(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693539
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ブロック変換ベースの符号化システムで用いられる方法
(51)【国際特許分類】
H04N 19/13 20140101AFI20150312BHJP
H04N 19/14 20140101ALI20150312BHJP
H04N 19/18 20140101ALI20150312BHJP
H04N 19/196 20140101ALI20150312BHJP
H04N 19/60 20140101ALI20150312BHJP
H04N 19/91 20140101ALI20150312BHJP
H04N 1/41 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
H04N19/13
H04N19/14
H04N19/18
H04N19/196
H04N19/60
H04N19/91
H04N1/41 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-215856(P2012-215856)
(22)【出願日】2012年9月28日
(62)【分割の表示】特願2000-366551(P2000-366551)の分割
【原出願日】2000年12月1日
(65)【公開番号】特開2013-38809(P2013-38809A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2012年10月26日
(31)【優先権主張番号】09/452990
(32)【優先日】1999年12月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596092698
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】マウシュミ セン
(72)【発明者】
【氏名】アリレザ ファリッド ファーヤー
(72)【発明者】
【氏名】キエオン ホ ヤン
【審査官】
久保 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
Memon, N.,"Adaptive coding of DCT coefficients by Golomb-Rice codes",Proceedings of ICIP 98,1998年10月,Vol.1,p.516-520,ISBN:0-8186-8821-1
【文献】
Weinberger, M.J., et.al.,"LOCO-I: A Low Complexity, Content-Based, Lossless Image Compression Algorithm",Proceedings of DCC '96,1996年 4月,p.140-149,ISBN:0-8186-7358-3
【文献】
"FCD 14495, Lossless and near-lossless coding of continuous tone still images(JPEG-LS)",ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 1 FCD14495-public draft,1997年 7月16日,p.9,10,19-28,2011年2月15日検索,URL,http://www.jpeg.org/public/fcd14495p.pdf
【文献】
社団法人映像情報メディア学会,「ディジタルメディア規格ガイドブック」,日本,株式会社オーム社,1999年 8月25日,初版,第29〜32頁,ISBN:4-274-03522-0
【文献】
小野文孝,「2.静止画符号化の標準化動向」,画像電子学会誌,日本,画像電子学会,1998年 6月25日,第27巻、第3号,第185〜191頁,ISSN:0285-9831
【文献】
加治佐清光(外2名),「JPEG-LSのロスレス符号化のコンテクストモデルの考察」,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,1998年 6月25日,第J81−A巻、第6号,第1021〜1025頁,ISSN:0913-5707
【文献】
上野幾朗(外4名),「多値ロスレス符号化標準と当社技術の採用」,三菱電機技報,日本,三菱電機エンジニアリング株式会社,1998年 9月25日,1998年9月号(第72巻,第9号),第60〜63頁,ISSN:0369-2302
【文献】
加藤茂夫(外1名),「静止画像の可逆圧縮符号化技術」,Interface,日本,CQ出版株式会社,1996年 9月 1日,1996年9月号(第22巻,第8号),第104〜115頁,ISSN:0387-9569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N19/00−19/98,
H03M7/30−7/50,
H04N1/41−1/419,
CSDB(日本国特許庁),
JSTPlus(JDream2),
IEEEXplore(IEEE)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのブロックのビジュアルデータに関連するブロック変換係数を処理するためのブロック変換符号化システムで用いられる装置であって、
(A)ビジュアルデータに関連し以前に再生されたブロック変換係数及びコンテキストと関連するベクトルを特定し、
(B)少なくとも1つのブロックに関連するブロック変換係数を処理するのに用いられるベクトル選択値を計算するように構成され、前記ベクトル選択値の計算が前記以前に再生されたブロック変換係数及び前記特定されたベクトルに関連し、現在のブロック変換係数の値を考慮に入れない計算である、少なくとも1つの処理デバイスを有する装置。
【請求項2】
前記装置は前記システムのビデオ符号化器内に含まれ、前記前記処理動作はブロック変換係数を符号化することを有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置は前記システムのビデオ復号化器内に含まれ、前記前記処理動作はブロック変換係数を復号化することを有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記ベクトル選択値は、近傍における以前に再生されたブロック変換係数を前記現在のブロック変換係数へと対応させる、前記少なくとも1つのブロックのビジュアルデータに関連する前記ブロック変換係数の走査順に関する関数として計算されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
近傍における前記以前に再生されたブロック変換係数のそれぞれの位置は、a、b、cであり、
前記位置は、前記現在のブロック変換係数の位置を(i,j)とした場合に、前記少なくとも1つのブロックのビジュアルデータに関連する前記ブロック変換係数の上方向走査の間、式a=(i+1,j−1)、b=(i,j−1)、c=(i−1,j)により決定されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
近傍における前記以前に再生されたブロック変換係数のそれぞれの位置は、a、b、cであり、
前記位置は、前記現在のブロック変換係数の位置を(i,j)とした場合に、前記少なくとも1つのブロックのビジュアルデータに関連する前記ブロック変換係数の下方向走査の間、式a=(i−1,j+1)、b=(i−1,j)、c=(i,j−1)により決定されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記装置はビデオ符号化器が対応するビデオ復号化器に符号化パラメータ情報を提供する必要がないような前記ビデオ符号化器内に含まれることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記ベクトル選択値を用いて、圧縮スキームにおけるブロック変換係数の処理に使用される符号化パラメータを更新する
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記処理は、Golomb 復号化プロセスを実行する処理を有することを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記処理は、Golomb符号化プロセスを実行する処理を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオおよび/またはイメージの圧縮に関し、特に、ビデオ/イメージの圧縮システムにおけるブロック変換係数のコンテキスト選択を行う方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無損失のイメージとビデオの圧縮技術は近年ビデオ業界において、かなりの興味が持たれている。この公知の技術は、以下に挙げるイメージ/ビデオの圧縮文献に記載されている。例えば、Draft of MPEG−2のTestmodel 5, ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, Apr. 1993; Draft of ITU−T Recommendation H.263, ITU−T SG XV, Des.1995;“Lossless and near−lossless coding of continuous tone still images”(JPEG−LS), ISO/IEC JTC1/SC 29/WG1, July 1997;と、B. Haskell, A. Puri, and A.N. Netravali,著の“Digital video: An introduction to MPEG−2,”Chapman and Hall, 1997 と、H.G. Musmann, P. Pirsch, and H.J. Gralleer, 著の“Advances in picture coding,”Proc. IEEE, vol. 73, no. 4, pp. 523−548, Apr. 1985; と、N.D. Memon and K. Sayood, 著の“Lossless compression of video sequences,”IEEE Trans. Communications, vol. 44, no. 10, pp. 1340−1345, Oct.1996; と、A.N. Netravali and B.G. Haskell, 著の“Digital Pictures: Representation, Compression,and Standards,”2nd Ed., Plenum Press, 1995; と、A. Said and W.A. Pearlman, 著の“New, fast, and efficient image codec based on set partitioning in hierarchical trees,”IEEE Trans. Circuit and Systems for Video Technology, vol. 6, no. 3, pp. 243−249, June 1996;と、M.J. Weinberger, J.J. Rissanen, and R.B. Arps, 著の“Applications of universal context modeling to lossless compression of gray−scale images,”IEEE Trans. Image Processing, vol. 5, no. 4, pp. 575−586, Apr. 1996;と、X. Wu and N. Memon, 著の“Context−based, adaptive, lossless image coding,”IEEE Trans. Communications, vol. 45, pp. 437−444, Apr. 1997;と、Z. Xiong, K. Ramchandran, and M.T. Orchard, 著の“Space frequency quantization for wavelet image coding,”IEEE Trans. Image Processing, vol. 6, 1997.
【0003】
これらの従来の圧縮技術は、高品質すなわち歪みが知覚されない圧縮ビデオイメージと静止イメージを生成するために用いられている。イメージあるいはビデオの圧縮技術を開発するにあたっての最大の問題点は、符号化ビットストリームを適切に復号化するために、符号化器から復号化器へ送信しなければならないオーバーヘッドデータを減少しなければならない点である。この問題を考慮に入れたアプローチは、主に2つのカテゴリーに分けることができる。すなわち、空間領域におけるコンテキストベースの予測符号化と、波長領域におけるコンテキストベースの符号化である。空間領域の一例は、Weinberger et al.著の論文“Lossless and near−lossless coding of continuous tone still images”(JPEG−LS), ISO/IEC JTC1/SC 29/WG1, July 1997と、前掲のWu et al.著の論文に開示されている。波形領域(wavelet domain)の技術の一例は、上記のMemon et al. 著の論文と、Said et al. 著の論文と、Xiong et al. 著の論文に開示されている。
【0004】
前掲の技術のあるものは、符号化器で採用される符号化パラメータに関するオーバーヘッド情報を対応する復号化器に送る必要がないものがあるが、これを行う既存の技術は様々な欠点がある。例えば、それを実現し操作するには複雑かつコストが高い点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、符号化パラメータに関連する情報を復号化器に送らずに、かつ既存のアプローチの欠点を取り除いたり最小にすることのできるような、ブロック変換符号化用の圧縮技術を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、変換領域におけるイメージまたはビデオのシーケンスのコンテキスト選択を行う方法と装置を提供する。変換係数は、特定のブロック変換、例えばHadamard 変換を用いて得られる。適切なコンテキスト選択およびあらかじめ規定された選択ルールを用いて、本発明による符号化器は、現在符号化されている各ブロックの符号化パラメータおよび/または係数を、周囲のブロックのコンテキストあるいは変換係数にもっぱら基づいて変更し、これらの変換パラメータを対応する復号化器に送ることなく行われる。
【0007】
本発明の一態様においては、可視データ(例、イメージおよび/またはビデオシーケンス)の少なくとも1つのブロックに関連するブロック変換係数を処理(例、符号化し復号化する)のブロック変換ベースの符号化システムで用いられる方法は、次のステップを含む。第1に可視データに関連する以前に再生されたブロック変換係数を特定する。次に、少なくとも1つのブロックに関連するブロック変換係数を処理する際に用いるために、コンテキスト選択値を計算する。このコンテキスト選択値は、以前に再生されたブロック変換係数に基づいて決定される。
【0008】
このコンテキスト選択値は、走査順において処理すべきブロック変換係数の近傍にある、以前に再生されたブロック変換係数に関連する、それぞれの値の関数として計算される。さらにまた、コンテキスト選択値は、ブロック変換係数に関連する空間周波数の関数としても計算できる。特に、同一空間周波数(コンテキスト)値を有する、以前に再生された係数を符号化するのに用いられる符号化パラメータを決定する。さらにまたコンテキスト選択値は、走査順が近い、1つあるいは複数の以前に再生されたブロック変換係数と、ブロック変換係数に関連する空間周波数にそれぞれ関連する、1つあるいは複数の値の両方の関数として計算することもできる。
【0009】
復号化器において、ブロック変換係数の選択が、以前に再生されたサンプルのみを用いて、本発明により行われると、符号化器は、このようなパラメータ情報を対応する復号化器に送る必要がない。その理由は、復号化器は、符号化器で用いられた同一の以前に再生されたサンプルを用いて、情報を得ることができるからである。このため、伝送帯域および/または蓄積容量を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例により、コンテキストベースのブロック変換符号化を採用したイメージ/ビデオ符号化器のブロック図。
【
図2】8×8のデータブロックの変換係数に用いられる、ジグザグの走査順を表す図。
【
図3】本発明の一実施例により、変換係数に対しジグザグの走査順番で上方向に振っている間に、変換係数xの最近接の近傍a、b、cを表すグラフ。
【
図4】本発明の一実施例により、変換係数に対しジグザグの走査順番で下方向に振っている間に、変換係数xの最近接の近傍a、b、cを表すグラフ。
【
図5】本発明の一実施例により、コンテキストベースのブロック変換復号化を採用したイメージ/ビデオ復号化器のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「ビデオ」または「ビデオシーケンス」は、例えばH. 261H, H263, Motion−JPEG, MPEG−1, MPEG−2のような標準に従って符号化するのに適したフレームあるいはフィールドシーケンスを含むものとする。用語「イメージ」または「ピクチャー」は、ビデオシーケンスのフレームまたはフィールドを意味する。用語「ブロック」は、上記の圧縮標準で定義されたマクロブロックのみならず、ビデオフレームあるいはフィールドのピクセル画素(pixel elements)のグループを意味する。このグループは、複数のピクセルの組、あるいは単一のピクセルを含む。さらにまた用語「サンプル」とは、ブロックに関連する要素(コンポーネント(component))を意味する。例えば、ブロック変換走査により生成された変換係数は、サンプルである。さらにまた用語「コンテキスト」とは、以前に再生されたサンプルから抽出された現ブロックの周囲を記述するのに用いられる値を意味する。本発明によりコンテキストベースのブロック変換係数の選択においては、コンテキストは、以前に再生された近傍のサンプルから測定された値である。このようなブロック変換係数選択は、ビデオ符号化器とビデオ復号化器の両方で行われ、その結果ブロック変換係数の選択に関連するデータは、符号化器から復号化器に送信する必要はない。
【0012】
本発明による変換係数のコンテキストベースの選択は、3つの実施例、すなわち、(i)周波数ベースのコンテキスト選択と、(ii)最近接の近隣ベースのコンテキスト選択と、(iii)周波数と最近接の近隣ベースのコンテキスト選択を用いて説明する。
【0013】
すべての符号化パラメータおよびその決定は、以前に再生された係数にもっぱら依存する、各係数に関連するコンテキストのみを用いて行われる。この方法により符号化器と復号化器は、常に両方が入手できる同一の情報を有し、かくして常に同期化され、更に悪い場合には各変換係数に対し同期化されるが、これは、符号化器は、各ブロックに対する符号化パラメータ特に送信する必要が無く行われる。
【0014】
図1に本発明の一実施例によるコンテキストベースのブロック変換符号化技術を採用したイメージ/ビデオの符号化器のブロック図を示す。符号化器10は、ブロック変換器12と量子化器14とGolomb符号化器16と逆量子化器18と部分的に再生された現フレームのメモリ20とコンテキスト選択器22と符号化パラメータ更新ユニット24とを含む。
【0015】
現フレームを表す信号を符号化器10の入力点で受領する。この信号は、イメージ(例、単一のフレーム)またはビデオシーケンス(例、複数のフレーム)を表す。符号化器10は、この信号を変換係数毎のベースで符号化する。例えばブロックは、8×8のピクセル列を含む。ブロック変換器12においては、ブロックは変換されて変換係数を生成する。この変換は、8×8のHadamard変換であるが、他のブロック変換も用いることができる。その後変換係数は量子化器14に送られ、そこで変換係数を量子化する。現ブロックの量子化された係数をGolomb符号化器16内で符号化する。従来のGolomb 符号化器は、例えば、“Loss−less and near−lossless coding of continuous tone still images”(JPEG−LS), ISO/IEC JTC1/SC 29/WG 1, July 1997,に開示されている。その結果得られた符号化ビットストリームを送信する。
【0016】
さらにこの量子化された係数が再構成(再生)される。すなわち、現行変換係数の量子化値が逆量子化器18に与えられ、量子化走査の逆が行われ、再生された変換係数を生成する。この再生された変換係数は部分的に再生された現フレームのメモリ20内に記憶される。
【0017】
本発明によれば、その後この再構成された係数を後続の係数の符号化処理で用いられる。具体的に説明すると、再生された係数をコンテキスト選択器22が用いて、コンテキスト値Qを生成する。このコンテキスト値Qは、その後符号化パラメータ更新ユニット24に与えられ、この符号化パラメータ更新ユニット24はGolomb符号化器16に与えられる出力を生成する。Golomb 符号化A(Q)とN(Q)の間に必要とされる符号化パラメータは、上記のJPEG−LS 標準に記述された手順に従って符号化パラメータ更新ユニット24内で更新される。これらのパラメータ値は、現行の変換係数と以前に再生された変換係数の関数であり、それらは、現係数として同一のコンテキストQを有する。符号化パラメータA(Q)と、N(Q)に対する更新の規則は次のとおりである。
「第1式」
A(Q)=A(Q)+|Rx|
if(N(Q)==RESET)
{
A(Q)=A(Q)/2
N(Q)=N(Q)/2
}
N(Q)=N(Q)+1
ここで、|Rx|は、Rxの絶対値を表し、現係数の再構成値とRESETは、定数である。8×8のブロック変換係数に対しては、RESET=64の値を用いるのが好ましい。この更新されたパラメータ値を用いて、次の係数を符号化する。この係数は、同一のコンテキストQを有するが、現係数Rxは有さない。
【0018】
この更新されたGolomb符号化パラメータを用いて、同一のコンテキストQを有する後続の係数に対する符号化ビットストリームを生成する。かくして、各再生された係数に対するコンテキストQの選択手順は、各量子化された変換係数をGolomb 符号化器16によりいかに圧縮するかを決定する際に重要である。
【0019】
符号化器10は次の係数を符号化するために、現行フレームの第1ブロックの第1再構成係数をコンテキストとして用いるのがよいが、しかし、後続の係数の符号化走査に対し再生されたサンプルを用いる以前に、ある数の係数を再構成するまで待機するのが好ましい。以前に再生されたブロックの係数を用いて、現行のブロックの係数を符号化する。
【0020】
以下に示す実施例は、各再生された変換係数のコンテキスト値Qを生成する様々な方法を示す。これらの複数の技術のうちの1つを用いて、符号化器10はコンテキストを用い、Golomb符号化器16内で後で使用される符号化パラメータを決定する。コンテキスト選択方法は、イメージのブロック変換係数により表されるプロパティを用いる。以下の実施例においては、説明の便宜上逆走査が可能なブロック変換を8×8のブロックに対し行うものとするが、n×nのブロックサイズについても拡張することができる。
(a)周波数ベースのコンテキスト選択
変換係数用にコンテキストを選択するこの方法は、各係数がとる値は水平と垂直の空間周波数に依存することを仮定している。例えば、イメージ/ビデオデータに対し、M×Nの可逆ブロック変換が行われる場合には、M×Nの異なるコンテキストが存在し、それぞれがM×Nの異なる空間周波数の1つに対応し、そして周期は乗算を意味する。かくしてQ
F(i,j)は、(i,j)番目の係数のコンテキストを意味する。したがって次式となる。
「第2式」
Q
F(i,j)=N.i+j,
ここで i=0,1,...,M−1
j=0,1,...,N−1
同一のコンテキストQ
Fを有する、以前に再生された変換係数から計算された、A(Q
F)とN(Q
F)の符号化パラメータを用いて、現在の再生された係数RxをGolomb 符号化する。その後Rxを用いて符号化パラメータ更新ユニット24内の前述したパラメータA(Q
F)、N(Q
F)を更新する。
(b)最近接の近傍ベースのコンテキスト選択
各変換係数用のコンテキストを決定するこの方法は、各係数の値は変換領域内で以前に符号化され、再生された近傍の係数に依存することを前提にしている。各ブロック内の係数が走査され、符号化される順番は、ブロック変換符号化に通常用いられる、標準のジグザグ走査モードである。この走査モードを
図2に示す。
【0021】
本発明によれば、コンテキスト選択器22(
図1)は、各変換係数xに対し3つの近隣の係数a、b、cを選択する。(i,j)が現係数xの一部に対応する場合には、最も近い近傍a、b、cの一部は次式の1つにしたがって決定される。
即ち次の「第3式」
a=(i+1,J+1),b=(i,j−1)と
c=(i−1,j)上方走査中
「第4式」
a=(i+1,J+1),b=(i−1,j)と
c=(i,j−1)下方走査中
である。
【0022】
図3は本発明の一実施例により係数d、a、x、eの順番に走査される、ジグザグ走査の上方スイングの走査中に現係数xが走査される図を示す。
図4は、本発明の他の実施例により係数d、a、x、eの順番に走査されるジグザグ走査の下方スイングの間に、現係数xが走査される図を示す。
【0023】
(i,j)番目の係数のコンテキストQ
N(i,j)は、その近傍の関数f(
*)として定義される。
「第5式」
Q
N(i,j)=f(Ra,Rb,Rc)
ここでRa、Rb、Rcは、それぞれ対応する係数の再構成値である。コンテキストの計算は、現係数xの値Rxを考慮に入れていない。その理由はこれは復号化器に対しては利用できないからである。関数f(
*)の例として、以下の方法を用いる。ベクトル(Qa,Qb,Qc)を得るために、近隣R
i,i=a,b,cの量子化値を、次式で決定する。
「第6式」
if(R
i<−T3)Q
i=−4;
あるいは if(R
i<T2)Q
i=−3;
あるいは if(R
i<T1)Q
i=−2;
あるいは if(R
i<0)Q
i=−1
あるいは if(R
i<0)Q
i=−0
あるいは if(R
i<T1)Q
i=1
あるいは if(R
i<T2)Q
i=2
あるいは if(R
i<T3)Q
i=3
あるいは Q
i=4
ここでi=a,b,cとT1、T2、T3は、適宜選択されたしきい値である。ベクトル(Qa,Qb,Qc)の第1のノンゼロ要素が負の場合には、ベクトル(Qa,Qb,Qc)のすべての符号を反転して、(−Qa,−Qb,−Qc)を得る。これにより(Qa,Qb,Qc)が取ることのできる全数を、365に減らすことができる。最後に、ベクトル(Qa,Qb,Qc)は、一体のベースで「0...364」の範囲の整数内にマッピングされ、これは、変換係数のコンテキストQ
Nが考慮されていることを表す。
(c)周波数と最近接の近隣ベースのコンテキスト選択
各変換係数xに対するコンテキストを決定するこの方法は、それが採ることのできる値は、空間周波数(i,j)と、再生された近隣a、b、cの実際の値の両方に依存する。かくしてこのアプローチは、周波数ベースのコンテキスト選択方法と最近接の近隣ベースの近隣ベースのコンテキスト選択方法の組合せである。この方法においては、ブロックの走査モードは、
図2のジグザグ走査であり、コンテキスト値Q
FN(i,j)は次式で決定される。
「第7式」
Q
FN(i,j)=h(N.i+j,Ra,Rb,Rc)
ここでRa、Rb、Rcは、それぞれ近隣a、b、cの再生された値(式(3)、(4)と
図3、4に関し説明したように)と、h(
*)は、ある種の関数である。関数h(
*)の例を次に示す。
「第8式」
Q
FN(i,j)=(N.i+j).D(|Ra|+|Rb|+|Rc|)
ここで周期は、乗算を意味し、関数D(x)は次式で与えられる。
【0024】
D(x)=0 if x=0
=1 if X<T1
=2 if x<T2
=3 if x<T3
=4 それ以外の場合
T1、T2、T3は適宜選択されたしきい値である。
【0025】
図5に本発明の他の実施例におけるコンテキストベースのブロック変換符号化技術を採用したイメージ/ビデオの復号化器のブロックを示す。復号化器50は、符号化器10で用いられたのと同様な構成要素を含む。具体的に説明すると、復号化器50はGolomb 復号化器52と逆量子化器54と逆ブロック変換器56と部分的に再生された現フレームのメモリ58とコンテキスト選択器60と符号化パラメータ更新ユニット62とを有する。これらの構成要素は、符号化器の構成要素の昨日と類似した機能を有する。
【0026】
したがって、現フレームの符号化ビットストリームを復号化器50が受領する。このビットストリームは、golomb復号化器の逆の機能を行うGolomb復号化器52内で復号化されて、復号化され量子化された変換係数を生成する。次に、量子化されたこの変換係数をGolomb復号化器52に与え、そこで、復号化器に適用された量子化走査の逆のことが行われる。最後に、かくして再生された変換係数は逆ブロック変換器56に与えられ、そこで復号化器で行われたブロック変換、例えば8×8のHadamard変換の逆の走査が信号に対し行われ、復号化された現フレーム、あるいはその一部が生成される。
【0027】
逆量子化器54の出力点における再生された変換係数は、部分的に再生された現フレームのメモリ58内に記憶される。符号化器10のコンテキスト選択器22と同様に、復号化器50のコンテキスト選択器60は、部分的に再生された現フレームのメモリ58内の以前に再生されたサンプルを用いてコンテキスト値Qを生成する。符号化器10の符号化パラメータ更新ユニット24と同様に符号化パラメータ更新ユニット62は、符号化パラメータA(Q)とN(Q)を更新して、これを同一のコンテキストQを有する後続の係数のgolomb復号化プロセスで用いる。
【0028】
本発明によれば、現フレームの以前に再生されたブロックの知識は、現係数を復号化するのに用いることのできるコンテキスト値Qを設定するのに十分である。かくして本発明により形成された復号化器は、符号化器から受信した符号化されたビットストリームを復号化するために、符号化器からの符号化パラメータ関連情報を受領する必要はない。そのため、本発明の符号化器と復号化器の間の伝送帯域および/または蓄積容量を節約することができる。
【0029】
上記の実施例において、Golomb 復号化技術を用いることは、各係数のコンテキストを考慮に入れる圧縮スキームの単なる一実施例である。かくして、各係数のコンテキストが本発明により選択された後は、各係数のコンテキストを考慮に入れたいかなる圧縮スキームも採用することができる。
【0030】
符号化器10と復号化器50の構成要素はそれぞれ、中央処理装置、マイクロプロセッサ、ASICあるいはコンピュータ内のデータ処理装置、ビデオ送信器、ケーブルシステムのヘッドエンド、テレビのセットトップボックス、あるいは他の種類のビデオ信号プロセッサ等を用いてそれぞれ実現することができる。中央処理装置、マイクロプロセッサ、特定応用用の集積回路、あるいは他のデータ処理装置は、データや各構成要素の機能に関連した結果を記憶するためのメモリを有する。本発明は、様々な種類のビデオ処理装置、あるいは伝送装置と共に用いることができる。かくして本発明は、ビデオ符号化システムを例に説明したが、本発明は一実施例として説明した、特定の種類のビデオフォーマット、ビデオ符号化標準、あるいは符号化システム構成と共に使用することに限定されるものではない。本発明は、ブロック変換符号化を行うのが好ましく、かつパラメータ関連のオーバーヘッド情報の符号化を復号化器に伝送することなく行える、いかなるビデオ符号化システムにも等しく適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 符号化器
12 ブロック変換器
14 量子化器
16 Golomb符号化器
18 逆量子化器
20 部分的に再生された現フレームのメモリ
22 コンテキスト選択器
24 符号化パラメータ更新ユニット
50 復号化器
52 Golomb復号化器
54 逆量子化器
56 逆ブロック変換器
58 部分的に再生された現フレームのメモリ
60 コンテキスト選択器
62 符号化パラメータ更新ユニット