(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693564
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】有限回転モータに連結された走査ミラーの性能向上をもたらすシステムおよび方法およびミラー
(51)【国際特許分類】
G02B 7/198 20060101AFI20150312BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
G02B7/198
G02B5/08 A
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-507343(P2012-507343)
(86)(22)【出願日】2010年4月21日
(65)【公表番号】特表2012-524915(P2012-524915A)
(43)【公表日】2012年10月18日
(86)【国際出願番号】US2010031875
(87)【国際公開番号】WO2010123977
(87)【国際公開日】20101028
【審査請求日】2013年2月21日
(31)【優先権主張番号】61/171,952
(32)【優先日】2009年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511256956
【氏名又は名称】ケンブリッジ テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン デイビッド シー
(72)【発明者】
【氏名】ピナード アダム アイ
【審査官】
殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−029109(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/149662(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/146337(WO,A1)
【文献】
特開昭55−054742(JP,A)
【文献】
特開2000−137187(JP,A)
【文献】
特開2001−349372(JP,A)
【文献】
特開2003−035337(JP,A)
【文献】
特表2009−541784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18 − 7/24
G02B 26/10
F16F 7/00 − 7/14
F16F 15/00 − 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有限回転モータシステムで用いられるミラーであって、
少なくとも1種類の材料から形成され、露出ミラー表面を有する本体であって、ミラー回転軸についての回転のために前記有限回転モータシステムに装着可能な本体と、
前記ミラーの本体内の開口部であって、前記ミラー回転軸に一致する部分を含んだ開口部と、
前記開口部内の、前記開口部内で前記ミラー本体に対する運動が可能な高密度材料であって、前記ミラーの本体の密度より密度が高い、高密度材料と、を備えるミラー。
【請求項2】
前記高密度材料は、固形物の粒子である、請求項1に記載のミラー。
【請求項3】
前記粒子は、前記開口部内で弾性材料の内側にある、請求項2に記載のミラー。
【請求項4】
前記粒子は、各々、1ミクロン〜5ミクロンの大きさを有する、請求項2に記載のミラー。
【請求項5】
前記高密度材料は、タングステン、劣化ウラン、モリブデン、鉛、ビスマスのうちいずれか1つから形成されている、請求項2に記載のミラー。
【請求項6】
前記高密度材料は、流体である、請求項1に記載のミラー。
【請求項7】
前記流体は、水銀である、請求項1に記載のミラー。
【請求項8】
ミラーと連結された有限回転モータを備える走査システムであって、
前記有限回転モータは、回転子シャフトを備え、
前記ミラーは、
露出ミラー表面を有し、ミラー回転軸についての回転のために前記有限回転モータの回転子シャフトと連結している本体と、
前記ミラーの本体における開口部内の高密度材料であって、前記開口部内で前記ミラー本体に対する運動が可能であり、前記ミラーの本体の密度より密度が高い、高密度材料と、
を備え、
前記開口部は、前記ミラー回転軸に一致する部分を含む、
走査システム。
【請求項9】
前記高密度材料は、固形物の粒子である、請求項8に記載の走査システム。
【請求項10】
前記粒子は、前記開口部内で弾性材料の内側にある、請求項9に記載の走査システム。
【請求項11】
前記粒子は、各々、1ミクロン〜5ミクロンの大きさを有する、請求項9に記載の走査システム。
【請求項12】
前記高密度材料は、タングステン、劣化ウラン、モリブデン、鉛、ビスマスのうちいずれか1つから形成されている、請求項9に記載の走査システム。
【請求項13】
前記高密度材料は、流体である、請求項8に記載の走査システム。
【請求項14】
前記流体は、水銀である、請求項8に記載の走査システム。
【請求項15】
回転子シャフトを備える有限回転モータと、前記有限回転モータの前記回転子シャフトに連結されるとともに開口部を有するミラーとを備える走査システムにおける振動を減衰する方法であって、
前記有限回転モータによって前記回転子シャフトを介して前記ミラーへ印加されたトルクを利用して、ミラー回転軸を中心として前記ミラーを回転させるステップと、
前記ミラーの運動における振動によって前記ミラー内の高密度材料を加速するステップであって、それによって前記ミラー内の前記高密度材料の加速が、振動からのエネルギーを吸収して、前記走査システムにおける振動を減衰するステップと、を含み、
前記開口部は、前記ミラー回転軸に一致する部分を含み、
前記高密度材料は、前記ミラーの本体の密度より密度が高い、
方法。
【請求項16】
前記高密度材料は、固形物の粒子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子は、各々、1ミクロン〜5ミクロンの大きさを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記高密度材料は、タングステン、劣化ウラン、モリブデン、鉛、ビスマスのうちいずれか1つから形成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記高密度材料は、流体である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)本出願は、2009年4月23日に出願された米国仮出願第61/171,952号の優先権を主張し、同出願の全体を参照として本明細書に引用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して有限回転モータシステムにおける振動低減システムに関し、特に、検流計走査システムなどの高速有限回転モータシステムで使用されるミラーに関する。
【0003】
典型的な検流計走査システムでは、有限回転モータの出力軸にミラーが装着されており、有限回転モータは、制御ループによって制御され、制御ループは、モータの回転子ひいてはミラーを、任意の高忠実度で位置・速度指示波形に従わせようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記システムが指示に従う際の忠実度には限界がある。例えば、上記システム内のミラーの加速は、モータ巻線の電流上昇率によって制限される。位置の正確度は、フィードバック方法の信号対雑音比によって制限される。上記システムの帯域幅(位置Aから位置Bまで所望の高速度で移動し、できる限り短時間で、位置Bに正確に安定する能力)は、主として可動部品の振動によって制限される。上記システムの帯域幅は、名目上、可動構成における最初のねじり共振の1/2となる。
【0005】
したがって、許容されるシステム慣性能率の制約内で可動部品をできる限り安定させるようにするのが通例である。モータが特定の加速度に達するのに必要となるトルクは、慣性能率に直接比例しており、また(上述のように上昇率が制限されている)電流にも比例しているため、システムパラメータが、特定の慣性能率に最適化された場合、ミラーなどの構成要素は、非常に高い対慣性能率安定性をもつ材料で作られた場合であっても、システムの帯域幅目標に達するのに要求される程度には安定しない場合が多い。この場合、別の材料をミラーに付加してその安定性を高めることになるが、その代償として、追加の慣性能率が必要となり、より大型かつ高価なモータや、その追加慣性能率を駆動する能力をもつ制御ループが必要となる。
【0006】
したがって、より大型で高価なモータや付随する制御システムを必要としない、改善された帯域幅を提供する有限回転モータシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、本発明は、有限回転モータシステムにおいて使用されるミラーを提供し、このミラーは、本体と、本体内の開口部と、開口部内の高密度材料とを備える。1種類または複数種類の材料から形成される本体は、露出ミラー表面を有し、ミラー回転軸についての回転のために有限回転モータシステムに装着が可能である。開口部は、少なくともミラー回転軸の一部に近接して配置される。高密度材料は、開口部内に、開口部内での運動が可能なように備えられ、ミラー本体の材料の密度より密度が高い。
【0008】
別の実施形態によれば、本発明は、ミラーに連結された有限回転モータを備える走査システムを提供する。有限回転モータは、回転子シャフトを有し、ミラーは、本体と、本体内の開口部内の高密度材料とを有する。本体は、露出ミラー表面を有し、ミラー回転軸についての回転のために回転子シャフトに連結されている。高密度材料は、開口部内でミラー本体に対する運動が可能であり、ミラー本体の密度より密度が高い。
【0009】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、回転子シャフトを備える有限回転モータと、回転子シャフトに連結されたミラーと、を備える走査システムにおける振動減衰方法を提供する。上記方法は、有限回転モータによって回転子シャフトを介してミラーへ印加されたトルクを利用して、ミラー回転軸を中心としてミラーを回転させるステップと、ミラーの運動における振動によってミラー内の高密度材料を加速するステップであって、ミラー内の高密度材料の加速が、振動からのエネルギーを吸収して、それによって走査システムにおける振動を減衰するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態によるミラーの説明図である。
【
図2】
図1のミラーを用いた有限回転モータシステムの説明図である。
【
図3】
図1のミラーを線3−3に沿って取った断面説明図である。
【
図4A】トルク動作がミラーに印加される前の
図1のミラーの一部分の拡大断面説明図である。
【
図4B】トルク動作がミラーに印加された後の
図1のミラーの一部分の拡大断面説明図である。
【
図5】
図1のミラーの頂部の拡大断面説明図である。
【
図6】本発明の別の実施形態によるミラーの頂部の拡大断面説明図である。
【
図7】本発明のさらに別の実施形態によるミラーの頂部の拡大断面説明図である。
【
図8A】制振なしのシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図8B】制振なしのシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図8C】制振なしのシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図8D】制振なしのシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図9A】本発明の実施形態によるシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる
図8A〜
図8Dと同一の意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図9B】本発明の実施形態によるシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる
図8A〜
図8Dと同一の意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図9C】本発明の実施形態によるシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる
図8A〜
図8Dと同一の意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図9D】本発明の実施形態によるシステムを使用した際の、4つの走査ステップサイズにわたる
図8A〜
図8Dと同一の意図した目標からの目標処理のばらつきの説明図である。
【
図10】非ゼロ加速の後の、従来技術のミラーにおける不安定振幅と、本発明の実施形態によるミラーにおける比較不安定振幅とを示すグラフ図である。
【
図11】ミラーを点Aから点Bへ移動させる有限回転モータに印加される電圧を表すグラフ図である。
【
図12】
図11の電圧に反応する有限回転モータの固定子巻線における関連する電流のグラフ図である。
【
図13】本発明の実施形態による制振ミラーを使用した有限回転モータの反応のグラフ図である。
【
図14】非制振ミラーを使用した有限回転モータの反応のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照すれば、以下の説明がさらに良く理解されるであろう。図面は、あくまで例示を目的としたものである。商業用ミラー、特に大型のミラーの製造中に、各ミラーの質量の中心において部品ごとに著しいばらつきが発生することがある。このような回転軸に対するミラーの質量のセンタリングの不一致によって、軸外れ振動が引き起こされる。
【0012】
軸外れ振動は、その有効振動振幅が、同じミラーで非制振のものの5分の1以下になるように制振可能であることが発見されている。例えば、整定時間は帯域幅の逆数なので、5×10
−3秒の振動減衰期間では、対応する2.5×10
−2秒の非制振振幅よりも振幅が小さくなり、整定が5倍速くなるか、または帯域幅が5倍になる。
【0013】
図1に示されるように、本発明の実施形態による制振ミラー10は、反射面12と、(
図2にさらに示されるような)有限回転モータシステムに連結する装着ベース14とを含む。また、ミラー10は、ミラー12の本体8内に円筒状の開口部16と、周囲から開口部を密閉する露出キャップ18とを含む。種々の実施形態によれば、ミラー10の開口部16は、開口部16内で運動することができる高密度材料を含んでいる。
【0014】
具体的には、名目上の回転軸に沿ってミラー長の一部または大部分にドリルで小径穴を開けて開口部16を形成する。穴の直径は、例えば、約100ミクロン〜約5000ミクロンであって、約500〜2000ミクロンが好ましく、約1000ミクロンがさらに好ましい。この開口部16は、好ましくは、タングステン、劣化ウラン、モリブデン、鉛、ビスマス、あるいはこれらに類似した高密度材料からなる高密度材料粒子によって緩く満たされている。ある実施形態では、高密度粒子は、約9.0g/cm
3よりも高い密度を有し、また別の実施形態では、高密度粒子は、約12.0g/cm
3よりも高い密度を有する。次に、開口部16の露出端は、キャップ18によって閉じられ、高密度材料を保持する。
【0015】
図2に示されるように、スキャナアセンブリは、ミラー10が装着されているシャフトに連結された回転可能回転子を有するスキャナモータ20を備える。また、スキャナアセンブリは、回転子の一端に取り付けられたシャフトの位置をモニタする変換器22を備える。ミラー10および位置変換器22は、各々、回転子の同じ端部に取り付けられてもよい。また、本システムは、入力ノード28からの入力コマンド信号と、位置変換器22からのフィードバック信号30とに応答してモータ22に指示信号26を供給し、モータの速度および/または位置を制御するフィードバック制御システム24を含む。ミラー10は、当業者に既知である種々の従来技術のいずれかを用いてモータシャフトに連結されてもよい。
【0016】
表面12によって作業面に向かって反射されたレーザ光を、第1位置(例えば、作業表面の点A)から第2位置(例えば、作業表面の点B)へ移動させるようにミラーを駆動する場合、モータは、まず(例えば、静止状態から)ミラーの慣性能率を乗り越えて、非常に高速でミラーを回転させ、そして点Bでのレーザ処理が開始できるように、ミラーの動きを非常に高速で第2位置で停止させなければならない。ミラーに製造ばらつきや製造欠陥があると、多様な周波数で共振が引き起こされ、それによりレーザの位置決めに障害が生じることがある。
【0017】
図1のミラーを線3−3で取った断面図である
図3を参照すると、開口部は、例えば、タングステン、劣化ウラン、モリブデン、鉛、ビスマスなどの高密度材料32からなる制振材料であって、約0.1ミクロン〜約100ミクロンの、好ましくは約1ミクロン〜10ミクロンの、さらに好ましくは約3ミクロンの粒子サイズを有する制振材料で満たされている。一方、ミラー10の本体8は、アルミニウム、鉄、ガラス、シリコンなどの半導体材料および/またはゲルマニウム、炭素、チタン、ベリリウムなどのいずれかの低密度材料のうちの1種類または複数種類、あるいはこれらの組み合わせによって形成されている。ある実施形態では、低密度本体材料は、約9.0g/cm
3よりも低い密度を有し、また別の実施形態では、低密度本体材料は、約5g/cm
3よりも低い密度を有する。
【0018】
制振材料は、ミラーの回転中心あるいはそのごく近傍にあるため、高密度にもかかわらずほとんど慣性能率を上昇させない。モータによってミラーが加速される間、制振材料は遠心反応によって回転の中心から離れる。振動がない場合は、材料32は、
図4Aに示されるように回転軸に沿って小さな空隙を残しつつ、安定した均一な層の状態で穴16の壁に沿って詰められる。しかし、振動がある場合には、ミラーの形状が、振動の強度で歪み、材料32は、穴壁の歪みによって
図4Bに示されるように高速で材料32自身に向かって加速したり壁に向かって加速したりする。従って、振動の動的エネルギーは、制振材料の動的エネルギーに変換され、そして衝突における熱に変換される。エネルギーを保存することで、エネルギーは振動から取り除かれるため、振幅の振動は減少する。
【0019】
図5に示されるように、開口部16は、粒子32と端キャップ18の内側表面との間に空間がほとんどないか、または全く存在しないようにして粒子32で満たされる。ある実施形態では、粒子32は、開口部内に詰め込まれてもよいし、ミラー10全体を超音波振動にさらすことで開口部内に安定させてもよい。こうすることで、高密度材料が使用中に多大な移動にさらされてミラーの質量の中心が変化し、著しい不均衡とそれによる振動が引き起こされるのを予防する。
【0020】
図6を参照する。本発明の別の実施形態によると、ミラーの本体48の開口部46は、弾性材料52と混合されてキャップ54によって保持される高密度材料50(例えば、タングステン、劣化ウラン、モリブデン、鉛、ビスマスなどのいずれかであって、約0.1ミクロンから約100ミクロン、好ましくは約1ミクロンから5ミクロンの粒子サイズを有する)で満たされる。選択された弾性材料52(例えば、ゴム、シリコン、バイトン、ポリウレタンなどの一般的な弾性材料なら何でもよい)は、粒子を保持するように機能し、制振装置の反応を所望の周波数または所望の周波数範囲に調整するバネとして作用する。つまり、ミラーは、弾性材料の適切な選択を通じて、その弾性材料によって粒子の運動が制限されることで、特定の周波数または周波数範囲の振動を減少させるように設計されている。
【0021】
図7を参照する。さらに別の実施形態では、ミラー68内の開口部66は、高密度液体70(水銀など)を含んでおり、高密度液体70は、高密度液体70自身との摩擦または壁面との摩擦による熱としてのエネルギーを放散する。ある実施形態では、高密度液体は、約9.0g/cm
3よりも高い密度を有し、また別の実施形態では、高密度液体は、約12.0g/cm
3よりも高い密度を有する。この場合もやはり、高密度液体は、わずかな運動をのみを許容されるようにキャップ72によって開口部内に密閉される。
【0022】
図8A〜
図8Dは、一対のミラー検流計サーボシステムからなる従来技術のシステムを用いた、X=0、Y=0に意図した目標から4つの走査ステップサイズ(d1、d2、d3、d4)にわたる目標処理のばらつきを示す図であり、この一対のミラー検流計システムは、一方のシステムがレーザ光をX方向に動かしつつ、他方のシステムがレーザ光をY方向に動かすように、互いのシステムに対して90度に配置されている。これらの散布図は、点Aから各グラフ図に示される点B(X=0、Y=0)へのステップ刻みの動きを達成しようとする複数回にわたる試みを示している。点Aから点Bへの距離は、ステップd0、d1、d2、d3、d4とステップごとに増加する変数である。X方向とY方向のそれぞれにおける散布図全体のサイズは、点Aと点Bとの間で所望の運動を達成する際のシステムの誤差の大きさである。
【0023】
以下に詳述されるように、時間t
1での加速電流インパルスによって両システムにおいて振動が引き起こされる。制振システムでは、逆方向加速パルスが印加される前に、振動は消滅する(
図13を参照してさらに以下に述べる)。反対に、非制振システムにおいては、振動は持続する(
図14を参照してさらに以下に述べる)。非制振システムに逆方向インパルスが印加された場合、そのインパルスは、元の振動位相に幾何学的に追加され、原理上、振幅は無制限になる。新しい振幅は、元の振幅の約10倍の大きさとなり、これらの条件下では、位置変更指示パルスの終了後も数ミリ秒にわたり不快な振幅で振動が持続することになる。
【0024】
この位相依存性の影響は、
図8A〜
図8Dにおいて見て取れる。これらの図において、点Aと点Bとの間で任意に選択された複数の距離では、それぞれ時間t
1に開始される振動と時間t
3に開始される振動との間に異なる位相差を有し、その結果、
図8Aの最小ステップd0−d1と
図8Dの最大ステップd3−d4との両方において、位相差は180度近くになる。そのため、第2インパルスによる振動は、第1インパルスの振動をほぼキャンセルし、結果として、拡散の振幅は小さくなり許容可能になるが、中距離のステップd1−d2(
図8B)およびステップd2−d3(
図8C)はいずれもゼロに近い位相差を有しており、そのため時間t
1と時間t
3でのインパルスの結果として生じる振動は、振幅において足し合わさり、拡散の振幅を大幅に増加させる。
【0025】
図9A〜
図9Dは、同一のステップを実行する、制振型の同一のミラーを備えた同一のシステムの散布図であり、制振の結果、振動の位相にかかわらず全てのステップにわたってほとんど同じ大きさの散布図となった。特定のシステムでの特定のステップサイズによる振動の位相を予測することは実際的ではないため、制振粒子のサイズは、関心対象の振動スペクトル全体を減衰するのに適する範囲内で減衰を行うように選択されるとよい。
【0026】
図8A〜
図8Dおよび
図9A〜
図9Dの図は、同一の未完成のミラーであって、追加の高密度材料を備えている場合(
図9A〜
図9D)と、追加の高密度材料を備えていない場合(
図8A〜
図8D)とで、全てのステップサイズd
1、d
2、d
3、d
4にわたる対象処理において改善が得られることを示そうとするものである。これらの図面はあくまで例示を目的としたものである。
【0027】
図10は、従来技術のミラーおよび本発明の実施形態によるミラーにおける不安定振幅を示す図である。従来技術のミラーは、100で示されるように、0.25(2.5×10
−2)秒間以上著しく振動し、実際、モータが(0.00で)停止した後に振動の最大位相が(102で示されるように)起こる。本発明の実施形態によるミラーは、104で示されるように、モータが(0.00で)停止した後、直ちに振動の振幅の減少を開始し、106で示されるように、わずか0.01(1.00×10
−2)秒後には振動を著しく減少させる。従って、本発明のシステムの制振反応は、非制振システムの動きのピーク振幅には決して到達せず、またコマンド終了後、5×10
−3秒後までには、既に非制振システムの2.5×10
−2秒での振動未満になり、整定時間において5倍の利得が得られる。
【0028】
図11〜
図14を参照する。ミラーの動きは制御信号によるものであり、制御信号は、以下のようにミラーを(第1のレーザ点Aを備える)第1位置から(第2のレーザ点Bを備える)第2位置へ駆動させる。
図14は、概して、(
図11に示されるような)モータ全体の電圧と、(
図12に示されるような)モータを通る電流と、に共通する時間的尺度での非制振ミラーの運動振動を示している。
図13は、同様の時間的尺度での本システムの制振反応を示している。時間t
1での加速電流インパルスによって、
図13および
図14に示されるシステムの両方で振動が引き起こされる。制振システム(
図13)では、
図13に示されるように逆方向加速パルスが印加される前に振動が消滅する。反対に、非制振システムでは、
図14に示されるように振動は持続する。
【0029】
特に、
図13では、有限回転モータの固定子への電圧が、最初に電圧+Vまで増加されると、110で示される時間t
1〜時間t
2の間に、固定子の電位が急速にこの電圧まで上昇することを示している。次に、電圧は時間t
2で止められ、そして時間t
3で回転子を止めるために112で示されるように負電圧が印加される。同様に、120で示されるように、電流も時間t
1から時間t
2へと増加し、次に時間t
3までは低下する。時間t
3から時間t
4までは、122で示されるように、ミラーの動きを止めるために負電流が印加される。そして電流は、ミラーが停止する時間t
5まで再び低下する。
【0030】
図13に示されるように、本発明の実施形態による制振ミラーの動きでは、正電流が時間t
1で最初に印加された時に(130で示されるように)初期振動が発生するが、これらの振動は、負電流(逆方向加速パルス)が時間t
3で印加されるかなり前に、素早く消滅してしまう。また同様に、負電流が時間t
3で最初に印加された時に、ミラーには(132で示されるように)初期振動が発生するが、これらの振動は、ミラーが時間t
5で所望の位置へ達するかなり前に素早く消滅する。反対に、
図14に示されるように、非制振ミラーを使用する場合、時間t
1で最初に正電流が印加された場合、ミラーには(140で示されるように)初期振動が発生するが、これらの振動は、これらの振動が(142および144で示されるように)増幅される時点である時間t
3より前には消滅しない。これらの振動は、時間t
5の前に確かに減少するが、(146で示されるように)多少の振動は残り、こうした振動は、時間t
5で発生するレーザ処理の正確さに悪影響を及ぼす。非制振システムに逆方向インパルスが印加された場合、そのインパルスは、元の振動位相に幾何学的に追加され、原理上、振幅は無制限になる。
図14に示されるように、新しい振幅は、元の振幅の約10倍の大きさとなり、これらの条件下では、位置変更指示パルスの終了後も数ミリ秒にわたり不快な振幅で振動が持続することになる。
【0031】
この位相依存性の影響は、
図8A〜
図8Dにおいて見て取れる。これらの図において、点Aと点Bとの間で任意に選択された複数の距離では、それぞれ時間t
1に開始した振動と時間t
3に開始したさらなる振動との間に異なる位相差を有し、その結果、
図8Aの最小ステップd0−d1、
図8Dの最大ステップd3−d4の両方において、位相差は180度近くになる。そのため、第2インパルスによる振動は、第1インパルスの振動をほぼキャンセルし、中距離のステップd1−d2(
図8B)およびd2−d3(
図8C)はいずれも、ゼロに近い位相差を有しており、そのため時間t
1と時間t
3とでのインパルスの結果として生じる振動は、振幅において足し合わさる。
【0032】
本発明の精神および範囲から逸脱しない範囲で種々の修正および変更が可能なことは、当業者に十分に理解されるであろう。
【符号の説明】
【0033】
8 本体、10 ミラー、12 反射面、14 取付ベース、16 開口部、18 キャップ、20 スキャナモータ、22 位置変換器、24 フィードバック制御システム、26 指示信号、28 入力ノード、30 フィードバック信号、32 高密度材料、46 開口部、50 高密度材料、52 弾性材料、54 キャップ、66 開口部、68 ミラー、70 高密度液体、72 キャップ、100 標準ミラー、104 制振ミラー。