(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693727
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】傾斜走行時の二輪車のブレーキトルクを調整する方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/26 20060101AFI20150312BHJP
B60T 8/1755 20060101ALI20150312BHJP
B62J 27/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
B60T8/26 K
B60T8/1755 A
B62J27/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-527512(P2013-527512)
(86)(22)【出願日】2011年7月18日
(65)【公表番号】特表2013-541453(P2013-541453A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2011062225
(87)【国際公開番号】WO2012034738
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2013年3月11日
(31)【優先権主張番号】102010040674.0
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011076640.5
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】レメイダ,マルクス
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102008011575(DE,A1)
【文献】
特開平02−216355(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102008021523(DE,A1)
【文献】
特表2008−546586(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/077211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/96
B62J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転手が要求-ブレーキトルク(Mbr,front,des、Mbr,rear,des)を設定し、ホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)に起因する二輪車におけるステアリングトルク(Msteer)が上限値としてのステアリングトルク-限界値(Msteer,lim)を下回り、かつ、最小-ステアリングトルク(Msteer,min)を下回らないように、前記要求-ブレーキトルクが前輪および後輪のホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)に分配される、傾斜走行時の二輪車のブレーキトルクを調整する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
1つの車両ホイールにおいて、必要とされるホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)が完全に道路に伝達可能ではない場合に、別の車両ホイールにおけるホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)の生成勾配を制限する、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、
運転手の前記要求-ブレーキトルク(Mbr,front,des、Mbr,rear,des)を遅延させて有効ホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)に変換する、方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の方法であって、
付加的なホイールブレーキトルクを生成することによって運転手の前記要求-ブレーキトルク(Mbr,front,des、Mbr,rear,des)を超えた減速を行い、前記ホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)に起因するステアリングトルク(Msteer)が前記ステアリングトルク-限界値(Msteer,lim)を下回るように減速を行う、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
実際の走行状態変数(vx, φ)に依存して、および/または、別の車両ホイールにおけるホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)に依存して、付加的なホイールブレーキトルク(Mbr,front、Mbr,rear)を調節する、方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の方法であって、
ホイール上下軸に対するタイヤ接触点の側方間隔(Sfront、Srear)およびホイールブレーキ力(Fbr,front、Fbr,rear)から前輪または後輪におけるホイールヨーモーメント(Mz,front、Mz,rear):
Mz,front=sfront(φ)・Fbr,front
Mz,rear=srear(φ)・Fbr,rear
を検出する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記傾斜角(φ)の関数として前記側方間隔(s)を決定する、方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の方法であって、
液圧ホイールブレーキ装置のブレーキ圧からホイールブレーキ力(Fbr,front、Fbr,rear)を検出する、方法。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の方法であって、
幾何学的因子(γfront、γrear)を考慮して、ホイールヨーモーメント(Mz,front、Mz,rear)からステアリングトルク(Msteer):
Msteer=γfront・Mz,front−γrear・Mz,rear
を検出する、方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の方法であって、
傾斜角(φ)を測定する、方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の方法を実施するための開ループまたは閉ループ制御器。
【請求項12】
請求項11に記載の開ループまたは閉ループ制御器を備える二輪車のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜走行時の二輪車のブレーキトルクを調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車でカーブ走行時に前輪のホイールブレーキ装置が操作された場合、前輪ブレーキトルクにより、二輪車を直立させ、カーブ半径をより大きくさせようとするステアリングトルクが生じる。カーブで前輪にブレーキをかけた場合のステアリングトルクの原因は、タイヤ接触面の有効中心点を示すタイヤ接触点と、前輪の上下軸と、の間の側方間隔にあり、この間隔は、自動二輪車の傾斜角の増大に伴って大きくなる。したがって、ブレーキをかけた場合に生じる不都合なステアリングトルクも傾斜度が増大するにつれて増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の根底にある課題は、傾斜走行時のブレーキプロセスにおける二輪車の走行安全性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴により解決される。従属請求項は適切な改良形態を示す。
【0005】
本発明による方法は、二輪車、特に自動二輪車で、傾斜走行時、特にカーブ走行時にブレーキをかけた場合の走行安全性を高めるために使用することができる。これは、前輪および後輪におけるホイールブレーキ装置のブレーキトルクの自動的な調節により行われる。
【0006】
運転手は、少なくとも1つのブレーキ操作装置を介して要求-ブレーキトルクを設定し、要求-ブレーキトルクは、通例では、割り当てられたブレーキ装置を介して適宜なホイールブレーキトルクに変換される。本発明による方法では、全体として生成されたホイールブレーキトルクが少なくとも運転手の要求-ブレーキトルクに対応するが、しかしながら、ホイールブレーキトルクに起因する二輪車のステアリングトルクが、割り当てられた限界値を超えないように、前輪および後輪におけるホイールブレーキトルクの分配が自動的に行われる点で、これとは異なっているといえる。したがって、前輪ブレーキのみを操作した場合に、専ら、または、付加的に、ホイールブレーキトルクを後輪で生成することができる。反対に、後輪ブレーキのみを操作した場合に、専ら、または、付加的に、ホイールブレーキトルクを前輪で生成することも可能である。さらに混合方式も可能であり、この場合、運転手が前輪ブレーキおよび後輪ブレーキの両方を操作するが、適宜な要求トルクからずらされ、その代わりに一部がそれぞれ他のホイールブレーキ装置により生成される。
【0007】
前輪および後輪におけるホイールブレーキトルクの自動的な分配の背景にはあるのは、傾斜走行時の、前輪におけるブレーキプロセス、および、後輪におけるブレーキプロセスで生じる反対方向のステアリングトルクである。このような傾斜状態は、一般にカーブ走行時に生じるが、しかしながら、基本的には、直進走行時に運転手によって誘発される場合もある。傾斜状態では、タイヤ接触点は、タイヤ周面の中心から側方へ移動し、これがブレーキプロセスで当該車輪の上下軸を中心としたステアリングトルクをもたらす。これは、前輪では、二輪車を直立させるトルクをもたらし、後輪では、後輪の車輪上下軸を中心とした逆方向のトルクをもたらす。ホイールヨーモーメントは、総ステアリングトルクをもたらし、総ステアリングトルクは、前輪および後輪におけるホイールヨーモーメントの割合に応じて全体として直立させるステアリングトルクまたは逆方向のステアリングトルクをもたらす。場合によってはトルクの補正も考慮される。
【0008】
生じたステアリングトルクの値が超過してはならないステアリングトルク-限界値を設定することにより、直立させるステアリングトルクまたは逆方向のステアリングトルクが十分に小さく保持され、これにより、走行特性に影響が及ぼされないか、または、少なくとも著しい影響が及ぼされないことが確保される。しかも、前輪または後輪において運転手により設定されたブレーキ操作とのずれが生じた場合にも、運転手要求ブレーキトルクを完全に実施することができる。
【0009】
例えば、傾斜走行時に運転手が前輪でブレーキをかけた場合、これは直立させるトルクをもたらす。一部を後輪におけるホイールブレーキトルクとしてブレーキトルクを自動的に分配することにより、補正を行う反対方向のステアリングトルクが生成され、総ステアリングトルクは、割り当てられた限界値未満に留まる。
【0010】
適切な改良形態によれば、前輪と後輪との間のホイールブレーキトルクの分配は、最小-ステアリングトルクを下回らないように行われる。カーブにおいて傾斜状態でブレーキをかける場合には、最終的に停止状態で直立位置をとるように自動二輪車を直立させる必要がある。このために不可欠な最小-ステアリングトルクは、ホイールブレーキトルクを適宜に分配することにより得られる。これにより、有利には下限値と上限値との間に位置する総ステアリングトルクが得られる。上限値は、二輪車が、走行安定性、または、少なくとも運転手の主観的な走行感覚を損なう程の高すぎるステアリングトルクを受けることがないことを確保する。下限値は、ブレーキをかけてから停止状態に至るまでの二輪車の直立を容易にする最小-ステアリングトルクを保障する。
【0011】
本方法は、好ましくは、液圧ホイールブレーキとして構成されたホイールブレーキ装置を備える二輪車で使用される。
【0012】
別の適切な構成によれば、車両ホイールで必要とされるホイールブレーキトルクが完全に道路に伝達可能ではない場合には、例えば、坂の頂上通過時の接触力の低下または摩擦比の低下により、他の車両ホイールにおけるホイールブレーキトルクの生成勾配が低減される。これにより、運転手には、自身で二輪車を目標軌道に保持することができるように、自身の反応のための時間が与えられる。
【0013】
さらに別の有利な実施形態によれば、運転手の要求-ブレーキトルクは、遅延されて有効ホイールブレーキトルクに変換される。これによっても、運転手には自身の反応のための時間が与えられる。
【0014】
別の適切な実施形態では、より強く減速を実施することが基本的に可能であり、増大されたホイールブレーキトルクが道路に伝達可能である場合には、実際-ホイールブレーキトルクの合計が運転手の要求-ブレーキトルクを超過する。このような増大された減速度は、必要に応じて運転手支援システムによって、例えば、いわゆる「ブレーキアシスト」によって誘起することができる。この場合、減速は、ホイールブレーキトルクに起因するステアリングトルクが割り当てられた限界値を超過しないように行われる。したがって、ブレーキトルクが増幅される場合にもステアリングトルクに関する限界条件があてはまる。この場合、付加的なホイールブレーキトルクは、実際の走行状態変数に依存して、例えば、車両速度および/または傾斜角の関数として適切に調節される。付加的なトルクが加えられない車両ホイールのホイールブレーキトルクを考慮してもよい。
【0015】
ステアリングトルクの原因となる、前輪または後輪におけるホイールヨーモーメントを検出するために、それぞれのホイール上下軸に対するタイヤ接触点の側方間隔、および、それぞれのホイールブレーキ力が検出され、この場合、傾斜角の増大に伴い側方間隔も大きくなるので、側方間隔は、傾斜角の関数として決定される。車両ホイールにおけるホイールブレーキ力は、それぞれのホイールブレーキトルクから決定され、液圧ホイールブレーキの場合には、ホイールブレーキ力は、一次近似によってブレーキ圧に線形に依存する。
【0016】
ホイールヨーモーメントが明らかな場合には、幾何学的因子を考慮して総ステアリングトルクを検出することができ、幾何学的因子により、例えば、ステアリングヘッド角が上下軸から逸れていることなど二輪車における幾何学的な状況を考慮することができる。幾何学的因子は、それぞれのホイールヨーモーメントと乗算され、この場合、総ステアリングトルクは、幾何学的因子によって重み付けされた前輪におけるホイールヨーモーメントと、割り当てられた幾何学的因子によって重み付けされた後輪におけるホイールヨーモーメントと、の差から生じる。総ステアリングトルクは、ステアリングトルク-限界値を超過しない方が望ましく、このために、ホイールブレーキトルクは、前輪および後輪で適宜に分配される。
【0017】
傾斜角を検出するために、傾斜角を測定する傾斜度センサが、二輪車に適切に設けられている。液圧ホイールブレーキの場合には、前輪ブレーキおよび後輪ブレーキにそれぞれのブレーキ圧を測定することができる圧力センサも適切に配置されている。ブレーキ圧からホイールブレーキ力を検出することができる。
【0018】
本発明による方法は、二輪車のブレーキシステムの構成部分であるか、または、このようなブレーキシステムと通信する開ループまたは閉ループ制御器で行われる。
【0019】
他の利点および適切な実施形態がさらに請求項、図面の説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】傾斜走行時の自動二輪車のブレーキトルクを調整する方法を実施するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、自動二輪車1は、前輪2に前輪ブレーキ3を備え、後輪4に後輪ブレーキ5を備え、この場合、前輪ブレーキ3および後輪ブレーキ5は、それぞれ液圧ブレーキ装置として構成されており、ブレーキ液圧ユニット6を介して液圧液を供給される。運転手は、ハンドルに配置されたブレーキレバー7によって、前輪ブレーキ3のためのブレーキ要求を設定し、足によって操作される別のブレーキレバー8によって、後輪ブレーキ5のためのブレーキ要求を設定する。ホイールブレーキトルクの調節は、開ループまたは閉ループ制御器9の制御信号によって行われ、開ループまたは閉ループ制御器9には、ブレーキレバー7および8の操作に関する情報が伝達され、さらに、特に液圧ブレーキ圧についてのセンサ信号が供給される。自動二輪車1には、さらに傾斜度センサ10が配置されており、この傾斜度センサ10によって路面に対する自動二輪車の傾斜度、または、場合によっては重力方向に対する傾斜度を検出することができる。傾斜角φが、同様に入力信号として開ループまたは閉ループ制御器9に供給される。
【0022】
図2には、傾斜走行時に同時にブレーキをかけた場合の車輪2における幾何学的な関係ならびに力およびモーメントが示されている。車輪上下軸は、符号12により示されており、傾斜度は、路面11に対して垂直な位置からの車輪2の側方変位を示す傾斜角度φによって示されている。傾斜角φの傾斜度では、タイヤ接触面の有効中心点を示す車輪接触点13は、タイヤ周面の中心から側方に逸れている。したがって、車輪接触点13は、車輪2の中心を通るホイール上下軸12に対して側方間隔sを有している。この場合、側方間隔sは傾斜角φの関数である。
【0023】
ブレーキをかけた場合、車輪2には、車輪接触点13にブレーキ力F
brをもたらすブレーキトルクが加えられる。これにより、車輪2の中心までの側方間隔sに基づき、車輪の上下軸12を中心としたホイールヨーモーメントM
zが生じる。
【0024】
傾斜角φが測定により決定され、傾斜角φの関数として側方の間隔sを検出することができる。ブレーキ力F
brは、ホイールブレーキにおける既知のブレーキ圧から、例えば、一次近似で線形依存関係から導出することができる。これらの情報によって、それぞれ前輪および後輪について以下の関係:
M
z, front=s
front(φ)・F
br,front
M
z,rear=s
rear(φ)・F
br,rear
にしたがってホイールヨーモーメントM
z,front、M
z,rearを検出することが可能である。本明細書では、添字“front”によって前輪を示し、添字“rear”によって後輪を示す。
【0025】
ホイールヨーモーメントが明らかである場合には、例えば、ホイール上下軸から逸れたステアリングヘッド角を考慮する際の幾何学的因子γ
frontおよびγ
rearをさらに考慮して、関係:
M
steer=γ
front・M
z,front−γ
rear・M
z,rear
にしたがって総ステアリングトルクM
steerを計算することができる。前輪および後輪におけるホイールヨーモーメントM
z,front、M
z,rearは、反対方向にブレーキ力を加える場合に作用し、総ステアリングトルクM
steerは、前輪および後輪における重み付けされたホイールヨーモーメントの差から計算される。
【0026】
ブレーキトルクを調整する方法では、総ステアリングトルクM
steerの値は、限界値M
steer,limを下回ることが望ましい:
|M
steer| < M
steer,lim
【0027】
したがって、高い走行安定性が確保されることが望ましい。これを達成するために、運転手がブレーキレバーを介して設定する要求-ブレーキトルクM
br, desは、前記条件が満たされるように前輪ブレーキと後輪ブレーキとの間で自動的に分配される。
【0028】
図3には、簡略化した概略図でブレーキトルクを調整する方法を実施するためのフロー図が示されている。第1の方法ステップ20では、運転手によって設定される前輪における要求-ブレーキトルクM
br,front,desおよび後輪における要求-ブレーキトルクM
br,rear,desが検出される。要求-ブレーキトルクの検出は、ホイールブレーキレバーの操作時に生成された液圧により行うことができる。
【0029】
次の方法ステップ21では、傾斜角φが傾斜角センサによる測定によって検出される。この後、ステップ22では、前輪の上下軸を中心としたホイールヨーモーメントM
z,frontおよび後輪の上下軸を中心としたホイールヨーモーメントM
z,rearの計算が行われ、これにより、上述のように総ステアリングトルクM
steerを計算することができる。
【0030】
方法ステップ23では、総ステアリングトルクM
steerの値が、割り当てられたステアリングトルク-限界値M
steer,limを下回っているか否かについて問い合わせが行われる。下回っている場合には、「はい」の分岐(「Y」)に続いて次の方法ステップ24が続行され、前輪および後輪のホイールブレーキが運転手要求に応じて操作される。これに対して、下回っていない場合には、「いいえ」の分岐(「N」)に続いて方法ステップ25が続行され、総ステアリングトルクが割り当てられた限界値を下回らなければならないという方法ステップ23の条件が満たされるように、自動的もしくは運転手に依存してホイールブレーキトルクの分配が行われる。前輪ブレーキおよび後輪ブレーキのための個々の要求-ブレーキトルクの合計から生じる運転手の要求-ブレーキトルクは、前輪ブレーキと後輪ブレーキとの間でホイールブレーキトルクを新たに分配した後にも限界条件として保持されることが望ましい。
【0031】
ホイールブレーキトルクの新たな分配が検出された後に、方法ステップ24が続行され、検出されたブレーキトルクがホイールブレーキに加えられる。
【符号の説明】
【0032】
1…自動二輪車
2…前輪
3…前輪ブレーキ
4…後輪
5…後輪ブレーキ
6…ブレーキ液圧ユニット
7,8…ブレーキレバー
9…開ループまたは閉ループ制御器
10…傾斜度センサ
11…路面
12…上下軸
13…車輪接触点
φ…傾斜角
s…側方間隔
Mz…ホイールヨーモーメント
Fbr…ブレーキ力