(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、同じ機能を持つ構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。また、本実施例の印字装置は、「プリンタ」や「サーマルプリンタ」とも呼ばれる。本実施例の印字装置を「プリンタ」として説明する。
【0010】
[実施形態1]
図1に本実施例のプリンタの機能構成例を示す。本実施例のプリンタは、大略して、制御部100、サーマルヘッド200、用紙搬送部300、入力部400に分けられる。
【0011】
制御部100は、MCU(Micro Control Unit)101、第1記憶部102とを有する。該第1記憶部102は、例えば、RAMを用いればよく、
図1の記載および以下の説明では、第1記憶部102をRAM102とする。また、サーマルヘッド200は、複数の発熱体(この例では、発熱体221〜224の4つ)と、第2記憶部201と第3記憶部202と、を有する。
図1の記載および以下の説明では、第2記憶部201をシフトレジスタ201とし、第3記憶部202をラッチレジスタ202とする。また、各発熱体221〜224各々は複数(例えば64個)の発熱素子から構成される。また、用紙搬送部300は、用紙を搬送させるためのモータ301を有する。入力部400は、印字速度設定部401と通電回数設定部402を有する。本実施例のプリンタは、ホストPC(Personal Computer)500に接続されている。
【0012】
また、ユーザが、入力部400の印字速度設定部401から、所望の印字速度vを設定する。また、ユーザが印字速度vの設定を行わなくとも、デフォルトで、印字速度vを設定するようにしてもよい。本実施例のプリンタは、該設定された印字速度vを維持して(変動させずに)、印字を行うものである。
【0013】
また、ユーザは、入力部400の通電回数設定部402から通電回数Lを設定する。通電回数Lについては後述する。
【0014】
図2にMCU101の機能構成例を示す。
図2の例では、MCU101は、通電部1011などを含む。MCU101には、ホストPC500から印字する文字コードデータが転送される。MCU101は、文字コードデータをパターンデータに変換し、該パターンデータS101をRAM102に保持させる。パターンデータは、例えば、発熱体221〜224を発色させるドット(印刷するドット)に対応するビットが「1」であり、非発色のドット(非印刷のドット)に対応するビットが「0」のデータである。RAM102は、1ライン分のパターンデータを保持する。ここで、「ドット」とは発熱素子と同義である。ここで、
図16を用いて、1ライン印字について説明する。
図16Aは、横書きに印字した文字を示す。
図16Bは、縦書きに印字した文字を示す。「1ライン印字する」とは、印字する方向に沿った一列の発熱体が行う印字である。つまり、
図16Aのように、横方向に印字する場合には、該横方向に沿った一列の発熱体が行う印字である。また、
図16Bのように、縦方向に印字する場合には、該縦方向に沿った一列の発熱体が行う印字である。
【0015】
また、1行とは、
図16Aに示す文字の行、または
図16Bに示す文字の列を示す。
【0016】
用紙への印字時に、転送部1017は、クロック同期シリアル通信信号S111を用いて、シフトレジスタ201に、変換された1ライン分のパターンデータ(印字データ)を転送する。そして、MCUからのラッチ信号S121によりシフトレジスタ201のデータS201が、ラッチレジスタ202に転送される。該転送により、通電期間中にも、転送部1107は、シフトレジスタ201に次の通電期間に対応するパターンデータを転送できる。これに伴い、パターンデータの各ビットに対応した発熱体221〜224の各発熱素子へも、ラッチレジスタ202からパターンデータS211〜S214が、転送される。また、
図1では、パターンデータS211〜S214を送信するための導線は、発熱素子分、存在する。つまり、発熱体221が64個の発熱素子により構成されている場合には、パターンデータS211を送信するための導線は、64本存在する。そして各発熱素子は、MCU101からの通電信号(S131〜S134)により通電(発熱)され、ラッチレジスタ202内のパターンデータ(S211〜S214)の発色を行い、用紙に印字する。そして、1ライン分の印字が終了すると、MCU101は、用紙搬送部300に用紙搬送信号S141を送信することで、モータ301を駆動して、1ライン分、用紙を搬送する。
【0017】
図3に、発熱体221、発熱体222、発熱体223、発熱体224の順番で通電信号を送信した場合のタイムチャートを示す。
図3中のS111はクロック同期シリアル通信信号を示し、S121は、ラッチ信号を示し、S131、S132、S133、S134は、通電信号を示し、S141は用紙搬送信号を示す。また、S121において、「0」の場合には、シフトレジスタ201からラッチレジスタ202へデータを送信している状態を示し、「1」の場合には、シフトレジスタ201からラッチレジスタ202へデータを送信していない状態を示す。また、S131、S132、S133、S134において、「1」の場合には、発熱体221〜224へ通電(発熱)されている状態(通電がON状態)であることを示し、「0」の場合には、発熱体221〜224へ通電されていない状態(通電がOFF状態)であることを示す。
【0018】
図3を用いて、以下で用いる用語について説明する。転送部1017が、クロック同期シリアル通信信号S111を用いて、1ライン分のデータをシフトレジスタ201に転送するのに要する時間を「転送時間ts」という。また、通電部1011が、1つの発熱体に通電するのに要する時間を「通電時間th」という。また、4つの発熱体221〜224に通電するのに要する合計時間(つまり、1ライン印字するために、発熱体221〜224に通電するのに要する時間)を「1ライン通電時間tp」という。
図3の例では、tp=4thとなる。また、用紙搬送部300が、用紙を1ライン分、搬送するのに要する時間を「搬送時間tm」という。換言すれば、搬送時間tmは、1ライン印字するために用紙を搬送するのに要する時間である。また、通電部1011が、発熱体221〜224に対して通電する回数を「通電回数L」という。
図3の例では、通電回数Lは4回である。また、1ラインの通電は、直近に転送された印字データAについて行われる。
【0019】
また、「設定された通電回数」について説明する。一般的に、一度の多くの発熱体に通電を行うと、消費電力のピークが高くなる。プリンタごとに、消費電力のピーク(最大値)が決められている。つまり、プリンタごとに、一度で通電できる発熱体の最大数は決められており、通電回数の最小値が決められている。
【0020】
一方、1ラインの印字ごとに、通電回数を多くすると、印字品質が下がる場合がある。従って、通電回数の最大値が定められている。つまり、「消費電力のピーク値」と「印字品質」とはトレードオフの関係にある。つまり、通電回数は、発熱体での「消費電力でのピーク値」および「印字品質」などにより定められる。
【0021】
次に、本実施形態1のプリンタの処理について説明する。上述のように、ユーザにより、または、デフォルトとして、印字速度vが設定されている。搬送時間算出部1012は、設定された印字速度vから、搬送時間tmを算出する。ここで、印字速度vを維持しつつ、発熱体221〜224が印字を行うためには、以下の式(1)を満たす必要がある。
【0022】
1ライン通電時間tp≦搬送時間tm (1)
【0023】
上記式(1)を満たすように、1ライン通電時間調整部1013は、搬送時間tmと通電時間thとに基づいて、1ライン通電時間tpを調整する。ここで、「1ライン通電時間tpを調整する」とは、「1ライン通電時間tpを増加させる。」または「1ライン通電時間tpを減少させる。」ことである。また、上記式(1)を満たせば、印字速度vを維持しつつ、印字を行えることから、1ライン通電時間tpを減少させることが好ましい。1ライン通電時間調整部1013は、例えば、(i)通電回数Lを調整することや、(ii)通電時間thを調整することで、1ライン通電時間tpを調整する。
【0024】
本実施形態1のプリンタでは、上記式(1)を満たすように、1ライン通電時間tpを調整する。従って、本実施形態1のプリンタは、設定された印字速度vを変動させることなく、かつ、印字品質を低下させることなく、用紙に対して印字を行うことができる。また、以下の実施形態では、1ライン通電時間tpを調整する具体的な手法について説明する。
【0025】
[実施形態2]
次に、実施形態2のプリンタについて説明する。
図2に示すように、実施形態2の1ライン通電時間調整部1013は、通電回数算出部1015と、決定部1016と、候補算出部1021を有する。
【0026】
図4に、実施形態2のプリンタの処理フローを示す。
図4の処理フローは、1ラインの印字ごとに行われる処理である。まず、通電時間算出部1014は、印字環境に基づいて、通電時間thを求める(ステップS2)。ここで、印字環境とは、例えば、印字する用紙の種類、発熱体221〜224が発熱した場合の温度、発熱体221〜224に印加される電圧、印字速度vなどのうち、少なくとも1つである。そして、各印字環境と、通電時間thとを対応付けたテーブル表をRAM102などの記憶手段に記憶させておく。そして、通電時間算出部1014が、該テーブル表を参照して、現在の各印字環境と対応する通電時間thを求める。
【0027】
次に、搬送時間算出部1012が、搬送時間tmを求める(ステップS4)。搬送時間tmの求め方は、上記[実施形態1]と同様である。次に、通電回数算出部1015が、通電時間thと搬送時間tmとから、最大通電回数LMを求める(ステップS6)。ここで、最大通電回数LMとは、1ライン通電時間tpが搬送時間tmを超えない通電回数のうち、最大の通電回数をいう。最大通電回数LMは以下の式(2)で求めることができる。
LM=tm/th (2)
LMの値の、小数点以下は切り捨てとなる。
【0028】
次に、候補算出部1021が、最大通電回数LMから、通電のパターンの候補を算出する(ステップS8)。ここで、通電のパターンの候補として、本実施例のように発熱体が4つの場合(つまり、
図1のように、発熱体221、222、223、224)には、以下の通電のパターン1〜パターン4が算出される。
【0029】
パターン1とは、発熱体221、発熱体222、発熱体223、発熱体224、それぞれに1回ずつ通電する(つまり、通電回数Lが4回である)パターンである。パターン2とは、発熱体221および発熱体222に同時に1回の通電をし、発熱体223および発熱体224に同時に1回の通電をする(つまり、通電回数Lが2回である)パターンである。パターン3とは、発熱体221〜224に同時に1回の通電をする(つまり、通電回数Lが1回である)パターンである。パターン4とは、発熱体221および発熱体222に同時に1回の通電、発熱体223に1回の通電、発熱体224に1回の通電をする(つまり、通電回数Lが3回である)パターンである。
【0030】
なお、パターン4の他のパターンとして、発熱体221に1回の通電、発熱体222および発熱体223に同時に1回の通電、発熱体224に1回の通電を行うパターンと、発熱体221に1回の通電、発熱体222に1回の通電、発熱体223および発熱体224に同時に1回の通電を行うパターンと、がある。以下の説明では、パターン4は、発熱体221および発熱体222に同時に1回の通電、発熱体223に1回の通電、発熱体224に1回の通電をするパターンとする。
【0031】
図3は、通電回数が4回の場合の、タイムチャートである。また、
図5にパターン2(通電回数Lが2回の通電パターン)のタイムチャートを示し、
図6にパターン3(通電回数Lが1回の通電パターン)のタイムチャートを示す。
図17にパターン4(通電回数Lが3回の通電パターン)のタイムチャートを示す。なお、発熱体221、222、223に1回の通電を行い、発熱体224に1回の通電を行うパターン(つまり、2回の通電)も考えられるが、1回の多くの発熱体に通電すると、消費電力のピークが高くなる。従って、2回の通電を行う場合には、パターン2で行うことが好ましい。
【0032】
次に、決定部1016が、通電のパターンの候補から、通電回数設定部402で設定された通電回数に基づいて、通電のパターンを決定する(ステップS10)。例えば、設定された通電回数が「4回」である場合には、決定部1016は、パターン3を決定する。そして、通電部1011は、決定された通電パターンに基づいて、通電時間算出部1014で算出された通電時間thで発熱体221〜224に対して通電を行う(ステップS16)。
【0033】
決定部1016による、別の通電パターンの決定について、
図7を用いて説明する。
図7に破線で示すように、設定された通電回数が4回の場合には、1ライン通電時間tp(=4th)は、搬送時間tmを超えてしまう。上述のように、1ライン通電時間tpが搬送時間tmを超えると、設定された印字速度vで印字できなくなる。従って、通電回数が4回のパターン1は、除外される。そして、決定部1016は、残りの通電パターンの候補のうち、設定された通電回数と最も近い回数の通電パターンを決定する。
図7の例では、決定部1016は、残りの通電パターン(パターン2、パターン3、パターン4)のうち、設定された通電回数(4回)と最も近い回数の通電パターンを決定する。つまり、この例では、設定された通電回数(4回)と最も近い回数とは、「3回」であることから、パターン4が決定される。そして、通電部1011は、ステップS16の処理を行う。
【0034】
プリンタの印字手法として、ユーザなどにより設定された通電回数で、通電をすることが理想的である。しかし、設定された通電回数で、通電を行うと、1ライン通電時間tpが、搬送時間tmを超え、設定された印字速度vを維持できない場合がある。そこで、本実施形態2のプリンタのように、1ライン通電時間tpが搬送時間tmを超えない、通電のパターンの候補を算出する。そして、算出された通電のパターンの候補から、設定された通電回数の最も近い通電回数の通電パターンを決定する。従って、設定された通電回数に最も近く、かつ、設定された印字速度vを維持しつつ、印字を行うことができる。
【0035】
[実施形態3]
次に実施形態3のプリンタについて説明する。
図8に実施形態3のプリンタの処理フローを示し、
図9に、実施形態3のプリンタのタイムチャートを示す。まず、実施形態3のプリンタの前提について説明する。実施形態2のプリンタでは、
図7に示すように、MCU101は、1ラインの印字につき、クロック同期シリアル通信信号S111を用いて、一度にパターンデータを送信し、通電信号(S131〜S134)を各発熱体221〜224に送信していた。しかし、発熱体の数が少ない場合には、各発熱素子の制御を行うことが困難な場合がある。
【0036】
そこで、本実施形態3のMCU101は、
図9に示すように、パターンデータを複数回(
図9の例では、2回)に分けて、転送する。また、パターンデータの送信中は、通電信号S131〜S134が送信されている状態である。この実施形態3の制御を行うことで、発熱体の数が少ない場合でも、発熱素子の細やかな制御を行うことができる。本実施形態3のプリンタは、この制御のもと、印刷を行う。
【0037】
ステップS2で、通電時間算出部1014は、通電時間thを求める。そして、第1判定部1023は、通電時間thと転送時間tsとの大小を比較する。ここで、転送時間tsは、プリンタごとに予め定められている値である。第1判定部1023により、通電時間th<転送時間tsと判定された場合には(ステップS52のYes)、ステップS53に移行する。ステップS53では、th=tsとする。そして、ステップS4に移行する。
【0038】
また、第1判定部1023により、通電時間th≧転送時間tsと判定された場合には(ステップS52のNo)ステップS4に移行する。
【0039】
ステップS4では、搬送時間算出部1012が、搬送時間tmを算出する。そして、ステップS6では、通電回数算出部1015は、最大通電回数LMを算出する。具体的には、th<tsの場合には、最大通電回数LM=tm/tsとなり、th≧tsの場合には、最大通電回数LM=tm/thとなる。
【0040】
図9は、th>tsの場合のタイムチャートであり、
図18は、th<tsの場合のタイムチャートである。ここで、通電部1011による1回の通電に対して、シフトレジスタ201への1回のパターンデータの転送が必要である。従って、通電回数Lと転送回数は同値であり、最大通電回数と、最大転送回数は同値である。
【0041】
その後の処理は実施形態2と同様なので説明を省略する。
【0042】
この実施形態3であっても、実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0043】
[実施形態4]
次に実施形態4のプリンタについて説明する。通常、発色ドット数が多い通電では、通電時間を長くする必要がある。また、一般的に、1回の通電で発色させるドット数(発熱素子)が多くなるほど、発色に必要な電力(エネルギー)が大きくなる。従って、発色ドット数が少ない通電では、電力(エネルギー)削減のため、通電時間を短くする必要がある。従来のプリンタでは、発色ドット数が度々変更されると、印字品質を一定に保つことができない場合がある。そこで、実施形態4のプリンタであれば、発色ドット数が度々変更される場合であっても、印字品質を一定に保つことができる。
【0044】
図10に実施形態4のプリンタの処理フローを示す。
図10に示す処理フローでは、ステップS2とステップS4との間に、ステップS19が介在され、ステップS10とステップS16との間にステップS20とステップS22が介在される。
【0045】
ステップS2で、通電時間thが算出されると、通電時間調整部1019は、見込み印字率Q’から、見込み補正値R’を算出する。印字率は、1回の通電ごとに定められるものであり、以下の式(3)により定義される。
印字率=1回の通電の発色ドット数/全ドット数 (3)
【0046】
しかし、印字率は、1回の通電ごとに定められるものであるから、通電パターンが定められないと、印字率を求めることができない。
【0047】
そこで、印字率Qを見込み印字率Q’として見込み補正値R’を算出する。見込み印字率Q’は、各プリンタのデフォルトして定められているものであり、また、ユーザが設定できるようにしてもよい。見込み補正値R’は、
図11に示すテーブル表を用いて、求められる。
図11に示すテーブル表は、N個(Nは自然数)印字率とN個の補正値をそれぞれ対応付けたものである。
図11の例では、印字率Q
1と補正値R
1とが対応付けられている。
図11に示すテーブル表は予め、実験的に作成されるものである。通電時間調整部1019は、
図11に示すテーブル表を用いて、定められた見込み印字率Q’と対応する見込み補正率R’を求める。そして、通電時間調整部1019は、求められた見込み補正率R’を、ステップS2で算出された通電時間thに反映させる(ステップS19)。ここで、「通電時間thに、見込み補正率R’を反映させる」とは、「通電時間thに見込み補正率R’を加算することや乗算すること」などである。
【0048】
そして、ステップS4、S6、S8、S10の処理を行う。印字率算出部1022は、印字率を算出する(ステップS20)。ここで、印字率算出部1022は、1回の通電ごとの発色ドット数を認識している。また、全ドット数とは、発熱素子の総数であり、印字率算出部1022は認識している。従って、印字率算出部1022は、上記式(3)に基づいて、1回の通電ごとの印字率Qを求める。次に、通電時間調整部1019は、算出された印字率Qから、補正値Rを求める。補正値Rを求める手法の一例として、
図11に示すテーブル表を用いる。印字率算出部1022が、印字率Qを算出すると、通電時間調整部1019が、
図11に示すテーブル表を参照して、該算出された印字率Qに対応する補正値Rを求める。印字率Qが、テーブル表に存在しない場合には、テーブル表にある印字率のうち、最も近い印字率に対応する補正値を算出すればよい。
【0049】
通電時間調整部1019が、補正値Rを算出すると、通電時間thに、該補正値Rを反映させる(例えば、通電時間thに補正値Rを加算する)ことで、1通電ごとの通電時間thを調整する(ステップS22)。
【0050】
また、
図10の例では、実施形態2の処理フロー(
図4参照)に対して、ステップS20、ステップS22を付加した例を説明したが、実施形態3の処理フロー(
図8参照)に付加しても良い。また、
図10の例では、ステップS10の処理後に、ステップS20、S22を付加しているが、適切に、通電時間を調整できるのであれば、どのタイミングでステップS20、ステップS22の処理を行っても良い。
【0051】
本実施形態4のプリンタの通電時間調整部1019は、発熱体221〜224の発色ドット数に応じて、通電時間算出部1012により算出された通電時間を調整する。従って、印字率の異なる通電においても、各通電ごとに、通電時間を調整することから、印字品質を一定に保つことができる。
【0052】
また、上記では、実施形態4は、実施形態2のプリンタに適用した例を説明したが、実施形態3のプリンタに適用してもよい。
【0053】
[実施形態5]
次に、実施形態5のプリンタについて説明する。一般的に、印字ラインごとに、通電回数を変動させると、印字ラインごとに、通電タイミングの相違が生じることから、各印字ライン間に白スジが形成される場合がある。そこで、本実施形態5では、この白スジが入らないようにするプリンタを説明する。
【0054】
図12に、実施形態5のプリンタの処理フローを示し、
図13に、本実施形態5のタイムチャートを示す。
【0055】
図13に示すように、ステップS2、ステップS4、ステップS6の処理後に、オーバーラップ部1020は、オーバーラップさせる際の重複時間tkを求める(ステップS30)。オーバーラップの重複時間tkは、通電時間thと通電時間tmに基づいて求められる。
【0056】
ここで、重複時間tkとは、以下の式(4)により求める。
【0058】
上述の通り、式(4)中のthは、ステップS2で、通電時間算出部1014により求められる通電時間である。tmは、ステップS4で、搬送時間算出部1012により求められる搬送時間である。LMは、ステップS6で、通電回数算出部により求められる最大通電回数である。
【0059】
また、式(4)中の分子は「tm−th」は、
図13に示すように、搬送時間tmと通電時間thとの差分tdである。重複時間tkは、差分tdを最大通電回数LMで除算することで求められる。
【0060】
次に、候補算出部1021は、求められた重複時間tkについてオーバーラップさせた状態での通電パターンの候補を算出する(ステップS32)。決定部1016は、算出された通電パターンの候補から、設定された通電回数に基づいて、通電パターンを決定する(ステップS10)。そして、オーバーラップ部1020が、各通電が重複時間tk分、オーバーラップがされるように、決定された通電パターンで、通電部1011に対して通電を行わせる(ステップS16)。
図13の例では、オーバーラップ部1020は、4回の通電を通電部1011に行わせる。オーバーラップ部1020が、各通電をオーバーラップさせることで、異なる印字ライン間毎の通電タイミングの相違を緩和できる。従って、印字ラインごとに、通電回数が変動されても、白スジがライン間に形成されることなく、印字を行うことができる。
【0061】
[実施形態6]
次に、実施形態6のプリンタについて説明する。通電回数算出部1015で、算出された最大通電回数が1回の場合に、通電時間thが搬送時間tmより大きい場合がある。この場合には、設定された印字速度で印字すると、用紙に適切に印字できなくなる。実施形態6のプリンタでは、この場合であっても、印字速度を変動させることなく、印字することができる。
【0062】
図14に実施形態6のプリンタの処理フローを示す。
図14の処理フローでは、
図4の処理フローのステップS4とステップS6との間に、ステップS42、ステップS44を介在させたものである。
【0063】
ステップS4の処理終了後、第2判定部1026は、通電時間thと搬送時間tmとを比較する(ステップS42)。第2判定部1026が、通電時間th>搬送時間tmと判定した場合には、ステップS44に進む。通電時間th>搬送時間tmということは、通電回数が1回ということである。
【0064】
ステップS42でYesであると、通電部1011は、通電時間thを搬送時間tmとする(ステップS44)。つまり、通電時間th>搬送時間tmであることから、ステップS44では、通電時間thを搬送時間tmまで減少させることになる。そして、通電部1011は、通電時間th(=tm)で通電を行う(ステップS16)。なお、ステップS42で通電回数は1回であると判定されているため、全ての発熱体221〜224に対して、一度に通電する。
【0065】
また、ステップS42で、th≦tmであると判定されると、ステップS8以降の処理を行う。また、
図14では、ステップS44の処理後に、ステップS8に移行しているが、ステップS44の処理後は、ステップS16に移行してもよい。
【0066】
この実施形態6のように、最大通電回数が1回であり、通電時間th>搬送時間tmであっても、通電時間thを搬送時間tmまで減少させることで、設定された印字速度を維持できる。
【0067】
[実施形態7]
一般的に、印字ラインごとに、通電回数を大きく変動させると、印字品質の低下を招く場合がある。そこで、本実施形態7のプリンタでは、予め、通電回数の最大値Sを定めておく。そして、最大値Sを超えないように、通電回数を調整する。
【0068】
図15に実施形態7のプリンタの処理フローを示す。
図15の処理フローは
図4の処理フローのステップS6、ステップS8との間に、ステップS50とステップS60とを介在させたものである。
【0069】
予め、通電回数Lの最大値SをRAM102に記憶させておく。最大値Sは実験的に求められる。そして、ステップS6での最大通電回数LM算出処理終了後、第3判定部1027は、最大通電回数LMと最大値Sの大小を判定する。第3判定部1027が、最大通電回数LM>最大値Sであると判定すると(ステップS50のYes)、ステップS60に進む。
【0070】
そして、1ライン通電時間調整部1013は、最大通電回数LMを最大値Sとする(ステップS60)。LM>Sであることから、最大通電回数LMを最大値Sまで減少させる。そして、候補算出部1021が、ステップS8の処理である通電パターンの算出を行う。
【0071】
また、LM≦Sの場合には、ステップS8に移動し、ステップS8以降の処理を行う。
【0072】
この実施形態7のプリンタであれば、最大通電回数LMが最大値Sより大である場合には、最大通電回数LMを最大値Sとし、通電パターンの算出を行う。従って、通電回数の大きな変動を防ぐことができ、印字品質の低下を防ぐことができる。
【0073】
また、上述した各実施形態の構成は、可能な範囲において、組み合わせて実施してもよい。
【0074】
例えば、
図10のステップS20、ステップS22の処理は、
図8、
図12、
図14のステップS10とステップS16との間に介在させてもよい。また、
図14のステップS42、S44の処理は、
図8、
図10のステップS6とステップS8との間に介在させてもよい。また、
図15のステップS50とステップS60の処理は、
図8、
図10のステップS6とステップS8の間に介在させてもよく、
図14のステップS6とステップS42との間に介在させてもよい。