(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上端に位置するモータケーシングからヒートバリアの軸貫通部を通して下端に位置するポンプケーシングにかけて配設した回転軸の回転により、前記ポンプケーシング内に配設したインペラを回転させて熱水を前記ポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する一方、前記モータケーシング内の冷却水を循環冷却機構によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、
前記ヒートバリアの軸貫通部に、この軸貫通部を通した前記モータケーシングおよび前記ポンプケーシング間の流動を抑制する流動抑制機構を設け、
前記流動抑制機構は、前記回転軸に配設され、前記軸貫通部の内径より大径で、かつ、前記回転軸の回転時には遠心力で弾性的に変形して浮上する一方、回転軸の停止時には前記軸貫通部の上端外周部に自重で降下して接触するシール部材からなることを特徴とする循環ポンプ。
上端に位置するモータケーシングからヒートバリアの軸貫通部を通して下端に位置するポンプケーシングにかけて配設した回転軸の回転により、前記ポンプケーシング内に配設したインペラを回転させて熱水を前記ポンプケーシングの吸込部から吸い込んで吐出部から吐出する一方、前記モータケーシング内の冷却水を循環冷却機構によって冷却しながら循環させるようにした循環ポンプであって、
前記ヒートバリアの軸貫通部に、この軸貫通部を通した前記モータケーシングおよび前記ポンプケーシング間の流動を抑制する流動抑制機構を設け、
前記流動抑制機構は、前記回転軸に軸方向に沿って移動可能に配設され、前記軸貫通部の内径より大径で、かつ、この軸貫通部の上端外周部に付勢手段によって付勢されたシールリングからなり、このシールリングの上端から下端にかけて貫通する流路を設け、この流路内に浸入する冷却水の水圧により前記シールリングが前記付勢手段の付勢力に抗して上方移動可能としていることを特徴とする循環ポンプ。
前記モータケーシング内の圧力より高い供給圧力で外部冷却水を供給する外部冷却水供給機構を設け、この外部冷却水供給機構の給水管を前記モータケーシングに接続したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の循環ポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1乃至
図4は、本発明の第1実施形態に係る循環ポンプを示す。この循環ポンプは、上側に位置するモータケーシング10と、モータケーシング10の下部に位置するヒートバリア22と、ヒートバリア22の下部に位置するポンプケーシング33とを備えている。そして、これらの内部には回転軸37が回転可能に支持され、その下端にインペラ40が配設されるとともに、上端に冷却水循環用インペラ42が配設されている。また、モータケーシング10には、内部の冷却水を冷却して循環させる循環冷却機構43が接続されている。そして、本発明では、ヒートバリア22に形成される軸貫通部24に、回転軸37との間を通した双方向の流体移動を抑制する流動抑制機構30を設けたものである。
【0020】
モータケーシング10は、略円筒状をなすモータケーシング本体11の上端を冷却水用インペラケース15によって塞いたものである。モータケーシング本体11は、上端閉塞部の中心に軸方向に沿って貫通する回転軸支持部12が設けられている。この回転軸支持部12は、モータケーシング本体11内に向けて延びる円筒状をなし、その内周部には上側スリーブ13が配設されている。また、モータケーシング本体11には、内部中間位置にモータステータ14が配設されている。このモータステータ14は、薄板の電磁鋼板を積層してできた円筒状のコアブロックと、このコアブロックの内径側に配設された複数の溝を貫通して巻回したコイル束とで構成されている。
【0021】
冷却水用インペラケース15は略円錐筒形状をなし、その下端開口部に冷却水用インペラ配設部16が形成されている。この冷却水用インペラ配設部16の上部には、略円柱状をなす空間からなる注水ポケット17が形成されている。この注水ポケット17の外周部には、循環冷却機構43の接続管44を接続する注水口18が設けられるとともに、外部冷却水供給機構48の給水管49を接続する給水口19が設けられている。この冷却水用インペラケース15の上端開口は、モータカバー20により塞がれている。このモータカバー20には、ガス排出機構51の排出管52を接続する排出口21が設けられている。
【0022】
ヒートバリア22は、内部に断熱空間部23を備えたもので、モータケーシング10の下部に水密状態で配設されている。
図2に示すように、ヒートバリア22には、中心に位置するように軸方向に貫通する孔からなる軸貫通部24が設けられている。この軸貫通部24の上部は、拡径された回転軸支持部25とされている。この回転軸支持部25の内部には、回転軸37の下部を回転可能に支持する下側スリーブ26が配設されている。また、ヒートバリア22には、外周部から回転軸支持部25にかけて径方向に貫通する高圧冷却水路27が設けられている。この高圧冷却水路27の外側端部は、循環冷却機構43の接続管44を接続する注出口を構成する。
【0023】
さらに、ヒートバリア22には、断熱空間部23の上側に位置するように、低圧冷却水路28が設けられている。この低圧冷却水路28は、
図3に示すように、軸貫通部24および高圧冷却水路27と交差することなく、軸貫通部24の外周に位置するように穿設した複数(本実施形態では4本)の直線的な貫通孔29a〜29dにより構成される。例えば、第1の貫通孔29aの一端を流入口とし、他端を閉塞する。また、第1の貫通孔29aと交差するように第2の貫通孔29bを形成し、その両端を閉塞する。さらに、第2の貫通孔29bと交差するように第3の貫通孔29cを形成し、その両端を閉塞する。そして、第3の貫通孔29cと交差するように第4の貫通孔29dを形成し、その一端を閉塞し、他端を流出口とする。これにより、第1の貫通孔29aの一端の流入口から第4の貫通孔29dの他端の流出口にかけて連通した水路を形成する。そして、この水路に図示しない低圧冷却水供給機構からの低圧冷却水を通水することにより、モータケーシング10の側とポンプケーシング33の側との遮熱を図る構成としている。なお、
図1および
図2は、高圧冷却水路27および低圧冷却水路28を図示するために、形式的に対向位置に配置したものである。
【0024】
そして、本実施形態のヒートバリア22には、軸貫通部24に流体移動を抑制するための流動抑制機構30が設けられている。この流動抑制機構30は、軸貫通部24を通して、モータケーシング10からポンプケーシング33へ冷却水が流動すること、および、ポンプケーシング33からモータケーシング10へ熱水が流動することを抑制するためのものである。この双方向の流動を防止するために、本実施形態では、
図2に示すように、軸貫通部24の回転軸支持部25の下部に位置するように、ラビリンス形の軸シール31を配設している。この軸シール31は、軸貫通部24の内周部に配設された円筒形状のもので、その内周面には、環状をなすように複数の環状溝32が設けられている。
【0025】
ポンプケーシング33は、略半球形状をなす中空状のもので、ヒートバリア22の下部に水密状態で配設されている。このポンプケーシング33には、モータケーシング10の軸方向に沿って突出する円筒状の吸込部34が設けられるとともに、この吸込部34の軸方向に対して交差するように径方向外向きに突出する円筒状の吐出部35が設けられている。ポンプケーシング33の内部は、吸込部34から吸い込んだ熱水を吐出部35へ案内するためのガイドベーン36により区画されている。
【0026】
回転軸37は、中空状をなすモータケーシング10内からポンプケーシング33内にかけて、ヒートバリア22の軸貫通部24を貫通させて配設されたものである。本実施形態では、モータケーシング本体11内に配設される回転軸本体38と、ポンプケーシング33内に配設されるインペラ40に形成した軸部40aと、冷却水用インペラケース15内に配設される冷却水循環用インペラ42に形成した軸部42aとを、一体的に連結することにより1本の回転軸37を構成している。よって、ヒートバリア22の軸貫通部24を貫通する回転軸37とは、インペラ40の軸部40aである。勿論、これら軸部40a,42aは、回転軸本体38と一体成形することも可能である。
【0027】
この回転軸37は、上側スリーブ13と下側スリーブ26とで、回転可能に支持されている。また、回転軸37には、モータステータ14に対して径方向内側に位置するようにモータロータ39が配設されている。このモータロータ39は、電磁鋼板を積層した円筒状のブロックと、このブロックの表層側内部を貫通する複数の銅製のバーと、各バーの両端を一括して連結する銅製リングとで構成されている。そして、モータロータ39は、モータステータ14のコイルにより生じる回転磁界の影響を受け、銅製のバーに電磁誘導現象による電流が流れることにより、回転磁界との作用で電磁力が発生して回転されるものである。
【0028】
インペラ40は、ポンプケーシング33のガイドベーン36内に配設されている。このインペラ40には、円板状をなす主板から回転軸本体38に連結される軸部40aが突設されている。インペラ40の主板の下面側にはインペラ羽根41が設けられ、このインペラ羽根41により、ポンプケーシング33の吸込部34から吸い込んだ熱水を吐出部35から吐出する。
【0029】
冷却水循環用インペラ42は、回転軸37を回転させた稼働中に、モータケーシング10内の冷却水を循環供給する循環冷却機構43の一部を構成するもので、モータケーシング10の冷却水用インペラケース15内に配設されている。この冷却水循環用インペラ42には、円板状をなす主板から回転軸本体38に連結される軸部42aが突設されている。この冷却水循環用インペラ42は、注水ポケット17内を臨むように開口した吸込流路と、この吸込流路の下端から放射状をなすように径方向外向きに延びる吐出流路とが形成されている。この流路により冷却水循環用インペラ42は、上方の注水ポケット17内の冷却水を下向きに吸い込んで径方向外向きに吐出することにより、回転軸支持部12を通してモータケーシング本体11内で下向きの水流を付与する。
【0030】
循環冷却機構43は、モータケーシング10の上部である注水ポケット17の注水口18と、モータケーシング10の下部であるヒートバリア22の注出口とを、迂回するように接続する接続管44を備えている。この接続管44には、上向きに延びる部分にモータクーラ45が配設されている。このモータクーラ45は、低圧冷却水入口46と低圧冷却水出口47を備え、図示しない低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が供給されることにより、接続管44内を流動する昇温した冷却水を冷却するものである。
【0031】
外部冷却水供給機構48は、モータケーシング10内の圧力より高い供給圧力で外部冷却水を供給するもので、その給水管49がモータケーシング10の給水口19に接続されている。例えば、この外部冷却水供給機構48は、所定温度の冷却水をポンプによって所定圧力で供給可能としたものである。この給水管49には、モータケーシング10へ向けた外部冷却水の流動を許容し、逆向きの流動を阻止する逆止弁50が配設されている。この逆止弁50は、予期せぬ圧力変動によりモータケーシング10内の冷却水が外部冷却水供給機構48へ向けて逆流することを防止するものである。これにより、この逆流に伴ってポンプケーシング33内の熱水がモータケーシング10内に流入することを確実に防止できるようにしている。
【0032】
また、本実施形態の循環ポンプには、モータケーシング10の内部で発生した気体を外部に排出するためのガス排出機構51が更に設けられている。このガス排出機構51は、モータケーシング10の上端の排出口21に接続した排出管52と、この排出管52に介設したオリフィス53および逆止弁54とからなる。排出管52は、上向きに傾斜するように配管され、その先端が吸込側ボイラ配管55に分岐接続されている。オリフィス53は、モータケーシング10から流出する流体量を安定的に微量に維持するものである。逆止弁54は、モータケーシング10から吸込側ボイラ配管55へ向けた流動を許容し、逆向きの流動を阻止するものである。このように、モータケーシング10内で発生したガスを排出することにより、稼働中に回転軸37が空運転状態となることによる損傷を防止する。また、逆止弁54によって、予期しない圧力変動により、吸込側ボイラ配管55内の熱水がモータケーシング10内に流入することを確実に防止できる構成としている。
【0033】
このように構成した循環ポンプは、ポンプケーシング33の吸込部34に吸込側ボイラ配管55が接続され、ポンプケーシング33の吐出部35に吐出側ボイラ配管56が接続される。なお、本実施形態の循環ポンプの使用例の1つである発電設備では、吐出側ボイラ配管56が水を過熱して蒸気を生成するボイラに接続され、吸込側ボイラ配管55が蒸気を高温の熱水とする復水器に接続される。そして、発電設備は、ボイラで生成された蒸気で、発電機に連結したタービンを回転させる。タービンを回転させた蒸気は、復水器によって高温の熱水に戻される。この熱水を本実施形態の循環ポンプにより循環供給する。
【0034】
次に、第1実施形態の循環ポンプの動作について具体的に説明する。
【0035】
まず、モータケーシング10内には、回転軸37を回転させた稼働中、および、回転軸37を停止させた暖待機中のいずれの状態でも、外部冷却水供給機構48から外部冷却水が供給される。同様に、ヒートバリア22の低圧冷却水路28および循環冷却機構43のモータクーラ45には、低圧冷却水供給機構から低圧冷却水が常に供給されている。
【0036】
そして、稼働中には、回転軸37の回転により、インペラ40と冷却水循環用インペラ42が回転する。これにより、ポンプケーシング33では、インペラ40の回転により、吸込側ボイラ配管55を介して復水器から熱水を吸い込んで、ボイラへ熱水を循環供給する。また、モータケーシング10内では、冷却水循環用インペラ42の回転により、冷却水がモータケーシング10内で下向きに流動する水流が付与される。そして、モータケーシング10の下部の冷却水は、冷却水循環用インペラ42による送水作用により接続管44に吸い込まれ、モータクーラ45にて冷却されて注水ポケット17に循環供給される。
【0037】
この際、ヒートバリア22の軸貫通部24では、冷却水の循環供給作用によって、下側に位置する熱水と上側に位置する冷却水とが自然対流して、水の置換現象が生じることは殆どない。しかも、本実施形態では、軸貫通部24に配設した流動抑制機構30を構成する軸シール31の流体抵抗により、モータケーシング10からポンプケーシング33へ向けた流体移動、および、ポンプケーシング33からモータケーシング10へ向けた流体移動の両方を、確実に抑制できる。
【0038】
また、本実施形態の循環ポンプは、外部冷却水の供給により、モータケーシング10の内部では余剰の冷却水が外部に漏出する。この漏出は、下端のヒートバリア22の軸貫通部24を通したポンプケーシング33と、上端の排出管52を通した吸込側ボイラ配管55となる。そして、これらからの流出量は、外部冷却水供給機構48による供給圧力と、流動抑制機構30を構成する軸シール31およびオリフィス53の設定とにより調整可能である。よって、ポンプケーシング33内の熱水がモータケーシング10に流入することを確実に防止しつつ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング33や吸込側ボイラ配管55へ漏出する水量を抑制できる。
【0039】
一方、暖待機中には、回転軸37が停止されるため、インペラ40と冷却水循環用インペラ42が停止している。これにより、ポンプケーシング33では、熱水の循環供給が停止される。また、モータケーシング10では、冷却水循環用インペラ42による冷却水の水流(循環)が停止される。よって、従来では、この暖待機状態でモータケーシング10およびポンプケーシング33の間で水の置換現象が生じる。
【0040】
しかし、本実施形態では、モータケーシング10およびポンプケーシング33の間に形成するヒートバリア22の軸貫通部24に、流動抑制機構30を構成する軸シール31を配設している。よって、この軸シール31による流体抵抗により、モータケーシング10からポンプケーシング33に冷却水が流入すること、および、ポンプケーシング33からモータケーシング10に熱水が流入することを抑制できる。
【0041】
しかも、本実施形態の循環ポンプは、暖待機中にも稼働時と同様にモータケーシング10内に外部冷却水供給機構48によって外部冷却水が供給される。そのため、モータケーシング10内では、
図4に示すように、外部冷却水が注水ポケット17に供給されると、冷却水循環用インペラ42を介してモータケーシング10内を下向きに流れる第1水流と、循環冷却機構43の接続管44を通して下向きに流れる第2水流と、排出管52を通して吸込側ボイラ配管55へ向けて流れる第3水流とが生じる。そのうち、第1水流および第2水流は、ヒートバリア22の軸貫通部24で合流し、この軸貫通部24を通してポンプケーシング33内に流入する。よって、ポンプケーシング33内の熱水がモータケーシング10に流入することを確実に防止しつつ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング33や吸込側ボイラ配管55へ漏出する水量を抑制できる。
【0042】
また、モータケーシング10内では、気体の1つである溶解ガスが経時的に自然発生することがある。そして、このガスは、稼働時に回転軸37を空運転現象を生じさせる。しかし、本実施形態では、モータケーシング10の上端に排出管52を接続している。そして、モータケーシング10内で発生したガスは、稼働中および暖待機中のいずれの状態でも、モータケーシング10の上端である注水ポケット17に溜まり、排出管52を通して吸込側ボイラ配管55へ排出される。具体的には、吸込側ボイラ配管55は、稼働中および暖待機中のいずれでもモータケーシング10の内圧より高くはならない。そのため、常にモータケーシング10から吸込側ボイラ配管55へ向けた流れが生じ、逆流を防止することができる。しかも、本実施形態では、外部冷却水供給機構48による外部冷却水の供給により、モータケーシング10内の圧力が高くなるため、ガスが排出管52を通して吸込側ボイラ配管55へ確実に排出される。
【0043】
このように、本発明の循環ポンプでは、ヒートバリア22の軸貫通部24に流動を抑制する流動抑制機構30を設けているため、ポンプケーシング33内の熱水がモータケーシング10内に流入することを抑制できるとともに、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング33内に流入することを抑制できる。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を防止できる。また、ポンプケーシング33内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を防止できる。
【0044】
しかも、本実施形態では、水の置換現象が生じる暖待機中に、外部冷却水供給機構48の給水管49からモータケーシング10内に外部冷却水が供給され、モータケーシング10内の余剰の冷却水がヒートバリア22の軸貫通部24を通ってポンプケーシング33へ流出する。よって、ポンプケーシング33内の熱水がモータケーシング10内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を確実に防止できる。
【0045】
そして、本発明の循環ポンプは、モータケーシング10の下部にポンプケーシング33を位置させた正立式のものであるため、設備の構築時には、モータケーシング10および循環冷却機構43を配設するための大掛かりな基礎や建屋が不要であるため、設備構築費用を低減できる。
【0046】
なお、この第1実施形態では、外部冷却水供給機構48によって外部冷却水を稼働中および暖待機中のいずれでも供給する構成としたが、暖待機中だけ供給する構成としてもよい。また、外部冷却水を稼働中および暖待機中のいずれでも供給する場合には、冷却水循環用インペラ42は設けない構成としてもよい。
【0047】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態の循環ポンプを示す。この第2実施形態では、外部冷却水供給機構48の代わりに、暖待機中でもモータケーシング10内の冷却水を強制循環させるためのポンプ57を、循環冷却機構43の接続管44に配設した点で、第1実施形態と大きく相違している。
【0048】
ポンプ57は、循環冷却機構43の接続管44において、モータクーラ45の上流側に介設したキャンドモータ式ポンプからなる。このポンプ57は、上流側であるモータケーシング10内の冷却水を吸い込んで、モータクーラ45を介して下流側である注水ポケット17に循環供給する。なお、このキャンドモータ式のポンプ57は、モータのコイルを缶(キャン)に収めて防水し、水中でも使用できるようにしたものである。
【0049】
この第2実施形態の循環ポンプを稼働させると第1実施形態と同様に、ポンプケーシング33では、インペラ40の回転により、熱水を吸込側ボイラ配管55から吸い込んでボイラへ循環供給する。また、モータケーシング10内では、冷却水循環用インペラ42の回転により、冷却水が下向きに流動する水流が付与され、その冷却水を下部の接続管44から吸い込んでモータクーラ45にて冷却して注水ポケット17に循環供給する。そして、この循環冷却機構43による冷却水の循環流により、軸貫通部24を通したモータケーシング10内の冷却水とポンプケーシング33内の熱水との自然対流が防止される。また、軸貫通部24に配設した流動抑制機構30を構成する軸シール31による流体抵抗により、自然対流を確実に抑制できる。
【0050】
一方、暖待機中には、回転軸37が停止されるため、ポンプケーシング33では、熱水の循環供給が停止される。また、モータケーシング10では、冷却水循環用インペラ42による冷却水の水流(循環)が停止される。この状態で、循環冷却機構43の接続管44に介設したポンプ57を駆動させる。これにより、モータケーシング10内では、稼働中と同様に、モータケーシング10の下部の冷却水が接続管44に吸い込まれ、モータクーラ45にて冷却されて注水ポケット17に循環供給される。その結果、この暖待機中においても同様に、冷却水の循環流によって、軸貫通部24を通したモータケーシング10内の冷却水とポンプケーシング33内の熱水との自然対流が防止される。また、軸貫通部24に配設した流動抑制機構30を構成する軸シール31による流体抵抗により、自然対流を確実に抑制できる。
【0051】
また、モータケーシング10内で発生したガスは、第1実施形態と同様に、排出管52を通して吸込側ボイラ配管55へ排出される。具体的には、吸込側ボイラ配管55は、第1実施形態と同様に、稼働中および暖待機中のいずれでもモータケーシング10の内圧より高くはならない。そのため、常にモータケーシング10から吸込側ボイラ配管55へ向けた流れが生じ、気体を排出できる。但し、第2実施形態では、気体および液体が排出管52を通して吸込側ボイラ配管55へ排出されると、その排出量に応じた熱水が軸貫通部24を通してポンプケーシング33からモータケーシング10内に流入する。その量は、軸シール31およびオリフィス53によって極微量となるように設定されている。しかも、流入した熱水は、モータケーシング10に直接流入するのではなく、接続管44を介してモータクーラ45にて冷却されて上端の注入ポケットから注入される。よって、モータケーシング10内の冷却水の温度が昇温することはない。
【0052】
このように、第2実施形態の循環ポンプは、ヒートバリア22の軸貫通部24に配設した軸シール31により、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0053】
しかも、第2実施形態では、モータケーシング10内の冷却水をポンプ57によって強制循環可能に構成しているため、ポンプケーシング33内の熱水がモータケーシング10内に流入することはないうえ、モータケーシング10内の冷却水がポンプケーシング33内に流入することはない。その結果、モータケーシング10内の温度が異常上昇することによる電気絶縁物の損傷を確実に防止できるうえ、ポンプケーシング33内の熱水が冷却されることによるボイラ熱量の損失を確実に防止できる。
【0054】
なお、第2実施形態では、循環冷却機構43の1つとして冷却水循環用インペラ42を設け、稼働中には冷却水循環用インペラ42により冷却水を循環供給し、暖待機中にはポンプ57により冷却水を循環供給する構成としたが、冷却水循環用インペラ42を設けない構成とし、稼働中および暖待機中のいずれでもポンプ57により冷却水を循環供給する構成としてもよい。
【0055】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態の循環ポンプを示す。この第3実施形態では、流動抑制機構30を軸シール31の代わりにヒートバリア22の軸貫通部24の内周部に設けた複数の環状溝58により構成している。なお、流動抑制機構30として環状溝58を設ける第3実施形態の構成は、第1実施形態のように外部冷却水供給機構48を設ける構成、および、第2実施形態のように強制循環用のポンプ57を設ける構成のいずれでも併用可能である。
【0056】
このような流動抑制機構30を設けた第3実施形態の循環ポンプは、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。なお、環状溝58の代わりに環状突部を設けてもよい。また、この環状溝58または環状突部は、ヒートバリア22の軸貫通部24に設ける代わりに、回転軸37を構成する軸部40aの外周部に設けてもよい。
【0057】
(第4実施形態)
図7は第4実施形態の循環ポンプを示す。この第4実施形態では、流動抑制機構30を、ヒートバリア22の内周部に設けた複数の環状溝58と、回転軸37を構成する軸部40aの外周部に設けた複数の環状突部59とで構成している。環状突部59は、軸部40aの外周部に装着するためのスリーブ60から径方向外向きに突出するように設けられている。この環状突部59は、環状溝58の内部に位置され、この環状溝58との間に所定の隙間を形成するように組み付けられる。なお、流動抑制機構30として環状溝58と環状突部59を設ける第4実施形態の構成は、第1実施形態のように外部冷却水供給機構48を設ける構成、および、第2実施形態のように強制循環用のポンプ57を設ける構成のいずれでも併用可能である。
【0058】
このような流動抑制機構30を設けた第4実施形態の循環ポンプは、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。なお、環状溝58を回転軸37を構成する軸部40aの外周部に設け、環状突部59をヒートバリア22の軸貫通部24の内周部に設けてもよい。
【0059】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態の循環ポンプを示す。この第5実施形態では、流動抑制機構30を、弾性的に変形可能なシール部材61によって構成している。このシール部材61は、回転軸37を構成するインペラ40の軸部40aに配設された円錐筒状のものである。具体的には、
図9に示すように、シール部材61は、軸貫通部24の回転軸支持部25内に位置するように配設されるもので、その下端部の外径は軸貫通部24の内径より大きく形成されている。また、シール部材61の上端は、軸部40aの外径と略同一の内径であり、その上端には軸部40aに固着するための溝を備えた装着部62が設けられている。さらに、シール部材61の下端には、遠心力が加えられることにより弾性的に変形して浮上させるための錘63が周方向に所定間隔をもって配設されている。
【0060】
このシール部材61は、半円環状をなす一対の固定具64A,64Bにより軸部40aに固着される。この固定具64A,64Bは、軸部40aの外径と略同一の内径の枠体を備えている。この固定具64A,64Bの内周部には、シール部材61の装着部62を外嵌して圧接固定するための装着溝65が設けられている。また、一方の固定具64Aには、他方の固定具64Bと突き合う端面にネジ孔66が設けられる一方、固定具64Bにはネジ孔66に対して軸方向に一致するネジ挿通孔67が設けられている。
【0061】
このような流動抑制機構30を設けた第5実施形態の循環ポンプは、稼働により回転軸37が回転すると、各実施形態と同様に、ポンプケーシング33では、インペラ40の回転により、熱水を吸込側ボイラ配管55から吸い込んでボイラへ循環供給する。また、モータケーシング10内では、冷却水循環用インペラ42の回転により、冷却水が下向きに流動する水流が付与され、冷却水を接続管44から吸い込んでモータクーラ45にて冷却して注水ポケット17に循環供給する。これにより、モータケーシング10内では、循環冷却機構43による冷却水の循環流によって、軸貫通部24を通した自然対流が防止される。また、シール部材61は、回転軸37の回転で錘63に径方向外向きの遠心力が加わることにより、
図10に示すように、弾性的に変形して浮上する。その結果、軸貫通部24の端面との摺接が回避される。
【0062】
一方、暖待機中には、回転軸37が停止されるため、ポンプケーシング33では、熱水の循環供給が停止される。また、モータケーシング10では、冷却水循環用インペラ42による冷却水の水流(循環)が停止される。同時に、シール部材61に加わる遠心力も解除されるため、シール部材61は、軸貫通部24の上端外周部に自重で降下して接触する。これにより、軸貫通部24を通したモータケーシング10からポンプケーシング33への冷却水の流入、および、ポンプケーシング33からモータケーシング10への熱水の流入を防止できる。
【0063】
しかも、この第5実施形態では、第1実施形態に示す外部冷却水供給機構48をモータケーシング10に接続し、この外部冷却水供給機構48を暖待機中に動作させることにより、モータケーシング10内に形成される水流によってシール部材61が軸貫通部24の上端外周部に密着するように作用する。同様に、第2実施形態に示す強制循環用のポンプ57を循環冷却機構43の接続管44に配設し、このポンプ57を暖待機中に動作させることにより、モータケーシング10内に形成される水流によってシール部材61が軸貫通部24の上端外周部に密着するように作用する。その結果、モータケーシング10およびポンプケーシング33間の自然対流を確実に防止できる。
【0064】
このように、第5実施形態の循環ポンプは、各実施形態と同様の作用を得ることができるうえ、第1実施形態に示す外部冷却水供給機構48または第2実施形態に示す強制循環用のポンプ57と併用(組み合わせ)することにより、暖待機中での自然対流を確実に防止できる。また、第5実施形態のシール部材61は、稼働時には回転軸37の回転によって加わる遠心力で、軸貫通部24の端面との摺接を防止できるため、摩耗による損傷を抑制できる。
【0065】
(第6実施形態)
図11および
図12は第6実施形態の循環ポンプを示す。この第6実施形態では、流動抑制機構30を、軸貫通部24の上端外周部に付勢手段であるスプリング73によって付勢したシールリング70により構成している。このシールリング70は、回転軸37を構成するインペラ40の軸部40aの上端に固定したシールスリーブ68に外嵌することにより、回転軸37の軸方向に沿って移動可能に構成されている。なお、このシールスリーブ68の上端には、径方向外向きに突出するスプリング受部69が形成されている。
【0066】
シールリング70は、軸貫通部24の回転軸支持部25内に位置するように配設されるもので、その下端部の外径は軸貫通部24の内径より大きく形成されている。このシールリング70の内径は、シールスリーブ68の外径より大きく形成されている。また、シールリング70には、下端面に上向きに窪む水溜凹部71が形成されるとともに、上端から水溜凹部71(下端)にかけて貫通する浮上用流路72が設けられている。そして、このシールリング70とシールスリーブ68との間には、シールリング70を軸貫通部24の上端外周部へ向けて付勢するスプリング73が配設されている。
【0067】
このような流動抑制機構30を設けた第6実施形態の循環ポンプは、稼働により回転軸37が回転すると、各実施形態と同様に、ポンプケーシング33では、インペラ40の回転により、熱水を吸込側ボイラ配管55から吸い込んでボイラへ循環供給する。また、モータケーシング10内では、冷却水循環用インペラ42の回転により、冷却水が下向きに流動する水流が付与され、冷却水を接続管44から吸い込んでモータクーラ45にて冷却して注水ポケット17に循環供給する。これにより、モータケーシング10内では、循環冷却機構43による冷却水の循環流により、軸貫通部24を通した自然対流が防止される。また、この状態でシールリング70は、循環冷却機構43による冷却水の水流が、浮上用流路72に浸入することにより水溜凹部71内の圧力が高まる。そして、この浮上用流路72内に浸入する冷却水の水圧により、スプリング73の付勢力に抗してシールリング70が上方へ移動する。その結果、第5実施形態と同様に、シールリング70と軸貫通部24の端面との摺接が回避される。
【0068】
一方、暖待機中には、回転軸37が停止されるため、ポンプケーシング33では、熱水の循環供給が停止される。また、モータケーシング10では、冷却水循環用インペラ42による冷却水の水流(循環)が停止される。同時に、シールリング70に加わる水圧も解除されるため、シールリング70は、軸貫通部24の上端外周部にスプリング73の付勢力で接触する。これにより、軸貫通部24を通したモータケーシング10からポンプケーシング33への冷却水の流入、および、ポンプケーシング33からモータケーシング10への熱水の流入を確実に防止できる。
【0069】
なお、この第5実施形態では、第1実施形態に示す外部冷却水供給機構48、および、第2実施形態に示す強制循環用のポンプ57は、必ずしも併用する必要はない。併用する場合には、外部冷却水供給機構48による外部冷却水の供給圧力、および、ポンプ57による冷却水の循環供給圧力(水流)は、シールリング70がスプリング73の付勢力に抗して上昇しない圧力とする。
【0070】
このように、第6実施形態の循環ポンプは、各実施形態と同様の作用を得ることができる。また、第6実施形態のシールリング70は、稼働時の冷却水の循環流の水圧で軸貫通部24の端面との摺接を防止できるため、摩耗による損傷を抑制できる。
【0071】
なお、本発明の循環ポンプは、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、前記実施形態では、ポンプケーシング33にガイドベーン36を配設したが、このガイドベーン36は配設しない構成としてもよい。さらに、ポンプケーシング33は、吸込部34の軸方向に対して吐出部35を径方向外向きに突設したものに限られず、螺旋状の流水路を有する渦巻状のものであってもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、モータケーシング10内に配設するモータ機構として、モータステータ14とモータロータ39を有し、回転磁界の作用で回転するものを用いたが、磁石の有無を含み、モータ機構の種類は希望に応じて変更が可能である。
【0074】
そして、前記実施形態では、本発明の循環ポンプを発電設備に使用する例を挙げて説明したが、使用用途は発電設備に限られるものではない。