特許第5693643号(P5693643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693643
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】非ゼオライト卑金属SCR触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/888 20060101AFI20150312BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150312BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150312BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B01J23/888 AZAB
   B01D53/36 102D
   F01N3/08 B
   F01N3/10 A
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-90540(P2013-90540)
(22)【出願日】2013年4月23日
(62)【分割の表示】特願2010-514137(P2010-514137)の分割
【原出願日】2008年6月25日
(65)【公開番号】特開2013-166149(P2013-166149A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2013年5月22日
(31)【優先権主張番号】0712228.6
(32)【優先日】2007年6月25日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ジリアン、エレーヌ、コリア
(72)【発明者】
【氏名】シルビー、セシル、ラローズ
(72)【発明者】
【氏名】ラジ、ラオ、ラジャラム
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、ウィリアム、プレスト
【審査官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507472(JP,A)
【文献】 特開2008−049290(JP,A)
【文献】 特開2005−238195(JP,A)
【文献】 特開2005−125317(JP,A)
【文献】 特開平11−333294(JP,A)
【文献】 特開平02−056250(JP,A)
【文献】 特開昭56−152742(JP,A)
【文献】 特開昭55−067331(JP,A)
【文献】 特開昭50−090569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/88
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流中の窒素酸化物を窒素に転化するための触媒であって、
非ゼオライト卑金属触媒の存在下で、前記窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることを含んでなり、
前記非ゼオライト卑金属触媒が、
(a)セリウム及びジルコニウムからなる担体材料としての混合酸化物または複合酸化物或いはそれらの混合物上に分散された、鉄及びタングステン、又は
(b)不活性酸化物担体材料上に分散された、単一酸化物としての酸化セリウム及び酸化ジルコニウム、又はこれらの複合酸化物、或いは前記単一酸化物と前記複合酸化物の混合物上に分散された、鉄及びタングステンからなり、
前記触媒中の酸化物としてのセリウム及びジルコニウムの含有量が、CeZr1−X(式中、X=0.1〜0.9)であり、
前記触媒に存在する鉄及びタングステンの合計重量%が、前記触媒の総重量に対して0.5〜20重量%である、触媒。
【請求項2】
前記非ゼオライト卑金属触媒が、(b)からなり、
前記不活性酸化物担体が、アルミナ、チタニア、非ゼオライトシリカ−アルミナ、セリア、ジルコニア及び、それらのいずれか二種以上の、混合物、複合酸化物及び混合酸化物からなる群から選択されてなる、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記非ゼオライト卑金属触媒が、前記鉄及びタングステンを含んでなるものであり、かつ、少なくとも600℃超過の温度で活性化されてなるものである、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記CeZr1−Xの式中、X=0.1〜0.5である、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
請求項1に記載の触媒を含む基材を含む、ガス流中に存在する窒素酸化物を窒素に転化するための製品。
【請求項6】
請求項1に記載の触媒が被覆である、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
請求項1に記載の触媒をと組み合わせて、Fe−W/ZrOを含む第二の触媒組成物を更に含む、請求項5に記載の製品。
【請求項8】
請求項1に記載の触媒を含む第一の区域又は層、及び第二の触媒組成物を含む第二の区域又は層を含む製品であって、第二の区域又は層が第一の区域又は層の上流にある請求項7に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ガス流中に存在する窒素酸化物(NO)を、非ゼオライト、非バナジウム卑金属触媒で、窒素系還元体、例えばアンモニア(NH)、を使用し、窒素に選択的に接触転化する方法に関し、特に本発明は、触媒が、公知の非ゼオライト系、非バナジウム卑金属触媒と比較して、相対的に低い温度で特に活性である、そのような方法に関する。
【0002】
還元体としてNHを使用する選択的接触還元(SCR)系では幾つかの化学反応が起こり、それらの全てが、NOを元素状窒素に還元する望ましい反応を代表している。支配的な反応機構は、式(1)により表される。
4NO+4NH+O → 4N+6HO (1)
【0003】
競合する、酸素との非選択的反応は、二次的放出物を形成するか、またはNHを非生産的に消費することがある。そのような非選択的反応の一つは、式(2)で表されるNHの完全酸化である。
4NH+5NO → 4NO+6HO (2)
【0004】
さらに、NO中に存在するNOとNHの反応は、反応(3)により進行すると考えられる。
3NO+4NH → (7/2)N+6HO (3)
【0005】
さらに、NHとNOとNOの間の反応は、反応(4)により表される。
NO+NO+2NH → 2N+3HO (4)
【0006】
反応(1)、(3)及び(4)の反応速度は、反応温度及び使用する触媒の種類に応じて大きく異なり、反応(4)の速度は、一般的に、反応(1)及び(3)の速度の2〜10倍高い。
【0007】
SCR技術を応用して車両ICエンジン、特にリーンバーンICエンジン、からのNO放出物を処理することは、良く知られている。この目的に開示されている典型的な先行技術のSCR触媒は、TiO上に担持されたV/WOを包含する(国際特許第WO 99/39809号明細書参照)。しかし、用途によっては、バナジウム系触媒の熱的耐久性及び性能は許容できないことがある。
【0008】
内燃機関排ガスに由来するNOを処理するために研究されているSCR触媒の一種は、遷移金属交換されたゼオライトである(国際特許第WO 99/39809号及び米国特許第4,961,917号明細書参照)。しかし、使用の際、特定のアルミノケイ酸塩ゼオライト、例えばZSM-5及びベータゼオライト、には、多くの欠点がある。これらのゼオライトは、高温水熱エージング中の脱アルミニウム化に敏感であり、その結果、特にCu/ベータ及びCu/ZSM-5で酸性度が失われ、ベータ-及びZSM-5系触媒の両方は、炭化水素により影響され、炭化水素が、比較的低温で触媒の表面上に吸着され、触媒系の温度が上昇するにつれて酸化され、大量の熱を発生し、触媒を熱的に損なうことがある。この問題は、冷間始動の際に大量の炭化水素が触媒上に吸着されることがある車両ディーゼル用途で特に顕著であり、ベータ及びZSM-5ゼオライトは、触媒性能を低下させる、炭化水素によるコークス化も受け易い。そのため、我々は、SCR用の遷移金属交換されたゼオライト及びバナジウム系触媒の代替品を見出すための研究を行った。
【0009】
米国特許第5,552,128号明細書は、VIB族金属のオキシ陰イオンで変性したIVB族金属酸化物を含んでなり、さらにIB族、IVA族、VB族、VIIB族及びVIII族からなる群から選択された少なくとも一種の金属及びそれらの混合物を含む、実質的に酸性の固体成分からなる触媒の存在下で、窒素酸化物を還元剤と接触させることにより窒素酸化物を窒素に転化する方法を特許権請求している。この触媒は、水和したIVB族金属の含浸、共沈殿または水熱処理を行った後に、VIB族金属と接触させることにより、製造することができる。好ましい触媒は、実質的に鉄(VIII族)、タングステン(VIB族)及びジルコニウム(IVB族)からなる。ジルコニウム、タングステン及びセリウムからなる触媒 (触媒B) が例示されているが、我々は、請求の際に、日本国公開第6-190276号明細書に基づく審査官による意義に対処するために、セリウム、より一般的には希土類金属、が請求項から脱落し、請求項が、「含んでなる」から「実質的に〜からなる」に制限されたと考える。
【0010】
日本国公開第6-190276号明細書は、比較的低い温度領域でNOを炭化水素で選択的に還元するための触媒を開示しているが、該触媒は、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、酸化カリウム(Ga)または酸化スズ(SnO)上に担持された、塩基性金属(例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ランタンまたは亜鉛)またはその酸化物、及び酸性金属(例えばタングステン、モリブデン、コバルト、鉄、銀またはケイ素) またはその酸化物の両方を含んでなり、これらが、窒素酸化物と、還元剤としての炭化水素と共に、接触することにより、窒素酸化物を選択的還元方法により、窒素に還元する。代表的な例は、酸化タングステンまたは酸化モリブデンと酸化マグネシウムの両方を担持するガンマ酸化アルミニウム、及び酸化タングステンと酸化マグネシウムの両方を担持する酸化ジルコニウムとを包含する。
【0011】
ヨーロッパ特許第1736232号明細書は、活性構成成分として、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び酸化タングステンから選択された二種類以上の酸化物、及び希土類金属または遷移金属(Cu、Co、Ni、Mn、Cr及びVを除く)からなる複合酸化物を含む第一触媒を装填した第一反応単位、及び活性構成成分として、貴金属及びシリカ-アルミナ複合酸化物を含む第二触媒を装填した第二反応単位を含んでなる触媒系を開示している。第一触媒の代表的な例には、複合酸化物Ce-Ti-SO-Zr(セリウム及び硫黄をチタニア-ジルコニア型複合酸化物に加えることにより得られる)、Fe-Si-Al(鉄をシリカ-アルミナ型複合酸化物に加えることにより得られる)及びCe-W-Zr(セリウムを酸化タングステン-ジルコニア型複合酸化物に加えることにより得られる)が挙げられる。
【0012】
米国特許第4,085,193号明細書は、成分Aとしてチタンと、成分Bとしてモリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、クロム(Cr)及びウラニウム(U)からなる群から選択された少なくとも一種の金属の、それらの酸化物の形態との緊密な混合物を含んでなる、窒素酸化物還元用触媒組成物、及び窒素酸化物と分子状酸素と還元剤とを含む気体状混合物を該触媒組成物と高温で接触させることを含んでなる、窒素酸化物を窒素に還元する方法を開示している。Ti-W及びTi-W-Feが例示されており、Ti-Wの活性が、Zr-Wの活性より優れていることが記載されている。
【0013】
米国特許第4,916,107号明細書は、アンモニアにより窒素酸化物を選択的に還元するための、酸化物の形態にある少なくとも三種類の金属、すなわち(A)構成成分(A)としてチタン、(B1)第一構成成分Bとしてタングステン、及び(B2)第二構成成分(B)として金属バナジウム、鉄、ニオブ、及び/またはモリブデンの少なくとも一種の、構成成分(A)〜(B)の金属の原子比1:0.001〜1、好ましくは1:0.003〜0.3の緊密な混合物に由来する触媒を開示している。
【0014】
日本国特許第52-42464号明細書は、排ガス中のNOを還元し、除去するための、排ガス及びアンモニアを触媒と温度範囲200〜500℃で接触させることを含んでなる方法であって、該触媒が、その第一活性成分として酸化チタン50〜97%(原子%)、その第二活性成分として酸化セリウム2〜49%(原子%)、及びその第三活性成分として酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化鉄、及び酸化銅から選択された少なくとも一種の化合物1〜30%(原子%)を含む、方法を開示している。代表的な例には、Ti-Ce-Cu、Ti-Ce-Fe、Ti-Ce-W及びTi-Ce-Moが挙げられる。
【0015】
英国特許第1473883号明細書は、窒素酸化物還元用の、鉄及びタングステンを、それらの酸化物の形態で、Fe/Wの原子比1:0.001〜1で含んでなり、表面積が少なくとも5 m/gであり、300〜700℃でか焼することにより得られる触媒を開示している。この触媒は、IB、IIA、IIIB、IV、VA、VIA、VIII属の他の元素または希土類元素、例えばCu、Mg、Al、Si、Ti、Zr、Sn、V、Nb、Cr、Mo、Co、Ni及びCe、の酸化物を、鉄に対する原子比1:0.15以下で含むことができる。この触媒は、例えばシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、ケイソウ土、酸性クレー、活性クレー、ゼオライト、チタニアまたはジルコニア上に担持することができ、含浸または沈殿により調製することができる。
【0016】
N. Apostolescu et al.(Applied Catalysis B: Environmental 62 (2006) 104-114)は、ディーゼル排ガス中のNOを処理するための、ZrOを1.4 mol%Fe及び7.0 mol%WOSCR触媒で被覆することにより得られる、Fe/ZrOに匹敵する改良されたSCR性能を発揮するSCR触媒を開示している。このZrOは、ZrO(NO)をヒドラジンの水溶液に加えることにより得られる。我々独自の試験により、我々は、熱的安定性及びSCR活性を改良するには、ZrOがその正方晶相で存在することが重要であることを確認した。我々は、N. Apostolescu et al.の触媒を試験し、彼等がZrO正方晶相を得たことを主張しているが、彼等の触媒は、我々が調製したZrOを含む触媒程活性が高くないことを見出した。
【0017】
日本国特許第2003-326167号明細書は、内燃機関から出る排ガス中のNOを処理するのに好適な、酸化タングステンまたは酸化モリブデンを、硫酸化された酸化ジルコニウムからなる担体上に含んでなるSCR触媒を開示している。
【0018】
SAE 2007-01-0238は、NH-SCR触媒に使用するための、酸性のドーピングされたジルコニアの研究を開示している。試験した材料には、Zr-Si、Zr-Si-W及びZr-Ti-Si-Wが挙げられる。
【0019】
ここで我々は、米国特許第5,552,128号明細書の好ましい触媒、すなわちFe-W/ZrOと比較して、相対的に低い温度で活性がより高い非ゼオライト、非バナジウム卑金属NHSCR触媒を発見した。特に、我々は、Fe-W/CeZrO材料が、急速SCR反応(上記の反応(4))に対して、特に低温で、Fe-W/ZrO触媒よりも優れた性能をもたらすことを見出した。
【0020】
一態様で、本発明は、窒素酸化物を窒素系還元剤と、
(a)セリウム及びジルコニウムからなる担体材料としての混合酸化物または複合酸化物もしくはそれらの混合物上に分散させた少なくとも一種の遷移金属、または
(b)不活性酸化物担体材料上に分散させた、単一酸化物としての酸化セリウム及び酸化ジルコニウムまたはそれらの複合酸化物もしくは該単一酸化物と該複合酸化物の混合物、の上に分散させた少なくとも一種の遷移金属
からなる非ゼオライト卑金属触媒の存在下で接触させることにより、ガス流中の窒素酸化物を窒素に転化する方法を提供する。
【0021】
一実施態様では、触媒中の酸化物としてのセリウム及びジルコニウムの含有量は、CeZr1−xであり、ここでX=0.1〜0.9である。
【0022】
混合酸化物は、固溶体中の混合酸化物でよい。ここに規定する「複合酸化物」とは、少なくとも二種類の元素からなる真の混合酸化物ではなく、少なくとも二種類の元素の酸化物を含んでなる大部分が無定形の酸化物材料である。
【0023】
別の実施態様では、卑金属触媒は、二種類以上の遷移金属からなる。
【0024】
幾つかの実施態様では、該または各少なくとも一種の遷移金属は、VIB族金属、IB族金属、IVA族金属、VB族金属、VIIB族金属、VIII族金属、希土類金属及びそれらのいずれか2種類以上の混合物からなる群から選択することができる。該または各遷移金属成分は、酸化物、水酸化物または遊離金属(すなわちゼロ原子価)の形態で存在することができる。VIII族金属は、Ni、Co及びFeのどれか一種以上でよく、本発明で使用できるIVA族金属の代表例は、Sn及び選択性係数であり、VB族金属は、Sb及びBiを包含し、Mn、Tc及びReの一種以上をVIIB族金属として使用することができ、希土類金属はCeを包含し、IB族金属はCuを包含し、Cr、Mo及びWの一種以上をVIB族金属に使用することができる。VIII族貴金属は、卑金属よりも高価であるためのみならず、非選択的反応、例えば上記の反応(2)、を過度に促進するために、避ける方が好ましい。
【0025】
少なくとも一種の遷移金属は、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、Ni、W及びCuからなる群から、より詳しくは、Fe、W、Ce及びCuからなる群から選択することができる。
【0026】
特別な実施態様では、VIB族金属はタングステンである。
【0027】
別の特別な実施態様では、VIII族貴金属は鉄である。
【0028】
特別な実施態様では、少なくとも一種の遷移金属は、タングステンからなる。別の特別な実施態様では、卑金属触媒の遷移金属成分は、鉄及びタングステンからなる。しかし、セリア系触媒に関わる問題は、これらの触媒が硫黄により失活し得ることである。我々の調査により、我々は、タングステンは、セリアが硫酸化される傾向を軽減できることを見出した。また、タングステンを包含する遷移金属の二元組合せ、例えばタングステンと鉄、は、組合せ中の非タングステン遷移金属、この場合はFe、の硫黄許容度を改良する。特別な実施態様では、本発明の触媒は、タングステン、セリウム及びジルコニウムの塩を共沈殿させるだけでは得られない。別の実施態様では、本発明の触媒は、セリウム及びジルコニウムの塩を共沈殿させることによっては得られず、得られた生成物をタングステン塩で含浸させ、温度<600℃でか焼する。別の実施態様では、本発明の触媒は、セリウム、ジルコニウム及びタングステンのみからなるのではない、すなわちセリウム、ジルコニウム、鉄及びタングステンを含んでなる触媒も排除しない。
【0029】
触媒中に存在する少なくとも一種の遷移金属の合計は、触媒の総重量に対して0.01〜50重量%、例えば0.1〜30重量%、または0.5〜20重量%でよい。
【0030】
一実施態様では、(b)の不活性酸化物担体は、アルミナ、チタニア、非ゼオライトシリカ-アルミナ、セリア、ジルコニア及びそれらのいずれか2種類以上の混合物、複合酸化物及び混合酸化物からなる群から選択される。
【0031】
本発明の方法で使用する触媒は、担体材料の水性遷移金属塩による含浸、初期的湿潤または共沈殿を包含する、当業者には公知の方法により得られる。どのような製造経路を選択しても、本発明の重要な態様では、本発明で使用する触媒を活性化するには、既存の環境中、例えば空気中、で、高温、例えば>600℃、例えば650℃及び700℃以上、で、適切な期間加熱すべきであることを確認した。我々は、この熱活性化工程は、ジルコニア上に分散させた鉄及びタングステンからなる触媒に必要であることも見出した。
【0032】
本発明の方法では、窒素酸化物を窒素系還元剤で、少なくとも100℃の温度、例えば約150℃〜750℃、で還元することができる。
【0033】
特別な実施態様では、窒素酸化物還元を酸素の存在下で行う。
【0034】
本発明の方法では、窒素系還元体の添加を、触媒入口におけるNHが、1:1NH/NO及び4:3NH/で計算した理論的アンモニアの60%〜200%に調整されるように、制御することができる。
【0035】
幾つかの実施態様では、触媒入口ガス中の一酸化窒素と二酸化窒素の比が体積で4:1〜1:3である。これに関して、ガス中の一酸化窒素と二酸化窒素の比は、触媒の上流に配置した酸化触媒を使用して一酸化窒素を二酸化窒素に酸化することにより、調節することができる。
【0036】
窒素系還元剤は、アンモニア自体、ヒドラジンまたは尿素((NH)CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びギ酸アンモニウムからなる群から選択されたアンモニア前駆物質を包含するいずれかの好適な供給源から誘導することができる。
【0037】
窒素酸化物を含むガスは、どのような供給源に由来するものでもよいが、特に燃焼過程から発生するガスである。一実施態様では、この燃焼過程は、内燃機関、例えば車両リーンバーン内燃機関、における燃料の燃焼である。特に、車両リーンバーン内燃機関はディーゼルエンジンでよい。
【0038】
第二の態様で、本発明は、本発明の方法で使用するための、
(a)セリウム及びジルコニウムからなる担体材料としての混合酸化物または複合酸化物もしくはそれらの混合物上に分散させた少なくとも一種の遷移金属、または
(b)不活性酸化物担体材料上に分散させた、単一酸化物としての酸化セリウム及び酸化ジルコニウムまたはそれらの複合酸化物もしくは該単一酸化物と該複合酸化物の混合物、の上に分散させた少なくとも一種の遷移金属
からなる不均質非ゼオライト卑金属触媒であって、該または各少なくとも一種の遷移金属が、VIB族金属、IB族金属、IVA族金属、VB族金属、VIIB族金属、VIII族金属及びそれらのいずれか2種類以上の混合物からなる群から選択される、触媒を提供する。
【0039】
特別な実施態様では、触媒が、セリウム及びジルコニウムからなる混合酸化物または複合酸化物の上に分散させた鉄及びタングステンからなる。
【0040】
第三の態様により、本発明は、本発明の方法で使用するための、本発明の第二態様による触媒を、ジルコニア上に分散させた鉄及びタングステンからなる触媒との組合せで含んでなる、不均質触媒非ゼオライト卑金属触媒を提供する。「との組合せで」により、本明細書は、物理的混合物、一成分、例えばFe-W/ZrO、からなる第一区域被覆、を他の成分からなる第二区域の上流に含んでなる基材モノリス、及び例えばFe-W/CeZrOがFe-W/ZrO最上層の下に配置された層状系を包含する。
【0041】
本発明をより深く理解できるようにするために、添付の図面を参照しながら、下記の例を、例示のためにのみ記載する。
【0042】
諸例
例1−触媒及び比較用触媒試料の製造方法
【0043】
Fe/Betaゼオライト触媒
市販のBetaゼオライト上5重量%Fe触媒(5重量%Fe/Beta-比較例)は、下記のように調製した。5重量%Fe装填量を得るのに必要な量の硝酸鉄(Fe(NO).9HO)を脱イオンHO中に溶解させた。溶液の全体積は、単体試料の細孔容積に等しかった(初期的湿潤技術)。この溶液をBetaゼオライト材料に加え、得られた混合物を105℃で一晩乾燥させ、空気中、500℃で1時間か焼した。
【0044】
Fe-W触媒
ZrO上5重量%Fe-15重量%W触媒(5%Fe-15%W/ZrO-比較例)、CeZr1−x(x=0.2) 混合酸化物上5重量%Fe-15重量%W触媒(5%Fe-15%W/Ce0.2Zr0.8O-本発明による)、CeZr1−x(x=0.5) 混合酸化物上5重量%Fe-15重量%W触媒(5%Fe-15%W/Ce0.5Zr0.5O-本発明による)及び30重量%Ce0.75Zr0.25- Al(ガンマアルミナ上に担持されたセリウム及びジルコニウム単一または複合酸化物−30%Ce0.75Zr0.25O/Al-本発明による) は、下記のように調製した。所望の5重量%Fe及び15重量%W装填量を得るのに必要な量の硝酸鉄(Fe(NO).9HO)及びメタタングステン酸アンモニウムを脱イオンHO中に溶解させた。溶液の全体積は、単体試料の細孔容積に等しかった(初期的湿潤技術)。この溶液を担体材料に加え、得られた混合物を105℃で一晩乾燥させ、次いで700℃で3時間か焼した。CeZr1−x(x=0.5) 混合酸化物上15重量%W触媒(15%W/Ce0.5Zr0.5O-本発明による)は、含浸媒体中に鉄を含まない以外は、類似の様式で調製した。
【0045】
単体として、ZrO上5重量%Fe-15重量%W触媒には、市販のZr(OH)を使用し、CeZr1−x(x=0.2) 混合酸化物上5重量%Fe-15重量%W触媒には、市販のCe0.2Zr0.8材料を使用し、CeZr1−x(x=0.5) 混合酸化物上5重量%Fe-15重量%W触媒には、市販のCe0.5Zr0.5材料を使用し、30重量%Ce0.75Zr0.25- Alは、粒子状ガンマアルミナと適切な量/濃度のセリウム水和物及び水性硝酸ジルコニウムを組み合わせて所望の装填量を達成し、続いて粉砕することにより、調製した。次いで、得られた材料を105℃で一晩乾燥させ、か焼した。
【0046】
例2 代表的な組合せ触媒系
それぞれ例1により調製したFe/Betaゼオライト及び5重量%Fe-15重量%W/ZrOの1:1混合物は、2種類の材料を等比率で混合することにより、調製した。
【0047】
例3 NHSCR活性試験条件
例1及び2により調製した触媒の粉末試料は、本来の試料をペレット化し、それらのペレットを粉砕し、次いで得られた粉末を255〜350μm篩に通すことにより、得た。粉末試料をSynthetic Catalyst Activity Test (SCAT)反応器中に入れ、窒素系還元体を包含する下記の合成ディーゼル排ガス混合物(入口で)、すなわち100 ppmNO、100 ppmNO、200 ppmNH、12%O、4.5%HO、4.5%CO、200 ppmCO、100 ppmC、20 ppmSO、残部Nを使用し、空間速度45,000hr−1(ガス流量毎分2リットル)で試験した。試料を5℃/分で加熱して150〜550℃に昇温し、排ガスの組成を検出し、NO還元を促進する試料の活性を求めた。結果を添付の図に示す。
【0048】
図1から、CeZr1−x混合酸化物上に分散させたFe及びWを含み、700℃で活性化した触媒は、NO-NO等モル混合物における急速SCR反応(上記の反応(4))に対して、特に低い温度で、Fe-W/ZrO触媒よりも、比較的優れた性能を示すことが分かる。
【0049】
低温活性の改良は、触媒の組成によって異なり、類似の低温反応性(<200℃)を有するFe-W/Ce0.5Zr0.5からなる試料は、反応(4)に対して、新しいFe/Beta触媒に匹敵することも分かる。
【0050】
図2は、Fe-W/ZrOとFe/Betaゼオライト触媒を組み合わせることにより、NO-NO供給混合物中で全体的なNHSCR活性寛容度が著しく改良されることを示している。組み合わせた触媒は、Fe/Betaゼオライト触媒の活性による良好な低温活性、及びFe-W/ZrO触媒による良好な高温活性を示す、すなわち両触媒の有益性が混合物中に取り入れられる。特に高温活性は、混合触媒系で十分に維持されている。我々は、これらの条件が重負荷ディーゼルエンジン条件に関連しているので、このことは重大であると考えている。図1に示す結果から、本発明で使用するFe-W/CeO-ZrO触媒の低温機能を、Fe-W/ZrOと組み合わせると、類似の有益性が示されると予想される。
【0051】
さらに、物理的混合物に加えて、Fe-W/ZrO処方物をフロースルー基材モノリスの入口区域に配置して高温における良好な選択性を達成し、Fe-W/CeZrO処方物を触媒床の後部区域に配置することにより、2成分の有利な配置が達成できると、我々は考えている。Fe-W/CeZrOを、Fe-W/ZrO上部層の下に配置する層状系が類似の有益性を与えることも予想される。
【0052】
図3は、新しい15%W/Ce0.5 Zr0.5 O及び新しい5%Fe-15%W/Ce0.5 Zr0.5 O(両方共本発明による)の活性を比較しているが、ここから、W/CeZrO材料は、Fe-W/CeZrOよりも低い低温性能を有するが、高温ではFe-W/CeZrOと類似の性能を示すことが分かる。従って、VIII族金属の存在は、触媒の性能に不可欠ではないことがある。しかし、示していない結果で、Feの存在は、硫黄含有雰囲気におけるリーン水熱エージングに続いて活性を維持することができる。従って、Feは、比較的高い燃料硫黄市場で有益な場合がある。
【0053】
誤解を避けるために、本明細書で引用する全ての文献をここに参考として含める
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、本発明のFe-W/CeO-ZrO触媒に関するNO転化プロファイルを、Fe-W/ZrO触媒及びFe/Beta触媒と比較して示すグラフである。
図2図2は、Fe-W/ZrO、新しいFe/Beta触媒及び両触媒の50:50物理的混合物のNO転化性能を比較するグラフである。
図3図3は、新しいFe-W/CeZrOのNO転化性能を新しいW/CeZrO触媒(両方共、本発明による)と比較するグラフである。
図1
図2
図3