特許第5693468号(P5693468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5693468少なくとも1つのレーザビームストップ素子を有するプリント基板素子ならびにプリント基板素子を作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693468
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】少なくとも1つのレーザビームストップ素子を有するプリント基板素子ならびにプリント基板素子を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20150312BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20150312BHJP
   B23K 26/18 20060101ALI20150312BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20150312BHJP
【FI】
   H05K3/46 S
   H05K3/00 N
   H05K3/46 X
   B23K26/18
   B23K26/00 H
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-544753(P2011-544753)
(86)(22)【出願日】2010年1月8日
(65)【公表番号】特表2012-514859(P2012-514859A)
(43)【公表日】2012年6月28日
(86)【国際出願番号】AT2010000004
(87)【国際公開番号】WO2010078611
(87)【国際公開日】20100715
【審査請求日】2012年12月12日
(31)【優先権主張番号】GM5/2009
(32)【優先日】2009年1月9日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】511166699
【氏名又は名称】エイティー アンド エス オーストリア テヒノロギー ウント ズュステームテヒニーク アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AT & S Austria Technologie & Systemtechnik Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】マークス ライトゲープ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ズルク
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー カスパー
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003− 60356(JP,A)
【文献】 特開2004−253449(JP,A)
【文献】 特開2008−288607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層(5,6,7)ならびに導電層(8,9,10,11)を有するプリント基板素子(1)であって、
当該のプリント基板素子は、
孔開けまたは切り込みに使用されるレーザビーム(12)が前記プリント基板素子に深く進入してしまうことを阻止するため、当該のプリント基板素子の内部に、前記導電層(8,9,10,11)とは異なる固有の少なくとも1つのレーザビームストップ素子(14)を有する、プリント基板素子において
記レーザビームストップ素子(14)は、レーザビームエネルギを吸収するナノ粒子を伴って構成されており、
該ナノ粒子の融点は、プリント基板の材料の融点と異なり、
前記ナノ粒子は、材料複合体全体よりも早く溶融する
ことを特徴とするプリント基板素子(1)。
【請求項2】
前記の粒子は、接着剤によって1つの層部分に接合されている、
請求項1に記載のプリント基板素子。
【請求項3】
前記の粒子は、球状の形状を有する、
請求項1または2に記載のプリント基板素子。
【請求項4】
前記の粒子は、小板の形状を有する、
請求項1または2に記載のプリント基板素子。
【請求項5】
前記粒子のうちの少なくともいくつかの粒子は、金属からなる、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のプリント基板素子。
【請求項6】
前記粒子は、銀または金から構成され、ほぼ100nmの粒子サイズを有する、
請求項5に記載のプリント基板素子。
【請求項7】
前記粒子のうちの少なくとも幾つかの粒子は、セラミック材料からなる、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のプリント基板素子。
【請求項8】
前記のストップ素子(14)は、印刷された層部分である、
請求項1から7までのいずれか1項に記載のプリント基板素子。
【請求項9】
前記のストップ素子(14)は、フォトリソグラフィによって構造化される、
請求項1から8までのいずれか1項に記載のプリント基板素子。
【請求項10】
前記のストップ素子(14)は、除去可能な分離レイヤ(15,16)にまたは当該分離レイヤ内に取り付けられるか、または除去可能な2つの分離レイヤ(15,16)間に取り付けられる、
請求項1から9までのいずれか1項に記載のプリント基板素子。
【請求項11】
前記のストップ素子(14)は、はめ込まれるかないしはラミネートされたフィルムによって構成される、
請求項1から7までのいずれか1項に記載のプリント基板素子。
【請求項12】
前記のストップ素子(14)は、局所的に層(6)ないしはレイヤ(15,16)に充填剤として組み込まれる粒子によって構成される、
請求項1から7までのいずれか1項に記載のプリント基板素子。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載のプリント基板素子(1)を作製する方法であって、
前記のプリント基板素子のレイヤ(2,3,4)を接続する前、前記導電層(8,9,10,11)とは異なる固有のストップ素子(14)を所望の個所に被着し、
その後、前記のストップ素子(14)を含めて前記レイヤをプレスする、プリント基板素子(1)を作製する方法において、
レーザビームエネルギを吸収するナノ粒子によって前記レーザビームストップ素子(14)を形成し、
前記ナノ粒子は、材料複合体全体よりも早く溶融する、
ことを特徴とする、プリント基板素子(1)を作製する方法。
【請求項14】
前記のストップ素子(14)を、除去可能な分離レイヤ(15,16)にまたは当該分離レイヤ内に取り付けるかまたは除去可能な2つの分離レイヤ(15,16)間に取り付ける、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の粒子として金属からなる粒子を使用する、
請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
印刷法で前記のストップ素子(14)を層状に被着する、
請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記のストップ素子(14)は、スプレコーティング法印刷で層状に被着される、
請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記の別の1つまたは複数のレイヤを被着して前記のレイヤ(2,3,4)をプレスする前に、前記の層状のストップ素子(14)を感光性に構成してフォトエッチング法またはフォト現像法で構造化する、
請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ペーストとして、前記のストップ素子(14)を被着する、
請求項13から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記のストップ素子(14)をあらかじめ作製したフィルムとして被着し、
当該のフィルムを、レイヤ(2,3;15,16)の間に挟むかまたはレイヤ(3;16)上にラミネートする、
請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記の粒子を充填剤としてレイヤ(15,16)ないしは層(6)に局所的に挿入する、
請求項13から15までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、プリント基板素子、殊にマルチレイヤプリント基板素子に関しており、このプリント基板素子は、複数の誘電体層ならびに導電層を有しており、さらにプリント基板素子の内部にこの導体層とは異なりかつ少なくとも1つの特有なレーザビームストップ素子を有しており、これによって孔開けまたは切り込みに使用されるレーザビームが、プリント基板素子に深く進入してしまうことを阻止する。
【0002】
さらに本発明は、このようなプリント基板素子を作製する方法に関する。
【0003】
発明の背景
プリント基板素子は、広く一般的には種々異なる層から構成され、これらの層は互いに接着されて接続され、この際には熱加圧プロセスを使用することができる。いわゆるマルチレイヤプリント基板素子と称される多層プリント基板素子の場合、複数の誘電体層(絶縁層)とメタライゼーション(導体層)とが上下に重なって配置されるため、複数レベルに導電性の接続部が電子構成素子間に作製される。ふつうこのようなプリント基板素子は、例えばエポキシ樹脂層などの樹脂層と銅層とから形成され、ここでは少なくとも2つのレイヤが設けられる。
【0004】
内部のコンポーネントへ至る導電接続を作製するため、このようなプリント基板素子には、あらかじめ定めた深さまで複数の孔が空けられる。導電性のレベル間で電気接続を行いたい場合、引き続いて上記のように形成した孔を、例えば銅メッキすることができる。一般的には切り込みまたは孔開けの深さを制御することにより、このプリント基板素子を切り込みまたは孔開けしなければならないことが多く、この切り込みまたは孔開けに対してはふつう例えばCO2レーザなどのレーザが使用される。ここでは一般的な深さ制御法を使用することも可能であるが、この方法は制限的にしか使用できない。レーザビームによって切り込みまたは孔開けを行うためには、例えば上記のプリント基板素子の構造の内部に銅レイヤを使用して、このレーザビームが、このプリント基板素子にさらに深く進入することを阻止する。すなわち、切り込みプロセスまたは孔開けプロセスをストップさせるのである。ここでこのストップ作用は、銅層または一般的な金属層が、可視光領域ないしは赤外光領域において極めて良好に反射することに基づいている。例えば、CO2レーザビームは、銅層において良好に反射する。これに対してUV領域のレーザビームであれば、銅が切断されることになる。
【0005】
しかしながらすでに構造化された内部レイヤを有するプリント基板素子ではつぎのような問題がある。すなわち、導体層(例えば銅レイヤ)が、上記の構造化によって局所的にだけ存在し、その他の箇所ではメタライゼーションがエッチングによって除去されているため、例えば2つの樹脂レイヤが直接互いに接続され、同様にはんだストップマスクもエポキシ樹脂層に直接接続され得るという問題があるのである。樹脂層が互いに接続されているかまたははんだストップマスクが樹脂層に接している箇所では、上述のレーザストップ機能はもはや得られない。それは、これに必要なメタライゼーションが存在しないからである。この場合に問題であるのは、レーザビームの切り込み深さまたは孔開け深さ、すなわちプリント基板素子の構造における進入深さを制御することである。
【0006】
これに対する処置を行うため、従来技術(US 4,931,134 A,JP 3-165594 A,JP 5-235556AおよびJP 2002-271039 Aを参照されたい)では、例えば銅から構成されかつストライプ状になった個別の付加的なレーザビームストップ素子を取り付けることが提案されている。これらのストップ素子は、レーザビームを反射し、これによってこのレーザビームがプリント基板素子構造にさらに進入することを阻止しようとしているのである。
【0007】
発明の要約
さて本発明の課題は、冒頭に述べたようなプリント基板素子ないしは方法を提供することであり、ここでは、択一的かつ簡単に取り付けられるレーザビームストップ素子を使用し、また内側レイヤの構造化がすでに行われている場合、効率的かつ高い信頼性のレーザビームの切り込み深さまたは孔開け深さ制御を保証することである。
【0008】
この課題を解決するため、本発明により、請求項1に記載したプリント基板素子ないしは請求項9に記載した方法が提供される。有利な実施形態および発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
したがって本発明による技術では、またレーザビーム用に独自な「付加的な」ストップ素子が入れられる。しかしながらここではこのストップ素子は、微粒子を伴って構成され、この微粒子は、レーザビームエネルギを受け取りおよび/または反射し、またそのサイズは例えばnm領域からμm領域にある。この粒子は殊に、有利な金属、例えば金、銀、銅、アルミニウム、すずおよび/または鉛からなるが、また別の有利な反射性ないしは溶融性の材料、例えばセラミック粒子を使用することも可能である。ここで、例えば球状または小板状とすることの可能なこれらの粒子は、レーザビームが層の材料を通って簡単には進入できないほど小さい。これらの粒子が一層大きい場合、ないしは粒子が円形ではなく小板状である場合、または大きい粒子を互いに接合するために粒子−接着剤の割合が高い場合(ただしこの接着剤は反射性を有さず、またこの接着剤をレーザビームが貫通することができる)、例えば粒子における多重反射によって簡単に進入しない。このようにストップ素子における粒子の大きさが比較的大きい場合にも、状況によっては良好な反射が行われない。このようにして上記のレーザビームにより、十分なエネルギを上記のストップ素子に供給することができ、レーザビームをストップさせる代わりにストップ素子を貫通させることも考えられる。しかしながら微粒子の場合、一方では接着剤の割合を極めて小さくすることができ、他方ではレーザビームのエネルギを使用して、材料を溶融させることができる。ないしは粒子の割合が高いことによって反射率が高くすることができる。
【0010】
上記の粒子のサイズに対し、尺度として採用し得るのは、粒子が「ナノ特性」を有するようにすることである。すなわち、上記のナノ粒子の融点と、一般的なプリント基板材料の融点とが異なるようなサイズを粒子が有するようにすることである。これに対し、銀製の粒子では、例えば約100nmの粒子サイズが有利であることが判明している。
【0011】
この独自なストップ素子は少なくとも、レーザビームの切り込み深さまたは孔開け深さの制限が所望される箇所には取り付けることできるが、当然のことながら、その下にあるレイヤの表面全体にわたって平らに被着することも可能である。殊にこれを従来のように構造化することも可能である。上記の構造化を行うため、有利には例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷またはこれに類似するものなどの局所的な被着のための印刷技術を使用することができる。しかしながら構造化は、付加ストップ層の材料をそれ自体公知のように感光性にして、つぎに通常のフォトプロセスによって構造化を行えるようにする場合でも可能である。これに対しても上で示したような印刷技術を使用することができるが、例えばスピンコーティングなどの別のコーティング方法も使用可能である。
【0012】
微粒子を使用する本発明の技術によるメカニズムでは、レーザビームのエネルギを使用して、この粒子を完全または部分的に溶融させ、これによってレーザビームのこの箇所でストップさせることも可能である。この箇所においてレーザビームが公知の銅層におけるのと同様に完全に反射され得るかまたは少なくともその大部分が反射され得るということとは無関係である。またレーザビーム衝突領域における上記の粒子の熱接触により、冷却効果、熱放出が行われる。
【0013】
本発明によるストップ素子は、有利には殊にペーストの形態の付加層部分として設けられて被着され、例えば印刷される。ここでこのペーストには上記の微粒子ならびに接着剤が含まれる。
【0014】
さらに、除去可能な分離層の上ないしは下または除去可能な2つの分離レイヤの間に、レーザビームをストップするための上記のストップ素子を層状に取り付けることも考えられる。このような分離レイヤは、例えば、その下またはその上にある複数の樹脂層が一緒に接着されてしまわないようにするために使用される。これが行われるのは、基板の一部、すなわち固定された樹脂層を後で除去して、いわゆるリジッドフレックスプリント基板を得たい場合である。これについては、例えばWO 2008/098269 A,WO 2008/098270 A,WO 2008/098271 AおよびWO 2008/098272 Aを参照されたい。上記のストップ素子を上記の分離レイヤに取り付けるないしは分離レイヤ間に取り付けることには、ストップ素子とこれらの分離レイヤとを一緒に除去できるという利点もある。
【0015】
他方ではレーザストップ層をあらかじめ作製された独自のフィルム(テープ)とすることも可能であり、またレーザストップ層は例えば樹脂層にラミネートされるかないしは樹脂層に入れられる。この場合にも上記の導体層とは無関係に被着されかつ層状をした独自のレーザストップ素子が設けられ、このストップ素子は付加的な層として被着される。
【0016】
さまざま点で殊に有利な1実施形態の特徴は、さらに、本発明による粒子が、プリント基板素子の複数の層のうちの1つの層に充填剤として直接組み込まれているかないしは組み込むことである。例えば、上記の粒子は、プリント基板素子の各樹脂層に組み入れることができるが、これらの粒子は、上で述べた分離レイヤに組み入れるかないしはその中に含めることも可能である。この場合に上記の分離レイヤは付加的にストップ素子としても機能する。これに類似して、充填剤ナノ粒子を樹脂層に組み入れる上述の場合にも、これがレーザストップレイヤとして使用される。
【0017】
その他、プリント基板素子にはふつう、導体層に被着されるストップ素子に加えて、上記のような複数のストップ素子が設けられる。
【0018】
図面の簡単な説明
以下では有利な実施例に基づき、また添付の図面を参照してさらに説明する。しかしながら本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】それ自体公知のマルチレイヤプリント基板素子を示す極めて概略的な断面図である。
図2】内部導体レイヤが構造化されていることに起因してレーザビームが比較的に深く進入してしまうことを阻止できない図1と類似のプリント基板素子概略断面図である。
図3】レーザビームをストップさせる微粒子を有する独自のストップ素子が設けられたプリント基板素子の概略断面図である。
図4】除去可能な2つの分離レイヤの間にレーザビームに対する付加ストップ素子が設けられたプリント基板素子の概略断面図である。
図4A】除去可能な1分離レイヤだけを有するプリント基板素子の概略断面図である。
図5】樹脂層と、この層に被着されかつすでに構造化された導体レイヤと、この上に設けられかつ微粒子を含む層とを有する個別レイヤを示す図である。
図6】マルチレイヤ構造用の3つ層を有するマルチレイヤ構成を示す図である。
【0020】
図1にはここではまた極めて概略的にだけ、導体素子の内部に導体レイヤ用コンタクトホールを孔開けするためまたは切り込むためのレーザビームが示されており、このレーザビームは、従来のように内部導体レイヤにおいて(反射により)ストップする。
【0021】
図2には類似の概略断面図が示されており、しかしながらここでは図1と比べて上記の内部導体レイヤが構造化されているため、この構造化に起因して上記の内部導体レイヤが金属を有しない箇所にレーザビームが配向される場合、このレーザビームが比較的に深く進入してしまうことを阻止することできない。
【0022】
図3にはプリント基板素子を通る類似の概略断面図が示されているが、ここではレーザビームをストップさせる微粒子を有する独自のストップ素子が設けられている。
【0023】
図4には類似の断面図が示されているが、ここではわずかに2つのプリント基板レイヤしか有しない。ここでもレーザビームに対する付加ストップ素子が設けられているが、これは、除去可能な2つの分離レイヤの間に設けられている。
【0024】
図4Aには図4と類似の断面図が示されているが、ここではこれは除去可能な1分離レイヤだけを有しており、この分離レイヤには付加ストップ素子が被着されている。
【0025】
図5には樹脂層と、この層に被着されかつすでに構造化された導体レイヤと、この上に設けられかつ微粒子を含む層とを有する個別レイヤが示されており、ここでこの個別レイヤは、付加層を形成するために設けられており、この付加層は、完成したプリント基板素子を切り込むまたは孔開けする際にレーザビームをストップする独特の素子を作製するためのものである。
【0026】
図6には、マルチレイヤ構造用の3つ層を有するマルチレイヤ構成が示されており、ここでこれらの3つの層まだ分離された状態で図示されており、中間レイヤは図5のレイヤに相応し上記の付加層が構造化された後、本発明による上記の付加ストップ素子が構成される。ここではまた上記の個別のレイヤをプレスしてマルチレイアプリント基板素子にすることが示されている。
【0027】
有利な実施例の詳しい説明
図1にはマルチレイアプリント基板素子1の慣用の構造が、極めて概略的かつ縮尺通りではなく示されており、ここでは例示的に3つのレイヤ2,3および4が示されている。しかしながら上記のプリント基板素子構造をこれに制限しようとするものではない。詳しくいうとここでは3つの合成樹脂層5,6および7が設けられており、これらの合成樹脂層は、それ自体公知のように例えばエポキシ樹脂からなり、ここで合成樹脂層は、増強のためにガラス繊維を含むことも可能である。さらに、図示したこの実施例では、4つの導体層(金属層、通例は銅層)8,9,10および11が設けられており、これらの導体層のうち2つの層8,11は、この構造体の外側にあり、これに対して銅層9および10は内側に設けられている。さらに図1には極めて概略的にレーザビーム12が示されており、レーザビーム12は、コンタクトホールを孔開けするため、また例えばプリント基板レイヤの部分を除去するためなど切り込みを入れるために使用される。プリント基板レイヤ部分のこのような除去は、例えばプリント基板素子のフレキシブル部分が所望される場合、すなわちいわゆるリジッドフレックスプリント基板を作製する場合に行われる。図1ではレーザビーム12の進入深さは、内部にある銅層9によって制限される。それは、この銅層またはメタライゼーション9により、例えばCO2レーザビームなどのレーザビームが良好に反射されるからである。したがって銅レイヤ9におけるこの反射により、レーザビーム12は、プリント基板素子1のこの構造体内部にさらに入り込むことはできないのである。
【0028】
極めて一般的にいえば、例えば導体レイヤ8,9,10および11に使用される反射性の金属は、可視領域または赤外領域のレーザ光を良好に反射するが、UV領域のレーザビームにより、例えば銅レイヤは切断される。したがってこのようなUVレーザに対して、プリント基板素子を孔開けまたは切り込む際の進入深さは別に制御され、非金属製の特殊なスペーサ材料部分が層構造内に埋め込まれる。このスペーサ材料部分の機能は、UVレーザに対して空間または間隔を設けることにあり、またこのスペーサ材料部分は、UVレーザによる孔開けないしは切り込みの際に破壊されることがある。しかしながら公知の「間隔素子」によるこの手法は、比較的速度の遅い切り込みまたは孔開けだけにしか適しておらず、またこの間隔材料を、例えば樹脂層の内部に挿入しなければならないのである。
【0029】
可視光領域または赤外領域のレーザビーム12によってプリント基板素子1を切り込む場合につぎのような状況が生じる場合、すなわち、例えば銅層9などの内部導体層がすでに構造化されており(図2を参照されたい)、導体層9の領域13に金属がない場合、金属表面におけるレーザビーム12の反射は行われず、レーザビーム12は、所望の状態よりも深くプリント基板素子1に進入する。このことは図2に示した通りである。ここでは確かにレーザビーム12のスイッチオン時間を制御することによってレーザビーム12の進入深さを制御することも考えられるが、この手法は不正確であり、また例えば樹脂層5などの各層の殊に材料および厚さにも依存する。またこれらの材料および厚さは、大きく変化し得るのである。
【0030】
導体層9のこの箇所に(または導体層10のこの箇所にも構造化部を設けようとする場合には導体層10のこの箇所にも)前もってはんだストップマスクを被着しようとする場合、箇所13にはなおメタライゼーションが存在しないため、この場合にもレーザビーム12の進入深さを簡単に制御ないしは制限することはできないのである。
【0031】
このような事態を処理するため、所要の箇所に、すなわち後にレーザビーム12によって切り込みまたは孔を入れる箇所であり、かつすでに例えば銅層9などの導体層が構造化されている箇所に、他に依存しない独自の付加的なストップ素子(ここでは付加ストップ素子14とも称される)を被着する。この付加ストップ素子14は、導体層、例えば9に依存しないで(付加的に)被着され、またレーザビームストップ素子として作用する微粒子を伴って構成される。ここでこの作用は、これらの微粒子においてレーザビーム12が反射しおよび/またはそのエネルギが付加ストップ素子14における粒子を溶融させるために使用されることによって発生する。図3では、メタライゼーションのない領域13においてこのような局所的な付加ストップ素子14が例示的に示されており、ここでこの領域13は、プリント基板素子1のすでに構造化されている導体層9に部分にあり、またプリント基板素子1は、その他の点では図1および2に示したように形成されている。
【0032】
付加ストップ素子14には、すでに述べたように微粒子が含まれており、これらの微粒子は、接着剤によって接続されている。ここではこれらの粒子を十分に小さくして、これらの粒子が材料複合体全体よりも速く溶融するようにする。この「ナノ」粒子に対して例えば銀粒子および金粒子がテストされたが、この際に示されたのは、約100nmの粒子サイズを有する銀粒子および金粒子の場合に良好な結果が得られることである。
【0033】
サイズがμm領域にまで達し得るこれらの微粒子は十分に小さく、またストップ素子14においてわずかな接着剤しか必要ないために有利である。それはこの接着剤は、ストップ機能には利用できないものであり、また場合によってナノ微粒子におけるレーザビーム12の反射を阻止するからである。さらに微粒子が大きすぎる場合、微粒子の幾何学形状に起因して多重反射(ないしは接着剤の割合が比較的高いことによる高い吸収率)が発生することがあり、この場合にストップ素子14の領域または層を通してレーザビームが貫通することが可能になり得るため、微粒子があるのにもかかわらずレーザビームが深く進入し過ぎるのである。したがって本発明によるストップ素子14およびそのストップ機能について重要であるのは、接着剤の割合が少ないことに関連して上記の微粒子が「微小であること」ないしは反射特性および吸収特性であり、この場合、ストップ素子14における反射が高い銅層9(図1を参照されたい)における反射に相当して同様に高いこととは無関係にレーザビーム12のエネルギは、状況によって上記のナノ粒子を溶融させるのにも使用される。
【0034】
上記のナノ粒子用の別の材料は、例えば銅、すず、鉛、アルミニウム、「ナノ」粒子に加工することの可能な一般的な金属であるが、セラミック材料であることもある。
【0035】
接着剤としては、例えばエポキシ樹脂が有利であることが判明している。上記の付加層ペースト用にはαテルピネオールベースの溶剤を使用可能である。
【0036】
このような接着剤または類似の接着剤および上で示したナノ粒子により、例えば、ペースト状の層ペーストを作製することができ、このペーストは、プリント基板素子1の作製中に容易に(その他のコンポーネントに対する添加物として)被着することができる。殊にストップ素子14用にこのペーストを被着するために有利であるのは、スクリーン印刷またはインクジェット印刷を含めた多数の印刷技術および例えばスプレコーティングも含めた他の多数のコーティング技術である。まず表面層の形態で上記のペーストを被着し、その後この表面層を構造化することも可能である。ここでこの構造化は、上記のペーストに対して感光特性を設けた場合には、(後続の現像プロセスを伴う)それ自体公知のフォト露光法によって行うことができる。以下では図5および6に基づいてこれをさらに詳しく説明する。
【0037】
レーザビーム12のエネルギは、動作時に上記の微粒子によって取り込まれ、このエネルギは上記の微粒子を部分的または完全に溶融させるために利用される。さらにレーザビーム12は、部分的または完全に反射される。さらに1つの利点は、上記の微粒子が熱的に接触接続していることにより、レーザビーム12が当たる領域は冷却される。それは、これらの微粒子によって熱が運び去られるからである。
【0038】
本発明のレーザビームストップ素子14は殊に有利にはつぎのような利用に適している。すなわち、レーザビーム12によってプリント基板素子1に切り込みを入れて、例えばレイヤの一部分、例えばレイヤ2(図1を参照されたい)を除去し、この箇所において固定の樹脂部分を除去することにより、場合によってはフレキシブルなプリント基板領域を得るといった利用に適しているのである。このことはそれ自体公知である。
【0039】
プリント基板素子のレイヤの部分を除去する際には、冒頭に述べたように、除去可能な分離層を組み込んでこの箇所における層の相互の接着を阻止することも公知である。しかしながらこの分離レイヤは、レーザビーム12に対するストップ素子としてのレイヤとしては作用しない。図4の分離レイヤ15,16または図4Aにおけるただ1つの分離レイヤ16のような分離レイヤを設けることと、図3に基づいて詳しく説明したレーザビームストップ素子14の被着とを組み合わせることができる。これについては図4および4Aを参照されたい。この際には付加的なストップ素子ないしはただ1つのストップ素子14を2つの分離レイヤ15,16の間に被着する(図4を参照されたい)か、またはこれを分離レイヤ16に被着する(図4Aを参照されたい)ことが可能である。当然のことながら、状況に応じて、さらに別の分離レイヤ16を下に被着することなく、上記のような分離レイヤ(例えば図4の15)の下にストップ素子14を被着することも可能である。
【0040】
図4および図4Aの場合、例えば参照符号8を有する上側レイヤ5の一部分17を、残りのプリント基板素子1から除去することも可能である。この部分17は、それ自体閉じた形状、例えば矩形とすることが可能であり、その境界部は、少なくとも1つの分離レイヤ15,16ならびにストップ素子14に構成され、レーザビーム12によって部分17の周りを取り囲んで切り込みが入れられて最終的に部分17が除去される。このことは図4および4Aには詳しく示されていないが、本発明によるステップ素子14を除けば、それ自体公知の技術である。
【0041】
図5では断面図で、例えば図1のプリント基板素子1のレイヤ3のようなレイヤが略示されており、これは樹脂層6と、これに被着されかつすでに構造化された導体層9とを有している。上記のような構造化を行った結果、導体層9には領域13が設けられており、ここにはもはやメタライゼーションはない。図5のこのレイヤは、例えば図1〜3に記載されたマルチレイヤプリント基板素子1の内側レイヤ用に設けられている。
【0042】
領域13に独特なストップ素子14を被着するため、この実施例ではまず粒子表面層14’をレイヤ3の上に設ける。これは、例えばペーストの塗布およびかき落としにより、スプレコーティング(spray-coating)により、印刷により、または類似の公知の手法によって行うことができる。ナノ粒子および接着剤を有するペーストからなる表面層14’には付加的に、例えば市販のフォトイニシエータなどの感光性素子が、網目を形成すべき接着剤と共に施される。
【0043】
これにより、マスクを通過する相応の露光により、表面層14’の一部分を硬化させ、また一部分をエッチング剤に対して腐食可能(ないしは写真によって現像可能)に構成することができるため、後続のエッチングプロセス(ないしは現像ステップ)において、導体層、例えば9の構造化の場合と全く同様にこれを行って、構造化された付加層がストップ素子14として得られるのである。これについては図6を参照されたい。
【0044】
つぎに内側レイヤ3は、図6のように外側レイヤ2,4(ならびに場合によっては、図示されていない別の複数の内側レイヤと共に)と一緒に公知のように上下に積層され、(通例それ自体公知のように一種の「本」のタイプのこのようなレイヤパケットとに関連して)圧搾機に配置され、つぎに加熱されてプレスされてレイヤ2,3および4が互いに接着によって接続される。これについてはまったく概略的にしか示していない図6のプレス部分18,19を参照されたい。(ここで述べておきたいのは、当然のことながら熱によらずに接続させることもできることであり、この熱によらない接続は、本発明によるストップ素子14が組み込まれる場合にも使用することができる。)
このようなプレスは当然のことながら、付加ストップ素子14が別の仕方、例えばスクリーン印刷により、所望の箇所に(すなわち「構造化」されて)被着された場合にも行うことができる。
【0045】
導体層8,9,10,11とは無関係に本発明によるステップ素子14を達成する別の1手法の特徴は、例えば、適当なレイヤまたは層に適切な手法で上記の粒子を充填剤として直接組み込むことである。したがってこの場合に粒子は直接、「充填剤」としてプリント基板素子の樹脂層の樹脂システムに含まれ、また場合によって分離レイヤ15ないしは16(この場合にはこのような分離レイヤがただ1つだけ存在する)にも含まれているのであり、この場合、関連する樹脂層ないしは分離レイヤは、レーザストップ層またはレーザストップレイヤ、すなわちレーザストップ素子14として機能し、ここでもこれは導体層8,9,10,11には依存しないのである。
【0046】
ストップ素子14を設ける別の選択肢の特徴は、あらかじめ作製したストップ素子14をフィルム(テープ)とすることであり、ここでこのストップ素子フィルムは、(樹脂)層にラミネートされるかないしは層構造体に入れられる。
【0047】
レーザビーム12用の本発明の付加ストップ素子14により、殊に上記の粒子およびそのサイズないしは形状によって調整される反射特性ないしは吸収特性を介して、ストップ特性を変化させることができる。ここで有利であるのは、付加ストップ素子14を上記のマルチレイヤ構造のあらゆる所、すなわち、プリント基板素子1を切り込むまたは孔開けする際のレーザビームの進入深さの境界が後で所望される場所に取り付けられることである。この可変の取り付け箇所も、上記のフレキシブルな被着手法と同様に殊に有利である。またここで有利であることが判明したのは、上記の導体層を構造化してエッチングした後、上記のナノ粒子と共にペーストを層の形態で印刷するか、別の形態でプリント基板素子に付加できることであり、その際には、レーザビームをストップすることができるベースレイヤという意味での銅レイヤを使用する必要はない。レーザビーム12が付加ストップ素子14に当たると、上記のように微粒子はレーザビームを反射するかないしは場合によっては部分的または完全に溶融して焼成して、このレーザビームがプリント基板素子にさらに進入することを阻止する。
【0048】
上記のように殊に有利な実施例に基づき、本発明を説明して来たが、当然のことながら本発明の枠内で種々の変更および補正が可能である。例えば、図面において、ここまで説明したかぎりでは、レーザストップ素子14はつねに、(ほぼ)すでに構造化された導体層9を有する1平面内に示されている。しかしながら同様に考えることができまた可能であるのは、付加ストップ素子14を樹脂層、例えば6内に取り付けることであり、これは、分かり易くするため図3では(分かり易くするため付加的に)破線で示されている。このことは、上記の樹脂層が、接着ないしはプレスの前に例えば2つの層からなる場合に殊に簡単に可能である。2つの層からなるのは、例えばエポキシ樹脂層などの複数の樹脂システムの場合である。これらの樹脂システムは、いわゆるプリプレグによって形成され、これらは元々シート状であり、またに簡単に互いに上下に載置してプレスすることができ、これによって例えば高い絶縁層が得られる。感光性ペーストの場合、複数の技術を適用することができ、ここではフォトプロセスとして、1段階現像プロセスをただ1回使用する。上記の付加層ペーストにさらに関連するものとして、例えば、アルミニウム粒子が充填されたペーストまたはインキがあり、ここでこのアルミニウム粒子は、数マイクロメートル(例えば約4μm)の大きさのオーダを有し、また近似的に小板形状であり、これによって被着(印刷)する際に層状の配置が達成される。
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6