持片
50 駆動ローラ(実施例3、
図10)
51 軸
52 本体ローラ
53 第一傾斜ローラ
54 第二傾斜ローラ
55 間隙
56 軸
57 本体ローラ
60 台紙無しラベルプリンタ(
図12)
61 ラベル供給部
62 ラベル移送部
63 ラベル検出部
64 ラベル印字部
65 ラベル切断部
66 制御部
67 ラベル供給リール
68 ガイドローラ
69 従動ローラ
70 駆動ローラ
71 発光器
72 受光器
73 サーマルヘッド
74 プラテンローラ
75 上カッタ
76 下カッタ
77 軸
78 周溝
L 台紙無しラベル連続体