特許第5693737号(P5693737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5693737溶液中でフリーラジカル重合によって第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693737
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】溶液中でフリーラジカル重合によって第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20150312BHJP
   C08F 6/10 20060101ALI20150312BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C08F220/18
   C08F6/10
   C08F220/34
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-533096(P2013-533096)
(86)(22)【出願日】2010年10月13日
(65)【公表番号】特表2013-543026(P2013-543026A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2010065328
(87)【国際公開番号】WO2012048740
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2013年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス フォアホルツ
(72)【発明者】
【氏名】アルペルトゥンガ キュークザール
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クローゼンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】パメラ ベーマン
(72)【発明者】
【氏名】マークス デンガー
(72)【発明者】
【氏名】ノアベアト ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラオス パパドポウロス
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−167316(JP,A)
【文献】 特開平07−018014(JP,A)
【文献】 特開2003−252926(JP,A)
【文献】 特開平09−100387(JP,A)
【文献】 特開昭53−132091(JP,A)
【文献】 特開2009−242686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 − 220/70
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)30〜70質量%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC−Cアルキルエステルと、
b)70〜30質量%の、アルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと、
c)0〜10質量%の、さらなる共重合可能なビニルモノマー
から選択されるモノマーの混合物から溶液中でフリーラジカル重合によって第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法であって
1またはそれより多い重合開始剤と、1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物;あるいは
1またはそれより多い重合開始剤と、1またはそれより多い分子量調整剤と、1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物
をモノマーの混合物に添加して重合混合物が得られ、当該重合混合物を2〜24時間にわたり30〜120℃の温度で重合させ
下の成分:
40〜70質量%のモノマーの混合物、
0.01〜5質量%の1またはそれより多い重合開始剤、
0〜2質量%の1またはそれより多い分子量調整剤、
25〜50質量%の、モノマーの混合物であるモノマー、重合開始剤および分子量調整剤を溶解する、1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物
の全量の少なくとも98質量%が重合混合物のために使用され
合混合物を最終的に重合して、少なくとも99質量%のコポリマーへのモノマーの転化率で重合シロップを得て
合シロップを、蒸留もしくは押出により引き続き脱ガスし、かつ脱ガスさせた重合シロップを、顆粒もしくは粉末の形態のコポリマー調整物にさらに微粉砕し
ポリマー調整物は、25000〜75000g/molの分子量(M)、2.1〜2.9の多分散指数および1000質量ppm未満の残留溶剤濃度によって特徴付けされている、第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法。
【請求項2】
モノマーの混合物が、10〜40質量%のメチルメタクリレート、10〜40質量%のブチルメタクリレートおよび30〜70質量%のジメチルアミノエチルメタクリレートからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶剤もしくは溶剤混合物が、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、アセトン、エチルアセテートおよびブチルアセテートからなる群から選択される少なくとも95質量%より多い溶剤もしくは溶剤混合物ならびに5質量%未満の他の溶剤を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
溶剤もしくは溶剤混合物が、95質量%より多いイソプロピルアルコール、5質量%未満の水および1質量%未満の脂肪族溶剤を、少なくとも98質量%まで有している、請求項3記載の方法。
【請求項5】
重合開始剤が、ジラウリルペルオキシド、ジメチル−2,2’−アゾビス−イソブチレート、tert−ブチルペルピバレートもしくはtert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエートまたはそれらの混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
分子量調整剤が、ドデシルメルカプタンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
脱ガス工程を、100〜200℃の温度で2〜10質量%の水をキャリアとしてポリマーシロップに添加する2つの脱ガス帯域を有する二軸スクリュー押出機中で実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術背景
US5,804,676には、重合開始剤および連鎖移動剤の存在下、均一溶液の状態で、75質量%以上のメチルメタクリレートおよび25質量%以下のアルキルアクリレートを有するモノマーの混合物からポリマーを製造する方法が記載されている。重合体は、5〜55質量%のモノマーおよび5〜65質量%の溶剤を含み得る。揮発物を含む該重合体は、バレル、スクリューおよび複数のベントを有する押出機の供給口に直接供給され、該バレルは170〜270℃の温度である。該重合体は、押出機を介して押出され、その際、実質的に全ての揮発物が該押出機の第一ベントを介して分離および回収され、残在揮発物は、該第一ベントの下流に配置されている少なくとも1つの他のベントを介して除去されることで分離される。熱分解率は、3.0質量%以下である。
【0002】
EP0694565Aには、実質的に非水性溶液中で、C−C18アルキルアクリレートもしくはメタクリレート、N−置換されたアクリルアミドもしくはメタクリルアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーを50質量%より多く含む水不溶性ポリマーの均一重合の方法が記載されている。例えば、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤は、十分な水の量で溶解され、その際、水の量は、全溶液の25質量%を超えない。この工程により製造される該ポリマーには、不所望な開始剤の分解副生成物が含まれていない。
【0003】
US6,624,210B1には、経口または皮膚投与形用被覆剤及び付形剤が記載されている。該被覆剤及び付形剤は、アクリル酸もしくはメタクリル酸のラジカル重合されたC−Cエステルおよび官能第三アミノ基を有する他の(メタ)アクリレートモノマーからなるコポリマーを有し、該コポリマーは、粉末形態におけるEUDRAGIT(登録商標)Eであってもよい。コポリマーは自体公知のように、ラジカル重合、塊状重合、溶液重合、ビーズ重合または乳化重合によって得られることが一般的に言及されている。
【0004】
WO2007/082868A1は、50〜90質量%の少なくとも1つの(メタ)アクリル酸のエステル、5〜50質量%の少なくとも1つのオレフィン性不飽和の、フリーラジカル重合可能なアニオン形成性(anionogenic)もしくはアニオン性化合物および共重合された形でさらにフリーラジカル重合可能な化合物を含むポリマーを、アルコールを有する溶液中でフリーラジカル重合により製造する方法に関するものであり、その際、使用される重合開始剤は、少なくとも1つの水溶性の開始剤である。
【0005】
WO2007/113129A1は、溶液中でフリーラジカル重合によりポリマーを製造する方法に関し、使用される重合開始剤はエタノールに可溶な開始剤であり、5〜50質量%の水を含むアルコール溶剤中で溶液重合が行われることを特徴とするものである。
【0006】
CN101475662Aは、医薬品に使用するための低い膜形成温度および適度な透過率のポリメタクリルアミドエステルを製造する方法に関するものである。そのようなポリマーは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリドからなっていてもよい。重合される該モノマー組成物は、5〜15質量%の比較的少ない量の溶剤に溶解される。
【0007】
課題および解決手段
例えば、US6,624,210B1から、第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマー、特に、EUDRAGIT(登録商標)Eの周知のタイプからのコポリマーは、溶液中でラジカル重合することで製造され得ることが知られている。しかしながら、従来のこれらの種のコポリマーは、当局および顧客により要求される安全で持続性のある高い医薬品水準を満たすために、常に塊状重合により製造されていた。市販されている製品として同様の医薬品要件を満たすコポリマー製品を提供する溶液中での重合の詳細は、これまで報告されていない。それ故、本発明の課題は、最終生成物において、特に、例えば分子量の範囲、多分散指数の範囲ならびに残留溶剤濃度およびモノマー濃度について、事実上高い医薬品水準を満たす、溶液中でのフリーラジカル重合による第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法を提供することであった。重合されるモノマーの全く異なるタイプが該方法中で採用されているため、発明者らは、該医薬品要件を満たすと同時に多くの個々の製造工程を調整し、かつ定める必要があった。それ故、上述され、かつ請求されている該方法は当業者の通常の知識を超えるものである。
【0008】
上記課題は、
a)30〜70質量%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC−Cアルキルエステルと、
b)70〜30質量%の、アルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと、
c)0〜10質量%の、さらなる共重合可能なビニルモノマー
から選択されるモノマーの混合物から溶液中でフリーラジカル重合によって第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法であって、
その際、1またはそれより多い重合開始剤、場合により1またはそれより多い分子量調整剤ならびに1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物をモノマーの混合物に添加して重合混合物が得られ、これを2〜24時間にわたり30〜120℃の温度で重合させ、
その際、以下の成分:
40〜75質量%のモノマーの混合物、
0.01〜5質量%の1またはそれより多い重合開始剤、
0〜2質量%の1またはそれより多い分子量調整剤、
25〜50質量%の、モノマーの混合物であるモノマー、重合開始剤および分子量調整剤が溶解する、1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物
の全量の少なくとも98質量%が重合混合物のために使用され、
その際、重合混合物を最終的に重合して、少なくとも99質量%のコポリマーへのモノマーの転化率で重合シロップを得て、その際、重合シロップを、蒸留もしくは押出により引き続き脱ガスし、かつ脱ガスさせた重合シロップを、顆粒もしくは粉末の形態のコポリマー調整物にさらに微粉砕し、
その際、コポリマー調整物は、25000〜75000g/molの分子量(M)、2.1〜2.9の多分散指数および1000質量ppm未満の残留溶剤濃度によって特徴付けされている、第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法によって解決された。
【0009】
発明の詳細
本発明は、
a)30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC−Cアルキルエステルと、
b)70〜30質量%、好ましくは60〜40質量%の、アルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと、
c)0〜10質量%の、さらなる共重合可能なビニルモノマー(モノマーa)もしくはb)とは異なる)
から選択されるモノマーの混合物から溶液中でフリーラジカル重合によって第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法であって、
その際、1またはそれより多い重合開始剤、場合により1またはそれより多い分子量調整剤ならびに1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物をモノマーの混合物に添加して重合混合物が得られ、これを2〜24時間にわたり30〜120℃の温度で重合させ、
その際、以下の成分:
40〜75質量%のモノマーの混合物、
0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の1またはそれより多い重合開始剤、
0〜2質量%、好ましくは0.1〜2質量%の1またはそれより多い分子量調整剤、
25〜50質量%の、モノマーの混合物であるモノマー、重合開始剤および分子量調整剤が溶解する、1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物
の全量の少なくとも98質量%が重合混合物のために使用され、
その際、重合混合物を最終的に重合して、少なくとも99質量%のコポリマーへのモノマーの転化率で重合シロップを得て、その際、重合シロップを、蒸留もしくは押出により引き続き脱ガスし、かつ脱ガスさせた重合シロップを、顆粒もしくは粉末の形態のコポリマー調整物にさらに微粉砕し、
その際、コポリマー調整物は、25000〜75000g/molの分子量(M)、2.1〜2.9の多分散指数および1000質量ppm未満の残留溶剤濃度によって特徴付けされている、第三アミノ基を含む(メタ)アクリレートコポリマーを製造する方法に関する。
【0010】
モノマーの混合物
モノマーの混合物は、
a)30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC−Cアルキルエステルと、
b)70〜30質量%、好ましくは60〜40質量%の、アルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと、
c)0〜10質量%、1〜5質量%または10質量%まで、5質量%まで、2質量%までの、さらなる共重合可能なビニルモノマー(モノマーa)もしくはb)とは異なる)
から選択される。
【0011】
好ましくは、コポリマーは、90〜100質量%、95〜100質量%または99〜100質量%の上述のa)およびb)に基づくモノマーを有するか、あるいは本質的にもしくは専ら、上述のa)およびb)に基づくモノマーからなっていてもよい。
【0012】
好ましくは、モノマーの混合物は、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%のメチルメタクリレート、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%のブチルメタクリレートおよび30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%のジメチルアミノエチルメタクリレートからなる。
【0013】
モノマーa)
「アクリル酸またはメタクリル酸のC−Cアルキルエステル」の用語は、1またはそれより多いアクリル酸またはメタクリル酸のC−Cアルキルエステルを意味するものとする。
【0014】
アクリル酸またはメタクリル酸のC−Cアルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートおよびブチルメタクリレートである。
【0015】
モノマーb)
「アルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル」の用語は、1またはそれより多い、アルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルを意味するものとする。
【0016】
アルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸の適切なアルキルエステルは、US4705695(欄3、64行目〜欄4、13行目)に詳述されている。特に、上述のアルキル基に第三アミノ基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルは、ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノベンジルアクリレート、ジメチルアミノベンジルメタクリレート、(3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルアクリレート、ジメチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルメタクリレート、(3−ジエチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルアクリレートおよびジエチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルメタクリレートが挙げられる。特に好ましいのは、ジメチルアミノエチルメタクリレートである。
【0017】
任意のモノマーc)
「さらなる共重合可能なビニルモノマー」の用語は、1またはそれより多い、さらなる共重合可能なビニルモノマーを意味するものとする。
【0018】
好ましくは、コポリマーは、90〜100質量%、95〜100質量%または99〜100質量%の上述のa)およびb)に基づくモノマーを有するか、あるいは本質的にもしくは専ら、上述のa)およびb)に基づくモノマーからなっていてもよい。
【0019】
しかしながら、本質的な特性をそこなうことなく、0〜10質量%、1〜5質量%または10質量%まで、5質量%まで、2質量%までの少量の範囲内で、上述のa)およびb)に基づくモノマーとは異なり、付加的にビニル共重合可能であるさらなる共重合可能なビニルモノマーc)、例えば、アクリル酸、メタクリル酸など、一般的には、官能アミドもしくはヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル化合物、例えば、メタクリルアミドもしくはヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、ビニルマロン酸、スチレン、ビニルアルコール、ビニルアセテートおよび/またはそれらの誘導体をさらに存在させることも任意に可能である。最も好ましくは、重合化されるコポリマー中に、共重合可能な、さらなるビニルモノマーは、本質的ではない量で、つまり2質量%未満で存在しているか、あるいは全く存在していない。
【0020】
好ましいモノマーの混合物
好ましくは、モノマーの混合物は、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%のメチルメタクリレート、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%のブチルメタクリレートおよび30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%のジメチルアミノエチルメタクリレートからなっていてもよい。
【0021】
最も好ましくは、モノマーの混合物は、25質量%のメチルメタクリレート、25質量%のブチルメタクリレートおよび50質量%のジメチルアミノエチルメタクリレートからなる。得られるコポリマーは、医薬品用途のために使用されていてもよく、EUDRAGIT(登録商標)Eタイプの「アミノメタクリレートコポリマー(USP/NF)」、「塩基性ブチル化メタクリレートコポリマー(basic butylated methacrylate copolymer)(Ph.Eur)」または「アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(JPE)」と呼ばれる。
【0022】
重合混合物
1またはそれより多い重合開始剤、1またはそれより多い分子量調整剤および1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物をモノマーの混合物に添加することで重合混合物が得られ、以下の成分:
40〜75質量%、好ましくは50〜70質量%のモノマーの混合物、
0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.3質量%の1またはそれより多い重合開始剤、
場合により、0〜2質量%、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.2〜1質量%の1またはそれより多い分子量調整剤(連鎖移動剤)、
25〜50質量%、好ましくは35〜45質量%の、モノマーの混合物であるモノマー、重合開始剤および分子量調整剤が溶解する、1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物
の全量の少なくとも98質量%が重合混合物のために使用され(使用された)、あるいは(それぞれ)消費される。
【0023】
「使用される」の用語は、重合工程全体を通じて該成分が初期に使用されることを表すものとする。1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物は、揮発性物質が除去される前に、該重合工程の終了時に存在したままである。しかしながら、重合混合物に対して前述された量で初期に与えられた(使用された)、モノマー、1またはそれより多い重合開始剤および1またはそれより多い分子量調整剤(連鎖移動剤)の本質的な量が、重合工程を通じて反応され、それ故、重合工程の終了後に計量可能な量は存在しない。使用されたこれらの物質は、重合工程を通じて消費された。
【0024】
重合混合物の成分は、通常、少なくとも98質量%まで、好ましくは少なくとも99質量%まで添加する。この場合、2質量%まで、好ましくは1質量%までの上述の成分とは異なる付加的な物質、例えば、UV吸収剤、染料または着色料などの何らかの添加剤などが存在していてもよい。付加的な物質は、本発明において重要ではない。しかしながら、最も好ましくは、重合混合物の該成分は、100質量%まで添加する。
【0025】
溶剤
重合混合物は、重合工程の終了時に、25〜50質量%、好ましくは35〜45質量%の1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物を有していてもよい。
【0026】
溶剤もしくは溶剤混合物は、少なくとも95質量%より多い、好ましくは少なくとも98質量%より多い、最も好ましくは100質量%までの溶剤もしくは溶剤混合物、および5質量%未満、好ましくは2質量%未満の他の溶剤、例えば水を有するか、あるいは少なくとも95質量%より多い、好ましくは少なくとも98質量%より多い、最も好ましくは100質量%までの溶剤もしくは溶剤混合物、および5質量%未満、好ましくは2質量%未満の他の溶剤、例えば水からなっていてもよく、その際、該溶剤もしくは溶剤混合物は、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、アセトン、エチルアセテートまたはブチルアセテートの群から選択されていてもよい。
【0027】
好ましくは、溶剤もしくは溶剤混合物は、少なくとも98質量%までのイソプロピルアルコール、2質量%未満の水および1質量%未満の脂肪族溶剤を有するか、あるいは少なくとも98質量%までのイソプロピルアルコール、2質量%未満の水および1質量%未満の脂肪族溶剤からなっていてもよい。最も好ましくは、イソプロピルアルコールが唯一の溶剤として使用される。
【0028】
好ましくは、1またはそれより多い溶剤もしくは溶剤混合物は、モノマーの混合物であるモノマー、重合開始剤および分子量調整剤が、濃縮時および製造工程中にそれらが使用される条件下で分散もしくは溶解され得るものから選択される。
【0029】
本発明の方法において採用されているモノマーの溶剤混合物は、沸騰している成分、主に溶剤の蒸発および凝縮を介して冷却することができる。
【0030】
重合開始剤
「重合開始剤」の用語は、熱によりもしくは光により活性化すること(spectral activation)によってビニルモノマーのフリーラジカル重合を開始できる物質を意味する。
【0031】
重合混合物は、1またはそれより多い重合開始剤を有するか、あるいは含んでいる。好ましくは、使用される溶剤の沸点付近で分解する(discompose)重合開始剤が選択される。
【0032】
好ましくは、使用され得る重合開始剤は、非水溶性である。水溶性の開始剤は、20℃かつ1013mbarで1リットルの水に少なくとも1gまで、好ましくは少なくとも10gまで溶解し得る。
【0033】
本発明の意義において適切な重合開始剤は、一般に、ペルオキシドタイプまたはアゾタイプの開始剤であってよい。本発明の意義において特に適切な重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル−2,2’−アゾビス−イソブチレート、tert−ブチルペルピバレートもしくはtert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエートまたはそれらの混合物であってもよい。
【0034】
分子量調整剤
重合混合物は、任意に、1またはそれより多い分子量調整剤(連鎖移動剤)を有するか、あるいは1またはそれより多い分子量調整剤(連鎖移動剤)を含んでいてもよい。
【0035】
「分子量調整剤」の用語は、連鎖移動反応によるビニルモノマーのフリーラジカル重合中にポリマーの分子量を制限できる物質を意味する。
【0036】
適切な分子量調整剤は、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノールまたは2−エチルヘキシルチオグリコレートであり、最も好ましくはドデシルメルカプタンである。
【0037】
重合
重合混合物は、30〜120℃、好ましくは50〜100℃、より好ましくは55〜90℃の温度で重合され得る。
【0038】
重合混合物は、2〜24時間、好ましくは4〜16時間または6〜10時間にわたって重合され得る。
【0039】
重合は、以下の工程を用いて実施され得る。
【0040】
重合反応器、例えば100lの攪拌槽を、アルゴンなどの不活性ガスの添加により不活性化させる(inertized)。攪拌は、約60〜80rpmであってよい。
【0041】
モノマーの混合物、例えば約30kgの、溶剤の添加なしもしくは少量の溶剤の添加のみ(8質量%未満)を有するモノマーの混合物を、反応器中に充填させる。
【0042】
反応器の温度を、約60℃〜100℃に上昇させる。反応器の内部温度が約52℃〜58℃に達したら、1またはそれより多い分子量調整剤(連鎖移動剤)を、例えば約0.1〜0.3kg添加する。
【0043】
溶剤混合物中に1またはそれより多い重合開始剤を含む溶液を添加する。重合開始剤の溶剤混合物の溶剤含量は、90〜95質量%の溶剤であってよい。重合開始剤の溶剤混合物の初期投与量(開始剤供給量)は、例えば、0.05〜0.1未満kg/hであってもよい。1時間後、開始剤供給量は、0.1〜0.3未満kg/hに増大させてもよく、2〜3時間後、0.3〜0.5kg/hに増大させてもよい。
【0044】
1またはそれより多くの溶剤もしくは溶剤混合物、例えばイソプロパノールを、2〜4kg/hの投与量(溶剤供給量)で同時に添加してもよい。
【0045】
開始剤供給量および溶剤供給量の投与は、4〜8時間もしくは5〜6時間後に停止させてもよい。
【0046】
6〜10時間または7〜9時間後、重合混合物が、少なくとも99質量%のコポリマーへのモノマーの転化率を有する高粘性の重合シロップになったら、重合反応は、終了しているものとみなすことができる。
【0047】
重合シロップ
重合混合物を最終的に重合して、少なくとも99質量%転化率でのコポリマーへのモノマーの転化率で重合シロップが得られる。
【0048】
脱ガス工程
重合シロップを、揮発性物質を除去するために蒸留または押出により引き続き脱ガスする。除去される揮発性物質は、溶剤、重合されなかったモノマーの残留痕跡(residual traces)ならびに開始剤もしくは分子量調整剤の残余痕跡(remaining traces)および反応生成物であってもよい。
【0049】
好ましくは、脱ガス工程は、100〜200℃の温度で2〜10質量%の水が共沸剤(キャリア)としてポリマーシロップに添加される1またはそれより多い、好ましくは少なくとも2つの脱ガス帯域を有する同方向回転あるいは異方向回転の二軸スクリュー押出機中で実施される。
【0050】
二軸スクリュー押出機のスクリューは、同方向回転であっても異方向回転であってもよい。好ましくは、押出機のスクリューの表面は、鉄を含んでいないか、ほんのわずかな鉄を含んでいる。
【0051】
好ましくは、押出機のスクリューの表面は、精錬されている。好ましくは、押出機のスクリューの表面は、クロム酸塩またはクロム−硝酸塩もしくはチタン−硝酸塩により処理されている。このことは、ポリマー生成物の黄色度指数(420nmでの吸光度)が比較的低く、好ましくは0.1未満、好ましくは0.05未満という利点を有するか、または支援する。
【0052】
二軸スクリュー押出機のスクリューは、同方向回転であっても異方向回転であってもよい。共沸剤の使用は、塊状物(mass)の冷却および摩擦の減少のために有益である。それ故、コポリマーの分解は、共沸剤として水を添加しない押出と比較して少ない。
【0053】
コポリマー調整物
脱ガスされた重合シロップを、顆粒もしくは粉末の形態のコポリマー調整物にさらに微粉砕することができる。「顆粒」の用語は、構造化された顆粒のような、多孔質の発泡体も含むべきである。
【0054】
コポリマー調整物は、公知の分析方法により分析することができ、該ポリマー調整物は、
25000〜75000g/mol、好ましくは40000〜60000g/molの分子量(M)、
2.1〜2.9の多分散指数、
1000質量ppm未満、好ましくは500質量ppm未満の残留溶剤濃度、
0.1未満、好ましくは0.05未満の420nmでの吸光度(黄色度指数)、
1000質量ppm未満、好ましくは500質量ppm未満の全残留モノマー含量
によって特徴付けされ得る。
【0055】
分析方法
分子量(M=質量平均分子量)を決定するための分析方法は、当業者に周知である。一般的に、分子量Mはゲル浸透クロマトグラフィーまたは光散乱法により決定し得る(例えば、H.F. Mark et al., Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd Edition, Vol. 10, pages 1 ff., J. Wiley, 1989参照)。
【0056】
最も好ましくは、本願に記載されているポリマーの分子量(M=質量平均分子量)は、Adler et al. (2005): Molar mass characterization of hydrophilic polymers, 2 Size exclusion chromatography of cationic (meth)acrylate copolymers, e-Polymers, no. 057, p. 1-11 (http:/www.e-polymers.org, ISSN 1618-7229) に詳細に記載されているような、固定相としてポリエステルベースの充填剤(packaging)および固定相としてジメチルアセトアミド(DMAC)を使用しているサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定される。
【0057】
多分散指数(PDI)は、当業者に周知であり、M/M比(質量平均分子量/数平均分子量)の計算により決定される。多分散度は、ゲル浸透クロマトグラフィーもしくはサイズ排除クロマトグラフィー、光散乱測定、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)またはエレクトロスプレー質量分析からの直接的な計算により決定され得る。
【0058】
残留溶剤濃度は、ガスクロマトグラフィー(GC)により決定され得る。GCによる残留溶剤濃度の決定は、当業者に周知である。
【0059】
420nmでの吸光度(黄色度指数)は、イソプロピルアルコール/アセトン(60:40 w/w)における12.5質量%のポリマー溶液および1cmのキュベットの使用による分光測定により決定され得る。試験は、Ph.Eur.2.2.25.にしたがって実施され得る。
【0060】
全残留モノマー含量および個々の残留モノマー含量は、好ましくは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定され得る。HPLCによる全残留モノマー含量および個々の残留モノマー含量の決定は、当業者に周知である。
【0061】
アルカリ価AVの決定のための検定は、Ph.Eur.2.2.20「Potentiometric titration」またはUSP<541>にしたがって実施され得る。0.2gのポリマー(アミノメタクリレートモノマーの量に基づく)を、96mlの氷酢酸および4mlのHOに溶解させる。0.1N過塩素酸を、滴定剤として使用する(DS=乾燥物質)
【実施例】
【0062】
実施例
分析方法
ポリマーへのモノマーの転化率を、揮発性物質の除去の前に、重合工程終了時の試料中にHPLCにより検出される残留モノマーに対する製造工程の開始時に使用されている全モノマーとの比を計算することで決定した。
【0063】
本願に記載されているポリマーの分子量(M=質量平均分子量)を、Adler et al. (2005) e-Polymers, no. 057, p. 1-11 (http:/www.e-polymers.org, ISSN 1618-7229) に詳細に記載されているようなサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定した。
【0064】
多分散指数を、M/M比(質量平均分子量/数平均分子量(SECにより決定))の計算により決定した。
【0065】
残留溶剤濃度を、ガスクロマトグラフィー(GC)により決定した。
【0066】
残留含水量を、Karl Fischer(例えば、Eugen Scholz:Karl-Fischer-Titration. Springer-Verlag 1984, ISBN 3-540-12846-8 or K. Schoeffski: Die Wasserbestimmung mit Karl-Fischer-Titration, in: Chemie in unserer Zeit 2000, 34, 170-175. Abstract参照)にしたがった滴定により決定した。
【0067】
420nmでの吸光度(黄色度指数)は、イソプロピルアルコール/アセトン(60:40 w/w)における12.5質量%のポリマー溶液および1cmのキュベットの使用による分光測定により決定し得る。試験は、Ph.Eur.2.2.25.にしたがって実施し得る。
【0068】
全残留モノマー含量および個々の残留モノマー含量を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定した。試料は、メタノールに溶解させた。メタノール/KH2PO4−バッファー(0.625m、pH2)50:50の添加により、ポリマーを沈殿させ、上澄み液を、較正のためにモノマーの標準対照試料を用いているHMPCにより分析した。
【0069】
重合工程
重合を、以下の工程を用いて100リットルの反応器中で実施した。
【0070】
重合反応器である、100lの攪拌槽を、アルゴンの添加により不活性化させた。攪拌は、70rpmであった。
【0071】
第1表に示されるようなモノマーの混合物を反応器中に充填した。
【0072】
反応器の温度を、約80℃に上昇させた。反応器の内部温度が約55℃に達したら、分子量調整剤であるドデシルメルカプタンを0.2175kg添加した。
【0073】
第2表に示されているような溶剤混合物中に重合開始剤であるtert−ブチルペルピバレートを添加した。重合開始剤の溶剤混合物の初期投与量(開始剤供給量)は、0.08kg/hであった。1時間後、開始剤供給量を、0.16kg/hに調整し、2.5時間後、0.36kg/hに調整した。
【0074】
初期の開始剤供給後、直接、溶剤としてイソプロパノールを、3.0kg/hの投与量(溶剤供給量)で添加した。
【0075】
開始剤供給量および溶剤供給量の投与を、6時間後に停止した。
【0076】
重合反応は、8時間後に終了しているとみなした。
【0077】
製造工程中にそれぞれ使用されかつ消費された重合混合物の全組成が、第3表中に示されている。
【0078】
脱ガス工程
得られる重合シロップを、同方向回転のスクリューを有する二軸スクリュー押出機(製造元 Berstorff社)中に供給した。該押出機は、後方脱ガス帯域(backward degassing zone)および3つの前方脱ガス帯域(forward degassing zone)を有していた。共沸剤として、5質量%の水を重合シロップ塊状物に添加した。関連する押出パラメータは、第4表中に要約されている。
【0079】
コポリマー
押出後、溶融した塊体をストランド(string)の形状で取り出し、ウォーターバスを通じて冷却し、次いで顆粒に微粉砕した。
【0080】
コポリマーへのモノマーの転化率は、99.4質量%であった。
【0081】
分子量(M)は、49300g/molであった。
【0082】
多分散指数は、2.5であった。
【0083】
イソプロパノールの残留溶剤濃度は、250質量ppmであった。
【0084】
残留含水量は、0.2質量%であった。
【0085】
420nmでの吸光度(黄色度指数)は、0.019であった。
【0086】
ジメチルアミノエチルメタクリレート/ブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレートにおける残留モノマー含量は、117/169および129質量ppmであった。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】