(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693346
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】エバポレータ
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20150312BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20150312BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28F9/02 301Z
F28F9/22
F25B39/02 C
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-90845(P2011-90845)
(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公開番号】特開2012-47438(P2012-47438A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2014年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-172038(P2010-172038)
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 理
(72)【発明者】
【氏名】東山 直久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 基之
(72)【発明者】
【氏名】平山 貴司
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−267686(JP,A)
【文献】
特開平09−189498(JP,A)
【文献】
特開2005−195316(JP,A)
【文献】
特開2003−207229(JP,A)
【文献】
米国特許第04309987(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F25B 39/02
F28F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなり、かつ通風方向に並んで設けられた2列のチューブ列と、風下側チューブ列の上下両側に設けられた風下側上下両ヘッダ部と、風上側チューブ列の上下両側に設けられた風上側上下両ヘッダ部とを備えており、両チューブ列に、それぞれ複数の熱交換チューブからなる複数のチューブ群が設けられ、風下側上下両ヘッダ部に、風下側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風下側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風上側上下両ヘッダ部に、風上側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風上側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風下側上下両ヘッダ部のうちのいずれか一方のヘッダ部における一端の区画に冷媒入口が設けられ、風上側上下両ヘッダ部のうちの冷媒入口が設けられた風下側ヘッダ部と同じ側のヘッダ部における冷媒入口と同一端の区画に冷媒出口が設けられ、風下側チューブ列における冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向と、風上側チューブ列における冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向とが同一方向となっており、通風方向に並んで設けられるとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である上記2つの最遠チューブ群により1つのパスが構成されているエバポレータにおいて、
風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画に、当該風下側最遠区画内を熱交換チューブが臨む第1空間と、第1空間から隔てられかつ風下側最遠区画の冷媒入口側に隣り合う区画から冷媒が流入する第2空間とに分ける分流用抵抗部材が設けられ、分流用抵抗部材に冷媒通過穴が形成され、風下側最遠区画の第2空間と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風上側最遠区画とが冷媒連通路によって通じさせられているエバポレータ。
【請求項2】
風下側最遠区画が設けられたヘッダ部に、風下側最遠区画の第1空間への冷媒の流れを遮断する流れ遮断部材が設けられている請求項1記載のエバポレータ。
【請求項3】
冷媒通過穴の合計断面積をA、冷媒連通路の合計断面積をBとした場合、B>Aの関係を満たす請求項1または2記載のエバポレータ。
【請求項4】
風下側最遠区画の第2空間から風上側最遠区画内への冷媒の流入を促進する促進部材を備えている請求項1〜3のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項5】
促進部材が、風下側最遠区画が設けられたヘッダ部に設けられている請求項4記載のエバポレータ。
【請求項6】
促進部材が、風下側最遠区画の第2空間内に冷媒が流入する入口部分の風下側に設けられるとともに、上記第2空間内の風下側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる請求項5記載のエバポレータ。
【請求項7】
促進部材が、風下側最遠区画の第2空間内における熱交換チューブの並び方向の中間部でかつ熱交換チューブ側の部分に設けられるとともに、上記第2空間内の熱交換チューブ側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる請求項4記載のエバポレータ。
【請求項8】
風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第3のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第4および第5のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第3区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第4および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第4および第5区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第5区画に冷媒出口が設けられ、
第1チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を、上下いずれかのうちの冷媒入口が位置する側から反対側に流れる第1パスとなり、第2チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第2パスとなり、第3および第4チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスと同方向に流れる第3パスとなり、第5チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第4パスとなっており、第3パスが、熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である第3および第4チューブ群が通風方向に並んで設けられることにより構成され、
風下側チューブ列の第3チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側のヘッダ部の第3区画が、第3チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であるとともに、当該第3区画に、当該第3区画内を第1空間と第2空間とに分ける分流用抵抗部材が設けられており、当該第3区画の第2空間に、冷媒入口が設けられた側のヘッダ部の第2区画から冷媒が流入するようになされている請求項1〜7のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項9】
風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第4のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第5〜第7のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第4区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第5〜第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第5〜第7区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第7区画に冷媒出口が設けられ、
第1チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を、上下いずれかのうちの冷媒入口が位置する側から反対側に流れる第1パスとなり、第2チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第2パスとなり、第3チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスと同方向に流れる第3パスとなり、第4および第5チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第4パスとなり、第6チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスと同方向に流れる第5パスとなり、第7チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第6パスとなっており、第4パスが、熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である第4および第5チューブ群が通風方向に並んで設けられることにより構成され、
風下側チューブ列の第4チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側と反対側のヘッダ部の第4区画が、第4チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であるとともに、当該第4区画に、当該第4区画内を第1空間と第2空間とに分ける分流用抵抗部材が設けられており、当該第4区画の第2空間に、冷媒入口が設けられた側とは反対側のヘッダ部の第3区画から冷媒が流入するようになされている請求項1〜7のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項10】
冷媒入口が、風下側上ヘッダ部に設けられ、冷媒出口が、風上側上ヘッダ部に設けられている請求項1〜9のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルであるカーエアコンに好適に使用されるエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図2、
図3、
図10および
図11の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
この種のエバポレータとして、上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなり、かつ通風方向に並んで設けられた2列のチューブ列と、風下側チューブ列の上下両側に設けられた風下側上下両ヘッダ部と、風上側チューブ列の上下両側に設けられた風上側上下両ヘッダ部とを備えており、風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる3以上のチューブ群が設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなりかつ風下側チューブ列のチューブ群の数よりも1つ少ないチューブ群が設けられ、風下側上下両ヘッダ部に、風下側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風下側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風上側上下両ヘッダ部に、風上側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風上側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風下側上下両ヘッダ部のうちのいずれか一方のヘッダ部における一端の区画に冷媒入口が設けられ、風上側上下両ヘッダ部のうちの冷媒入口が設けられた風下側ヘッダ部と同じ側のヘッダ部における冷媒入口と同一端の区画に冷媒出口が設けられ、風下側チューブ列における冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向と、風上側チューブ列における冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向とが同一方向となっており、通風方向に並んで設けられるとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である上記2つの最遠チューブ群により1つのパスが構成されているエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のエバポレータによれば、スーパーヒート領域のある最終パスでの通路抵抗の増加を抑制することが可能になる。
【0005】
ところで、特許文献1記載の形式のエバポレータにおいては、冷却性能の向上を目的として、冷媒入口および冷媒出口から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられて1つのパスを構成しているとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化することが求められる。
【0006】
そこで、特許文献1記載の1つのエバポレータおいては、風下側最遠区画と風上側最遠区画とが、熱交換コア部の横方向に突出するように設けられた連通手段により通じさせられている。しかしながら、この場合、連通手段が熱交換コア部の横方向に突出しているので、エバポレータを配置する際にデッドスペースが生じるという問題がある。
【0007】
また、上特許文献1記載の他の1つのエバポレータにおいては、風下側最遠区画と風上側最遠区画との間に仕切壁が設けられるとともに、当該仕切壁に両最遠区画どうしを通じさせる連通穴が形成され、連通穴が、熱交換チューブにおける両最遠区画側の端部よりも上下方向外側に形成されている。しかしながら、両最遠区画が熱交換チューブの上側に位置する場合、連通穴が熱交換チューブの上端よりも上方に位置するので、風下側最遠区画内に流入した冷媒は、重力の影響によって、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブ内に多量に流入する。したがって、通風方向に並んで設けられて1つのパスを構成しているとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つの最遠チューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化する効果が不十分である。一方、両最遠区画が熱交換チューブの下側に位置する場合、連通穴が熱交換チューブの下端よりも下方に位置するので、冷媒流量が変化した際に、風下側最遠区画内に流入した冷媒は、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブ内に多量に流入する。したがって、通風方向に並んで設けられて1つのパスを構成しているとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つの最遠チューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化する効果が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−156532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、上記問題を解決し、冷媒入口および冷媒出口から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられて1つのパスを構成しているとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化して冷却性能を向上しうるエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0011】
1)上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなり、かつ通風方向に並んで設けられた2列のチューブ列と、風下側チューブ列の上下両側に設けられた風下側上下両ヘッダ部と、風上側チューブ列の上下両側に設けられた風上側上下両ヘッダ部とを備えており、両チューブ列に、それぞれ複数の熱交換チューブからなる複数のチューブ群が設けられ、風下側上下両ヘッダ部に、風下側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風下側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風上側上下両ヘッダ部に、風上側チューブ列のチューブ群の数と同数の区画が設けられるとともに、各区画に風上側チューブ列の各チューブ群の熱交換チューブが通じさせられ、風下側上下両ヘッダ部のうちのいずれか一方のヘッダ部における一端の区画に冷媒入口が設けられ、風上側上下両ヘッダ部のうちの冷媒入口が設けられた風下側ヘッダ部と同じ側のヘッダ部における冷媒入口と同一端の区画に冷媒出口が設けられ、風下側チューブ列における冷媒入口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向と、風上側チューブ列における冷媒出口から最も遠い位置にある最遠チューブ群の熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向とが同一方向となっており、通風方向に並んで設けられるとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である上記2つの最遠チューブ群により1つのパスが構成されているエバポレータにおいて、
風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画に、当該風下側最遠区画内を熱交換チューブが臨む第1空間と、第1空間から隔てられかつ風下側最遠区画の冷媒入口側に隣り合う区画から冷媒が流入する第2空間とに分ける分流用抵抗部材が設けられ、分流用抵抗部材に冷媒通過穴が形成され、風下側最遠区画の第2空間と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風上側最遠区画とが冷媒連通路によって通じさせられているエバポレータ。
【0012】
2)風下側最遠区画が設けられたヘッダ部に、風下側最遠区画の第1空間への冷媒の流れを遮断する流れ遮断部材が設けられている上記1)記載のエバポレータ。
【0013】
3)冷媒通過穴の合計断面積をA、冷媒連通路の合計断面積をBとした場合、B>Aの関係を満たす上記1)または2)記載のエバポレータ。
【0014】
4)風下側最遠区画の第2空間から風上側最遠区画内への冷媒の流入を促進する促進部材を備えている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0015】
5)促進部材が、風下側最遠区画が設けられたヘッダ部に設けられている上記4)記載のエバポレータ。
【0016】
6)促進部材が、風下側最遠区画の第2空間内に冷媒が流入する入口部分の風下側に設けられるとともに、上記第2空間内の風下側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる上記5)記載のエバポレータ。
【0017】
7)促進部材が、風下側最遠区画の第2空間内における熱交換チューブの並び方向の中間部でかつ熱交換チューブ側の部分に設けられるとともに、上記第2空間内の熱交換チューブ側への冷媒の流入を阻害する邪魔板からなる上記4)記載のエバポレータ。
【0018】
8)風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第3のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第4および第5のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第3チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第3区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第4および第5チューブ群の熱交換チューブが通じる第4および第5区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第5区画に冷媒出口が設けられ、
第1チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を、上下いずれかのうちの冷媒入口が位置する側から反対側に流れる第1パスとなり、第2チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第2パスとなり、第3および第4チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスと同方向に流れる第3パスとなり、第5チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第4パスとなっており、第3パスが、熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である第3および第4チューブ群が通風方向に並んで設けられることにより構成され、
風下側チューブ列の第3チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側のヘッダ部の第3区画が、第3チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であるとともに、当該第3区画に、当該第3区画内を第1空間と第2空間とに分ける分流用抵抗部材が設けられており、当該第3区画の第2空間に、冷媒入口が設けられた側のヘッダ部の第2区画から冷媒が流入するようになされている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0019】
9)風下側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第1〜第4のチューブ群が、冷媒入口側の端部から他端部側に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列に、複数の熱交換チューブからなる第5〜第7のチューブ群が、冷媒出口側とは反対側の端部から冷媒出口側の端部に向かって並んで設けられ、
風下側上下両ヘッダ部に、それぞれ第1〜第4チューブ群の熱交換チューブが通じる第1〜第4区画が設けられ、風上側上下両ヘッダ部に、それぞれ第5〜第7チューブ群の熱交換チューブが通じる第5〜第7区画が設けられ、風下側の上下いずれかのヘッダ部の第1区画に冷媒入口が設けられるとともに、風上側の上下いずれかのうちの冷媒入口が設けられた側に位置するヘッダ部の第7区画に冷媒出口が設けられ、
第1チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を、上下いずれかのうちの冷媒入口が位置する側から反対側に流れる第1パスとなり、第2チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第2パスとなり、第3チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスと同方向に流れる第3パスとなり、第4および第5チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第4パスとなり、第6チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスと同方向に流れる第5パスとなり、第7チューブ群が、冷媒が熱交換チューブ内を第1パスとは逆方向に流れる第6パスとなっており、第4パスが、熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である第4および第5チューブ群が通風方向に並んで設けられることにより構成され、
風下側チューブ列の第4チューブ群が最遠チューブ群であり、風下側の上下いずれかのヘッダ部における冷媒入口が設けられた側と反対側のヘッダ部の第4区画が、第4チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の最遠区画であるとともに、当該第4区画に、当該第4区画内を第1空間と第2空間とに分ける分流用抵抗部材が設けられており、当該第4区画の第2空間に、冷媒入口が設けられた側とは反対側のヘッダ部の第3区画から冷媒が流入するようになされている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0020】
10)冷媒入口が、風下側上ヘッダ部に設けられ、冷媒出口が、風上側上ヘッダ部に設けられている上記1)〜9)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【発明の効果】
【0021】
上記1)〜10)のエバポレータによれば、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風下側最遠区画に、当該風下側最遠区画内を熱交換チューブが臨む第1空間と、第1空間から隔てられかつ風下側最遠区画の冷媒入口側に隣り合う区画から冷媒が流入する第2空間とに分ける分流用抵抗部材が設けられ、分流用抵抗部材に冷媒通過穴が形成され、風下側最遠区画の第2空間と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブが通じさせられた冷媒流れ方向上流側の風上側最遠区画とが冷媒連通路によって通じさせられているので、エバポレータを配置する際にデッドスペースが生じるおそれはない。
【0022】
また、冷媒は、風下側最遠区画の第2空間内に流入した後、冷媒連通路を通って風上側最遠区画内に流入して風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブ内に流入するのと同時に、分流用抵抗部材の冷媒通過穴を通って第1空間内に入った後風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブ内に流入する。そして、風下側最遠区画の第2空間内に流入した冷媒には、分流用抵抗部材によって第1空間内への流れに対する抵抗が付与されるので、風下側最遠区画および風上側最遠区画が熱交換チューブの上側に位置する場合には、風下側最遠区画内に流入した冷媒が、重力の影響により風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに多量に流入することが抑制される。したがって、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが均一化される。これとは逆に、風下側最遠区画および風上側最遠区画が熱交換チューブの下側に位置する場合には、冷媒の流量が変動した際にも、風下側最遠区画に流入した冷媒が、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブ内に多量に流入することが抑制される。したがって、風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが均一化される。その結果、冷媒入口および冷媒出口から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられて1つのパスを構成しているとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つの最遠チューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を均一化することが可能になる。
【0023】
上記3)のエバポレータによれば、冷媒入口および冷媒出口から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられて1つのパスを構成しているとともに熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つのチューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を効果的に均一化することができる。
【0024】
上記4)〜7)のエバポレータによれば、風下側最遠区画の第2空間内から風上側最遠区画内への冷媒の流入を促進する促進部材を備えているので、風下側最遠区画の第2空間内から風上側最遠区画内への冷媒の流入が促進されることになり、風下側最遠区画の第2空間内と風上側最遠区画内に流入する冷媒量が均一化される。したがって、風下側最遠区画に接続された風下側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量と、風上側最遠区画に接続された風上側チューブ列の最遠チューブ群の熱交換チューブに流入する冷媒量とが効果的に均一化される。その結果、冷媒入口および冷媒出口から最も遠い位置にあり、かつ通風方向に並んで設けられているとともに、熱交換チューブ内の冷媒の流れ方向が同一方向である2つの最遠チューブ群の熱交換チューブ内を流れる冷媒量を効果的に均一化することが可能になって、エバポレータの冷却性能がさらに向上する。
【0025】
上記6)および7)のエバポレータによれば、風下側最遠区画に流入した冷媒の風上側最遠区画内への流入を促進する促進部材を、比較的簡単に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明の実施形態1のエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図2】一部を省略した
図1のA−A線断面図である。
【
図3】一部を省略した
図1のB−B線断面図である。
【
図6】
図1のエバポレータにおける冷媒の流れを示す図である。
【
図7】実施形態1のエバポレータの風下側上ヘッダ部の第1の変形例を示す部分斜視図である。
【
図8】実施形態1のエバポレータの風下側上ヘッダ部の第2の変形例を示す部分斜視図である。
【
図9】実施形態1のエバポレータの風下側上ヘッダ部の第3の変形例を示す部分斜視図である。
【
図10】この発明の実施形態2のエバポレータを示す風下側上下両ヘッダ部の部分での後方から前方を見た一部省略垂直断面図である。
【
図11】この発明の実施形態2のエバポレータを示す風上側上下両ヘッダ部の部分での後方から前方を見た一部省略垂直断面図である。
【
図14】
図10のエバポレータにおける冷媒の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。以下に述べる実施形態は、この発明によるエバポレータをカーエアコンを構成する冷凍サイクルに適用したものである。
【0028】
全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0029】
なお、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0030】
また、以下の説明において、隣接する熱交換チューブどうしの間の通風間隙を流れる空気の下流側(
図1、
図4、
図5、
図12および
図13に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとし、
図2〜
図5および
図10〜
図13の左右を左右というものとする。
【0031】
実施形態1
この実施形態は
図1〜
図6に示すものである。
図1はエバポレータの全体構成を示し、
図2〜
図5はその要部の構成を示す。また、
図6は
図1のエバポレータにおける冷媒の流れを示す。
【0032】
図1において、エバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置されたアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)の間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0033】
第1ヘッダタンク(2)は、風下側(前側)に位置する風下側ヘッダ部(5)と、風上側(後側)に位置しかつ風下側ヘッダ部(5)に一体化された風上側ヘッダ部(6)とを備えている。ここでは、風下側ヘッダ部(5)と風上側ヘッダ部(6)とは、第1ヘッダタンク(2)を仕切部(2a)により前後に仕切ることによって設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、風下側(前側)に位置する風下側ヘッダ部(7)と、風上側(後側)に位置しかつ風下側ヘッダ部(7)に一体化された風上側ヘッダ部(8)とを備えている。ここでは、風下側ヘッダ部(7)と風上側ヘッダ部(8)とは、第2ヘッダタンク(3)を仕切部(3a)により前後に仕切ることによって設けられている。
【0034】
以下の説明において、第1ヘッダタンク(2)の風下側ヘッダ部(5)を風下側上ヘッダ部、第2ヘッダタンク(3)の風下側ヘッダ部(7)を風下側下ヘッダ部、第1ヘッダタンク(2)の風上側ヘッダ部(6)を風上側上ヘッダ部、第2ヘッダタンク(3)の風上側ヘッダ部(8)を風上側下ヘッダ部というものとする。
【0035】
熱交換コア部(4)は、幅方向を通風方向に向けるとともに左右方向(通風方向と直角をなす方向)に間隔をおいて配置され、かつ上下方向にのびる複数のアルミニウム製扁平状熱交換チューブ(9)からなるチューブ列(11)(12)が、前後方向に並んで2列設けられ、各チューブ列(11)(12)の隣接する熱交換チューブ(9)どうしの間の通風間隙および左右両端の熱交換チューブ(9)の外側に、それぞれ前後両チューブ列(11)(12)の熱交換チューブ(9)に跨るようにアルミニウム製コルゲートフィン(13)が配置されて熱交換チューブ(9)にろう付され、左右両端のコルゲートフィン(13)の外側にそれぞれアルミニウム製サイドプレート(14)が配置されてコルゲートフィン(13)にろう付されることにより構成されている。熱交換チューブ(9)はアルミニウム押出形材製であって、幅方向に並んだ複数の冷媒通路を有している。風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)の上下両端部は、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)に連通状に接続され、風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)の上下両端部は、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)に連通状に接続されている。なお、風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)の数と風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)の数とは等しくなっている。
【0036】
図2〜
図5に示すように、風下側チューブ列(11)には、複数の熱交換チューブ(9)からなる3つのチューブ群(11A)(11B)(11C)が、右端から左端に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列(12)には、複数の熱交換チューブ(9)からなる第4および第5の2つ(風下側チューブ列(11)のチューブ群の数よりも1つ少ない数)のチューブ群(12A)(12B)が、左端から右端に向かって並んで設けられている。
【0037】
風下側上下両ヘッダ部(5)(7)に、それぞれ風下側チューブ列(11)のチューブ群(11A)(11B)(11C)と同数でかつ各チューブ群(11A)(11B)(11C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(15)(16)(17)および(18)(19)(21)が設けられている。風下側上ヘッダ部(5)における右端の区画(15)の右端部に冷媒入口(22)が設けられている。風下側チューブ列(11)の3つのチューブ群(11A)(11B)(11C)を冷媒入口(22)側端部(右端部)から他端部(左端部)に向かって第1〜第3チューブ群といい、第1〜第3チューブ群(11A)(11B)(11C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(15)(16)(17)および(18)(19)(21)を冷媒入口(22)側端部(右端部)から他端部(左端部)に向かって第1〜第3区画というものとする。第3チューブ群(11C)が、風下側チューブ列(11)における冷媒入口(22)から最も遠い位置にある最遠チューブ群であり、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)が、第3チューブ群(11C)の熱交換チューブ(9)が通じさせられた冷媒流れ方向上流側(上側)の風下側最遠区画である。
【0038】
風上側上下両ヘッダ部(6)(8)に、それぞれ風上側チューブ列(12)のチューブ群(12A)(12B)と同数でかつ各チューブ群(12A)(12B)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(23)(24)および(25)(26)が設けられている。風上側上ヘッダ部(6)における右端の区画(24)の右端部(冷媒入口(22)と同一端部)に冷媒出口(27)が設けられている。風上側チューブ列(12)の2つのチューブ群(12A)(12B)を冷媒出口(27)とは反対側の端部(左端部)から冷媒出口側(27)の端部(右端部)に向かって第4〜第5チューブ群といい、第4〜第5チューブ群(12A)(12B)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(23)(24)および(25)(26)を冷媒出口(27)とは反対側の端部(左端部)から冷媒出口側(27)の端部(右端部)に向かって第4〜第5区画というものとする。第4チューブ群(12A)が、風上側チューブ列(12)における冷媒出口(27)から最も遠い位置にある最遠チューブ群であり、風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)が、第4チューブ群(12A)が通じさせられた冷媒流れ方向上流側(上側)の風上側最遠区画である。
【0039】
なお、風下側チューブ列(11)の第1および第2チューブ群(11A)(11B)を構成する熱交換チューブ(9)の合計数は、風上側チューブ列(12)の第5チューブ群(12B)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっており、風下側チューブ列(11)の第3チューブ群(11C)を構成する熱交換チューブ(9)の数は、風上側チューブ列(12)の第4チューブ群(12A)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっている。また、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第1区画(15)(18)と第2区画(16)(19)の左右方向の合計長さは、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第5区画(24)(26)の左右方向の長さと等しく、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第3区画(17)(21)の左右方向の長さは、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第4区画(23)(25)の左右方向の長さと等しくなっている。
【0040】
風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(15)と第2区画(16)との間には仕切壁(33)が設けられ、これにより両区画(15)(16)は非連通状態となっている。風下側上ヘッダ部(5)の風下側最遠区画である第3区画(17)内に、第3区画(17)内を熱交換チューブ(9)が臨む下側の第1空間(38)と、第1空間(38)から隔てられた上側の第2空間(37)とに分ける板状の分流用抵抗部材(36)が設けられている。風下側上ヘッダ部(5)の第2区画(16)と第3区画(17)との間には、第3区画(17)の第1空間(38)の右端開口を閉鎖し、かつ第2区画(16)から第1空間(38)への冷媒の流れを遮断する流れ遮断部材(41)が設けられている。また、第3区画(17)の第2空間(37)の右端部が全体に開口することにより、第2区画(16)と第3区画(17)の第2空間(37)とは連通状態となっており、第3区画(17)の第2空間(37)内に、第3区画(17)の冷媒入口(22)側に隣り合う第2区画(16)から冷媒が流入する。ここで、第3区画(17)の第2空間(37)の右端部の開口が、第3区画(17)の第2空間(37)内に冷媒を流入させる入口部分(45)となっている。さらに、分流用抵抗部材(36)に、左右方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴(39)が形成されており、これにより両空間(37)(38)が通じさせられている。
【0041】
風下側下ヘッダ部(7)の第1区画(18)と第2区画(19)とは連通状態となっている。また、風下側下ヘッダ部(7)の第2区画(19)と第3区画(21)との間には仕切壁(34)が設けられ、これにより両区画(19)(21)は非連通状態となっている。
【0042】
風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)と第5区画(24)との間には仕切壁(35)が設けられ、これにより両区画(23)(24)は非連通状態となっている。
【0043】
風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(26)内に、第5区画(26)内を上空間(26A)と下空間(26B)とに分ける板状の分流用抵抗部材(42)が設けられており、分流用抵抗部材(42)に、左右方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴(43)が形成されている。また、風上側下ヘッダ部(8)の第4区画(25)と第5区画(26)との間には、第5区画(26)の上空間(26A)の左端開口を閉鎖し、かつ第4区画(25)から第5区画(26)の下空間(26B)への冷媒の流れを促進する板状の流れ促進部材(44)が設けられている。また、第5区画(26)の下空間(26B)の左端部が全体に開口することにより、第4区画(25)と第5区画(26)の下空間(26B)とは連通状態となっており、第5区画(26)の下空間(26B)内に、第4区画(25)から冷媒が流入する。なお、第4区画(25)から第5区画(26)の下空間(26B)への冷媒の流れの促進を妨げないのであれば、流れ促進部材(44)には冷媒通過穴が形成されていてもよい。
【0044】
風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)の第2空間(37)と、風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)とは、第1ヘッダタンク(2)の仕切部(2a)における入口部分(45)、遮断部材(41)および仕切壁(35)よりも左側の部分に左右方向に間隔をおいて設けられた貫通穴からなる複数の連通路(30)によって通じさせられている。
【0045】
風下側下ヘッダ部(7)の第3区画(21)と、風上側下ヘッダ部(8)の第4区画(25)とは、第2ヘッダタンク(3)の仕切部(3a)における仕切壁(34)よりも左側の部分に設けられた連通部(40)によって通じさせられている。
【0046】
ここで、分流用抵抗部材(36)に設けられた複数の冷媒通過穴(39)の合計断面積をA、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)と風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)とを通じさせる複数の冷媒連通路(30)の合計断面積をBとした場合、B>Aの関係を満たしていることが好ましい。
【0047】
上述のようにして各区画(15)〜(19)(21)(23)〜(26)、冷媒入口(22)、冷媒出口(27)、冷媒通過穴(39)を有する分流用抵抗部材(36)、遮断部材(41)、第1空間(38)、第2空間(37)、冷媒通過穴(43)を有する分流用抵抗部材(42)、流れ促進部材(44)、上空間(26A)、下空間(26B)、連通路(30)および連通部(40)が設けられることによって、冷媒は、第1チューブ群(11A)、冷媒入口(22)から最も遠い位置にある第3チューブ群(11C)(風下側チューブ列(11)の最遠チューブ群)および冷媒出口(27)から最も遠い位置にある第4チューブ群(12A)(風上側チューブ列(12)の最遠チューブ群)の熱交換チューブ(9)内を、上下いずれかのうちの冷媒入口(22)が位置する側から反対側、ここでは上から下に流れることになり、これらのチューブ群(11A)(11C)(12A)が下降流チューブ群となっている。また、冷媒は、第2チューブ群(11B)および第5チューブ群(12B)の熱交換チューブ(9)内を、下から上に流れることになり、これらのチューブ群(11B)(12B)が上昇流チューブ群となっている。すなわち、風下側チューブ列(11)の第3チューブ群(11C)、および風上側チューブ列(12)の第4チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)における冷媒の流れ方向は同一方向になっている。第1チューブ群(11A)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を、上下いずれかのうちの冷媒入口(22)が位置する側から反対側、ここでは上から下に流れる第1パス(28)となり、第2チューブ群(11B)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を下から上(第1パス(28)とは逆方向)に流れる第2パス(29)となり、第3および第4チューブ群(11C)(12A)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を上から下(第1パス(28)と同方向)に流れる第3パス(31)となり、第5チューブ群(12B)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を下から上(第1パス(28)とは逆方向)に流れる第4パス(32)となっており、第3パス(31)が、熱交換チューブ(9)内の冷媒の流れ方向が同一方向である第3および第4チューブ群(11C)(12A)が通風方向に並んで設けられることにより構成されている。そして、冷媒入口(22)から流入した冷
媒は、以下に述べる2つの経路を通って第1〜第4パス(28)(29)(31)(32)の熱交換チューブ(9)を順々に流れ、冷媒出口(27)から流出するようになされている。第1の経路は、第1区画(15)、第1チューブ群(11A)(第1パス(28))、第1区画(18)、第2区画(19)、第2チューブ群(11B)(第2パス(29))、第2区画(16)、第3区画(17)の第2空間(37)、第4区画(23)、第4チューブ群(12A)(第3パス(31))、第4区画(25)、第5区画(26)の下空間(26B)、同上空間(26A)、第5チューブ群(12B)(第4パス(32))および第5区画(24)であり、第2の経路は、第1区画(15)、第1チューブ群(11A)(第1パス(28))、第1区画(18)、第2区画(19)、第2チューブ群(11B)(第2パス(29))、第2区画(16)、第3区画(17)の第2空間(37)、同第1空間(38)、第3チューブ群(11C)(第3パス(31))、第3区画(21)、第4区画(25)、第5区画(26)の下空間(26B)、同上空間(26A)、第5チューブ群(12B)(第4パス(32))および第5区画(24)である。
【0048】
上述したエバポレータ(1)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサおよび減圧器としての膨張弁とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。カーエアコンの稼働時には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(22)を通って風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(15)内に入り、上述した2つの経路を通って第1〜第4パス(28)(29)(31)(32)の熱交換チューブ(9)を順々に流れ、冷媒出口(27)から流出する。
【0049】
そして、冷媒が風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)内、および風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)内を流れる間に、熱交換コア部(4)の通風間隙を通過する空気(
図1矢印X参照)と熱交換をし、空気は冷却され、冷媒は気相となって流出する。
【0050】
ここで、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)内に、当該第3区画(17)内を第1空間(38)と第2空間(37)とに分ける板状の分流用抵抗部材(36)が設けられ、分流用抵抗部材(36)に、左右方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴(39)が形成されているので、第2空間(37)内に流入した冷媒には、分流用抵抗部材(36)によって第1空間(38)内への流れに対する抵抗が付与されることになり、重力の影響を受けたとしても、第3区画(17)の第2空間(37)内に流入した冷媒が、風下側チューブ列(11)における第3パス(31)を構成する第3チューブ群(11C)の熱交換チューブ(9)内に多量に流入することが抑制される。したがって、第1空間(38)内を経て第3チューブ群(11C)の熱交換チューブ(9)内に流入する冷媒量と、冷媒連通路(30)を通って風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)に入った後風上側チューブ列(12)の第3パス(31)を構成する第4チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)内に流入する冷媒量とが均一化される。特に、分流用抵抗部材(36)に設けられた複数の冷媒通過穴(39)の合計断面積をA、風下側上ヘッダ部(5)の第3区画(17)の第2空間(37)と風上側上ヘッダ部(6)の第4区画(23)とを通じさせる複数の冷媒連通路(30)の合計断面積をBとした場合、B>Aの関係を満たしていると、第3チューブ群(11C)および第4チューブ群(12A)を流れる冷媒量が、効果的に均一化される。
【0051】
図7〜
図9は、風下側上ヘッダ部(5)の変形例を示す。
【0052】
図7に示す風下側上ヘッダ部(5)の場合、風下側最遠区画である第3区画(17)における第2空間(37)の入口部分(45)の風下側に、第2空間(37)内の風下側部分への冷媒の流入を阻害する邪魔板(46)が、第2空間(37)の全高にわたって設けられている。邪魔板(46)が、第3区画(17)の第2空間(37)から風上側最遠区画である第4区画(23)内への冷媒の流入を促進する促進部材(47)となっている。
【0053】
図8に示す風下側上ヘッダ部(5)の場合、風下側最遠区画である第3区画(17)の第2空間(37)内における左右方向(熱交換チューブ(9)の並び方向)の中間部の下側部分(熱交換チューブ(9)側の部分)に、第2空間(37)内の熱交換チューブ(9)側部分への冷媒の流入を阻害する邪魔板(48)が、第2空間(37)の前後方向の全幅にわたって設けられている。邪魔板(48)が、第3区画(17)の第2空間(37)から風上側最遠区画である第4区画(23)内への冷媒の流入を促進する促進部材(49)となっている。
【0054】
図9に示す風下側上ヘッダ部(5)の場合、風下側最遠区画である第3区画(17)の第1空間(38)の右端開口を閉鎖し、かつ風下側上ヘッダ部(5)の第2区画(16)から第1空間(38)への冷媒の流れを遮断する流れ遮断部材(41)が設けられていないことを除いては、
図8に示す風下側上ヘッダ部(5)と同じである。
【0055】
なお、
図9に示す風下側上ヘッダ部(5)において、第3区画(17)の第1空間(38)内における左右方向(熱交換チューブ(9)の並び方向)の中間部に、第1空間(37)内を左右方向に仕切る仕切部材が設けられていてもよい。仕切部材は、邪魔板(48)と同一位置に設けられていてもよいし、邪魔板(48)とはずれた位置に設けられていてもよい。
【0057】
図10〜
図14に示すように、エバポレータ(50)の風下側チューブ列(11)には、複数の熱交換チューブ(9)からなる4つのチューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)が、右端から左端に向かって並んで設けられ、風上側チューブ列(12)には、複数の熱交換チューブ(9)からなる3つ(風下側チューブ列(11)のチューブ群の数よりも1つ少ない数)のチューブ群(12A)(12B)(12C)が、左端から右端に向かって並んで設けられている。
【0058】
風下側上下両ヘッダ部(5)(7)に、それぞれ風下側チューブ列(11)のチューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)と同数でかつ各チューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(51)(52)(53)(54)および(55)(56)(57)(58)が設けられている。風下側上ヘッダ部(5)における右端の区画(51)の右端部に冷媒入口(22)が設けられている。風下側チューブ列(11)の4つのチューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)を冷媒入口(22)側端部から他端部に向かって第1〜第4チューブ群といい、第1〜第4チューブ群(11A)(11B)(11C)(11D)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(51)(52)(53)(54)および(55)(56)(57)(58)を冷媒入口(22)側端部から他端部に向かって第1〜第4区画というものとする。第4チューブ群(11D)が、風下側チューブ列(11)における冷媒入口(22)から最も遠い位置にある最遠チューブ群であり、風下側上ヘッダ部(5)の第4区画(58)が、第4チューブ群(11D)の熱交換チューブ(9)が通じさせられた冷媒流れ方向上流側(上側)の風下側最遠区画である。
【0059】
風上側上下両ヘッダ部(6)(8)に、それぞれ風上側チューブ列(12)のチューブ群(12A)(12B)(12C)と同数でかつ各チューブ群(12A)(12B)(12C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(59)(61)(62)および(63)(64)(65)が設けられている。風上側上ヘッダ部(6)における右端の区画(64)の右端部(冷媒入口(22)と同一端部)に冷媒出口(27)が設けられている。風上側チューブ列(12)の3つのチューブ群(12A)(12B)(12C)を冷媒出口(27)とは反対側の端部から冷媒出口側(27)の端部に向かって第5〜第7チューブ群といい、第5〜第7チューブ群(12A)(12B)(12C)の熱交換チューブ(9)が通じる区画(59)(61)(62)および(63)(64)(65)を冷媒出口(27)とは反対側の端部から冷媒出口側(27)の端部に向かって第5〜第7区画というものとする。第5チューブ群(12A)が、風上側チューブ列(12)における冷媒出口(27)から最も遠い位置にある最遠チューブ群であり、風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(63)が、第5チューブ群(12A)が通じさせられた冷媒流れ方向上流側(上側)の風上側最遠区画である。
【0060】
なお、風下側チューブ列(11)の第1および第2チューブ群(11A)(11B)を構成する熱交換チューブ(9)の合計数は、風上側チューブ列(12)の第7チューブ群(12C)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっており、風下側チューブ列(11)の第3チューブ群(11C)および第4チューブ群(11D)を構成する熱交換チューブ(9)の数は、それぞれ風上側チューブ列(12)の第6チューブ群(12B)および第5チューブ群(12A)を構成する熱交換チューブ(9)の数と等しくなっている。また、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第1区画(51)(55)と第2区画(52)(56)の左右方向の合計長さは、風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第7区画(62)(65)の左右方向の長さと等しく、風下側上下両ヘッダ部(5)(7)における第3区画(53)(57)および第4区画(54)(58)の左右方向の長さは、それぞれ風上側上下両ヘッダ部(6)(8)における第6区画(61)(64)および第5区画(59)(63)の左右方向の長さと等しくなっている。
【0061】
風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(51)と第2区画(52)との間、および第3区画(53)と第4区画(54)との間にはそれぞれ仕切壁(73)が設けられ、これにより第1区画(51)と第2区画(52)、および第3区画(53)と第4区画(54)とはそれぞれ非連通状態となっている。また、風下側上ヘッダ部(5)の第2区画(52)と第3区画(53)とは連通状態となっている。
【0062】
風下側下ヘッダ部(7)の第1区画(55)と第2区画(56)とは連通状態となっている。風下側下ヘッダ部(7)の第2区画(56)と第3区画(57)との間には仕切壁(74)が設けられ、これにより両区画(56)(57)は非連通状態となっている。また、風下側下ヘッダ部(7)の風下側最遠区画である第4区画(58)内に、第4区画(58)内を熱交換チューブ(9)が臨む上側の第1空間(82)と、第1空間(82)から隔てられた下側の第2空間(81)とに分ける分流用抵抗部材(79)が設けられている。風下側下ヘッダ部(7)の第3区画(57)と第4区画(58)との間には、第4区画(58)の第1空間(82)の右端開口を閉鎖し、かつ第3区画(57)から第1空間(82)への冷媒の流れを遮断する流れ遮断部材(84)が設けられている。また、第4区画(58)の第2空間(81)の右端部が全体に開口することにより、第3区画(57)と第4区画(58)の第2空間(81)とは連通状態となっており、第4区画(58)の第2空間(81)内に、第4区画(58)の冷媒入口(22)側に隣り合う第3区画(57)から冷媒が流入する。ここで、第4区画(58)の第2空間(81)の右端部の開口が、第4区画(58)の第2空間(81)内に冷媒を流入させる入口部分(80)となっている。さらに、分流用抵抗部材(79)に、左右方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴(83)が形成されており、これにより両空間(81)(82)が通じさせられている。
【0063】
風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(59)と第6区画(61)とは連通状態となっている。風上側上ヘッダ部(6)の第6区画(61)と第7区画(62)との間には仕切壁(75)が設けられ、これにより両区画(61)(62)は非連通状態となっている。
【0064】
風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(63)と第6区画(64)との間には仕切壁(76)が設けられ、これにより両区画(63)(64)は非連通状態となっている。風上側下ヘッダ部(8)の第7区画(65)内に、第7区画(65)内を上空間(65A)と下空間(65B)とに分ける板状の分流用抵抗部材(42)が設けられており、分流用抵抗部材(42)に、左右方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴(43)が形成されている。また、風上側下ヘッダ部(8)の第6区画(64)と第7区画(65)との間に、第7区画(65)の上空間(65A)の左端開口を閉鎖し、かつ第6区画(64)から第7区画(65)の下空間(65B)への冷媒の流れを促進する板状の流れ促進部材(44)が設けられている。また、第7区画(26)の下空間(65B)の左端部が全体に開口することにより、第6区画(64)と第7区画(65)の下空間(65B)とは連通状態となっており、第7区画(65)の下空間(65B)内に、第6区画(64)から冷媒が流入する。なお、流れ促進部材(44)には冷媒通過穴が形成されていてもよい。
【0065】
風下側上ヘッダ部(5)の第4区画(54)と、風上側上ヘッダ部(6)の第5区画(59)とは、第1ヘッダタンク(2)の仕切部(2a)における仕切壁(73)よりも左側の部分に設けられた連通部(78)によって通じさせられている。
【0066】
風下側下ヘッダ部(7)の第4区画(58)の第2空間(81)と、風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(63)とは、第2ヘッダタンク(3)の仕切部(3a)における入口部分(80)、遮断部材(84)および仕切壁(76)よりも左側の部分に左右方向に間隔をおいて設けられた貫通穴からなる複数の連通路(77)によって通じさせられている。
【0067】
ここで、分流用抵抗部材(79)に設けられた複数の冷媒通過穴(83)の合計断面積をA、風下側下ヘッダ部(7)の第4区画(58)と風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(63)とを通じさせる複数の冷媒連通路(77)の合計断面積をBとした場合、B>Aの関係を満たしていることが好ましい。
【0068】
上述のようにして各区画(51)〜(59)(61)〜(65)、冷媒入口(22)、冷媒出口(27)、冷媒通過穴(83)を有する分流用抵抗部材(79)、遮断部材(84)、第1空間(82)、第2空間(81)、冷媒通過穴(43)を有する分流用抵抗部材(42)、流れ促進部材(44)、上空間(65A)、下空間(65B)、連通路(77)および連通部(78)が設けられることによって、冷媒は、第1チューブ群(11A)、第3チューブ群(11C)および第6チューブ群(12B)の熱交換チューブ(9)内を、上下いずれかのうちの冷媒入口(22)が位置する側から反対側、ここでは上から下に流れることになり、これらのチューブ群(11A)(11C)(12B)が下降流チューブ群となっている。また、冷媒は、第2チューブ群(11B)、冷媒入口(22)から最も遠い位置にある第4チューブ群(11D)、冷媒出口(27)から最も遠い位置にある第5チューブ群(12A)および第7チューブ群(12C)の熱交換チューブ(9)内を、下から上に流れることになり、これらのチューブ群(11B)(11D)(12A)(12C)が上昇流チューブ群となっている。すなわち、風下側チューブ列(11)の第4チューブ群(11D)、および風上側チューブ列(12)の第5チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)における冷媒の流れ方向は同一方向になっている。第1チューブ群(11A)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を、上下いずれかのうちの冷媒入口(22)が位置する側から反対側、ここでは上から下に流れる第1パス(66)となり、第2チューブ群(11B)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を下から上(第1パス(66)とは逆方向)に流れる第2パス(67)となり、第3チューブ群(11C)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を上から下(第1パス(66)と同方向)に流れる第3パス(68)となり、第4および第5チューブ群(11D)(12A)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を下から上(第1パス(66)とは逆方向)に流れる第4パス(69)となり、第6チューブ群(12B)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を上から下(第1パス(66)と同方向)に流れる第5パス(71)となり、第7チューブ群(12C)が、冷媒が熱交換チューブ(9)内を下から上(第1パス(66)とは逆方向)に流れる第6パス(
72)となっており、第4パス(69)が、熱交換チューブ(9)内の冷媒の流れ方向が同一方向である第4および第5チューブ群(11D)(12A)が通風方向に並んで設けられることにより構成されている。そして、冷媒入口(22)から流入した冷媒は、以下に述べる2つの経路を通って第1〜第6パス(66)(67)(68)(69)(71)(72)の熱交換チューブ(9)を順々に流れ、冷媒出口(27)から流出するようになされている。第1の経路は、第1区画(51)、第1チューブ群(11A)(第1パス(66))、第1区画(55)、第2区画(56)、第2チューブ群(11B)(第2パス(67))、第2区画(52)、第3区画(53)、第3チューブ群(11C)(第3パス(68))、第3区画(57)、第4区画(58)の第2空間(81)、第5区画(63)、第5チューブ群(12A)(第4パス(69))、第5区画(59)、第6区画(61)、第6チューブ群(12B)(第5パス(71))、第6区画(64)、第7区画(65)の下空間(65B)、同上空間(65A)、第7チューブ群(12C)(第6パス(32))および第7区画(62)であり、第2の経路は、第1区画(51)、第1チューブ群(11A)(第1パス(66))、第1区画(55)、第2区画(56)、第2チューブ群(11B)(第2パス(67))、第2区画(52)、第3区画(53)、第3チューブ群(11C)(第3パス(68))、第3区画(57)、第4区画(58)の第2空間(81)、同第1空間(82)、第4チューブ群(11D)(第4パス(69))、第4区画(54)、第5区画(59)、第6区画(61)、第6チューブ群(12B)(第5パス(71))、第6区画(64)、第7区画(65)の下空間(65B)、同上空間(65A)、第7チューブ群(12C)(第6パス(32))および第7区画(62)である。
【0069】
上述したエバポレータ(1)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサおよび減圧器としての膨張弁とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。カーエアコンの稼働時には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(22)を通って風下側上ヘッダ部(5)の第1区画(51)内に入り、上述した2つの経路を通って第1〜第6パス(66)(67)(68)(69)(71)(72)の熱交換チューブ(9)を順々に流れ、冷媒出口(27)から流出する。
【0070】
そして、冷媒が風下側チューブ列(11)の熱交換チューブ(9)内、および風上側チューブ列(12)の熱交換チューブ(9)内を流れる間に、熱交換コア部(4)の通風間隙を通過する空気(
図1矢印X参照)と熱交換をし、空気は冷却され、冷媒は気相となって流出する。
【0071】
ここで、風下側下ヘッダ部(7)の第4区画(58)内に、当該第4区画(58)内を第1空間(82)と第2空間(81)とに分ける板状の分流用抵抗部材(79)が設けられ、分流用抵抗部材(79)に、左右方向に間隔をおいて複数の冷媒通過穴(83)が形成されているので、第2空間(81)内に流入した冷媒には、分流用抵抗部材(79)によって第1空間(82)内への流れに対する抵抗が付与されることになり、冷媒の流量が変動したとしても、第4区画(58)の第2空間(81)内に流入した冷媒が、風下側チューブ列(11)における第4パス(69)を構成する第4チューブ群(11D)の熱交換チューブ(9)内に多量に流入することが抑制される。したがって、第1空間(82)内を経て第4チューブ群(11D)の熱交換チューブ(9)内に流入する冷媒量と、冷媒連通路(77)を通って風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(63)に入った後風上側チューブ列(12)の第4パス(69)を構成する第5チューブ群(12A)の熱交換チューブ(9)内に流入する冷媒量とが均一化される。特に、分流用抵抗部材(79)に設けられた複数の冷媒通過穴(83)の合計断面積をA、風下側下ヘッダ部(7)の第4区画(58)の第2空間(81)と風上側下ヘッダ部(8)の第5区画(63)とを通じさせる複数の冷媒連通路(77)の合計断面積をBとした場合、B>Aの関係を満たしていると、第4チューブ群(11D)および第5チューブ群(12A)を流れる冷媒量が、効果的に均一化される。
【0072】
実施形態2において、風下側下ヘッダ部(7)に、
図7〜
図9に示すような促進部材が設けられていてもよい。
【0073】
上記2つの実施形態を示す図面において、エバポレータの寸法や、熱交換チューブの数および熱交換チューブのピッチなどは、実際のものとは異なっている。
【0074】
上記2つの実施形態においては、第1パスの流れ方向上流側のヘッダ部と、同流れ方向下流側ヘッダ部とが、前者が上方に位置するように設けられているが、これに限定されるものではなく、これとは逆に、第1パスの流れ方向上流側のヘッダ部と、同流れ方向下流側ヘッダ部とが、前者が下方に位置するように設けられていてもよい。すなわち、上記実施形態とは上下逆向きに設けられていてもよい。
【0075】
なお、この発明によるエバポレータは、1対の皿状プレートを対向させて周縁部どうしをろう付してなる複数の扁平中空体が並列状に配置されてなり、各偏平中空体に通風方向に並んだ上下方向にのびる2つの熱交換チューブ、および両熱交換チューブの上下両端に通じるヘッダ形成部が設けられるとともに、すべての扁平中空体の上下の2つのヘッダ形成部どうしがそれぞれ通じるように扁平中空体どうしがろう付されることによって、上下方向にのびるとともに通風方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換チューブからなるチューブ列が、通風方向に並んで2列設けられるとともに、すべての扁平中空体のヘッダ形成部により、風下側および風上側のチューブ列の上下両端が通じる風下側および風上側上下両ヘッダ部が設けられた形式の所謂積層型エバポレータにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
この発明によるエバポレータは、カーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0077】
(1)(50):エバポレータ
(5):第1ヘッダタンクの風下側ヘッダ部(風下側上ヘッダ部)
(6):第1ヘッダタンクの風上側ヘッダ部(風上側上ヘッダ部)
(7):第2ヘッダタンクの風下側ヘッダ部(風下側下ヘッダ部)
(8):第2ヘッダタンクの風上側ヘッダ部(風上側下ヘッダ部)
(9):熱交換チューブ
(11):風下側チューブ列
(11A)(11B)(11C):第1〜第3チューブ群
(11D):第4チューブ群
(12):風上側チューブ列
(12A)(12B):第4および第5チューブ群(第5および第6チューブ群)
(12C):第7チューブ群
(15)(16)(17):風下側上ヘッダ部の第1〜第3区画
(18)(19)(21):風下側下ヘッダ部の第1〜第3区画
(22):冷媒入口
(23)(24):風上側上ヘッダ部の第4および第5区画
(25)(26):風上側下ヘッダ部の第4および第5区画
(27):冷媒出口
(66)(29)(31)(32):第1〜第4パス
(30):冷媒連通路
(36):分流用抵抗部材
(37):第2空間
(38):第1空間
(39):冷媒通過穴
(41):流れ遮断部材
(45):入口部分
(46)(48):邪魔板
(47)(49):促進部材
(51)(52)(53)(54):風下側上ヘッダ部の第1〜第4区画
(55)(56)(57)(58):風下側下ヘッダ部の第1〜第4区画
(59)(61)(62):風上側上ヘッダ部の第5〜第7区画
(63)(64)(65):風上側下ヘッダ部の第5〜第7区画
(66)(67)(68)(69)(71)(72):第1〜第6パス
(79):分流用抵抗部材
(80):入口部分
(81):第2空間
(82):第1空間
(83):冷媒通過穴
(84):流れ遮断部材