【実施例】
【0012】
図1〜
図14に、実施例とその特性とを示す。
図1〜
図6に実施例の電気化学ガスセンサ2の構造を示し、3は金属製で底のある円筒状容器であり、4は金属の円板から成る底板で、孔5を備えている。また底板4は容器3に設けたくびれ6により支持されている。容器3の、くびれ6よりも下の部分は水溜7を構成し、水8を蓄えている。水は真水でも電解質を含んだ水でも良く、シリカなどによりゲル化した水、潮解性塩を含む水、吸水性高分子等に保持させた水などでも良い。
【0013】
容器3の内で、底板4よりも上の部分を側面部10と呼び、形状は円筒状である。底板4上にガスケット12が配置され、ガスケット12の中心の開口部にガスセンサ本体14が置かれ、平面視で円形の拡散制御板16を介して検出すべき雰囲気を供給する。また拡散制御板16を覆うように金属製の封孔体18が配置されている。封孔体18は軸方向Dを中心とする回転に対して対称である。側面部10の先端、即ち各図での上方をカシメることにより、側面部10とガスケット12との間及びガスケット12と封孔体18との間を気密にし、かつ封孔体18を容器3に取り付ける。
【0014】
図2に実施例の主要部を示し、Dはガスセンサ2の軸方向を示し、軸方向Dは底板4、封孔体18,及び容器3の軸方向で、特許請求の範囲での第1の方向である。Fは側面部10の先端の方向を示し、軸方向Dに対し先端方向Fは斜めに底板4の中心側を向いている。そして方向D/F間の角度を傾斜角θとし、傾斜角θは0°と90°との間の角度で、好ましくは10°〜60°とし、より好ましくは20°〜50°とする。この明細書で、上とは軸方向Dを向く方向で、下とは軸方向Dとは反対の方向である。左右は底板4の表面に平行に、軸方向Dと直角な方向である。また実施例の各部材は、軸方向を回転軸として回転させても形状が変わらず、平面視で円形である。
【0015】
側面部10の先端をカシメることにより、先端の向きが軸方向Dに対し斜め内側に曲げられ、これに伴ってガスケット12の先端も斜め内側に曲げられ、また封孔体18の先端も斜め内側に曲げられる。20は側面部10とガスケット12との接触部、21はガスケット12と封孔体18との接触部で、これらを気密にする必要があり、好ましくは接触部20,21は平行である。22はガスケット12の底面と底板4との接触部で、この部分に隙間が生じないことが好ましい。23はガスケット12の上面と封孔体18の底面との接触部で、隙間無しに接触することが好ましい。
【0016】
図3にガスケット12等を取り付ける前の、容器3の形状を示し、側面部10は底板4よりも上方にリング状に伸びている。
図4はガスケット12の構造を示し、平面視で円形で中央に円形の開口24を備え、その左右両側は鉛直方向断面でL字状で、リング状の底部25とその周囲で上方へリング状に突き出した突起26とから成っている。ガスケット12はポリエチレン,ポリプロピレン,ナイロン,テトラフルオロエチレンなどの、可塑性と弾性とを備えたプラスチックが好ましく、これ以外に天然ゴムあるいは合成ゴムなどでも良い。
【0017】
図5はガスセンサ本体14と拡散制御板16とを示し、これらはいずれも円形である。28は多孔質の紙,プラスチックなどの膜状のセパレータで、液体電解質を保持している。セパレータ28の例えば上下両面に検知極29と対極30とがあり、これらは多孔質のカーボンシートなどにプラチナ/カーボンなどの電極材料を支持させたものである。なおセパレータ28に代えて、固体電解質膜などを用いてもよい。検知極29と拡散制御板16との間、及び対極30と底板4の間に、多孔質のカーボン繊維シート等を配置しても良い。拡散制御板16はチタンなどの薄板で、拡散制御孔17を備え、検知極29への雰囲気の供給を制御し、検知極29と封孔体18とを電気的に接続する。また対極30は底板4を介して容器3と電気的に接続されている。
【0018】
図6は封孔体18の構造を示し、32は下部の金属部材,34は上部の金属部材で互いに溶接されている。金属部材32,34間のスペースに、活性炭などのフィルタ材38が収容され、押さえシート39,39でフィルタ材がこぼれないようにしてある。また孔36,37を介して、拡散制御板16側へ雰囲気を供給する。拡散制御板16側(下側)の金属部材32は外周にリング状のフランジ部33を備え、フランジ部33の外周を上向きに折り曲げてリング状の突起40とする。なお下部の金属部材32は円板状で、フランジ部33がガスケット12のL字の底部25の上面に接し、突起40はカシメによりガスケット12のL字の突起26の内面に気密に接する。上部の金属板34の外周は底板4と平行になるように折り曲げられてフランジ部35となり、フランジ部33,35が互いに溶接されている。
【0019】
図7に電気化学ガスセンサ2のカシメ方法を示す。
図3の状態の底板4上にガスケット12をセットし、ガスケット12の開口にガスセンサ本体14と拡散制御板16をセットし、拡散制御板を覆うように封孔体18をセットする。なおこれらのセットの順序は任意である。42はプレス用に金型で、その中心部に円錐状の孔43を備え、円錐状の面44により側面部10を押圧変形させてカシメる。
図7で面44と軸方向Dとの間の角は、側面部10の先端と軸方向Dとの角θとほぼ等しい。
【0020】
実施例では拡散制御板16を設けたが、これはガスセンサ本体14へ供給する雰囲気の量を一定にするためで、設けなくても良い。またガスセンサ本体14は平面視で円板状で、その構造や材質は任意で、検知極と対極の他に参照極をも設けても良い。本発明は、封孔体18とガスケット12と容器3とをカシメることにあり、それ以外の部分は公知技術に従い適宜に変形できる。
【0021】
図8は変形例のガスセンサを示し、水溜のある容器3に代えて、水溜のない容器46を用いる。このため容器46の底部47上に、ガスケット12とガスセンサ本体14とを配置し、側面部10に代えて、容器46の外周部のリング状の突起48を用いる。他の点では実施例と同様である。
【0022】
図9は第2の変形例を示し、フィルタ材38を用いない。このため孔54を備えた容器50を用い、その底部52上にガスケット12とガスセンサ本体14とを配置する。なおこの例ではガスセンサ本体14の厚さを大きくし、拡散制御板16を設けていない。また金属の蓋部材58を用い、その底面を蓋59としてガスケット12及びガスセンサ本体14に接触させ、蓋59の周囲に上向きのリング状の突起60を設けて、突起56,60をガスケット12を介してカシメる。他の点では実施例と同様である。
【0023】
実施例のガスセンサ2の他に、側面部10の先端が水平で底板4の表面と平行になるようにカシメたガスセンサを作製し、これを比較例とした。
図10に実施例のガスセンサの断面写真を、
図11に比較例のガスセンサの断面写真を示す。比較例のガスセンサでは、側面部の先端とガスケットとの間に隙間があり、側面部の先端とガスケットとが気密にシールされている範囲は僅かしかない。またガスケットの底面は底板から浮いて、内周側が上、外周側が下となるように傾いている。ガスケットの底部の上面と封孔体18の底面の外周部との間にも隙間がある。これらのためガスセンサ2の内外の気密性にばらつきがあり、例えば水溜の水が底板の孔5を経由せずに蒸発している可能性がある。またガスセンサ本体14へ、封孔体18を迂回するように雰囲気が達している可能性があり、封孔体18が拡散制御板17を押さえる圧力にもばらつきがある可能性が高い。
【0024】
図10の実施例では、側面部10の先端とガスケット12の先端、及びガスケット12の先端と封孔体18の先端が気密にシールされている。側面部10の先端を斜めにカシメると、ガスケットの突起26の先端も斜めに曲げられ、また封孔体の先端も斜めに曲げられ、これらが互いに気密にカシメられる。ガスケット12の底面は底板4からやや傾いているものの、両者間の隙間は小さい。ガスケット12の上面と封孔体18の底面外周部との間に隙間は見られない。また封孔体18は周囲から斜め下向きの力を受けて、全体として下向きの力を受け、拡散制御板16を下向きに均一な力で押圧しているものと考えられる。これらのため、ガスセンサ2の内外でのシールが確実で、かつ形状と押圧力等のばらつきが小さい。
【0025】
図12は、実施例と比較例のガスセンサを、70℃の乾燥雰囲気に10日間保管した際の、水溜からの水の蒸散量を示す。比較例では蒸散量は0.12g〜0.17gの範囲でばらついているのに対し、実施例では0.12g±0.007gの範囲にまとまっている。蒸散量のばらつきが大きいと、水溜の水が無くなるまでの時間のばらつきが大きくなる。水溜はガスセンサ本体14へ水蒸気を供給して、電解質が導電性を保つようにするためのものである。そして水溜の寿命のばらつきはガスセンサの寿命のばらつきとなる。
【0026】
図13,
図14は、実施例(
図13)と比較例(
図14)のガスセンサでのCO感度の分布を示し、横軸はCO濃度当たりの出力電流を表し、単位は任意である。CO感度の分布の標準偏差は、実施例では比較例の約1/3である。このように実施例ではガス感度が揃ったガスセンサが得られる。なお電気化学ガスセンサはCO以外に、水素、エタノール、硫化水素等の種々のガスを検出できる。
【0027】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 水溜からの水の蒸散量のばらつきを小さくし、ガスセンサの寿命のばらつきを小さくできる(
図12)。
(2) ガス感度のばらつきを小さくできる(
図13,
図14)。
【0028】
カシメ時に側面部10の先端とガスケット12の突起26とが変形して、突起40の先端と気密に密着する。突起40はカシメ時に曲げても良く、あるいは当初から曲げておいてカシメ時の曲がりを僅かにしても良い。