(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、負圧発生溝は高圧流体側とは連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、他方側の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、固定側の摺動部品の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、回転側の摺動部品の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とは内周側のシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の一方側の摺動面には、外周側に正圧発生溝からなる正圧発生機構を、内周側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とは内周側のシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の固定側の摺動面には、外周側に正圧発生溝からなる正圧発生機構を、環状体の回転側の摺動面には、内周側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とは内周側のシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
外周側の正圧発生機構がレイリーステップ機構から、また内周側の負圧発生機構が逆レイリーステップ機構から形成され、前記レイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構は、それぞれ高圧流体側と連通してなることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の摺動部品。
レイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構は円周方向に平行して対をなすように複数設けられるとともに、上流側からみて、n番目のレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端とn−1番目の逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部は共通の連通手段を介して高圧流体側に連通されることを特徴とする請求項7記載の摺動部品。
複数のレイリーステップ機構と1つの逆レイリーステップ機構が円周方向に平行して設けられ、1つのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端と逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部は共通の連通手段を介して高圧流体側に連通され、また、残りのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端は個々に高圧流体側に連通されることを特徴とする請求項7記載の摺動部品。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には高圧流体側と直接連通するスパイラルグルーブ、又はディンプルからなる正圧発生機構を、低圧側には逆レイリーステップ機構からなる負圧発生機構を設け、前記逆レイリーステップ機構は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、他方側の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記一方側及び他方側の摺動面には前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に位置するように圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、固定側の摺動部品の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、回転側の摺動部品の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記固定側及び回転側の摺動面には前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に位置するように圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の一方側の摺動面には、高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の固定側の摺動面には、高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、環状体の回転側の摺動面には、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記固定側及び回転側の摺動面には前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に位置するように圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
外周側の正圧発生機構がレイリーステップ機構から、また内周側の負圧発生機構が逆レイリーステップ機構から形成されるとともに、圧力開放溝が円周溝から形成され、前記レイリーステップ機構、逆レイリーステップ機構及び圧力開放溝は、それぞれ高圧流体側と連通してなることを特徴とする請求項12ないし16のいずれか1項に記載の摺動部品。
レイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構は圧力開放溝を挟んで円周方向に平行して対をなすように複数設けられるとともに、上流側からみて、n番目のレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端とn−1番目の逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部及び圧力開放溝は共通の連通手段を介して高圧流体側に連通されることを特徴とする請求項17記載の摺動部品。
複数のレイリーステップ機構と1つの逆レイリーステップ機構が圧力開放溝を挟んで円周方向に平行して設けられ、1つのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端と逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部及び圧力開放溝は共通の連通手段を介して高圧流体側に連通され、また、残りのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端は個々の連通手段を介して高圧流体側に連通されることを特徴とする請求項17記載の摺動部品。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には高圧流体側と直接連通するスパイラルグルーブ、又はディンプルからなる正圧発生機構を、低圧側には逆レイリーステップ機構からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記スパイラルグルーブ又はディンプルと逆レイリーステップ機構との間に圧力開放溝を設け、圧力開放溝及び逆レイリーステップ機構は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には高圧流体側と直接連通するスパイラルグルーブ、又はディンプルからなる正圧発生機構を、低圧側には逆スパイラルグルーブからなる負圧発生機構を設けるとともに、前記高圧側のスパイラルグルーブ又はディンプルと低圧側の逆スパイラルグルーブとの間に圧力開放溝を設け、前記低圧側の逆スパイラルグルーブは圧力開放溝を介して高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴とする摺動部品。
半径方向溝を、負圧発生機構に連通する内周側から外周側に向けて相手摺動面の回転方向に向かって傾斜する形状とすることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の摺動部品。
【背景技術】
【0002】
摺動部品の一例である、メカニカルシールにおいて、密封性を長期的に維持させるためには、「密封」と「潤滑」という相反する条件を両立させなければならない。特に、近年においては、環境対策などのために、被密封流体の漏れ防止を図りつつ、機械的損失を低減させるべく、より一層、低摩擦化の要求が高まっている。低摩擦化の手法としては、回転により摺動面間に動圧を発生させ、液膜を介在させた状態で摺動する、いわゆる流体潤滑状態とすることにより達成できる。しかしながら、この場合、摺動面間に正圧が発生するため、流体が正圧部分から摺動面外へ流出する。軸受でいう側方漏れであり、シールの場合の漏れに該当する。シール面外周側に密封流体、内周側に大気があり、外周側の流体を密封している場合(「インサイド形」といわれている。)の内周側漏れ量は、次の式により表される。
【数1】
Q:摺動面内径r1における内周側漏れ量(マイナスで漏れ方向)
h:隙間高さ
η:流体粘度
p:圧力
上記式より、流体潤滑を促進し、動圧を発生させ、液膜を形成させるほど、内周端側の圧力勾配∂p/∂rが大きくなり、hが大きくなった結果、漏れ量Qが増大することがわかる。
したがって、シールの場合、漏れ量Qを減少させるには、隙間hおよび圧力勾配∂p/∂rを小さくする必要がある。
【0003】
以上のことから、従来のシールにおいては、摺動面を損傷しない程度に液膜厚さhを小さくすることで、密封性能を維持する、いわゆる密封と潤滑の妥協点において成立させている。
したがって、接触が即焼き付き等の表面損傷に繋がる環境下で使用されるシールにおいては、その動圧効果を優先させた結果、液膜厚さhが大きくなるため、漏れ量は増大する。一方、直接接触が長期的にも問題を生じにくい環境下で使用されるシールにおいては、密封性能を優先させた結果、隙間hが小さく動圧効果も小さいため、直接接触による面の摩耗・損傷の可能性や、摩擦係数が高くなる。前者の構造の例として、例えば、特許文献1に記載の発明が挙げられる。この発明は、ドライガスシールであるが、液体シールにも流用可能であり、優れた動圧効果を得られる反面、漏れ量が非常に多い。後者の構造の例として、直接接触においても問題が生じにくいように、固定環側に自己潤滑性に優れる焼成カーボンを用い、平面同士でシールする構造のものがある。その他の例として、動圧発生機構としてうねりやスパイラルグルーブを施した例もある(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
液体シールにおいては、気体より粘度が大きいため、平面同士であっても面の微小なうねりや粗さの凹凸等により動圧効果が得られる。このため、密封性能を優先した構造を採用することが多い。一方、密封と潤滑を両立させるために、漏れた液体を高圧側に引き戻す、ポンピング効果を有した機構もいくつか考案されている。たとえば、特許文献4には、予め隙間を持たせた回転・静止2面間に、高さの異なる「堰」を設置することで、せん断流れによりポンピングさせる機構が開示されている。この機構では、機械的に初期隙間を与える必要があるため、構造が複雑になるとともに、静止時にも隙間があるため、静止時において漏れが生じるという問題がある。
【0005】
また、非特許文献1には、高圧側の流体を一旦ダム部に溜め、レイリーステップ軸受部で動圧を発生させた後、高圧側へ戻すという構造が開示されている。この機構では、ダム部に液体が溜まるまでは動圧が発生しないため、回転開始直後においては、直接接触を伴い摺動するため、この間表面損傷が生じる危険がある。
さらに、非特許文献2には、レイリーステップの上流側にポンピンググルーブを設置することにより、回転時のせん断流れを利用してポンピング効果を生じさせる考案が開示されている。この機構では、高圧側と低圧側とがポンピンググルーブで繋がっているため、静止時に漏れが生じるという問題がある。
【0006】
また、摺動部品に関する発明として、摺動面の被密封流体側に形成された吸込手段により、摺動面に被密封流体を導入し、この導入した被密封流体を摺動面に形成された径方向外周側及び径方向内周側の2つのディンプル部にダム部を介して被密封流体を蓄積すると同時に径方向内周側のディンプル部においてポンピングさせることにより、2つのディンプル部より径方向内周側に位置するシール面から被密封流体が漏洩するのを防止するようにした発明が、本出願人により出願されている(特許文献5参照)。この発明では、2つのディンプル部のうち、径方向内周側のディンプル部にポンピング作用を生じさせてシール面から被密封流体が漏洩するのを防止しているが、径方向内周側のディンプル部は閉空間を形成していることから負圧になることがない。このため、ディンプル部より径方向内周側の摺動面に存在する流体が漏れることを防止することはできない。すなわち、一定程度の漏れを防止することは可能であるが、漏れ量は多くならざるを得ない。
以上のように、従来の技術においては、静止時に漏れず、回転初期を含み回転時には流体潤滑で作動するとともに漏れを防止するところの、密封と潤滑を両立させるものは存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、静止時に漏れず、回転初期を含み回転時には流体潤滑で作動するとともに漏れを防止し、密封と潤滑を両立させることのできる摺動部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の摺動部品は、第1に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、負圧発生溝は高圧流体側とは半径方向溝を介して連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
第1の特徴により、静止時には漏れず、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面の低圧側(たとえば、インサイド型メカニカルシールの場合はシール内周側)端部の圧力勾配∂p/∂rを負とすることができ、摺動面の低圧側から高圧流体側に向けてポンピング作用が生じることから、漏れ量を極めて小さくできる。
【0011】
また、本発明の摺動部品は、第2に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第3に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、他方側の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第4に、一対の摺動部品の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、固定側の摺動部品の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、回転側の摺動部品の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とは内周側のシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第5に、一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の一方側の摺動面には、外周側に正圧発生溝からなる正圧発生機構を、内周側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とは内周側のシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第6に、一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の固定側の摺動面には、外周側に正圧発生溝からなる正圧発生機構を、環状体の回転側の摺動面には、内周側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設け、前記正圧発生溝及び負圧発生溝は、それぞれ高圧流体側と連通し、低圧流体側とは内周側のシール面により隔離されていることを特徴としている。
第2ないし第6の特徴により、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面が流体潤滑状態で作動するため摩擦係数を低くすることができるとともに、静止時には漏れず、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面の低圧側の圧力勾配∂p/∂rを負とすることができ、摺動面の低圧側から高圧流体側に向けてポンピング作用が生じることから、漏れ量を極めて小さくできる。
さらに、第3及び第6の特徴により、同一摺動面にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構の両方を設ける場合に比べてスペースがあるため摺動面における両機構の配置がし易くなり、加工時間の短縮を図ることができる。
さらに、第4の特徴により、潤滑に用いられる流体が回転による遠心力の影響を受け難く、摺動面間に適度に流体を存在させることが出来るため、よりよい流体潤滑状態を得ることが出来る。
【0012】
また、本発明の摺動部品は、第7に、第2ないし第6のいずれかの特徴において、外周側の正圧発生機構がレイリーステップ機構から、また内周側の負圧発生機構が逆レイリーステップ機構から形成され、前記レイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構は、それぞれ高圧流体側と半径方向溝を介して連通してなることを特徴としている。
第7の特徴により、摺動部品の摺動面に、容易に正圧発生機構及び負圧発生機構を設けることができる。
【0013】
また、本発明の摺動部品は、第8に、第7の特徴において、レイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構は円周方向に平行して対をなすように複数設けられるとともに、上流側からみて、n番目のレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端とn−1番目の逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部は共通の半径方向溝を介して高圧流体側に連通されることを特徴としている。
第8の特徴により、環状体から成る摺動部品の摺動面に、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、半径方向溝の数を低減することができるため流体の漏れ量を少なくすることができる。
【0014】
また、本発明の摺動部品は、第9に、第7の特徴において、複数のレイリーステップ機構と1つの逆レイリーステップ機構が円周方向に平行して設けられ、1つのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端と逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部は共通の半径方向溝を介して高圧流体側に連通され、また、残りのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端は個々の半径方向溝を介して高圧流体側に連通されることを特徴としている。
第9の特徴により、環状体から成る摺動部品の摺動面に、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、共通の半径方向溝の数を1つとすることができるため流体の漏れ量を最小にすることができる。
また、本発明の摺動部品は、第10に、第7の特徴において、逆レイリーステップ機構が径方向に複数設けられることを特徴としている。
第10の特徴により、段階的に負圧が発生され、より漏れを防止できる構造となっているため、高圧かつ高速のシールに適している。
【0015】
また、本発明の摺動部品は、第11に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には高圧流体側と直接連通するスパイラルグルーブ、又はディンプルからなる正圧発生機構を、低圧側には逆レイリーステップ機構からなる負圧発生機構を設け、前記逆レイリーステップ機構は高圧流体側と半径方向溝を介して連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
第11の特徴により、正圧発生機構をスパイラルグルーブ、又はディンプルから形成することができる。
【0016】
また、本発明の摺動部品は、第12に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第13に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、他方側の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記一方側及び他方側の摺動面には前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に位置するように圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第14に、一対の摺動部品の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、固定側の摺動部品の摺動面の高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、回転側の摺動部品の摺動面の低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記固定側及び回転側の摺動面には前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に位置するように圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第15に、一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の一方側の摺動面には、高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第16に、一対の摺動部品が環状体から成り、該環状体の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側であって、環状体の固定側の摺動面には、高圧側には正圧発生溝からなる正圧発生機構を、環状体の回転側の摺動面には、低圧側には負圧発生溝からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記固定側及び回転側の摺動面には前記正圧発生溝と負圧発生溝との間に位置するように圧力開放溝を設け、前記正圧発生溝、圧力開放溝及び負圧発生溝は高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
第12ないし第16の特徴により、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面が流体潤滑状態で作動するため摩擦係数を低くすることができるとともに、静止時には漏れず、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面の低圧側端部の圧力勾配∂p/∂rを負とすることができ、摺動面の低圧側から高圧流体側に向けてポンピング作用が生じることから、漏れ量を極めて小さくできる。加えて、高圧側の正圧発生機構で発生した動圧を高圧側流体の圧力まで開放し、流体が低圧側の負圧発生機構に流入することを防止し、負圧発生機構の負圧発生能力が弱まることを防止できる。
さらに、第13及び第16の特徴により、同一摺動面にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構の両方を設ける場合に比べてスペースがあるため摺動面における両機構の配置がし易くなり、加工時間の短縮を図ることができる。
さらに、第14の特徴により、潤滑に用いられる流体が回転による遠心力の影響を受け難く、摺動面間に適度に流体を存在させることが出来るため、よりよい流体潤滑状態を得ることが出来る。
【0017】
また、本発明の摺動部品は、第17に、第12ないし第16のいずれかの特徴において、外周側の正圧発生機構がレイリーステップ機構から、また内周側の負圧発生機構が逆レイリーステップ機構から形成されるとともに、圧力開放溝が円周溝から形成され、前記レイリーステップ機構、逆レイリーステップ機構及び圧力開放溝は、それぞれ高圧流体側と半径方向溝を介して連通してなることを特徴としている。
第17の特徴により、第12ないし第16の特徴の効果に加えて、摺動部品の摺動面に、容易に正圧発生機構及び負圧発生機構を設けることができる。
【0018】
また、本発明の摺動部品は、第18に、第17の特徴において、レイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構は圧力開放溝を挟んで円周方向に平行して対をなすように複数設けられるとともに、上流側からみて、n番目のレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端とn−1番目の逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部及び圧力開放溝は共通の半径方向溝を介して高圧流体側に連通されることを特徴としている。
第18の特徴により、第11の特徴の効果に加えて、環状体から成る摺動部品の摺動面に、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、半径方向溝の数を低減することができるため流体の漏れ量を少なくすることができる。
【0019】
また、本発明の摺動部品は、第19に、第17の特徴において、複数のレイリーステップ機構と1つの逆レイリーステップ機構が圧力開放溝を挟んで円周方向に平行して設けられ、1つのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端と逆レイリーステップ機構のグルーブ部の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部及び圧力開放溝は共通の半径方向溝を介して高圧流体側に連通され、また、残りのレイリーステップ機構のグルーブ部の上流端は圧力開放溝の半径方向溝を介して高圧流体側に連通されることを特徴としている。
第19の特徴により、第17の特徴の効果に加えて、環状体から成る摺動部品の摺動面に、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、共通の半径方向溝の数を1つとすることができるため流体の漏れ量を最小にすることができる。
また、本発明の摺動部品は、第20に、第17の特徴において、逆レイリーステップ機構が径方向に複数設けられることを特徴としている。
第20の特徴により、段階的に負圧が発生され、より漏れを防止できる構造となっているため、高圧かつ高速のシールに適している。
【0020】
また、本発明の摺動部品は、第21に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には高圧流体側と直接連通するスパイラルグルーブ、又はディンプルからなる正圧発生機構を、低圧側には逆レイリーステップ機構からなる負圧発生機構を設けるとともに、前記スパイラルグルーブ又はディンプルと逆レイリーステップ機構との間に圧力開放溝を設け、圧力開放溝及び逆レイリーステップ機構は高圧流体側と半径方向溝を介して連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
また、本発明の摺動部品は、第22に、一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面の高圧側には高圧流体側と直接連通するスパイラルグルーブ又はディンプルからなる正圧発生機構を、低圧側には逆スパイラルグルーブからなる負圧発生機構を設けるとともに、前記高圧側のスパイラルグルーブ又はディンプルと低圧側の逆スパイラルグルーブとの間に圧力開放溝を設け、前記低圧側の逆スパイラルグルーブは圧力開放溝及び半径方向溝を介して高圧流体側と連通し、低圧流体側とはシール面により隔離されていることを特徴としている。
第21及び第22の特徴により、第12ないし第16の特徴の効果に加えて、正圧発生機構をスパイラルグルーブ、又はディンプルから、さらに、負圧発生機構を逆レイリーステップ機構、又は逆スパイラルグルーブから形成することができる。
【0021】
また、本発明の摺動部品は、第23に、第3〜22のいずれかの特徴において、内周側のシール面の幅が変更可能であることを特徴としている。
第23の特徴により、被密封流体の圧力が高い場合など、漏れの可能性が大きい場合には、内周側のシール面の幅を広くすることで漏れ量を低減させることができる。
また、本発明の摺動部品は、第24に、第1〜23のいずれかの特徴において、半径方向溝を、負圧発生機構に連通する内周側から外周側に向けて相手摺動面の回転方向に向かって傾斜する形状とすることを特徴としている。
第24の特徴により、半径方向溝に逆スパイラルグルーブと同様の負圧効果が生じ、高圧側から漏れてくる流体を吸い込み、正の半径方向圧力勾配が緩和された状態において高圧流体側に押し戻す作用をすることから、半径方向溝からの漏れを減少することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)上記第1〜第6の特徴により、静止時には漏れず、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面の低圧側(内周側)の圧力勾配∂p/∂rを負とすることができ、その結果、数式1においてQを負とすることができる。すなわち、摺動面の低圧側から高圧流体側に向けてポンピング作用が生じることから、漏れ量を極めて小さくできる。さらに、第3及び第5の特徴により、同一摺動面にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構の両方を設ける場合に比べてスペースがあるため摺動面における両機構の配置がし易くなり、加工時間の短縮を図ることができる。
また、上記第4の特徴により、潤滑に用いられる流体が回転による遠心力の影響を受け難く、摺動面間に適度に流体を存在させることが出来るため、よりよい流体潤滑状態を得ることが出来る。
(2)上記第7の特徴により、上記(1)の効果に加えて、摺動部品の摺動面に、容易に正圧発生機構及び負圧発生機構を設けることができる。
(3)上記第8の特徴により、上記(2)の効果に加えて、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、半径方向溝の数を低減することができるため流体の漏れ量を少なくすることができる。
(4)上記第9の特徴により、上記(2)の効果に加えて、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、共通の半径方向溝の数を1つとすることができるため流体の漏れ量を最小にすることができる。
(5)上記第10の特徴により、上記(2)の効果に加えて、段階的に負圧が発生され、より漏れを防止できる構造となっているため、高圧かつ高速のシールに適している。
(6)上記第11の特徴により、上記(2)の効果に加えて、正圧発生機構をスパイラルグルーブ、又はディンプルから形成することができる。
【0023】
(7)上記第12乃至第16の特徴により、上記(2)の効果に加えて、高圧側の正圧発生機構で発生した動圧を高圧側流体の圧力まで開放し、流体が低圧側の負圧発生機構に流入することを防止し、負圧発生機構の負圧発生能力が弱まることを防止できる。
さらに、上記第13及び16の特徴により、同一摺動面にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構の両方を設ける場合に比べてスペースがあるため摺動面における両機構の配置がし易くなり、加工時間の短縮を図ることができる。
さらに、上記第14の特徴により、潤滑に用いられる流体が回転による遠心力の影響を受け難く、摺動面間に適度に流体を存在させることが出来るため、よりよい流体潤滑状態を得ることが出来る。
(8)第17の特徴により、上記(6)の効果に加えて、摺動部品の摺動面に、容易に正圧発生機構及び負圧発生機構を設けることができる。
(9)上記第18の特徴により、上記(7)の効果に加えて、環状体から成る摺動部品の摺動面に、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、半径方向溝の数を低減することができるため流体の漏れ量を少なくすることができる。
(10)上記第19の特徴により、上記(6)の効果に加えて、効率的にレイリーステップ機構及び逆レイリーステップ機構を配設することができるとともに、共通の半径方向溝の数を1つとすることができるため流体の漏れ量を最小にすることができる。
(11)上記第20の特徴により、上記(6)の効果に加えて、段階的に負圧が発生され、より漏れを防止できる構造となっているため、高圧かつ高速のシールに適している。
(12)上記第21または22の特徴により、上記(6)の効果に加えて、正圧発生機構をスパイラルグルーブ、又はディンプルから、さらに、負圧発生機構を逆レイリーステップ機構、又は逆スパイラルグルーブから形成することができる。
(13)上記第23の特徴により、被密封流体の圧力が高い場合など、漏れの可能性が大きい場合には、内周側のシール面の幅を広くすることで漏れ量を低減させることができる。
(14)上記第24の特徴により、半径方向溝に逆スパイラルグルーブと同様の負圧効果が生じ、高圧側から漏れてくる流体を吸い込み、正の半径方向圧力勾配が緩和された状態において高圧流体側に押し戻す作用をすることから、半径方向溝からの漏れを減少することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る摺動部品を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0026】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る摺動部品1の摺動面2を説明するためのものであって、(a)は摺動面2の平面図であり、(b)は摺動面2の一部を拡大して示した斜視図である。
【0027】
図1において、摺動部品1は環状体を成しており、通常、摺動部品1の摺動面2の内外周の一方側に高圧の被密封流体が存在し、また、他方側は大気である。
そして、この被密封流体を摺動部品1を用いて効果的にシールすることができる。例えば、この摺動部品1をメカニカルシール装置における一対の回転用密封環及び固定用密封環のいずれかに用いる。回転用密封環の摺動面と、これに対向する固定用密封環の摺動面とを密接させて摺動面の内外周のいずれか一方に存在する被密封流体をシールする。又、円筒状摺動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸と摺動する軸受の摺動部品として利用することも可能である。
図1においては、説明の都合上、外周側に高圧の被密封流体が存在する場合について説明する。
【0028】
図1において、環状体の摺動部品1と相対する相手側摺動部品の回転方向は反時計方向とする。摺動部品1が時計方向に回転するとしても同じである。
摺動部品1の摺動面2には、外周側にレイリーステップ機構、変形レイリーステップ機構、スパイラルグルーブまたはディンプル等の正圧発生溝からなる正圧発生機構3が設けられ、内周側に逆レイリーステップ機構、変形逆レイリーステップ機構または逆スパイラルグルーブ等の負圧発生溝からなる負圧発生機構4が設けられる。
なお、レイリーステップ機構、変形レイリーステップ機構、スパイラルグルーブまたはディンプル等の正圧発生溝からなる正圧発生機構3、逆レイリーステップ機構、変形逆レイリーステップ機構または逆スパイラルグルーブ等の負圧発生溝からなる負圧発生機構4については、後で説明する。
図1では、正圧発生機構3としてレイリーステップ機構を、また、負圧発生機構4として逆レイリーステップ機構をそれぞれ一例として説明する。
レイリーステップ機構3及び逆レイリーステップ機構4は円周方向に平行して対をなすように複数設けられるとともに、上流側からみて、n番目のレイリーステップ機構3(n)のグルーブ部5の上流端とn−1番目の逆レイリーステップ機構4(n−1)のグルーブ部6の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部5、6は高圧流体側に直接連通した共通の半径方向溝7を介して高圧流体側に連通される。また、レイリーステップ機構3のグルーブ部5、及び、逆レイリーステップ機構4のグルーブ部6は、低圧流体側とは内周側のシール面8により隔離されている。すなわち、半径方向溝7は、高圧流体側には連通しているが、低圧流体側に非連通となっている。
【0029】
図2は、
図1の変形例を示す図であって、
図2において
図1と同じ符号は
図1と同じ部材を示しており、詳しい説明は省略する。
図2においては、両グルーブ部5、6を高圧流体側に連通させる手段が
図1と相違しており、連通手段50は、摺動面2により高圧流体側とは非連通とされている半径方向溝51と連通孔52より構成されている。すなわち、
図2の半径方向溝51は、
図1の半径方向溝7のように高圧流体側と直接連通しておらず、半径方向溝51自体は摺動面2により高圧流体側と非連通に形成されており、半径方向溝51と高圧流体側とを結ぶ連通孔52により両グルーブ部5、6が高圧流体側に連通されるものである。、連通孔52は、
図2(b)に示すように、半径方向溝51から略直角に曲げられた状態で摺動部品1の外周側に位置する高圧流体側に連通されるようになっているが、これに限らず、斜め外方に向けて設けられてもよい。また、高圧流体側が摺動部品1の内周側に位置する場合は、斜め内方に向けて形成されることが考えられる。
【0030】
ここで、本発明における「正圧発生機構」及び「負圧発生機構」について説明する。
図3は、レイリーステップ機構などの正圧発生溝からなる正圧発生機構及び逆レイリーステップ機構などの負圧発生溝からなる負圧発生機構を説明するためのものであって、(a)はレイリーステップ機構を、(b)は逆レイリーステップ機構を、(c)(e)変形レイリーステップ機構を、また、(d)(f)は変形逆レイリーステップ機構を示したものである。
図3(a)において、矢印で示すように、摺動部品1は時計方向に、相対する摺動部品10は反時計方向に回転移動する。摺動部品1の摺動面2には、相対的移動方向と垂直かつ上流側に面してレイリーステップ9が形成され、該レイリーステップ9の上流側にはグルーブ部5が形成されている。相対する摺動部品10の摺動面は平坦である。
摺動部品1及び10が矢印で示す方向に相対移動すると、両摺動部品1及び10の摺動面間に介在する流体が、その粘性によって、摺動部品1または10の移動方向に追随移動しようとするため、その際、レイリーステップ9の存在によって破線で示すような動圧(正圧)を発生する。
【0031】
図3(b)においても、矢印で示すように、摺動部品1は時計方向に、相対する摺動部品10は反時計方向に回転移動するが、摺動部品1の摺動面2には、相対的移動方向と垂直かつ下流側に面して逆レイリーステップ11が形成され、該逆レイリーステップ11の下流側にはグルーブ部6が形成されている。相対する摺動部品10の摺動面は平坦である。
摺動部品1及び10が矢印で示す方向に相対移動すると、両摺動部品1及び10の摺動面間に介在する流体が、その粘性によって、摺動部品1または10の移動方向に追随移動しようとするため、その際、逆レイリーステップ11の存在によって破線で示すような動圧(負圧)を発生する。
【0032】
図3(c)は、
図3(a)のレイリーステップ9を直線的な傾斜面9−1に形状変更したものであり、また、
図3(e)は、
図3(a)のレイリーステップ9を曲線的な傾斜面9−2に形状変更したものである。
図3(c)及び(e)の構成でも、
図3(a)とほぼ同様の正圧が発生される。本発明においては、
図3(c)及び(e)の機構を変形レイリーステップ機構と呼ぶ。
図3(d)は、
図3(b)の逆レイリーステップ11を直線的な傾斜面11−1に形状変更したものであり、また、
図3(f)は、
図3(b)の逆レイリーステップ11を曲線的な傾斜面11−2に形状変更したものである。
図3(d)及び(f)の構成でも、
図3(b)とほぼ同様の負圧が発生される。本発明においては、
図3(d)及び(f)の機構を逆変形レイリーステップ機構と呼ぶ。
【0033】
図4は、スパイラルグルーブ及びディンプルからなる正圧発生機構、並びに、逆スパイラルグルーブからなる負圧発生機構を説明するためのものであって、(a)はスパイラルグルーブの場合を、(b)はディンプルの場合を、(c)は逆スパイラルグルーブの場合を、示したものである。
図4(a)の正圧発生機構であるスパイラルグルーブ12は摺動部品1の高圧側の摺動面に高圧流体側と直接連通するようにして全周にわたって設けられる。スパイラルグルーブ12は相手側摺動面との相対的回転運動により、正圧を発生する。
図4(b)の正圧発生機構であるディンプル13は摺動部品1の高圧側の摺動面に高圧流体側と直接連通することなく全周にわたって設けられる。ディンプル13は相手側摺動面との相対的回転運動により、正圧を発生する。
図4(c)の負圧発生機構である逆スパイラルグルーブ14は、低圧流体側と直接連通することなく、摺動部品1の摺動面全周にわたって設けられる。また逆スパイラルグルーブ14の高圧側端部は圧力開放溝15に連通し、圧力開放溝15の一部が半径方向溝7を介して高圧流体側に接続される。低圧流体側とは直接連通することなくシール面により隔離されている。逆スパイラルグルーブ14は相手側摺動面との相対的回転運動により、負圧を発生して高圧側流体から漏れてくる流体を吸い込み、高圧流体側に接続された圧力開放溝を通して高圧流体側に押し戻す作用をする。
【0034】
図1及び2に示した摺動部品1の摺動面2には、レイリーステップ機構3及び逆レイリーステップ機構4が円周方向に平行して対をなすように8枚設けられている。レイリーステップ機構3及び逆レイリーステップ機構4の枚数及び組み合わせについては、種々のバリエーションがあり、後に、好ましい例を説明する。
グルーブ部5、6、半径方向溝7、51の深さ及び幅、連通孔52の径、あるいは内周側のシール面8の幅については、摺動部品1の径、摺動面幅及び相対移動速度、並びに、密封及び潤滑の条件等に応じて適宜決定される性質のものである。
一例として、摺動部品1の径が約20mm、摺動面幅が約2mmの場合、グルーブ部5及び6の幅は0.4〜0.6mm、深さは数μmであり、内周側のシール面8の幅は0.2〜0.4mm、半径方向溝7の幅(円周方向の角度)は約6°、深さは数十μmである。
【0035】
図5は、本実施の形態1に係る摺動部品の摺動面における圧力分布の数値解析結果を示したもので、(a)は摺動面の要部斜視図であり、(b)はその圧力分布図である。
図5(b)に示すように、摺動面2に正圧が発生するが、内周側に逆レイリーステップ機構4を設置したため、逆レイリーステップ機構4により負圧が発生する結果、キャビテーションが発生し、キャビテーション内部圧力は、大気圧より低く負圧となるため、低圧側端部において圧力勾配∂p/∂rが負となり、流体は高圧側から低圧側に移動し、その結果、摺動面の内周側において吸い込み(ポンピング)が発生する。この現象をさらに詳細に説明すると、低圧側シール面8において、低圧側流体圧力(大気圧)よりも、逆レイリーステップ機構4内部の圧力が低くなる結果、流体は定圧流体側から低圧側シール面8を介して、逆レイリーステップ機構4へ流入する結果、摺動面の内周側において吸い込み(ポンピング)が発生する。
【0036】
ここで、摺動面の内周側に逆レイリーステップ機構4を設置したことによる効果をさらに明らかにするため、逆レイリーステップ機構4を設置しない摺動面の一例(比較例)を
図6に示す。
図6は、比較例の摺動面を説明するためのものであって、(a)は摺動面の平面図であり、(b)は摺動面の一部を拡大して示した斜視図である。
比較例では、摺動面の外周側にレイリーステップ機構3のみが設けられている。
相手側摺動面との相対移動により、レイリーステップ機構3により動圧(正圧)が発生する
【0037】
図7は、比較例の摺動部品における圧力分布の数値解析結果を示したもので、(a)は摺動面の要部斜視図であり、(b)はその圧力分布図である。
図7(b)に示すように、比較例の場合、レイリーステップ9により摺動面に正圧が発生し、低圧流体側より摺動面内の流体圧力が高くなる。すなわち、摺動面の内周端部において、圧力勾配∂p/∂rが正となり、流体は摺動面の高圧側から低圧側に移動するため、その結果、高圧流体側から低圧流体側への漏れが発生する。
【0038】
図8は、本発明の実施の形態1における正圧発生機構であるレイリーステップ機構3及び負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4の枚数及び組み合わせについて種々の例を示したものである。
図8(a)は、レイリーステップ機構3が8枚で逆レイリーステップ機構4も8枚であり、
図8(b)は、レイリーステップ機構3が3枚で逆レイリーステップ機構4も3枚である。
図8(c)は、レイリーステップ機構3が3枚で逆レイリーステップ機構4も3枚であって、内周側のシール面8の幅wが2倍であり、
図8(d)は、レイリーステップ機構3が3枚で逆レイリーステップ機構4が1枚であって、内周側のシール面8の幅wが2倍である。
【0039】
図9は、本発明の実施の形態1に係る正圧発生機構であるスパイラルグルーブ12及び負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4の組み合わせについての例を示したものである。
図9(a)では、外周側の高圧側に直接高圧流体に連通してスパイラルグルーブ12が、半径方向溝7の部分を除き、全周にわたって設けられ、内周側の低圧側に逆レイリーステップ機構4が1枚設けられている。
図9(b)では、外周側の高圧側に直接高圧流体に連通してスパイラルグルーブ12が、半径方向溝7の部分を除き、全周にわたって設けられ、内周側の低圧側に逆レイリーステップ機構4が4枚設けられている。
【0040】
図10は、本発明の実施の形態1に係る正圧発生機構であるレイリーステップ機構及び負圧発生機構である逆レイリーステップ機構の組み合わせにおいて、逆レイリーステップ機構が径方向に複数設けられた例を示したものである。
摺動部品1の摺動面2には、外周側にレイリーステップ機構等の正圧発生溝からなる正圧発生機構3が設けられ、内周側に逆レイリーステップ機構等の負圧発生溝からなる負圧発生機構4が設けられる。
図10では、外周側のレイリーステップ機構3が8枚で、内周側の逆レイリーステップ機構4は径方向に3列設けられ、半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1が4枚、半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2が2枚、半径方向内側の逆レイリーステップ機構4−3が1枚であり、半径方向溝7が円周方向に等間隔に8個設けられている。
本例の場合、逆レイリーステップ機構4が半径方向に複数設けられているため、段階的に負圧が発生され、より漏れを防止できる構造となっている。したがって、高圧かつ高速のシールに適している。
【0041】
図11は、本発明の実施の形態1において、正圧発生機構を一方の摺動面に、負圧発生機構を他方摺動面に設けた例を示したものである。
図1において、一対の摺動部品1−1及び1−2のうち、一方の摺動部品1−1の摺動面2−1には正圧発生機構であるレイリーステップ機構3が設けられ、他方の摺動部品1−2の摺動面2−2には負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4が設けられている。
このように、正圧発生機構であるレイリーステップ機構3及び負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4を、別々の摺動面にそれぞれ設けた場合においても、正圧発生機構であるレイリーステップ機構3及び負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4を同じ摺動面に設けた場合同様、静止時には漏れず、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面の低圧側端部の圧力勾配∂p/∂rを負とすることができ、摺動面の低圧側から高圧流体側に向けてポンピング作用が生じ、漏れ量を極めて小さくできるという効果を奏することができる。また、これに加えて、同一摺動面にレイリーステップ機構3及び逆レイリーステップ機構4の両方を設ける場合に比べてスペースがあるため摺動面における両機構の配置がし易くなり、加工時間の短縮を図ることができる。
なお、一対の摺動部品の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側である場合には、一対の摺動部品1−1及び1−2のうち、静止側に摺動面を流体潤滑状態で作動させる正圧発生機構を設けることで、潤滑に用いられる流体が回転による遠心力の影響を受け難く、摺動面間に適度に流体を存在させることが出来るため、よりよい流体潤滑状態を得ることが出来る。
【0042】
図12は、
図8に示した本発明の実施の形態における例(a)〜(d)と
図6に示した比較例について、圧力と漏れ量との関係を示した図である。
比較例の漏れ量は飛び抜けて多く、
図8に示した実施の形態における例(a)〜(d)の漏れ量が少ないことから、逆レイリーステップ機構が漏れ量の減少に寄与していることが分かる。
図8に示した実施の形態における例(a)〜(d)においては、例(d)のレイリーステップ機構が3枚で逆レイリーステップ機構が1枚であって、内周側のシール面の幅wが2倍の場合が漏れ量が一番少ない。また、例(c)のレイリーステップ機構が3枚で逆レイリーステップ機構も3枚であって、内周側のシール面の幅wが2倍の場合、圧力が高くなっても漏れ量が少ないのが分かる。例(a)のレイリーステップ機構が8枚で逆レイリーステップ機構も8枚の場合、圧力が高くなると漏れ量が急激に増加している。以上のことから、半径方向溝7の数が少ない(逆レイリーステップ機構の枚数が少ない)ほど、また、内周側のシール面の幅wが大きくなるほど漏れ量が少ないことが分かる。
【0043】
〔実施の形態2〕
図13は、本発明の実施の形態2に係る摺動部品1の摺動面2を説明するためのものであって、(a)は摺動面2の平面図であり、(b)は摺動面2の一部を拡大して示した斜視図である。
なお、
図13において、実施の形態1の符号と同じ符号は実施の形態1と同じ部材を示しており、詳しい説明は省略する。また、
図13において、環状体の摺動部品1と相対する相手側摺動部品の回転方向は反時計方向とする。摺動部品1が時計方向に回転するとしても同じである。
【0044】
摺動部品1の摺動面2には、外周側にレイリーステップ機構、変形レイリーステップ機構、スパイラルグルーブまたはディンプル等からなる正圧発生機構3が設けられ、内周側に逆レイリーステップ機構、変形逆レイリーステップ機構または逆スパイラルグルーブ等からなる負圧発生機構4が設けられる。
図13では、正圧発生機構3としてレイリーステップ機構を、また、負圧発生機構4として逆レイリーステップ機構をそれぞれ一例として説明する。
前記レイリーステップ機構3と逆レイリーステップ機構4との間には、圧力開放溝15が設けられている。圧力開放溝15は、高圧側の正圧発生機構、例えば、レイリーステップ機構3で発生した動圧(正圧)を高圧側流体の圧力まで開放することで、流体が低圧側の負圧発生機構、たとえば、逆レイリーステップ機構4に流入し、負圧発生機構の負圧発生能力が弱まることを防止するためのものであり、高圧側の正圧発生機構で発生した圧力により低圧側に流入しようとする流体を圧力開放溝15に導き、高圧流体側に逃す役割を果たすものである。
【0045】
圧力開放溝15は、円周溝から形成され、レイリーステップ機構3と逆レイリーステップ機構4とは所定の摺動面幅を介してこれらの間に配置される。円周溝の深さは、例えば、半径方向溝7の深さと同じ程度に深いもので、またその幅は高圧を開放するために十分なものであり、その一部が高圧流体側に接続される。
図13では、レイリーステップ機構3、逆レイリーステップ機構4及び圧力開放溝15は、それぞれ高圧流体側と半径方向溝7を介して連通し、低圧流体側とはシール面8により隔離されている。すなわち、半径方向溝7はレイリーステップ機構3、逆レイリーステップ機構4及び圧力開放溝15を高圧流体側と連通させるが、低圧流体側とは非連通としている。
また、
図13では、レイリーステップ機構3及び逆レイリーステップ機構4は、圧力開放溝15を挟んで円周方向に平行して対をなすように複数設けられるとともに、上流側からみて、n番目のレイリーステップ機構3(n)のグルーブ部5の上流端とn−1番目の逆レイリーステップ機構4(n−1)のグルーブ部6の下流端とは円周方向位置においてほぼ一致するように形成され、これら両グルーブ部5、6及び圧力開放溝15は共通の半径方向溝7を介して高圧流体側に連通される。
【0046】
図14は、
図13の変形例を示す図であって、
図14において
図13と同じ符号は
図13と同じ部材を示しており、詳しい説明は省略する。
図14においては、両グルーブ部5、6を高圧流体側に連通させる手段が
図13と相違しており、連通手段50は、摺動面2により高圧流体側とは非連通とされている半径方向溝51と連通孔52より構成されている。すなわち、
図14の半径方向溝51は、
図13の半径方向溝7のように高圧流体側と直接連通しておらず、半径方向溝51自体は摺動面2により高圧流体側と非連通に形成されており、半径方向溝51と高圧流体側とを結ぶ連通孔52により両グルーブ部5、6が高圧流体側に連通されるものである。、連通孔52は、
図14(b)に示すように、半径方向溝51から略直角に曲げられた状態で摺動部品1の外周側に位置する高圧流体側に連通されるようになっているが、これに限らず、斜め外方に向けて設けられてもよい。また、高圧流体側が摺動部品1の内周側に位置する場合は、斜め内方に向けて形成されることが考えられる。
【0047】
図15は、本発明の実施の形態2に係る正圧発生機構であるレイリーステップ機構3及びスパイラルグルーブ12並びに負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4及び逆スパイラルグルーブ14の組み合わせについて種々の例を示したものである。
なお、
図15において、相手摺動面回転方向は、
図13と同じ反時計方向とする。
図15(a)では、摺動部品1の外周側の高圧側にレイリーステップ機構3が8枚で、内周側の低圧側に逆レイリーステップ機構4が1枚配置され、これらの間に、圧力開放溝15が配置されている。
図15(b)では、摺動部品1の外周側の高圧側にレイリーステップ機構3が8枚で、内周側の低圧側に逆レイリーステップ機構4が8枚配置され、これらの間に、圧力開放溝15が配置されている。
図15(c)では、摺動部品1の外周側の高圧側にレイリーステップ機構3が8枚配置され、内周側の低圧側に逆スパイラルグルーブ14が全周にわたって設けられ、これらの間に、圧力開放溝15が配置されている。
【0048】
図15(d)では、摺動部品1の外周側の高圧側にスパイラルグルーブ12が全周にわたって設けられ、内周側の低圧側に逆レイリーステップ機構4が1枚配置され、これらの間に、圧力開放溝15が配置されている。
図15(e)では、摺動部品1の外周側の高圧側にスパイラルグルーブ12が全周にわたって設けられ、内周側の低圧側に逆レイリーステップ機構4が8枚配置され、これらの間に、圧力開放溝15が配置されている。
図15(f)では、摺動部品1の外周側の高圧側にスパイラルグルーブ12が全周にわたって設けられ、内周側の低圧側に逆スパイラルグルーブ14が全周にわたって設けられ、これらの間に、圧力開放溝15が配置されている。この場合、圧力開放溝15は、逆スパイラルグルーブ14の高圧流体側への圧力開放の役割を担っている。
図15の(a)(b)(d)(e)の中では、逆レイリーステップ機構4の枚数が少ない(a)(d)において漏れ量が少ない。
【0049】
図16は、本発明の実施の形態2において、正圧発生機構を一方の摺動面に、負圧発生機構を他方摺動面に設けた例を示したものである。
図16において、一対の摺動部品1−1及び1−2のうち、一方の摺動部品1−1の摺動面2−1には正圧発生機構であるレイリーステップ機構3が設けられ、他方の摺動部品1−2の摺動面2−2には負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4が設けられている。
このように、正圧発生機構であるレイリーステップ機構3及び負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4を、別々の摺動面にそれぞれ設けた場合においても、正圧発生機構であるレイリーステップ機構3及び負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4を同じ摺動面に設けた場合同様、静止時には漏れず、相対的摺動初期を含め、常時、摺動面の低圧側端部の圧力勾配∂p/∂rを負とすることができ、摺動面の低圧側から高圧流体側に向けてポンピング作用が生じ、漏れ量を極めて小さくできるという効果を奏することができる。また、これに加えて、同一摺動面にレイリーステップ機構3及び逆レイリーステップ機構4の両方を設ける場合に比べてスペースがあるため摺動面における両機構の配置がし易くなり、加工時間の短縮を図ることができる。
なお、一対の摺動部品の外周側が高圧流体側、内周側が低圧流体側である場合には、一対の摺動部品1−1及び1−2のうち、静止側に摺動面を流体潤滑状態で作動させる正圧発生機構を設けることで、潤滑に用いられる流体が回転による遠心力の影響を受け難く、摺動面間に適度に流体を存在させることが出来るため、よりよい流体潤滑状態を得ることが出来る。
【0050】
図17は、本発明の実施の形態2において、負圧発生機構である逆レイリーステップ機構が径方向に複数設けられた例を示したものである。
図17において、摺動部品1の摺動面2には、外周側にレイリーステップ機構等の正圧発生溝からなる正圧発生機構3が設けられ、内周側に逆レイリーステップ機構等の負圧発生溝からなる負圧発生機構4が設けられる。前記レイリーステップ機構3と逆レイリーステップ機構4との間には、圧力開放溝15が設けられている。圧力開放溝15は、高圧側の正圧発生機構、例えば、レイリーステップ機構3で発生した動圧(正圧)を高圧側流体の圧力まで開放することで、流体が低圧側の負圧発生機構、たとえば、逆レイリーステップ機構4に流入し、負圧発生機構の負圧発生能力が弱まることを防止するためのものであり、高圧側の正圧発生機構で発生した圧力により低圧側に流入しようとする流体を圧力開放溝15に導き、高圧流体側に逃す役割を果たすものである。
図17では、外周側のレイリーステップ機構3が8枚で、内周側の逆レイリーステップ機構4は径方向に3列設けられ、半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1が4枚、半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2が2枚、半径方向内側の逆レイリーステップ機構4−3が1枚であり、半径方向溝7が円周方向に等間隔に8個設けられている。
本例の場合、逆レイリーステップ機構4が半径方向に複数設けられているため、段階的に負圧が発生され、より漏れを防止できる構造となっている。したがって、高圧かつ高速のシールに適している。
【0051】
図18は、
図17の変形例を示すもので、複数の逆レイリーステップ機構の間に圧力開放溝を設けたものである。
図18において、摺動部品1の摺動面2には、外周側にレイリーステップ機構等の正圧発生溝からなる正圧発生機構3が設けられ、内周側に逆レイリーステップ機構等の負圧発生溝からなる負圧発生機構4が設けられる。
図18では、外周側のレイリーステップ機構3が8枚で、内周側の逆レイリーステップ機構4は径方向に3列設けられ、半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1が4枚、半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2が2枚、半径方向内側の逆レイリーステップ機構4−3が1枚であり、半径方向溝7が円周方向に等間隔に8個設けられている。
前記レイリーステップ機構3と半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1との間、半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1と半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2との間、及び半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2と半径方向内側の逆レイリーステップ機構4−3との間には、それぞれ圧力開放溝15が設けられている。
このように、負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4が径方向に複数設けられ、これらの径方向の間にそれぞれ圧力開放溝15が設けられているため、段階的に負圧が発生され、より漏れを防止できるという効果に加えて、逆レイリーステップ機構4間の流体の行き来が遮断され、漏れが生じにくくなるという効果を奏するものである。
【0052】
図19は、本発明の実施の形態2において、正圧発生機構であるレイリーステップ機構と負圧発生機構である逆レイリーステップ機構とを円周方向にずらして配置した例を示したものである。
図19において、摺動部品1の摺動面2には、外周側にレイリーステップ機構等からなる正圧発生機構3が設けられ、内周側に逆レイリーステップ機構等からなる負圧発生機構4が設けられる。
図19では、外周側のレイリーステップ機構3が8枚で、内周側の逆レイリーステップ機構4が4枚であり、各レイリーステップ機構3が連通する8個の半径方向溝8の円周方向の中間位置に、逆レイリーステップ機構4の連通する4個の半径方向溝53が設けられる構成となっており、正圧発生機構であるレイリーステップ機構3と負圧発生機構である逆レイリーステップ機構4とが円周方向にずらされて配置されている。また、レイリーステップ機構3と逆レイリーステップ機構4との間には、圧力開放溝15が設けられ、この圧力開放溝15を介して、8個の半径方向溝8と4個の半径方向溝53が連結されている。半径方向溝53は、内周側に配置され、直接高圧流体側と連通することはなく、圧力開放溝15及び半径方向溝8を介して高圧流体側と連通するようになっている。このように、逆レイリーステップ機構4と連通する半径方向溝53は、直接高圧流体側に連通することなく、狭い圧力開放溝15を介して高圧流体側に連通することから、半径方向溝53の圧力が低減し、半径方向溝53から定圧流体側への漏れが減少する。
【0053】
図20は、
図19において、負圧発生機構である逆レイリーステップ機構が径方向に複数設けられた例を示したものである。
図20において、摺動部品1の摺動面2には、外周側にレイリーステップ機構等の正圧発生溝からなる正圧発生機構3が設けられ、内周側に逆レイリーステップ機構等の負圧発生溝からなる負圧発生機構4が設けられる。
図20では、外周側のレイリーステップ機構3が8枚で、内周側の逆レイリーステップ機構4は径方向に3列設けられ、半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1が4枚、半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2が2枚、半径方向内側の逆レイリーステップ機構4−3が1枚設けられている。
前記レイリーステップ機構3と半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1との間、半径方向外側の逆レイリーステップ機構4−1と半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2との間、及び半径方向中間の逆レイリーステップ機構4−2と半径方向内側の逆レイリーステップ機構4−3との間には、それぞれ圧力開放溝15が設けられている。
【0054】
外周側の8枚のレイリーステップ機構3は高圧流体側と直接連通する8個の半径方向溝7とそれぞれ連通され、半径方向外側の4枚の逆レイリーステップ機構4−1は同じ円周状に設けられた4個の半径方向溝54とそれぞれ連通され、半径方向中間の2枚の逆レイリーステップ機構4−2は同じ円周状に設けられた2個の半径方向溝55とそれぞれ連通され、半径方向内側の1枚の逆レイリーステップ機構4−3は同じ円周状に設けられた1個の半径方向溝55と連通されており、各列の半径方向溝7、54、55、56を円周方向の位置がずれて配置されている。このため、半径方向外側の4枚の逆レイリーステップ機構4−1は同じ円周状に設けられた4個の半径方向溝54、圧力開放溝15及び半径方向溝7を介して高圧流体側と連通され、半径方向中間の2枚の逆レイリーステップ機構4−2は同じ円周状に設けられた2個の半径方向溝55、圧力開放溝15、半径方向溝54及び半径方向溝7を介して高圧流体側と連通され、半径方向内側の1枚の逆レイリーステップ機構4−3は同じ円周状に設けられた1個の半径方向溝55、圧力開放溝15、半径方向溝55、54及び半径方向溝7を介して高圧流体側と連通される。
このように、各列に半径方向溝7、54、55、56が設けられ、かつ、各列の半径方向溝7、54、55、56が円周方向にずれて配置されていることから、高圧流体が半径方向溝を介して摺動面の内周側近傍まで直接連通することがないので、高圧流体側から低圧流体側への漏れを一層防止することができる。
【0055】
〔実施の形態3〕
図21は、本発明の実施の形態3に係る摺動部品1の摺動面2を説明するためのものであって、(a)は摺動面2の平面図であり、(b)は摺動面2の一部を拡大して示した斜視図である。
なお、
図21において、実施の形態1及び2の符号と同じ符号は実施の形態1及び2と同じ部材を示しており、詳しい説明は省略する。また、
図21において、環状体の摺動部品1と相対する相手側摺動部品の回転方向は反時計方向とする。摺動部品1が時計方向に回転するとしても同じである。
【0056】
上記の実施の形態1において、逆レイリーステップ機構4の枚数が少ない(半径方向溝7の数が少ない)ほど、また、内周側のシール面8の幅wが大きくなるほど漏れ量が少ないことは、実施の形態1などにに記載したとおりである。しかし、半径方向溝7の数を零にすることはできないことであり、また、内周側のシール面8の幅wについても一定の限度があることはいうまでもないことである。
実施の形態3では、半径方向溝7からの漏れを少なくするため、実施の形態1及び2において半径方向溝7を円周方向(接線方向)に対し90°方向に配置していたのに対し、
図21に示すように、相手摺動面の回転方向に向かって傾斜させ、相手摺動面の回転方向に向かって放射状に拡がる方向に配置したものである。
【0057】
図21において、摺動部品1の摺動面2には、外周側に正圧発生機構としてのレイリーステップ機構3が設けられ、内周側に負圧発生機構としての4逆レイリーステップ機構が設けられ、レイリーステップ機構3と逆レイリーステップ機構4との間には、圧力開放溝15が設けられている。
レイリーステップ機構3のグルーブ部5及び逆レイリーステップ機構4のグルーブ部6は共通の半径方向溝7を介して高圧流体側に連通されている。
半径方向溝7は、その内周側から外周側に向けて相手摺動面の回転方向に向かって傾斜する形状とされており、半径方向溝7が円周方向に複数配置される場合、相手摺動面の回転方向に向かって放射状に拡がる方向に配置されたものとなる。
図21に示した半径方向溝7の例では、逆レイリーステップ機構4のグルーブ部6と連通する内周側から外周側に位置する圧力開放溝15に向けて相手摺動面の回転方向に向かって傾斜する形状をしており、半径方向の最も外周側に位置するレイリーステップ機構3の部分では、円周方向(接線方向)に対し90°方向に向かう形状をしている。このため、逆レイリーステップ機構4のグルーブ部6から半径方向溝7に流れ込む流体は、矢印16で示す方向に排出される。
なお、半径方向溝7を、逆レイリーステップ機構4のグルーブ部6と連通する内周側から外周側端部まで、相手摺動面の回転方向に向かって一様に傾斜する形状としてもよいことはもちろんであり、要は、内周側から外周側に向けて相手摺動面の回転方向に向かって傾斜する形状とされていればよい。
半径方向溝7の傾斜角度は、大きい程、半径方向溝7における正の半径方向圧力勾配(内周側から外周側に向かって圧力が大となるような圧力勾配)が緩和され、その結果、半径方向溝7からの漏れ量が減少する。
さらに、半径方向溝7の幅を、内周側から外周側に向かうにつれて徐々に拡がるように形成してもよい。
このように、半径方向溝7を相手摺動面の回転方向に向かって放射状に拡がる方向に向けて傾斜して配置することにより、半径方向溝7の内周側がシール面8によって塞がれていることから、半径方向溝7に逆スパイラルグルーブと同様の負圧効果が生じ、高圧側から漏れてくる流体を吸い込み、正の半径方向圧力勾配が緩和された状態において高圧流体側に押し戻す作用をすることから、半径方向溝7からの漏れが減少されるものである。
【0058】
〔実施の形態4〕
図22は、本発明の摺動部品と一対の他方の摺動部品を取り付けたメカニカルシールの断面図である。
メカニカルシール20は、本発明の摺動部品1を固定用密封環21として取り付けたものである。この固定用密封環21はOリング24を介してハウジング30に固着された保持環23に移動自在に取り付けられる。又、この固定用密封環21に対し、摺動面29が研磨されて平面にされた回転用密封環26を対向させる。固定用密封環21は、ばね25により摺動面22を対向する摺動面29に押圧して密接させながら機内側P2と大気側P1との間をシールする。この固定用密封環21の摺動面22には、外周側にレイリーステップ機構、変形レイリーステップ機構、スパイラルグルーブまたはディンプル等からなる正圧発生機構27が設けられ、また、摺動面22の内周側には逆レイリーステップ機構、変形逆レイリーステップ機構または逆スパイラルグルーブ等からなる負圧発生機構28が設けられている。この構成により、静止時には漏れず、外周側の正圧発生機構27により回転初期を含み常時流体潤滑状態で作動するため摩擦係数が低く、かつ、内周側の負圧発生機構28により低圧側から高圧側にポンピングできるため漏れを低減できる効果を奏する。また、正圧発生機構27と負圧発生機構28との間に、上記実施の形態2の圧力開放溝(図示せず)を設けた場合、正圧発生機構27で発生した動圧を高圧側流体の圧力まで開放することで、流体が低圧側の負圧発生機構28に流入することなく、負圧発生機構の負圧発生能力が弱まることを防止できる。
【0059】
〔実施の形態5〕
図23は、本発明の摺動部品と一対の他方の摺動部品を取り付けたスラスト軸受の断面図である。
40はスラスト軸受全体を示すもので、概略、回転軸41に設けられた環状の段凸部42の外周面を取り囲むように配置され、段凸部42外周に対して微小なラジアル方向隙間43を介して対面する内周面を有する円筒状のハウジング44と、このハウジング44の両端から半径方向内方に向かって延びて、段凸部42端面に対してスラスト方向の微小隙間45を介して対向するスラスト受部46、47とから構成されており、ハウジング44とスラスト受部46、47によって軸受本体を構成している。
【0060】
そして、軸受本体のスラスト受部46、47と段凸部42端面とが互いに回転摺動自在に軸方向に接触している。そして、ラジアル方向の微小隙間43およびスラスト方向の微小隙間45に潤滑剤がその表面張力によって保持されている。
さらに、スラスト受部46、47の摺動面の外周側にレイリーステップ機構、変形レイリーステップ機構、スパイラルグルーブまたはディンプル等からなる正圧発生機構48が設けられ、また、摺動面の内周側には逆レイリーステップ機構、変形逆レイリーステップ機構または逆スパイラルグルーブ等からなる負圧発生機構49が設けられている。
この構成により、静止時には漏れず、外周側の正圧発生機構48により回転初期を含み常時流体潤滑状態で作動するため摩擦係数が低く、かつ、内周側の負圧発生機構機構49により低圧側から高圧側にポンピングできるため漏れを低減できる効果を奏する。
また、正圧発生機構48と負圧発生機構49との間に、上記実施の形態2の圧力開放溝(図示せず)を設けた場合、正圧発生機構48で発生した動圧を高圧側流体の圧力まで開放することで、流体が低圧側の負圧発生機構49に流入することなく、負圧発生機構の負圧発生能力が弱まることを防止できる。