【実施例】
【0029】
ガスタービンあるいは蒸気タービンのような軸流タービンは、複数のタービン段を有しているのが一般的であり、各段は角度的に間隔をおいて配置された可動ブレードの環状アレーを備えており、この環状アレーは角度的に間隔をおいて配置された静止したベーンの環状アレーの前に置かれており、この環状アレーの機能はタービン作動流体を可動なブレード上に案内することである。
【0030】
図1に関しては、可動ブレードの半径方向で外側要素が示してあり、この外側要素は翼要素10と弓状のブレードシュラウド11を備えており、このブレードシュラウドは翼要素10の半径方向での外側先端部上に取付けられており、かつそこと一体化されている。隣接したブレードシュラウド11は環状のシュラウドリングを形成するために協働する。円周方向に延びている静止ケーシング12は、可動ブレードの半径方向で外側に向かって配置されており、かつ可動ブレードを取囲んでいる。
【0031】
特に
図1の実施例において、ブレードシュラウド11は各々、軸方向に間隔をおいて配置され、半径方向で外側に円周方向に延びている複数のランド16により形成された半径方向で外側に溝付された面14を有しており、各ランド16には他と比べて引っ込んでいる、半径方向で内側の面要素18が続いており、この面要素18はランドと円周方向に同一の広がりをもっている。
図1には二つのランドを備えたシュラウド面が示してあるが、タービン設計の特有な環境において、都合が良くかつ役に立つ程度にできるだけ多くのランドを組込むことが考慮されているのは当業者の判断に基づいている。しかしながら、この後説明するように、シュラウド11と静止ケーシング12の間の間隙を流れる作動流体の漏洩を減らすために、複数のランド16があるのが普通である。
【0032】
図1の矢印19で示したように、作動流体は軸流タービンを流れて膨張し、かつ下流方向において可動なブレード翼要素10の間の流体流路に沿って移動する。ラビリンスシール20は、可動なブレードシュラウド11と半径方向で隣接した静止ケーシング12の間で封止を行い、可動なブレードの先端部でブレードシュラウド11を越える流体の漏洩を最小限度に抑える。
【0033】
図1の特別な実施例において、ラビリンスシール20は円周方向に延びており、かつ軸方向に間隔をおいて配置された複数の第一の封止フィン24を備えており、これらの封止フィンは可動なブレードシュラウド11の溝を付された面14上で、ランド16に向いた漏洩流体流路を横切り、静止ケーシング12から半径方向で内側に突出している。さらにラビリンスシール20は円周方向に延びており、かつ軸方向に間隔をおいて配置された複数の第二の封止フィン26も備えており、これらの封止フィンは同様に可動なブレードシュラウド11の溝を付された面14の半径方向で内側要素18に向いた漏洩流体流路を横切り静止ケーシング12から半径方向で内側に突出している。
【0034】
円周方向に延びている第一及び第二の封止フィン24,26は、第一の封止フィン24を各々第二の封止フィンが追従するように、軸線方向で静止ケーシング12に沿って交互に配置されている。円周方向に延びている第一及び第二の封止フィン24,26は、例えば静止ケーシング12内の円周方向に延びている凹部内で(図示していない)、知られるような加締め工程によって、独立した構成要素として製造されかつ固定されてもよい。代替え的に、機械加工あるいは鋳造工程によりケーシングと一体に封止フィンを製造することも可能である。
【0035】
第一及び第二の封止フィン24,26の各々の遠心端あるいは先端部は、可動なブレードシュラウド11の溝を付された面14の封止近傍にある。すなわちタービンの通常運転時には、封止フィンの遠心端と溝を付された面14の間には小さい半径方向の間隙がある。このような半径方向の間隙は1あるいは2mmのオーダーであり、かつタービン運転時に静止ケーシング12に対する可動なブレードシュラウド11の小さい半径方向の偏位により生じる、封止フィン24,26とブレードシュラウド11の隣接した金属の間の摩擦接触を防ぐか、あるいは改善する。このような摩擦接触により封止フィン24,26の先端部は摩耗し、そのために変形し、従ってラビリンスシール20の封止効果は減少する。使用するための正確な半径方向の間隙は、タービンの運転挙動をコンピュータモデリングすることにより計算することができ、あるいはリグ試験により確定される。
【0036】
選定される半径方向の間隙は、静止ケーシング12に対する可動なブレードシュラウド11の最大の半径方向の偏位時における第一及び第二の封止フィン24,26の先端部と隣接した可動なブレードシュラウド11の溝を付された面14の間の摩擦接点を防ぐのに一般的には十分であるが、外側の通常のタービン運転挙動である大きな半径方向の間隙は、第一及び第二の封止フィン24,26の先端部に隣接したブレードシュラウド11の溝を付された面14上で摩耗性材料27を用意することにより許容することができる。摩耗性材料27は、封止フィン24,26の先端部における材料に比べて軟質であるが、可動なブレードシュラウド11の半径方向の偏位中に封止フィン24,26の先端部によって擦り減らされる。従って、封止フィン24,26の先端部への損傷は防がれるか、あるいは最小限に抑えられ、これにより封止フィン24,26の先端部の形状は保護され、従って封止フィン24,26の封止効果も保護される。
【0037】
上記目的に適した摩耗性材料は、例えばサーメットのような様々なタイプの熱溶射被膜である。よく知られた代替え品はフェルトメタル(登録商標)であり、これは様々な耐熱性合金からできた金属繊維フェルトを備えており、フェルト内の繊維は焼結工程により不規則にからみ合っている。フェルトメタル(登録商標)は、Technetics, 1700 E. Int’l Speedway Blvd. FL 32724 USAにより製造されている。
【0038】
第一の封止フィン24は各々、作業上流方向に傾斜しており、かつ半径方向に対して鋭角の範囲を定めている。本発明の場合、角度Aは半径方向から約45°離れているが、他の実施例において、角度Aは訳10〜70°の間で変わってもよい。従って、第一の封止フィン24は各々、前記の範囲内で鈍角Aで向きを定められた直線の(すなわち曲がっていない)作業上流側に向いた面28を有している。第一の封止フィン24は各々、静止ケーシング12上に取付けられ、かつその遠心端が、可動なブレードシュラウド11の溝を付された面14の対応する円周方向のランド16と極めて封止に近い状態にあるように、漏洩流路全体にわたって突出している。第一の封止フィン24の各々の傾斜した直線状の作業上流側に向いた面28は、対応する円周方向に延びているランド16と協働し、かつ作業上流側方向に戻って漏洩流21を偏向させるために作用する、渦を発生させる流れの循環面を形成し、それにより漏洩流内に再循環渦が生じる。従って、第一の封止フィン24の先端部を越えた漏洩流21は減少する。
【0039】
図2において、第二の封止フィン26は各々、作業上流側に向いた面30を含み、漏洩流路全体にわたり静止ケーシング12からほぼ半径方向で内側に向かう方向に突出した第一のフォン要素32と、フィンの先端部に隣接しておりかつフィンの先端部を含んでいる第二の遠位部34を備えており、この第二の遠位部は作業上流側方向に向かって、すなわちこのようなフィンがある、作業のすぐ上流側の封止フィンの作業下流側に向かって傾斜している。
図1および2に図示した実施例において、各第二の封止フィンの傾斜した末端要素34は、作業上流側に向いた面30の凹面状に彎曲した要素である。この凹面状に彎曲した要素は、渦を発生させる流れの循環面を形成しており、この流れの循環面は、第二の封止フィンの先端部と静止ケーシング面の間で測定された、第二の封止フィン26の全長Lの約30%を成す間隔にわたって延びている。他の実施例において、彎曲部は第二の封止フィンの先端部と静止ケーシング面の間のフィンの長さの約20%〜約50%の間の範囲の間隔にわたって延びていてもよい。
【0040】
一実施例として、静止ケーシング面12への連結の点と第二の封止フィンの先端部の間で10mmの長さを備えたフィンを採用するとする。フィンの作業上流側に向いた面30の遠位部における彎曲部が4mmの半径を有した場合、彎曲部は半径方向で測定された、先端部に隣接した、フィンの約最後の3mmを占める。
【0041】
第二の封止フィン26の作業上流側に向いた面30の凹面状に彎曲した遠位部34が、円の弧として示してあるのに対して、当業者は彎曲部が代替え的に楕円の弧あるいは他の円錐曲線になり得ることに気付く。
【0042】
第二の封止フィン26の作業上流側に向いた面30の凹面状に彎曲した遠位部34は、半径方向にある角度傾斜したまっすぐな(直線の)遠位部により近似されてもよい。これは
図3に示してあり、長さLのフィン26はまっすぐな遠位部34Aを備えた作業上流側に向いた面30Aを有しており、このまっすぐな遠位部は半径方向に対して角度Bで傾斜しており、渦を発生させる流れの循環面を形成している。
図2の彎曲した遠位部34に類似して、
図3の遠位部34は、第二の封止フィンの先端部と静止ケーシング面の間で測定された、第二の封止フィン26の全長Lの約30%を成す間隔にわたって傾斜しているが、他の実施例において、傾斜した要素は第二の封止フィンの先端部と静止ケーシング面の間のフィンの長さの約20%〜約50%の間で成す間隔にわたって延びていてもよい。
【0043】
一実施例として、
図3の角度Bは約10°〜約60°、好ましくは約25°〜45°の範囲内であってもよく、フィンの長さLが10mmであった場合、作業上流側に向いた面30Aの傾斜した遠位部34Aは、半径方向で測定された、先端部に隣接したフィンの約最後の3〜4mmを占める。
【0044】
図4には大きな封止効率を可能にする態様から好まれる別の代替え的な実施例が示してあるが、製造するにはさらに困難であるか、あるいはさらに費用がかかることが確実らしい。この実施例においては、ただ遠位部だけでなく、フィン26Bの作業上流側に向いた面30B全体が作業上流側方向に彎曲している。図示した特殊な場合において、半径方向に対して、作業上流側に向いた面30Bが作る角度は、フィンが静止面もしくは可動面から突出する点におけるゼロから、フィンの先端部34Bにおける最大角度Bまで徐々に増える。例えば、面30Bは楕円形状に、放物線状にあるいは双曲線状に彎曲してもよい。さらに、角度Bは約10°〜約60°、好ましくは約25°〜45°の範囲内であってもよい。
【0045】
図1および2に戻ると、フィン24,26の形状により漏洩流体21は偏向して、作業上流側方向に戻り、従って軸方向および円周方向に延びている、連続したフィンの間で境界を定められた空洞部40,42内で再循環過流25,36が生じる。渦により、漏洩流はフィンの先端部と隣接した可動な面の間の間隙を通って出ることが難しくなり、有効領域は縮小し、従って間隙を通る流体の排出率は小さくなる。さらに発生した渦はフィン全体にわたり圧力降下が大きくなり、従って漏洩が減少することに貢献する。
【0046】
円周方向に延びている第一および第二の封止フィン24,26の数が増えると、流体流路に沿って流れる漏洩流体の崩壊及び再循環も増える。
図2に示したラビリンスシールの
円周方向に延びている第一および第二の封止フィン24,26の配置により生じる漏洩流の崩壊により、可動なブレードシュラウド11の溝を付された面14と静止ケーシング11の間の漏洩流が、特許文献1の
図1に示されたような従来のラビリンスシールの設計と比べて約19%減少することがわかった。従って、ラビリンスシールを含む軸流タービンの効率はかなり改善される。
【0047】
漏洩流21が、シュラウド面が単に平面である場合に比べて、ラビリンスシールを通る
より小さい直通経路を有するように、シュラウド面14は交互に現れるランド16と窪んだ要素18を備えていることを一言ふれておく。これによりラビリンスシールの漏洩流に対する抵抗力が増す。さらに、凹状要素18により、かなりの半径方向高さを備えた渦36と十分発達した空洞体積が得られ、これによりラビリンスシールの漏洩流に対する抵抗力がさらに増す。
【0048】
様々な実施例を前述の段落において説明したが、様々な変形が従属請求項の範囲からそれることなく実施例にされてもよいことも理解すべきである。
【0049】
例えば、円周方向に延びている第一および/または第二の封止フィン24,26は、それと共に回転するための可動なブレードシュラウド11上に取付けられている。この場合、静止ケーシング12の溝を付された面14に向かって、流体流路全体にわたり、円周方向に延びている第一および第二の封止フィン24,26が、ブレードシュラウド11から半径方向で外の方へ突出するように、静止ケーシング12の半径方向で内側の面は溝を付されている。
【0050】
図1には流れに直列に配置された四つの封止フィンが示してある。すなわち二つの第一のフィンがあり、二つの第一のフィンの後には第二のフィンが続いている。所望であれば、この連続することは、例えば三つの第一のフィン24を備えた六つの封止フィンに拡張され、各々には第二のフィン26が続くことが実現される。反対に、ある状況において、二つの第一のフィン24の間に配置された一つの第二のフィン26を備えた二つの第一のフィンを使用して、あるいはただ一つの第二のフィンが続くただ一つの一のフィンを使用して容認可能な封止性能を達成することができる。
【0051】
図1には、最も作業上流側のフィンがその遠心端がランド16の封止近傍にある第一のフィン24であり、第一のフィンにすぐ続くフィンが、その遠心端が凹状面要素18の封止近傍にある第二のフィン26である現在好まれている配置が示してある一方で、第一及び第二のフィンの順序が逆になった場合に所望な効率の増大を得ることも可能であり、その際に、最も作業上流側のフィンがその遠心端が凹状要素18の封止近傍にある第二のフィン26であり、第二のフィンにすぐ続くフィンが、その遠心端がランド16の封止近傍にある第一のフィン24である。
【0052】
第二の重要な実施例を
図5〜8に関連づけて説明する。
【0053】
図5には可動ブレードの半径方向で外側要素が示してあり、この外側要素は翼要素100と弓状のブレードシュラウド110を備えており、このブレードシュラウドは翼要素10の半径方向での外側先端部上に取付けられており、かつそこと一体化されている。隣接したブレードシュラウド110は環状のシュラウドリングを形成するために協働する。円周方向に延びている静止ケーシング120は、可動ブレードの半径方向で外側に向かって配置されており、かつ可動ブレードを取囲んでいる。
【0054】
作動流体は軸流タービンを流れて膨張し、かつ
図5の矢印190で示したように、作業下流側方向において可動なブレード翼要素100の間の流体流路に沿って移動する。ラビリンスシール200は、可動なブレードシュラウド110と半径方向で隣接した静止ケーシング120の間で封止を行い、可動なブレードの先端部でブレードシュラウド110を越える流体の漏洩を最小限度に抑える。
【0055】
図5の特別な実施例において、ラビリンスシール200は、円周方向に延びており、かつ軸方向に間隔をおいて配置された複数の第一の封止フィン240を備えており、これらの封止フィンは可動なブレードシュラウド110の面140に向かって漏洩流体流路を横切り、静止ケーシング120の面122から半径方向で内側に延びている。さらにラビリンスシール200は、円周方向に延びており、かつ軸方向に間隔をおいて配置された複数の第二の封止フィン260を備えており、これらの封止フィンは静止ケーシング120の面122に向かって漏洩流体流路を横切り可動なブレードシュラウド110の面140から半径方向で外側に突出している。従って、静止ケーシング120から内側に突出している第一の封止フィン240は、静止した封止フィンと呼び、可動なブレードシュラウド110から外側に突出している第二の封止フィン260は、可動な封止フィンと呼ぶ。
【0056】
静止したおよび可動な封止フィン240,260は、各静止した封止フィン240を可動な封止フィン260が追従するように、ラビリンスシール200を通り軸方向に交互に配置されている。従って、静止した封止フィン240は可動な封止フィン260の間の軸方向間隙内に突出しているが、可動な封止フィン260は静止した封止フィン間の軸方向間隙内に突出している。静止したおよび可動な封止フィン240,260は、例えば静止ケーシング120および可動なブレードシュラウド110内の(図示していない)円周方向に延びている凹部内で、知られるような加締め工程によって、独立した構成要素として製造されかつ固定されてもよい。代替え的に、機械加工あるいは鋳造工程により、シュラウド110および/またはケーシング120と一体に封止フィンを製造することも可能である。
【0057】
静止した封止フィン240の遠心端あるいは先端部は、可動なブレードシュラウド110の封止近傍にあるが、可動な封止フィン260の遠心端あるいは先端部は、静止ケーシング120の封止近傍にある。このことはタービンの通常運転時には、静止した封止フィン240の遠心端と可動なブレードシュラウド110の間に、および可動な封止フィン260の遠心端と静止ケーシング120の間に小さい半径方向の間隙があることを意味している。このような半径方向の間隙は、タービン運転時に静止ケーシング12に対する可動なブレードシュラウド11の半径方向の偏位により生じる、封止フィン240,260と、可動なブレードシュラウド110あるいは静止ケーシング120との間の摩擦接触を防ぐかあるいは改善する。このような摩擦接触により封止フィン240,260の先端部は変形し、従ってラビリンスシール200の封止効果は減少する。使用するための正確な半径方向の間隙は、タービンの運転挙動をコンピュータモデリングすることにより計算することができ、あるいはリグ試験により確定される。
【0058】
選定される半径方向の間隙は、静止ケーシング120に対する可動なブレードシュラウド110の最大の半径方向の偏位時における、静止したおよび可動な封止フィン240,260の先端部と、隣接した可動なブレードシュラウド110あるいは静止ケーシング120の間の摩擦接触を防ぐのに一般的には十分であるが、外側の通常のタービン運転挙動である大きな半径方向の間隙は、静止した封止フィン240及び可動な封止フィン260の先端部に隣接したブレードシュラウド110および静止ケーシング120の面140,122上であるいは内で、摩耗性材料270を用意することにより許容することができる。摩耗性材料270は、封止フィン240,260の先端部における材料に比べて軟質であるが、可動なブレードシュラウド110の半径方向の偏位中に封止フィン24,26の先端部によって擦り減らされる。従って、封止フィン24,26の先端部の形状は保護されるかあるいは最小限に抑えられ、それによりラビリンスシール200の封止効果も保護される。
【0059】
上記目的に適した摩耗性材料は、例えばサーメットのような様々なタイプの熱溶射被膜である。よく知られた代替え品はフェルトメタル(R)であり、これは様々な耐熱性合金からできた金属繊維フェルトを備えており、フェルト内の繊維は焼結工程により不規則にからみ合っている。フェルトメタル(R)は、Technetics, 1700 E. Int’l Speedway Blvd. FL 32724 USAにより製造されている。
【0060】
静止した封止フィン240の何れかひとつのために
図6に明瞭に示したように、静止したおよび可動な封止フィン240,260は各々、ラビリンスシール200を通る漏洩空気に対して作業上流側に面した渦を発生させる流れの循環面を備えている。図示した実施例において、各封止フィン240,260は、作業上流側に面した面300を有しており、この作業上流側に面した面は、漏洩流路を横切り、静止ケーシング120あるいは可動なブレードシュラウド110のどちらか一方からほぼ半径方向に突出しているまっすぐなフィン要素320を備えている。図示した特殊な変形において、傾斜した遠位部340は、フィンの作業上流側に向いた面240の凹面状に彎曲した要素であり、かつ渦を発生させる流れの循環面を備えており、この流れの循環面は封止フィンの先端部とそこから突出した面の間で測定された、封止フィンの全長Lの約30%を成す間隔にわたって延びている。他の実施例において、彎曲部は封止フィンの先端部とそこから突出した面の間のフィンの長さの約20%〜約50%の間の範囲の間隔にわたって延びていてもよい。
【0061】
一実施例として、面への連結の点と封止フィンの先端部の間で10mmの長さを備えたフィンを採用するとする。フィンの作業上流側に向いた面300の遠位部における彎曲部が4mmの半径を有した場合、彎曲部は半径方向で測定された、先端部に隣接した、フィンの約最後の3mmを占める。
【0062】
図5及び6において、封止フィン240,260の作業上流側に向いた面300の凹面状に彎曲した遠位部340が、半径Rを備えた円の弧として示してあるのに対して、当業者は彎曲部が代替え的に楕円の弧あるいは他の円錐曲線になり得ることに気付く。
【0063】
作業上流側に向いた面300の凹面状に彎曲した遠位部340は、半径方向にある角度傾斜したまっすぐな遠位部により近似されてもよい。これは
図7に示してあり、長さLのフィン260Aは作業上流側に向いた面300Aを有しており、この作業上流側に向いた面は、漏洩流路を横切り、静止ケーシング12あるいは可動なブレードシュラウド110からほぼ半径方向に突出しているまっすぐなフィン要素ン320Aと、半径方向に対して角度Bで傾斜しており、渦を発生させる流れの循環面を形成しているまっすぐな遠位部340Aを備えている。
図7の凹状に彎曲した遠位部340に類似して、
図7の角度が付いた遠位部340Aは、封止フィンの先端部とそこから突出した面の間で測定された、封止フィンの全長Lの約30%を成す間隔にわたって傾斜しているが、他の実施例において、傾斜した要素は封止フィンの先端部とそこから突出した面の間のフィンの長さの約20%〜約50%の間で成す間隔にわたって延びていてもよい。
【0064】
一実施例として、
図7の角度Bは約10°〜約60°、好ましくは約25°〜45°の範囲内であってもよく、フィンの長さLが10mmであった場合、作業上流側に向いた面300Aの傾斜した遠位部340Aは、半径方向で測定された、先端部に隣接したフィンの約最後の3〜4mmを占める。
【0065】
図8には大きな封止効率を可能にする態様から好まれる別の代替え的な実施例が示してあるが、製造するにはさらに困難であるか、あるいはさらに費用がかかることが確実らしい。この実施例においては、ただ遠位部だけでなく、フィンの作業上流側に向いた面300B全体が作業上流側方向に彎曲している。図示した特殊な場合において、半径方向に対して、作業上流側に向いた面300Bが作る角度は、フィンが静止面もしくは可動面から突出する点320Bにおけるゼロから、フィンの先端部340Bにおける最大角度Bまで徐々に増える。例えば、面300Bは楕円形状に、放物線状にあるいは双曲線状に彎曲してもよい。さらに、角度Bは約10°〜約60°、好ましくは約25°〜45°の範囲内であってもよい。
【0066】
図5に戻ると、静止したおよび可動な封止フィン240,260の渦を発生させる流れの循環面340の補完的形状は、連続して並んでいる静止したおよび可動な封止フィン240,260により境界を定められた、軸方向および円周方向に延びている空洞部400内で再循環過流360を生じさせるのに効果的である。渦により、漏洩流はフィンの先端部と隣接した、静止しているかあるいは可動な面の間の間隙を通って出ることが難しくなり、有効領域は縮小し、従って間隙を通る流体の排出率は小さくなる。さらに発生した渦はフィン全体にわたり圧力降下が大きくなり、従って漏洩が減少することに貢献する。最も作業上流側のフィン240流れの再循環面により漏洩流がラビリンスに入る前に、別の渦300が漏洩流内に発生し、この渦が空洞部400内で生じる渦よりも弱いことに注意すべきである。渦360,370はすべて、同じ方向に回転しているように示してあるが、隣接した空洞部400内の渦は逆の方向に回転し、それにより、ラビリンスシール200の漏洩流に対する抵抗力はさらに増す。
【0067】
静止したおよび可動な封止フィン240,260の数が増えると、流体流路に沿って流れる漏洩流体の崩壊及び再循環も増える。
図5に示したラビリンスシールの静止したおよび可動な封止フィン240,260により生じる漏洩流の崩壊により、可動なブレードシュラウド110と静止ケーシング120の間の漏洩流が、特許文献1の
図1に示されたような従来のラビリンスシールの設計と比べて約30%減少することがわかった。従って、ラビリンスシールを含む軸流タービンの効率はかなり改善される。
【0068】
図5に示したラビリンスシールは、複数の静止した封止フィン240と複数の可動な封止フィン260を備えているが、このタイプのラビリンスシールは、静止した封止フィンと可動な封止フィンを含む、単一ペアのフィンを備えていてもよい。
【0069】
図5には現在好まれている配置が示してあり、静止した封止フィン240は各々、流れの順序において可動な封止フィン260に先行しているが、静止したおよび可動な封止フィン240,260の順序が逆になった場合には、可動な封止フィンが封止フィンに先行するように、静止した所望な効率の増大を得ることも可能である。
図5においては、このことにより、流れの順序における第一、第三および第五の封止フィンが可動な封止フィン260であり、第二および第四の封止フィンが静止した封止フィン240である配置が得られる。
【0070】
前述の説明は、静止した封止フィンと可動な封止フィンの間の漏洩を制御するために封止の作動に適用されるような実施例に焦点が当てられているが、添付の請求項が別のタイプの静止したおよび可動な部品の間の封止に適用されることに、すなわち可動な部品がタービンロータシャフトであり、静止した部品がシャフトにより穿孔される静止したタービンダイヤフラムリングであることに当業者は気づく。