【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、ヒンジカップおよびヒンジアームを有するヒンジを用いて、互いに相対的に回動可能な家具部品(とりわけ、家具部分の本体に留められた両開きドア)を開くおよび/または閉じる駆動システムを設けることにより達成され、この駆動システムでは、電気駆動部が、閉じ込められた構成部品として形成され、電気駆動部は、電気モーターと、電気モーターからの力乃至トルクをヒンジに伝達するための操作装置とを有し、操作装置は固定部を有し、この固定部により、操作装置がヒンジと解除可能に連結され得る。
【0007】
これにより、ヒンジが、すでに家具本体すなわち相対的に互いに回動可能に分節で連結された複数の家具部分に取り付けられていた場合にも、閉じ込められた構成ユニットとして存在するヒンジに、駆動システムを固定することができる。これにより、ヒンジ自体を家具部分から取り外さずとも、故障した電機駆動部の交換が可能になる。ここで、ヒンジは、製造のためにも、必要な場合操作装置との連結を解除するためにも、分解する必要はない。同様に、ヒンジ自体を、例えば新しい部材を組み入れて変更しなくても、この種の後付けが可能になる。製造者側では、一般的なヒンジをわずかに変更するだけで、このヒンジに本発明の駆動システムを後付けすることができ、ここで、ヒンジの変更を全く必要とせずに、固定部を形成することも可能となる。ここで、駆動システムは、給電装置、駆動システムを家具部分のうちの1つに固定する装置、電気駆動部及び操作装置を含み得る。
【0008】
操作装置をヒンジと解除可能に連結できる固定部により、既存のヒンジ組立品、すなわち、ヒンジカップとヒンジアームとを有するヒンジにより回動可能に分節で連結された家具部分に、後の時点でこの種の駆動システムを後付けすることができ、ここで、この後付けをすでに工場で行うことができる。すでに工場側で駆動システムを設置する際には、既存の生産ラインを維持することができるので、駆動システムの設置には、非常にわずかのコストしか必要ではない。勿論、最終消費者が、既存のヒンジ組立品に対して、駆動システムを後付けで取り付けおよび/または取り外すこともできる。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項中に定義されている。
【0010】
本発明の好適な実施形態では、操作装置は、ヒンジを分解することなく、ヒンジと解除可能に連結され得る。ここで、ヒンジのヒンジアームを少なくとも1つの分節レバーを介してヒンジカップと連結している場合でも、操作装置をヒンジと解除可能に連結できるよう設けることもできる。
【0011】
本発明の好適な実施形態では、操作装置は、工具なしにヒンジに取り付け可能である、および/または、工具なしに取り外しできる。これは、例えばスナップ連結により行われ得るが、ネジ連結、またはこれ以外の適切な様式によっても行うことができる。
【0012】
ここで、電気駆動部を閉じ込められた単一の構成部品として形成し、これを回動可能に分節で連結された家具部分のうちの1つに固定することができる。しかし、閉じ込められた構成部品として形成された電気駆動部が、複数の構成ユニットを有し、これらが、必要に応じて、回動可能に分節で連結された複数の家具部分上に固定されることも可能である。これにより、様々なヒンジタイプを考慮することができ、または、家具部分の内側または外側にある既存の場所に個別に入れることも可能である。
【0013】
本発明のある実施形態では、固定部は、ボルト連結部の一部分である。これは、例えばヒンジに接してまたはヒンジ中に配置されたボルトに対応して、固定部が、2つの穿孔として操作装置中に形成されていることにより達成することができる。ボルトは孔の中に挿入され、これにより、操作装置とヒンジとの間の連結部が達成され得る。勿論、固定部をボルトとして形成し、ヒンジに配置された対応する穿孔と噛合させることも可能である。ここで、穿孔とボルトとからなるこの種の組立品は、ヒンジを分解することなく、操作装置とヒンジとの解除可能な連結を可能にするように形成され、ヒンジ乃至操作装置に配置されることができる。この目的のために、1つまたは複数の穿孔乃至ボルトは、ヒンジ乃至操作装置の外側領域に配置され得る。
【0014】
本発明のある好適な実施形態によれば、固定部は機械的なラッチ連結部として形成されている。この際、固定部、または、ヒンジにおいてこの固定部と連結可能である対応する部分が、ラッチ突起として形成され得る。この機械的なラッチ連結部のラッチではめ込むことにより、ヒンジと操作装置との圧力ばめ連結がなされ、これにより、操作装置が、電気モーターにより提供される力乃至トルクをヒンジに伝達することができ、したがって、操作装置と、したがってヒンジにより分節で連結された複数の家具部分とが、互いに対して相対的に回動可能になる。
【0015】
ここで、固定部は、少なくとも1つのロック部材を有することができ、このロック部材は、取り付け位置においてヒンジにつなぎとめられる。この際、ロック部材は、バネ弾性を有するように形成され、取り付け位置では、ヒンジに形成された対応する開口部と噛合し、ロック部材のバネ作用に対抗して押圧することにより、ロック部材は開口部からの噛合が外され得るよう設けることができる。このように形成された固定部により、操作装置は、スナップ連結部としてヒンジと解除可能に連結され、ここで、操作装置は、工具なしに取り付け可能であり、及びこれに加えてまたはこれに代えて、工具なしに取り外しできる。とりわけ、このように形成された固定部により、ヒンジを分解せずとも、操作装置とヒンジとが解除可能に連結することができる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によれば、操作装置は固定部として、実質的に剛性を有するように形成された少なくとも1つの第1支持部と、実質的にバネ弾性を有するまたはバネで付勢されるように形成された少なくとも1つの第2支持部とを有し、ここで、実質的に剛性を有するように形成された第1支持部は、ヒンジ中の凹部中に噛合できる。
【0017】
実質的に剛性を有するように形成された第1支持部は、ここで、固定ストッパーとして機能し得る。ここで、この剛性を有するように形成するとは、操作装置がヒンジを押すおよび/または引く際に操作上で強い負荷をかけても、機能を妨げるような変形は生じないと理解されるべきである。バネ弾性を有するように形成された、または、バネで付勢された第2支持部により、操作装置は、ヒンジ、好ましくはスナップ留め連結の形態を有するヒンジと連結できるようにし、好ましくはヒンジ中にラッチではめ込むことができ、これにより、機械的なラッチ連結が可能となる。操作装置とヒンジとの連結の解除は、第2支持部がそのバネ付勢に反して弾性により変形され、これにより工具なしに取り付け可能である、及び、工具なしに取り外しできることにより行われ得る。
【0018】
第1支持部は、実質的にはフック形態で形成可能であり、または、少なくとも2つのフックを有し得る。第2支持部は、スプリングタブを有し得る。
【0019】
この際、好ましくは、第2支持部に作用するバネ付勢は、第1支持部から離れる方向へと作用する。さらなる支持部を設けて、操作装置の位置の限定を行う、とりわけ側面方向への操作装置のスライドまたは回動に対しての操作装置の位置の限定を行うことも可能である。
【0020】
操作装置自体は、電気駆動部に、例えば電気駆動部の筐体に、固定または一体形成され得る。ここで、操作装置が、上述したように形成され得るさらなる固定部を利用することもでき、このさらなる固定部により、操作装置を、電気駆動部と、例えばスナップ連結として解除可能に連結することもできる。
【0021】
本発明の特に好適な実施形態では、電気駆動部の筐体はガイド装置を有し、このガイド装置により、操作装置がスライド可能にガイドされている。操作装置をスライド可能にガイドすることにより、操作装置にとって、したがって、最終的にヒンジにとって、乃至ヒンジと連結された家具部分にとっても、移動路が予設定されていることになり、これにより、固定部を介した圧力ばめ連結を介して、電気モーターにより準備された力ないしトルクを、複数の家具部分(これらは、ヒンジを用いて互いに相対的に回動可能に分節で連結されている)を回動させるために使用することができる。ここで、スライド可能とは、操作装置の少なくとも併進運動成分が、ガイドされる際に存在せねばならないということを意味する。併進成分が存在することにより、駆動システムは例えばヒンジ付近に配置され得るので、有用で省スペースとなる。
【0022】
ここで、ある好適な実施形態では、駆動システムの取り付け状態では、ガイド装置は、家具部分のうちの1つに対して固定的に配置されている。これにより、とりわけ安定したスライド可能なガイドが可能となり、これにより、重く大きな家具部分も、本発明の駆動システムにより回動可能になる。
【0023】
ある実施形態では、ガイド装置は、電気駆動部の筐体中または操作装置中に配置された少なくとも1つの長孔を有する。ここで、筐体中または操作装置の双方のうちの他方の部分に設けられたガイド栓またはガイドピンが、操作装置をガイドするために長孔中に噛合する。すなわち電気駆動部の筐体中に長孔が配置されると、操作装置に設けられたガイド栓またはガイドピンがこの長孔中に噛合する、あるいはこの逆が起こる。
【0024】
本発明のある好適な実施形態では、操作装置はレバーとして形成されている。これにより、力がとりわけ容易に伝達され得る。これに加えて、レバーには、力を伝達するための省スペース部材であるという特徴がある。ここで、好ましくは、レバーの端部のうちの1つは、このガイド装置中に、好ましくは回動可能に軸支されている。この軸支された端部に対向するレバーの端部は、固定部(これにより、操作装置がヒンジと解除可能に連結され得る)を有する。レバーとして形成された操作装置をこのように軸支することにより、回動運動に必要な運動学的および幾何学的必要条件を、容易に満たすことができる。ここで、レバーは、さらに、2本アームを有するよう形成されることができ、これにより、さらに柔軟性が得られる。このレバーが、少なくとも特定の部分領域において弾性を有するように形成されているよう設けることも可能である。
【0025】
電気モーターから提供される力乃至トルクをヒンジに伝達するのを、直接電気モーターを介して行い、その結果、家具部分の回動を、電気モーターと、操作装置と、ヒンジとを介して行うことも可能であるが、好ましくは、電気駆動部には伝達機構が備えられている。これにより、減速機構や増速機構も形成することができ、これにより、とりわけ重い家具部分を回動することができ、および/または、とりわけ回動領域を大きくすることを考慮することができる。さらに、この種の伝達機構により、しばしば電気モーターにより発生させられる回転運動を、操作装置の直進運動に変えることができる。
【0026】
一般的には、本発明の駆動システムには、回転モーターも、直進モーターも用いることができ、これらは、直流電流も交流電流も発生させることができる。従来の家具部分を回動させるためには、概して例えば5ボルト〜25ボルトまでのわずかな操作電圧で十分である。この場合、モーター出力は概して2ワット〜30ワットになる。
【0027】
さらなる実施形態では、電気モーターは、モーター軸を有し、このモーター軸は、該軸に軸支された歯車および/または摩擦車および/またはウォーム歯車を介して操作装置と協働し得る。これは、これらの歯車が、電気モーターと操作装置との間の伝動系中に配置されることにより行われる。これらは、この際に伝動装置の一部を形成し得る。
【0028】
ここで、好ましくは、ラックがガイド装置中に軸支されていて、このラックは、一方では操作装置と連結可能であり、他方では、歯車および/または摩擦車および/またはウォーム歯車と連結可能であり、したがって、電気モーターと協働し得る乃至連結し得る。この種のラックにより、操作装置はスライド可能にガイドされ得る。この際、ラックは、回転運動を併進運動へとりわけ容易に変換させることができる。
【0029】
本発明のある好適な実施形態では、電気モーターは、回動可能に分節で連結されている家具部分を開くおよび/または閉じる際に回動運動を行うのみならず、開き運動および/または閉鎖運動における緩衝部材乃至ブレーキ部材としても用いることができる。モーターに誘導負荷乃至オーム抵抗をかけるように設けることができる。電気モーターを容易に短絡させることも考えられる。
【0030】
好ましくは、電気モーターと伝達機構との間乃至電気モーターと操作装置との間に、好ましくは電磁連結部である連結部が配置されていて、少なくとも、電気モーターの力乃至トルクを伝える閉鎖状態と、電気モーターの力乃至トルクを伝えない開いた状態との間で、この電磁連結部が好ましくは電気的に切り替えられることができる。しかし、電気モーターの駆動騒音を伝達機構にわずかに伝える機械的に柔軟性を有する連結部、例えば、ホース連結部も可能である。この種の連結部に加えてまたはこれに代えて、本発明のある実施形態では、好ましくはオンオフ可能なフリーホイールを設けられ、これにより、電流がなく駆動システムを用いることができない場合でも、家具部分を手動で動かすことができる。
【0031】
ある好適な実施形態では、家具部分の回動運動、すなわち例えば家具部分の開閉運動を、開ループ制御乃至閉ループ制御するために、駆動システムは開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置を有する。この装置は、必要に応じて位置測定装置およびさらなる測定装置(例えば、センサー)を有する。この種の開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置の一例は、すでに挙げた国際公開第2007/035971 A1号パンフレット(第6頁〜第10頁)に記載されているので、ここではこれ以上詳細には言及するには及ばない。
【0032】
本発明のある好適な実施形態では、電気モーターは、家具部品、したがってヒンジ、例えばヒンジのストッパー部を移動させるまたは押すおよび/または引くことにより、オンオフ可能であり、これにより、タッチラッチ機能が実現可能になる。タッチラッチ機能では、使用者が家具部分に作用することにより、家具部分を回動させるために電気モーターが解除されおよび/またはブレーキがかけられる。この目的のために、切り替え可能なセンサー(例えば、エンコーダー、ポテンショメーター、または、これ以外の角度もしくは距離を測定するシステム、例えば、家具部分の移動、押す作用および/または引く作用に反応する光学センサーなど)を用いることができる。同様に、誘導移動センサーを用いることができ、このセンサーは家具部分が移動する際に好ましくは方向に応じて反応する。このようにして得られた測定信号は、開ループ制御装置乃至閉ループ制御装置に供給されることができ、これらの信号に応じて、開ループ制御装置および/または閉ループ制御装置が電気モーターを開ループ制御乃至閉ループ制御する。しかし、同様に、モーターを作動ないし作動停止させる手動で操作可能なスイッチを設けることも可能である。
【0033】
本発明は、さらに、上述のように実施された駆動システムと、少なくとも2つの家具部分を、家具部分のそれぞれに固定された少なくとも2つのストッパー部を用いて回動可能に連結するためにヒンジアームおよびヒンジカップを有するヒンジとを有する組立品に関する。これらのストッパー部は、少なくとも1つの分節軸を介して、互いに分節で連結可能である。駆動システムの操作装置は、ストッパー部のうちの1つと解除可能に連結可能である。
【0034】
操作装置とストッパー部との連結は、好ましくはスナップ留めによる解除可能なラッチ連結で行われ得る。しかし、ネジ連結部、または、これ以外の適切な方法でも行うことができ、この際、操作装置とヒンジとは、工具なしに連結可能である。これに加えてまたはこれに代えて、操作装置のヒンジからの取り外し、すなわち連結の解除も工具なしに行うようにすることも可能である。
【0035】
ヒンジのストッパー部は、たいてい、ヒンジカップおよび/またはヒンジアームである。それ以外に、例えば、家具部分を回動可能に連結するためのフレームヒンジも公知である。しばしば、ストッパー部を、家具部分に取り付け可能な基板上にクリップ留めすることができる。1つまたは複数の分節軸を有する家具ヒンジは存在し、この際、とりわけしばしば四分節軸または七分節軸を備えたヒンジが用いられる。ニ分節レバーを備えたヒンジであることもしばしばあり、七分節軸を有するいわゆる広角ヒンジがしばしば設けられて、ここでは、少なくとも1つの分節レバーが、2つの相対的に互いに1つの分節軸を介して回動可能な腕を有する。ヒンジアームを伸ばすために、さらに、ヒンジアームに設けられた中間部材が用いられ、これも同様に分節により軸支されている。
【0036】
ある好適な実施形態では、駆動システムは、上述のヒンジのように、基板上に固定されることができ、好ましくはクリップ留めされ得る。駆動システムの基板と、ヒンジとは、孤立した別々の構成部品である。好ましくは、駆動システムを、ストッパー部のうちの1つの傍らに、すなわち例えばヒンジアームの傍らに固定可能である。しかし、駆動システムを、ストッパー部のうちの1つの上に載置、例えば、クリップ留めすることも考えられる。
【0037】
操作装置と、ヒンジアーム、またはヒンジアームに配置されている中間部材との連結、を特に安定させるために、本発明のある実施形態では、操作装置に、U字型の部分を備え、このU字型の部分が、ヒンジアームまたはヒンジアームに配置されている中間部材に覆いかぶさるようにすることができる。
【0038】
本発明は、さらに、家具本体と、家具本体に回動可能に軸支されている家具ドアとを有し、ここで、家具本体と家具ドアとに、上述の組立品が取り付けられている家具に関する。
【0039】
本発明のさらなる詳細および利点は、図面の説明に基づいて、図面を参照して以下に詳細に説明する。