(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693571
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ペンタフルオロプロパンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/354 20060101AFI20150312BHJP
C07C 19/08 20060101ALI20150312BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150312BHJP
【FI】
C07C17/354
C07C19/08
!C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-514512(P2012-514512)
(86)(22)【出願日】2010年5月6日
(65)【公表番号】特表2012-529481(P2012-529481A)
(43)【公表日】2012年11月22日
(86)【国際出願番号】FR2010050866
(87)【国際公開番号】WO2010142878
(87)【国際公開日】20101216
【審査請求日】2013年5月7日
(31)【優先権主張番号】0953937
(32)【優先日】2009年6月12日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(72)【発明者】
【氏名】デヴィク, ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥセ, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンドランジャ, ロラン
(72)【発明者】
【氏名】キャヴァリニ, ジェラルディン
【審査官】
吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/064939(WO,A1)
【文献】
国際公開第93/025510(WO,A1)
【文献】
特開2008−162999(JP,A)
【文献】
特開2008−110980(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/030440(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/138764(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/354
C07C 19/08
C07C 21/18
C07C 14/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(iii):
(i)1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンを、反応器中で水素化触媒の存在下に、80〜250℃の温度で、超化学量論量で、水素と気相で反応させ、
(ii)1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンと、未反応水素と、場合によって含まれる未反応1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンと、1,1,1,2-テトラフルオロプロパンと、フッ化水素酸とを含む、反応器からのガス状排出物の一部を再循環し、
(iii)反応器からのガス状排出物の残りの部分から、必要に応じて精製段階を実施した後に、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンを回収する、
の工程によって1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンを製造する方法であって、
上記で再循環する反応器からのガス状排出物の一部の量が、反応器出口のガス状排出物の全流出物の量の少なくとも80容量%であることを特徴とする方法。
【請求項2】
再循環されるガス状排出物の上記一部が反応器出口の全流出物の量の93〜98容量%を占める請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記(i)の温度を110〜160℃にする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応器出口のガス状排出物が、5〜96容量%の1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンと、2〜90容量%の水素と、1〜20容量%の1,1,1,2-テトラフルオロプロパンと、0〜10容量%の1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンとを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記触媒が担体に担持されているパラジウムを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記担体がアルミナをベースにした担体である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水素/1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)のモル比を1.2〜40にする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記モル比を1.5〜40にする請求項7に記載の方法
【請求項9】
上記モル比を3〜10にする請求項8に記載の方法
【請求項10】
接触時間を0.2〜20秒にする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
接触時間を1〜5秒にする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水素化反応を0.5〜20バールの絶対圧力で行う請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
水素化反応を1〜5バールの絶対圧力で行う請求項12に記載の方法。
【請求項14】
連続的に行う請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンの水素化による1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法にある。
【背景技術】
【0002】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは冷媒流体および熱交換流体としての特性が知られた化合物である。1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンから2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを製造する方法は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンの水素化段階を含む。
【0003】
非特許文献1(Knunyants達, ソビエト連邦科学アカデミーのジャーナル、化学部, "フルオロオレフィン反応", レポート 13, 「ぺルフルオロオレフィンの触媒水素化」、1960)には、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye) をアルミナに担持されたパラジウム触媒上で室温で水素化して、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン (HFC-245eb) と1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb) との混合物を製造する方法が記載されている。1,1,1,2-テトラフルオロプロパンが主として(すなわち、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンに対して約50%)製造される。
【0004】
特許文献1(国際特許第WO 2008/030440号公報)には、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンを触媒の存在下で水素と接触させる少なくとも一回の水素化段階を含む2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの製造方法が記載されている。この文献に器の適切な水素化触媒はVIII族から選択される金属またはレニウムを含み、この金属は担持できる。この特許文献1の実施例1には、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンを、0.5重量%の炭素に担持されたパラジウムを含む触媒の存在下で、85℃で水素化反応し、92%のHFC-245ebと8%のHFC-254ebとを含む流れを生成することが記載されている。
【0005】
しかし、上記従来法のテストは実験室規模で実施されたもので、触媒寿命に関しては上記文献には全く記載がない。上記水素化反応は高度に発熱性であるため、工業的規模では問題が生じる。しかも、HFC-245ebの連続水素化反応ではかなりの量の副生成物(HFC-254eb)が生成する(すなわち、所望生成物のフッ素原子が水素原子で置換され、フッ化水素酸が生じる)。反応流中に反応物以外の化合物が存在すると、触媒が急速に非活性化する原因になる。
【0006】
特許文献2(欧州特許第1 916 232号公報)にはオレフィン化合物を多段水素化して高い変換率および高い選択率を得る反応が提案されている。その実施例2には4つの反応器中で木炭に担持した触媒の存在下で1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンを段階的に水素化することが記載されている。第1反応器の出口温度は99℃、第2反応器の出口温度は95℃(変換率が54%の場合)、第3反応器の出口温度は173℃、第4反応器での出口温度は104℃である。第1浴の温度が59℃の反応器と第2浴の温度が116℃の反応器との間で冷却段階を実施する。しかし、この特許文献2に記載の方法はコストが高く、実施するのは容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許第WO 2008/030440号公報
【特許文献2】欧州特許第1 916 232号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Knunyants達, ソビエト連邦科学アカデミーのジャーナル、化学部, "フルオロオレフィン反応", レポート 13, 「ぺルフルオロオレフィンの触媒水素化」1960
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点の一部または全てを解決することができる、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンから1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンを連続的または半連続的に製造する方法を提供する。
本発明方法を用いることによって、水素化反応の発熱性を制御でき、および/または、HFC-245ebの水素化反応を制限でき、および/または、触媒の非活性化を減らすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、下記(i)〜(iii)を特徴とする1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンの製造方法にある:
(i)1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンを、反応器中で水素化触媒の存在下に、80〜250℃、好ましくは110〜160℃の温度で、超化学量論量で、水素と気相で反応させ、
(ii)1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンと、未反応水素と、場合によって生じる未反応1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2-テトラフルオロプロパンおよびフッ化水素酸とを含む、反応器からのガス状排出物の一部を再循環し、
(iii)反応器からのガス状排出物の残りの部分から、必要に応じて精製段階を実施した後に、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンを回収する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
触媒床の入口の温度は50〜200℃、有利には80〜140℃にするのが好ましい。
反応器への循環流および反応物は反応器に導入する前に予備加熱できる。
【0012】
本発明方法は水素/HFO-1225yeモル比を1.2〜40、有利には3〜10にして行うのが好ましい。この比は一般に再循環流に1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンおよび水素を添加して得られる。
【0013】
標準温度と標準圧力下での全ガス流の流量に対する触媒床の容量の比で定義される接触時間は0.1〜20秒、有利には0.5〜5秒であるのが好ましい。
本発明の水素化反応は0.5〜20バールの絶対圧力、有利には1〜5バールの絶対圧力で行うのが好ましい。
【0014】
反応器出口のガス状排出物は、5〜96容量%の1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンと、2〜90容量%の水素と、1〜20容量%の1,1,1,2-テトラフルオロプロパンと、0〜10%の1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンとを含むのが好ましい。
【0015】
反応器出口のガス状排出物は、5〜91容量%の1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパンと、8〜50容量%の水素と、1〜5容量%の1,1,1,2-テトラフルオロプロパンと、0〜0.1容量%の1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンとを含むのが有利である。
本発明の方法では、断熱反応器を用いるのが好ましい。
【0016】
反応器へ再循環されるガス状排出物の部分は、反応器出口の全流出流の少なくとも80容量%、有利には少なくとも90容量%を占めるのが好ましい。反応器へ再循環されるガス状排出物の部分は、反応器出口の全流出流の93〜98容量%を占めるのが特に好ましい。
【0017】
触媒としては、特に、VIII族から選択される金属またはレニウムをベースにしたものが挙げられる。触媒は例えば炭素、アルミナ、フッ化アルミニウム等で担持できるが、触媒を担持しなくてもよい、例えばラネーニッケルにすることができる。金属としてはプラチナまたはパラジウム、特にパラジウム、有利には炭素またはアルミナに担持されたものを使用できる。この金属と別の金属、例えば銀、銅、金、テルル、亜鉛、クロム、モリブデンおよびタリウムを組み合わせることもできる。
【0018】
触媒は必要に応じて担持されたパラジウムを含むのが好ましい。
本発明の特に好ましい触媒はアルミナをベースにした担体上にパラジウムを含む触媒である。触媒中のパラジウムの量は、0.05〜10重量%、有利には0.1〜5重量%であるのが好ましい。
触媒の比表面積は4m
2/g以上であるのが好ましい。触媒担体として用いるアルミナはα多形相で提供されるのが有利である。
【0019】
本発明者は、驚くべきことに、反応器出口のガス状排出物の一部を再循環しても、HFC-254eb副生成物の量が低いままであるということを見出した。この量は再循環しない従来技術と比べるて低い。
【0020】
本発明方法を用いることで高いHFO-1225yeの変換率と、高いHFC-245ebの選択率とが得られる。しかも、これらの性能は経時的に安定である。これによって再循環ループ中のフッ化水素酸(強腐食性生成物)の存在を制限できる。
【実施例】
【0021】
下記のテストは産出流の一部を反応器に再循環できる装置で実施した。
変換率は変換されたHFO-1225yeの百分率で定義される。
生成物Xの選択率は、変換されたHFO-1225yeのモル数に対する生成した生成物Xのモル数の百分率で定義される。
【0022】
実施例1
469gの触媒を収容した内径が2.1cmで、長さが120cm(すなわち320cm
3)の固定床の形をしたステンレス鋼製の管状反応器を用いた。触媒は0.2重量%の、α−アルミナに担持されたパラジウムを含む。
反応時間中に、1.41モル/時の水素と、0.7モル/時の1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンとを連続注入し、再循環ループの流量は0.490Sm
3/時(すなわち反応器出口のガス状排出物の93.7容量%)にした。触媒床入口の水素/HFO-1225yeモル比は16である。圧力は1バールの絶対圧力である。反応器入口の温度は60℃で、反応中に得られる最高反応器温度は124℃である。接触時間は2.3秒である。
得られたHFO-1225yeの変換率は100%、HFC-245ebの選択率は95.7%、HFC-254ebの選択率は4.1%である。80時間の運転中に非活性化は観察されなかった。
【0023】
実施例2
上記と同じ装置および同じ触媒を用いた。反応時間を通じて0.84モル/時の水素と、0.7モル/時の1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンとを連続注入し、再循環ループへの流量は0.970Sm
3/時にした(すなわち、再循環率は98容量%)。反応器入口の水素/HFO-1225yeモル比は1.18である。圧力は2バールの絶対圧力である。触媒床入口の温度は63℃で、反応中に得られる最高反応器温度は90℃である。接触時間は1.2秒である。
得られたHFO-1225yeの変換率は100%、HFC-245ebの選択率は79%、HFC-254ebの選択率は20.0%である。
【0024】
実施例3
実施例2と同じ条件下で運転したが、反応器入口の水素/HFO-1225yeモル比を5.2にし、触媒床入口の温度を100℃にした。反応中に得られる最高温度は123℃である。
得られたHFO-1225yeの変換率は100%、HFC-245ebの選択率は89.6%、HFC-254ebの選択率は10.2%である。