(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693144
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ロータリドレッサ
(51)【国際特許分類】
B24B 53/14 20060101AFI20150312BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
B24B53/14
B24D3/00 310C
B24D3/00 320B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-241412(P2010-241412)
(22)【出願日】2010年10月27日
(65)【公開番号】特開2012-91292(P2012-91292A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043721
【氏名又は名称】豊田バンモップス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】榊原 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】相馬 伸司
【審査官】
石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−098200(JP,A)
【文献】
特開2002−224965(JP,A)
【文献】
特開2006−263890(JP,A)
【文献】
特公昭47−049356(JP,B1)
【文献】
独国特許出願公開第02438487(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00 − 53/14
B24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向位置の径が異なる円弧部あるいは傾斜部からなる外周面を有するロールと、該ロールの外周面に埋め込まれた多数のダイヤモンド砥粒とを備え、前記ロールの外周面のいかなる軸方向位置においても前記ダイヤモンド砥粒の個数を一定にし、ドレッサ1回転当たりの前記ダイヤモンド砥粒の作用数を等しくすることを特徴とするロータリドレッサ。
【請求項2】
請求項1において、前記ロールの外周面は、軸方向両端部に円筒部と、これら円筒部の間に配置された円弧凹部とからなっていることを特徴とするロータリドレッサ。
【請求項3】
請求項2において、前記円筒部と前記円弧凹部との境界部におけるダイヤモンド砥粒の個数を、前記円弧凹部におけるダイヤモンド砥粒の個数より多くしたことを特徴とするロータリドレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの外周にダイヤモンド砥粒を配列したロータリドレッサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転可能なロールの外周面に多数のダイヤモンド砥粒を埋め込んだロータリドレッサは、例えば、特許文献1に記載されているようによく知られている。この種のロータリドレッサにおいては、通常ダイヤモンド砥粒を、ロールの外周に螺旋方向に沿って一定の間隔で配置し、単位面積当たりのダイヤモンド砥粒の分布密度を一定にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−285776公報
【発明の概要】
【0004】
このため、
図7に示すように、軸方向の両端部に円筒部1、2を有し、これら円筒部1、2の間に凹状の円弧部3を有するロール4を備えたロータリドレッサにおいては、円弧部3におけるダイヤモンド砥粒5の分布密度が一定に構成されているため、円弧部3の円周上に配列されたダイヤモンド砥粒5の個数が、各軸方向位置における円弧部3の円周長さに応じて異なることになる。すなわち、同図のグラフに示すように、円弧部3の小径部においては、円周上のダイヤモンド砥粒5の個数(円周上ダイヤ量)が少なくなるのに対して、円弧部3の軸方向の両端部にいくに従って、円周上のダイヤモンド砥粒5の個数が多くなる。
【0005】
その結果、円周上のダイヤモンド砥粒の個数が多い部分においては、ドレッサ1回転当たりのダイヤモンド砥粒の作用数が多くなって、その部分のドレス抵抗が大きくなり、研削砥石に研削焼けを発生しやすくなる。一方、円周上のダイヤモンド砥粒の個数が少ない部分においては、ドレッサ1回転当たりのダイヤモンド砥粒の作用数が少なくなって、ダイヤモンド砥粒の個数が多い部分に比べてダイヤモンド砥粒の摩耗量が多くなり、偏摩耗を発生する問題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、円周上のダイヤモンド砥粒の個数を揃えることにより、ドレス抵抗を低減させるとともに、偏摩耗を抑制して、ドレッサの形状精度を長期に亘って維持できるロータリドレッサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、軸方向位置の径が異なる円弧部あるいは傾斜部からなる外周面を有するロールと、該ロールの外周面に埋め込まれた多数のダイヤモンド砥粒とを備え、前記ロールの外周面のいかなる軸方向位置においてもダイヤモンド砥粒の個数を一定に
し、ドレッサ1回転当たりの前記ダイヤモンド砥粒の作用数を等しくすることである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記ロールの外周面は、軸方向両端部に円筒部と、これら円筒部の間に配置された円弧凹部とからなっていることである。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2において、前記円筒部と前記円弧凹部との境界部におけるダイヤモンド砥粒の個数を、前記円弧凹部におけるダイヤモンド砥粒の個数より多くしたことである。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、軸方向位置の径が異なる円弧部あるいは傾斜部からなる外周面を有するロールと、ロールの外周面に埋め込まれた多数のダイヤモンド砥粒とを備え、ロールの外周面のいかなる軸方向位置においてもダイヤモンド砥粒の個数を一定に
し、ドレッサ1回転当たりの前記ダイヤモンド砥粒の作用数を等しくしたので、いかなる軸方向位置においても、ドレッサ1回転当たりのダイヤモンド砥粒の作用数が等しくなり、その結果、ドレス抵抗を低減できるとともに、ダイヤモンド砥粒の偏摩耗を抑制でき、形状精度を長期に亘って維持することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、ロールの外周面は、軸方向両端部に円筒部と、これら円筒部の間に配置された円弧凹部とからなっているので、円筒部には均一の密度でダイヤモンド砥粒が配置され、円弧凹部には円周上に一定個数のダイヤモンド砥粒が配置されたロータリドレッサを得ることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、円筒部と円弧凹部との境界部におけるダイヤモンド砥粒の個数を、円弧凹部におけるダイヤモンド砥粒の個数より多くしたので、形状変化しやすい境界部の形状精度を長期に亘って確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示すロータリドレッサの正面図である。
【
図2】ロールの円弧凹部にダイヤモンド砥粒を配列するための説明図である。
【
図3】ロールの円弧凹部にダイヤモンド砥粒を配列するための説明図である。
【
図4】ダイヤモンド砥粒の軸方向位置に対する円周方向位置の配列状態を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態を示すロータリドレッサの正面図である。
【
図7】従来におけるダイヤモンド砥粒の配列状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はロータリドレッサ10を示し、当該ロータリドレッサ10は、回転可能なロール11と、ロール11の外周面に埋め込まれた多数のダイヤモンド砥粒12によって構成されている。ダイヤモンド砥粒12は基本的には、ロール11の外周面に螺旋状に沿って配列されている。
【0015】
ロール11は、軸方向の両端部に円筒状の円筒部11a、11bを有するとともに、これら円筒部11a、11bの間に、半円状の円弧凹部11cを有しており、円弧凹部11cの軸方向両端部は、円筒部11a、11bの縁部に接続されている。円弧凹部11cは、軸方向両端部において最も径が大きく、円弧凹部11cの軸方向中央部において最も径が小さくなっている。
【0016】
ロール11の円筒部11a、11bには、軸方向のいかなる位置においても、円周方向に一定数(N1個)のダイヤモンド砥粒12が存在するように、ほぼ均一な分布密度でダイヤモンド砥粒12が配置されている。一方、ロール11の円弧凹部11cには、軸方向のいかなる位置(範囲)においても、円周方向に一定数(N2個)のダイヤモンド砥粒12が存在するように、ダイヤモンド砥粒12が配置されている。すなわち、円弧凹部11cにおけるダイヤモンド砥粒12の分布密度は、円弧凹部11cの径(円周長さ)に応じて異なっており、円弧凹部11cの径が大きくなるほどダイヤモンド砥粒12の分布密度が低くなっている。その結果、円弧凹部11cの径の変化に拘らず、円弧凹部11cのいかなる軸方向位置(範囲)においても、円周上に一定数のダイヤモンド砥粒12が配置されるようにしている。
【0017】
なお、実施の形態においては、
図1のグラフに示すように、円筒部11a、11bにおける円周上のダイヤモンド砥粒12の個数(円周上ダイヤ量)よりも、円弧凹部11cにおける円周上のダイヤモンド砥粒12の個数を多くしており(N1>N2)、これにより、円弧凹部11cによってドレッシングされる研削砥石の円弧部をより高精度にドレッシングできるようにしているが、円筒部11a、11bおよび円弧凹部11cにおける円周上のダイヤモンド砥粒12の個数を同じにしてもよい。
【0018】
次に、ロール11の円弧凹部11cの円周上に、ダイヤモンド砥粒12を一定個数規則的に配列するための手法を、
図2および
図3に基づいて説明する。
【0019】
図2において、ロール11を微小幅aで軸方向に複数に分割し、各幅a毎にダイヤモンド砥粒12を円周方向に一定の間隔(B1あるいはB2)で、かつ軸方向位置を異にするようにジグザグ状に配列する。この場合、ロール11の円周長さは、軸方向位置に応じて連続的に変化しているので、各幅a内におけるダイヤモンド砥粒12の円周方向の間隔を、ロール11の軸方向の中心位置にいくほど小さくしている(B1>B2)。
【0020】
すなわち、
図3に示すように、各幅aにおけるロール11の円周長さをA1〜A5とすると、各幅a毎のダイヤモンド砥粒12を円周方向の間隔B1〜B5を、ロール11の円周長さA1〜A5に比例して変化させ、各幅a内において円周上に一定の個数のダイヤモンド砥粒12が等角度間隔に配列されるように構成している。
【0021】
具体的には、実施の形態のように、半円状の円弧凹部11cを有するロール11の場合には、各幅a内に配置すべき円周上のダイヤモンド砥粒12の個数をMとすると、円周長さA1の軸方向位置におけるダイヤモンドロール12の円周方向の間隔B1を、「B1=A1/M」とし、同様に、円周長さA5の軸方向位置におけるダイヤモンドロール12の円周方向の間隔B5は、「B5=A5/M」としている。この結果、ロール11の軸方向両端位置におけるダイヤモンド砥粒12の円周方向の間隔B1が最も大きく、ロール11の軸方向中心位置におけるダイヤモンド砥粒12の円周方向の間隔B5が最も小さくなるロータリドレッサ10が構成できる。
【0022】
なお、
図3における破線は、ロール11の円弧凹部11cに螺旋状に配列されるダイヤモンド砥粒12の配置位置を示している。
【0023】
このように、ロール11の外周面にダイヤモンド砥粒12を上記した規則に従って配列することにより、
図4に示すように、微小幅aを軸方向に僅かにシフトして微小幅a´としても、微小幅a´内におけるダイヤモンド砥粒12の円周上の個数を一定にすることができる。
【0024】
この場合、両端円筒部11a、11bにおいては、径が一定であるので、従来と同様に、均一の密度でダイヤモンド砥粒12を配列することにより、いかなる軸方向位置においても、円周上のダイヤモンド砥粒12の個数をほぼ一定に保持できるようにしている。
【0025】
図5は第2の実施の形態にかかるロータリドレッサ10を示すもので、第1の実施の形態と異なる点は、ロール11の円筒部11a、11bと円弧凹部11cとの境界部(円弧凹部11cのコーナ部)11d、11eにおける円周上のダイヤモンド砥粒12の個数を、円弧凹部11cにおけるダイヤモンド砥粒12の個数よりも多くした(例えば、60個)したものである。
【0026】
かかる第2の実施の形態によれば、ロール11の円筒部11a、11bと円弧凹部11cとの境界部11d、11eにおけるダイヤモンド砥粒12の個数を多くしたことにより、形状変化しやすい境界部11d、11eにおける形状精度を長期に亘って確保することができる。
【0027】
上記した実施の形態によれば、円弧凹部11cのいかなる軸方向位置においてもダイヤモンド砥粒12の個数を一定にしたことにより、ロータリドレッサ10によって研削砥石をドレッシングする際に、ドレッサ1回転当たりのダイヤモンド砥粒12の作用数を等しくすることができ、その結果、ドレス抵抗を低減できるとともに、ダイヤモンド砥粒12の偏摩耗を抑制でき、ロータリドレッサ10の形状精度を長期に亘って維持することができるようになる。
【0028】
上記した実施の形態においては、軸方向の両端部に円筒部11a、11bを有し、円筒部11a、11bの間に円弧凹部11cを有するロータリドレッサ10について説明したが、本発明は、そのような形状に限定されるものではなく、例えば、
図6(A)、(B)に示すように、外周に傾斜部111a、111bを有するロール111や、外周に円筒部211a、211bと円弧凸部211cを有するロール211の外周にダイヤモンド砥粒を配列するものにも適用できるものであり、径が一定でない円筒部を有するロールを用いたロータリドレッサ全般に適用可能である。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るロータリドレッサは、軸方向位置の径が異なる外周面を有するロールの外周にダイヤモンド砥粒を配列したものに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0031】
10…ロータリドレッサ、11、111、211…ロール、11a、11b…円筒部、11c…円弧凹部、11d、11e…境界部、12…ダイヤモンド砥粒。