(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693528
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ヒトの体液中のターゲットを特定することにより疾病を高速に検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-142452(P2012-142452)
(22)【出願日】2012年6月25日
(62)【分割の表示】特願2006-551826(P2006-551826)の分割
【原出願日】2005年2月9日
(65)【公開番号】特開2012-181211(P2012-181211A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2012年7月25日
(31)【優先権主張番号】60/542,303
(32)【優先日】2004年2月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506263745
【氏名又は名称】ラピッド パトゲン スクリーニング インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Rapid Pathogen Screening Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100182534
【弁理士】
【氏名又は名称】バーナード 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】フランツ アーベアル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シャイベンツーバー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ピー ザンブルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ダブリュー ヴァンダイン
(72)【発明者】
【氏名】ホセ エス ザンブルスキー
【審査官】
三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−520617(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0064526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中の病原体およびアレルギーに関連する成分から選択されるターゲットを検出する方法において、次の工程:
(a)体液試料を綿棒部材で非侵襲的に捕集する工程、
(b)前記綿棒部材を側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域に直接接触させる工程であって、前記試料が、前記綿棒部材と前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域とに接触する前には希釈されることがなく、かつ、前記綿棒部材の前記試料塗布帯域への接触に起因して前記体液試料の少なくとも一部が前記試料塗布帯域に直接的に放出される、工程であって、ここで、前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップは、前記試料塗布帯域内において少なくとも部分的に位置している複合帯域をさらに備えているとともに、前記ターゲットのための結合成分を少なくとも1種含んでいる、工程、
(c)前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域の側方上流に位置する吸収パッドに溶離媒体を適用して前記試料を前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の検出帯域に移動させる工程、ならびに
(d)前記試料を分析する工程
を有することを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記病原体が、ウィルス、細菌類、微生物および寄生虫から選択され、かつ、前記アレルギーに関連する成分が、アレルゲンおよび抗アレルゲンから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲットが、結膜炎の原因物質または複数のかかる原因物質である病原体であり、かつ/または、前記ターゲットが、結膜炎の原因物質または媒介物質または複数のかかる原因物質および/または媒介物質であるアレルギーに関連する成分である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットは、少なくとも1つの病原体およびアレルギーに関連する少なくとも1種の成分を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記試料は、0.1μl〜100μlである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記工程(a)は、試験すべき体液を含む身体部分の表面上で、前記綿棒部材でぬぐい操作するかまたは軽くたたく操作を行う副工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記複合帯域中の結合成分は、前記溶離媒体で拡散可能な標識化された結合成分を少なくとも1種含み、かつ、
前記複合帯域は、前記吸収パッドと前記試料塗布帯域の間に位置している、
方法。
【請求項8】
前記工程(d)は、免疫学的検出または酵素検出を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
結膜炎の存在を検出する方法において、次の工程:
(a)涙液試料を無菌の綿棒部材で非侵襲的に捕集する工程、
(b)前記綿棒部材を側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域に直接接触させる工程であって、前記涙液試料が、前記綿棒部材と前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域とに接触する前には希釈されることがなく、かつ、前記綿棒部材の前記試料塗布帯域への接触に起因して前記涙液試料の少なくとも一部が前記試料塗布帯域に直接的に放出される、工程であって、ここで、前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップは、前記試料塗布帯域内において少なくとも部分的に位置している複合帯域をさらに備えているとともに、前記ターゲットのための結合成分を少なくとも1種含んでいる、工程、
(c)前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域の側方上流に位置する吸収パッドに溶離媒体を適用して前記涙液試料を前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の検出帯域に移動させる工程、ならびに
(d)前記試料を分析する工程
を有することを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記涙液試料は、結膜炎の原因物質または複数のかかる原因物質である病原体の存在について分析され、かつ/または、前記涙液試料は、結膜炎の原因物質または媒介物質または複数のかかる原因物質および/または媒介物質であるアレルギーに関連する成分の存在について分析される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、
前記複合帯域中の結合成分は、前記溶離媒体で拡散可能な標識化された結合成分を少なくとも1種含み、かつ、
前記複合帯域は、前記吸収パッドと前記試料塗布帯域の間に位置している、
方法。
【請求項12】
体液から分析対象を検出するための検査キットであって、
(a)側方流クロマトグラフィー試験ストリップであって、
(i)試料塗布帯域;
(ii)前記試料塗布帯域の側方下流に位置する検出帯域;
(iii)当該側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上にある吸収パッドであって、体液試料を前記検出帯域に移動させるための溶離媒体を適用するための吸収パッドであるとともに、前記試料塗布帯域と前記検出帯域からは側方上流に位置している吸収パッド;及び
(iv)前記試料塗布帯域内において少なくとも部分的に位置する複合帯域であって、前記溶離媒体で拡散可能な、分析対象のための標識化された結合成分を少なくとも1種含む複合帯域
を含む側方流クロマトグラフィー試験ストリップと、
(b)無菌の綿棒部材であって、前記体液試料に接触する位置にあるときに当該体液試料を非侵襲的に捕集するとともに、前記試料塗布帯域に接触したときに前記体液試料の少なくとも一部を当該体液試料の希釈を行うことなく前記試料塗布帯域に直接的に放出する綿棒部材と
を含み、
前記分析対象が、病原体および/またはアレルギーに関連する成分から選択されたターゲットであり、ここで、前記病原体が結膜炎の原因物質または複数のかかる原因物質であり、かつ、前記アレルギーに関連する成分が結膜炎の原因物質または媒介物質または複数のかかる原因物質および/または媒介物質である、
検査キット。
【請求項13】
前記複合帯域が前記吸収パッドおよび前記試料塗布帯域の間に位置する、
請求項12に記載の検査キット。
【請求項14】
体液から分析対象を検出するためのデバイスであって、
(i)側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域;
(ii)前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域の側方下流に位置する検出帯域;
(iii)吸収パッドであって、前記体液試料を前記検出帯域に移動させるための溶離媒体を適用するための吸収パッドであり、かつ前記側方流クロマトグラフィー試験ストリップ上の試料塗布帯域と前記検出帯域からは側方上流に位置している吸収パッド;
(iv)無菌の綿棒部材であって、前記体液試料に接触する位置にあるときに当該体液試料を非侵襲的に捕集するとともに、前記試料塗布帯域に接触したときに前記体液試料の少なくとも一部を当該体液試料の希釈を行うことなく前記試料塗布帯域に直接的に放出する綿棒部材;及び
(v)前記試料塗布帯域内において少なくとも部分的に位置する複合帯域であって、前記溶離媒体で拡散可能な、分析対象のための結合成分を少なくとも1種含む複合帯域
を含み、
前記分析対象が、病原体および/またはアレルギーに関連する成分から選択されたターゲットである、
デバイス。
【請求項15】
前記病原体が結膜炎の原因物質または複数のかかる原因物質であり、かつ、前記アレルギーに関連する成分が結膜炎の原因物質または媒介物質または複数のかかる原因物質および/または媒介物質である、
請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
前記複合帯域が前記吸収パッドおよび前記試料塗布帯域の間に位置する、
請求項14記載のデバイス。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記工程(b)が前記綿棒部材を前記試料塗布帯域と液接触させるように位置決めする副工程を含む、
方法。
【請求項18】
請求項9に記載の方法であって、
前記工程(b)が前記綿棒部材を前記試料塗布帯域と液接触させるように位置決めする副工程を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット、例えばヒトの体液中の病原体および/またはアレルギーに関連する成分を検出するための方法に関し、この場合体液試料は、綿棒部材で捕集される。前記試料は、綿棒部材から試料分析デバイスに移され、この試料分析デバイス上でターゲットの分析は、例えば免疫化学的手段または酵素的手段によって行なうことができる。試験結果は、短時間の間に提示されることができ、直接に使用者によって読取ることができる。更に、本発明による方法を実施するための試験キットが提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
治療に関わる問題を高速に分析することは、種々のウィルス性作用因子および他の病原性微生物学的作用因子(細菌等)を診断および治療する際にますます重要視されている。殊に、感染疾病の急性状態において、医師は、観察される症候の原因となる作用因子の直ちに検出する必要性をもっている。
【0003】
従来技術には、唾液試料中のHIV特異的抗体のための高速アッセイが開示されている。唾液試料は、試料棒により取得される。唾液試料は、試料緩衝液中で希釈され、イムノアッセイの側方流は、希釈された唾液試料中に浸漬される[
特許文献1(米国特許第5714341号明細書
)]。
【0004】
特許文献2(ドイツ連邦共和国特許第19622503号明細書
)には、唾液または汗中の不法の麻酔剤を検出するために、イムノアッセイの側方流を適用することが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5714341号明細書
【特許文献2】独国特許発明第19622503号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Uchio他,Ophtalmology,104(1997),1294-1299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、レッドアイまたはピンクアイとして公知である結膜炎は、ウィルス、細菌類およびアレルゲンを含む種々の異なる作用因子によって引き起こされうる。異なる病因論には、異なる治療が必要である。感染性の結膜炎は、典型的に接触感染性である。結膜炎は、一般に肉眼的検査方法および(常用の眼球検査)細げき灯生体顕微鏡によって臨床学的に診断される。この方法は、特異的な感染の作用因子についての情報を提供するものではない。特異的な(病原体のタイプの)診断が必要である場合には、下円蓋用の綿棒部材が実験室分析のために送られ、病原体のタイプを測定することができる。実験室分析にとって好ましい方法は、直接に確認される免疫蛍光法、ELISAまたはPCRでの細胞培養である。この診断学的戦略の欠点は、実験室分析に典型的には2日間ないし10日間を必要とし、複雑な診断用装置を利用し、結果の実施および解釈の双方に習得した技能を必要としうることにある。この期間は、ある病原性作用因子で特異的に分級されえない/ある病原性作用因子と特異的に関連付けることができない結膜炎の潜在的な感染性の形の適当な処置にとって問題である。
【0008】
非特許文献1(Uchio他による刊行物(Ophtalmology 104(1997), 1294-1299)
)には、涙液試料中のアデノウィルスを検出するための方法が開示されている。この方法は、涙液の試料を捕集し、検体をペーパーディスク上で酵素免疫吸着によって検出することよりなる。しかし、この検出法は、特異性および感知能力を欠如している。
【0009】
従って、本発明の目的は、病原体、例えば体液中の細菌性またはウィルス感染作用因子を検出するための非侵襲的に感知しうる高速な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
第1の視点で、本発明は、次の工程:
(a)体液試料を綿棒部材で非侵襲的に捕集する工程、
(b)この試料を試料分析デバイス上の塗布帯域に移す工程、および
(c)この試料を分析する工程を有することを特徴とする、体液中の病原体および/またはアレルギーに関連する成分から選択されるターゲットを検出する方法に関する。
【0011】
もう1つの視点において、本発明は、次の工程:
(a)涙液試料を綿棒部材で非侵襲的に捕集する工程、
(b)この試料を試料分析デバイス上で塗布帯域に移す工程、および
(c)この試料を分析する工程を有することを特徴とする、結膜炎を診断する方法に関する。
【0012】
更に、なお1つの視点において、本発明は、
(a)体液試料を非侵襲的に捕集するための綿棒部材と、
(b)検出帯域を有する試料分析デバイスと
を含む試験キットであって、この検出帯域が病原体および/またはアレルギーに関連する成分から選択された少なくとも1つのターゲットの存在および/または量を測定するための試薬を含有する、前記試験キットに関する。
【0013】
更に、なお1つの視点において、本発明は、
(a)涙液試料を非侵襲的に捕集するための綿棒部材と、
(b)検出帯域を有する試料分析デバイスと
を含む試験キットであって、この検出帯域が病原体および/またはアレルギーに関連する成分から選択された少なくとも1つのターゲットの存在および/または量を測定するための試薬を含有し、前記ターゲットが結膜炎の原因物質または媒介物質または複数のかかる原因物質および/または媒介物質である、前記試験キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】クロマトグラフィー試験ストリップの形の試料分析デバイスを示す略図。
【
図2】
図1に示されているようなストリップを含むプラスチックハウジング(6)を示す略図。
【
図3】綿棒部材を示すかまたは試料を捕集するための捕集デバイスを示す略図。
【
図4】
図1および2に記載の試料分析デバイスと
図3に記載の綿棒部材との組合せを示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面に関する記載
図1は、吸着パッド(1)を形成する複数の異なるストリップ材料と塗布帯域(2)と検出帯域(3)と廃棄帯域(4)とを有するクロマトグラフィー試験ストリップの形の試料分析デバイスを示す。ストリップ材料は、吸着性プラスチック裏地(5)上に配置されている。吸着パッド(1)は、検出帯域(3)への試料の移動を簡易化する目的で溶離媒体を添加するために備えられている。
【0016】
図2は、
図1に示されているようなストリップを含むプラスチックハウジング(6)を示す。試料塗布用窓(7)は、綿棒部材をストリップ
と接触させるために備えられている。試験結果は、窓(8)から読取る際に表示される。
図3は、綿棒部材を示すかまたは試料を捕集するための捕集デバイスを示す。
【0017】
綿棒部材は、該綿棒部材上に固定された試料捕集材料(11)を有するプラスチック体(9)と、綿棒部材を操作上、試験ストリップと接触させた際の窓からの読取りに対応する開口(10)とを備えている。
【0018】
図4は、
図1および2に記載の試料分析デバイスと
図3に記載の綿棒部材との組合せを示す。
【0019】
好ましい実施態様の詳細な記載
本発明は、体液から非侵襲的な手段によって捕集された試料中のターゲット、例えば病原体および/またはアレルギーに関連した成分を検出するための感知しうる高速な方法を提供する。病原体は、ウィルス、微生物、例えば細菌類および寄生虫、例えばアメーバまたは線虫から選択される。アレルギーに関連した成分は、アレルゲンおよび抗アレルギー性成分から選択される。検出は、ターゲット、例えば病原体の直接の検出および/またはターゲット、例えば試験すべき液体試料中に存在する病原体に抗する抗体の検出を含むことができる。好ましくは、前記方法は、複数のターゲットを同時に測定することを含む。
【0020】
体液は、好ましくは(口腔、鼻孔、膣腔および眼孔の)粘膜液体、涙から選択された体表面からの液体、腺からの分泌物および病巣または水疱、例えば皮膚上の病巣または水疱からの分泌物である。よりいっそう好ましくは、試料は、口腔液、鼻孔液、眼孔液、生殖液および直腸液から選択され、および皮膚の病巣または水疱からの分泌物から選択される。最も好ましくは、試料は、眼孔液である。本方法の重要な利点は、医学的対診時間内、例えば数分間で結果が提供されることである。好ましくは、結果は、20分間までの時間、よりいっそう好ましくは15分間までの時間で提供される。また、試験が非侵襲的である場合には、患者に対して殆んど危険性をもたらさない。従って、最も有用な処置は、特異的な病原体に対して時間に基づいて適用されうる。更に、公知技術の方法による利点は、数マイクロリットルだけの試料が分析の実施に必要とされることである。試料は、好ましくは約0.1μl〜約100μl、よりいっそう好ましくは約0.2μl〜約20μl、最も好ましくは約0.5μl〜約10μlである。
【0021】
本発明は、試料試験キットにより実施されることができる。試験キットの取り扱いは、付加的な実験器具を必要とせず、さらに試薬または器具の取り扱いを必要としない。下記に記載された本発明の別の重要な利点は、試料が分析デバイスに移る前に試料を希釈する必要がないので、検出限界が通常の有用な診断試験よりも典型的に10〜100倍低いことである。それ故に、開示された方法は、公知技術水準の方法よりも感知能力を有し、正確であることが証明された。
【0022】
本発明には、体液からの病原体の治療に関わる問題を高速に分析するための非侵襲的な方法が開示されている。この方法は、ヒトおよび動物、例えばペットまたは家畜における診断に適している。1つの好ましい適用は、涙液、例えばヒトの涙液中の病原体を検出することである。この実施態様において、検出すべき病原体は、結膜炎の原因物質または複数のかかる原因物質である。例えば、病原体は、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、クラミジア、サイトメガロウィルスおよびこれらの組合せの群から選択される。よりいっそう好ましくは、複数の病原体は、単独の試料分析デバイス上で検出される。例えば、試料分析デバイスは、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、クラミジア、サイトメガロウィルス、シュードモナス、連鎖球菌、ヘモフィルス、ブドウ球菌、アメーバ、特にアカントアメーバおよび線虫、特に回施糸条虫の群から選択される複数の病原体、特に少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの病原体を同時に検出することができる。よりいっそう好ましくは、前記方法は、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、クラミジア、サイトメガロウィルスおよびアカントアメーバの同時の検出を有する。
【0023】
付加的に、本発明は、アレルギーに関連する少なくとも1つの成分、特にアレルゲン(例えば、花粉、ダスト等)および/または抗アレルゲン、殊に上記したように体液中でアレルゲン攻撃(例えば、IgE、ヒスタミン等)に応答して体内で生産される成分の治療に関わる問題を高速に測定するための非侵襲的な方法を提供する。更に、特に本発明は、涙液、例えばヒトの涙液中のアレルギーに関連する成分を診断するための方法およびデバイスに関する。1つの好ましい実施態様において、アレルギーに関連する少なくとも1つの成分の測定は、上記の記載と同様に少なくとも1つの病原体の測定と兼用されていてよい。
【0024】
本発明による方法において、体液試料は、それぞれ捕集デバイスまたは綿棒部材で非侵襲的に捕集される。捕集工程は、有利に試験すべき体液を含む身体の表面上で綿棒部材でぬぐい操作するかまたは軽くたたく操作を行なうことを有する。通常、綿棒部材は、無菌である。綿棒部材は、乾燥されていてよいし、捕集工程前に液体で前処理されていてよい。例えば、温和な旋回動作を用いて、無菌の綿棒部材は、関係する身体表面または粘膜に適用されることができ、体液中に含まれている任意の病原体および/またはアレルギーに関連する成分を捕捉することができる。
【0025】
綿棒部材は、試料分析デバイスとは別の部分であることができ、試料は、綿棒部材上の試料の少なくとも一部分が試料分析デバイスに移動される条件下で試料分析デバイスを綿棒部材と接触させることによって移動される。この実施態様において、綿棒部材は、有利に分析デバイス上の試料塗布帯域と接触され、次にこの分析デバイスから試料は、検出帯域に移動される。接触面は、有利に試料分析デバイスとの接触位置に綿棒部材を固定しており、この場合綿棒部材の試料捕集帯域は、分析デバイスの試料塗布帯域と直接に接触している。従って、綿棒部材および/または分析デバイスは、有利に予め定められた位置に2つの部分間で固定された接触面を提供するための固定手段を有する。また、綿棒部材は、試料分析デバイスの組み込まれた部分であることができ、移動は、綿棒部材上の少なくとも一部分の試料が試料分析デバイス上の検出帯域へ通過することを有する。
【0026】
綿棒部材から試料分析デバイス上の検出帯域への試料の移動は、有利に直接的な移動であり、即ちこの移動は、綿棒部材上での試料の前処理なしに行なわれる。
【0027】
好ましくは、移動は、溶離媒体、例えば緩衝液または水での綿棒部材からの試料の溶離を含む。溶離媒体は、外部の源から添加されてもよいし、例えば分析デバイス内の溜めとして備えられていてもよい。更に、移動は、好ましくはクロマトグラフィー処理でありおよび/または試料分析デバイス上での検出帯域への液体の毛管移動である。
【0028】
好ましい実施態様において、試料分析デバイスは、クロマトグラフィー試験ストリップ、例えば側方流試験ストリップを備えている。試料分析デバイスは、試料塗布帯域、検出帯域、場合によっては廃棄帯域、場合によっては担体裏地、場合によってはハウジングおよび場合によっては結果を読取るための開口を備えていてよい。検出帯域内での試料分析は、標準的な方法、例えば免疫学的検出方法または酵素検出方法によって実施されてよい。好ましくは、検出方法は、ターゲット、例えば試験すべき病原体、または前記ターゲット、例えば病原体に対する抗体または他の受容体を特異的に結合しうる試験試薬の使用および例えば酵素検出または直接の標識物質群、例えばコロイド状金による結合された実体のその後の視覚化を有する。
【0029】
殊に好ましい実施態様において、綿棒部材は、側方流試験ストリップ上に置かれている。この工程で捕集された標本は、免疫クロマトグラフィー試験ストリップまたは酵素試験ストリップ上に直接に移動される。試験ストリップは、1つまたは幾つかの毛管活性のフリースまたは膜から構成されている。検出法は、直接に試料移動で開始されるかまたは試料分析のために塗布されるべき溶離媒体を必要としうる。好ましくは、この溶離媒体は、簡単な水道水である。免疫化学的試験ストリップの場合、選択された溶離媒体は、検出帯域に向かって移動し、それによって捕集デバイス内の接触位置を通過する。検体は、溶離媒体で希釈され、この溶離媒体で検出帯域に運搬される。検体は、検出帯域において、定量的方法および/または定性的方法によって、例えば免疫学的結合反応で測定される。
【0030】
試験ストリップは、1つの単一のクロマトグラフィー材料から形成されていてもよいし、好ましくは同一かまたは異なる材料から形成されかつ担体裏地上に固定された幾つかの毛管活性の材料から形成されていてもよい。前記材料は、輸送通路を形成するように互いに密接に接触され、この場合この輸送通路に沿って毛管力により駆動される液体は、出発帯域から流れ、かき出しの接触位置および検出帯域を通過してストリップの他端部で廃棄帯域に向かって流れる。
【0031】
更に、本発明には、上記方法を実施するためのデバイスおよび試験キットが開示されている。
【0032】
本発明による方法において、異なる免疫学的試験方法を使用し、細菌類成分またはウィルス成分を1つかまたは幾つかの免疫学的結合反応で検出することは、可能である。1つの好ましい実施態様において、クロマトグラフィー試験ストリップは、次の帯域を含む:
塗布帯域。
溶離媒体で移動しうる少なくとも1つの標識化された結合成分を含有する複合帯域。この結合成分は、検体および他の特異的な試薬に検出帯域で特異的に結合しうる。
第1の検体、例えば検体のために不動態化された特異的な結合成分を有する試験系列を検出するための第1の部分と、場合によってはさらに他の検体を検出するための部分と、少なくとも1つの対照部分、例えば試験キットの機能を示す指示薬の不動態化された結合成分を有する対照系列とを含む検出帯域。
【0033】
1つの好ましい実施態様において、複合帯域および検出帯域での検体のための特異的な結合成分は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体または組換え抗体であるかまたは病原体に結合しうる抗体の断片である。他面、特異的な結合成分は、病原体またはアレルゲンに抗して抗体に結合しうる抗原であってもよい。結合成分の他のタイプは、アプタマー(aptamer)または受容体のような生物有機化学的巨大分子である。複合帯域は、溶離液の走行方向に見て試料塗布帯域前、試料塗布帯域中または試料塗布帯域後に位置していてよい。試験系列は、複合帯域/塗布帯域後に位置しており、対照系列は、試験系列後に位置している。試験系列と対照系列は、共に検出帯域を有する。
【0034】
異なる結合成分は、検出方法のタイプに依存して、異なる帯域中に存在する。サンドイッチイムノアッセイにおいて、複合帯域中に標識化された不動態化されていない検体の結合成分を有することは、好ましい。結合成分は、試験系列で不動態化された結合成分に結合している検体との複合体を形成する。好ましくは、複合体結合成分の標識物質は、場合によっては検出可能な標識物質である。試験系列で複合体を形成させることは、標識物質を集中的に不動態化し、試験系列を裸眼で目視可能にし、肯定的な試験結果を示す。特に好ましいのは、直接的な標識物質、特に裸眼で最も良好に確認することができる金標識物質である。付加的に、電子的で測光法的な読取りは、よりいっそう正確な結果および検体の半量子化を得るために使用されてよい。他の標識物質は、ラテックス、蛍光体または燐光体であることができる。
【0035】
涙液を試験するために、試料は、ヘルスケアプロフェッショナルによって患者の眼から試料捕集デバイスを用いて捕集されることができる。試料捕集デバイスは、下まぶたの下部円蓋間でほんの数回ぬぐい操作されるかまたは軽くたたく操作が行なわれる。必要に応じて、捕集デバイスは、無菌の生理用食塩液でぬぐい操作されてよく、患者の不快感を減少させる。この方法は、常用の実験室分析のために標本を捕集する必要がある場合には、眼科学的実地において十分に公知である。一般に、試料捕集デバイスは、体液試料の受容に適している毛管活性の材料を備えている。1つの好ましい方法において、試料捕集材料は、セルロース、ポリエステル、レーヨンまたはアルギン酸カルシウムをベースとする繊維から形成されている。しかし、試料捕集デバイスは、ミクロ毛管および/またはミクロ通路を備えたミクロ技術化された機械的構造体として設計されていてもよい。
【0036】
試料が捕集された後、捕集デバイスは、試験ストリップを含むプラスチックハウジングに固定され(
図4)、それによって捕集アプリケーターは、ストリップの塗布帯域上に僅かに加圧される。捕集デバイスは、この位置で留まる。
【0037】
選択的な実施態様において、試料は、医務室または救急室で通常使用されるような標準的な綿棒部材によって取られる。その後、この綿棒部材は、試料捕集デバイスと同様に付加的なデバイスによりクロマトグラフィー試験ストリップの塗布帯域中に圧入される。
【0038】
別の好ましい実施態様において、試料は、綿棒部材によって取られ、試料捕集デバイスは、短時間でクロマトグラフィー試験ストリップの塗布帯域中に加圧される。短時間は、好ましくは20秒まで、特に0.1〜10秒の時間を意味する。試料の移動は、接触時間内で起こる。
【0039】
次の工程で、溶離媒体は、吸着パッドをクロマトグラフィー処理液中に浸漬することによって塗布される。吸着パッドは、免疫化学反応または酵素反応のための液体を搬送する、特に十分に吸着する材料から形成されている。好ましい溶離媒体は、イムノアッセイに常用されている水または緩衝液である。
【0040】
選択的に、溶離媒体は、分析デバイス内に、例えばアンプルまたはブリスタとして組み込まれていてよい溜め中に含まれている。溜めは、綿棒部材または試料捕集デバイスをこのデバイスの検出部分上に固定することによって開放されることができるか、または付加的な手段によって開放されることができる。
【0041】
15分間までの時間後、好ましくは2〜5分間内で、結果は、検出帯域中で読み取ることができる。結果は、試験系列の少なくとも部分的な領域および対照系列が色の変化を示した場合には、肯定的であると考えられる。
【実施例】
【0042】
実施例
患者の眼用綿棒からのアデノウィルスを検出するための試験キット。試験ストリップの構造は、
図1に示されている。
【0043】
吸着パッドのためのポリエステルフリースは、Binzer社, Hatzfeld在, ドイツ連邦共和国によって製造された。このフリースは、クラロン(curalon)10%で補強されたポリエステルフリースである。厚さは、1〜2mmの範囲内にあり、吸着能力は、1800ml/m
2である。
【0044】
塗布/複合体帯域は、0.32mmの厚さおよび500ml/m
2の吸着能力でポリエステル80部と粘稠なステープルファイバー20部とからなる。フリースは、次の溶液で含浸され、次に乾燥される:HEPES緩衝液100mmol/l、pH7.5、NaCl 100mol/l、520nmで10の光学濃度を有する濃度で金粒子と抗ヘキソン抗体との複合体。ヘキソンは、ヒトのアデノウィルスのキャプシド中に普通の存在する蛋白質である。金ゾルを標準法により製造した(Fres. Nature 第241巻, 第20〜22頁, 1973)。抗体との複合は、公知技術水準の方法により実施された(J. Immuno. Meth. 第34巻, 第11〜31頁, 1980)。試料の塗布は、塗布/複合帯域中で行なわれる。
【0045】
検出帯域は、Schleicher & Schuell社、ドイツ連邦共和国、によって製造された、公称孔径8μmおよび厚さ100μmを有するニトロセルロース(NC)膜から構成されている。試験系列は、金上で不動態化された抗体とは異なるエピトープに対して特異的であるヘキソン特異性抗体(標識化されていない)を含有する。対照は、試験系列と同様の抗体を含み、任意の過剰量のヘキソン特異性金を結合する。対照は、ヘキソンが試験が正しく行なわれていないことを示さないとしても任意の場合に出現するであろう。
【0046】
クロマトグラフィー材料は、液体通路を形成させるために互いに伝達が行なわれている。
【0047】
試料捕集デバイスは、
図3に示されている。試料捕集材料は、吸収材料、例えば高度に精製された綿繊維から形成されていてよく、この場合この綿繊維は、超音波溶接によってプラスチックデバイスに固定されている。選択的な材料は、ポリエステル、レーヨン、ポリアミドまたは他の繊維状ポリマー材料であることができる。
【0048】
アデノウィルス抗原(上記実施例中に記載されているように)を検出ための試験キットは、眼科医院の救急室内で使用され、"ピンク"アイ(伝染性角結膜炎)の臨床的画像を診断した。前記試験キットで試験された全ての患者から、第2の試料を取り、実験室内で分析した。
【0049】
この研究で使用された実験室用参照法は、細胞培養と、ヒトの涙液中のアデノウィルスの存在を測定するための通常の"実験室用金標準"である免疫蛍光(IF)検出(Rodrigues et al., Ophthalmology, 1979 Mar, 86(3): 452-464)との組合せであった。
【0050】
試験時間内で、次の結果が達成された:
【表1】
【0051】
この先行試験の結果は、100%の診断感度および91%の診断特異性と等価である。この値は、治療に関わる問題のデバイスの他の公知技術水準の診断特性を凌駕している。
【符号の説明】
【0052】
1 吸着パッド、 2 塗布帯域、 3 検出帯域、 4 廃棄帯域、 5 吸着性プラスチック裏地、 6 プラスチックハウジング、 7 試料塗布用窓、 8 結果読取り用窓、 9 プラスチック体、 10 開口、 11 試料捕集材料