(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の領域のそれぞれに含まれる前記液晶分子の配向方向は、前記偏光面回転素子に入射した直線偏光の偏光面となす角度が、前記第1の交点及び当該領域を通る所定の直線と前記偏光面との間の角度の1/2となる方向であり、
前記二つの第1の透明電極間に前記第1の波長に応じた電圧が印加されることにより、前記偏光面回転素子は、前記直線偏光のうち、前記複数の領域のそれぞれを透過した成分の偏光面を、前記直線偏光の偏光面と前記配向方向のなす角の2倍の角度回転させて前記所定の直線と平行にする、請求項1に記載の顕微鏡装置。
前記第1の波長と異なる第2の波長を持つ直線偏光を出力し、当該第2の波長を持つ直線偏光が前記偏光変換素子及び前記対物レンズを通って前記物体面に集光されるように配置された第2の光源をさらに有し、
前記コントローラは、前記第1の光源及び前記第2の光源のうちの何れか一方を点灯させるとともに、当該点灯中の光源から出力される直線偏光の波長に応じた電圧を前記二つの第1の透明電極間及び前記二つの第2の透明電極間に印加する、請求項5〜7の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照しつつ、一つの実施形態による、顕微鏡装置について説明する。この顕微鏡装置は、対物レンズの入射瞳面に配置された、照明光である直線偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子を有する。これにより、この顕微鏡装置は、対物レンズの焦点面においてz偏光効果を生じさせることで、回折限界によって規定されるスポット径よりも小さいスポット径を持つように、照明光源からの光を集光する。また偏光変換素子が、照明光の偏光面を制御するための液晶層を有し、その液晶層に印加される電圧を調節することで、この顕微鏡装置は、所定の波長域に含まれる任意の波長の直線偏光である照明光を用いても、照明光をラジアル偏光にすることを可能とする。
【0021】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る顕微鏡装置の概略構成図である。
図1に示されるように、顕微鏡装置100は、光源101と、コリメートレンズ102と、ビームスプリッタ103と、偏光変換素子104と、対物レンズ105と、集光レンズ106と、マスク板107と、受光素子108と、可動ステージ109と、アクチュエータ110と、コントローラ111とを有する。
受光素子108、マスク板107、集光レンズ106、ビームスプリッタ103及び対物レンズ105は、集光レンズ106と対物レンズ105によって規定される光軸OAに沿って一列に配置される。またビームスプリッタ103の側面には、光軸OAと直交する方向に沿って光源101とコリメートレンズ102と偏光変換素子104とが一列に配置される。
【0022】
光源101から放射された直線偏光である照明光は、コリメートレンズ102を通った後、偏光変換素子104を透過する。そしてその照明光は、偏光変換素子104を透過することによってラジアル偏光に変換される。その後、ラジアル偏光となった照明光は、ビームスプリッタ103により反射され、対物レンズ105によって可動ステージ109上に配置されたサンプル120の表面または内部に設定された、観察対象となる物体面に焦点を結ぶ。物体面で反射または散乱され、若しくは蛍光発光した光は、再び対物レンズ105を通った後、ビームスプリッタ103を直進する。その後、物体面で反射または散乱され、若しくは蛍光発光した光は、集光レンズ106によって受光素子108上に集光される。そしてコリメートレンズ102、対物レンズ105及び集光レンズ106は、共焦点光学系を構成し、光源101からの光が物体面において焦点を結ぶ場合に、その焦点からの光が受光素子106においても集光される。
なお、理解を容易にするために図示していないが、顕微鏡装置1は、光路上に、球面収差用補償光学系など、各種の補償光学系を有していてもよい。
【0023】
光源101は、直線偏光である照明光を出力する。そのために、光源101は、例えば、半導体レーザを有する。あるいは、光源101は、アルゴンイオンレーザといったガスレーザ、またはYAGレーザといった固体レーザを有していてもよい。光源101から出力される照明光が直線偏光でない場合、光源101とコリメートレンズ102の間に、照明光を直線偏光にするために検光子が配置されてもよい。
さらに、光源101は、所定の波長域、例えば、351nm〜750nmの範囲に含まれる、互いに異なる波長の光を出力する複数の発光素子を有していてもよい。この場合、光源101は、コントローラ111からの制御信号に従って、何れか一つの発光素子に照明光を出力させる。
【0024】
コリメートレンズ102は、光源101とビームスプリッタ103の間において、コリメートレンズ102の前側焦点に光源101が位置するように配置される。そしてコリメートレンズ102は、光源101から出力された照明光を平行光にする。平行光となった照明光は、偏光変換素子104へ入射する。
【0025】
偏光変換素子104は、対物レンズ105の前側瞳面に配置されることが好ましい。特に、本実施形態では、偏光変換素子104は、物体面からの光が偏光変換素子104を透過しないように、コリメートレンズ102とビームスプリッタ103の間に配置される。そして偏光変換素子104は、液晶層を有し、その液晶層を透過した照明光の偏光方向を変化させることにより、直線偏光を持つ照明光をラジアル偏光に変換する。なお、偏光変換素子104は、物体面からの光も偏光変換素子104を透過するように、ビームスプリッタ103と対物レンズ105の間に配置されてもよい。
なお、偏光変換素子104の詳細については後述する。
【0026】
ビームスプリッタ103は、対物レンズ105と集光レンズ106の間に配置される。そしてビームスプリッタ103は、コリメートレンズ102から入射した照明光を対物レンズ105へ向けて反射する。一方、ビームスプリッタ103は、光軸OAに沿って入射した光を直進させる。
【0027】
対物レンズ105は、偏光変換素子104から出射し、ビームスプリッタ103にて反射されたラジアル偏光に、物体面上に焦点を結ばせる。この場合、焦点近傍では、対物レンズ105により集光された光はz偏光となる。そのため、焦点近傍における光のスポット径は、回折限界により規定されるスポット径よりも小さくすることができる。例えば、本実施形態によるスポット径は、回折限界により規定されるスポット径の約1.5〜約1.7分の1となる。また、集光された光の焦点深度も大きくすることができる。
【0028】
さらに、対物レンズ105には、焦点位置を調節するためのアクチュエータ110が取付けられている。アクチュエータ110が、図中の矢印Zの方向、すなわち光軸OAに平行な方向に沿って対物レンズ105を移動させることによって、照明光の焦点位置が光軸OA方向に移動する。またアクチュエータ110は、コントローラ111と接続され、コントローラ111からの制御信号に応じて対物レンズ105を移動させる。
【0029】
物体面において反射または散乱された光は、再度対物レンズ105を透過して平行光となる。そしてその光は、ビームスプリッタ103を透過し、集光レンズ106に入射する。そして集光レンズ106に入射した光は、受光素子108によって受光される。
【0030】
マスク板107は、集光レンズ106と受光素子108の間で、集光レンズ106の焦点近傍に配置される。そしてマスク板107には、光軸OAに沿ってピンホール107aが形成されている。これにより、対物レンズ105の焦点位置近傍から反射または散乱され、若しくは蛍光発光した光は、平行光として集光レンズ106に入射し、集光レンズ106によってピンホール107aの近傍で焦点を結ぶので、ピンホール107aを通って受光素子108に達することができる。一方、対物レンズ105の焦点位置から外れた位置からの光は、マスク板107によって遮られ、受光素子108に達しない。そのため、顕微鏡装置100は、コントラストの高いサンプル120の像を得ることができる。
【0031】
受光素子108は、例えば、アレイ状に配列された複数のCCDまたはC−MOSなどの半導体受光素子を有する。そして各半導体受光素子は、受光した光の強度に応じた電気信号を出力する。そして受光素子108は、各半導体受光素子が出力した電気信号を平均し、その平均値に相当する電気信号を、受光した光の強度を表す光強度信号としてコントローラ111へ伝達する。あるいは、受光素子108は、光電子増倍管を有していてもよい。そして受光素子108は、光電子増倍管が受光し多光の強度に応じた電気信号を生成し、その電気信号を受光した光の強度を表す光強度信号としてコントローラ111へ伝達する。
【0032】
可動ステージ109は、サンプル120を載置するためのステージである。また可動ステージ109は、例えば、いわゆるXYステージとすることができ、光軸OAに対して直交する面内において、互いに直交する2方向に移動可能となっている。なお、以下では、便宜上、可動ステージ109が移動可能な一方の方向をX軸、X軸と直交する方向をY軸とする。そして可動ステージ109は、コントローラ111と通信可能に接続されている。そして可動ステージ109は、図示しないアクチュエータを有し、コントローラ111から受信した制御信号に従って、X軸方向またはY軸方向に所定距離だけ移動する。
【0033】
コントローラ111は、例えば、プロセッサと、メモリと、コントローラ111を顕微鏡装置100の各部と接続するためのインターフェース回路とを有する。そしてコントローラ111は、光源101、偏光変換素子104、可動ステージ109及びアクチュエータ110を制御する。そしてコントローラ111は、光源101に対して所定の電力を供給することにより、光源101に照明光を出力させる。また光源101が複数の発光素子を有する場合、コントローラ111は、例えば、図示しないユーザインターフェースを介したユーザの操作に従って、複数の発光素子のうちの何れか一つの発光素子に照明光を出力させる制御信号を光源101へ送信する。
【0034】
またコントローラ111は、対物レンズ105を光軸OAに沿って所定距離だけ移動させる制御信号をアクチュエータ110へ送信する。アクチュエータ110は、コントローラ111からその制御信号を受信すると、対物レンズ105をその制御信号によって指示された距離だけ移動させる。
【0035】
コントローラ111は、受光素子108から受信した光強度信号からサンプル120の表面または内部に設定された物体面の画像を生成する。そのために、コントローラ111は、可動ステージ109を所定位置へ移動させる制御信号を、可動ステージ109へ送信することにより、可動ステージ109を光軸OAに直交する面内で移動させる。
そしてコントローラ111は、物体面上に2次元状に等間隔で設定された複数の測定点のそれぞれが、照明光のスポットに位置するように、可動ステージ109を移動させつつ、受光素子108から各測定点での光強度信号を受信する。そしてコントローラ111は、例えば、各測定点の光強度信号を一つの画素の値として画像を生成することにより、サンプル120の物体面における2次元画像を得ることができる。
また変形例によれば、画像取得のためにサンプル120をXYステージのような可動ステージで動かす代わりに、顕微鏡装置は、ガルバノミラー等を用いて光源101から発したレーザビームの向きを変えることにより、そのビームでサンプルを走査してもよい。
【0036】
さらにコントローラ111は、図示しない駆動回路を有し、その駆動回路を介して偏光変換素子104に印加する電圧を調節することにより、偏光変換素子104が所定の波長を持つ直線偏光をラジアル偏光に変換できるように、偏光変換素子104を制御する。
そのために、コントローラ111は、光源101から出力される光の波長に応じた印加電圧が偏光変換素子104の各液晶層に印加されるように、駆動回路を制御する。
特に、光源101が、互いに波長の異なる光を出力する複数の発光素子を有している場合、コントローラ111は、発光させる発光素子に応じて、偏光変換素子104が有する液晶層に印加される電圧を調節する。
なお、駆動回路から偏光変換素子104が有する液晶層に対して印加される駆動電圧は、例えば、パルス高さ変調(PHM)またはパルス幅変調(PWM)された交流電圧であってもよい。
【0037】
また、光源101から出力される光の波長が、例えば、発光素子の温度に応じて変動することもある。そこでコントローラ111は、サンプル120の物体面における画像に基づいて、偏光変換素子104が有する液晶層に印加する電圧を調節してもよい。例えば、コントローラ111は、偏光変換素子104の液晶層に印加する電圧を変えて、可動ステージ109を2次元に移動させつつ、受光素子108からの光強度信号を取得することにより、印加した電圧に応じた物体面におけるサンプル120の画像を複数生成する。そしてコントローラ111は、電圧値と画像を対応付けて内蔵するメモリに記憶する。そして、コントローラ111は、画像が最も鮮明となる電圧値を決定し、その電圧を駆動回路を介して偏光変換素子104の液晶層に印加する。
【0038】
なお、最も鮮明な画像を決定するために、コントローラ111は、例えば、得られた各画像を周波数変換してそれぞれ周波数画像を作成する。そしてコントローラ111は、各周波数画像を解析することにより、高周波数成分が最も高くなる周波数画像を特定し、特定された周波数画像に対応する画像を最も鮮明な画像と判定する。
【0039】
以下、偏光変換素子104について説明する。
図2は、偏光変換素子104の概略正面図である。また
図3(A)及び
図3(B)は、それぞれ、
図2に示された矢印X、X′で示された線における偏光変換素子104の概略側面断面図である。このうち、
図3(A)は、偏光変換素子104に電圧が印加されていないときの偏光変換素子104に含まれる液晶分子の状態を表し、
図3(B)は、偏光変換素子104に電圧が印加されたときの偏光変換素子104に含まれる液晶分子の状態を表す。
【0040】
図2及び
図3(A)に示すように、この偏光変換素子104は、位相反転素子2と、光軸OAに沿って位相反転素子2に隣接して配置された偏光面回転素子3とを有する。
なお、偏光変換素子104に入射する照明光は、直線偏光であり、位相反転素子2側から入射する。そしてその直線偏光は、位相反転素子2及び偏光面回転素子3を透過することによってラジアル偏光に変換され、偏光面回転素子3から出射する。
また、説明の便宜上、偏光変換素子104に入射する照明光の偏光面は、
図2の矢印Aに示されるように、
図2が表された面に直交し、かつ縦方向の面にあるものとする。
【0041】
位相反転素子2は、入射した直線偏光のうち、光軸OAを中心とする少なくとも一つの輪帯状の部分の位相を他の部分の位相に対して反転させる。そのために、位相反転素子2は、液晶層20と、光軸OAに沿って液晶層20の両側に略平行に配置された透明基板21、22を有する。そして液晶層20に含まれる液晶分子27は、透明基板21及び22と、シール部材28との間に封入されている。また位相反転素子2は、透明基板21と液晶層20の間に配置された透明電極23と、液晶層20と透明基板22の間に配置された透明電極24とを有する。なお、透明基板21、22は、例えば、ガラスまたは樹脂など、所定の波長域に含まれる波長を持つ光に対して透明な材料により形成される。また透明電極23、24は、例えば、ITOと呼ばれる、酸化インジウムに酸化スズを添加した材料により形成される。透明電極23と液晶層20の間に配向膜25が配置される。また透明電極24と液晶層20の間に配向膜26が配置される。これら配向膜25、26は、液晶分子27を所定の方向に配向させる。なお、液晶分子27が、光配向など、配向膜を用いない方法によって配向される場合、配向膜25、26は省略されてもよい。
さらに、各基板、各透明電極及び各配向膜の外周には鏡枠29が配置され、この鏡枠29が、各基板を保持している。
【0042】
図3(A)に示されるように、液晶層20に封入された液晶分子27は、例えば、ホモジニアス配向となり、かつ、入射する直線偏光の偏光面と略平行な方向に配向されている。すなわち、液晶分子27の長軸方向が、
図2に示された矢印Aと略平行に、液晶分子が配向される。
【0043】
図4は、入射側に配置される位相反転素子2に設けられた透明電極23の概略正面図である。一方、透明電極24は、液晶層20全体を覆うように形成される。なお、透明電極24も、
図4に示された透明電極23の形状と同様の形状を有してもよく、あるいは、透明電極24が
図4に示された電極形状を有し、透明電極23が液晶層20全体を覆うように形成されてもよい。
【0044】
透明電極23は、光軸OAと位相反転素子2の交点c
0を中心とする、同心円状の少なくとも一つの輪帯状の電極を有する。本実施形態では、透明電極23は、4個の輪帯状電極23a〜23dを有する。これにより、液晶層20には、輪帯状電極23a〜23dの何れかと透明電極24に挟まれた第1の輪帯状部分と、一方の側にのみ透明電極24が存在する第2の輪帯状部分とが、同心円状に交互に形成される。なお、輪帯状電極23dの外周が、
図2に示された領域2aの外周に対応する。
【0045】
図3(B)に示されるように、これら輪帯状電極23a〜23dと、液晶層20を挟んで対向して配置された透明電極24との間に、コントローラ111によって電圧が印加されると、それら第1の輪帯状部分20aに含まれる液晶分子の長軸方向が、光軸OAに直交する方向から光軸OAに平行な方向に近づくように液晶分子が傾く。一方、透明電極間に挟まれていない第2の輪帯状部分20bに含まれる液晶分子は、その長軸が光軸OAに直交する方向を向いたままとなる。
【0046】
一般に、液晶分子の長軸方向に平行な偏光成分(すなわち、異常光線)に対する屈折率n
eは、液晶分子の短軸方向に平行な偏光成分(すなわち、常光線)に対する屈折率n
oよりも高い。ここで、透明電極23と24との間に電圧が印加されたときの、第1の輪帯状部分20aに含まれる液晶分子の長軸方向と、電圧が印加された方向、すなわち光軸OAの方向とがなす角をψとすれば、液晶層20を透過する光は、液晶分子27の長軸方向に対して角ψをなす。このとき、液晶分子27が配向された方向と平行な偏光成分に対する液晶分子の屈折率をn
ψとすると、n
o≦n
ψ≦n
eとなる。そのため、液晶層20に含まれる液晶分子27がホモジニアス配向されており、液晶層20の厚さがdであると、液晶層20のうち、輪帯状電極23a〜23dと透明電極24間に挟まれた第1の輪帯部分20aを通る偏光成分と、第2の輪帯部分20bを通る偏光成分との間に、光路長差Δnd(=n
ψd−n
od)が生じる。そしてそれら二つの偏光成分間に生じる位相差Δは、2πΔnd/λとなる。なお、λは、液晶層20に入射する光線の波長である。
【0047】
このように、コントローラ111が透明電極23と透明電極24との間に印加する電圧を調節することにより、位相反転素子2は、液晶層20を透過する光の位相を変調することができる。従って、透明電極23と透明電極24との間に入射光の波長に応じた所定の電圧が印加されると、位相反転素子2は、第1の輪帯部分20aを通る光の位相を、第2の輪帯部分20bを通る光の位相に対してπだけずらすことができる。
【0048】
偏光面回転素子3は、位相反転素子2を透過した後に入射した直線偏光を、光軸OAと偏光面回転素子3との交点c
1を中心とした、放射状の直線偏光分布を持つラジアル偏光に変換する。そのために、偏光面回転素子3は、液晶層30と、光軸OAに沿って液晶層30の両側に略平行に配置された透明基板31、32を有する。なお、透明基板31と位相反転素子2の透明基板22のうちの何れか一方が省略されてもよい。この場合、例えば、透明基板22の一方の面に液晶層20が形成され、透明基板22の他方の面に液晶層30が形成される。
【0049】
また偏光面回転素子3は、透明基板31と液晶層30の間に配置された透明電極33と、液晶層30と透明基板32の間に配置された透明電極34とを有する。そして液晶層30に含まれる液晶分子37は、透明基板31及び32と、シール部材38との間に封入されている。なお、透明基板31、32は、例えば、ガラスまたは樹脂など、所定の波長域に含まれる波長を持つ光に対して透明な材料により形成される。また透明電極33、34は、例えば、ITOにより形成される。さらに、透明電極33と液晶層30の間に配向膜35が配置される。また透明電極34と液晶層30の間に配向膜36が配置される。これら配向膜35、36は、液晶分子37を所定の方向に配向させる。なお、液晶分子37が、光配向など、配向膜を用いない方法によって配向される場合、配向膜35、36は省略されてもよい。
さらに、各基板、各透明電極及び各配向膜の外周には鏡枠39が配置され、この鏡枠39が、各基板を保持している。なお、鏡枠29と鏡枠39とは、一体的に形成されてもよい。
【0050】
液晶層30に封入された液晶分子37は、例えば、ホモジニアス配向される。また液晶層30は、交点c
1を中心として、光軸OAに直交する面内で円周方向に沿って配置された複数の扇形領域を含む。そして各扇形領域に含まれる液晶分子37は、入射する直線偏光の偏光面が、光軸OAを中心とした放射方向に略平行となるようにその偏光面を回転させるように配向される。
【0051】
図5は、液晶層30の各扇形領域における液晶の配向方向と、各扇形領域を透過した直線偏光の偏光方向を示す液晶層30の概略正面図である。
本実施形態では、液晶層30は、時計回りに配置され、互いに配向方向が異なる8個の扇形領域30a〜30hを有し、各扇形領域30a〜30hの中心角は等しくなるように設定される。また
図5において、矢印40a〜40hは、それぞれ、各扇形領域30a〜30hに含まれる液晶分子の配向方向を表す。また、矢印50a〜50hは、それぞれ、各扇形領域30a〜30hから出射する直線偏光の偏光面を表す。なお、矢印50a〜50hのうち、矢印の先端が反対方向を向いている二つの矢印は、それら矢印で表される直線偏光の位相が互いにπだけずれていることを表す。
なお、交点c
1を通って扇形領域を2等分する直線を、その扇形領域の中心線と呼ぶ。
【0052】
各扇形領域30a〜30hの配向方向は、例えば、各扇形領域を透過した後の直線偏光成分の偏光面が、その透過した扇形領域の中心線と平行となるように決定される。そこで、光軸OAと液晶層30との交点c
1を通り、入射する直線偏光の偏光面Aに平行な面と交差する扇形領域30aを1番目の領域とし、扇形領域30aから時計回りまたは反時計回りに第n番目の扇形領域について、その扇形領域の配向方向と、扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角θは次式に従って設定される。
θ=360°×(n−1)/(2N) (n=1,2,...,N) (1)
ただし、Nは扇形領域の総数であり、本実施形態ではN=8である。
【0053】
例えば、n=1である扇形領域30aでは、θ=0となる。すなわち、扇形領域30aでは、入射する直線偏光の偏光面が回転することなく直線偏光が透過するように、液晶分子の配向方向は、入射する直線偏光の偏光面Aと略平行に設定される。
【0054】
また、第n番目の扇形領域を、扇形領域30aを1番目の領域として時計回りにn番目の領域としたとき、各扇形領域30b〜30hの配向方向と扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角は、それぞれ、時計回りを正として、22.5°、45°、67.5°、90°、112.5°、135°、157.5°となるように、各扇形領域30b〜30hの配向方向は設定される。
【0055】
あるいは、第n番目の扇形領域を、扇形領域30aから反時計回りにn番目の領域としたとき、各扇形領域30b〜30hの配向方向と扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角は、それぞれ、時計回りを正として、−157.5°、−135°、−112.5°、−90°、−67.5°、−45°、−22.5°となるように、各扇形領域30b〜30hの配向方向は設定される。
【0056】
透明電極33、34は、液晶層30全体を挟んで対向するように配置される。そして透明電極33と34との間に、所定の波長域に含まれる波長に対して液晶層30の扇形領域30a〜30hが半波長板として機能するように、コントローラ111によって所定の電圧が印加される。
ここで、透明電極33と34との間に電圧が印加されると、液晶分子がその電圧に応じて電圧が印加された方向に対して平行になる方向に傾く。液晶分子の長軸方向と、電圧が印加された方向とがなす角をψとすれば、液晶層30を透過する光は、長軸方向に対して角ψをなす。このとき、上記のように、液晶分子が配向された方向と平行な偏光成分に対する液晶分子の屈折率をn
ψとすると、n
o≦n
ψ≦n
eとなる。ただし、n
oは液晶分子の長軸方向に直交する偏光成分に対する屈折率であり、n
eは液晶分子の長軸方向に平行な偏光成分に対する屈折率である。
【0057】
そのため、液晶層30に含まれる液晶分子がホモジニアス配向されており、液晶層30の厚さがdであると、液晶分子の配向方向に平行な偏光成分と液晶分子の配向方向に直交する偏光成分との間に、光路長差Δnd(=n
ψd−n
od)が生じる。したがって、透明電極33と34との間に印加する電圧を調節することにより、液晶分子の配向方向に平行な偏光成分と、液晶分子の配向方向に直交する偏光成分との光路長差を調節できる。そのため、コントローラ111が透明電極33と34との間に印加する電圧を調節することにより、光源101から出力される直線偏光が持つ波長に対して、扇形領域30a〜30hがそれぞれ半波長板として機能する。
【0058】
各扇形領域30a〜30hが半波長板として機能する場合、液晶分子37の配向方向に対して角度θをなす偏光面を有する直線偏光がそれら扇形領域を透過すると、その偏光面は、透過した扇形領域の配向方向に対して角度−θをなすように回転する。すなわち、偏光面は、配向方向を中心として、角度2θだけ回転する。
【0059】
図5に示した例では、各扇形領域30a〜30hにおける液晶分子の配向方向は、扇形領域30aに入射する直線偏光の偏光面Aに対する角度が、各扇形領域の中心線と液晶層30の扇形領域30aに入射する直線偏光の偏光面Aとの角度の1/2となるように設定されている。そのため、交点c
1から入射直線偏光の偏光面Aに沿って上方を向く方向を基準とし、時計回り方向を正とすると、各扇形領域30a〜30hを透過した直線偏光成分の偏光面の角度は、それぞれ、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°となる。このように、偏光面回転素子3から出射する光線は、光軸OAを中心として放射状の直線偏光成分を持つ。
【0060】
図6は、偏光変換素子104から出射するラジアル偏光61の概略を示す図である。
図6において、各矢印61a〜61hは、それぞれ、直線偏光成分を表す。また、各矢印のうち、矢印の先端が反対方向を向いている二つの矢印は、それら矢印で表される直線偏光の位相が互いにπだけずれていることを表す。さらに、輪帯状の領域62a〜62dは、それぞれ、位相反転素子2の第1の輪帯部分を透過した偏光成分を表す。また輪帯状の領域62e〜62gは、それぞれ、位相反転素子2の第2の輪帯部分を透過した偏光成分を表す。
【0061】
図6に示されるように、このラジアル偏光61は、光軸OAに対して放射状に偏光面を持つ8種類の直線偏光成分61a〜61hを有する。そして各直線偏光成分61a〜61hは、放射方向に沿って、位相反転素子2の透明電極23、24間に挟まれた第1の輪帯部分を透過した成分62a〜62dと、透明電極に挟まれていない第2の輪帯部分を透過した成分62e〜62gに対応して7つに区分され、隣接する区分間で位相がπずれる。
【0062】
なお、各扇形領域30a〜30hを透過した偏光成分の偏光面は、交点c
1を中心とした放射状に分布すればよく、その偏光面は、透過した扇形領域の中心線と平行でなくてもよい。各扇形領域30a〜30hの配向方向は、各扇形領域30a〜30hを透過した偏光の偏光面が当該扇形領域及び交点c
1を通る所定の直線と平行となるように設定されればよい。例えば、各扇形領域30a〜30hの配向方向と、扇形領域30aに入射した直線偏光の偏光面Aとのなす角が、上記の(1)式で求められる値に所定のオフセット値を加えた値となるように、各扇形領域30a〜30hの配向方向が設定されてもよい。この場合、所定のオフセット値は、各扇形領域30a〜30hの中心線と偏光面Aとのなす角にそのオフセット値の2倍を加算した角度(すなわち、扇形領域を透過した偏光成分の偏光面と扇形領域30aに入射する直線偏光の偏光面とがなす角)が、隣接する扇形領域との境界が偏光面Aとなす角度を超えないように、例えば、±5°に設定される。
【0063】
また、偏光面回転素子3の液晶層30が有する、配向方向の異なる領域の数は、8個に限られない。液晶層30が有する配向方向が異なる領域の数は、ラジアル偏光による効果が得られるために必要な数であればよい。例えば、液晶層30は、4、5、6あるいは16個の互いに配向方向が異なる領域を有していてもよい。
【0064】
図7は、液晶層30が6個の扇形領域30i〜30nを含むときの各扇型領域における液晶の配向方向と、各領域を透過した直線偏光の偏光方向を示す概略正面図である。なお、この変形例においても、透明電極33、34は、液晶層30全体を挟んで対向するように配置される。
この変形例において、矢印40i〜40nは、それぞれ、各扇形領域30i〜30nに含まれる液晶分子の配向方向を表す。また、矢印50i〜50nは、それぞれ、各扇形領域30i〜30nから出射する直線偏光の偏光面を表す。なお、矢印50i〜50nのうち、矢印の先端が反対方向を向いている二つの矢印は、それら矢印で表される直線偏光の位相が互いにπだけずれていることを表す。
【0065】
各扇形領域30i〜30nのうち、光軸OAと液晶層30の交点c
1の上方に位置する扇形領域30iでは、入射する直線偏光の偏光面Aと、扇形領域30iの中心線とが一致する。そのため、扇形領域30iを1番目の領域とする。このとき、時計回り方向にn番目の扇形領域の配向方向は、例えば、その配向方向と偏光面Aとがなす角が上記の(1)式に従って算出される角度となるように設定される。
この場合、各扇形領域30i〜30nの配向方向と扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角は、それぞれ、時計回りを正として、0°、30°、60°、90°、120°、150°となる。
【0066】
この場合も、各扇形領域30i〜30nを透過した直線偏光に対して液晶層30が半波長板として機能するように、扇形領域30i〜30nを挟む透明電極33、34間には入射光の波長に応じた電圧が印加される。
これにより、交点c
1から入射直線偏光の偏光面に沿って上方を向く方向を基準とし、時計回り方向を正とすると、各扇形領域30i〜30nを透過した直線偏光成分の偏光面の角度は、それぞれ、0°、60°、120°、180°、240°、300°となる。このように、偏光面回転素子3から出射する光線は、光軸OAを中心として放射状の直線偏光成分を持つ。
【0067】
上記のように、位相反転素子2が入射光の一部の位相を反転させるために、一部の液晶分子27の長軸方向を光軸OA方向に傾ける角度と、偏光面回転素子3が、直線偏光をラジアル偏光に変換するために、透明電極33と34間に印加された電圧によって、液晶分子37の長軸方向を光軸OA方向に傾ける角度が等しくなるよう設定する。よって、コントローラ111は、各々適切な駆動電圧を用いて、液晶層20及び液晶層30を駆動することができる。
【0068】
図8は、透明電極33、34間の液晶層30に印加される電圧と液晶層30により生じる常光線と異常光線の光路長差の一例を示す図である。
図8において、横軸は液晶層30に印加される電圧を表し、縦軸は光路長差を表す。グラフ801は、波長450nmを持つ光について、印加電圧と光路長差の関係を表す。グラフ802は、波長550nmを持つ光について、印加電圧と光路長差の関係を表す。グラフ803は、波長780nmを持つ光について、印加電圧と光路長差の関係を表す。
【0069】
例えば、波長450nmを持つ光に対して液晶層30を半波長板として機能させるために、透明電極33、34間には、450nmの整数倍に225nmを加えた光路長差が生じる電圧が印加されればよい。そこでグラフ801を参照すると、透明電極33、34間に、光路長差1125nmに相当する約1.4Vrmsの電圧が印加されればよい。
また、例えば、波長550nmを持つ光に対して液晶層30を半波長板として機能させるために、透明電極33、34間には、550nmの整数倍に275nmを加えた光路長差が生じる電圧が印加されればよい。そこでグラフ802を参照すると、透明電極33、34間に、光路長差1375nmに相当する約1Vrmsの電圧が印加されればよい。
さらに、例えば、波長780nmを持つ光に対して液晶層30を半波長板として機能させるために、透明電極33、34間には、780nmの整数倍に390nmを加えた光路長差が生じる電圧が印加されればよい。そこでグラフ803を参照すると、透明電極33、34間に、光路長差1170nmに相当する約1.1Vrmsの電圧が印加されればよい。
【0070】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る顕微鏡装置は、ラジアル偏光をサンプル上に焦点を結ばせるので、z偏光効果によりその焦点近傍におけるスポット径を回折限界により規定されるスポット径よりも小さくできる。そのため、この顕微鏡装置は、サンプルの表面に平行な方向について、回折限界により規定される分解能よりも高い分解能を有することができる。また、この顕微鏡装置は、サンプル近傍における焦点深度を大きくすることができるので、サンプルの深さ方向について所望の位置に焦点を合わせることが容易である。
さらに顕微鏡装置に組み込まれた偏光変換素子が、輪帯状に、ラジアル偏光を形成する各直線偏光の一部の位相を他の部分の位相に対して反転させることができるので、そのラジアル偏光を集光することにより、効率的にz偏光効果を生じさせることができる。
【0071】
さらに、顕微鏡装置に組み込まれた偏光変換素子は、液晶層によって入射した光の偏光面を制御するので、コントローラが液晶層に印加する電圧を調節することにより、光源が所定の波長域内の何れの波長を持つ直線偏光である照明光を出力する場合でも、偏光変換素子は照明光をラジアル偏光にできる。そのため、この顕微鏡装置は、所定の波長域内の何れの波長を持つ照明光を用いても、回折限界により規定される分解能よりも高い分解能を持つことができる。
【0072】
なお、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、位相反転素子2の液晶層20について、第2の輪帯部分に含まれる液晶分子27を、光軸OAに平行な方向に配向させてもよい。この場合において、液晶層20と液晶層30の厚さが同一であり、液晶層20に含まれる液晶分子の光学特性及び電気特性と、液晶層30に含まれる液晶分子の光学特性及び電気特性とが同一とすることができる。このように液晶分子27が配向された場合、所定の波長に対して液晶層20、30の所定の領域が半波長板となる電圧は同一となるので、コントローラ111は、同一の波形及び振幅を持つ駆動電圧を用いて、液晶層20及び液晶層30を駆動することができる。
【0073】
また、液晶層20に印加する電圧を液晶層30に印加する電圧と同一とする場合には、第1の輪帯部分では液晶分子27の長軸方向が、第2の輪帯状部分では液晶分子27の短軸方向が、位相反転素子2に入射する直線偏光の偏光面と平行となるように、液晶分子27を配向してもよい。
【0074】
また他の変形例によれば、位相反転素子2の第1の輪帯状部分を透過する光と第2の輪帯状部分を透過する光の間に、透明電極による光路長差が生じないように、第2の輪帯状部分についても、液晶層20の両側に透明電極が形成されてもよい。
【0075】
図9(A)及び
図9(B)は、それぞれ、この変形例による、位相反転素子2の入射側に設けられた透明電極23の概略正面図である。なお、透明電極24は、上記の実施形態と同様に、液晶層20全体を覆うように基板全面に形成される。なお、透明電極24も、
図9(A)または
図9(B)に示された透明電極23の形状と同様の形状を有してもよく、あるいは、透明電極24が
図9(A)または
図9(B)に示された電極形状を有し、透明電極23が液晶層20全体を覆うように形成されてもよい。
【0076】
透明電極23は、光軸OAと位相反転素子2の交点c
0を中心とする、円状の電極23aと、同心円状の少なくとも一つの輪帯状の電極とを有する。この変形例では、透明電極23は、円状の電極23aの周囲に、5個の輪帯状電極23b〜23fを有する。また、各電極間の隙間は小さい方が好ましい。なお、輪帯状電極23fの外周が、
図2に示された領域2aの外周に対応する。
【0077】
図9(A)に示した例では、各輪帯電極は独立に制御可能なように、各輪帯電極から配線がそれぞれ引き出されており、その配線が駆動回路と接続されている。また
図9(B)に示した例では、円状の電極23aから順に偶数番目の輪帯状電極同士、及び奇数番目の輪帯状電極同士がそれぞれ同一の配線で電気的に接続され、偶数番目の輪帯状電極と接続された配線及び奇数番目の輪帯状電極と接続された配線がそれぞれ駆動回路と接続される。これにより、偶数番目の各輪帯状電極は同一の電位で駆動可能となっている。同様に、奇数番目の各輪帯状電極も同一の電位で駆動可能となっている。また
図9(B)では、奇数番目の輪帯状電極群と偶数番目の輪帯状電極群のうち、一方の電極群は電気的に制御されなくてもよい。この場合、他方の電極群と透明電極24との間に電圧を印加することで、その他方の電極群と透明電極24との間に挟まれた液晶層により、光の位相を反転可能である。なお、輪帯状電極も厚さがあるので、輪帯状電極を通った光の位相は、輪帯状電極を透過しない光の位相に対してずれる。そこで、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、電圧制御に利用される輪帯状電極だけでなく、電圧制御が不要な輪帯状電極も配置することで、位相反転素子2は、液晶層20に電圧が印加されない場合に位相反転素子2を透過する光束のほぼ全体を同位相にすることができる。
【0078】
さらに、電気的に制御する必要がない偶数番目、あるいは奇数番目の輪帯状電極群の電位を、その輪帯状電極群と対向する側の透明基板に設けられた透明電極24と同一の基準電位、あるいは液晶層20内の液晶分子が動作しない電位の最大値である閾値電位に設定することが好ましい。閾値電位は、一般には実効電圧で約1V〜2Vである。このように電気的に制御する必要がない輪帯状電極群の電位を設定することで、位相反転素子2は、液晶層20の電位を一定に制御できるので、静電気等のノイズにより液晶層20の液晶が誤動作することを防止できる。また電気的に制御する必要がない輪帯状電極群の電位を閾値電位とすることで、液晶層20の熱揺らぎも抑制できる。
【0079】
さらに、偏光変換素子104について、位相反転素子の位置と、偏光面回転素子の位置を入れ換えてもよい。
図10(A)は、位相反転素子の位置と偏光面回転素子の位置を入れ替えた、偏光変換素子104’の概略背面図である。
図10(B)は、
図10(A)に示された矢印Y、Y′で示された線における偏光変換素子104’の概略側面断面図である。
図10(A)及び
図10(B)において、この偏光変換素子104’の各構成要素に対して、
図2及び
図3に示された第1の実施形態に係る偏光変換素子104の対応する構成要素と同様の参照番号を付した。
【0080】
この偏光変換素子104’は、偏光面回転素子3と、光軸OAに沿って偏光面回転素子3に隣接して配置され、ラジアル偏光に含まれる、光軸OAを中心として放射状に分布した各直線偏光成分の一部の位相を反転する位相反転素子2’とを有する。
このうち、偏光面回転素子3の構成は、上記の実施形態による偏光面回転素子3の構成と同様である。偏光変換素子104’に入射する光は、直線偏光であり、偏光面回転素子3側から入射する。そしてその直線偏光は、偏光面回転素子3により、ラジアル偏光に変換された後、位相反転素子2’へ入射する。位相反転素子2’は、入射したラジアル偏光に含まれる各直線偏光成分の一部の位相を反転する。
【0081】
ここで、
図10(A)及び
図10(B)に示されるように、位相反転素子2’は、液晶層20と、光軸OAに沿って液晶層20の両側に配置された透明基板21、22を有する。そして液晶層20に含まれる液晶分子27は、透明基板21及び22と、シール部材28との間に封入されている。また位相反転素子2’は、透明基板21と液晶層20の間に配置された透明電極23と、液晶層20と透明基板22の間に配置された透明電極24とを有する。さらに、透明電極23と液晶層20の間に配向膜25が配置される。また透明電極24と液晶層20の間に配向膜26が配置される。これら配向膜25、26は、液晶分子27を所定の方向に配向させる。
さらに、各基板、各透明電極及び各配向膜の外周には鏡枠29が配置され、この鏡枠29が、各基板を保持している。
【0082】
図10(A)に、液晶層20に封入された液晶分子の配向方向を示す。液晶層20に封入された液晶分子は、例えば、ホモジニアス配向される。また、液晶層20は、光軸OAと液晶層20との交点c
0を中心として、円周方向に配置される複数の扇形領域20a〜20hを有する。
矢印は21a〜21hは、各扇形領域に含まれる液晶分子の配向方向を示す。矢印21a〜21hに示されるように、各扇形領域20a〜20hに封入された液晶分子は、その長軸方向が、交点c
0を中心とした放射方向を向くように配向される。そのため、偏光面回転素子3から出射した光の偏光面は、各扇形領域20a〜20hを透過しても回転しない。
【0083】
各扇形領域20a〜20hは、それぞれ、
図5に示される、偏光面回転素子3の液晶層30の各扇形領域30a〜30hと光軸OA方向に投影した位置が等しくなるように設定されることが好ましい。この場合、扇形領域30aを透過し、交点c
1に対して放射状の偏光成分を持つ直線偏光は、扇形領域20aを透過する。同様に、扇形領域30b〜30hを透過した直線偏光は、それぞれ、扇形領域20b〜20hを透過する。
【0084】
また、透明電極23は、交点c
0を中心とした同心円状に配置された少なくとも1本の輪帯状の電極を有する。例えば、透明電極23は、
図4、
図9(A)または
図9(B)に示された透明電極と同様の構造を有する。一方、透明電極24は、液晶層20全体を覆うように配置される。そして透明電極に挟まれた第1の輪帯部分20aを透過する光の位相が、透明電極に挟まれていない第2の輪帯部分20bを透過する光の位相とπだけずれるように、透明電極23、24間に所定の電圧が印加される。
【0085】
これにより、位相反転素子2’を透過したラジアル偏光において、そのラジアル偏光に含まれる各直線偏光成分のうち、第1の輪帯部分を透過した成分の位相が第2の輪帯部分を透過した成分の位相に対して反転する。したがって、この偏光変換素子も、入射した直線偏光を、
図6に示されるような偏光面の分布と位相分布を持つラジアル偏光に変換できる。
【0086】
また、偏光変換素子104’では、位相反転素子2’の液晶分子が、光軸と位相反転素子2’の交点を中心とした放射状に配向されているので、偏光変換素子に入射する直線偏光の偏光面と位相反転素子2’の液晶分子の配向方向を合わせる必要がない。また、入射する直線偏光の偏光面と、偏光面回転素子3の基準となる扇形領域(例えば、
図5における領域30a)の中心線とがずれていても、偏光面回転素子3は入射する直線偏光をラジアル偏光に変換できる。そのため、この偏光変換素子は、光学系への組み込みの際のアライメント調節を簡単化できる。
【0087】
なお、液晶層20に印加する電圧を液晶層30に印加する電圧と同一とする場合には、第1の輪帯部分では液晶分子27の長軸方向が交点c
0を中心とした放射方向を向くように、かつ、第2の輪帯状部分では液晶分子27の長軸方向が交点c
0を中心とする円周方向を向くように、液晶分子27を配向してもよい。
【0088】
また、上記の実施形態による顕微鏡装置において、コントローラ111は、サンプル120の深さ方向、すなわち、光軸OAに沿った方向の解像度を高くするために、偏光変換素子104または104’の各液晶層20及び30に印加する駆動電圧を、偏光変換素子104または104’が入射する直線偏光をラジアル偏光に変換しない電圧としてもよい。例えば、コントローラ111は、サンプル120の深さ方向の解像度を高くする場合、液晶層20の各領域において常光線に対する光路長と異常光線に対する光路長の差が、光源101から出力される光の波長の整数倍となるように、液晶層20に印加する駆動電圧を調節する。また、コントローラ111は、液晶層30の第1の輪帯部分を透過する光の光路長と第2の輪帯部分を透過する光の光路長との差が光源101から出力される光の波長の整数倍となるように、液晶層30に印加する駆動電圧を調節する。この場合、サンプル120の表面に平行な方向、すなわち、光軸OAに直交する方向の解像度は、回折限界により規定される解像度となる。
【0089】
一方、サンプル120の表面に平行な方向、すなわち、光軸OAに直交する方向の解像度を回折限界により規定される解像度よりも高くする場合には、上記のように、コントローラ111は、偏光変換素子104または104’が入射した直線偏光をラジアル偏光に変換できるように偏光変換素子104または104’の各液晶層20及び30に駆動電圧を印加する。ただしこの場合には、直線偏光がサンプル120の物体面に集光されるときよりも、サンプル120の物体面に集光される光のスポット径が小さい範囲が深さ方向に長くなる。そのため、ラジアル偏光がサンプル120の物体面に集光されるときの深さ方向の解像度は、直線偏光がサンプル120の物体面に集光されるときの深さ方向の解像度よりも低下する。
【0090】
このように、上記の実施形態による顕微鏡装置は、偏光変換素子の各液晶層に印加する駆動電圧を調節することで、ラジアル偏光をサンプルへ集光させてサンプルの表面に平行な方向の解像度を向上させるか、あるいは非ラジアル偏光をサンプルへ集光させて深さ方向の解像度を向上させることができる。
さらに、この顕微鏡装置は、上記のようなサンプルへ集光させる光を切り替えるために、各液晶層に対する駆動電圧を変更するだけなので、例えば、フォトニック結晶のような偏光面の回転量を調節できない素子を用いて作成された偏光変換素子が用いられる場合と異なり、機械的に顕微鏡装置の一部または全てを移動させる必要がない。そのため、この顕微鏡装置は、その光の切り替えの際に焦点位置がずれることを防止できる。
【0091】
また、顕微鏡装置が有する光学系は共焦点光学系でなくてもよい。この場合、上記の実施形態による顕微鏡装置からマスク板が省略され、受光素子が集光レンズの焦点面に配置される。
あるいは、他の実施形態によれば、顕微鏡装置は、照明光学系と別個に観測光学系を有していてもよい。この場合には、例えば、照明光学系はサンプルの一方の面側に配置され、光源と、コリメートレンズと、偏光変換素子と、対物レンズとを有する。そして上記の実施形態と同様に、光源から出力された、直線偏光である照明光は、コリメートレンズによって平行光とされた後、偏光変換素子を通ってラジアル偏光に変換される。そしてラジアル偏光となった照明光が対物レンズによって対物レンズの焦点近傍に配置されたサンプルの表面または内部に設定された物体面上に集光される。なお、この場合も、偏光変換素子は、対物レンズの入射瞳面に配置される。これにより、照明光学系は、対物レンズの焦点面近傍においてz偏光効果を生じさせることができるので、照明光は、物体面上に回折限界により規定されるスポット径よりも小さなスポット径を持つように集光される。
一方、観測光学系は、サンプルの他方の面側に配置され、対物レンズと集光レンズとを有する。そして観測光学系は、照明光学系によって照明されたサンプルの像を受光素子に集光する。
【0092】
さらに、顕微鏡装置に組み込まれる対物レンズは交換可能なものであってもよい。この場合、対物レンズによって瞳径が異なることがある。そこで、異なる瞳径の対物レンズが用いられても同様の超解像効果が得られるように、偏光変換素子の位相反転素子は、対物レンズの瞳径によらず、位相反転素子を透過した光束に光軸を中心とする同心円状の所定数の輪帯状部分を形成させ、隣接する輪帯状部分同士で位相を反転させることが好ましい。なお、所定数は2以上の整数であり、例えば3以上8以下の整数である。
なお、上記の実施形態による偏光面回転素子は、その構造上、瞳径の異なる様々な対物レンズにもそのまま適用可能である。
【0093】
図11(A)は、このような課題を解決する変形例による位相反転素子の光の入射側の透明電極23’の構造を示す概略正面図であり、
図11(B)は、変形例による位相反転素子の光の出射側の透明電極24’の構造を示す概略背面図である。なお、
図11(A)及び
図11(B)において、透明電極23’のサイズと透明電極24’のサイズが異なることを理解し易くするために、位相反転素子の液晶層内のシール部材の内側境界281が示される。透明電極以外の位相反転素子の構造は、上記の実施形態の何れかによる位相反転素子の構造と同様とすることができる。そのため、ここでは、透明電極についてのみ説明する。
【0094】
この変形例では、透明電極23’は、光軸OAと位相反転素子の交点c
0を中心とする、同心円状の7本の輪帯状の電極231a〜231gを有する。そして各輪帯電極により、交点c
0を中心とする半径r
1(すなわち、交点c
0から透明電極23’の最外周の輪帯電極231gの外縁までの距離)の円形領域のほぼ全体が覆われている。この半径r
1は、例えば、相対的に大きな瞳径を持つ対物レンズが使用された場合に位相反転素子を透過する光束の半径と略等しくなるように設定される。
【0095】
同様に、透明電極24’も、交点c
0を中心とする、同心円状の7本の輪帯状の電極241a〜241gを有する。また各輪帯電極により、交点c
0を中心とする半径r
2(すなわち、交点c
0から透明電極24’の最外周の輪帯電極241gの外縁までの距離)の円形領域のほぼ全体が覆われている。この半径r
2は、例えば、相対的に小さな瞳径を持つ対物レンズが使用された場合に位相反転素子を透過する光束の半径と略等しくなるように設定される。すなわち、半径r
2は、半径r
1よりも小さな値に設定される。
なお、透明電極23’、24’の何れについても、隣接する二つの輪帯電極同士は、それら輪帯電極の幅よりも狭い間隔を空けて配置され、互いに絶縁されている。
【0096】
瞳径が相対的に大きい対物レンズが使用される場合、透明電極24’が有する全ての輪帯電極に等電位となるよう通電され、一方、透明電極23’については、輪帯電極1本おきに通電される。例えば、輪帯電極231a、231c、231e及び231gに通電され、輪帯電極231b、231d及び231fには通電されない。透明電極23’のうちの通電された輪帯電極と透明電極24’間の電圧を適切に調節することにより、その電極間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相は、透明電極23’中の通電されていない輪帯電極と透明電極24’との間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相に対してπだけずれる。
【0097】
また、瞳径が相対的に小さい対物レンズが使用される場合、透明電極23’が有する全ての輪帯電極に等電位となるよう通電され、一方、透明電極24’については、輪帯電極1本おきに通電される。例えば、輪帯電極241a、241c、241e及び241gに通電され、輪帯電極241b、241d及び241fには通電されない。透明電極24’のうちの通電された輪帯電極と透明電極23’間の電圧を適切に調節することにより、その電極間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相は、透明電極24’中の通電されていない輪帯電極と透明電極23’との間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相に対してπだけずれる。
【0098】
ここで、透明電極23’が有する輪帯電極の数と透明電極24’が有する輪帯電極の数は等しく、両透明電極の半径は異なる。そのため、この変形例による位相反転素子は、瞳径の異なる二つの対物レンズの何れが使用される場合にも、光束中に、隣接する部分同士で位相が反転している、光軸を中心とする同心円状の輪帯状部分を同数だけ形成させることができる。
【0099】
なお、各透明電極が有する輪帯電極の数は、互いに異なっていてもよい。例えば、透明電極24’は、透明電極23’の半径と透明電極24’の半径が等しくなるように、輪帯電極241gの外側にさらに1本以上の輪帯電極を有してもよい。
【0100】
位相反転素子のさらに他の変形例によれば、位相反転素子の液晶層の一方に設けられる透明電極は、
図3(A)に示された透明電極24のように、液晶層全体を覆うように配置され、液晶層の他方に設けられる透明電極は、
図11(A)に示された透明電極23’のように、液晶層のほぼ全体を覆うように設けられた同心円状の複数の輪帯電極を有してもよい。ただしこの変形例では、各輪帯電極の幅は、透明電極23’の輪帯電極の幅よりも狭く、例えば、透明電極23’の輪帯電極の幅の略1/10〜略1/2に設定されることが好ましい。この場合、隣接する複数の輪帯電極を一つの組として、光軸との交点を中心とした放射方向に沿って、交互に通電する輪帯電極の組と通電しない輪帯電極の組が配置される。これにより、光束中に、隣接する部分同士で位相が反転している輪帯状部分が形成される。そして対物レンズの瞳径に応じて通電される輪帯電極の組を適切に選択することで、その瞳径によらず、所定数の輪帯状部分が形成される。
【0101】
なお、上述した偏光変換素子は、顕微鏡に限らず、様々な光照射装置に組み込んで利用することができる。例えば、偏光変換素子は、光照射装置の一例である光ピックアップ装置に組み込むことができる。
図12は、偏光変換素子を有する光ピックアップ装置の概略構成図である。
図12に示されるように、光ピックアップ装置200は、光源201と、コリメートレンズ202と、ビームスプリッタ203と、対物レンズ204と、結像レンズ205と、受光素子206と、偏光変換素子207と、コントローラ208と、アクチュエータ209とを有する。
【0102】
光源201、コリメートレンズ202、偏光変換素子207、ビームスプリッタ203及び対物レンズ204は、光軸OAに沿って一列に配置される。そしてコリメートレンズ202、偏光変換素子207、ビームスプリッタ203及び対物レンズ204は、光源201から放射された光を記録媒体210上に焦点を結ばせる。一方、結像レンズ205及び受光素子206は、ビームスプリッタ203の側面において光軸OAと直交する方向に配置される。そして、記録媒体210により反射または散乱された光は、対物レンズ204を通った後、ビームスプリッタ203により反射され、結像レンズ205によって受光素子206上に結像される。なお、理解を容易にするために図示していないが、光ピックアップ装置200は、光路上に、球面収差用補償光学系など、各種の補償光学系を有していてもよい。
【0103】
光源201は、例えば半導体レーザを有し、直線偏光を出力する。
コリメートレンズ202は、その前側焦点に光源201が位置するように配置され、光源201から出力された直線偏光を平行光にする。
偏光変換素子207は、上記の実施形態またはその変形例の何れかによる偏光変換素子であり、対物レンズ204の前側瞳面に配置される。本実施形態では、偏光変換素子207は、コリメートレンズ202とビームスプリッタ203の間に配置される。そして偏光変換素子207は、コリメートレンズ202を透過した後に偏光変換素子207に入射した直線偏光をラジアル偏光に変換する。偏光変換素子207は、例えば、直線偏光をラジアル偏光に変換する偏光面回転素子が有する液晶層の各領域のうち、直線偏光の偏光面を回転させない領域(例えば、
図5に示した扇形領域30a)に含まれる液晶分子の配向方向が、偏光変換素子207に入射する直線偏光の偏光面と略一致し、他の領域の液晶分子の配向方向と入射する直線偏光の偏光面との間の角が、偏光面を回転させる角度の1/2となるように配置されることが好ましい。
【0104】
対物レンズ204は、偏光変換素子207から出射したラジアル偏光に、記録媒体210上に焦点を結ばせる。この場合、焦点近傍では、対物レンズ204により集光された光はz偏光となる。そのため、焦点近傍における光のスポット径は、回折限界により規定されるスポット径よりも小さくすることができる。例えば、本実施形態によるスポット径は、回折限界により規定されるスポット径の約1.5〜約1.7分の1となる。また、この光ピックアップ装置200は、集光された光の焦点深度も大きくすることができる。
さらに、対物レンズ204には、トラッキング用のアクチュエータ209が取付けられている。アクチュエータ209が、図中の矢印Zの方向に対物レンズ204を移動させることによって、対物レンズ204によって集光される光ビームが、記録媒体210のトラックに正確に追従する。またアクチュエータ209は、コントローラ208と接続され、コントローラ208からの制御信号に応じて対物レンズ204を移動させる。
【0105】
記録媒体210により反射または散乱された光は、記録媒体210のトラック面上に記録されている情報(ピット)によって振幅変調されている。この光は、再度対物レンズ204を透過して平行光となる。そしてその光は、ビームスプリッタ203により反射され、結像レンズ205に入射する。そして結像レンズ205は、入射した光を受光素子206上に結像する。
【0106】
受光素子206は、例えば、アレイ状に配列された複数のCCDまたはC−MOSなどの半導体受光素子を有する。そして各半導体受光素子は、受光した光の強度に応じた電気信号を出力する。そして受光素子206は、各半導体受光素子が出力した電気信号を平均し、その平均値に相当する電気信号を、受光した光の強度を表す光強度信号としてコントローラ208へ伝達する。
【0107】
コントローラ208は、受光素子206から受信した光強度信号から記録情報を読み出す。またコントローラ208は、偏光変換素子207及びアクチュエータ209を制御する。そのために、コントローラ208は、偏光変換素子207が有する駆動回路と接続される。またコントローラ208は、受光素子206と接続され、受光素子206から光強度信号を受信する。そしてコントローラ208は、偏光変換素子207が光源201から出力された直線偏光をラジアル偏光に変換できるように、偏光変換素子207の各液晶層に印加する電圧を調節する。具体的には、コントローラ208は、偏光変換素子207が有する駆動回路へ出力する電圧調整信号を変えることにより、偏光変換素子207の各液晶層に印加する電圧を調節しながら、光強度信号を取得し、電圧値と光強度信号値を対応付けて内蔵するメモリに記憶する。そして、コントローラ208は、メモリに記憶した光強度信号及び電圧値から、光強度信号が最大値となる電圧値を決定し、その電圧に応じた電圧調整信号を偏光変換素子207の駆動回路へ送信する。そして偏光変換素子207の駆動回路は、コントローラ208から受信した電圧調整信号に応じた駆動電圧を、各液晶層に印加する。
【0108】
以上説明してきたように、偏光変換素子を用いた光ピックアップ装置は、ラジアル偏光に記録媒体上に焦点を結ばせるので、z偏光効果によりその焦点近傍におけるスポット径を回折限界により規定されるスポット径よりも小さくできる。そのため、この光ピックアップ装置は、回折限界により規定される分解能よりも高い分解能を有することができる。したがって、この光ピックアップ装置は、回折限界により規定される分解能で決められた記録密度よりも高い記録密度を持つ記録媒体に記録された情報を読み取ることができる。また、この光ピックアップ装置は、記録媒体近傍における焦点深度を大きくすることができるので、記録媒体と光ピックアップ装置間の距離変動による読取エラーの発生を抑制することができる。
【0109】
ピックアップ装置は、互いに波長が異なる光を出力する複数の光源を有してもよい。例えば、光ピックアップ装置200は、光源201とは別個に第2の光源(図示せず)と、各光源から出力された光を偏光変換素子207へ向ける第2のビームスプリッタ(図示せず)をさらに有していてもよい。この場合、光源201から出力された光が記録媒体210に集光されるだけでなく、第2の光源から出力された光も、第2のビームスプリッタによって反射された後、ビームスプリッタ203、偏光変換素子207及び対物レンズ204を介して記録媒体210に集光されるように、例えば、コリメートレンズ202とビームスプリッタ203の間に第2のビームスプリッタが配置され、その第2のビームスプリッタの側方に、第2の光源が配置される。
【0110】
コントローラ208は、光源または第2の光源の何れか一方に出力させるとともに、
図8で説明したように、光を出力中の光源に応じた電圧調整信号を偏光変換素子207の駆動回路へ送信することにより、偏光変換素子207がその光源からの光をラジアル偏光に変換することを可能にする。これにより、光ピックアップ装置は、複数の光源の何れから出力された光も、回折限界により規定されるスポット径よりも小さいスポット径を持つように記録媒体210上に集光できる。
また、偏光変換素子207は、記録媒体210で反射または散乱された光も透過するように、ビームスプリッタ203と対物レンズ204との間に配置されてもよい。
【0111】
なお、偏光変換素子を用いた光照射装置は、レーザメス、レーザ加工機といった光を用いて対象物を加工する光加工装置であってもよい。この場合、偏光変換素子は、上記の光ピックアップ装置と同様に、直線偏光を出力する光源と、光を集光する対物レンズの間、特に、対物レンズの光源側の瞳面に配置される。これにより、対物レンズの焦点近傍において、集光された光はz偏光となる。そのため、偏光変換素子を用いた光加工装置は、加工可能な最小サイズを回折限界よりも小さくすることができる。
さらに、偏光変換素子を用いた光照射装置は、干渉計といった、光を用いての形状を測定する装置であってもよい。この場合も、偏光変換素子は、直線偏光を出力する光源と、光を集光する対物レンズの間、特に、対物レンズの光源側の瞳面に配置される。
【0112】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。