【氏名又は名称】ズュート‐ヒェミー イーペー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンジットゲセルシャフト
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶液1が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、二酸化ケイ素及び/又は沈降シリカから選択されるケイ素源を含み、前記溶液2が、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム及び/又は硝酸アルミニウムから選択されるアルミニウム源を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
固体化学に利用できる多数の方法のうち、水熱合成は、ゼオライトの合成のために最も適した方法である。最初のゼオライト合成は、1862年に、St. Ciaire Deville (levyn) および1882年にDe Schulten (analcim) によって、熱水条件下で行われた。
【0003】
均一で明確に特徴付けられた生成物をもたらすための最初のゼオライト合成は、前世紀の半ば頃に行われた。Miltonは、反応性アルミノシリケートゲルを使用して、大きな孔とそれに応じた高い吸着能を有するゼオライトを合成する事に成功した。ほぼ同じ頃、Barreと彼の仲間は、系統的な研究の実行と方法の改良によって、現代のゼオライト合成の原理を確立した。
【0004】
ゼオライト合成のために必要な出発物質は、以下の5種類に分けられる。
−T-原子源、すなわち、例えば、ケイ素及び/又はアルミニウム源
−テンプレート、
−鉱化剤、
−溶媒、および
−場合により、種晶
【0005】
前記T-原子は以下の選択則によって限定される:
−0.223〜0.414のイオン半径比 R (T
n+)/R (O
2-) (Pauling's rule)
−酸素との安定した結合を可能にする電気陰性度
−酸化状態が+2と+5の間にある
−溶解度が、ポリアニオンまたはTO
2-単位の形成に起因して改善される
−結果として得られる構造が、-1と0の間の電荷を有する電荷中心を持つ
【0006】
一般に、ゼオライトの合成のために、以下のケイ素源が使用できる
−ソディウムウォーターグラス(ケイ酸ナトリウム溶液)、メタケイ酸アルカリおよびアルカリウォーターグラス溶液、
−沈降シリカ、
−発熱性ケイ酸、SiO
2-リッチなフライアッシュおよび不溶性ケイ酸塩、
−ケイ素リッチなアルミナ、
−シリカゾル(コロイド様に溶解されたSiO
2)
−有機ケイ素化合物(たいていはオルトケイ酸エステル)
【0007】
アルミニウム源としては、以下のものがよく使用される
−鉱酸または有機酸のアルミニウム塩
−アルミニウムの酸化物または水酸化物およびそのゾル(コロイド状の溶液)
−アルミニウムアルコラート
−アルミニウム元素
−アルミニウムリッチな土壌、アルミニウムリッチなフライアッシュ、
【0008】
一般に、テンプレートは、一価もしくは多価の無機あるいは有機カチオンである。前記テンプレートは、構造指向特性を有し、合成の間に生じるゼオライト構造を安定させる。いくつかの代表的な例を以下に挙げる:
−ゼオライト・フェリエライト(FER)の合成のためのSr
2+もしくはK
+
−ZSM-5(MFI)の合成のためのテトラメチルアンモニウムカチオン
−ゼオライトMCM-61(MSO)あるいはEMC-2(EMT)の合成のためのK
+[18-クラウン-6]
−ゼオライトUTD-1(DON)の合成のための[ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)Co(II)]
+錯体
【0009】
しかしながら、いくつかの合成では非荷電の有機化合物も使用される(例えば、ZSM-35(FER)の合成における、ピロリジンあるいはエチレンジアミンなど)。
【0010】
水酸化物イオンは、主に鉱化剤として働く。鉱化剤の最も重要な機能の一つは、合成中に非晶質アルミノケイ酸塩を溶解することである。しかしながら、鉱化剤は、T-原子を含む種の溶解度を増加させるのにも役立つ。これは、例えば、理想的なpH (おそらく、付加的な緩衝作用)を実現すること、イオン強度の増加(外来イオンの添加)あるいはT-原子の錯体化によってもたらされる。それゆえ、例えばコンプレックス形成特性を有する他の可溶性化合物も鉱化剤としてしばしば使用される。
【0011】
水は主に溶媒として使用される。しかしながら、例えば、ピリジンもしくはグリセロール中のように、非水溶媒中での合成も存在する。水性合成ゲルへのアルコールの混合も同様に実行できる。
【0012】
ゼオライト合成の形成メカニズムのコンセプトを、以下に記載する。たいていの場合、合成ゲルは、ゾル・ゲル法で調製される。理想的には、出発点は一つの溶液もしくは複数の溶液、コロイド(ゾル)または懸濁液であり、適切な混合によって、水熱条件下で晶出する非晶質ゲルに変換される。より明確な理解のために、ゼオライト合成は、以下のステップに分けることができる。
−ゲル調製
−過飽和化
−核形成、および
−結晶成長
【0013】
合成ゲルのモル組成は、反応生成物を決定する最も重要なファクターである。以下の表記が通常使用される:
a SiO
2:Al
2O
3:b MxO:c NyO:d R:e H
2O
【0014】
MおよびNは、例えば、アルカリもしくはアルカリ土類イオンを表し、Rは、有機テンプレートを表す。さらに、係数a〜eは、一モルの酸化アルミニウム(III)に対するモル比を示す。ゲル調製中に、個々の出発混合物がブレンドされ、必要であれば要求されるpHにセットされる。非晶質の沈殿物が生じる(例えば、アルミノケイ酸塩)。得られた生成物(例えば、それらの結晶子サイズ)は、出発混合物のまたは合成ゲルのエイジング、熱処理もしくは超音波処理によって影響され得る。
【0015】
沈殿物の形成後、過飽和にすることは、それが核形成に影響を与えるため重要である。とりわけ、鉱化剤は、それらがゲル調製の際すでに(エイジングステップ中)、あるいは、合成の間(実際の核形成の前)のどちらかに高分子量系を部分的に溶解し、より小さい凝集体をもたらすので、過飽和に必須である。これらは水相に再度溶解することができ、場合により、さらなる結晶核を形成する、既存の結晶核を拡大する、または既存の結晶子の中に取り込まれることができる (R.A. Rakoczy, Hydrothermalsynthese ausgewahlter Zeolithe und ihre Charakterisierung durch Adsorption, Dissertation, University of Stuttgart, 2004)。
【0016】
本発明の枠内に関連するゼオライトL (ケイ酸アルミニウムLTLとも呼ばれる)は、六方晶系の単位格子で結晶化する12-環-細孔のゼオライトシステムを有する。ゼオライトLは、約7.1Åの孔径および約6の平均ケイ素-アルミニウム比を伴う一次元の細孔システムを有する。この大きな孔径のため、ゼオライトLは、長鎖脂肪族化合物等の巨大分子の触媒反応に特に好適である (C. Baerlocher, W.M. Meier, D.H. Olson, Atlas of Zeolite Framework Types, fifth revised edition 2001, Elsevier, Amsterdam-London-New York-Oxford-Paris-Shannon-Tokyo, page 170)。LTL型ケイ酸アルミニウムは、以下の主要な反射 (1.5406Åの波長のCu Kα1) および特有のd (Å) 値を伴う特有のX線回折パターンを示す:
【0017】
【表A】
【0018】
ゼオライトLの合成の最初の説明は、US 3,216,789に見受けられる。これの典型的な合成では、アルミナ水和物が、水酸化カリウムに溶解されることによってアルミン酸カリウムに変換される。コロイド状のシリカゾルはその後混合される。以下の組成を持つ合成ゲルが得られる:
8 K
2O:Al
2O
3:20 SiO
2:200 H
2O
【0019】
前記合成ゲルは、閉鎖可能なガラス容器中で196時間、温度100℃に保たれる。この結晶化プロセスは、撹拌なしで生じる。前記ゼオライトLは、分離と洗浄後に得られる。この物質は、特性X線粉末ディフラクトグラムによって特性を明らかにされる。
【0020】
ゼオライトLの合成は、通常容易ではなく、相-ピュアな(phase-pure)ゼオライトLが得られず、ゼオライトW(MER)がさらに形成されることもよくある。ゼオライトWは、ゼオライトL製造用の前記合成ゲルの中で同時に成長する小孔ゼオライト(8-環-孔、直径5Å未満)である。ゼオライトWは、以下の主要な反射(1.5406Åの波長のCu Kα1)および特有のd (Å) 値を伴うX-線回折パターンを示す:
【0021】
【表B】
【0022】
副産物(例えばゼオライトW等)の存在は、孔の大きなゼオライトLの活性を大幅に減少し得る。それゆえ高純度のゼオライトLを製造することが望ましい。
【0023】
US 5,242,675は、相-ピュアなゼオライトLをもたらすことを目的とする合成方法を開示している。水酸化アルミニウムは、加熱によって苛性アルカリ溶液中に溶解される。水の蒸発量を補充した後、希薄なコロイド状のシリカゾルが添加され、合成ゲルが得られ、撹拌を伴い、150℃にて72時間以内に晶析される。テフロン(登録商標)で補強されたステンレス鋼製圧力容器が使用される。結晶化バッチは合成の間撹拌されなかった。前記プロセスの特徴は、異質な相としてのゼオライトWの形成が、前記希薄なコロイド状シリカゾル溶液に金属塩(例えば、バリウム、マグネシウムもしくはカルシウムの水酸化物)を添加することによって合成ゲルの調製の間、抑制されることである。
【0024】
ゼオライトLのさらなる製造プロセスが、US 4,530,824に記載されている。最初の工程において、アルミノケイ酸ナトリウムからなる「非晶質化合物」が製造され、洗浄され、水酸化カリウム溶液に添加され、水熱条件下で晶出される。
【0025】
上述したケイ素源は、価格の点で大きな差がある。すなわち、ケイ酸ナトリウムの水溶液、特に市販のソディウムウォーターグラス溶液は、沈降シリカ、発熱性ケイ酸より、あるいはコロイド状シリカゾルと比べてさえ、はるかに安価である。これは、可能性のあるアルミニウム源にも同様に当てはまり、硫酸アルミニウムは、アルミン酸ナトリウムまたは活性水酸化アルミニウムよりもはるかに安価である。
【0026】
しかしながら、ケイ酸ナトリウム溶液からの合成ゲルの直接調製は、多すぎるナトリウムを含む組成物をもたらすので、より費用のかからないケイ酸ナトリウム溶液の使用は頻繁に除外される。これらのケースでは、それゆえ、沈降シリカもしくはコロイド状シリカゾル等のより高価な原料を使用しなければならない。
【0027】
ゼオライトおよびゼオライト様物質の商業生産において、得られた生成物の相純度および使用される製剤の費用対効果、すなわち使用した原材料のコストと得られる収量は、特に大きな関心ごとである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、ケイ酸アルミニウム前駆体(混合水酸化物)を製造するための方法を説明する。当該前駆体から、さらなる製造工程によって、ケイ酸アルミニウム、特に構造型LTLのケイ酸アルミニウム(ゼオライトL)を得ることができる。
【0036】
得られた前駆体(混合水酸化物)は任意で洗浄される。その後、前記のアルカリ分はさらに適切なイオン交換によって調節される。さらに、前記前駆体は乾燥されてもよく、それにより保管が可能になり、輸送が容易になる。
【0037】
改変可能な(modifiable)ケイ酸アルミニウム前駆体を使用する明確な利点は、それに続く水熱結晶化が最適に進行するように、これらの前駆体の化学的および物理的性質が、沈殿状態の相応した選択によって又は第二の処理法の相応した選択によって、調節できることである。
【0038】
個々の製造工程、および、ケイ酸アルミニウム前駆体の製造において使用される出発物質は、以下に詳細に記載される。
【0039】
初めに、溶液1および溶液2ならびに任意に少なくとも一種のさらなる溶液(すなわち、一以上のさらなる溶液)が塩基性溶液3と混合される。適切なプロセスによって前記溶液から分離される沈殿物が沈殿する。前記分離は、通常、濾過もしくは遠心分離によって、好ましくは濾過によって行われる。このようにして得られた混合水酸化物は任意に洗浄され、乾燥される。
【0040】
溶液1はケイ素源を含む。溶液1は、さらに、例えばチタン源、ゲルマニウム源、スズ源及び/又はリン源をさらに含むことができる。溶液1は、好ましくはケイ素源とリン源を含み、特に好ましくはケイ素源、チタン源およびリン源を含む。
【0041】
溶液2は、アルミニウム源を含む。溶液2は、さらに、例えばホウ素源、ガリウム源、インジウム源及び/又はリン源を含むことができる。溶液2は、好ましくはアルミニウム源およびリン源、特に好ましくはアルミニウム源、ガリウム源およびリン源を含む。
【0042】
前記任意の少なくとも一種のさらなる溶液は、特に、アルカリ塩、アルカリ土類塩及び/又はアンモニウム塩を含む。前記少なくとも一種のさらなる溶液は、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び/又は水酸化ストロンチウム、好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸アンモニウムを含む。前記少なくとも一種のさらなる溶液として、複数の溶液が使用されることもでき、例えば、一つは炭酸カリウムを含み、他方が炭酸ナトリウムを含み、そして、さらなる一つが水酸化マグネシウムを含むことができる。異なる及び同一の塩の混合物も使用できる。
【0043】
塩基性溶液3は、通常、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化アンモニウムを含み、好ましくは、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウム、特に水酸化カリウムを含む。
【0044】
前記混合水酸化物の生産のため、ひいては前記合成ゲルまたはゼオライトLの生産のためにも、溶液1、溶液2、溶液3および前記任意の少なくとも一種のさらなる溶液の混合物におけるアルミニウムイオンの量に対する利用可能な水酸化物イオンの量が、アルミニウムイオンに対する利用可能な水酸化物イオンの物質量の比(モル比)が1より大きくなるよう、好ましくは1〜5の範囲となるよう、より好ましくは2.5〜4.5の範囲となるよう、特に3.8〜4.2の範囲となるように設定されれば、好都合である。「利用可能な水酸化物イオンの量」という表現は、この溶液混合物中に存在するか、塩基の存在よって形成される水酸化物イオンであって、且つ、水酸化アルミニウムを形成するために、あるいはその後アルミン酸塩(沈殿物中に見出される)を形成するために、Al
3+イオンと反応する水酸化物イオンの量を意味する。溶液1〜3並びに任意のさらなる溶液が、塩基として、水酸化アルカリの形の強い一価の塩基だけを含むシンプルなケースでは、利用可能な水酸化物イオンの物質量は、前記水酸化アルカリの物質量と一致する。他方、水酸化カルシウム等の強い二価の塩基のケースでは、利用可能な水酸化物イオンの物質量は、第二の塩基定数(あるいはプロトン移動反応段階)pK
b2=2.43(Ca(OH
+)
aq)であるため、使用される塩基の物質量の2倍に等しい。対照的に、Na
2CO
3等の適度に強い二価の塩基の場合(第二の塩基定数pK
b2=4.75(HCO
3-))、好ましくは使用される塩基のシンプルな物質量のみが、利用可能な水酸化物イオンの量の計算に考慮される。
【0045】
言い換えれば、前記混合水酸化物の生産のため、ひいては前記合成ゲルあるいはゼオライトLの生産のためにも、溶液1および2、任意のさらなる溶液および塩基性溶液3中で使用される化合物の物質量が式(1)を満たせば、好都合である。
【数2】
前記式中において、
ΣnBaは、使用した塩基Ba(pK
b<8)の物質量に、それぞれ、pK
b<8のプロトン移動反応段階の数nを掛けたものの合計を意味し、
ΣnSrは、使用した酸Sr(pK
a<4.5)の物質量に、それぞれ、pK
a<4.5のプロトン移動反応段階の数nを掛けたものの合計を意味し、
n
Alは、使用したアルミニウムの物質量の合計を意味する。
【0046】
好ましくは、ΣnBaは、使用した塩基Ba(pK
b<5)の物質量に、それぞれ、pK
b<5のプロトン移動反応段階の数nを掛けたものの合計を意味する。
【0047】
前記混合水酸化物の生産のために、ひいては前記合成ゲルあるいはゼオライトLの生産のためにも、溶液1および2、任意のさらなる溶液および塩基性溶液3中で使用される化合物の物質量が、式(1a)を満たすことが好ましい。
【数3】
式中、ΣnBa、ΣnSrおよびn
Alは、上記意味を有する。
【0048】
前記混合水酸化物の生産のために、ひいては前記合成ゲルあるいはゼオライトLの生産のためにも、溶液1および2、任意のさらなる溶液および塩基性溶液3中で使用される化合物の物質量が、式(1b)を満たすことがより好ましい。
【数4】
式中、ΣnBa、ΣnSrおよびn
Alは、上記意味を有する。
【0049】
溶液1および2、任意のさらなる溶液および塩基性溶液3中で使用される化合物の物質量が、式(1c)を満たすことが特に好ましい。
【数5】
式中、ΣnBa、ΣnSrおよびn
Alは、上記意味を有する。
【0050】
前記反応条件の上述した定義のために、すなわち、利用可能な水酸化物イオンの量によって、あるいは式(1)、(1a)、(1b) または (1c)によって、十分な塩基性条件が、溶液1〜3および任意のさらなる溶液の混合物中に広がり、使用したアルミニウムおよびケイ素イオンの基本的に全てが、混合水酸化物として沈殿する。これは、とりわけ、溶液1〜3および任意のさらなる溶液の反応の終わりに、前記混合物のpHがおよそ7〜9の範囲に、特に7.5〜9の範囲にある場合に、達成される。
【0051】
上記式(1)の重要性は、個別の塩基と酸を有する、溶液1および2、任意のさらなる溶液および塩基性溶液3の混合物のための、以下の典型的な表示において概要が述べられる。
【表C】
【0052】
溶液1、溶液2、任意の(少なくとも1種の)さらなる溶液および塩基性溶液3は、通常、水溶液として存在する。任意に、前記溶液は、互いに独立してアルコール-水混合物として存在でき、および任意でさらなる有機溶媒を含むことができる。例えば、一つの溶液が水溶液として存在でき、もう一つの溶液はアルコール-水混合物として存在でき、さらなる溶液は有機溶媒を含む水溶液として存在できる。溶液1、溶液2、任意の(少なくとも1種の)さらなる溶液および塩基性溶液3において使用される好ましいアルコールは、C
1-6アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn-プロパノール、特にエタノール、イソプロパノールおよびn-プロパノールである。前記アルコールまたは前記さらなる有機溶媒が存在する場合、通常、それぞれの溶液の総量に対し、20重量%以下の比率で含まれ、好ましくは0.1〜5重量%の比率にて、特に1〜3重量%の比率にて含まれる。
【0053】
前記ケイ素源の例として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、二酸化ケイ素、沈降シリカ(precipitated silica)あるいは発熱性ケイ酸(pyrogenic silicic acid)等のケイ酸、および、テトラ-C1-C2-アルコキシシラン等のアルコキシシランが挙げられる。ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、二酸化ケイ素、沈降シリカ及び/又は発熱性ケイ酸が好ましいケイ素源であり、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムが特に好ましい。
【0054】
前記チタン源の例として、硫酸チタン、四塩化チタンおよび二酸化チタンが挙げられる。硫酸チタンと四塩化チタンが好ましいチタン源であり、硫酸チタンが特に好ましい。
【0055】
前記ゲルマニウム源の例として、塩化ゲルマニウムおよび水酸化ゲルマニウムが挙げられる。塩化ゲルマニウムが好ましいゲルマニウム源である。
【0056】
前記スズ源の例として、塩化スズ、硝酸スズ、硫酸スズおよび水酸化スズが挙げられる。塩化スズ、硝酸スズおよび硫酸スズが好ましいスズ源であり、硫酸スズが特に好ましい
【0057】
前記リン源の例として、オルトリン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、およびリン酸三ナトリウムが挙げられる。オルトリン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カリウムおよびリン酸三ナトリウムが好ましいリン源であり、リン酸三カリウムおよびリン酸三ナトリウムが特に好ましい。
【0058】
前記アルミニウム源の例として、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムが挙げられる。硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムが好ましいアルミニウム源であり、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウムが特に好ましい。
【0059】
前記ホウ素源の例として、水酸化ホウ素、ボロンニトレート、四ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸が挙げられる。四ホウ酸ナトリウムおよび水酸化ホウ素が好ましいホウ素源であり、水酸化ホウ素が特に好ましい。
【0060】
前記ガリウム源の例として、硝酸ガリウム、硫酸ガリウムおよび水酸化ガリウムが挙げられる。硝酸ガリウムおよび硫酸ガリウムが好ましいガリウム源であり、硫酸ガリウムが特に好ましい。
【0061】
前記カリウム源の例として、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素カリウムおよびリン酸水素二カリウムが挙げられる。水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウムおよび臭化カリウムが好ましいカリウム源であり、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよび硫酸カリウムが、とりわけ、水酸化カリウムが、特に好ましい。
【0062】
前記鉄源の例として、硝酸鉄、硫酸鉄および塩化鉄が挙げられる。硫酸鉄および塩化鉄が好ましい鉄源であり、硫酸鉄が特に好ましい。
【0063】
前記インジウム源の例として、硝酸インジウムおよび硫酸インジウムが挙げられ、硫酸インジウムが好ましい。
【0064】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、溶液1は、ケイ素源、特にケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、二酸化ケイ素及び/又は沈降シリカ、およびリン源を含み、溶液2は、アルミニウム源、特に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム及び/又は硝酸アルミニウムを含み、塩基性溶液3は、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムを含む。
【0065】
本発明にかかる方法のさらに好ましい実施形態において、溶液1は、ケイ酸ナトリウムを含み、溶液2は、硫酸アルミニウムを含み、塩基性溶液3は、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムを含む。
【0066】
本発明にかかる方法のさらに好ましい実施形態において、溶液1は、ケイ酸ナトリウムを含み、溶液2は、硫酸アルミニウムを含み、塩基性溶液3は、アルミン酸ナトリウムを含む。
【0067】
本発明にかかる方法の別の好ましい実施形態において、溶液1は、ケイ酸ナトリウムを含み、溶液2は、硫酸あるいは硫酸溶液を含み、塩基性溶液3は、アルミン酸ナトリウムを含む。
【0068】
溶液1、溶液2、および任意の少なくとも1種のさらなる溶液と、塩基性溶液3を混合することによって得られた沈殿物は、混合水酸化物を得るために、通常濾過によって前記混合溶液から分離される。その後、任意に水で洗浄した後、この混合水酸化物は、例えば、80〜150℃の範囲の温度で、好ましくは100〜130℃の範囲の温度で、特に約120℃の温度で乾燥されてもよい。前記の湿った沈殿物は、湿った状態で保管することも使用することもできるので、乾燥は厳密には必須ではない。
【0069】
分離後、前記任意の乾燥の前と後の両方に、前記混合水酸化物は、水溶液中でのイオン交換によって改質されることができる(例えば、Li
+、Na
+、K
+、Cs
+、Rb
+、NH
4+、Be
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+及び/又はBa
2+で、特にK
+、NH
4+、Mg
2+及び/又はBa
2+で、好ましくはK
+及び/又はNH
4+で)。
【0070】
前記混合水酸化物は、その後、塩基性溶液4中に溶解または懸濁されることによって、合成ゲルに変換されることができる。さらに、前記混合水酸化物は、アルミニウムイオンが、八面体的に取り込まれる場合、バインダーとして好適であり、あるいは、アルミニウムイオンが四面体配位で取り込まれる場合、陽イオン交換(カルシウム-ナトリウム交換)のために好適である。
【0071】
前記塩基性溶液4は、通常、アルカリ塩、アルカリ土類塩及び/又はアンモニウム塩、特に水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び/又は水酸化ストロンチウムを含む。前記塩基性溶液4は、好ましくは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムを含む。前記塩基性溶液4は、特に好ましくは、水酸化カリウムおよび炭酸カリウム、あるいは水酸化ナトリウムおよび炭酸カリウム、あるいは、水酸化カリウムおよび炭酸ナトリウム、最も好ましくは水酸化カリウムおよび炭酸カリウムを含む。
【0072】
前記塩基性溶液4は、通常水溶液として存在する。任意に、前記塩基性溶液4は、アルコール-水混合物および任意にさらなる有機溶媒を含むものとして存在してもよい。塩基性溶液4において使用される好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn-プロパノール(特にエタノール、イソプロパノールおよびn-プロパノール)等のC
1-6アルコールである。前記アルコールまたは前記さらなる有機溶媒が存在する場合、通常、塩基性溶液4の総量に対して、最大20重量%の比率で、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で含まれる。
【0073】
本発明に係る方法で得られる合成ゲルは、特に、ケイ酸アルミニウムの製造のため、特にゼオライトL(構造型LTLのケイ酸アルミニウム)の製造のために使用することができる。このために、前記合成ゲルは水熱処理にかけられ、この際、前記合成ゲルは、通常、閉鎖オートクレーブにおいて、規定の温度で加熱される。水の存在は、オートクレーブ内で圧力の上昇を確実にする。
【0074】
以下の物質量比(モル比)を有する合成ゲルは、ゼオライトLの製造のために特に好適であることが証明されている。
(M
2O+NO)/SiO
2 = 0.15−1.0;
K
+/SiO
2 = 0.20−2.0;
H
2O/SiO
2 = 5.0−30.0;
SiO
2/Al
2O
3 = 3.0−20.0;
ここで、Mは、Li、Na、KおよびNH
4から選択され、Nは、Ba,CaおよびSrから選択される。
【0075】
以下の物質量比を有する合成ゲルが、ゼオライトLの製造のために特に好適である。
M
2O/SiO
2 = 0.40−0.50;
K
+/SiO
2 = 0.30−1.0;
H
2O/SiO
2 = 10.0−20.0;
SiO
2/Al
2O
3 = 5.0−12.0;
ここで、Mは、Na、KおよびNH
4から選択される。
【0076】
Al
2O
3に対するSiO
2の物質量比は、好ましくは7.0〜10.0の範囲にある。
【0077】
この方法によって、ケイ素およびアルミニウムイオンは通常、実質上定量的に沈殿するので、前記SiO
2/Al
2O
3比は、溶液1および溶液2中のケイ素およびアルミニウム源の濃度および量を適切に選択することによって調節することができる。前記SiO
2/Al
2O
3比は、前記混合水酸化物を得るための分離によってごくわずかに変化する。
【0078】
前記(M
2O+NO)/SiO
2比は、合成ゲルの形成のために混合水酸化物に添加される溶液4中のアルカリおよびアルカリ土類イオンの適切な量によって調節することができる。ここで、前記混合水酸化物中にすでに含まれているものは、溶液1〜3並びに前記任意の溶液を起源とするアルカリおよび任意にアルカリ土類イオンであり、前記混合水酸化物中の主に四面体配位で負に帯電したAl四面体ユニット間の電荷を均一にする働きをすることに留意すべきである。混合水酸化物中のカチオンの量は、それゆえ、Al四面体ユニットの負電荷が均一になるのに十分な程度に大きい。これを超えるカチオン量(溶液1〜3並びに前記任意の溶液を起源とする)は、分離および任意の洗浄工程において、大部分が濾液とともに分離され処分されるため、前記混合水酸化物中に存在しない。
【0079】
好ましい実施形態において、本発明に係る方法は、実質的にアルカリ土類を含まない条件下で実施される。
【0080】
別の好ましい実施形態において、本発明に係る前記混合水酸化物及び/又は合成ゲルは、実質的にアルカリ土類を含まない。
【0081】
前記H
2O/SiO
2比は、前記混合水酸化物に適切な量の水を加えることによって調節できる。
【0082】
前記合成ゲルは、水熱処理によってゼオライトL(すなわち、構造型LTLのケイ酸アルミニウム)に変換されることができ、そのために、前記合成ゲルは、通常、閉鎖オートクレーブ中で規定の温度で加熱される。
【0083】
本発明に係る方法で得られる構造型LTLのケイ酸アルミニウムは、好ましくは、400 m
2/g未満、特に220〜380 m
2/gの範囲のBETによる比表面積、及び/又は、30 nm〜5μm、特に50〜3000 nmの範囲の平均粒径D
50を有する。前記平均粒径D
50は、粒子の50体積%が、D
50値より大きい直径を有し、且つ、粒子の50体積%がD
50値より小さい値を有する値を示す。前記平均粒径D
50は、例えば、レーザー粒度分布(DIN 13320-1)によって測定できる。
【0084】
前記比表面積は、1993年7月のDIN 66131による"Brunauer, Emmett and Teller (BET)"に準じたガス吸着によって、本発明の枠組内で測定される。このために、サンプルは、特に350℃・真空下で脱水され、その後77Kで窒素吸着が測定される。
【0085】
本発明に係るケイ酸アルミニウム(ゼオライトL)は、特に炭化水素の吸着あるいは変換のために、とりわけ、脂肪族炭化水素の芳香族化のために好適である。それらは、高い変換速度及び/又は吸着速度によって特徴付けられる。同様に、ゼオライトLは、エチルベンゼン不均化の反応を触媒できることも知られている(H.G. Karge et al., J. Weitkamp, H.G. Karge, H. Pfeifer and W. Holderich (eds.), Zeolite and related Microporous Materials: Studies in Surface Science and Catalysis, Vol. 84、1805-1812, 1994)。
【0086】
以下の実施例は、本発明に係る混合水酸化物または合成ゲルを製造するための方法、並びに、ゼオライトまたはゼオライト様物質を製造するためのその使用を説明する。これらの実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するが、それらは、本発明を説明するために役立つにすぎず、いかなる方法においても本発明を限定するものとして見なされるべきではない。当業者に理解されるように、多数の変更が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の保護の範囲から逸脱することなく、行われ得る。
【実施例】
【0087】
一般的な製造例
水と水酸化アルカリの溶液を、撹拌機を有する沈殿チャンバー内に入れる。少なくとも一つの溶液1と少なくとも一つの溶液2が、特定の温度および特定の圧力でこの溶液に添加され、未加工の前駆体(混合水酸化物)が沈殿する。
【0088】
溶液1は、ケイ素源および任意にチタン源、ゲルマニウム源、スズ源及び/又はリン源を含む。溶液2は、アルミニウム源および任意にホウ素源、ガリウム源、鉄源、インジウム源及び/又はリン源を含む。加えて、さらなる溶液が同時に添加されてもよく(協調した沈殿)、あるいは相次いで添加されてもよい(連続的な沈殿)。これは、例えば、いずれの場合も水溶液中に含まれた硫酸アルミニウムまたはアルミン酸ナトリウム等の混合された原料の使用および適切な投薬を可能にする。任意に前記前駆体の特性に影響を与える有機構造指向剤あるいは他の薬剤の添加も、同様に可能である。得られた未加工の前駆体の懸濁液は、一定期間、特定の温度および特定の圧力にてエイジング処理を施されてもよい。当該バッチは撹拌されてもよいが、これは厳密には必須ではない。
【0089】
前記沈殿した未加工前駆体(混合水酸化物)は、その後適切な固体/液体分離方法(例えば、濾過)によって分離され、母液の付着残留物は、水での洗浄によって取り除かれる。この時点で、得られた未加工前駆体は、直接使用され、乾燥され、あるいは次の処理(イオン交換、含浸など)によって改変されることができる。
【0090】
最終的に、さらなる剤(T-源、構造指向剤、鉱化剤、種晶及び/又は溶媒)が、前記前駆体(混合水酸化物)に添加されてもよい。得られた合成ゲルは、通常の水熱法を用いて結晶化される。
【0091】
例A-混合水酸化物の製造
45.1kgのケイ酸ナトリウム溶液(10.4wt%のNaOH及び26.6wt%のSiO
2、PQ社;溶液1)を受器に入れ、31.1kgの硫酸アルミニウム溶液(8.1wt%のAl
2O
3、Giulini社;溶液2)をさらなる受器に入れる。120dm
3の撹拌容器中で、38.9kgの脱塩水中の5.02kgの水酸化カリウム(86wt%、MERCK)の溶液が調製される(溶液3)。環境気圧(およそ1 bar)および25℃の温度にて、150〜500cm
3/分の体積流量で撹拌しながら、溶液1および2は同時に溶液3の入った前記撹拌容器内に導入される。前記混合水酸化物が、沈殿物の形態で沈殿する。沈殿の進行をモニターするためにpHが記録される。沈殿の終わりに、7.5〜9の範囲のpHが達成される。当該バッチは、その後、25℃および環境気圧(およそ1 bar)での3時間の撹拌を伴って、エージングされる。前記バッチはフィルタープレスに移され、固体部分は分離され、洗浄され、その後乾燥される(120℃、10h)。得られた混合水酸化物A(前駆体)の化学分析は、以下の結果を与える。
【0092】
SiO
2量: 61.1 wt%
強熱減量: 13.3 wt%
Si/Al物質量比: 4.00
K/Al物質量比: 0.75
Na/Al物質量比: 0.31
(Na+K)/Al 物質量比: 1.06
【0093】
さらなる混合水酸化物B、CおよびDが、混合水酸化物Aで記載したのと同じように製造された。使用した溶液1〜3の対応する組成および得られた混合水酸化物を表1に示す。カリウム源が、例および表1および2において、それらの起源に基づいて一部区別されることに留意すべきである。K
3が混合水酸化物のカリウムであり、K
1が水酸化カリウムを由来とする合成ゲル中のカリウムであり、K
2は、炭酸カリウムを由来とする合成ゲル中のカリウムであり、K
totalは、合成ゲル中のカリウム種の合計である。
【0094】
【表1】
【0095】
例1:合成ゲルおよびLTL型のケイ酸アルミニウム(ゼオライトL)の製造
得られた前駆体は、その後以下の合成ゲルの製造のために使用される:
【0096】
圧力容器中で、1.56kgの水酸化カリウム(86wt%、MERCK)および2.26kgの炭酸カリウム(99wt%、PROLABO)を、19kgの脱塩水中に溶解する。これに、7.87kgの上述した混合水酸化物A(前駆体)が添加される。得られる合成ゲルは、以下のモル組成を有し、25℃で環境気圧下で8時間撹拌される:
[1.000 SiO
2 : 0.125 Al
2O
3 : 0.094 K
2O : 0.038 Na
2O] : 0.150 K
2O : 0.200 K
2CO
3: 15.000 H
2O
その後、容器を閉じ、撹拌しながら2時間以内で130℃に加熱する。その後、撹拌機のスイッチを切り、バッチをさらに30時間130℃に保つ。
【0097】
冷却後、懸濁液を作るために前記撹拌機のスイッチをオンにし、圧力容器を完全に空にする。得られた固体は、濾過され、洗浄され、120℃で約10時間乾燥される。得られた生成物は、ゼオライトLに一致する反射ポジションを有するX線粉末ディフラクトグラムを示す(
図1)。
【0098】
得られた生成物の化学分析は、以下のモル組成を与える:
1.00 Al
2O
3 : 1.00 K
2O : 5.80 SiO
2
【0099】
走査型電子顕微鏡による調査は、得られたゼオライト結晶が、0.5μmよりはるかに小さいサイズおよびディスク状の形態を有することを示す(
図2)。
図2から分かるように、過成長(intergrowth)は、平らなディスク状の基本構造の上にさらに発生し得る。当該ディスク状の基礎粒子は、100nm〜1000nmの範囲の直径および50nm〜300nmの高さを有する。直径/高さの比は、1〜3の間になる。結晶の一部について、ゼオライト結晶の直径(D)と高さ(H)が測定され、形態学的なD/H比がここから決定された。加えて、直径範囲と長さ範囲が、少なくとも20の粒子からなるグループについて測定され、求められた。
【0100】
例1で説明したのと同じように、さらなる合成ゲルまたはケイ酸アルミニウムが製造され、以下の例2〜18においてより詳細に記述される。加熱時間は、110℃〜150℃の範囲で2時間、90℃で約1.5時間および170℃で約2.5時間であった。製造された合成ゲルの概要が表2に示される。例1〜18に記載されている合成は表3に示される。最後に、表4は、得られたゼオライトLの主要な特徴を示す。
【0101】
製造例2および3
約10のSiO
2/Al
2O
3比(SAR)を有する混合水酸化物B(表1参照)を使用して、合成ゲルが製造される。
【0102】
塩基性溶液4は、2つのカリウム源である、水酸化カリウムおよび炭酸カリウムを混合することによって製造され、0.15 K
12O/SiO
2および0.20 K
2CO
3/SiO
2の完成ゲル(finished gel)のモル組成が得られる(表2参照、合成ゲルn)。混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.41である。
合成は、170℃で24時間の期間にわたり行われる(例2、表3)。合成の終了後に収集された物質は、X線回析ダイアグラムによれば、純粋なゼオライトLである。例2の最終製品のSi/Al比は3.1である(表4参照)。
【0103】
同じモル比のゲル組成を使用して、前記合成が、より低い温度である130℃で、48時間の合成期間にて実施された(例3、表3)。ゼオライトL型の純物質が、X線回析分析によって同定され、これはゼオライトLがより低い温度およびより長い合成時間でも製造できることを示す。
【0104】
製造例4〜6
約8のSiO
2/Al
2O
3比(SAR)を有する混合水酸化物A(表1参照)を使用して、合成ゲルが製造される。
【0105】
塩基性溶液4は、2つのカリウム源である、水酸化カリウムおよび炭酸カリウムを混合することによって製造され、0.15 K
12O/SiO
2および0.20 K
2CO
3/SiO
2の完成ゲルのモル組成が得られる(表2参照、合成ゲルl)。混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.44である。合成は、150℃で15時間の期間にわたり行われる(例4、表3)。合成の終了後に収集された物質は、X線回析ダイアグラムによれば、純粋なゼオライトLである。
【0106】
同じモル比のゲル組成を使用して、前記合成は、より低い温度である130℃(例5、表3)および110℃(例6、表3)で、30時間および64時間の合成期間それぞれにて実施されることができた。両方のケースで、ゼオライトL型の純物質が、X線回析分析によって同定され、ゼオライトW型の物質に一致するピークは検出されなかった。これらの結果は、ゲル中のSARの10から8への減少(化学組成は一定のまま)が、より短い合成期間及び/又はより低い合成温度で純粋なゼオライトL生成物の形成をもたらすことを示す。
【0107】
例4〜6で得られた最終製品のSi/Al比は、2.9であり(表4参照)、これは混合水酸化物ゲル中のSAR 10で得られる製品の比と非常に類似している(例1〜3)。
【0108】
製造例7
約8.14のSiO
2/Al
2O
3比(SAR)を有する混合水酸化物D(表1参照)を使用して、合成ゲルが製造される。混合水酸化物DのSARは、混合水酸化物AのSARと同一であるが、混合水酸化物Dは、濾過の終わりに乾燥工程を施されなかったため、より高い水分含有量を有する。結晶相の性質に対する混合水酸化物中の水の量の影響が調査された。塩基性溶液4は、2つのカリウム源である、水酸化カリウムおよび炭酸カリウムを混合することによって製造され、0.15 K
12O/SiO
2および0.20 K
2CO
3/SiO
2の完成ゲルのモル組成が得られる(表2参照、合成ゲルm)。混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.44である。合成は、130℃で30時間の期間にわたり行われる(例7、表3)。合成の終了後に収集された物質は、X線回析ダイアグラムによれば、純粋なゼオライトLであり(X線回析ダイアグラム参照)、ゼオライトW相の痕跡は観察されなかった。これは、一定のモル比のゲル組成および一定の合成期間および時間で作業された場合、混合水酸化物中の水分含有量が、ゼオライトLの最終製品の特性に影響を与えないことを示す。それゆえ、乾燥した濾過ケーキの代わりに、湿った濾過ケーキも同様に良好に使用できる。
【0109】
例8
約7の低いSiO
2/Al
2O
3比(SAR)を有する混合水酸化物C(表1参照)を使用して、合成ゲルが製造される。塩基性溶液4は、2つのカリウム源である、水酸化カリウムおよび炭酸カリウムを混合することによって製造され、0.15 K
12O/SiO
2および0.20 K
2CO
3/SiO
2の完成ゲルのモル組成が得られる(表2参照、合成ゲルk)。混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.45である。
合成は、130℃で24時間の期間にわたり行われる(例8、表3)。合成の終了後に収集された物質は、X線回析ダイアグラムによれば、純粋なゼオライトLである。この例は、純粋なゼオライトL生成物が、混合水酸化物ゲル中のSARを7の値に低下させたこれらの合成条件下で合成できることを示す。しかしながら、SARが10(例3)および8(合成5)で実施された合成と対比して、最終製品中のSi/Alモル比ははるかに低く、2.4付近となる。
【0110】
例9〜11
カリウム源として水酸化カリウムのみを含む合成ゲルが製造された。合成ゲル中のSARは、使用する混合水酸化物の性質を変更することによって変動し、9.82(表3、例9、混合水酸化物C)、8.00(表3、例10、混合水酸化物A)および7.02(表3、例11、混合水酸化物B)であった。全てのケースにおいて、塩基性溶液4中で0.15 K
12O/SiO
2の完成ゲルのモル組成が得られ、混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.21〜0.25の範囲となる。収集された物質のX線回析ダイアグラムは、ゼオライトL型の物質と一致するピーク並びにゼオライトW副産物の明確な痕跡を示す(12.4°、16.5°、17.8、28.1および 30.4°の典型的な2θXRD反射から明白である)。
【0111】
これらの結果は、ゲル中のカリウム含量が、純粋なゼオライトL生成物の形成に関与すること;少なすぎるカリウム含量が副産物(例えばゼオライトWなど)の形成をもたらすことを示唆する。
【0112】
例12〜14
少量の水酸化カリウムおよび第二のカリウム源(炭酸カリウム)を含む合成ゲルが製造された。これらのゲルを使用した場合、総カリウム含量は高レベルに保たれた。全てのケースにおいて、塩基性溶液4中で0.10 K
12O/SiO
2および0.20 K
2CO
3/SiO
2の完成ゲルのモル組成が得られ(表2参照)、混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.36〜0.40の範囲となる。合成ゲル中のSARは、使用する混合水酸化物の性質を変更することによって変動し、9.82(表3、例14、混合水酸化物B)、8.00(表3、例13、混合水酸化物A)および7.02(表3、例12、混合水酸化物C)であった。
元の合成ゲル中のSARに関係なく、収集された物質のX線回析ダイアグラムは、ゼオライトL型の物質と一致するピーク、並びに、生成物中の非晶質物質の存在を示唆する広範なシグナル(バックグラウンド)を有する。ゼオライトW副産物の証拠は発見されなかった。これらの結果は、混合水酸化物ゲル中の低アルカリK
12O/SiO
2が、高い総カリウム含量 K
total2O/SiO
2と相まって、結晶化のキネティクスに影響を与えるが、結晶相の性質には影響を与えないことを示す。
【0113】
例15
少量の水酸化カリウムおよび少量の第二のカリウム源(炭酸カリウム)を含む合成ゲルが製造された。全てのケースにおいて、塩基性溶液4中で0.10 K
12O/SiO
2および0.10 K
2CO
3/SiO
2の完成ゲルのモル組成が得られ(表2参照)、混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.26である。合成ゲル中のSARは9.82であった(表3、例15、混合水酸化物B)。
【0114】
収集された物質のX線回析ダイアグラムは、ゼオライトW副産物の痕跡とゼオライトL型の物質の混合物に一致するピーク、並びに、生成物中に非晶質物質の明確な残留物を有する。
この結果は、混合水酸化物ゲル中の低アルカリK
12O/SiO
2が、低い総カリウム含量 K
total2O/SiO
2と相まって、核形成並びにゲルの結晶化のキネティクスに影響を与えることを示す。
【0115】
例16
少量の水酸化カリウムおよび少量の第二のカリウム源(炭酸カリウム)を含む合成ゲルが製造された。完成ゲルのモル組成は、塩基性溶液4中で0.10 K
12O/SiO
2および0.05 K
2CO
3/SiO
2であり(表2参照、合成ゲルb)、混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.21である。
合成ゲル中のSARは9.82であった(表3、例16、混合水酸化物B)。収集された物質のX線回析ダイアグラムは、最終物質が完全に非晶質であることを示す。この結果は、混合水酸化物ゲル中の低アルカリK
12O/SiO
2が、低すぎる総カリウム含量 K
total2O/SiO
2と相まって、もはやゼオライトLの形成をもたらさないことを示す。
【0116】
例17
低い水酸化カリウム含量並びに少量の第二のカリウム源(炭酸カリウム)を含む合成ゲルが製造された。完成ゲルのモル組成は、塩基性溶液4中で0.05 K
12O/SiO
2および0.30 K
2CO
3/SiO
2であり(表2参照、合成ゲルa)、混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.44である。合成ゲル中のSARは8.0であった(表1、混合水酸化物A)。
収集された物質のX線回析ダイアグラムは、最終物質が完全に非晶質であることを示す。この結果は、総カリウム含量 K
total2O/SiO
2が十分高くても、低すぎる混合水酸化物ゲル中のアルカリK
12O/SiO
2は、ゼオライトLの形成をもたらさないことを示す。
【0117】
例18
高い水酸化カリウム含量を有し、第二のカリウム源を有さない合成ゲルが製造された。塩基性溶液4中で0.30 K
12O/SiO
2および0.00 K
2CO
3/SiO
2の完成ゲルのモル組成が得られ(表2参照、合成ゲルo)、混合水酸化物ゲル中の総カリウム含量 K
total2O/SiO
2は0.36である。合成ゲル中のSARは9.82であった(表1、混合水酸化物B)。
収集された生成物のX線回析ダイアグラムは、弱い強度の典型的なゼオライトLのピークを有し、これは、最終物質が多量の非晶質生成物並びにいくらかのゼオライトLを含むことを示す。この結果は、総カリウム含量 K
total2O/SiO
2が十分高くても、強すぎるアルカリ性の混合水酸化物ゲル中のK
12O/SiO
2は、高結晶性ゼオライトLの形成をもたらさないことを示す。
【0118】
これらの例の全ては、混合水酸化物ゲル中の最適な総カリウム含量 K
total2O/SiO
2と相まって(0.35〜0.50の範囲)、混合水酸化物ゲル中の最適なアルカリK
12O/SiO
2
が存在する(0.10〜0.15の範囲)ことを明確に示している。
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】