【実施例】
【0040】
薄膜半導体チップおよびその製造方法のさらなる利点、有利な実施形態および構成は、
図1A−
図1F,
図2A−
図2C,
図3A,
図3B,
図4に則して説明する以下の実施例から得られる。
【0041】
図1A−
図1Fには、本発明の方法の第1の実施例の種々の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図が示されている。
図2A−
図2Cには、本発明の方法の第2の実施例の種々の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図が示されている。
図3A,
図3Bには、本発明の方法の第3の実施例の種々の段階におけるウェハ積層体の概略的な断面図が示されている。
図4には、チップ支持体上に被着され、電気コンタクトの設けられた本発明の薄膜半導体チップの概略的な断面図が示されている。
【0042】
実施例および図面において、同一の構成要素または同じ働きをもつ構成要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。図中の要素、特に層厚さやその比は基本的には縮尺通りに描かれていない。むしろわかりやすくするために部分的に強調して大きめに描かれているものと解されたい。
【0043】
実施例1
実施例1の方法では、
図1Aに示されているように、第1のステップで活性層列20が成長基板3上に被着される。これは、有利な実施例では、例えば窒化物‐III/V化合物半導体材料、例えばAl
nGa
mIn
1−n−mN[0≦n≦1,0≦m≦1,n+m≦1]から成る複数の層をサファイア基板またはSiC基板上にエピタキシャル成長させることにより行われる。このことはもちろん、In,Al,Gaおよび/またはNのほかの元素が組成に含まれるケースを排除しない。
【0044】
電磁放射の形成に適した活性層列は、例えば従来のpn接合部、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造(SQW構造)あるいは多重量子井戸構造(MQW構造)を有するものとすることができる。この種の構造は当業者に周知であるので、ここではこれ以上詳細に説明しない。上述の多重量子井戸構造は例えば国際公開第01/39282号明細書に説明されており、この刊行物を本願の参考文献とする。
【0045】
続いて、
図1Bに示されているように、活性層列20上に反射性かつ導電性のコンタクト材料層40が形成される。当該のコンタクト材料層40は、後の薄膜半導体チップ1において、特に、活性層列20からコンタクト材料層40の方向へ発光された放射を反射して薄膜半導体チップ1の反対側の出力部へ向かわせ、放射出力効率を高める役割を有する。
【0046】
コンタクト材料層40は全面にわたってAg,AlまたはAuなどの金属材料を蒸着された状態で含むことができる。また複数の誘電層および集積された電気コンタクトから成る誘電性のリフレクタを用いてもよい。
【0047】
適切なリフレクタは例えば国際公開第01/82384号明細書から公知であり、この刊行物を本願の参考文献とする。
【0048】
同時に、コンタクト材料層40は活性層列20に対する裏面のコンタクト層として機能する。活性層列20および反射性かつ導電性のコンタクト材料層40はともに例えば厚さ8μmである。
【0049】
次のステップでは、活性層列20およびコンタクト材料層40を有する成長基板上の積層体から、
図1Cに示されているように、相互に分離した活性層体2および反射性かつ導電性のコンタクト層4が形成される。これは例えばウェットケミカルエッチングまたはドライエッチングにより行われる。
【0050】
これに代えて、コンタクト材料層40をマスクによりラテラル方向にパターニングされた状態で活性層列20上に被着し、続いて活性層列20をパターニングして活性層体2が生じるようにしてもよい。これにより1つの活性層体2の上に1つずつ反射性かつ導電性のコンタクト層4が存在するようになる。
【0051】
続いて反射性かつ導電性のコンタクト層4上にフレキシブルな導電性シート6が被着される。このシートは例えば厚さ30μm〜80μmのカーボンシートである。
【0052】
カーボンシートは、温度≦150℃および比較的小さな圧力約1barでスタック21に接合可能であるという利点を有する。
【0053】
接合プロセスを実施するために、カーボンシートは支持体上に被着される。カーボンシートがプロセス中に当該の支持体と接合してしまわないようにするために、例えばテフロンから成る反接着シートを支持体とカーボンシートとのあいだに挿入することができる。こうした反接着シートは、接合プロセス中、カーボンシートが意図せず他の面と接合してしまう危険のある箇所であれば、他の位置で使用することもできる。
【0054】
次のステップでは活性層列20の成長に用いられた成長基板3が例えばレーザーリフトオフプロセスにより除去される。レーザーリフトオフプロセスについては例えば国際公開第98/14936号明細書に説明されている。こうして、
図1Eに示されているように、活性層体2および反射性かつ導電性のコンタクト層4はフレキシブルな導電性シート6上に存在することになる。
【0055】
付加的なステップとして、
図1Fに示されているように、スタック21のパターニング後に、スタック21の側面の少なくとも一部にパシベーション層5を形成することもできる。このパシベーション層は例えば窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムまたは窒化酸化ケイ素から成る。
【0056】
薄膜半導体チップ1は、シート6をレーザーカット、ウォータージェットカットまたはソーカットなどの従来の手法で分離することにより、ダイシングされる。
【0057】
裏面にカーボンシート6の設けられた薄膜半導体チップ1は、圧力および温度を印加することにより、カーボンシート6を介して容易にケーシングに固定することができる。これに代えて、このような薄膜半導体チップ1を接着によりケーシングに接合することもできる。
【0058】
実施例2
実施例2の最初の3つのステップは実施例1と同様であり、活性層列20の形成、導電性のコンタクト材料層40の被着、および、これら2つの層からのスタック21のパターニングが行われる。実施例1とは異なり、導電性の補強層7がコンタクト層4上に被着されており、したがってスタック21は少なくとも3つの層を含む。導電性の補強層7は例えば電気化学的に被着された金属材料から成る。
【0059】
活性層2,反射性かつ導電性のコンタクト層4および金属の補強層7を含むスタック21の厚さは、例えば20μm〜25μmである。
【0060】
図2Aに示されているように、活性層列20および反射性かつ導電性のコンタクト材料層40をパターニングして相互に分離したスタック21が形成され、金属の補強層7が被着され、その後、パシベーション層5がスタック21の露出面に被着され、さらにカーボンシート6がスタック21に向かう側の金属の補強層7に被着される。
【0061】
このようにして形成された積層体を補強するために、カーボンシート6の裏面に、圧力および温度を加えることにより、別の剛性の安定な補助支持体8が被着される。補助支持体の厚さは例えば100μm〜150μmである。それよりも厚い支持体を使用してもよい。
【0062】
当該の剛性の補助支持体8により、積層体の取り扱いおよび従来のLED製造装置におけるさらなる処理が容易になる。剛性の補助支持体がモリブデン、タンタルまたはタングステンなどの導電性材料から成る場合、後に生じる薄膜半導体チップの裏面にウェハレベルで電気コンタクトを形成することができる。これにより、1つのウェハ上に製造された全ての薄膜半導体チップを従来の測定装置によってテストすることができる。
【0063】
次のステップでは、
図2Bに示されているように、成長基板3が除去され、活性層体2のうち成長基板があった側に導電性の金属のコンタクト位置9が形成される。このコンタクト位置は例えば蒸着されたAg,AuまたはAlを含む。
【0064】
その後、活性層体2,導電性のコンタクト層4,補強層7,カーボンシート6およびコンタクト位置9から成る全ての薄膜半導体チップがウェハ積層体として従来のテスト装置でテストされる。
【0065】
次いで、
図2Cに示されているように、導電性のコンタクト位置9の表面に中間支持体10が被着される。これはウェハのソーカットの際に使用されるシートである。カーボンシート6を例えばウェットケミカルプロセスによって選択的に除去することにより、薄膜半導体チップは再び剛性の補助支持体8から取り外され、同時にダイシングされる。中間支持体10上の個々の薄膜半導体チップは、従来のプロセス、例えばリードフレームおよび/またはケーシングボディへの実装に対して準備される。
【0066】
実施例3
実施例1,2と同様に、ウェハ積層体にスタック21が製造される。スタック21は活性層2,反射性かつ導電性のコンタクト層4,付加的な導電性の補強層7を含む。成長基板3の除去後、スタック21は導電性のシート6上に存在しており、この導電性のシート6は剛性の補助支持体8に接合されている。
【0067】
図3Aに示されているように、活性層体2,反射性かつ導電性のコンタクト層4および金属の補強層7から成る薄膜半導体チップの側面全体にわたってパシベーション層5を被着することができる。
【0068】
有利にはこのとき、パシベーション層5は、活性層体2,反射性かつ導電性のコンタクト層4,付加的な金属の補強層7,カーボンシート6および剛性の補助支持体8から成る積層体が形成された後に被着される。薄膜半導体チップは続いてカーボンシート6の選択的除去によりダイシングされる。その後、薄膜半導体チップの一方側が完全に絶縁される。したがって、デバイスができあがってからの付加的なパシベーションステップを省略することができる。こうしたステップは、標準プロセスにしたがって製造された薄膜半導体チップでは必須である。
【0069】
図3Bには、側面全体にわたってパシベーション層5の設けられた薄膜半導体チップがフレキシブルな導電性シート6に接合され、さらにこのシートが剛性の安定な補助支持体8に接合されている様子が示されている。剛性の補助支持体8がモリブデンなどの導電性材料から成る場合、この実施例で後に生じる薄膜半導体をテストすることができる。この状態が
図3Bに示されている。
【0070】
実施例4
図4には、活性層体2,裏面の反射性かつ導電性のコンタクト層4および金属の補強層7から成る薄膜半導体チップが示されている。薄膜半導体チップの側面はここでは全体にわたってパシベーション層5によってカバーされている。
【0071】
このような薄膜半導体チップは、特に、適切なチップ支持体11を被着した後、ボンディングワイヤなしで電気コンタクトを形成するのに適している。
【0072】
このために、薄膜半導体チップは適切なチップ支持体11、例えば配線板上に被着される。この配線板は、有利には、薄膜半導体チップの裏面のコンタクト接続に用いられる導電性構造体12を含む。またチップ支持体11の残りの部分は電気的絶縁性材料、例えばプラスティックから成る。薄膜半導体チップはチップ支持体11の導電性構造体12上で位置決めされる。続いて導電層13を薄膜半導体チップおよびチップ支持体11の表面全体にわたって被着することにより電気コンタクトが形成される。有利には、導電層13は薄膜半導体チップから発光される電磁放射に対して高い透過係数を有する材料、例えばインジウム亜鉛酸化物ITOまたは酸化亜鉛から成る。
【0073】
ここで、ボンディングワイヤを省略することのできるコンタクト形成プロセスは本発明独自であることを指摘しておく。
【0074】
万全を期すために、本発明は上述した実施例に限定されず、本明細書において説明した基本原理を基礎とする全ての実施例が本発明の対象となりうることも付言したい。また、本発明の基本原理から離れないかぎり、種々の実施例の個々の要素を相互に組み合わせることができることにも注意されたい。