特許第5693557号(P5693557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693557
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】家具ヒンジ用の駆動システム
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/086 20060101AFI20150312BHJP
   E05F 15/611 20150101ALI20150312BHJP
【FI】
   E05D7/086
   E05F15/12
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-500001(P2012-500001)
(86)(22)【出願日】2010年3月12日
(65)【公表番号】特表2012-520951(P2012-520951A)
(43)【公表日】2012年9月10日
(86)【国際出願番号】AT2010000075
(87)【国際公開番号】WO2010105281
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2013年2月18日
(31)【優先権主張番号】A438/2009
(32)【優先日】2009年3月19日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーク,デービッド
【審査官】 瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−510284(JP,A)
【文献】 特開2002−138746(JP,A)
【文献】 特表2006−526087(JP,A)
【文献】 特開2004−162523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00−11/10
E05F 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立品であって、当該組立品は、
少なくとも2つの家具部分(1、2)に回動可能に連結するためのヒンジ(3)であって、
当該ヒンジ(3)は、家具部分(1、2)にそれぞれ連結するための2つのストッパー部を有し、前記ストッパー部が、少なくとも1つの分節軸(S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7)を介して、互いに分節で連結可能であり、1つ目の前記ストッパー部はヒンジカップ(14)を含み、2つ目の前記ストッパー部はヒンジアーム(24)を含む前記ヒンジ(3)と、
前記ヒンジ(3)を開くおよび/または閉じる駆動システムであって、
閉じ込められた構成部品として形成された電気駆動部を有し、前記電気駆動部が電気モーター(18)と、前記電気モーター(18)からの力乃至トルクを前記ヒンジ(3)に伝達するための操作装置(8)とを有する駆動システムと、を含み、
前記操作装置(8)は、固定部(9)を有し、前記固定部(9)により、前記操作装置(8)が前記ヒンジ(3)と解除可能に連結され、前記固定部(9)は前記ヒンジ(3)の凹部(30’、30”)に噛合できることを特徴とする組立品
【請求項2】
前記固定部(9)は、少なくとも1つのロック部材を有し、前記ロック部材は、取り付け位置において前記ヒンジ(3)につなぎとめられていることを特徴とする請求項1に記載の組立品
【請求項3】
前記ロック部材は、バネ弾性を有するように形成され、前記取り付け位置では、前記ヒンジ(3)に形成された対応する凹部(30’、30”)と噛合し、前記ロック部材のバネ作用に対抗して押圧することにより、前記凹部(30’、30”)からの噛合が外され得ることを特徴とする請求項2に記載の組立品
【請求項4】
前記固定部(9)は、実質的に剛性を有するように形成された少なくとも1つの第1支持部(31)と、実質的にバネ弾性を有するまたはバネで付勢されるように形成された少なくとも1つの第2支持部(32)とを有し、ここで、前記実質的に剛性を有するように形成された第1支持部(31)は、前記ヒンジ(3)中の凹部(30’)中に噛合できることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組立品
【請求項5】
前記第2支持部(32)に作用するバネ力は、前記第2支持部(32)を、前記第1支持部(31)から離れる方向へと付勢することを特徴とする請求項4に記載の組立品
【請求項6】
前記電気駆動部は筐体(5)を有し、前記筐体(5)はガイド装置を有し、前記ガイド装置から、前記操作装置(8)がスライド可能にガイドされることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の組立品
【請求項7】
前記ガイド装置は、前記駆動システム(4)の取り付け状態では、前記家具部分(1、2)のうちの1つに対して固定的に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の組立品
【請求項8】
前記ガイド装置は、前記電気駆動部の前記筐体(5)中または前記操作装置(8)中に配置された長孔(6)を有し、前記長孔(6)中に、該双方の部分(5、8)のうちの他方の部分に設けられたガイド栓またはガイドピン(7)が噛合することを特徴とする請求項6または7に記載の組立品
【請求項9】
前記操作装置(8)はレバーとして形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の組立品
【請求項10】
前記レバーの端部のうちの1つはガイド装置中に、好ましくは回動可能に軸支されていて、該端部に対向する端部は、固定部(9)を有することを特徴とする請求項9に記載の組立品
【請求項11】
前記レバーは、2本アームを有するよう形成されていることを特徴とする請求項9〜10のいずれか1項に記載の組立品
【請求項12】
前記電気モーター(18)は、モーター軸(27)を有し、ここで、前記モーター軸(27)は、該軸に軸支された歯車(20、22、29)および/または摩擦車および/またはウォーム歯車(21)を介して、前記操作装置(8)と協働し得ることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の組立品
【請求項13】
前記歯車(20、22、29)および/または前記摩擦車および/または前記ウォーム歯車(21)をと協働し得るラック(19)はガイド装置中に軸支されていて、前記ラックにより、前記操作装置(8)がスライド可能にガイドされていることを特徴とする請求項12に記載の組立品
【請求項14】
前記操作装置と、前記固定部(9)により解除可能に連結可能である前記ストッパー部は、前記ヒンジアーム(24)、または、前記ヒンジアーム(24)に配置されている中間部材(16)、または、前記ヒンジカップ(14)であることを特徴とする請求項1に記載の組立品。
【請求項15】
前記駆動システム(4)は、前記ヒンジ(3)から孤立している基板(10)上に固定可能である、好ましくはクリップ留めされ得ることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の組立品。
【請求項16】
前記駆動システム(4)は、前記ヒンジ(3)の前記ストッパー部のうちの1つの上に載置可能である、または、前記ヒンジ(3)の前記ストッパー部のうちの1つの傍らに固定可能であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の組立品。
【請求項17】
前記操作装置(8)は、U字型の部分を有し、前記U字型の部分は、前記ヒンジアーム(24)または前記ヒンジアーム(24)に配置されている中間部材(16)に覆いかぶさっていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の組立品。
【請求項18】
家具本体(1)と、前記家具本体(1)に回動可能に軸支されている家具ドア(2)とを有する家具において、前記家具本体(1)と前記家具ドア(2)とに取り付けられた請求項1〜17のいずれか1項に記載の組立品が設けられていることを特徴とする家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジカップおよびヒンジアームを有するヒンジを用いて、互いに相対的に回動可能な家具部品を開くおよび/または閉じるための駆動システムであって、閉じ込められた構成部品として形成された電気駆動部(この電気駆動部は、電気モーターと、電気モーターからの力乃至トルクをヒンジに伝達するための操作装置とを有する。)を備えた駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヒンジモーターが統合されたヒンジを示し、ヒンジおよびヒンジモーターの様々な実施形態が示されているが、この場合、ヒンジモーターは、各ヒンジの不可欠な構成要素となっている。ヒンジを用いて互いに対して相対的に回動可能となるように分節で連結された複数の家具部分用の別体の駆動システム、すなわち、駆動ユニットとヒンジとが孤立した別々の閉じ込められた構成ユニットであるものは、示されていない。
【0003】
家具部品がこの種のヒンジにより回動可能である場合、ヒンジモーターが故障した際に、ヒンジ全体を分解せねばならないか、または、ヒンジ全体を故障したヒンジモーターと共に、損傷していない電気モーターを備えたヒンジと交換せねばならない。同様に、従来の純粋に手動で回動可能であるヒンジに、ヒンジモーターを後付けすることはできない。このような場合にも、ヒンジ全体を、統合されたヒンジモーターを備えたヒンジと交換せねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/035971A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この従来技術における問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、ヒンジカップおよびヒンジアームを有するヒンジを用いて、互いに相対的に回動可能な家具部品(とりわけ、家具部分の本体に留められた両開きドア)を開くおよび/または閉じる駆動システムを設けることにより達成され、この駆動システムでは、電気駆動部が、閉じ込められた構成部品として形成され、電気駆動部は、電気モーターと、電気モーターからの力乃至トルクをヒンジに伝達するための操作装置とを有し、操作装置は固定部を有し、この固定部により、操作装置がヒンジと解除可能に連結され得る。
【0007】
これにより、ヒンジが、すでに家具本体すなわち相対的に互いに回動可能に分節で連結された複数の家具部分に取り付けられていた場合にも、閉じ込められた構成ユニットとして存在するヒンジに、駆動システムを固定することができる。これにより、ヒンジ自体を家具部分から取り外さずとも、故障した電機駆動部の交換が可能になる。ここで、ヒンジは、製造のためにも、必要な場合操作装置との連結を解除するためにも、分解する必要はない。同様に、ヒンジ自体を、例えば新しい部材を組み入れて変更しなくても、この種の後付けが可能になる。製造者側では、一般的なヒンジをわずかに変更するだけで、このヒンジに本発明の駆動システムを後付けすることができ、ここで、ヒンジの変更を全く必要とせずに、固定部を形成することも可能となる。ここで、駆動システムは、給電装置、駆動システムを家具部分のうちの1つに固定する装置、電気駆動部及び操作装置を含み得る。
【0008】
操作装置をヒンジと解除可能に連結できる固定部により、既存のヒンジ組立品、すなわち、ヒンジカップとヒンジアームとを有するヒンジにより回動可能に分節で連結された家具部分に、後の時点でこの種の駆動システムを後付けすることができ、ここで、この後付けをすでに工場で行うことができる。すでに工場側で駆動システムを設置する際には、既存の生産ラインを維持することができるので、駆動システムの設置には、非常にわずかのコストしか必要ではない。勿論、最終消費者が、既存のヒンジ組立品に対して、駆動システムを後付けで取り付けおよび/または取り外すこともできる。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項中に定義されている。
【0010】
本発明の好適な実施形態では、操作装置は、ヒンジを分解することなく、ヒンジと解除可能に連結され得る。ここで、ヒンジのヒンジアームを少なくとも1つの分節レバーを介してヒンジカップと連結している場合でも、操作装置をヒンジと解除可能に連結できるよう設けることもできる。
【0011】
本発明の好適な実施形態では、操作装置は、工具なしにヒンジに取り付け可能である、および/または、工具なしに取り外しできる。これは、例えばスナップ連結により行われ得るが、ネジ連結、またはこれ以外の適切な様式によっても行うことができる。
【0012】
ここで、電気駆動部を閉じ込められた単一の構成部品として形成し、これを回動可能に分節で連結された家具部分のうちの1つに固定することができる。しかし、閉じ込められた構成部品として形成された電気駆動部が、複数の構成ユニットを有し、これらが、必要に応じて、回動可能に分節で連結された複数の家具部分上に固定されることも可能である。これにより、様々なヒンジタイプを考慮することができ、または、家具部分の内側または外側にある既存の場所に個別に入れることも可能である。
【0013】
本発明のある実施形態では、固定部は、ボルト連結部の一部分である。これは、例えばヒンジに接してまたはヒンジ中に配置されたボルトに対応して、固定部が、2つの穿孔として操作装置中に形成されていることにより達成することができる。ボルトは孔の中に挿入され、これにより、操作装置とヒンジとの間の連結部が達成され得る。勿論、固定部をボルトとして形成し、ヒンジに配置された対応する穿孔と噛合させることも可能である。ここで、穿孔とボルトとからなるこの種の組立品は、ヒンジを分解することなく、操作装置とヒンジとの解除可能な連結を可能にするように形成され、ヒンジ乃至操作装置に配置されることができる。この目的のために、1つまたは複数の穿孔乃至ボルトは、ヒンジ乃至操作装置の外側領域に配置され得る。
【0014】
本発明のある好適な実施形態によれば、固定部は機械的なラッチ連結部として形成されている。この際、固定部、または、ヒンジにおいてこの固定部と連結可能である対応する部分が、ラッチ突起として形成され得る。この機械的なラッチ連結部のラッチではめ込むことにより、ヒンジと操作装置との圧力ばめ連結がなされ、これにより、操作装置が、電気モーターにより提供される力乃至トルクをヒンジに伝達することができ、したがって、操作装置と、したがってヒンジにより分節で連結された複数の家具部分とが、互いに対して相対的に回動可能になる。
【0015】
ここで、固定部は、少なくとも1つのロック部材を有することができ、このロック部材は、取り付け位置においてヒンジにつなぎとめられる。この際、ロック部材は、バネ弾性を有するように形成され、取り付け位置では、ヒンジに形成された対応する開口部と噛合し、ロック部材のバネ作用に対抗して押圧することにより、ロック部材は開口部からの噛合が外され得るよう設けることができる。このように形成された固定部により、操作装置は、スナップ連結部としてヒンジと解除可能に連結され、ここで、操作装置は、工具なしに取り付け可能であり、及びこれに加えてまたはこれに代えて、工具なしに取り外しできる。とりわけ、このように形成された固定部により、ヒンジを分解せずとも、操作装置とヒンジとが解除可能に連結することができる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によれば、操作装置は固定部として、実質的に剛性を有するように形成された少なくとも1つの第1支持部と、実質的にバネ弾性を有するまたはバネで付勢されるように形成された少なくとも1つの第2支持部とを有し、ここで、実質的に剛性を有するように形成された第1支持部は、ヒンジ中の凹部中に噛合できる。
【0017】
実質的に剛性を有するように形成された第1支持部は、ここで、固定ストッパーとして機能し得る。ここで、この剛性を有するように形成するとは、操作装置がヒンジを押すおよび/または引く際に操作上で強い負荷をかけても、機能を妨げるような変形は生じないと理解されるべきである。バネ弾性を有するように形成された、または、バネで付勢された第2支持部により、操作装置は、ヒンジ、好ましくはスナップ留め連結の形態を有するヒンジと連結できるようにし、好ましくはヒンジ中にラッチではめ込むことができ、これにより、機械的なラッチ連結が可能となる。操作装置とヒンジとの連結の解除は、第2支持部がそのバネ付勢に反して弾性により変形され、これにより工具なしに取り付け可能である、及び、工具なしに取り外しできることにより行われ得る。
【0018】
第1支持部は、実質的にはフック形態で形成可能であり、または、少なくとも2つのフックを有し得る。第2支持部は、スプリングタブを有し得る。
【0019】
この際、好ましくは、第2支持部に作用するバネ付勢は、第1支持部から離れる方向へと作用する。さらなる支持部を設けて、操作装置の位置の限定を行う、とりわけ側面方向への操作装置のスライドまたは回動に対しての操作装置の位置の限定を行うことも可能である。
【0020】
操作装置自体は、電気駆動部に、例えば電気駆動部の筐体に、固定または一体形成され得る。ここで、操作装置が、上述したように形成され得るさらなる固定部を利用することもでき、このさらなる固定部により、操作装置を、電気駆動部と、例えばスナップ連結として解除可能に連結することもできる。
【0021】
本発明の特に好適な実施形態では、電気駆動部の筐体はガイド装置を有し、このガイド装置により、操作装置がスライド可能にガイドされている。操作装置をスライド可能にガイドすることにより、操作装置にとって、したがって、最終的にヒンジにとって、乃至ヒンジと連結された家具部分にとっても、移動路が予設定されていることになり、これにより、固定部を介した圧力ばめ連結を介して、電気モーターにより準備された力ないしトルクを、複数の家具部分(これらは、ヒンジを用いて互いに相対的に回動可能に分節で連結されている)を回動させるために使用することができる。ここで、スライド可能とは、操作装置の少なくとも併進運動成分が、ガイドされる際に存在せねばならないということを意味する。併進成分が存在することにより、駆動システムは例えばヒンジ付近に配置され得るので、有用で省スペースとなる。
【0022】
ここで、ある好適な実施形態では、駆動システムの取り付け状態では、ガイド装置は、家具部分のうちの1つに対して固定的に配置されている。これにより、とりわけ安定したスライド可能なガイドが可能となり、これにより、重く大きな家具部分も、本発明の駆動システムにより回動可能になる。
【0023】
ある実施形態では、ガイド装置は、電気駆動部の筐体中または操作装置中に配置された少なくとも1つの長孔を有する。ここで、筐体中または操作装置の双方のうちの他方の部分に設けられたガイド栓またはガイドピンが、操作装置をガイドするために長孔中に噛合する。すなわち電気駆動部の筐体中に長孔が配置されると、操作装置に設けられたガイド栓またはガイドピンがこの長孔中に噛合する、あるいはこの逆が起こる。
【0024】
本発明のある好適な実施形態では、操作装置はレバーとして形成されている。これにより、力がとりわけ容易に伝達され得る。これに加えて、レバーには、力を伝達するための省スペース部材であるという特徴がある。ここで、好ましくは、レバーの端部のうちの1つは、このガイド装置中に、好ましくは回動可能に軸支されている。この軸支された端部に対向するレバーの端部は、固定部(これにより、操作装置がヒンジと解除可能に連結され得る)を有する。レバーとして形成された操作装置をこのように軸支することにより、回動運動に必要な運動学的および幾何学的必要条件を、容易に満たすことができる。ここで、レバーは、さらに、2本アームを有するよう形成されることができ、これにより、さらに柔軟性が得られる。このレバーが、少なくとも特定の部分領域において弾性を有するように形成されているよう設けることも可能である。
【0025】
電気モーターから提供される力乃至トルクをヒンジに伝達するのを、直接電気モーターを介して行い、その結果、家具部分の回動を、電気モーターと、操作装置と、ヒンジとを介して行うことも可能であるが、好ましくは、電気駆動部には伝達機構が備えられている。これにより、減速機構や増速機構も形成することができ、これにより、とりわけ重い家具部分を回動することができ、および/または、とりわけ回動領域を大きくすることを考慮することができる。さらに、この種の伝達機構により、しばしば電気モーターにより発生させられる回転運動を、操作装置の直進運動に変えることができる。
【0026】
一般的には、本発明の駆動システムには、回転モーターも、直進モーターも用いることができ、これらは、直流電流も交流電流も発生させることができる。従来の家具部分を回動させるためには、概して例えば5ボルト〜25ボルトまでのわずかな操作電圧で十分である。この場合、モーター出力は概して2ワット〜30ワットになる。
【0027】
さらなる実施形態では、電気モーターは、モーター軸を有し、このモーター軸は、該軸に軸支された歯車および/または摩擦車および/またはウォーム歯車を介して操作装置と協働し得る。これは、これらの歯車が、電気モーターと操作装置との間の伝動系中に配置されることにより行われる。これらは、この際に伝動装置の一部を形成し得る。
【0028】
ここで、好ましくは、ラックがガイド装置中に軸支されていて、このラックは、一方では操作装置と連結可能であり、他方では、歯車および/または摩擦車および/またはウォーム歯車と連結可能であり、したがって、電気モーターと協働し得る乃至連結し得る。この種のラックにより、操作装置はスライド可能にガイドされ得る。この際、ラックは、回転運動を併進運動へとりわけ容易に変換させることができる。
【0029】
本発明のある好適な実施形態では、電気モーターは、回動可能に分節で連結されている家具部分を開くおよび/または閉じる際に回動運動を行うのみならず、開き運動および/または閉鎖運動における緩衝部材乃至ブレーキ部材としても用いることができる。モーターに誘導負荷乃至オーム抵抗をかけるように設けることができる。電気モーターを容易に短絡させることも考えられる。
【0030】
好ましくは、電気モーターと伝達機構との間乃至電気モーターと操作装置との間に、好ましくは電磁連結部である連結部が配置されていて、少なくとも、電気モーターの力乃至トルクを伝える閉鎖状態と、電気モーターの力乃至トルクを伝えない開いた状態との間で、この電磁連結部が好ましくは電気的に切り替えられることができる。しかし、電気モーターの駆動騒音を伝達機構にわずかに伝える機械的に柔軟性を有する連結部、例えば、ホース連結部も可能である。この種の連結部に加えてまたはこれに代えて、本発明のある実施形態では、好ましくはオンオフ可能なフリーホイールを設けられ、これにより、電流がなく駆動システムを用いることができない場合でも、家具部分を手動で動かすことができる。
【0031】
ある好適な実施形態では、家具部分の回動運動、すなわち例えば家具部分の開閉運動を、開ループ制御乃至閉ループ制御するために、駆動システムは開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置を有する。この装置は、必要に応じて位置測定装置およびさらなる測定装置(例えば、センサー)を有する。この種の開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置の一例は、すでに挙げた国際公開第2007/035971 A1号パンフレット(第6頁〜第10頁)に記載されているので、ここではこれ以上詳細には言及するには及ばない。
【0032】
本発明のある好適な実施形態では、電気モーターは、家具部品、したがってヒンジ、例えばヒンジのストッパー部を移動させるまたは押すおよび/または引くことにより、オンオフ可能であり、これにより、タッチラッチ機能が実現可能になる。タッチラッチ機能では、使用者が家具部分に作用することにより、家具部分を回動させるために電気モーターが解除されおよび/またはブレーキがかけられる。この目的のために、切り替え可能なセンサー(例えば、エンコーダー、ポテンショメーター、または、これ以外の角度もしくは距離を測定するシステム、例えば、家具部分の移動、押す作用および/または引く作用に反応する光学センサーなど)を用いることができる。同様に、誘導移動センサーを用いることができ、このセンサーは家具部分が移動する際に好ましくは方向に応じて反応する。このようにして得られた測定信号は、開ループ制御装置乃至閉ループ制御装置に供給されることができ、これらの信号に応じて、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置が電気モーターを開ループ制御乃至閉ループ制御する。しかし、同様に、モーターを作動ないし作動停止させる手動で操作可能なスイッチを設けることも可能である。
【0033】
本発明は、さらに、上述のように実施された駆動システムと、少なくとも2つの家具部分を、家具部分のそれぞれに固定された少なくとも2つのストッパー部を用いて回動可能に連結するためにヒンジアームおよびヒンジカップを有するヒンジとを有する組立品に関する。これらのストッパー部は、少なくとも1つの分節軸を介して、互いに分節で連結可能である。駆動システムの操作装置は、ストッパー部のうちの1つと解除可能に連結可能である。
【0034】
操作装置とストッパー部との連結は、好ましくはスナップ留めによる解除可能なラッチ連結で行われ得る。しかし、ネジ連結部、または、これ以外の適切な方法でも行うことができ、この際、操作装置とヒンジとは、工具なしに連結可能である。これに加えてまたはこれに代えて、操作装置のヒンジからの取り外し、すなわち連結の解除も工具なしに行うようにすることも可能である。
【0035】
ヒンジのストッパー部は、たいてい、ヒンジカップおよび/またはヒンジアームである。それ以外に、例えば、家具部分を回動可能に連結するためのフレームヒンジも公知である。しばしば、ストッパー部を、家具部分に取り付け可能な基板上にクリップ留めすることができる。1つまたは複数の分節軸を有する家具ヒンジは存在し、この際、とりわけしばしば四分節軸または七分節軸を備えたヒンジが用いられる。ニ分節レバーを備えたヒンジであることもしばしばあり、七分節軸を有するいわゆる広角ヒンジがしばしば設けられて、ここでは、少なくとも1つの分節レバーが、2つの相対的に互いに1つの分節軸を介して回動可能な腕を有する。ヒンジアームを伸ばすために、さらに、ヒンジアームに設けられた中間部材が用いられ、これも同様に分節により軸支されている。
【0036】
ある好適な実施形態では、駆動システムは、上述のヒンジのように、基板上に固定されることができ、好ましくはクリップ留めされ得る。駆動システムの基板と、ヒンジとは、孤立した別々の構成部品である。好ましくは、駆動システムを、ストッパー部のうちの1つの傍らに、すなわち例えばヒンジアームの傍らに固定可能である。しかし、駆動システムを、ストッパー部のうちの1つの上に載置、例えば、クリップ留めすることも考えられる。
【0037】
操作装置と、ヒンジアーム、またはヒンジアームに配置されている中間部材との連結、を特に安定させるために、本発明のある実施形態では、操作装置に、U字型の部分を備え、このU字型の部分が、ヒンジアームまたはヒンジアームに配置されている中間部材に覆いかぶさるようにすることができる。
【0038】
本発明は、さらに、家具本体と、家具本体に回動可能に軸支されている家具ドアとを有し、ここで、家具本体と家具ドアとに、上述の組立品が取り付けられている家具に関する。
【0039】
本発明のさらなる詳細および利点は、図面の説明に基づいて、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】家具部分に取り付けられたヒンジを、後付けされた本発明の駆動システムと共に示した透視図である。
図2図1の透視図を開いたところを示す図である。
図3】後付された駆動システムを備えたヒンジの平面図であり、この図中、1つの回動可能な家具部分が部分的に開いた状態にあるところを示す図である。
図4図3中のA−Aで記した交線に沿って切った断面図である。
図5図3の組立品の平面図であり、この図中、回動可能な家具部分が、さらに開いた状態にあるところを示す図である。
図6図5中のB−Bで記した交線に沿って図5を切った断面図である。
図7図3の組立品の平面図であり、この図中、回動可能な家具部分は、閉じた状態にあるところを示す図である。
図8図7中のC−Cで記した交線に沿って切った断面図である。
図9】家具本体に固定され孤立している駆動システムと、これから分離された家具ドア上に固定されたヒンジとの透視図である。
図10】本発明の駆動システムの透視図である。
図11】本発明の駆動システムの分解図である。
図12】本発明の駆動システムのさらなる実施形態の側面図であり、この駆動システムはヒンジに配置されていて、回動可能な家具部分は部分的に開いた状態にあるところを示す図である。
図13図12の組立品の透視図である。
図14図12の組立品のさらなる透視図である。
図15図14中、Dで記した部分の詳細図である。
図16図12の組立品のさらなる透視図である。
図17図16中、Eで記した部分の詳細図である。
図18図12の組立品の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、広角ヒンジ(丁番、蝶番)として形成されているヒンジ3を用いて回動可能に分節で連結されている家具部分1・2を示し、ここで、家具ドア2は、家具本体1に対して相対的に回動される。ヒンジ3は、2つのストッパー部からなる。このストッパー部の1つは家具ドア2上に配置され、ヒンジカップ14を有する両開きドアヒンジ部であり、もう1つは家具本体1上に配置され、ヒンジアーム24を有する本体ヒンジ部である。ヒンジアーム24は基板28上に配置されていて、この基板28は、家具本体1上に取り付けられている。ここで、例えば、本体ヒンジ部ないしヒンジアーム24は、基板28上にクリップ留めされるように設けることができる。勿論、これ以外の固定方法も考えられる。広角ヒンジとして形成されたヒンジ3は、この場合、90°を上回る開き角度を達成する。この種の広角ヒンジの最大開き角度は、しばしば170°〜180°である。ヒンジアーム24を長くするために、本来の2つのストッパー部の間に、中間部材16を配置し、この中間部材16は、分節レバー17a・17bおよびさらなる分節レバー26a・26bを介して可動になるように配置されている。この際、中間部材16には、分節レバー17aが分節で連結されていて、この分節レバー17aは、分節レバー17bを介して、ヒンジカップ14と分節により連結されている。さらなる回動可能な分節レバー26a・26bは、中間部材16を、ヒンジアーム24に対して相対的に強制的にガイドするために機能する。広角ヒンジとして形成されたヒンジ3は、この場合、7つの回転軸S・S・S・S・S・S・Sを有し、この回転軸のうち回転軸S・Sは、ヒンジカップ14内部にある。
【0042】
ヒンジ3から孤立していて、かつ基板28と同様に家具本体1上に取り付けられている基板10上に、本発明の駆動システム4が配置されている。ここで、駆動システム4も、例えばクリップ留めにより、解除可能に基板10上にラッチ留めされ得る。家具本体1中またはこの上に配置されたケーブル13が、基板10中に導かれ、電気駆動部18に給電するために機能する。この場合に、例えば、駆動システム4をラッチ留めする際に、ケーブル13を刺し通し、これにより電気接触が作られるように設けることもできる。電気駆動部は、ヒンジ3から孤立している構成部品からなる。駆動システム4自体は、ヒンジ3の本体ヒンジ部の後ろに配置されていて、固定部材36(これは、基板10に配置された対応する部材43と、好ましくはスナップ留めで連結される)により、基板10上に固定されている。
【0043】
操作装置8は、この場合、2本アームレバーとして形成されていて、電気モーター18から提供される力ないしトルクを伝達するために機能する。操作装置8は、ここで、レバーアーム11・12からなり、これらのアームは、分節軸15を介して逆方向に回転可能である。駆動装置の筐体5中には、少なくとも1つの長孔6が配置されていて、この長孔は、操作装置8をスライド可能にガイドするために機能する。ガイドピン7は、操作装置8と連結されていて、電気モーター18の駆動系と協働する。ヒンジ3を開閉するために、ガイドピン7は、長孔6中を往復方向にスライドする。操作装置8は、この際、レバーアーム12上に配された固定部9で、本体ヒンジ部と、正確に述べると中間部材16と解除可能に連結されている。ここで、レバーアーム12は、U字型の部分を有し、このU字型の部分は、中間部材16に覆いかぶさっている。勿論、ヒンジアーム24自身との連結も考えられる。
【0044】
図1では、家具ドア2は、すでに広く開いている。すなわち、家具ドア2は家具本体1に対して相対的に広く回動している。ここで、電気モーター18が、家具ドア2を閉じるために始動すると、これにより、ガイドピン7が、ガイド装置中すなわち長孔6中を、後ろ方向すなわちヒンジアーム24から離れる方向に変位する。これにより、操作装置8を介して、力がヒンジ3に伝達され、家具ドア2は閉鎖状態へと回動する。
【0045】
図2では、図1に示した組立品の中身を開けて示すが、この組立品は、駆動システム4と、広角ヒンジとして形成されたヒンジ3とからなる。このヒンジ3は、家具部分1と家具部分2とを分節で連結している。駆動システム4の固定部材36は、対応する部材43と共に、機械的なラッチ連結部を形成し、これは駆動システム4を基板10上に固定するために機能する。
【0046】
電気駆動部の駆動系の実質的な電気部品を図2に示す。電気モーター18はモーター軸28を駆動し、このモーター軸28は、ウォーム21を介して歯車20・22・29と連結している。これらの歯車20・22・29とウォーム21は、伝達機構の一部分である。歯車20・22・29の1つまたは複数を、摩擦車として形成することも可能である。ここで、モーター軸27と伝達機構との間または伝達機構と操作装置8との間に、まだ別の連結機構を配置することも可能である。これに加えてまたはこれに代えて、フリーホイールを設けることも可能であり、この結果、とりわけ駆動システムの作動が停止した場合に、家具ドア2を手動でも動かすことができる。歯車20・22・29は、並進運動を行うラック19を駆動する。これにより、電気モーター18により発生させられた回転運動は、並進運動に変換される。ラック19は、ガイドピン7と、したがって操作装置8と連結されていて、操作装置8は、ガイド装置、すなわち長孔6により強制的にガイドされ、その結果、操作装置8も並進運動を行い、これにより、家具部分1と家具部分2との互いに対する相対的な回動が確実に行われる。これに加えて、操作装置8は長孔6中で回動可能に軸支されていて、その結果、操作装置8の移動が、回転成分も有する。図2には、さらに、分節軸S・S・S・S・S、および、レバーアーム12の下方に配置されている固定部9も示す。
【0047】
図3は、上述の図中に示された組立品の平面図であり、この組立品は、ヒンジ3と、後付けされた駆動システム4とからなり、これらは、レバーアーム11・12からなる操作装置8を介して、互いに解除可能に連結されている。図3で示された状態では、家具ドア2は部分的に開かれていて、閉鎖状態と完全に開いた状態との間で、開き角度が最初の3分の1の状態にある。本実施形態における開き角度は、完全に開いた状態では、約170°である。
【0048】
図4は、図3中のA−Aで記した交線に沿って切った断面図であるが、この図で、駆動システム4の電気駆動部の実質的な電気部品を示す。ここでは、固定装置23により、基板10(この上に、閉じ込められた構成部品として形成された電気駆動部が固定されている)が、家具本体1上に取り付けられている。ここで、電気駆動部を、基板10上に、機械的なラッチ連結部を用いてクリップ留めすることができる。このために、固定部材36が、基板10側の、バネ弾性を有するように形成された、または、バネで付勢された対応する部材43と連結される。勿論、他の様式、例えば、ねじ連結も可能である。図4中では、歯車29も、さらなる歯車20・22と共に、ホース連結部39を介してモーター軸27と協働し、操作装置8に力を伝達するために機能する。家具ドア2は、部分的に開いた状態にあり、これにより、ガイドピンも、長孔6の1つの端部に接していない。この場合、開き角度は、閉鎖状態と完全に開いた状態との間の最初の約3分の1にあるが、ガイドピン7は、長孔6の縦方向の広がりのうちのほぼ半分に位置する。この理由は、歯車20・22・29により形成された伝達機構にある。図4では、図2では見ることができない、広角ヒンジのこれ以外の回転軸S1・S2も見ることができる。回転軸S1と回転軸S2との間には、さらなる回動可能な分節レバー26aが配置されていて、これが、さらなる回動可能な分節レバー26bと共に、中間部材16をヒンジアーム24に対して相対的に強制的にガイドさせる。ヒンジアーム24自体は、基板28上に固定されている。ヒンジ3および駆動システム4のこれ以外の参照符号を付けていない構成部品は、それ自体従来技術より公知であり、したがってここでこれ以上詳細に説明する必要はない。
【0049】
図5の平面図及び図6の断面図(この図は、図5中B−Bで記した交線に沿った断面図である)では、駆動システム4と、ヒンジ3と、ヒンジ3を用いて分節で連結されている家具部分1・2とからなる組立品が見られるが、回動された家具ドア2は、さらに開いた状態にある、すなわち、ヒンジ3の開き角度は、図4に比べてより大きい。この開き角度は、この例では、約140°である。広角ヒンジとして形成されたヒンジ3の最大開き角度は、約170°である。これゆえに、操作装置8とも、電気駆動部の駆動系とも連結されているガイドピン7は、長孔6の、ヒンジ3側の端部の付近にある。したがって、操作装置8は、これ以上ヒンジ3の方向にはわずかの距離しか動くことができない。この距離は、ヒンジ3が完全に開いた状態に至るまでの残りの開き角度に相当する。ここで、家具部分1と家具部分2との間の相対的な位置を測定し、(不図示の)開ループ制御装置ないし閉ループ制御装置に供給する運動センサーまたは測定装置を設けて、この開ループ制御装置ないし閉ループ制御装置が、電気モーター18を正しい時点で作動を停止させることも可能である。しかし、センサーが、長孔6中のガイドピン7の位置を測定し、これによって、正しい時点で電気モーター18の作動を停止させることも可能である。勿論、これ以外の、電気モーター18を作動ないし作動停止させるための従来技術より公知の可能性も考えることができる。
【0050】
図7の平面図及び図8の断面図(この図は、図6中C−Cで記した交線に沿って切った断面図である)は、ヒンジ3により駆動システム4により回動された家具ドア2が閉鎖状態にあるところを示す。これために、操作装置8とも、電気駆動部の駆動系とも連結されているガイドピン7は、長孔6の、ヒンジアーム24から離れた端部の付近にある。ここでも、家具ドア2を開けるために電気モーター18をどのように作動させるか、及び閉鎖工程のために作動させられた電気モーター18をどのように作動停止させるかに関しては、様々な可能性がある。
【0051】
図9は、対応する2つの家具部分1・2の透視図である。これらの2つの家具部分は、互いに対して相対的に回動可能になるように分節で連結されるべき部分である。図9は、本発明の駆動システム4の利点が、直接的にわかる図である。本体ヒンジ部分用、すなわちとりわけヒンジアーム24用の基板28が、駆動システム4の基板10と同様に、家具本体1上に取り付けられている。駆動システム4自体も、例えばラッチ留めされるスナップ連結部を用いて、基板10上に固定されている。広角ヒンジとして形成されたヒンジ3は、両開きドアのヒンジ部分において、すなわちとりわけヒンジカップ14において、家具ドア2と共に取り付けられている。ヒンジアーム24は、ここで図示された状況から出発して、すでに従来技術で公知であるように、簡単に基板28上に固定可能である。これに関して、同様に、ラッチ手段を設けることができ、その結果、この固定は、例えば、ヒンジアーム24が基板28上にクリップ留めされるように実現される。電気駆動部の筐体5の側部部分25’・25”は、主に視覚的な目的のために機能する。
【0052】
ヒンジ3が、基板28と連結されると、操作装置8がヒンジ3と解除可能に連結され得る。この目的のために、ヒンジ3の中間部材16上には、凹部30’・30”が配置されていて、これらの凹部中に、操作装置8の下面に配置された固定部9が噛合可能になる。ここで、これらの凹部30’・30”のみが、本発明の駆動システム4の後付を実現するための、従来の広角ヒンジとの差異である。ここで、レバーとして形成された操作装置8が、基板28と連結されたヒンジ3上を押圧し、これにより、固定部9が、凹部30’・30”と噛合し、その位置でラッチではめ込まれる。固定部をこのように特別に形成することにより、さらに、この連結部は取り外すこともできる。
【0053】
図10は、本発明の駆動システム4を示す透視図である。この図中、レバーアーム11・12を有する2本アームのレバーとして形成された操作装置8を示す。レバーアーム11・12は、回転軸15により互いに対して相対的に回動可能である。操作装置8自体は、ガイド装置すなわち長孔6中のガイドピン7により回動可能に軸支されている。固定部9は、剛体として形成された第1支持部31を有し、この支持部31が、凹部30’と噛合可能になる。バネ弾性を有するようにまたはバネで付勢されて形成された第2支持部32は、本体ヒンジ部の凹部30”と噛合可能である。ここで、第2支持部32に作用するバネ力は、この第2支持部32を、第1支持部31から離れる方向に付勢するように作用する。固定部9は、したがって、機械的なラッチ連結部として形成され、これにより、操作装置8がヒンジ3に解除可能にラッチではめ込まれ得る。この第2支持部32と第1支持部31との詳細については、ここでは述べないが、これは、これらの支持部自体は、従来技術自身から公知であるからである。したがって、例えば、バネ弾性を有するようまたはバネで付勢されて形成された第2支持部32は、スプリングタブとして形成され得る。ストッパーとして作用するさらなる支持部33’・33”は、操作装置8を、ヒンジ3において、すなわち、例えばヒンジアーム24または中間部材16において、つなぎとめるために機能し、特に、駆動システム4が傾かないようにするために機能する。2つの支持部材33’・33”の代わりに、一体的な支持パッドを配置することも可能である。
【0054】
ここで示した広角ヒンジの代わりに、他の型のヒンジを、上述の駆動システム4と共に用いることも勿論可能である。
【0055】
図11は、本発明の駆動システム4のある実施形態の分解図である。電気駆動部は、筐体5を有し、この筐体中に、2本アームのレバーとして形成されている操作装置8用のガイド装置として、長孔6が配置されている。筐体5は、ここでさらに、2つの側部部材25・25’を有するが、これらは防塵部として、及び、視覚的な目的のために機能する。筐体5の内部には、電気モーター18があり、この電気モーター18は、モーター軸27を有し、軸受け装置40上に軸支されている。軸受け装置40は、ここで、騒音および振動を緩衝するよう機能し、このための手段を有する。電気モーター18は、筐体38の下方に配置されていて、この筐体38の中、または、この筐体38に接する位置に、伝達機構として形成された歯車20・22・29が配置、ないし、軸支されている。この伝達機構のさらなる構成部品は、それ自体、従来技術で公知であり、したがって、わかりやすくするために、ここでは図示しない、ないしこれ以上説明を行わない。ウォームないしウォーム歯車21が、伝達機構と協働する。このウォームないしウォーム歯車は、ホース連結部39を介してモーター軸27と連結し、これも筐体38中に軸支されている。ホース連結部39は、この場合、なかんずく、騒音緩衝器として、また、誤差補償部として機能する。
【0056】
構成部品41・44は、導体基板であり、電気モーター18の、これ自体公知である電子構成部品ないしその開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置である。構成部品41は、さらに、騒音緩衝器として機能し得る。差込コネクター42は、モーター18に給電するために機能する。差込コネクター42および導体基板41・44は、筐体中ないし筐体45に接する位置に配置されている。
【0057】
電気モーター18から提供される力ないしトルクは、ラック19を介して、ラック19と連結されたガイドピン7に伝達される。ガイドピン7は、筐体5の長孔6中でスライド可能にガイドされている。ガイドピン7と、操作装置8のレバーアーム11とは連結されている。ボルト37は、伝達機構ユニットの軸として機能する。家具本体1上には、駆動システム4の基板10が配置されている。ケーブル13を介して、電気駆動部に給電がなされる。駆動システム4は、固定部材36を介して基板10に固定される。ここで、基板10には、対応する部材43が配置されていて、これがバネ弾性を有するようにまたはバネで付勢されて形成されることができ、固定部材36と共に、機械的なラッチ連結部を形成し得る。
【0058】
ここで図示された実施形態では、駆動システムの基板10と、ヒンジアーム24の基板28は、孤立して別々に形成されているのではない。これにより、本発明の駆動システム4を後付けするのがさらに容易になる。製造者側で、家具本体10上に、全体ユニットとして形成されている基板10・28を取り付け、基板28上に、ヒンジアーム24を有するヒンジ3を連結することができる。後の時点で、消費者が、ヒンジ3に駆動システム4を後付けしたいと望む場合には、ヒンジ3を上述のように単に基板10上に載置するのみでよく、これは固定部材36を対応する部材43と連結して行う。続いて、レバーアーム12に配置されている固定部9を備えた操作装置8を、ヒンジに解除可能に連結する。勿論、基板10と基板28とを孤立して別々に形成することもでき、その結果、ヒンジ3を駆動システム4に後付けする際に、駆動システム4の基板10を後付けせねばならない。
【0059】
図12に、本発明の駆動システム4のさらなる実施形態を示す。ここでは、駆動システム4と、四分節ヒンジとして形成されるヒンジ3とからなる組立品を示す。ヒンジ3は、家具本体1を、家具ドア2と分節で連結するが、ここで、ヒンジアーム24には、外側分節レバー34aと、内側分節レバー34bとが配置され、これらが、ヒンジカップ14と連結されている。ここで図示した実施形態では、電気駆動部には2つの構成ユニット4a・4bを有し、ここで、モーターを有する構成ユニット4aは本体側に配置されていて、一方では、長孔6を含むガイド装置を有する構成ユニット4bはドア側に配置されている。ドア側の電気駆動部の構成ユニット4bは、同時に操作装置8としても機能し、例えば、ラッチ連結部により、ヒンジカップと解除可能に連結されている。これについて、構成ユニット4bが、ヒンジカップ14上にクリップ留めされるよう設けてもよい。
【0060】
電気駆動部の駆動系と連結されているラック19は、電気モーター18により発生させられた力を操作装置8に伝達し、また必要な場合、回転モーターにより発生させられた回転運動を並進運動に変換するために機能する。構成ユニット4bの筐体中では、少なくとも1つの長孔6が配置され、この中をガイドピン7が滑り、このガイドピン7は、一方ではラック19と、他方では構成ユニット4bと、すなわち操作装置8と連結されている。好ましくは、2つの対称的に配置された長孔6が構成ユニット4b中に配置され、これにより、ガイドピン7が両側でスライド可能にガイドされている。ラック19が、構成ユニット4aの筐体5に入るまたはここから出ることにより、ガイドピン7は、1つまたは複数の長孔6中を滑り、その際に、家具ドア2を引き、家具ドア2を押し開ける。この際、長孔6に対して垂直に、ガイドピン7により、圧力ばめ連結が作られ、これにより、ラック19の縦伸張方向に、ヒンジ3に対して、したがって家具ドア2に力が伝達される。図12の側面図から、家具ドア2が部分的に開いた状態にあるのがわかる。この場合、四分節ヒンジとして形成されているヒンジ3は、広角ヒンジよりも開き角度が小さい。同様に、基板28が見えるが、この基板28上にヒンジアーム24が例えばクリップ留めにより固定される。
【0061】
図13の透視図では、図12の開いた状態と同じものを示すが、構成ユニット4aの筐体5中に、ラック19の前後運動を可能にするスリットが見える。ガイドピン7も見えるが、これは、少なくとも1つの側面に設けられたストッパー部材35を介して利用可能で、これにより、ガイドピン7と長孔6との噛合が外れることがない。好ましくは、この場合もガイドピン7の両側にストッパー部材35が設けられている。ストッパー部材35ないしガイドピン7の位置において認識できるように、この時点でのあき角度は、極度に大きくはない。完全に開いた位置において、ストッパー部材35は、ヒンジカップ14から離れた長孔6の端部に当接している。閉じ状態では、ストッパー部材35は、ヒンジカップ14側の長孔6の端部に当接している。
【0062】
図14のさらなる透視図は、図12の組立品を示すが、図12で示されたヒンジ2が開いた状態にあるところを示す。ここで、Dで記した部分を、図15の詳細図中に示す。とりわけ、外側分節レバー34aと、内側分節レバー34bと、操作装置8として形成され、かつヒンジカップ14と好ましくはラッチ連結部により解除可能に連結された構成部4bとが認識できる。
【0063】
図16は、図12の組立品のさらなる透視図であるが、この場合も、ヒンジ3は図12と同様の同じ開いた状態にある。
【0064】
図16中Eで記した部分を、図17の詳細図中に示す。ここでは、ガイドピン7が、いかに長孔6中の側面に設けられたストッパー部材35を介してスライド可能にガイドされているかが認識できる。さらに、ヒンジ3が、外側の分節レバー34a以外に、内側分節レバー34bを有していることがわかる。これらの分節レバー34a・34bを介して、家具部分1・2は、分節で互いに対して連結されている。ヒンジアーム24は、家具本体1に取り付けられた基板28上に固定されていて、一方では、操作装置8として形成されている構成部品4bは、ヒンジカップ14と解除可能に連結されている。
【0065】
図18に、図12及び図17に示した本発明の駆動システム4の実施形態の分解図を示す。わかりやすくするために、電気部品及び電子部品(すなわち、例えば、電気モーター18や伝達機構の部品)は示していない。これらは、おおむね上述のように形成され得る。四分節ヒンジとして形成されたヒンジ3は、外側分節レバー34aと、内側分節レバー34bとを有し、これらのレバーを介して、ヒンジカップ14がヒンジヒンジアーム24と分節で連結されている。このヒンジアーム24は、基板28上に固定可能であり、この基板28は家具本体1上に取り付け可能である。ヒンジ3は、ここで、回動可能に分節で連結された家具部品1・2の相対的な軸受けに合わせるために、すなわち、例えば、高さ調節および横方向調節のために用いられる通常の手段を有する。駆動システム4の構成部品4aは、家具本体1上に配置可能で、ここで、構成部品4a中に、モーター18、伝達機構、ならびに、これ以外の電気的および機械的な構成部品が配置されている。
【0066】
駆動システム4の構成部品4bは、同時に操作装置8として機能するが、ヒンジカップ14と解除可能に連結可能である。ここで、固定部9自体は、分かり易くするために図示していない。この固定部9は、上述のように形成可能である。ここで、好ましくは、機械的なラッチ連結部を設ける。構成部品4b中、すなわち、操作装置8の筐体5中には、2つの長孔6が対称的に配置されている。これらの長孔6により、ガイドピン7がスライド可能にガイドされている。ここで、ガイドピン7の少なくとも一端にストッパー部材35が配置されていて、これは、ガイドピン7と長孔6との噛合が外れることがないように機能する。ガイドピン7は、ラック19と連結されていて、これにより、電気モーター18により発生させられた力またはトルクが、ラック19およびガイドピン7を介して、操作装置8に伝達されることができ、これにより、家具ドア2(これに対して、ヒンジカップ14が取り付けられている)が押し開けられる、ないし、引かれることができる。
【0067】
本発明は、図示した例に限定されず、後続の請求項の範囲内に入り得る全ての技術的な等価物も含む。
【0068】
また明細書中で選択した位置表示、例えば、上方、下方、側方、前方および後方などは、ここで直接説明し図示した図面に関連するものであり、姿勢が変われば新しい位置に改められるのが合理的である。
図1
図2
図3
図4
図5
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図11
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図18