特許第5693649号(P5693649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693649
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】市場調査・分析システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20150312BHJP
【FI】
   G06Q30/02 100
   G06Q30/02 130
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-97641(P2013-97641)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-219785(P2014-219785A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503342764
【氏名又は名称】カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071320
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 敏郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126756
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵
(72)【発明者】
【氏名】毛谷村 剛太郎
【審査官】 田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−052444(JP,A)
【文献】 特開2009−289092(JP,A)
【文献】 特開2010−123011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースに蓄積されてなる顧客データを波形化する波形生成手段と、前記波形生成手段により生成された少なくとも2以上の波形の点間の差分を算出する手段と、前記波形生成手段により生成された少なくとも2以上の波形の線分角度の差分を算出する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まるか否かを判定する手段と、前記線分角度の差分が閾値内に収まるか否かを判定する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まる割合を算出する手段と、前記線分角度の差分が閾値内に収まる割合を算出する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まる割合と前記線分角度の差分が閾値内に収まる割合から少なくとも2以上の波形の近似度を算出する手段を有することを特徴とする市場調査・分析システム。
【請求項2】
波形生成手段は、折れ線グラフを生成することを特徴とする請求項1に記載の市場調査・分析システム。
【請求項3】
波形生成手段は、平均値化した顧客データを算出する手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の市場調査・分析システム。
【請求項4】
1以上のあて元データを選択する手段と、1以上のあて先データを選択する手段を有し、波形生成手段は、あて元データの波形及びあて先データの波形を生成し、波形の近似度を算出する手段は、前記あて元データに対する前記あて先データの波形の近似度を算出すること特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項5】
あて元データとあて先データの近似度を一覧表示するテーブル作成手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項6】
あて元データおよびあて先データは、顧客、企業、店舗、商品、サービス、エリア等の少なくともいずれかのカテゴリーから選択可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項7】
データベースに蓄積されてなる実データをもとに予想データを算出する予想処理手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項8】
実データを離散化処理し、離散化処理した実データをもとに予想処理手段により予想データを算出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項9】
予想処理手段により算出された予想データを顧客データとすることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項10】
実データの欠落項目を予想処理手段により算出された予想データで補完し顧客データを作成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項11】
予想データは、確率値または、確率値を閾値判定した予想値から構成されることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項12】
顧客IDに対して顧客データを一覧表示するテーブル作成手段を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項13】
任意の顧客IDに対して、任意の近似度が算出された企業、店舗、商品・サービスまたはエリアのレコメンド媒体を紐付けるレコメンド手段を有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項14】
任意の企業ID、店舗ID、商品・サービスIDまたはエリアIDに対応するレコメンド媒体に対して、任意の近似度が算出された顧客IDを紐付けるレコメンド手段を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【請求項15】
本部端末は、あて元データ及びあて先データの選択手段と、市場調査・分析結果の閲覧手段を有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の市場調査・分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場調査・分析システムに関し、特に顧客の趣味、志向に則した広告を提供するためのデータを算出するためのものである。
【背景技術】
【0002】
ポイントカード、クレジットカードの加入者、セールスネットワーク加入者、顧客台帳登録者など、当該顧客の情報の取得と顧客への広告の提供が可能な顧客に対して更なる商品及びサービスの購買行動を促すために、POS端末等におけるクーポン券の発行、広告を内容とする電子メールの送信、ウェブサイトにおける会員ログイン画面等へのカスタマイズ広告の表示、顧客へのダイレクトメールの郵送等、顧客固有の広告を提示する所謂レコメンドシステムを用いた広告宣伝が行われている。従来は、顧客に対して全ての種類のクーポン券、広告等を提供していたが、広告宣伝の効率化やコスト削減の観点から、特定の広告に適した趣味、志向を持つ顧客にのみ当該広告を提供したほうが、広告宣伝効果が大きく効率的な広告の提供ができることから、特定の広告を提供する対象顧客を抽出するための市場調査・分析システムやレコメンドシステムが案出されている。例えば、顧客の属性と購買履歴に基づいて提示する広告を抽出するレコメンドシステム(特許文献1、3、4)、顧客の属性と購買履歴等に基づいて提示するサービスクーポンを抽出するサービスクーポン発行システム(特許文献2)等がある。これらの市場調査・分析システムやレコメンドシステムは、広告抽出のためのプロファイルとして会員顧客の属性等と購買履歴を用い、これに、例えば天気や交通情報等の外的要因を組み合わせて特定の広告に対する会員顧客の抽出を行うものであり、また抽出のための基準は固定的に設定されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−211687号公報
【特許文献2】特開2009−163533号公報
【特許文献3】特開2012−247926号公報
【特許文献4】特開2004−70504号公報
【特許文献5】特開2012−190061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の市場調査・分析システムやレコメンドシステムにおいても顧客の趣味、志向を予想し、ひいては顧客の趣味、志向に則した広告の提供が可能であった。しかしながら、企業は、商品開発、出店計画、広告企画、広告の提供対象や広告提供方法の選択等さまざまな企業活動のフェーズで消費者の趣味、志向や、店舗、商品、サービス、エリアが持つ特性を正確に分析し、企業活動に役立てたいという要望を持っている。そこで、本発明は、確実な市場調査と分析を可能とし、市場調査・分析システムの利用者たるアライアンス企業に市場調査・分析結果を理解しやすい形式で提供することができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の市場調査・分析システムは、データベースに蓄積されてなる顧客データを波形化する波形生成手段と、前記波形生成手段により生成された少なくとも2以上の波形の点間の差分を算出する手段と、前記波形生成手段により生成された少なくとも2以上の波形の線分角度の差分を算出する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まるか否かを判定する手段と、前記線分角度の差分が閾値内に収まるか否かを判定する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まる割合を算出する手段と、前記線分角度の差分が閾値内に収まる割合を算出する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まる割合と前記線分角度の差分が閾値内に収まる割合から少なくとも2以上の波形の近似度を算出する手段を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の他の形態によれば、波形生成手段は、折れ線グラフを生成することを特徴とする。
【0007】
波形生成手段は、平均値化した顧客データを算出する手段を有することを特徴とする。
【0008】
1以上のあて元データを選択する手段と、1以上のあて先データを選択する手段を有し、波形生成手段は、あて元データの波形及びあて先データの波形を生成し、波形の近似度を算出する手段は、前記あて元データに対する前記あて先データの波形の近似度を算出すること特徴とする。
【0009】
あて元データとあて先データの近似度を一覧表示するテーブル作成手段を有することを特徴とする。
【0010】
あて元データおよびあて先データは、顧客、企業、店舗、商品、サービス、エリア等の少なくともいずれか一つのカテゴリーから選択可能であることを特徴とする。
【0011】
データベースに蓄積されてなる実データをもとに予想データを算出する予想処理手段を有することを特徴とする。
【0012】
実データを離散化処理し、離散化処理した実データをもとに予想処理手段により予想データを算出することを特徴とする。
【0013】
予想処理手段により算出された予想データを顧客データとすることを特徴とする。
【0014】
実データの欠落項目を予想処理手段により算出された予想データで補完し顧客データを作成することを特徴とする。
【0015】
予想データは、確率値または、確率値を閾値判定した予想値から構成されることを特徴とする。
【0016】
顧客IDに対して顧客データを一覧表示するテーブル作成手段を有することを特徴とする。
【0017】
任意の顧客IDに対して、任意の近似度が算出された企業、店舗、商品・サービスまたはエリアのレコメンド媒体を紐付けるレコメンド手段を有することを特徴とする。
【0018】
任意の企業ID、店舗ID、商品・サービスIDまたはエリアIDに対応するレコメンド媒体に対して、任意の近似度が算出された顧客IDを紐付けるレコメンド手段を有することを特徴とする。
【0019】
本部端末は、あて元データ及びあて先データの選択手段と、市場調査・分析結果の閲覧手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の市場調査・分析システムによれば、精度の高い市場調査・分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のシステム概要図である。
図2】本発明のシステムのフローチャートである。
図3】本発明のシステムのフローチャートである。
図4】本発明のシステムにおいて作成されるデータテーブルの例である。
図5】本発明のシステムにおいて作成されるデータテーブルの例である。
図6】本発明のシステムにおいて作成されるデータテーブルの例である。
図7】本発明のシステムにおいて作成されるデータテーブルの例である。
図8】本発明のシステムのフローチャートである。
図9】本発明のシステムのフローチャートである。
図10】本発明のシステムにおいて生成されるグラフの例である。
図11】本発明のシステムにおいて生成されるグラフの例である。
図12】本発明のシステムにおいて生成されるグラフの例である。
図13】本発明のシステムにおいて近似度の算出過程を説明する図である。
図14】本発明のシステムにおいて近似度の算出過程を説明する図である。
図15】本発明のシステムにおける近似度の利用例を示すデータテーブルの例である。
図16】本発明のシステムのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の市場調査・分析システム1は、図1に示すように、運用会社の管轄下にあるサーバとデータベース群からなる運用会社システム2、運用会社システム2と情報伝達可能に接続されてなり企業店舗に設置されるPOS端末等の店舗端末3、運用会社システム2とネットワーク4を通じて情報伝達可能に接続されてなるPOS端末等の店舗端末3、顧客が保有する携帯電話、スマートフォンなどの顧客携帯端末5、顧客コンピュータ端末6(以下、単に顧客端末5,6という。)、企業に設置される本部端末等7等で構成される。
【0023】
図2のフローチャートに示すように、本発明の市場調査・分析システム1は、分析の前段階として実データを蒐集する実データ蒐集蓄積手段、実データから予想データを算出する予想処理手段、実データおよび/または予想データからなる顧客データから波形を生成する波形生成手段、生成された波形から近似度(以下、シンクロ率という。)を算出するシンクロ率算定手段、必要に応じて付加されるレコメンド手段等より構成されている。
【0024】
(実データ蒐集蓄積手段)
図1及び図4を参照して、実データ蒐集蓄積手段について説明する。この手段は、市場調査・分析の前段階として顧客の実データを蒐集し、蒐集した実データをデータベースに蓄積する手段である。
【0025】
本発明の市場調査・分析システムとは別個に構築されるか、または、本発明の市場調査・分析システムの一部をなすサービスポイント管理システム(不図示)に構築される実データ蒐集蓄積手段は、顧客がシステム利用登録をする際に顧客に付与される識別子(以下、顧客ID)毎に、実データの蒐集とデータベースへの蓄積を行う。なお、顧客IDは顧客毎に異なる任意の桁数の数字や記号が一般的である。一例として、顧客IDは、顧客が保有するサービスポイントカードに記録されており、店舗端末3や顧客端末5,6で顧客IDを読み取り、入力することができるようになっている。
【0026】
実データ蒐集の例を示す。顧客がシステムの利用登録をする際に、店舗端末3または、顧客端末5,6より運用会社システム2に顧客の基本属性データが情報伝達される。運用会社システム2はこれを受信し、顧客ID毎に実データを紐付けて基本属性データベースに蓄積する。基本属性データの項目としては、例えば、性別、年齢、住所、居住地特性、通勤通学先エリア特性等が挙げられる。
【0027】
また、顧客が、市場調査・分析システム1に参加するアライアンス企業の店舗やECサイトで買い物をするたびに、店舗端末3あるいは本部端末7は、顧客IDとともに履歴系データを運用会社システム2へ情報伝達し、運用会社システム2はこれを受信し、顧客ID毎に履歴系データの各項目に関する実データを紐付けて履歴系データベースに蓄積する。履歴系データの項目としては、例えば、利用企業、購入商品または購入サービス、来店時間または来店時間帯、利用店舗等が挙げられる。
【0028】
また、顧客からの回答を基に蒐集されるリサーチ系データが蒐集可能である。顧客は、顧客端末5,6より、顧客IDとともにリサーチ系データを運用会社システム2のサーバへ情報伝達し、サーバはこれを受信し、顧客IDにリサーチ系データの各項目に関する実データを紐付けてリサーチ系データベースに蓄積する。リサーチ系データの項目としては、例えば会員アンケート項目と志向性フラグが挙げられる。会員アンケート項目としては、システムの会員となっている顧客がアンケートに回答することで蒐集される既婚・未婚の別、子供の有無、住居の態様、年収、運転免許の有無等が挙げられる。また志向性フラグ項目としては、顧客の意識度合を区分けするための伝統志向(伝統的なものを好む志向性)、革新志向(革新的なものを好む志向性)、高級志向(高級なものを好む志向性)等の項目が挙げられ、各志向性の度合の高低に応じて段階分けのフラグを立てる等の例が挙げられる。
【0029】
さらに、付加することができる項目の例としては、顧客のインターネット等通信ネットワークへの利用行動状態を示すネット行動データが挙げられる。ネット行動データの項目として、通信ネットワークへのアクセス時間、利用媒体、利用サイト等が挙げられる。また、付加することができる他の項目の例としては、購買金額に応じて付与されるサービスポイントが挙げられる。顧客が買い物をする際に付与されるサービスポイントは、店舗端末3あるいは本部端末7等より、運用会社システム2に伝達されサーバはこれを受信するとともに、顧客IDに紐付けて蓄積されてなる累積サービスポイントに取得されたサービスポイントを加算し、サービスポイントを随時サービスポイントデータベースに蓄積するようになっている。なお、上述の項目は一例であって、蒐集蓄積される実データは、これらの項目に限られるものではない。
【0030】
(予想処理手段)
次に、図1乃至図7を参照して、予想処理手段について説明する。実データ蒐集蓄積手段により、基本属性データ、履歴系データ、リサーチ系データ、ネット行動データ、サービスポイントデータ等各種の実データが基本属性データベース、履歴系データベース、リサーチ系データベース、その他データベースに蓄積され、また随時更新されている。しかしながら、実データの蒐集蓄積は全ての項目に対して行われるわけではない。例えば、テーブル作成手段により図4に示す如き実績データテーブルを作成すると、顧客IDに紐付いた状態で実データが表示されるが、このとき、入力されなかった基本属性データの項目、顧客が買い物をしなかった店舗の履歴系データの項目、あるいはアンケートに対する回答がされなかったリサーチ系データの項目等、幾つかの項目については様々な理由により実データが欠落した状態となっている。また、いくつかの実データは顧客や店舗の入力ミス等何らかの理由から市場調査・分析の基礎とするに適さない突出したデータが含まれている可能性がある。したがって、予想処理において実データから予想データを算出し、顧客データ作成処理により市場調査・分析の基礎とする顧客データを作成する。
【0031】
運用会社システム2が、予想処理手段を動作させると、予想処理手段は、確率推論アルゴリズムを用いて基本属性データベース、リサーチ系データベース、履歴系データベース、ポイントデータベース、その他データベース等に蓄積された実データから、各項目に対する予想データを予想する予想処理を行う。確率推論アルゴリズムの例としてはベイジアンネットワーク、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト等の各種方式が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0032】
図5を参照して、予想処理の第1の実施の形態を示す。図5に示すのは、予想処理手段が確率推論を行い、推論結果の確率値を閾値で判定した予想値からなる予想データを算出したコンプリートテーブルである。運用会社システム2のサーバは、基礎とする項目の実データにおいて予想対象の顧客と近い実データを持っている他の顧客の項目の実データから予想対象の顧客の項目毎のデータの該当確率を確率推論アルゴリズムに基づいて予想処理する。例えば、顧客A(顧客ID100001の者)の既婚の確率を予想する場合、運用会社システム2のサーバは、他の項目の実データ(例えば、性別データ、年齢データ、住所データ、履歴系データ等)において顧客Aと近い実データを持っている他の顧客の「既婚・未婚の別」の項目の実データから、顧客Aの既婚の確率値(例えば、既婚の確率値70%)を算出する。同様に、顧客A(例えばID100001の者)の履歴系データにおけるA社の商品「惣菜」を購入する確率を予想する場合、運用会社システム2のサーバは、他の項目の実データ(例えば、性別データ、年齢データ、住所データ、履歴系データ)において顧客Aと近い実データを持っている他の顧客のA社の商品「惣菜」の項目の実データから商品「惣菜」を購入する確率値(例えば、商品「惣菜」を購入する確率10%)を算出する。さらに、項目の性質上、実データがYESまたはNO、あるいは100%または0%(例えば既婚・未婚の別)で表されるべき項目に関しては、確率値が閾値以上であればYES、閾値以下であればNO、同様に閾値以上であれば100%、閾値以下であれば0%との予想値を判定する予想処理を付加するようにしてもよい。なお、この閾値は可変である。例えば、顧客Aの既婚の確率値(例えば、既婚の確率値70%)の推論結果に対して、閾値を50%と設定した場合には、顧客Aは「既婚」の予想値が算出される。図5に示すコンプリートデータテーブルの例では、実データが欠落している項目に対してのみ予想処理を行うか、あるいは全ての項目に対して予想処理を行ったうえで実データが欠落している項目に対してのみ予想データを紐づけることで実データと予想値からなる予想データを顧客データとしているが、全ての項目に予想処理を行い全ての項目に予想データを紐づけることで予想データのみからなる顧客データを算出するようにしてもよい。
【0033】
また、実データを蒐集蓄積した段階で、突出したデータを排除すべく、実データの数値を丸める、あるいは、程度分けする等、様々な方式による離散化処理を行い、離散化した実データを作成してから、この離散化した実データを予想処理するようにしてもよい。すなわち、予想処理の基礎とする実データは蒐集された生の実データであってもよいし、離散化した実データであってもよい。
【0034】
図6を参照して、予想処理の第2の実施の形態を示す。図6に示すのは、予想処理手段が確率推論を行い、推論結果の確率値をそのまま予想データとし、実データの欠落個所を確率値からなる予想データで補完したコンプリートテーブルである。この場合、実データと確率値からなる予想データで構成された顧客データが算出される。
【0035】
図7を参照して、予想処理の第3の実施の形態を示す。図7に示すのは、予想処理手段が確率推論を行い、推論結果の確率値をそのまま予想データとして算出し、すべての項目を確率値からなる予想データで埋めたコンプリートテーブルである。この場合、全ての項目が確率値からなる予想データで構成された顧客データが算出される。
【0036】
また、必要に応じて設けられるテーブル作成手段は、図5乃至7に示すように、一覧表の各項目に対して顧客データを紐付けた状態に表示したコンプリートテーブルを作成するようになっている。これにより顧客データが一覧表に紐づけられた空欄のないコンプリートテーブルを可視的に提供することができる。
【0037】
(波形生成手段)
図8乃至図12を参照して、波形生成手段について説明する。波形生成手段は、顧客データをグラフ上にプロットし、これを波形化する手段である。
【0038】
運用会社システム2が波形生成手段を動作させると、波形生成手段は、縦軸にとったカテゴリーに対応する各項目の顧客データをプロットするプロット処理を行い(S1)、折れ線グラフ化する波形生成処理(S2)を行う。例えば、顧客Aの波形を生成する場合には、図10に示すように、横軸を項目、縦軸を顧客データ(%)とし、顧客Aの各項目(例えば、年収レベル、喫煙率、車保有率)に対する顧客データをプロットし、これを波形化する。これにより顧客Aの性質が波形により表される。同様に顧客Bの波形も表わすことができる。
【0039】
また、他の形態の波形生成手段は、横軸を項目、縦軸を顧客データ(%)とし、各項目の顧客データの平均値を算出し、平均値化した顧客データをプロットするプロット処理を行い、折れ線グラフ化する波形生成処理を行う。例えば、図11に示すように、商品Gの波形を生成する場合には、横軸を項目、縦軸を顧客データ(%)とし、商品Gを購入した履歴系データを持つ顧客らの各項目別の顧客データの平均値を算出し、商品Gの各項目(例えば、年収レベル、喫煙率、車保有率)に対する平均値化した顧客データをプロットし、これを波形化する。例えば、商品Gの項目「喫煙率」のプロット処理は、商品Gの全購入者あるいは性別、年代別など特定の層に属する特定購入者の顧客データの喫煙率の平均値を算出し、項目「喫煙率」についてこの平均値を顧客データとしてプロットする。このような処理を全ての項目について行った上、波形を生成する。これにより商品Gの購入者層が波形により表される。図12に示すように、店舗A店,店舗B店の項目「高級志向」のプロット処理は、店舗A店の全利用者あるいは性別、年代別など特定の層に属する特定利用者の顧客データの高級志向度合の平均値を算出し、項目「高級志向」についてこの平均値を顧客データとしてプロットする。このような処理を全ての項目について行った上、波形を生成する。なお、このような波形生成処理は、顧客、商品、店舗はもちろんのこと企業、エリア、年代等の様々なカテゴリーの分析対象について行うことができる。図10乃至図12には2つの波形を生成する例を示したが、1つの波形を生成してもよいし、3つ以上の波形を生成してもよい。なお、折れ線グラフが後述するシンクロ率の算出には好適であるが、曲線グラフ、関数グラフ、散布図、面グラフ、レーダーチャートのような他のタイプのグラフを生成することも可能である。
【0040】
図9に示す如く、複数のデータを比較するために、あらかじめ、あて元データとあて先データを選択することができる。ここであて元データとは、近似度すなわちシンクロ率を算出するためのモデルとなる属性、志向性、購買傾向などで作成した会員顧客群の平均値をいい、あて先データとは、あて元データとのシンクロ率を判定させるための対象者または属性、志向性、購買傾向などで作成した対象者群の平均値をいう。例えば、図9図10に示すように、顧客Aと顧客Bの顧客データの波形を比較するべく、あて元データに顧客A(顧客ID)、あて先データに顧客B(顧客ID)を選択入力しておくことにより(S1)、運用会社システム2のサーバは、顧客Aの顧客ID、顧客Bの顧客IDに対応する顧客データを抽出し(S2)、顧客Aと顧客Bの顧客データ(例えば、年収レベル率、喫煙率、車保有率)をプロットするプロット処理(S3)を行い、各プロットを折れ線グラフ化する波形生成処理(S4)を行う。
【0041】
また、図11に示すように、あて元データに顧客A、あて元データに商品Gを選択した場合、運用会社システム2のサーバは、顧客Aの顧客データと、商品Gを購入している顧客の平均値化した顧客データを算出し、顧客Aと商品Gの波形を生成する。
【0042】
また、図12に示すように、あて元データに店A、あて先データに店Bを選択した場合、運用会社システム2のサーバは店Aの来店履歴がある顧客の平均値化した顧客データと、店Bの来店履歴がある顧客の平均値化した顧客データを抽出し、店Aと店Bの波形を生成する。あて元データ、あて先データの選択は、顧客対顧客、企業対企業、商品対商品、エリア特性対エリア特性のように同カテゴリーから選択する、顧客対企業、顧客対商品、店舗対エリア特性のように異なるカテゴリーから選択することのいずれも可能であり、顧客、企業、店舗、商品・サービス、エリア特性等の様々なカテゴリーを対象に行うことができ、そのカテゴリーの組合せも任意である。このように波形を生成することで、比較対象の特徴を視覚的に確認することができる。
【0043】
(シンクロ率算出手段)
図13図14を参照して、近似度を算出する手段としてのシンクロ率算出手段について説明する。シンクロ率とは、波形生成手段により生成された少なくとも2以上の波形の近似度をいう。このシンクロ率は、波形生成手段により生成された少なくとも2以上の波形の点間の差分を算出する手段と、前記波形生成手段により生成された少なくとも2以上の波形の線分角度の差分を算出する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まるか否かを判定する手段と、前記線分角度の差分が閾値内に収まるか否かを判定する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まる割合を算出する手段と、前記線分角度の差分が閾値内に収まる割合を算出する手段と、前記点間の差分が閾値内に収まる割合と前記線分角度の差分が閾値内に収まる割合から求められる。
【0044】
図8図9図13図14に示す如く、運用会社システム2がシンクロ率算出手段を動作させると、シンクロ率算出手段は、上述の波形生成手段で生成された2以上の波形の各プロットの点間の距離の差(確率差分)を算出する(S4)。また、シンクロ率算出手段は、折れ線グラフの各線と線の角度の差(線分角度の差分)を算出する(S5)。そして、算出された確率差分と線分角度の差分が閾値内に収まるか否かの閾値判定をし(S6)、全体に対する閾値内に収まっている変数の割合、すなわち点の一致率および波形の一致率を算出し、点の一致率と波形の一致率を加算した結果を2で除してシンクロ率を算出する(S7)。
【0045】
ここで、確率差分とは、対応するプロットされた点間の距離を、縦軸にとられた確率値の差で示した値であり、図13を参照すれば、例えば、あて元データAの項目の項目X1(例えば、年収レベル)の確率がX1A%(例えば75%)、あて先データBの項目の項目X1(年収レベル)の確率がX1B%(例えば、73%)の位置にプロットされている場合、X1A%(75%)−X1B%(73%)=確率差分Y1%(2%)の演算を行い、この演算をX1〜Xnの全ての項目に対応する点について繰り返し行い確率差分Y1〜Ynを算出する。次に、当該確率差分の値が閾値(例えば±5%)に収まる場合には点の一致と判定し、閾値に収まらない場合には点の不一致との判定を行う。さらに、全ての算出結果に対する点の一致率を算出する。
【0046】
また、線分角度の差分とは、折れ線グラフの線の角度の差分であり、図13を参照すれば、線分角度の差分θ=θ1−θ2=tan-1D/C−tan-1D'/Cの演算を行い、この演算をX1〜Xn間の全ての項目に対応する線について繰り返し行う。次に、当該線分角度の差分の値が閾値(例えば±3°)に収まる場合には波形の一致と判定し、閾値に収まらない場合には波形の不一致との判定を行う。さらに、全ての算出結果に対する波形の一致率を算出する。
【0047】
そして、上述の演算により得られた点の一致率、波形の一致率より、波形の近似度たるシンクロ率を、シンクロ率=(点の一致率+波形の一致率)/2の演算により算出する。なお、上述した閾値の値は可変条件とすることができる。
【0048】
また、折れ線グラフ以外のグラフ、例えば曲線グラフや関数グラフについては、曲線の任意の点間の距離あるいは接線の任意の点間の距離、接線の角度から確率差分と線分角度の差分を算出することも可能であるし、波形を微分し確率差分と線分角度の差分を算出することも可能である。このように、確率差分と線分角度の差分は各グラフに対応する様々な算出方法により得られる。
【0049】
また、図15に示すように、運用会社システム2は、あて元データに対するあて先データのシンクロ率の一覧表を作成する手段を付加してもよい。図15に示す、一覧表の例では、あて元データの店Aに対して、あて先データの店B〜店Lのシンクロ率を表している。
【0050】
このように、予想処理手段、波形生成手段、シンクロ率算出手段を通じて、顧客対顧客、企業対企業、店舗対店舗等のような同カテゴリー間のシンクロ率すなわち近似度あるいは、顧客対企業、顧客対店舗、顧客対商品、顧客対エリア、企業対商品、店舗対商品、店舗対エリア等のような異なるカテゴリー間のシンクロ率すなわち近似度を求め、該近似度を視覚化することにより、本システムを顧客へのレコメンド作業に役立てることができることはもちろんのこと、本システムで例えば、企業や店舗の品揃えの分析、出店地域の分析等様々な目的のための調査分析を行うことができる。
【0051】
(レコメンド手段)
本発明の市場調査・分析システム1に付加的に設けることができる手段としてのレコメンド手段について説明する。レコメンド手段は、市場調査・分析システム1に登録している顧客に対してレコメンド媒体を提供するための手段である。レコメンド媒体には、店舗端末3等から発券されるクーポン券、本部端末7、サーバ2から顧客端末5,6送信される広告を内容とする電子メール、ウェブサイトにおける会員ログイン画面等へ表示されるカスタマイズ広告、顧客に郵送されるダイレクトメール等が一例として挙げられる。
【0052】
図16に示すように、運用会社システム2のサーバが、レコメンド手段を動作させると、レコメンド手段は、あて元データ(例えば店A)に対して、任意のシンクロ率に該当する顧客の顧客IDを抽出する。次に、レコメンド手段は、様々な出力手段等により、抽出された顧客に対して、あて元データに対応する店Aのレコメンド媒体を提供する。レコメンド媒体の出力手段は、抽出された顧客の顧客IDに対応する店舗端末3等に店舗Aのクーポン券を発券する、抽出された顧客の顧客IDに対応する電子メールアドレスに店舗Aの広告を内容とする電子メールを送信する、抽出された顧客の顧客IDに対応する会員ログイン画面に店舗Aのカスタマイズ広告を表示させる、あるいは、抽出された顧客の顧客IDに対応する住所を店舗Aのダイレクトメールに宛名印刷する等様々な出力手段が挙げられる。
【0053】
また、レコメンド手段の他の例としては、運用会社システム2が、選択したあて元データ(例えば、顧客A)に対して、任意のシンクロ率に該当する企業の企業ID、任意のシンクロ率に該当する店舗の店舗ID、あるいは任意のシンクロ率に該当する商品・サービスIDを抽出する。次に、レコメンド手段は様々な出力手段等により、顧客Aの顧客IDに対して、抽出された企業、店舗、あるいは商品・サービスに対応するレコメンド媒体を提供する。レコメンド媒体の出力手段は、顧客Aの顧客IDに対応する店舗端末3等に抽出された企業、店舗、あるいは商品・サービスのクーポン券を発券する、顧客Aの顧客IDに対応する電子メールアドレスに抽出された企業、店舗、あるいは商品・サービスの広告を内容とする電子メールを送信する、顧客Aの顧客IDに対応する会員ログイン画面に抽出された企業、店舗、あるいは商品・サービスのカスタマイズ広告を表示させる、あるいは、顧客Aの顧客IDに対応する住所を抽出された企業、店舗、あるいは商品・サービスのダイレクトメールに宛名印刷する等様々な出力手段が挙げられる。
【0054】
なお、本発明の市場調査・分析システムを利用するためにアライアンス企業には、運用会社システム2にアクセス可能なログインIDとパスワードを発行するとともに市場調査・分析結果を表示させるためのブラウザを提供し、当該システムに参加する企業の本部端末7からは、ログインIDとパスワードにより運用会社システム2のサーバにアクセスして、あて元、あて先データの選択入力を可能にするとともに、上述した調査・分析システム1で得られた市場調査・分析結果(顧客データテーブル、波形グラフ、シンクロ率一覧表等)を閲覧できるようにしてもよい。
【0055】
このように、市場調査・分析システム1によれば、精度の高い市場調査と分析を可能とし、市場調査・分析システムの利用者たるアライアンス企業に市場調査分析結果を理解しやすい形式で提供することができるシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 市場調査・分析システム
2 サーバ
3 店舗端末
4 通信ネットワーク
5,6 顧客端末
7 本部端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16