特許第5693706号(P5693706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693706
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】安全ベルトのためのテンショナ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   B60R22/46
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-506513(P2013-506513)
(86)(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公表番号】特表2013-525189(P2013-525189A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011001057
(87)【国際公開番号】WO2011134567
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2013年3月4日
(31)【優先権主張番号】102010018512.4
(32)【優先日】2010年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510136301
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、マーチン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ペヒ、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタインバーグ、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フォス、トビアス
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102008032371(DE,A1)
【文献】 特開2000−313314(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/000417(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10216702(DE,A1)
【文献】 特開2011−126311(JP,A)
【文献】 特開2001−063519(JP,A)
【文献】 特開平10−067300(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153097(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00 − 22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車における安全ベルトのためのテンショナ装置(10)において、ガスジェネレータ(17)と、パイプ(16)の中で案内されるピストン(21)とを含んでおり、該ピストンは前記パイプ(16)の中の圧力空間(20)を閉止し、該圧力空間は前記ガスジェネレータ(17)により圧力で付勢可能であり、それによって前記ピストン(21)を引き締め(テンション)運動をするように駆動可能であり、該引き締め運動は前記ピストン(21)の端面(9)に当接する質量体(19a)によって安全ベルトへ伝達可能である、そのようなテンショナ装置において、
前記ピストンの端面(9)は、前記質量体(19a)を受けるように窪んでおり、
前記ピストン(21)は所定の圧力を超過したときに解放可能な貫通孔(1)を有し、前記端面(9)には少なくとも2つの凹部(26)が設けられ、該凹部により、前記質量体(19a)が前記端面(9)に当接している時、前記貫通孔(1)から前記ピストン(21)後側にある空間(25)に、前記引き締め運動(S)の方向の流動接続が成立する構成であり、
前記ピストン(21)は少なくとも2部分で構成され、前記パイプ(16)の内壁に当接する第1の部分(3)と、前記端面(9)が配置された第2の部分(4)とを有し、前記第2の部分(4)は前記第1の部分(3)よりも高い強度を有し、
前記貫通孔(1)は前記端面(9)の中央に配置されており、前記凹部(26)は前記貫通孔(1)を起点として半径方向に前記ピストン(21)の外側縁部まで延び、
前記第1および前記第2の部分(3,4)の間には前記貫通孔(1)を閉止する挿入部品(30)が設けられ、
前記挿入部品(30)はリング円筒状の延長部(27)により半径方向で前記第1および前記第2の部分(3,4)の間に挟み込まれていることを特徴とするテンショナ装置。
【請求項2】
それぞれの前記凹部(26)は同一に寸法決めされていることを特徴とする、請求項1に記載のテンショナ装置。
【請求項3】
前記凹部(26)の面積は合計で前記端面(9)の15−50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のテンショナ装置。
【請求項4】
前記ピストン(21)は前記端面(9)の領域でその他の表面に比べて高い表面硬度を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のテンショナ装置。
【請求項5】
前記第2の部分(4)は金属の深絞り部品によって構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載のテンショナ装置。
【請求項6】
前記第1および/または前記第2の部分(3,4)は半径方向内側に向かって突出して前記貫通孔(1)を狭める鍔部(28,31)を有しており、該鍔部に前記挿入部品(30)が当接することを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載のテンショナ装置。
【請求項7】
前記鍔部(31)は前記第2の部分(4)に配置されており、前記挿入部品(30)は前記圧力空間(20)のほうを向いている前記第2の部分(4)の側に当接しており、事前設定された前記圧力空間(20)の圧力を超過すると前記鍔部(31)に沿ってせん断されることを特徴とする、請求項6に記載のテンショナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている、特に自動車における安全ベルトのためのテンショナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当分野に属する種類のテンショナ装置では、基本的に、引き締めプロセス中に圧力状況が非常に大きく変化するという問題がある。特に、非常に高い圧力ピークは、テンショナ装置の部品が損傷したり、テンショナ装置の運動経過に支障がでるという帰結につながる可能性がある。
【0003】
特許文献1より、過圧防止が行われる着火式の駆動装置がすでに知られており、この過圧防止により、テンショナ装置のパイプ内での事前設定された圧力の超過が防止される。この解決法では、ガスジェネレータの領域でパイプに開口部が設けられており、パイプの中に配置されたガスジェネレータはガスジェネレータスリーブを備えている。事前設定された圧力を超過すると、ガスジェネレータスリーブの壁部がパイプの開口部の中に押し込まれ、その際に、それ自体が破断して開口部を解放する程度にまで変形する。
【0004】
この解決法の欠点は、パイプから外部に向かって圧力が放出され、その際に、高温のジェットあるいは炎の吹き出しさえもが放出され、そのために隣接する部品が損傷しかねないことである。
【0005】
たとえば特許文献2より、ピストンに圧力負荷軽減開口部が設けられており、これによってピストンの手前の圧力室からの圧力低減が可能となる、ピストン・シリンダ構造を備えたテンショナ装置が公知である。同文献に記載されているテンショナ装置では、ベルトシャフトと結合された歯車に係合するラックによって、ピストンの駆動運動が伝達される。同文献に記載されている圧力負荷軽減開口部を介しての圧力の解放のためには、駆動装置の運動方向で見てピストンの後側に、圧力室から圧力が逃げることができる自由空間が存在していることが前提条件となる。
【0006】
特許文献1から公知のテンショナ装置では、このような解決法は原則として可能ではない。引き締め運動を伝達するための駆動装置は、第1の質量体がピストンと直接当接する、駆動される質量体列の後側に構成されているからである。特許文献2から公知の解決法のために必要な自由空間は、ここでは第1の質量体によって少なくとも狭められる。さらに、第1の質量体がピストンの駆動運動中に非常に高い圧力でピストンに当接し、そのために、ピストンにある開口部がふさがれることになるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許第19545795C1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第10212912B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、事前設定された圧力を超過したときに、テンショナ装置の周辺にある部品を脅かすことなく、ピストンの前側にある圧力空間からの過圧を急激に低下させることができる、ピストンによって駆動可能な質量列を備えるテンショナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は本発明によると、請求項1の構成要件を備えるテンショナ装置によって解決される。本発明のその他の好ましい実施形態は、従属請求項、発明の詳細な説明、および添付の図面から明らかとなる。
【0010】
本発明では課題を解決するために、ピストンは事前設定された圧力を超過したときに解放可能な貫通孔を有しており、端面には凹部が設けられており、該凹部により、貫通孔から引き締め運動の方向で見てピストンの後側にある空間への流動接続が、質量体を当接させながら成立することが提案される。
【0011】
本発明による解決法の利点は、成立する流動接続により、ピストンの端面が質量体に当接しているときでも、すなわち引き締め運動中または引き締め運動がブロックされているときでも、圧力空間からの圧力を低減することができるという点に見ることができる。このとき圧力は意図的に、従来技術で知られている解決法で該当するように周囲へは放出されず、それにより、テンショナ装置に隣接する部品が放出される圧力によって脅かされることがない。
【0012】
さらに、少なくとも2つの凹部が端面に設けられることが提案される。2つまたはそれ以上の凹部を端面に配置することによる利点は、圧縮ガスの流動によって引き起こされる質量体に働く圧力変化を均一化することができ、それにより圧力放出中にも、質量体が片側で端面との接触を失って場合により揺動することがないという点にある。
【0013】
このとき、質量体に作用する圧力のできる限り均一な変化は、それぞれの凹部が放射対称および/または同一に寸法決めされていることによって実現することができる。
【0014】
特に、均一かつできる限り迅速な圧力低下は、貫通孔が端面の中央に配置されており、凹部は貫通孔を起点として半径方向でピストンの外側縁部まで延びていることによって実現できることが判明している。
【0015】
さらに、凹部(1つまたは複数)の面積が合計で端面の表面全体の表面の15−50%であることが提案される。端面の凹部の面積の提案される割合により、圧力が迅速に低減され、それにもかかわらず、質量体が十分な面積割合を介してピストンの端面に当接し、ピストンが当接する端面の部分が過度に高い負荷によって作用する温度で溶融したり、破損したりする危険がないことが保証される。このとき凹部の表面の割合は、凹部がなければ第1の質量体が当接するはずのピストンの端面の面積に対するものである。
【0016】
さらに、ピストンは端面の領域で他の表面に比べて高い表面硬度を有していることが提案される。端面の高い表面硬度により、端面が質量体の当接面の領域で変形し、材料の変形によって凹部が閉じてしまうことが防止される。このとき高い表面硬度は、端面の領域での表面処理によって、または、パイプに当接する密閉区域の領域での表面の的確な軟化によって実現することができる。ここで重要なのは、ピストンがパイプに対する密閉性に関わる要求事項を満たすだけでなく、端面を通じての力伝達に関する要求事項も満たすことである。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態は、ピストンが少なくとも2部分で構成されており、パイプの内壁に当接する第1の部分を有するとともに、端面が配置された第2の部分を有しており、第2の部分は第1の部分よりも高い強度を有しているという点に見ることができる。2部分からなるピストンの実施形態により、力伝達の領域で必要な強度を有していると同時に、密閉面の領域で必要な弾性を有するようにピストンを製作することができ、このことは特に、引き締めプロセス中にピストンが湾曲したパイプの中で案内され、湾曲したパイプの過程でパイプ壁部に対して相対的にわずかな運動を行わざるを得ない場合に利点がある。
【0018】
この場合に特別に低コストな解決法は、第2の部分が金属の深絞り部品によって構成されることによって具体化されていてよい。それにより、第2の部分を低コストに大量生産で製作することができ、このとき特に、凹部の成形を深絞り法で一緒に行えるという利点がある。
【0019】
さらに、第1の部分と第2の部分の間には貫通孔を閉止する挿入部品が設けられることが提案される。挿入部品を使用する利点は、挿入部品を材料選択と寸法決めに関して、圧力空間に生じている圧力と、ピストンの他方の側の空間の圧力との間で事前設定された圧力差を超過したときに破断し、それによって圧力補償を可能にするように、個別的に設計することができるという点に見ることができる。違った圧力差のときに貫通孔を解放させることが意図されるケースについて、挿入部品を設計的に変更するか、または別の材料からなる挿入部品と取り替えるだけでよく、その他の点でピストンを改変しなくてよい。
【0020】
さらに、挿入部品はリング円筒状の延長部で第1の部分と第2の部分の間に半径方向で挟み込まれることが提案される。リング円筒状の延長部により、挿入部品を半径方向で固定することができる。さらに、それによって挿入部品を軸方向での変形に抗して固定することができ、その結果、挿入部品は開口部を解放するために前段階で軸方向に膨らむのではなく、挿入部品の設計により定義される事前設定された圧力差が生じると、事前の変形なしに急激に破断する。
【0021】
さらにこのような急激な破断は、第1および/または第2の部分が半径方向内側に向かって突出して貫通孔を狭める鍔部を有しており、この鍔部に挿入部品が当接することによって惹起もしくは補助することができる。鍔部は挿入部品が圧力負荷を受けたときに、挿入部品で生成される相応のせん断力による挿入部品の破断を促進するせん断エッジとして作用する。
【0022】
さらにこの場合、鍔部は第2の部分に配置されており、挿入部品は圧力空間のほうを向いている第2の部分の側に当接し、圧力空間内で事前設定された圧力を超過すると鍔部に沿ってせん断されることが提案される。ピストンの第2の部分は第1の部分よりも高い強度を有しており、第2の部分は端面で質量体に支持されているので、挿入部品に作用する圧力は第2の部分を介して質量体に伝達される。第2の部分と質量体はすでにそのテンショナ駆動出力の伝達という機能に基づき、もともと相応に強固かつ形状安定的に設計されているので、それによって挿入部品は特別に形状安定的なモジュールに支持され、事前設定された圧力差を超過すると確実に破断し、破断の時点が当該モジュールの変形に左右されることがない。
【0023】
次に、好ましい実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面には個別に次のものを見ることができる:
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】パイプの中で案内されるピストンを備える、ベルト巻取り器に連結されたテンショナ装置である。
図2】端面に4つの凹部を備えるピストンを示す等角図である。
図3】端面に対する視線方向から見た図2のピストンである。
図4】端面に3つの凹部を備えるピストンを示す等角図である。
図5図4のピストンを示す断面図である。
図6】テンショナ装置のパイプの中の質量体が当接する、2部分からなるピストンである。
図7】ピストンの各部分の間に設けられた挿入部品を備える、2部分からなるピストンである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に模式的に示すベルト巻取り器は、側方脚部13を備えるハウジング11と、これに支承される、図示しない安全ベルトのためのベルト巻取りシャフト12と、作動後にベルト巻取りシャフト12に作用するテンショナ装置10とを含んでいる。テンショナ装置10は、ベルト巻取りシャフト12と回転不能に結合された、たとえば外歯15を有する駆動輪14と、ガス圧を生成するための特に着火式のガスジェネレータ17と、駆動輪14を介してガスジェネレータ17をベルト巻取りシャフト12と接続するパイプ16とを含んでいる。パイプ16は、ハウジング11の一部である、または別案として別個のコンポーネントであってもよい、パイプ壁24で構成されている。
【0026】
パイプ16の中には、ガスジェネレータ17で生成されるガス圧によって惹起される引き締め運動を、駆動輪14を介してベルト巻取りシャフト12へ伝達するために、一列の金属の球形の質量体19が設けられている。ベルト巻取り器は、質量体列19と駆動輪14との間の相互作用領域18の構成に関して、ならびに、場合により設けられる駆動輪14とベルト巻取りシャフト12との間のクラッチ装置の構成に関して、限定されるものではない。摩擦の少ない力伝達をするために、質量体19の外径はパイプ16の内径よりも若干小さいのが好都合である。
【0027】
さらにパイプ16の中には、図1には模式的にのみ図示するピストン21が設けられており、このピストンは、ガスジェネレータ17と質量体列19との間の領域23に、すなわち力伝達方向で見て質量体列19の最初の質量体19aの直前に、配置されるのが好都合である。ピストン21は、ガスジェネレータ17によってガス圧で付勢可能なパイプ16内の圧力空間20を閉止し、それによりピストン21は、ガスジェネレータ17により圧力空間20が圧力で付勢されたときに、引き締め運動をするように駆動可能である。ピストン21の引き締め運動は、質量体19と駆動輪14により構成される力伝達装置によって、ベルト巻取りシャフト12へと伝達され、それによってシートベルトが引き締められる。
【0028】
図2図3には、互いに90°の角度で放射対称に配置された4つの凹部26を備える、本発明によるピストン21の実施例を見ることができる。これらの凹部26は、中央に配置された貫通孔1から、ピストン21の半径方向外側の縁部まで直線状に延びている。
【0029】
図4図5には、ピストン21が第1の部分3と第2の部分4の2部分から組み合わされてなる、ピストン21の別案の実施形態を見ることができる。第1の部分3は、たとえば弾性的なプラスチック、たとえばPOMで製作されており、ピストン21の本体を形成するのに対して、第2の部分4は金属の深絞り部品として構成されており、ピストン21の端面9を形成する。第2の部分4は、中央で円筒状の区域4aをなすように深絞り法で成形されており、この区域が貫通孔1に押し込まれている。さらに端面9には、互いに120度の角度で配置され、同じく中央の貫通孔1に連通する、3つの凹部26が刻設されている。
【0030】
図6にはピストン21のさらに別の実施形態を見ることができ、本発明のより良い理解のために、パイプ16の内部および当接する質量体19aが示されている。ピストン21は、この実施例でも、第1の部分3および第2の部分4の2部分から構成されている。第1の部分3は、圧力空間20を密閉するためにパイプ16の内壁に当接するシールリップを備えている。第2の部分4は、質量体19aのほうを向いている第1の部分3の側でこれと結合されており、質量体19aが当接するピストン21の端面9を形成する。ピストン21の端面9には、貫通孔1からピストン21の半径方向外側の縁部まで延びる凹部26が設けられている。第2の部分4は、第1の部分3よりも高い表面硬度と強度を有しており、それにより、ピストン21の表面は端面9の領域で、引き締め運動中に作用する力によって変形することがなく、そのために凹部26が圧縮されることがない。第1の部分3は意図的に強度と表面硬度の低い材料で構成されており、それにより、シールリップ22は相応に変形する能力を有しており、引き締め運動中にピストン21がわずかに横に動いただけで、あるいは湾曲したパイプ形状の中でも、密閉をするようにパイプ16の内壁に当接する。
【0031】
貫通孔1は、図5図6にも見られるように、区域1aと区域1bとによって形成されており、図5の実施形態における区域1bと、図6に示す実施形態における区域1aは、それぞれウェブ7によって閉止されている。ウェブ7の壁厚と材料によって事前設定される圧力空間20の圧力を超過すると、ウェブが破断し、それに応じて貫通孔1を解放する。
【0032】
ウェブ7が破断すると、圧力は、圧力空間20から貫通孔1および凹部26を介して、引き締め運動Sの方向で見てピストン21の後側にある空間25へと逃げることができ、そのために、質量体19aと端面9との間に間隙が存在している必要はない。それにより、テンショナ装置の全負荷のもとでも過圧防止が確実に機能する。
【0033】
図7には、リング円筒状の延長部27と、貫通孔1を閉止する破断区域29とを備えるカップとして構成された挿入部品30が間に設けられた、2つの部分3および4を備えるピストン21の発展例を見ることができる。挿入部品30はリング円筒状の延長部27により、半径方向では第1の部分3と第2の部分4の間に、および軸方向では貫通孔を狭める第1および第2の部分3および4の2つの鍔部28および31の間に、それぞれ挟み込まれている。そのようにして挿入部品30は、軸方向でも半径方向でも、部分3および4の間で固定的に挟み込まれている。鍔部28は寸法決めに基づいて、および素材としてのプラスチックの使用に基づいて、ばねとして作用し、それにより鍔部28は、挿入部品30および第2の部分4が挿入されたときにわずかに撓むことができ、その際に自らが破損したり損傷したりすることがない。
【0034】
圧力空間20の圧力が上昇し、その結果として、挿入部品30の異なる側で印加される圧力の事前設定された圧力差の超過が生じると、挿入部品30は破断区域29の領域で破断し、このとき破断は、この場合にせん断エッジとして作用する鍔部31のエッジのところで始まる。挿入部品30はリング円筒状の延長部により半径方向で部分3および4の間に挟み込まれているので、その際に挿入部品30の変形は、特に破断区域29の変形は、軸方向で制限される。挿入部品30の破断は、鍔部31のエッジに当接している破断区域29の個所で始まり、次いで、その後の過程では破断個所が鍔部31のエッジに沿って円周方向にせん断される。
【0035】
このとき挿入部品30は、高い強度を有し、端面9で質量体19aに支持される第2の部分4に支持されている。第2の部分4により、挿入部品30は相応の機械的な支えを受けるので、挿入部品30に印加される圧力差が的確に挿入部品30の破断へとつながり、その際に、第2の部分4が事前にさほどの変形を受けることがなく、そのために破断の時点が影響を受けることがない。第2の部分4と挿入部品30はいずれも金属の深絞り部品として製作されていてよい。いずれの場合でも第2の部分4は、成形または材料選択によって実現される、挿入部品30よりも高い形状安定性を有しているのがよく、それは、挿入部品30が事前設定された圧力差で破断するようにするためである。
【0036】
挿入部品30は、第1の部分3の貫通孔1の内径よりもわずかに小さい外径を有しており、それにより、挿入部品30は遊び嵌めをもって貫通孔1に収容されており、それによって第1の部分3に半径方向力を及ぼすことがない。さらに第1の部分3には、第2の部分4がピストン21の軸方向で凹部26の領域において嵌合式に当接する支持面32が形成されており、それにより、第1の部分3に対する第2の部分4の予定位置が規定されており、挿入部品30に対する圧力が制限される。
【0037】
さらに挿入部品30には、破断区域29の領域に約0.1mmの幅をもつミクロ穴33が設けられている。ミクロ穴33は、圧力空間20と、ピストン21の後側にある空間25との間の圧力補償を可能にするものであり、そのために破断区域29が破断される必要はない。このような圧力補償が有意義なのは、たとえばベルトテンショナが作動しており、引き続いて、ベルト巻取り器のその後の取扱のために圧力が逃がされるべき場合である。ミクロ穴33の配置により、図4に示すピストン21の外套面にある溝34を省略することができる。さらに、破断区域29の破断をミクロ穴33によって促進することができる。
【0038】
さらにミクロ穴33により、引き締め運動に抗して、および圧力空間20にまだ残っている圧力に抗して、力制限運動の開始時にピストン21の運動を可能にすることができる。いずれの場合にも、ミクロ穴33によって圧力空間20と空間25との間で圧力補償が可能であり、そのために破断区域29が破断される必要はなく、すなわち、空間25の圧力と圧力空間20の圧力との間の所定の圧力差を超過したかどうかに左右されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7