【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 刊行物名 第37回炭素材料学会年会要旨集、発行日 平成22年11月30日、発行所 炭素材料学会、該当頁 第182〜183頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、白金触媒に代替可能な性能を有する、バイオマス由来の燃料電池用電極触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み、検討を重ねた結果、金属担持セルロースを含窒素化合物とともに通電加熱法により熱処理することで、優れた燃料電池用電極触媒が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の燃料電池用電極触媒の製造方法を提供するものである。
項1. 金属担持セルロース又はその炭化物と含窒素化合物を含む混合物を通電加熱することを特徴とする、燃料電池用電極触媒の製造方法。
項2. 前記金属が鉄、コバルトまたはニッケルである、項1に記載の方法。
項3. 前記含窒素化合物がメラミンである、項1又は2に記載の方法。
項4. 含窒素化合物の比率が、50〜85重量%である項1〜4のいずれかに記載の方法。
項5. 前記金属担持セルロースが、セルロースにジケテンを反応させ、その後金属化合物の溶液を作用させて金属を担持させたものである。項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非常に優れた性能を有する燃料電池用電極触媒を提供できる。本発明で得られる触媒は、鉄、コバルトなどの安価かつ安全な金属の錯体を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】アセトアセチル化セルロース(CAA)と金属のキレートモデルを示す。
【
図2】パルス通電加熱法に用いる装置の概略を示す。
【
図3】75重量%メラミンとアセトアセチル化セルロース(CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた比較例1の燃料電池用電極触媒を示すTEM像である。
【
図4】75重量%メラミンとアセトアセチル化セルロース錯体(CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた燃料電池用電極触媒のC1sスペクトルを示す。
【
図5】75重量%メラミンとアセトアセチル化セルロース錯体(CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた燃料電池用電極触媒のN1sスペクトルを示す。
【
図6】75重量%メラミンと鉄−アセトアセチル化セルロース(Fe-CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた比較例1の燃料電池用電極触媒を示すTEM像である。
【
図7】75重量%メラミンと鉄−アセトアセチル化セルロース(Fe-CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた燃料電池用電極触媒のC1sスペクトルを示す。
【
図8】75重量%メラミンと鉄−アセトアセチル化セルロース(Fe-CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた燃料電池用電極触媒のN1sスペクトルを示す。
【
図9】75重量%メラミンとコバルト−アセトアセチル化セルロース(Co-CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた比較例1の燃料電池用電極触媒を示すTEM像である。
【
図10】75重量%メラミンとコバルト−アセトアセチル化セルロース(Co-CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた燃料電池用電極触媒のC1sスペクトルを示す。
【
図11】75重量%メラミンとコバルト−アセトアセチル化セルロース(Co-CAA)の900℃でのパルス通電加熱法による炭素化で得られた燃料電池用電極触媒のN1sスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法で得られる燃料電池用電極触媒は酸素還元活性を有する。これは、通電加熱法により得られる焼結物が含窒素多環芳香族構造を有し、そこに組み込まれた3配位の窒素原子を有することが、本発明の優れた触媒活性に重要である。また、本発明の燃料電池用電極触媒は金属が配位しており、この金属の触媒作用も酸素還元活性に寄与する。
【0012】
本発明で使用されるセルロースは、木材,竹,草,紙,もしくは,パルプ等のセルロースであり、セルロースにはヘミセルロース、リグニンが含まれていてもよい。
【0013】
セルロースは水不溶性のセルロースが通常用いられるが、水溶性のセルロースを使用することもできる。セルロースは修飾剤と反応させるために、水、有機溶媒などに浸漬し、修飾剤のぬれ性を改善して反応を促進するのが好ましい。
【0014】
セルロースは、そのままでは金属と錯体を形成できないので、水酸基(OH)を修飾剤で修飾することが必要である。このような修飾剤としては、例えばジケテン、クロル酢酸エチル、ブロム酢酸エチルなどのハロゲン化酢酸のメチル、エチル、ブチル等のアルキルエステル(ハロゲンはCl、Br又はI)とその後の酸またはアルカリによるエステル加水分解、エーテル化による縮合反応などが挙げられ、ジケテンが好ましい。修飾剤は、セルロース100gに対し、250〜300g程度用いて行うことができる。修飾剤により、COOH、アセトアセチル基などの金属イオンを配位可能な官能基がセルロースに導入される。
【0015】
セルロースに配位される金属種としては、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、Ti、Cr、V,Zn、Ga,Ge、Mo、Zr、Ta、Pd、Cd、Sn等が挙げられ、Fe、Co、Cu、Niが好ましく、Fe、Coがより好ましい。金属は、セルロース100gに対し100mg〜50g程度、好ましくは300mg〜30g程度、より好ましくは500mg〜10g程度、さらに好ましくは2g〜8g程度、特に好ましくは3g〜6g程度配位させるのが好ましい。これらの金属イオンが配位されたセルロースは、含窒素化合物とともに通電加熱法により処理される。
【0016】
金属化合物は、金属イオンを修飾セルロースに配位させるためのものであり、水に溶解する化合物である。このような金属化合物としては、金属のハロゲン化物(F、Cl,Br,I)、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属錯体などが挙げられる。セルロースはこれらの金属塩の水溶液あるいは水混和性の有機溶媒溶液に浸漬し、金属担持セルロースとすることができる。金属化合物の濃度は特に限定されないが、例えば重量で70〜90%程度であり、浸漬時間は10分〜10時間程度である。
【0017】
含窒素化合物としては、窒素を含有する有機化合物である限り特に限定されないが、例えばメラミン、ピリジン、キノリン、ヒドラジン、ポリアクリロニトリル、メラミン樹脂、ナイロン、ゼラチン、コラーゲンなどを原料として用いることができる。含窒素芳香族化合物、例えばメラミン、ピリジン、アニリン、キノリン、メラミン樹脂、芳香族ナイロンなどが好ましく、メラミン又はメラミン樹脂が特に好ましい。メラミンは、単量体で使用してもよく、加熱により形成される3量体、あるいはメラミン樹脂などの多量体で使用されてもよい。
【0018】
本発明の通電加熱法は、減圧状態もしくは窒素気流下などの条件下で発生するガスを取り去りながら実施するのが好ましい。このようにすることで、得られる焼結体は、酸素還元活性を有するものになる。
【0019】
金属担持セルロースまたはそれを予備加熱した焼成炭化物は、必要な場合には、ボールミル、ジェットミル、ビーズミル、摩砕ミル、振動ミル、遊星形ミル、サンドミルなどの粉砕装置を用いて適当な大きさに粉砕し、含窒素化合物と混合し、通電加熱処理するのが望ましい。本明細書において、「金属担持セルロース」には、このような予備加熱した焼成炭化物が包含される。
【0020】
金属担持セルロースは、予備加熱処理により金属を含有する焼成炭化物とし、これと含窒素化合物を混合してさらに通電加熱法により熱処理して、2段階で本発明の触媒を得ることができるが、金属担持セルロースを含窒素化合物と直接混合し、通電加熱工程により1段階で本発明の触媒を得ることもできる。
【0021】
含窒素化合物とともに、含ホウ素化合物(例えば有機ホウ素化合物、有機ホウ酸化合物など)、含リン素化合物(有機リン化合物、有機リン酸化合物)を配合して通電加熱処理することにより、窒素とともにホウ素(B)あるいはリン(P)が芳香環に組み込まれた燃料電池用電極触媒を得ることができる。
【0022】
本発明で使用する金属は、金属イオンの形でキレート錯体を形成するため熱安定性が高く、通電加熱法により熱処理の過程で100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下(例えば5〜20nm程度)の粒子として燃料電池用電極触媒に組み込まれていることが好ましい。これらの微小粒子としての金属は通電加熱処理を続けたときに炭素で置き換わることで空洞が形成される。空洞の大きさは、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下(例えば5〜20nm程度である。空洞が電極触媒に形成されることで、酸素還元活性が向上され得る。
【0023】
金属担持セルロースを予備加熱/焼成して得られた焼成炭化物は乱雑な結晶配列を有する無定形炭素材料であり難黒鉛化炭素材料であるにも拘らず、含窒素化合物とともに通電加熱により焼結された焼結物は部分的に緻密化されて良質なミクロ黒鉛化構造を有するものとなる。このミクロ黒鉛構造のエッジ中に、3配位の窒素原子が組み込まれることで、酸素還元活性を有するものになる。
【0024】
従って、この通電加熱焼結物は、燃料電池用の触媒用途に用いることが可能になる。
【0025】
本発明において、金属担持セルロースの予備加熱は、無酸素条件下に約300℃〜約800℃、好ましくはまで温度域で、1〜48時間加熱処理を行なえばよい。この条件での炭素化では低分子化合物が気化し残った金属担持セルロース中での炭素比率が増加するため、金属担持セルロースが黒くなり、煙が出なくなってくる。
【0026】
金属担持セルロースは、800℃以下の温度で予備加熱することで完全な黒鉛化は進行せず、後で含窒素化合物とともに通電加熱した場合に、窒素原子がミクロ黒鉛構造のエッジ中に組み込まれることを促進する。また、予備加熱により金属担持セルロースを炭化しておくことで、後に含窒素化合物と焼結したときに、混合物の流動を防ぐことができる。或いは、金属担持セルロースを予備加熱(炭素化)なしに直接含窒素化合物と混合してもよい。この場合、金属担持セルロース由来の水などのガス成分が通電加熱工程においてより多く発生することになるが、このようなガス成分は窒素気流下或いは減圧条件下で除去すればよい。
【0027】
通電加熱法で型内に充填するのはバインダを用いないで焼成炭化物の粉末と含窒素化合物のみを用いるのが好ましい。
【0028】
金属担持セルロースの予備加熱は、約300℃〜約800℃の低温度域での焼成により焼成炭化物とされる。そして、焼成炭化物である粉末を含窒素化合物とともに型内で加圧しながら又は常圧下に直接電圧を加えることにより粉末粒子間にミクロ放電が生じ、これにより、粉末粒子の表面にプラズマが発生してその表面が清浄にされて活性化する。これと同時に、粉末粒子間にジュール熱が発生して粉末粒子同士が熱接合して型に対応する所定形状に成形された状態の焼結体が製造される。つまり、上記通電により金属担持セルロース粉末または焼成炭化物が内部から加熱され、その加熱された粒子同士の接触が加圧により促進されて互いに接合、すなわち、部分焼結が行われてミクロ黒鉛構造(結晶子)が形成される。このため、従来の電気炉を用いて焼成を行なう場合と比べて、焼結と成形とが同時に行なわれて成形のための特別な装置が不要となる上、電気炉内に入れたり、電気炉外に出したりする工程が省略される。しかも、電気炉で昇温させる場合と比べ、大幅に短時間(数分間)で焼成及び焼結を完了させることができる上、上記の炭素化がより低い温度で生じることになる。加えて、その焼結のための電気エネルギーも大幅に低減させることが可能になる。これにより、金属担持セルロースを含む物質から導電性材料等の用途に用いる焼成炭化物の焼結体を容易に製造することが可能になる。
【0029】
炭素化された金属担持セルロースは、通電加熱の前に必要に応じて粉砕されて微粒子とされる。
【0030】
金属担持セルロースまたはその焼成炭化物粉末(微粒子)の平均粒子径は、X線小角散乱法により測定した粒子径は、一次粒子として10〜300nm程度、好ましくは30〜200nm程度である。金属担持セルロースまたはその焼成炭化物の細孔径は、0.3〜80nm程度、好ましくは0.5〜80nm程度である。
【0031】
金属担持セルロースまたはその焼成炭化物の微粒子が大きすぎると窒素原子の構造中への組み込みが制限され、微粒子が小さすぎると飛散性などで問題を生じる可能性がある。
【0032】
本発明では、上記のような通電加熱法を含窒素化合物の存在下で行い、窒素原子をミクロ黒鉛構造の特に3価の窒素原子が六角網面の中に組み込まれることが重要である。このような芳香族構造に窒素原子が組み込まれるために、環内の窒素原子、特に芳香環内に窒素原子を有する含窒素化合物が好ましく用いられる。
【0033】
通電加熱時の温度は、300〜1600℃程度、好ましくは400℃〜1500℃程度、より好ましくは700℃〜1300℃程度、さらに好ましくは750〜1100℃程度、特に好ましくは800〜1000℃程度、最も好ましくは850〜950℃程度である。通電加熱時の温度が400℃程度であると、メラミン等の含窒素化合物が少し残存するが、400℃から温度を上げていくと含窒素化合物は少なくなり、900℃での通電加熱時には含窒素化合物は実質的に残存せず、カソード電極に有利である。
【0034】
金属担持セルロースの焼成炭化物:含窒素化合物は、これらの混合物を100重量%として、70〜5重量%:30〜95重量%、好ましくは65〜10重量%:35〜90重量%、より好ましくは60〜15重量%:40〜85重量%程度である。含窒素化合物の割合は、該化合物の窒素含量が高い化合物(例えばメラミン)であればより少ない割合でよく、窒素の含量が低い化合物(例えばキノリン)であれば、より多くの割合の含窒素化合物を配合することができる。
【0035】
本発明では、窒素原子が芳香族の3配位の位置に組み込まれる必要があるため、含窒素化合物を比較的多く使用する。
【0036】
以下、本発明の通電加熱プロセスの実施形態を図面に基いて説明する。
【0037】
図1は、本発明の1つの実施形態での通電加熱法に用いる装置を示し、電極(Electrode)に接続された黒鉛棒(パンチ)とダイ(Die)とで囲まれた空間に金属担持セルロースまたはその焼成炭化物粉末と含窒素化合物を充填し、通電加熱する。通電加熱は、1000アンペア以下、好ましくは700〜800アンペアの電流、1〜10V、好ましくは2〜4Vの電圧で実施できる。通電加熱時に焼成炭化物粉末と含窒素化合物には圧力を加えてもよいし、例えば黒鉛棒を除き2つの電極と、2つの電極に接するより長いダイで囲まれる空間に金属担持セルロースの焼成炭化物粉末と含窒素化合物を充填し、通電加熱を行うことで、非加圧下に実施することもできる。通電加熱の圧力条件は、例えば0〜50MPa程度である。
【実施例】
【0038】
以下本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は以下の実施例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【0039】
実施例1−2及び比較例1
セルロース粉末(MCC:Microcrystaline Cellulose、Aldrich社製)50gを500mlビーカーに入れ、セルロースが全て浸る程度の蒸留水300mlを加え、パラフィルムで栓をして室温で約1日放置した。減圧濾過でセルロースを単離した後、次はアセトンに1日程度浸漬させた。その後アセトン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、DMAcの順にそれぞれ1日程度浸漬させ、最後に真空乾燥を行い、溶媒を完全に除去した。500mL二口フラスコに前処理をしたMCCを0.8g、DMAc を30mL、塩化リチウムを1.5g、および回転子を加えたフラスコに栓をし、室温でマグネティックスターラーを用いて24時間攪拌し,無色透明の均一系セルロース溶液を得た。均一系セルロース溶液の入ったフラスコに窒素充填した風船を備えた還流冷却管をつなぎ、攪拌しながら、ジケテン2.28ml(6当量)を滴下し80℃で30分間加熱攪拌した。反応液は透明な溶液から赤色の溶液へ変化が見られた。生成物溶液の温度が室温まで下がったところで、攪拌しながらメタノール120mLをゆっくり滴下して生成物を析出させた。生成物を洗浄するため、室温で約1時間撹拌した。生成物の単離は桐山ロートを用いて減圧濾過を行い、生成物は濾紙上でメタノールによりよく洗浄した。その後、メタノール洗浄と濾過を2回繰り返し、生成物をスクリュー管に移し変えた後、最後に真空乾燥を行い、溶媒を完全に除去し、アセトアセチル化セルロース(CAA:Cellulose Acetoacetate)を得た。ビーカーに1Mの酢酸緩衝液でpHを約5に調整した0.2mol/L塩化コバルト(II)水溶液、あるいは0.2mol/L塩化鉄(III)水溶液10mlに、CAA 0.1gを加え24時間撹拌した。その後試料と金属溶液(金属は鉄(実施例1)又はコバルト(実施例2))の懸濁液を桐山ロートでろ過し、ロート上で蒸留水洗浄をし、真空乾燥によって乾燥し金属担持CAAを得た。
【0040】
金属担持CAA0.5gと含窒素化合物用のメラミン1.5gをボールミルミキサーで500rpm、10分間混合し、炭素化用試料とした。金属を担持していないCAA(比較例1)についても同様にして炭素化試料を調製した。通電加熱装置として、
図2に示されるような直パルス通電加熱装置を用いた。上記のFe担持CAA、Co担持CAAもしくは金属非担持CAA0.5gと含窒素化合物(メラミン)1.5gを混合した通電加熱用試料0.7gを筒状の黒鉛型に入れ、黒鉛型の下側のみ黒鉛棒を介して、窒素雰囲気下で黒鉛型に0.45tの圧力を加え、直接電流を付加することにより昇温速度20℃/ 分、焼結温度600℃/ 900℃、保持時間15分で炭素化を行った。焼結終了後、室温になるまで放置し粉末状の焼結試料(燃料電池用電極触媒)を得た。
【0041】
通電加熱による焼結温度が600℃であってもFeまたはCoを担持した焼結試料(燃料電池用電極触媒)では黒鉛化が進行していた。これは金属による触媒作用が関与すると考えられる。
【0042】
炭素化後の試料(燃料電池用電極触媒)はXPS(X線光電子分光法)により元素組成および炭素、窒素の結合状態を評価し、C1sスペクトル及びN1sスペクトルを得た(
図4,5,7,8,10,11)を得た。また、分析電子顕微鏡(FETEM-EELS、SEM-EDX)により表面微細構造を観察した。900℃で炭素化後の燃料電池用電極触媒のTEM画像を
図3,6,9に各々示す。
【0043】
焼結後の各サンプル中には90-95%のカーボンが含まれていて、TEMとXPSのC1sで、カーボンの化学結合状態を評価することができる。
【0044】
TEM写真(
図3,6,9)ではカーボンの骨格を観察することができる。ミクログラファイト層(平行の線)が多くみられるということは、カーボン間の二重結合が多く含まれていること、即ち電気伝導が良いことを意味し、カソード電極では有利である。Feを含むサンプルでは(
図6)では約20-30nmのFe粒子のまわりにミクログラファイト層の発達が見られる。Coを含むサンプル(
図9)では金属キレート錯体由来のミクログラファイト層からなるシェル構造が多数見られ、シェルの空隙が約20-30nmのメソ孔からなり、酸素還元反応活性には有利に働くと考えられる。
【0045】
XPSのN1sスペクトル(
図5,8,11)からカーボンと窒素の結合状態がわかる。
【0046】
金属が含まれていない比較例のサンプルではミクログラファイト構造が発達しておらず(アモルファス)、典型的な乱層構造を示し、電気伝導度は小さいことが予想される。