(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、特許文献1に記載の方法では、タッチ式の計測プローブを用いているために、プローブの倒れや振れの問題や、プローブ径よりも小さな領域を測定できない問題がある。また、タッチ式の計測プローブでは、測定にタッチ信号(スキップ信号)を用いるため、多点測定とならざるを得ず、連続的な形状データを得ることができす測定時間が長くなる。
【0007】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、主軸の中心と主軸に装着した変位測定器の中心とのずれ量を自動的に求め、ワークの測定値を迅速に補正可能とした変位測定器の自動心出し方法及び変位測定機能を有する工作機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、割出し可能な主軸を有する工作機械の前記主軸に装着した変位測定器の自動心出し方法において、
主軸をその中心軸線周りに0°と180°及び90°と270°に割り出して、それぞれの位相において前記工作機械の主軸に対して垂直な方向へ送りながら、工作機械のテーブルに取り付けられたワークまたは基準ブロックである測定対象物
の表面の前記主軸の中心軸線方向の変位を前記変位測定器によ
り測定し、
該測定結果から測定対象物の表面の突出部または凹部の座標を求め、前記主軸の位相が0°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標と、180°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標との差、及び、前記主軸の位相が90°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標と、270°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標との差から、前記主軸の中心と前記変位測定器の中心との前記主軸に対して垂直な方向のずれ量を算出して補正値として記憶し、前記変位測定器の実測定時の測定値を前記記憶した補正値で補正するようにした変位測定器の自動心出し方法が提供される。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、主軸とテーブルとを相対的に直交三軸方向に送ることが可能な工作機械において、前記テーブルに対する前記主軸の相対的な座標位置を読み取る座標位置読取り装置と、前記主軸をその中心軸線周りに0°と180°及び90°と270°に割り出す割出し装置と、前記主軸の先端部に装着され
、前記テーブルに固定されたワーク
または基準ブロックである測定対象物の表面
の前記主軸の中心軸線方向の変位を前記主軸に対して垂直な方向への送りに合わせて測定する変位測定器と、前記テーブルに取り付けられた
前記測定対象物を前記変位測定器により前記主軸を90°毎に割り出して測定し、前記主軸をその中心軸線周りに0°と180°及び90°と270°に割り出したときの測定結果から
前記測定対象物の表面の突出部または凹部の座標を求め、前記主軸の位相が0°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標と、180°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標との差、及び、前記主軸の位相が90°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標と、270°のときの前記主軸の送り方向の前記突出部または凹部の座標との差から、前記主軸の中心と前記変位測定器の中心との
前記主軸に対して垂直な方向のずれ量を算出して補正値として記憶する変位測定装置とを具備し、前記変位測定器によるワークの実測定時の測定値を前記変位測定装置に記憶した補正値で補正するようにした工作機械が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主軸の中心と主軸に取り付けられた変位測定器の中心とのずれ量を迅速かつ高精度に測定可能となる。また、本発明によれば、測定対象物は、形状、寸法が予め既知の基準ブロックに限られないので、工作機械自身が現在加工した形状、寸法が正確には未知のワークを用いて心出しを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1を参照すると、本発明の好ましい実施の形態による工作機械10は、立形マシニングセンタを構成しており、工場の床面に固定された基台としてのベッド12、ベッド12の前方部分(手前側)の上面で前後方向またはY軸方向に移動可能に設けられたテーブル14、ベッド12の後端側(奥側)で同ベッド12の上面に立設、固定されたコラム16、コラム16の前面で左右方向またはX軸方向に移動可能に設けられたX軸スライダ18、X軸スライダ18の前面で上下方向またはZ軸方向に移動可能に設けられたZ軸スライダ20、該Z軸スライダ20に取り付けられ主軸24を回転可能に支持する主軸頭22を具備している。
【0013】
テーブル14は、ベッド12の上面において水平なY軸方向(
図1の紙面に対して垂直な方向)に延設された一対のY軸案内レール12aに沿って往復動可能に設けられており、テーブル14の上面には測定対象物としてのワークWが固定される。ベッド12には、テーブル14をY軸案内レール12aに沿って往復駆動するY軸送り装置として、Y軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたサーボモータ(図示せず)が設けられており、テーブル14には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。テーブル14には、また、Y軸方向のテーブル14のY軸方向の座標位置を測定するY軸スケール28が取り付けられている。測定対象物として寸法、形状が予め明らかとなっている基準ブロックを用いてもよい。
【0014】
X軸スライダ18は、コラム16の上方部分の前面おいてX軸方向(
図1では左右方向)に延設された一対のX軸案内レール16aに沿って往復動可能に設けられている。コラム16には、X軸スライダ18をX軸案内レール16aに沿って往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたサーボモータ(図示せず)が設けられており、X軸スライダ18には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。コラム16には、また、X軸スライダのX軸方向の座標位置を測定するX軸スケール26が取り付けられている。
【0015】
Z軸スライダ20は、X軸スライダ18の前面においてZ軸方向(
図1では上下方向)に延設された一対のZ軸案内レール18aに沿って往復動可能に設けられている。X軸スライダ18には、Z軸スライダ20をZ軸案内レール18aに沿って往復駆動するZ軸送り装置として、Z軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたサーボモータ(図示せず)が設けられており、Z軸スライダ20には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。X軸スライダには、また、主軸24のZ軸方向の座標位置を測定するZ軸スケール30が取り付けられている。
【0016】
X軸スケール26、Y軸スケール28、Z軸スケール30は、送り軸位置読取り装置34に接続されており、送り軸位置読取り装置34が読み取ったX、Y、Zの座標位置に関するデータがNC装置42に送出され、NC装置42によって、X軸、Y軸、Z軸の各駆動装置のサーボモータ(図示せず)へ供給される電力(電流値)が制御される。
【0017】
主軸頭22は、Z軸に平行な鉛直方向に延びる中心軸線O周りに回転可能に主軸24を支持している。主軸頭22は主軸24を回転駆動するサーボモータ(図示せず)を有している。該サーボモータは、主軸頭22のハウジングの外側に取り付けるようにできるが、主軸頭22のハウジング内面にステーターコイル(図示せず)を設け、そして主軸24にローターコイル(図示せず)を配設して所謂ビルトインモータとしてもよい。主軸頭22は、また、主軸24の割出し回転位置を測定するロータリーエンコーダのような回転センサ38を有している。回転センサ38は主軸24の回転位置読取り装置40に接続されており、回転位置読取り装置40によって読み取られた主軸24の割出し回転位置が主軸24の位相としてNC装置42に送出される。NC装置42には、また、後述する変位測定装置36が接続されている。
【0018】
主軸24は、テーブル14に対面する先端部に工具(図示せず)を装着するための工具装着穴(図示せず)が形成されている。
図1では、この工具装着穴に変位測定器としての変位センサ32が装着されている。変位センサ32は、ケーブル等の有線通信手段または無線LANやブルートゥースのような無線通信手段によって変位測定装置36に接続されている。変位センサ32は、一般的に対象物の物理変化量をさまざまな素子で検知し、その変化量を距離に演算することでセンサから対象物までの距離(変位)を測定する機器であり、例えばレーザービームを用いた光学式変位センサやCCDカメラを用いた撮像式変位センサ、渦電流式変位センサ等の非接触式変位センサや、差動トランス式変位センサ、デジタルスケール式変位センサ等の接触式変位センサがある。本実施の形態では、変位センサ32は、一例としてレーザービームを用いた光学式変位センサである。
【0019】
本実施の形態では、主軸24をX-Y方向に移動させながら、変位センサ32によって該変位センサ32とワークWの表面との間のZ軸方向の距離を測定することによって、ワークWの形状が測定される。変位センサ32からの信号が変位測定装置36に送出され、該変位測定装置36において処理されてワークWの形状に関するデータが生成される。
【0020】
以下、本実施の形態の作用を説明する。
図2〜
図4に示す実施形態おいて、測定対象物としてのワークWは概略直方体のブロック状の部材であり、上面に突出部Rを有している。突出部Rは断面が三角形の畝状に形成されており、直線状に延びる稜線Pを有している。
図2において、直線状の稜線Pは、X軸に対して所定の角度βを以って傾斜している。なお、
図2〜
図4において、突出部Rの断面は、一方の斜辺が他方の斜辺よりも長い不等辺三角形であるが、二等辺三角形であってもよい。
【0021】
本発明の測定方法のメインルーチンを示すフローチャートである
図5において、心出しプロセスが開始される(ステップS10)と、先ず、主軸24の位置決め動作が開始される(ステップS12)。主軸24の位置決め方法のサブルーチンを示すフローチャートである
図6において、位置決め動作が開始されると(ステップS12)、主軸24が、測定開始点へ向けてNC装置42によってX軸、Y軸方向に相対的に送られる(ステップS14)。この操作は、手動で行うこともできる。次いで、変位センサ32からレーザービームを照射し(ステップS16)、Z軸スキップ送りにより測定に適した高さ(Z軸座標位置)へ変位センサ32を位置決めする(ステップS18)。これによって測定開始点が確立される(ステップS20)。これによって、位置決め動作が終了して(ステップS22)、プロセスはメインルーチンへ帰還する。
【0022】
位置決め動作に続いて、位相0°での測定サブルーチンが開始される(ステップS24)。なお、本明細書において「位相」は、主軸24の中心軸線O周りの割出し回転位置を示している。
図7において、測定サブルーチンが開始される(ステップS24)と、先ず、主軸24が測定開始点へ移動する(ステップS26)。次いで、この測定開始点において、中心軸線O周りの主軸24の位相が0°に割り出され(ステップS28)、次いで、変位センサ32からレーザービームが照射される(ステップS30)。変位センサ32は、ワークWの表面からのレーザー反射波によって、ワークWの表面までの距離を測定する。変位センサ32が、このように、ワークWの表面までの距離を測定している間、主軸24は、
図2に示す測定経路1に沿って継続的にX軸方向へ送られる。主軸24がX軸方向へ送られる間、変位センサ32によってワークWの表面までの距離、すなわちワークWの表面の高さの変化が所定の時間間隔で測定され続け、測定データが変位測定装置36へ送出される。その間、送り軸位置読取り装置34によって読み取られた主軸24のX、Y座標が、NC装置42から変位測定装置36へ送出される。変位測定装置36は、ワークWの表面の高さと、該高さが測定されたときのX、Y座標とを関連付けて該変位測定装置36内のメモリに格納する(ステップS34)。
【0023】
主軸24が測定経路1の終端位置(
図2では右端)に到達すると、中心軸線O周りの主軸24の位相0°における測定が終了する(ステップS36)。次いで、ステップS36において、位相270°での測定が終了したか否かが、つまり位相0°、180°、90°及び270°での測定の全てが終了しているか否かが判定される。全ての位相における測定が終了していなければ(ステップS36でNoの場合)、サブルーチンはステップS28へ戻り、中心軸線O周りの主軸24の位相を180°に割り出して、ステップS30〜S34に従ってワークWの形状の測定が行われる。その際、主軸24は、位相0°での測定を終了した位置から、X軸方向へ逆向きに、つまり右側から左側へ測定経路2に沿って送られる。
【0024】
位相180°での測定が終了すると、次に位相90°での測定が、測定経路1に沿って位相0°での測定の場合と同様に行われ、最後に位相270°での測定が、測定経路2に沿って位相90°での測定の場合と同様に行われる。位相270°での測定が終了すると(ステップS36でYesの場合)、測定サブルーチンが終了し(ステップS38)、プロセスはメインルーチンへ戻る。
【0025】
図4A〜
図4Cを参照して、こうして得られた測定結果の変位測定装置36における処理方法を説明する。
図4A、4Bは位相0°及び180°での測定結果、つまり測定経路1、2に沿うワークWの形状の一例を示している。ワークWの畝状の突出部Rは三角形の断面を有しているので、突出部Rを横切るように主軸24をX軸方向へ送りながら、変位センサ32とワークWとの間のZ軸方向の距離を測定することによって、ワークWの形状が、
図4A、4Bに示すように頂点P
0;P
180と、該頂点P
0;P
180から延びる2つの斜辺L
1、L
2;L
3、L
4とを有する上方に凸形の三角形として測定される。
【0026】
位相0°での測定と位相180°での測定は、主軸24の送り方向が互いに反対方向であるが、その測定経路1、2は同一の直線であるので、変位センサ32が主軸24に対して偏心していなければ、位相0°での測定結果から得られる頂点P
0と、位相180°での測定結果から得られる頂点P
180のX座標は一致する。然しながら、変位センサ32の測定中心と主軸24の中心軸線Oとが一致していなけば、
図4Cに示すように、変位センサ32の測定中心と主軸24の中心軸線Oとの間のX軸方向の偏心量δの2倍の長さをもって頂点P
0、P
180のX座標がずれることとなる。
【0027】
既述のようにX座標に関連付けられて変位測定装置36のメモリに格納されている位相0°での測定データに基づき、頂点P
0から延びる2つの斜辺を例えば最小二乗法を用いて直線L
1、L
2により近似して、その交点として頂点P
0の座標を求めることができる。
図4Aにおいて、斜辺を示す直線L
1、L
2は、a
i、b
i(i=1または2)を定数として以下の式にて表すことができる。
L
1:Z=a
1×X+b
1…(1)
L
2:Z=a
2×X+b
2…(2)
頂点P
0ではZ座標が一致するので、頂点P
0を与えるX
0は、式(1)、(2)から以下のようになる。
X
0=(b
2−b
1)/(a
1−a
2)…(3)
【0028】
同様に、
図4Bにおいて、斜辺L
3、L
4を示す直線は、同様にa
i、b
i(i=3または4)を定数として以下の式にて表すことができる。
L
3:Z=a
3×X+b
3…(4)
L
4:Z=a
4×X+b
4…(5)
頂点P
180ではZ座標が一致するので、頂点P
180を与えるX
180は、上記2つの式(4)、(5)から以下のようになる。
X
180=(b
4−b
3)/(a
3−a
4)…(6)
【0029】
図4Cにおいて、位相0°でのX軸方向の偏心量δ
x、すなわち主軸24の中心軸線Oと変位センサ32の測定中心とのX軸方向の偏差は以下の式から求めることができる。
δ
x=(X
180−X
0)/2…(7)
【0030】
位相90°及び270°についても同様の処理を行うことによって、位相90°でのY軸方向の偏心量δ
y、すなわち主軸24の中心軸線Oと変位センサ32の測定中心とのY軸方向の偏差は以下の式から求めることができる。
δ
y=(X
270−X
90)/2…(8)
【0031】
上述の処理は突出部Rの稜線PがY軸に平行に延設されていることを前提としているので、稜線PがY軸に平行でなければ、このようにして求められたδ
x、δ
yは稜線Pの傾斜角βに基づく誤差を含むこととなる。そして、この誤差は突出部Rの稜線PがY軸から逸れる、つまり傾斜角βが小さくなるにつれ大きくなる。
【0032】
以下、X軸に対する突出部Rの稜線Pの傾斜角βに基づく誤差の補正方法を説明する。
ステップS38に続いてワークWの突出部Rの直線状に延びる稜線PのX軸に対する傾斜角βが測定(傾斜角測定)される(ステップS40)。傾斜角の測定サブルーチンを示す
図8を参照すると、先ず、主軸24が傾斜角測定開始点へ移動する(ステップS42)。これは、上述した位相0°での測定のときの開始点であるとともに位相270°での測定終了位置から、Y軸方向に所定の距離dだけオフセットされた位置である。また、このとき主軸24の中心軸線O周りの位相は0°である。次いで、
図7の測定サブルーチンの場合と同様に、変位センサ32からレーザービームが照射され(ステップS44)、傾斜角測定用の測定経路3(
図2参照)に沿って主軸24がX軸方向へ送られる(ステップS46)。その間、NC装置42から主軸24のX、Y座標が変位測定装置36へ送出され、ワークWの表面の高さと、該高さが測定されたときのX、Y座標とが関連付けられて変位測定装置36内のメモリに格納される(ステップS48)。主軸24が測定経路3の終端位置(
図2では右端)に到達すると、傾斜角測定が終了して(ステップS50)、プロセスはメインルーチンへ帰還する。
【0033】
このように、ステップS40(サブルーチンのステップS40〜S50)において、Y軸方向に所定の距離dだけオフセットされた傾斜角測定用の測定経路3(
図2参照)に沿って主軸24をX軸方向へ送りながら、位相0°に関して既述した方法と同様に測定が行われる。距離dだけオフセットしたときに得られる頂点P
dのX座標X
dと、上述した位相0°のときの頂点P
0のX座標X
0とから、X軸に対する稜線Pの延設方向の傾斜角βは以下の式から求められる。
β=tan
-1(d/(X
d-X
0))…(9)
【0034】
X軸に対する稜線Pの延設方向の傾斜角βが、所定の角度β
0よりも小さくなると、傾斜角βによる誤差が無視できないほど大きくなる。そこで、ステップS52において、傾斜角βと角度β
0とが比較され、補正が必要ないと判断される場合(ステップS52でYesの場合)、補正することなく式(7)、(8)に基づきδ
x、δ
yが偏心量として出力される。補正が必要であると判断される場合(ステップS52でNoの場合)、以下の(10)、(11)に基づき補正されたδ
x′、δ
y′が偏心量として出力される。
δ
x′=(X
180−δ
y/tanβ−X
0)/2…(10)
δ
y′=(X
270−δ
x/tanβ−X
90)/2…(11)
【0035】
こうして得られたδ
x、δ
yまたはδ
x′、δ
y′が、変位測定器である変位センサ32の実測定時における測定値を補正するための補正値として用いられる。上述の実施形態では、XZ平面について説明したが、XをYに置き換えることにより、YZ平面についても同様に求めることができる。本実施形態では便宜上、主軸24の90°毎の位相0°、90°、180°、270°をそれぞれ機械座標系のX軸正の方向、Y軸正の方向、X軸負の方向、Y軸負の方向と対応させたが、必ずしも対応させる必要はない。主軸24の任意の位相を0°とし、その方向を測定座標系のX軸の正の方向と定義し、以下、主軸24の位相90°、180°、270°をそれぞれ測定座標系のY軸正の方向、X軸負の方向、Y軸負の方向と定義し、機械座標系と測定座標系との回転方向のオフセット量を把握して両座標系間で測定値を換算可能にしておけば、主軸24の位相0°が任意の方向であっても、上述の説明は成り立つのである。
【0036】
図1には図示しないが、主軸24の先端部にXY軸方向位置微調整機構(手動または自動)を介在させて変位センサ32を装着することができる。上述の方法で求めた補正値を用いてXY軸方向位置微調整機構を調整し、変位センサ32の中心を主軸24の中心と物理的に一致させる。こうすれば、実測定時において測定値を補正することなく、そのまま採用することができる。
【0037】
既述の説明では、測定対象物としてのワークWは、直線状に延びる稜線Pを有した断面が三角形状の突出部Rを有しているが、本発明はこれに限定されず、測定対象物は、主軸24をX軸方向(またはY軸方向)へ送りながら、変位センサ32で測定対象物の表面を測定したときに、1つのピークつまり1つの頂点または1つの底点が確定されるような形状を有していればよい。従って、突出部Rは畝状でなくとも、例えば三角錐、四角錐それ以上の多角形の錐体または錐台、円錐や円錐台、柱体、半球体、回転楕円体の半体部分、或いは、面内に突出している部分という意味でこうした形状の凹所とすることができる。
【0038】
また、既述の説明では変位測定器としてレーザービームを照射する変位センサ32を一例として説明したが、本発明では変位測定器はこれに限定されず、静電容量式や撮像式の変位測定器としたり、或いは、触針の変位を差動トランスやデジタルスケールで検出する接触式三次元変位測定器とすることができる。更に、変位測定器としての変位センサ32は、レーザービームを照射してワークWの表面からのレーザー反射波によって、ワークWの表面までの距離を測定すると説明したが、変位センサ32または変位測定器を、その出力値が測定中常に一定値を保つように、主軸24をZ軸方向に変位させつつ測定対象物としてのワークWまたは基準ブロックの表面に沿って走査させ、測定対象物の表面の形状、寸法を測定するようにもできる。また、工作機械は立形マシニングセンタに限らず、本発明は、横形マシニングセンタ、回転送り軸を有する5軸マシニングセンタ、フライス盤、放電加工機等、少なくとも直交三軸の送り軸を有する工作機械に適用可能である。