特許第5693170号(P5693170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鬼怒川ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5693170-グラスラン 図000002
  • 特許5693170-グラスラン 図000003
  • 特許5693170-グラスラン 図000004
  • 特許5693170-グラスラン 図000005
  • 特許5693170-グラスラン 図000006
  • 特許5693170-グラスラン 図000007
  • 特許5693170-グラスラン 図000008
  • 特許5693170-グラスラン 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693170
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】グラスラン
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/04 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   B60J1/16 B
   B60J1/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-258105(P2010-258105)
(22)【出願日】2010年11月18日
(65)【公開番号】特開2012-106674(P2012-106674A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】行木 伸幸
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−187434(JP,A)
【文献】 実公昭35−003671(JP,Y1)
【文献】 特開2000−225848(JP,A)
【文献】 実開昭60−150121(JP,U)
【文献】 特開2007−196909(JP,A)
【文献】 特開2000−103242(JP,A)
【文献】 実開昭60−164580(JP,U)
【文献】 特開2002−347445(JP,A)
【文献】 特開2002−337550(JP,A)
【文献】 実開昭62−200058(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略コの字状を呈するグラスラン上辺部の両側壁に当該グラスラン上辺部の長手方向へ延びる線状の芯材を埋設するとともに、そのグラスラン上辺部とグラスラン縦辺部との間にコーナー型成形部を金型成形することにより、上記グラスラン上辺部とグラスラン縦辺部とを上記コーナー型成形部を介して接合してなるグラスランであって、
上記グラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部を、当該グラスラン上辺部の少なくとも一方の側壁のうち上記芯材が埋設された部分が他の部分と比べてコーナー型成形部側へ突出するように予め切り欠き、その切欠部を補填するように延びる延出部を上記コーナー型成形部に形成するとともに、
自動車用ドアのドアサッシュとの係合をもって上記コーナー型成形部の上記グラスラン上辺部側への変位を規制するストッパ部を、当該ストッパ部のうち少なくとも一部が上記グラスラン上辺部の長手方向で上記延出部が形成された領域にオーバーラップするように形成したことを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
上記グラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部を段付き形状となるように予め切り欠くことにより、上記グラスラン上辺部の長手方向に平行な平行面を含む段付き形状の接合面によって上記グラスラン上辺部を上記コーナー型成形部に接合したことを特徴とする請求項1に記載のグラスラン。
【請求項3】
断面略コの字状を呈するグラスラン上辺部の両側壁に上記芯材をそれぞれ埋設するとともに、そのグラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部を、当該グラスラン上辺部の少なくとも一方の側壁のうち上記芯材が埋設された部分が底壁と比べてコーナー型成形部側へ突出するように予め切り欠き、その切欠部を補填するように延びる延出部を上記コーナー型成形部に形成し、さらに、上記延出部に上記ストッパ部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のグラスラン。
【請求項4】
断面略コの字状を呈するグラスラン上辺部の両側壁に上記芯材をそれぞれ埋設するとともに、そのグラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部であって、当該グラスラン上辺部の少なくとも一方の側壁のうち上記芯材が埋設された部分よりも先端側の部分を予め切り欠き、その切欠部を補填するように延びる延出部を上記コーナー型成形部に形成し、さらに、上記グラスラン上辺部の底壁のうち当該グラスラン上辺部の長手方向で上記延出部が形成された領域に上記ストッパ部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のグラスラン。
【請求項5】
上記ストッパ部は、上記コーナー型成形部を構成する材料よりも硬質な材料をもって形成されたインサート部材を上記コーナー型成形部の延出部に埋設してなる凸状のものとして形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のドアグラスラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアのうちドアサッシュの内周に沿って配設されるグラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、この種のグラスランとしては、グラスラン上辺部と前後のグラスラン縦辺部とをそれぞれ押出成形した上で、グラスラン上辺部の両端部と両グラスラン縦辺部の上端部とを金型によって成形したコーナー型成形部によって接合したものが一般に用いられている。
【0003】
ここで、自動車のドアサッシュ周りの美観または見栄えに着目した場合、それらを低下させる要因として、車両前後方向におけるグラスランの位置ずれがある。そして、この位置ずれの発生原因としては、ドアガラスの昇降動作に伴う位置ずれのほか、温度変化や時間の経過に伴う上記グラスラン上辺部の伸縮があるとされている。そこで、上記グラスラン上辺部の伸縮防止対策を施したグラスランとして、例えば特許文献1に記載のように、上記グラスラン上辺部の一部に金属製ワイヤや合成樹脂製コード等の芯材を埋設したものが提案されている。
【0004】
また、車両前後方向におけるグラスランの位置ずれ防止対策を施したグラスランとして、例えば特許文献2に記載のように、コーナー型成形部に位置ずれ防止用の突起部を形成し、その突起部をドアサッシュの孔に嵌合させたものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−150993号公報
【特許文献2】特開2007−196909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術と特許文献2に記載の技術とを単に寄せ集めた場合、すなわちグラスラン上辺部に上記芯材を埋設し、且つコーナー型成形部に上記突起部を形成した場合には、グラスラン上辺部の伸縮が上記芯材によって抑制されるとともに、コーナー型成形部の車両前後方向の位置ずれが上記突起部によって抑制されることになるが、コーナー型成形部のうち上記突起部よりもグラスラン上辺部側の部分が温度変化や時間の経過に伴って車両前後方向で伸縮し、グラスラン上辺部が位置ずれしてしまう虞があり、なおも改善の余地を残している。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、ドアサッシュに対する位置ずれをより確実に防止することにより、ドアサッシュ周りの美観あるいは見栄えの低下を未然に防止することができるグラスランを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、断面略コの字状を呈するグラスラン上辺部の両側壁に当該グラスラン上辺部の長手方向へ延びる線状の芯材を埋設するとともに、そのグラスラン上辺部とグラスラン縦辺部との間にコーナー型成形部を金型成形することにより、上記グラスラン上辺部とグラスラン縦辺部とを上記コーナー型成形部を介して接合してなるグラスランであることを前提としている。
【0009】
その上で、上記グラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部を、当該グラスラン上辺部の少なくとも一方の側壁のうち上記芯材が埋設された部分が他の部分と比べてコーナー型成形部側へ突出するように予め切り欠き、その切欠部を補填するように延びる延出部を上記コーナー型成形部に形成するとともに、自動車用ドアのドアサッシュとの係合をもって上記コーナー型成形部の上記グラスラン上辺部側への変位を規制するストッパ部を、当該ストッパ部のうち少なくとも一部が上記グラスラン上辺部の長手方向で上記延出部が形成された領域にオーバーラップするように形成したことを特徴としている。
【0010】
具体的には請求項2に記載の発明のように、上記グラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部を段付き形状となるように予め切り欠くことにより、上記グラスラン上辺部の長手方向に平行な平行面を含む段付き形状の接合面によって上記グラスラン上辺部を上記コーナー型成形部に接合するものとする。これは、上記グラスラン上辺部と上記コーナー型成形部との接合強度に着目したものである。
【0011】
請求項1または2に記載の発明を前提として自動車用ドアのドアサッシュ周りの美観または見栄えをより向上させる上では、請求項3に記載の発明のように、断面略コの字状を呈するグラスラン上辺部の両側壁に上記芯材をそれぞれ埋設するとともに、そのグラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部を、当該グラスラン上辺部の少なくとも一方の側壁のうち上記芯材が埋設された部分が底壁と比べてコーナー型成形部側へ突出するように予め切り欠き、その切欠部を補填するように延びる延出部を上記コーナー型成形部に形成し、さらに、上記延出部に上記ストッパ部を形成することが望ましい。この請求項3に記載の発明では、上記コーナー型成形部のうちドアサッシュ装着状態で外部に露出しない底壁が延出部としてグラスラン上辺部側に延出することになるため、外観上においてコーナー型成形部が小さく目立たないものとなる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明のように、断面略コの字状を呈するグラスラン上辺部の両側壁に上記芯材をそれぞれ埋設するとともに、そのグラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部側の端部であって、当該グラスラン上辺部の少なくとも一方の側壁のうち上記芯材が埋設された部分よりも先端側の部分を予め切り欠き、その切欠部を補填するように延びる延出部を上記コーナー型成形部に形成し、さらに、上記グラスラン上辺部の底壁のうち当該グラスラン上辺部の長手方向で上記延出部が形成された領域に上記ストッパ部を形成してもよい。この請求項4に記載の発明は、上記コーナー型成形部において、内周側(上記両側壁の先端側)のコーナー部が、外周側(底壁側)のコーナー部よりも上記グラスラン上辺部側へ延びている場合に、上記コーナー型成形部を小さいものとする上で特に好適なものである。また、上記ストッパ部を上記グラスラン上辺部に直接設けているため、上記グラスラン上辺部の車両前後方向における位置ずれをより確実に防止できるメリットもある。
【0017】
また、請求項1〜3に記載の発明を前提として上記ストッパ部による位置ずれ防止効果をより高める上では、請求項5に記載の発明のように、上記ストッパ部が、上記コーナー型成形部を構成する材料よりも硬質な材料をもって形成されたインサート部材を上記コーナー型成形部の延出部に埋設してなる凸状のものとして形成されていることが好ましい。
【0018】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、ドアガラスの昇降動作に伴う上記コーナー型成形部の位置ずれが上記ストッパ部によって防止される一方で、上記グラスラン上辺部または上記グラスラン一般部の温度変化や時間の経過に伴う伸縮が上記芯材によって防止されることになる。その上で、上記ストッパ部と上記芯材とを単に併用したのみでは、上述したように上記コーナー型成形部の伸縮によって上記グラスラン上辺部または上記グラスラン一般部が車両前後方向で位置ずれする虞があるため、グラスランのうち上記芯材が埋設された長手方向位置に上記ストッパ部を設けている。これにより、上記コーナー型成形部の伸縮による上記グラスラン上辺部または上記グラスラン一般部の車両前後方向における位置ずれを防止できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
少なくとも請求項1に記載の発明によれば、ドアサッシュに対するグラスランの位置ずれをより確実に防止できるようになるから、ドアサッシュ周りの美観または見栄えの低下を未然に防止することができる。
【0020】
その上で、請求項2に記載の発明によれば、上記グラスラン上辺部のうち上記コーナー型成形部に対する接合面積が単に大きくなるだけでなく、上記グラスラン上辺部に張力が作用したときに、その張力が上記平行面に対してせん断力として作用するようになるため、上記グラスラン上辺部と上記コーナー型成形部との接合強度が飛躍的に向上する。
【0021】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、サッシュ装着状態で上記コーナー型成形部が外観上小さく目立たないものとなるか、あるいは外部に露出しないようになるため、ドアサッシュ周りの美観または見栄えをより向上させることができる。
【0022】
一方で、請求項4に記載の発明によれば、上記コーナー型成形部において、内周側(上記両側壁の先端側)のコーナー部が、外周側(底壁側)のコーナー部よりも上記グラスラン上辺部側へ延びている場合に、上記コーナー型成形部をより小さいものとすることができ、上記コーナー型成形部の形状が安定し、ドアサッシュ周りの美観または見栄えをより向上させることができる。その上、上記ストッパ部を上記グラスラン上辺部に直接設けているため、上記グラスラン上辺部の車両前後方向における位置ずれをより確実に防止できるメリットもある。
【0023】
また、請求項5に記載の発明によれば、上記ストッパ部が上記コーナー型成形部を構成する材料よりも硬質な材料をもって形成されているため、そのストッパ部による位置ずれ防止効果をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態として自動車用フロントドアを示す側面図。
図2図1のA−A線に沿った断面図。
図3図2のB−B線に沿った断面図。
図4図3のC−C線に沿った断面図。
図5】第1の実施の形態の変形例を示す図であって、第1の実施の形態における図3に相当する断面図。
図6】第1の実施の形態の別の変形例を示す図であって、第1の実施の形態における図3に相当する断面図。
図7】本発明の第2の実施の形態を示す図であって、第1の実施の形態における図3に相当する断面図。
図8図7のE−E線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜4は本発明のより具体的な第1の実施の形態を示し、図1は本発明に係るグラスランが装着された自動車のフロントドアの側面図を、図2図1におけるA−A線に沿った断面図をそれぞれ示している。また、図3図2に示すグラスランのB−B線に沿った断面図であって、そのグラスランのうち後述するコーナー型成形部4d近傍の部分(図1のa部)を示す図である。さらに、図4図3に示すグラスランのC−C線に沿った断面図である。なお、図3では、後述する各リップ12,13,14を便宜上省略して描いている。
【0026】
図1に示すように、自動車のフロントドア1は、ドア本体2との間に窓開口部1aを形成する側面視略アーチ状のドアサッシュ3を有していて、ドア本体2内に収容された図示外のウインドウレギュレータによって駆動される昇降式のドアガラスGによって窓開口部1aを開閉するようになっている。そして、ドアサッシュ3の内周側には、ドアガラスGを昇降案内しつつそのドアガラスGとドアサッシュ3との間をシールするグラスラン4が装着されている。
【0027】
グラスラン4は、ドアサッシュ3のうち車体前後方向に延びるサッシュ上辺部3aに装着されるグラスラン上辺部4aと、ドアサッシュ3のうち車体上下方向に延びる前後のサッシュ縦辺部3b,3cにそれぞれ装着される一対のグラスラン縦辺部4b,4cと、両グラスラン縦辺部4b,4cのそれぞれの上端部とグラスラン上辺部4aの長手方向両端部をそれぞれ接続する側面視略L字状の前後のコーナー型成形部4d,4eと、を有していて、車体の造形上、グラスラン上辺部4aが車体後方側に向かって上り勾配となるように傾斜して設けられている。なお、グラスラン上辺部4aと両グラスラン縦辺部4b,4cおよび両コーナー型成形部4d,4eは、EPDMに代表されるようなゴム材料、または熱可塑性エラストマーであるTPOに代表されるような樹脂材料よっていずれも形成されている。
【0028】
周知のように、グラスラン上辺部4aおよび両グラスラン縦辺部4b,4cは、断面形状が互いに若干異なるものとして押出成形されたものであるが、全体として断面略コの字状を呈している点では共通している(図2参照)。そして、このようなグラスラン上辺部4aおよび両グラスラン縦辺部4b,4cを断面略コの字状にそれぞれ金型成形された両コーナー型成形部4d,4eによって互いに接合することにより、グラスラン4が一本の連続した長尺状のものとして形成されている。
【0029】
図2に示すように、グラスラン上辺部4aは、断面略コの字状のグラスラン本体6を中心として構成されていて、ドアサッシュ3のうちいわゆるロールフォーミングをもって形成されたチャンネル部5にグラスラン本体6が嵌合しつつ、グラスラン本体6の外側面側に突出形成された複数の保持リップ10,11がドアサッシュ3側の段状部5a,5bに弾接または係止されることで、ドアサッシュ3からの抜け止めが施されている。
【0030】
グラスラン本体6は、アウタ側およびインナ側のそれぞれの側壁7,8とそれらの両側壁7,8同士を接続している底壁9とを有していて、当該グラスラン本体6の開口端縁、すなわち両側壁7,8の先端には、アウタシールリップ12とインナシールリップ13とがグラスラン本体6のコ字状空間に向けて斜めに突出形成されている。そして、図2に仮想線で示すように、ドアガラスGの閉時にはグラスラン本体6のコ字状空間にドアガラスGが受容され、そのドアガラスGの表裏両面にアウタシールリップ12とインナシールリップ13がそれぞれ弾接または圧接することになる。これにより、車室内外がシールされることになる。なお、図2に示す符号14は、ドアガラスGの閉時にそのドアガラスGの上端縁を受け止めるボトムリップを示しており、図2に示す符号15は、グラスラン上辺部4aのうちドアガラスGが摺動する部分に形成した摺動材層を示している。また、図示は省略しているが、アウタシールリップ12およびインナシールリップ13は、両グラスラン縦辺部4b,4cおよび両コーナー型成形部4d,4eにも同様に形成されていることは言うまでもない。
【0031】
両側壁7,8には、先にも述べたようにグラスラン上辺部4aの伸縮防止の観点から例えば黄銅等の金属からなるワイヤに代表されるような線状の芯材16,16が長手方向に沿ってそれぞれ埋設されている。これらの芯材16,16は、断面形状が例えば円形のものであり、予め接着剤をコーティングした上でグラスラン上辺部4aの押出成形のための押出機の口金に送り込むことにより、いわゆる同時押し出しのかたちで両側壁7,8に埋設・一体化されている。また、芯材16,16は、必ずしも金属製のものである必要はなく、グラスラン上辺部4aの伸縮防止機能さえ発揮できれば例えば樹脂等の非金属材料をもって形成してもよい。
【0032】
ここで、グラスラン上辺部4aは、サッシュ上辺部3aに倣って湾曲するように撓み変形しつつサッシュ上辺部3aに装着されているものであるから、両芯材16,16は、グラスラン上辺部のうち曲げの中立面NS上に配置してある。ここでいう曲げの中立面NSとは、サッシュ上辺部3aに倣ってグラスラン上辺部4aを撓み変形させたときに伸びも縮みもしない面を意味している。
【0033】
そして、図3,4に示すように、グラスラン上辺部4aのうち車両前方側の端部は、当該グラスラン上辺部4aのうちグラスラン本体6の底壁9を切り欠いた切欠部17を形成することによって段付き形状とされている。その結果、グラスラン上辺部4aのうち芯材16,16が埋設された部分、すなわち両側壁7,8が底壁9よりもコーナー型成形部4d側へ突出している。
【0034】
一方、車両前方側のコーナー型成形部4dのうちグラスラン上辺部4a側の端部は、グラスラン上辺部4a側のグラスラン本体6と略同一断面形状のグラスラン本体18を中心として構成されているものであって、当該グラスラン本体18の底壁20をそのグラスラン本体18の両側壁19よりもグラスラン上辺部4a側へ所定量だけ延長してなる延出部21が形成されている。
【0035】
つまり、コーナー型成形部4dは、上述したような切欠部17を予め形成したグラスラン上辺部4aとグラスラン縦辺部4bの端末部同士を図示外の金型に差し込みつつコーナー型成形部4dとなるべき空間を残して対向配置し、その空間に所定の樹脂材料またはゴム材料を注入することで形成されている。そして、このようにコーナー型成形部4dを形成することにより、グラスラン上辺部4a側の切欠部17を補填するようにして延出部21が形成されているとともに、グラスラン上辺部4aの長手方向に平行な平行面22a(図4参照)を含む段付き形状の接合面22をもってグラスラン上辺部4aがコーナー型成形部4dに接合されている。
【0036】
また、コーナー型成形部4dの延出部21には、その外底面から突出してドアサッシュ3側の位置決め孔23に嵌合する断面略矩形状の位置決め突部24がストッパ部として形成され、その位置決め突部24とドアサッシュ3との係合をもってコーナー型成形部4dがグラスラン上辺部4aの長手方向、すなわち車体前後方向で位置決めされている。換言すれば、位置決め突部24は、グラスラン上辺部4aの長手方向で延出部21が形成された領域Dに設けられ、ドアサッシュ3との係合をもってコーナー型成形部4dのグラスラン上辺部4a側への変位を規制するようになっている。なお、位置決め突部24は、当該位置決め突部24の全体が領域D内に収まるように形成されている必要はなく、当該位置決め突部24のうち少なくとも一部が領域Dにオーバーラップするように形成されていればよい。
【0037】
したがって、本実施の形態によれば、上述したようにグラスラン上辺部4aが車体後方側に向かって上り勾配となるように傾斜しているため、ドアガラスGの閉時に当該ドアガラスGの閉止力がグラスラン上辺部4aを車両後方側へ向かって引張る方向に作用することになるが、このようなドアガラスGの閉止力によるグラスラン上辺部4aの車両後方側への位置ずれが位置決め突部24によって防止されることになる。その上、グラスラン上辺部4aに埋設した芯材16,16が、コーナー型成形部4dの位置決めを司る位置決め突部24が形成された長手方向位置にまで延在していて、グラスラン上辺部4aの伸縮のみならずコーナー型成形部4dの延出部21の伸縮までもが防止されることになるから、グラスラン上辺部4aの車両前後方向の位置ずれを確実に防止することができる。これにより、グラスラン上辺部4aの位置ずれに起因するドアサッシュ3周りの美観あるいは見栄えの低下を未然に防止することができるようになる。
【0038】
また、グラスラン上辺部4aとコーナー型成形部4dとの接合面22が段付き形状を呈しているため、単に接合面22の面積が大きくなるだけでなく、ドア閉時において上述したような引張力がグラスラン上辺部4aに作用した場合に、その引張力が平行面22aに対してせん断力として作用するようになり、グラスラン上辺部4aとコーナー型成形部4dとの接合強度を飛躍的に高めることができる。
【0039】
さらに、コーナー型成形部4dは、押出成形によって形成されたグラスラン上辺部4aおよび両グラスラン縦辺部4b,4cとは質感が異なるものとなるが、そのコーナー型成形部4dのうちドアサッシュ3装着時に外部に露出しない底壁20を延出部21としてグラスラン上辺部4a側に延出させているため、外観上においてコーナー型成形部4dが小さく目立たないものとなり、ドアサッシュ3周りの美観または見栄えをより向上させることができる。
【0040】
なお、上述した第1の実施の形態では、グラスラン上辺部4aのうちコーナー型成形部4d側の端部を段付き形状としたが、例えば第1の実施の形態の変形例として図5に示すように、グラスラン上辺部4aのうち芯材16,16が埋設された部分が、他の部分よりもコーナー型成形部4d側へ突出してさえいれば、グラスラン上辺部4aのうちコーナー型成形部4d側の端部の形状は問わない。
【0041】
図5に示す変形例は、グラスラン上辺部4aのうちコーナー型成形部4d側の端部を、そのグラスラン上辺部4aの長手方向に直角な仮想の平面Pに対して所定角度θだけ傾斜するように予め切り欠くことにより、グラスラン上辺部4aのコーナー型成形部4dに対する接合面25を傾斜面として形成したものである。これにより、グラスラン上辺部4aの両側壁7,8のうち芯材16,16が埋設された部分が、底壁9よりもコーナー型成形部4d側へ突出している。なお、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
【0042】
したがって、図5に示す変形例においても、グラスラン上辺部4aの両側壁7,8のうち芯材16,16が埋設された部分よりもグラスラン上辺部4a側へ伸びる延出部27がコーナー型成形部4dに形成されているとともに、その延出部27が形成された領域Dに位置決め突部24が形成されていることから、コーナー型成形部4dのうち位置決め突部24が形成された長手方向位置にまで芯材16,16が延在することになり、上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られる。
【0043】
また、上述した第1の実施の形態では、位置決め突部24をコーナー型成形部4bと同様のゴムまたは樹脂材料によって形成しているが、この位置決め突部による位置ずれ防止効果をより重視する場合には、第1の実施の形態の別の変形例として図6に示すように、コーナー型成形部4dを構成する材料よりも硬質な材料をもって位置決め突部28bを形成してもよい。
【0044】
図6に示す変形例では、コーナー型成形部4dの延出部21に金属製のインサート部材28を埋設している。インサート部材28は、延出部21内に埋設された板状のインサート本体28aと、延出部21の外底面から突出するストッパ部としての位置決め突部28bと、を備えていて、このインサート部材28の位置決め突部28bがドアサッシュ3側の位置決め孔23に嵌合するようになっている。なお、インサート部材28は必ずしも金属製のものである必要はなく、コーナー型成形部4dを構成する材料よりも硬質でさえあれば例えば樹脂製のものであってもよい。また、他の部分は上述した第1の実施の形態と同様である。
【0045】
したがって、この変形例によれば、上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られるのは勿論のこと、位置決め突部28aが比較的硬質に形成されていることから、その位置決め突部28aとドアサッシュ3との係合によってコーナー型成形部4dの位置ずれをより確実に防止できるようになるメリットがある。
【0046】
図7,8は本発明の第2の実施の形態を示す図であって、そのうち図7は上述した第1の実施の形態の図3に相当する断面図、図8図7におけるE−E線に沿った断面図である。なお、図7,8において上述した第1の実施の形態と共通または相当する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図7,8に示す第2の実施の形態のコーナー型成形部34は、当該コーナー型成形部34のうち内周側(両側壁7,8の先端側)コーナー部34aの曲率半径が、コーナー型成形部34のうち外周側(底壁9側)コーナー部34bの曲率半径よりも大きく形成されたものであって、内周側コーナー部34aが外周側コーナー部34bよりもグラスラン上辺部4a側の位置にまで延びている。そこで、この第2の実施の形態では、グラスラン上辺部4aのうちコーナー型成形部34側の端部において、両側壁7,8のうち芯材16よりも先端側の部分を予め切り欠き、その切欠部35を補填する延出部36をコーナー型成形部34に形成している。その結果、グラスラン上辺部4aの長手方向に平行な平行面38aを含む段付き形状の接合面38をもってグラスラン上辺部4aとコーナー型成形部34とが接合されている。
【0048】
つまり、グラスラン上辺部4aの長手方向で延出部36が形成された領域Dのうち、その長手方向で断面形状が変化することになる内周側(両側壁7,8の先端側)の部分を型成形によって形成している一方、領域Dのうち長手方向で断面形状が変化しない外周側(底壁9側)の部分を押出成形されたグラスラン上辺部4aによって形成している。これにより、コーナー型成形部34をより小さいものとすることを可能にしている。
【0049】
また、延出部36が形成された領域Dには、グラスラン上辺部4aのうち底壁9の外底面から突出してドアサッシュ3側の位置決め孔23に嵌合する断面略矩形状の位置決め突部37がストッパ部として形成され、その位置決め突部37とドアサッシュ3との係合をもってコーナー型成形部34がグラスラン上辺部4aの長手方向、すなわち車体前後方向で位置決めされている。なお、この位置決め突部37は、コーナー型成形部34を成形するための金型により、そのコーナー型成形部34と同様の材料で且つ同時に型成形されたものである。
【0050】
したがって、この第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と略同様の効果が得られるのに加え、芯材16が埋設されたグラスラン上辺部4aに位置決め突部37が直接設けられていることから、グラスラン上辺部4aの車両前後方向における位置ずれをより確実に防止できるようになるメリットがある。また、コーナー型成形部34の内周側コーナー部34aが外周側コーナー部34bよりもグラスラン上辺部4a側へ延びている場合であっても、コーナー型成形部34を小さいものとすることができ、コーナー型成形部34の形状が安定し、ドアサッシュ3周りの美観または見栄えをより向上させることができるメリットもある。
【0051】
なお、図1〜8に示した各実施の形態および各変形例においては、グラスラン上辺部4aの両側壁7,8にそれぞれ芯材16,16を埋設し、それらの両芯材16,16を、位置決め突部24,28b,37が形成された長手方向位置にまで延在させるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、両芯材16,16のうち少なくとも一方を、位置決め突部24,28b,37が形成された長手方向位置にまで延在させればよい。つまり、グラスラン上辺部4aの切欠部は、両芯材16,16のうち少なくとも一方を残すように形成すればよい。
【0052】
また、グラスラン上辺部4aにおける芯材の埋設位置についても、必ずしも両側壁7,8である必要はなく、両側壁7,8の一方にのみ芯材を埋設することも可能である。
【0062】
なお、上述した各実施の形態では、自動車のフロントドアに装着されるグラスランに本発明を適用した例を示したが、自動車のリアドアに装着されるグラスランにも同様に本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
3…ドアサッシュ
3a…サッシュ上辺部
3b…サッシュ縦辺部
4…グラスラン
4a…グラスラン上辺部
4b…グラスラン縦辺部
4d…コーナー型成形部
7,8…側壁
9…底壁
16…芯材
17…切欠部
21…延出部
22…接合面
22a…平行面
24…位置決め突部(ストッパ部)
28…インサート部材
28b…位置決め突部(ストッパ部)
35…切欠部
36…延出部
37…位置決め突部(ストッパ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8