特許第5693718号(P5693718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693718
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】燃料圧送装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 23/12 20060101AFI20150312BHJP
   F04C 14/22 20060101ALI20150312BHJP
   F02M 37/06 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   F04B23/12
   F04C14/22 C
   F02M37/06 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-520029(P2013-520029)
(86)(22)【出願日】2011年6月9日
(65)【公表番号】特表2013-536345(P2013-536345A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2011059556
(87)【国際公開番号】WO2012010373
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2013年1月21日
(31)【優先権主張番号】102010031622.9
(32)【優先日】2010年7月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨスト クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ファイト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゾメラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン マイアー−ザールフェルト
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−093751(JP,A)
【文献】 特表2002−530588(JP,A)
【文献】 米国特許第06293253(US,B1)
【文献】 特表平11−509605(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0088437(US,A1)
【文献】 特許第2587665(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/12
F02M 37/06
F04C 14/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射装置に用いられる燃料圧送装置であって、該燃料圧送装置が、圧送ポンプ(10)と少なくとも1つの高圧ポンプ(16)とを備えており、圧送ポンプ(10)によって燃料が、蓄え容器(12)から高圧ポンプ(16)の吸込み側に圧送されるようになっており、該高圧ポンプ(16)によって燃料が、高圧範囲(18)に圧送されるようになっている、内燃機関の燃料噴射装置に用いられる燃料圧送装置において、圧送ポンプ(10)が、調整可能な押退け容積を有しており、これによって、圧送ポンプ(10)の不変の回転数で可変の燃料量が圧送されるようになっていることを特徴とする、内燃機関の燃料噴射装置に用いられる燃料圧送装置。
【請求項2】
圧送ポンプ(10)が、ゼロ圧送量と最大の量との間で変化する可変の燃料量を圧送するようになっており、最大の量が、圧送ポンプ(10)の最大の押退け容積によって付与されている、請求項1記載の燃料圧送装置。
【請求項3】
調整可能な押退け容積が、制御圧を介して調整されるようになっている、請求項1または2記載の燃料圧送装置。
【請求項4】
制御圧が、圧送ポンプ(10)の吐出し側(6)における燃料圧である、請求項3記載の燃料圧送装置。
【請求項5】
制御圧が、圧送ポンプ(10)の吐出し側(6)に設けられた燃料フィルタ(38)と高圧ポンプ(16)の吸込み側との間の燃料圧である、請求項3記載の燃料圧送装置。
【請求項6】
制御圧が、蓄え容器(12)に通じる戻し通路(8)内の燃料圧である、請求項3記載の燃料圧送装置。
【請求項7】
制御圧が、高圧範囲(18)内の燃料圧である、請求項3記載の燃料圧送装置。
【請求項8】
燃料が、蓄え容器(12)に通じる戻し通路(8)内に、高圧ポンプ(16)の吸込み側に設けられたオーバフロー弁(10)によって逃がし制御されるようになっている、請求項6記載の燃料圧送装置。
【請求項9】
燃料が、蓄え容器(12)に通じる戻し通路(8)内に、高圧範囲(18)に設けられた圧力調整弁(22)によって逃がし制御されるようになっている、請求項6記載の燃料圧送装置。
【請求項10】
調整可能な押退け容積に付加的に調整圧によって影響が与えられるようになっている、請求項3記載の燃料圧送装置。
【請求項11】
調整圧が、圧力調整弁(15)を介して調整されるようになっている、請求項10記載の燃料圧送装置。
【請求項12】
調整圧が、機関運転点に関連してかつ/または高圧範囲(18)内の圧力に関連して調整されるようになっている、請求項10または11記載の燃料圧送装置。
【請求項13】
圧送ポンプ(10)が、調整可能なベーンポンプ、調整可能な外接歯車ポンプ、調整可能なローラセルポンプ、調整可能な内接歯車ポンプまたは調整可能な振り子スライダポンプである、請求項1記載の燃料圧送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に用いられる燃料圧送装置であって、該燃料圧送装置が、圧送ポンプと少なくとも1つの高圧ポンプとを備えており、圧送ポンプによって燃料が、蓄え容器から高圧ポンプの吸込み側に圧送されるようになっており、該高圧ポンプによって燃料が、高圧範囲に圧送されるようになっている、内燃機関の燃料噴射装置に用いられる燃料圧送装置に関する。
【0002】
背景技術
このような燃料圧送装置およびその機能は、すでにRobert Bosch GmbH社の刊行物「Diesel−Speichereinspritzsystem Common−Rail(ISBN−978−3−86522−010−3)」または欧州特許出願公開第1195514号明細書に基づき公知である。この公知の燃料圧送装置は、電気的に駆動される圧送ポンプを有している。この圧送ポンプによって、燃料が高圧ポンプの吸込み側に圧送される。この高圧ポンプによって、燃料は高圧範囲に圧送される。この高圧範囲から、少なくとも間接的に燃料噴射装置の少なくとも1つのインジェクタに燃料が供給される。高圧範囲に形成された圧力に対する信号をセンサ装置を介して獲得する電気式の制御装置が設けられている。この電気式の制御装置によって、圧送ポンプの電気式の駆動装置が可変に制御され、これにより、回転数を変えることによって圧送ポンプの燃料圧送量を変化させることができる。これにより、運転条件に適合された圧送ポンプの燃料圧送量が可能となる。しかし、圧送ポンプには、駆動出力に関して高い要求が課されていて、電気式の制御・センサ装置が必要となる。
【0003】
発明の開示
本発明に係る燃料圧送装置によれば、圧送ポンプが、調整可能な押退け容積を有しており、これによって、同じ回転数で可変の燃料量が圧送されるようになっている。
【0004】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、圧送ポンプが、ゼロ圧送量と最大の量との間で変化する可変の燃料量を圧送するようになっており、最大の量が、圧送ポンプの最大の押退け容積によって付与されている。
【0005】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、調整可能な押退け容積が、制御圧を介して調整されるようになっている。
【0006】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、制御圧が、圧送ポンプの吐出し側における燃料圧である。
【0007】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、制御圧が、燃料フィルタと高圧ポンプの吸込み側との間の燃料圧である。
【0008】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、制御圧が、蓄え容器に通じる戻し通路内の燃料圧である。
【0009】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、制御圧が、高圧蓄圧器内の燃料圧である。
【0010】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、燃料が、蓄え容器に通じる戻し通路内に、高圧ポンプの吸込み側に設けられたオーバフロー弁によって逃がし制御されるようになっている。
【0011】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、燃料が、蓄え容器に通じる戻し通路内に、高圧範囲に設けられた圧力調整弁によって逃がし制御されるようになっている。
【0012】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、調整可能な押退け容積に付加的に調整圧を介して影響が与えられるようになっている。
【0013】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、調整圧が、圧力調整弁を介して調整されるようになっている。
【0014】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、調整圧が、機関運転点に関連してかつ/または高圧蓄圧器内の圧力に関連して調整されるようになっている。
【0015】
本発明に係る燃料圧送装置の有利な態様によれば、圧送ポンプが、調整可能なベーンポンプ、調整可能な外接歯車ポンプ、調整可能なローラセルポンプ、調整可能な内接歯車ポンプまたは調整可能な振り子スライダポンプである。
【0016】
請求項1の特徴部に記載の特徴を備えた本発明に係る燃料圧送装置は、圧送ポンプが、調整可能な押退け容積を有しており、これによって、同じ回転数、つまり、不変の回転数で可変の燃料量を圧送することができるという利点を有している。不変の回転数で燃料圧送量を変化させる可能性によって、電気式の駆動装置と制御・センサ装置とを介した燃料圧送量の調整を不要にすることができ、これによって、コストを節約することができる。圧送ポンプは機械的にまたは電気的に駆動することができ、不変の回転数で燃料圧送量を変化させることができる。
【0017】
従属請求項の手段によって、本発明の有利な改良態様および改善態様が可能となる。
【0018】
燃料圧送装置の第1の有利な態様では、圧送ポンプが、ゼロ圧送量と最大の量との間で変化する可変の燃料量を圧送する。最大の量は、圧送ポンプの最大の押退け容積によって規定される。燃料圧送量を変化させることができる範囲が幅広いことによって、燃料圧送量を高圧範囲内の燃料要求に最適に適合させることが可能となる。付加的な構成部材、たとえば圧送ポンプの電気式の駆動装置、この電気式の駆動装置を調整するための電気式の制御装置または燃料圧送量を高圧ポンプの要求に適合させる調量ユニット(ZME)は不要となる。
【0019】
本発明の有利な改良態様では、調整可能な押退け容積が、制御圧を介して調整される。圧送ポンプの燃料圧送量を高圧範囲内の要求に適合させるために、別の外的な制御装置が使用される必要はない。さらに、圧力検出のためのセンサユニットが不要となる。なぜならば、圧力が測定される必要がなくなり、圧送量に直接影響を与えるからである。これによって、コストが削減され、低圧回路の構造が簡単になる。
【0020】
別の有利な改良態様では、制御圧が、圧送ポンプの吐出し側における燃料圧である。この態様では、圧送ポンプが高圧範囲内の燃料要求に最適に適合される。別の構成部材、たとえばオーバフロー弁および調量ユニットが使用される必要はない。圧送ポンプによって、高圧ポンプにより必要となる燃料量が常に圧送され、過剰に圧送される燃料が逃がし制御される必要がないので、燃料消費率が低下させられる。
【0021】
制御圧が、吐出し側に組み込まれた燃料フィルタと高圧ポンプの吸込み側との間の燃料圧であると特に有利である。圧送ポンプは、燃料フィルタの圧力損失に関係なく、高圧ポンプの吸込み側における圧力を発生させる。影響量、たとえば燃料フィルタの負荷状態または温度に起因した燃料フィルタの目詰りは補償される。
【0022】
制御圧が、蓄え容器に通じる戻し通路内の燃料圧であるとさらに有利である。この解決手段でも、調量ユニットを省略することができるので、別の構成部材の使用が減少させられる。過剰に圧送された燃料が制御圧として働き、これによって、圧送ポンプのアクチュエータの別の構成が可能となる。
【0023】
構成に応じて、燃料が、蓄え容器に通じる戻し通路内に、高圧ポンプの吸込み側に設けられたオーバフロー弁によって逃がし制御されるかまたは燃料が、蓄え容器に通じる戻し通路内に、高圧範囲に設けられた圧力調整弁によって逃がし制御される。
【0024】
制御圧が、高圧蓄圧器内の燃料圧であると特に有利である。これによって、電気的な実際値検出、電気的な信号処理および電気式のアクチュエータなしに高圧蓄圧器内の圧力を調整する調整回路が得られる。さらに、高圧蓄圧器に対する圧力調整弁の省略が可能となる。
【0025】
調整可能な押退け容積が、調整圧を介して調整されるとさらに有利である。この調整圧は、電気式の制御装置と圧力調整弁とを介して変化させられる。これによって、圧送特性を変化させ、ひいては、圧送ポンプの燃料圧送量にコントロールして影響を与える可能性が見出される。機関運転点に応じてまたは高圧蓄圧器内の圧力に関連して、押退け容積を変化させるための調整圧の調整を変化させることができる。
【0026】
調整可能な圧送容積を備えた圧送ポンプとして、ベーンポンプ、外接歯車ポンプ、ローラセルポンプ、内接歯車ポンプまたは振り子スライダポンプが使用されると有利である。なぜならば、公知のポンプ構造を使用することができ、開発手間が減少させられるからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る燃料圧送装置の概略図である。
図2】燃料圧送装置に用いられる、調整可能な押退け容積を備えたポンプの概略的な断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る燃料圧送装置の概略図である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る燃料圧送装置の概略図である。
図5】本発明の第4の実施の形態に係る燃料圧送装置の概略図である。
【0028】
実施の形態
本発明の有利な実施の形態を図面に示し、以下に詳しく説明する。
【0029】
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る燃料圧送装置が概略図で示してある。この燃料圧送装置は、燃料を蓄え容器12から吸い込む圧送ポンプ10を有している。この圧送ポンプ10によって、燃料は、同じく燃料圧送装置の構成要素である少なくとも1つの高圧ポンプ16の吸込み側に圧送される。圧送ポンプ10の駆動は、機関または高圧ポンプ16によってクラッチ、歯車または歯付きベルトを介して機械的に行うことができる。択一的には、圧送ポンプ10が、可変の出力ひいては可変の回転数または一定の出力および回転数で運転することができる電動式の駆動装置を有していてよい。
【0030】
少なくとも1つの高圧ポンプ16によって、燃料は、燃料圧送装置の、たとえば高圧蓄圧器18を有する高圧範囲18に圧送される。この高圧範囲18から、1つまたはそれ以上のインジェクタ20に燃料が供給される。本実施の形態では、内燃機関の各シリンダに1つのインジェクタ20が対応配置されている。
【0031】
圧送ポンプ10は、高圧ポンプ16に配置されていてもよいし、高圧ポンプ16内に組み込まれていてもよいし、高圧ポンプ16から遠ざけられて、たとえば蓄え容器12内にまたは蓄え容器12と高圧ポンプ16との間のハイドロリック管路内に配置されていてもよい。高圧ポンプ16は少なくとも1つのポンプエレメントを有している。そして、このポンプエレメントは、ストローク運動で駆動されるポンプピストンを有している。高圧ポンプ16は固有の駆動軸を有することができる。この駆動軸によって、カムまたは偏心体を介してポンプピストンのストローク運動が行われる。高圧ポンプ16の駆動軸は、内燃機関によって、たとえば伝動装置またはベルト伝動装置を介して機械的に駆動され、これによって、高圧ポンプ16の回転数が内燃機関の回転数に比例している。択一的には、高圧ポンプ16が固有の駆動軸を有しておらず、ポンプピストンのストローク運動が、内燃機関の軸に設けられた偏心体またはカムによって行われることが提案されていてもよい。本実施の形態では、複数の高圧ポンプ16が設けられていてもよい。また、択一的には、ハイドロリック的な操作が提案されていてもよい。
【0032】
圧送ポンプ10は少なくとも1つの高圧ポンプ16から遠ざけられて、たとえば蓄え容器12内に配置されていてもよい。この場合には、圧送ポンプ10が少なくとも1つの高圧ポンプ16の吸込み側にハイドロリック管路6を介して接続されている。このハイドロリック管路6内には、汚れ粒子が高圧ポンプ16と高圧範囲18とに達することを阻止するために、燃料フィルタ38を配置することができる。
【0033】
高圧範囲18には、圧力調整弁22を設けることができる。この圧力調整弁22によって、高圧範囲18に形成される圧力がコントロールされる。高圧範囲18に過度に高い圧力が存在する場合には、余剰の燃料が圧力調整弁22を介してハイドロリック管路2を通って、蓄え容器12に通じる戻し通路8内に達するようになっている。したがって、高圧範囲18には、内燃機関の運転パラメータに関連して必要となる圧力を発生させることができる。
【0034】
高圧ポンプ16の駆動範囲からの余剰の燃料は、ハイドロリック管路28を介して戻し通路8ひいては蓄え容器12に案内されるようになっている。必要となる燃料よりも多くの燃料が、圧送ポンプ10によって高圧ポンプ16の吸込み側に圧送されると、余剰の燃料は、高圧ポンプ16に設けられたオーバフロー弁34を通ってハイドロリック管路28を介して戻し通路8ひいては蓄え容器12に案内されるようになっている。
【0035】
さらに、インジェクタ20の戻し燃料は、ハイドロリック管路4を介して戻し通路8ひいては蓄え容器12に案内されるようになっている。
【0036】
図2には、燃料圧送装置に用いられる、調整可能な押退け容積を備えたポンプが概略的な断面図で例示してある。このポンプはハウジング40を有している。このハウジング40内には、少なくとも1つまたはそれ以上のベーン44を備えたロータ42が位置している。このロータ42は、紙面に対して垂直に中心点M1を通って延びる軸線を中心として回転する。
【0037】
円形のステータリング46が、第1の調整ピストン48と第2の調整ピストン50とによって挟み込まれている。両調整ピストン48,50は互いに反対の側に配置されている。さらに、高さ調整ねじ(図示せず)によるステータリング46の別の支持点が存在していてよい。円形のステータリング46の軸線は中心点M2を通って延びている。第1の調整ピストン48の裏面には、ハイドロリック管路26を介して制御圧が加えられる。この制御圧は、本実施の形態では、燃料圧送装置の内部の燃料圧によって提供される。第2の調整ピストン50は第1の調整ピストン48と逆向きに作用し、ばね52によって規定の位置に保持される。制御圧とばね力とによって、2つの力が互いに逆方向でステータリング46に作用する。
【0038】
このステータリング46の内部では、電気的にまたは機械的に駆動されるロータ42が回転させられて、このロータ42に案内されたベーン44が、遠心力によってステータリング46に向かって押圧される。燃料を搬送するために必要となる仕切り室54は、ロータ42の回転によって徐々に大きくなり、この場合、燃料を蓄え容器12から吸い込む吸込み通路56を介して燃料で充填される。最大の仕切り室容積の達成によって、仕切り室54が吸込み側から分離され、更なる回転時に吐出し側との接続を獲得する。更なる回転時には、仕切り室54が狭められ、液体を吐出し通路58を介して、高圧ポンプ16の吸込み側に通じるハイドロリック管路内に押圧する。
【0039】
第1の調整ピストン48に加えられる燃料圧から生じる力と、ばね52が第2の調整ピストン50に加える力とに関連して、ステータリング46がハウジング内で移動させられる。両力が等しい大きさである場合には、ステータリング46は中心位置に位置しており、両中心点M1,M2は合致している。この場合には、燃料の圧送量がゼロ圧送量に戻される。すなわち、圧送量がゼロとなる。
【0040】
燃料圧が減少させられ、これによって、ばね52による力が、第1の調整ピストン48に加えられる燃料圧から生じる力よりも大きくなると、ばね52がステータリング46を偏心的な位置、つまり、中心点M1,M2がもはや合致していない位置に移動させる。吸込み側と吐出し側とが互いに分離されるので、圧送ポンプ10は再び燃料を押し退ける。中心点M1,M2の間隔が増加するにつれて、ポンプの押退け容積がより大きくなる。
【0041】
圧送ポンプ10は、機械式のまたは電動式の駆動装置を介して同じ回転数、つまり、不変の回転数または可変の回転数で運転することができる。圧送ポンプ10の回転数は、圧送される燃料量に影響を与える。制御圧の調整によって、不変の回転数で可変の燃料量を圧送することができる。
【0042】
調整可能な圧送容積を備えた圧送ポンプ10の1つの例が、Bosch Rexroth社の「Verstellbare Fluegelzellenpumpe(調整可能なベーンポンプ), Typ PV7」である。同社のベーンポンプはその構造において前述した圧送ポンプ10と同じであるものの、燃料圧送装置の寸法および要求に適合されなければならない。
【0043】
択一的には、調整可能な圧送容積を備えた圧送ポンプ10として、外接歯車ポンプまたはローラセルポンプまたは内接歯車ポンプまたは振り子スライダポンプが使用されてよい。量調整可能な振り子スライダポンプの1つの例が、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10102531号明細書に示されている。
【0044】
図1に示した実施の形態では、制御圧は、圧送ポンプ10の吐出し側6における燃料圧である。制御圧は第1の調整ピストン48にハイドロリック管路26を介して作用し、これによって、圧送ポンプ10の押退け容積に影響を与える。吐出し側の燃料フィルタ38が設けられている場合には、択一的に制御圧として、燃料フィルタ38と高圧ポンプ16との間の高圧ポンプ16の吸込み側における圧力が使用されてよい。
【0045】
運転条件を変えることによって、短期間、必要となる燃料よりも多くの燃料が圧送ポンプ10によって高圧ポンプ16に圧送されると、ハイドロリック管路6内に増加させられた圧力が形成される。ハイドロリック管路6内の圧力は、過剰に圧送される燃料の量に関連して増加させられる。この増圧によって、第1の調整ピストン48に加えられる制御圧が増加させられ、圧送ポンプ10の押退け容積が減少させられ、ひいては、燃料の圧送量が減少させられる。圧送ポンプ10の燃料量は、高圧ポンプ16の要求に適合させられる。ハイドロリック管路6内の燃料圧が減少させられると、高圧ポンプ16が、高められた燃料要求を有するので、制御圧も減少させられ、圧送ポンプ10が燃料の圧送量を増加させる。圧送ポンプ10の燃料圧送量は高圧ポンプ16の要求に適合される。しかし、同じ効果で低圧回路を簡単にするためには、固有の圧送圧への圧送ポンプ10の調整が行われてよい。
【0046】
図3には、本発明の別の実施の形態が示してある。この実施の形態では、制御圧は、蓄え容器12に通じる戻し通路8内の燃料圧である。蓄え容器12に通じる戻し通路8内では、絞り24によって燃料圧が増加させられる。なお、戻し通路8は、圧送ポンプ10の第1の調整ピストン48にハイドロリック管路26を介して接続されているかまたは直接接続されている。蓄え容器12に通じる戻し通路8に設けられた絞り24は、蓄え容器12に通じる戻し通路8内にジェットポンプ(図示せず)によって背圧が形成される場合には省略することができる。
【0047】
運転条件を変えることによって、短期間、必要となる燃料よりも多くの燃料が圧送ポンプ10によって高圧ポンプ16に圧送されると、オーバフロー弁34によって、余剰の燃料がハイドロリック管路28を介して戻し通路8に逃がし制御される。この戻し通路8内の圧力は、過剰に圧送された燃料の量に関連して増加させられる。戻し通路8内の増圧によって、第1の調整ピストン48に加えられる制御圧が増加させられ、圧送ポンプ10の押退け容積が減少させられ、ひいては、燃料の圧送量が減少させられる。ほんの僅かな燃料しかオーバフロー弁34から戻し通路8内に逃がし制御されない場合には、制御圧は減少させられ、圧送ポンプ10が燃料の圧送量を増加させる。圧送ポンプ10の燃料圧送量は高圧ポンプ16の燃料要求に適合される。
【0048】
択一的には、燃料が、高圧範囲18に設けられた圧力調整弁22によって、蓄え容器12に通じる戻し通路8内に逃がし制御されてよい。この形態では、圧力調整弁22は、高圧蓄圧器18にまたは高圧ポンプ16に直接位置していてもよいし、高圧ポンプ16と高圧蓄圧器18との間に位置していてもよい。圧力調整弁22は電子式の制御ユニットによって調整される。必要となる圧力よりも高い圧力が高圧蓄圧器18に存在している場合には、余剰の燃料が圧力調整弁22によって逃がし制御される。戻し通路8内の圧力は、逃がし制御される燃料の量に関連して増加させられる。戻し燃料の増加によって、戻し通路8内の圧力が絞り24の前方(上流側)で増加させられ、第1の調整ピストン48に加えられる制御圧が増加させられる。圧送ポンプ10の押退け容積が減少させられ、ひいては、燃料の圧送量が減少させられる。ほんの僅かな燃料しか圧力調整弁22から戻し通路8内に逃がし制御されない場合には、制御圧は減少させられ、圧送ポンプ10が燃料の圧送量を増加させる。
【0049】
図4には、本発明の別の実施の形態が示してある。この実施の形態では、制御圧は、高圧蓄圧器18内の燃料圧である。高圧範囲18内の圧力はハイドロリック管路26を通って圧送ポンプ10の第1の調整ピストン48に直接作用し、したがって、圧送ポンプ10の押退け容積に影響を与える。高圧蓄圧器18内に過度に高い圧力が形成されると、圧送ポンプ10の燃料圧送量は減少させられ、高圧蓄圧器18内の圧力が過度に低くなると、圧送ポンプ10の燃料圧送量は増加させられる。その他の場合には、燃料圧送量は一定に保たれる。
【0050】
図示の本発明の全ての実施の形態では、コントロールして押退け容積に影響を与えるために、第2の調整ピストン50の裏面に調整圧を加えることができる。これによって、ばね52のばね力と調整圧とから形成された力が第2の調整ピストン50に作用する。この第2の調整ピストン50に作用する調整圧は、燃料圧送装置の任意の箇所から到来し、第1の調整ピストン48の裏面に作用する制御圧よりも低いことが望ましい。
【0051】
図5には、本発明の別の実施の形態が示してある。この実施の形態では、調整圧は、圧送ポンプ10の吐出し側における燃料圧である。調整圧は、電子式の制御装置19に接続された圧力調整弁15を介してコントロールされる。電気式の制御装置19は、高圧範囲18に設けられた圧力センサ17に接続されている。この圧力センサ17は、高圧範囲18内の圧力に関する情報を電子式の制御装置19に供給する。高圧範囲18内の圧力に関連して、電気式の制御装置19が圧力調整弁15を調整し、したがって、調整圧により圧送ポンプ10の圧送量にコントロールして影響を与える。必要でない燃料は、ハイドロリック管路を介して蓄え容器12に逃がし制御される。圧力調整弁15によって、圧送ポンプ10の第2の調整ピストン50に加えられる力の無段階の調整が可能となる。調整圧を変えることによって、圧送ポンプ10の圧送特性が変化させられ、同じ制御圧で圧送ポンプ10のそれぞれ異なる押退け容積が得られる。
【符号の説明】
【0052】
2 ハイドロリック管路
4 ハイドロリック管路
6 ハイドロリック管路
8 戻し通路
10 圧送ポンプ
12 蓄え容器
15 圧力調整弁
16 高圧ポンプ
17 圧力センサ
18 高圧範囲
19 制御装置
20 インジェクタ
22 圧力調整弁
24 絞り
26 ハイドロリック管路
28 ハイドロリック管路
34 オーバフロー弁
38 燃料フィルタ
40 ハウジング
42 ロータ
44 ベーン
46 ステータリング
48 第1の調整ピストン
50 第2の調整ピストン
52 ばね
54 仕切り室
56 吸込み通路
58 吐出し通路
M1,M2 中心点
図1
図2
図3
図4
図5