(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693754
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】鉄金属含有表面から錆を取り除く方法
(51)【国際特許分類】
C23G 1/08 20060101AFI20150312BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20150312BHJP
C11D 3/12 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
C23G1/08
C11D1/04
C11D3/12
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-550611(P2013-550611)
(86)(22)【出願日】2012年1月20日
(65)【公表番号】特表2014-508220(P2014-508220A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】US2012022004
(87)【国際公開番号】WO2012100146
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年8月6日
(31)【優先権主張番号】13/011,151
(32)【優先日】2011年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】パウリク, マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リンゲンフェルター, ソー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】シルバーネイル, ネイサン ジェイ.
【審査官】
佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0079424(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0037822(US,A1)
【文献】
英国特許第00956927(GB,B)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0056415(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02166075(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0197792(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0130873(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0197786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G1/00〜5/06
C11D1/00〜19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄金属含有表面から錆を取り除くための方法であって、該方法は、該表面を、
(a)カルボン酸;
(b)合成ヘクトライト粘土;および
(c)水
を含む組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記錆は、酸化鉄および/または水酸化鉄を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉄金属は鋼を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記鋼は軟鋼を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸は、脂肪族ヒドロキシ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪族ヒドロキシル酸は、クエン酸を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボン酸は、前記組成物の総重量に基づいて、該組成物中に少なくとも10重量%の量、および30重量%以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記合成ヘクトライト粘土は、化学式NaO3(Mg,Li)3Si4O10(F,OH)2を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記合成ヘクトライトの平均直径は、1ナノメートル〜30ナノメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記合成ヘクトライト粘土は、前記組成物の総重量に基づいて、該組成物中に少なくとも1重量%の量、および10重量%以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物は、塩化物イオン源をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、少なくとも1,000Pa・sの低ずり粘度、および0.50Pa・s以下の高ずり粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物は、少なくとも4,000Pa・sの低ずり粘度、および0.01Pa・s以下の高ずり粘度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物は、6.0以下のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記接触させることは、前記金属含有表面の上に前記組成物をスプレーすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記鉄金属含有表面は、貯蔵タンク、乗り物または橋の表面である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
鉄金属含有表面から錆を取り除くための方法であって、該方法は、前記鉄金属含有表面の少なくとも一部分の上に組成物をスプレーにより適用することを含み、該組成物は、
(a)カルボン酸;
(b)合成ヘクトライト粘土;および
(c)水
を含み、
(i)該鉄金属含有表面は、貯蔵タンク、乗り物または橋の表面であり、(ii)該組成物は、少なくとも1,000Pa・sの低ずり粘度、および0.50Pa・s以下の高ずり粘度を有する、
方法。
【請求項18】
前記組成物は、塩化物イオン源をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記カルボン酸は、クエン酸を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、とりわけ、鉄金属(ferrous metal)含有表面から錆を取り除くための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
加工中、または単に大気に曝される際に、金属酸化物層、すなわち錆は、しばしば鉄金属表面の全体または一部分に形成され、それにより、その外見および/またはさらなる使用のための適合性は損なわれる。1つの例は、様々な物品の製造において使用される鋼(例えば、軟鋼)である。従って、金属酸化物層を取り除くことがしばしば望ましい。慣習的に、この除去は、錆びついた金属表面を、強酸(例えば、硝酸、硫酸、塩酸、またはリン酸)で処理することによって達成されている。しかし、これらの高度に酸性で腐食性および苛性の化学物質は、しばしば、環境および安全性の観点から望ましくない。
【0003】
いくつかの場合において、処理されるべき鉄金属は、例えば、大きな構造物(例えば、とりわけ、貯蔵タンク、船および他の乗り物、ならびに橋)にはよくあり得ることであるように、実質的に垂直の様式で配向される。さらに、スプレー可能な製品が、使用の便宜および効率のためにしばしば所望される。
【0004】
従って、環境的に望ましくない強酸を含まないスプレー可能な組成物を用いることによって、鉄金属含有表面(実質的に垂直の様式で配向されるものが挙げられる)から錆を取り除く方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
特定の局面において、本発明は、鉄金属含有表面から錆を取り除くための方法に関する。上記方法は、上記表面を、(a)カルボン酸;(b)合成ヘクトライト粘土;および(c)水を含む組成物と接触させることを含む。本発明はまた、とりわけ、前述の方法によって処理された鉄金属含有表面に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の実施形態の詳細な説明
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、それと反対に明確に特定される場合を除いて、様々な代替のバリエーションおよびステップの順序を想定し得ることが理解されるべきである。さらに、任意の操作例中、または別段示される場合以外、例えば、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量を表す全ての数字は、全ての例において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、それと反対に示されない限り、以下の、本明細書および添付の特許請求の範囲に明記される数値パラメータは、本発明によって得られるべき所望される特性に依存して変化し得る近似値である。少なくとも、および特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、多くの報告された有効数字を考慮して、および通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0007】
本発明の広い範囲を明記する数値範囲および数値パラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の例において明記される数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値において見出される標準的変動から必然的にもたらされる特定の誤差を本来的に含む。
【0008】
また、本明細書中に列挙される任意の数値範囲は、その中に包含される全ての下位範囲を含むことが意図されることが理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、1という列挙された最小値と、10という列挙された最大値との間(およびそれらを含む)の全ての下位範囲、すなわち、1以上の最小値と10以下の最大値とを有する全ての下位範囲を包むことが意図される。本願において、別段特に言及されない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数は単数を包含する。さらに、本願において、「または」の使用は、たとえ「および/または」が特定の例において明確に使用され得るとしても、別段特に言及されない限り、「および/または」を意味する。
【0009】
示されるように、本発明の特定の実施形態は、鉄金属含有表面から錆を取り除くための方法に関する。本明細書中で用いられる場合、「錆」は、酸化または腐食によって金属上に形成されるコーティングまたはフィルムを指す。いくつかの場合において、本発明の方法において取り除かれる錆は、「赤錆」であり、それは、本明細書中で用いられる場合、空気および/または水分への曝露中に、酸化によって鉄または鋼の上に形成されるコーティングまたはフィルムを指し、上記コーティングまたはフィルムは、酸化鉄(II)(FeO、ウスタイト)、α相酸化鉄(III)(α−Fe
2O
3、赤鉄鉱)、β相酸化鉄(III)(β−Fe
2O
3)、γ相酸化鉄(III)(γ−Fe
2O
3、磁赤鉄鉱)、ε相酸化鉄(III)(ε−Fe
2O
3)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)
2)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)
3、バーナライト(bernalite))、および/または水和物の形態、ならびに前述のものの任意のものの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法において取り除かれる酸化鉄は、「ミルスケール」としばしば呼ばれるタイプのものであり、それは、本明細書中で用いられる場合、空気、水分、および/または熱への曝露中に、酸化によって鉄または鋼の上に形成されるコーティングまたはフィルムを指し、上記コーティングまたはフィルムは、酸化鉄(II,III)(Fe
3O
4、磁鉄鉱)、α相酸化鉄(III)(α−Fe
2O
3、赤鉄鉱)、水酸化鉄(II)Fe(OH)
2、水酸化鉄(III)(Fe(OH)
3、バーナライト)、および/または水和物の形態、ならびに前述のものの任意のものの組み合わせを含む。
【0010】
本発明の方法において処理され得る金属表面としては、冷間圧延鋼、熱間圧延鋼、亜鉛金属でコーティングされた鋼、亜鉛化合物、または亜鉛合金(例えば、電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、ガルバニール処理された鋼(galvanealed steel)、および亜鉛合金でめっきされた鋼)で構築された表面が挙げられるが、これらに限定されない。軟鋼で構築された表面は、本発明の方法において処理され得る。軟鋼は、本明細書中で用いられる場合、0.25重量%未満の炭素を含む低炭素鋼を指す。
【0011】
本発明の方法において、金属表面は、カルボン酸を含む組成物と接触させられる。特定の実施形態において、本明細書中に記載される組成物中での使用のために選択されるカルボン酸は、20℃にて、>1g/Lの、水への溶解度を有する。本発明の方法において使用される組成物中で使用するために適したカルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メチル酢酸、酪酸、エチル酢酸、n−吉草酸、n−ブタンカルボン酸、アクリル酸、プロピオール酸、メタクリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸;ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、レパルギル酸、セバシン酸、マレイン酸、およびフマル酸;脂肪族ヒドロキシ酸、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライド酸、セレブロン酸、キナ酸、およびシキミ酸;芳香族ヒドロキシ酸、例えば、サリチル酸、クレオソート酸、バニリン酸、シリンガ酸、ピロカテク酸、レゾルシン酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸(atrolactinic acid)、メリロート酸(melilotic acid)、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、カフェー酸、フェルラ酸、およびシナピン酸が挙げられる。前述のもののうちの任意のものの混合物も使用され得る。
【0012】
特定の実施形態において、カルボン酸は、本発明の方法において使用される組成物中に少なくとも1重量%の量、例えば、少なくとも10重量%の量、またはいくつかの場合において、少なくとも15重量%の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。特定の実施形態において、カルボン酸は、本発明の方法において使用される組成物中に50重量%以下の量、例えば、30重量%以下の量、またはいくつかの場合において、25重量%以下の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。
【0013】
本発明の方法において、鉄金属含有表面と接触させられる組成物は、合成ヘクトライト粘土も含む。本記載の組成物中の合成ヘクトライト粘土の存在により、高度にずり減粘の揺変性レオロジーを有する濃化組成物を生成する。結果として、上記組成物は、代表的なスプレーデバイス(下に言及されるものが挙げられる)を用いてスプレー可能であり、さらに、たとえ表面が実質的に垂直に配向されていても、錆の除去を達成するために十分な時間の間、鉄金属含有表面上に残ることが見出されている。本明細書中で用いられる場合、用語「実質的に垂直に」は、その上に鉄金属含有表面が配置される地面または他の表面に対して実質的に直立(すなわち、直立から±20%以内)であることを意味する。他の増粘剤に対立するものとしての合成ヘクトライト粘土(他の揺変性粘土(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)を含む)の使用により、周囲条件においてスプレー可能であり、かつ、表面が実質的に垂直に配向される場合でさえ鉄金属含有表面から錆を取り除くことにおいて有効であり得る組成物を生成することは、本当に驚くべき発見であった。実質的に垂直に配向された表面からの錆の除去のための、有効な組成物を生成するために必要とされる他の揺変性粘土の量は、周囲条件においてスプレー可能ではない組成物をもたらすということが、現在のところ考えられている。本明細書中で用いられる場合、「周囲条件」は、23℃および大気圧を指す。
【0014】
本明細書中に記載される組成物中で使用するために適している合成ヘクトライト粘土としては、例えば、LAPONITE RD、LAPONITE RDS、およびLAPONITE JS(それらの組み合わせを含む)が挙げられる。認識されるように、これらのうちの各々は、化学式NaO
3(Mg,Li)
3Si
4O
10(F,OH)
2に従う層状構造の含水マグネシウムシリケートである。LAPONITE RDは、1,000kg/m
3のかさ密度、370m
2/gの表面積(BET)、水中2%の懸濁物で9.8のpHを有するフリーフローイング(free flowing)合成層状シリケートであり、上記組成物は、乾燥量基準で、59.5重量%のSiO
2、27.5重量%のMgO、0.8重量%のLi
2O、および2.8重量%のNa
2Oである。LAPONITE RDSはまた、1,000kg/m
3のかさ密度、330m
2/gの表面積(BET)、水中2%の懸濁物で9.7のpHを有するフリーフローイング合成層状シリケートであり、上記組成物は、乾燥量基準で、54.5重量%のSiO
2、26.0重量%のMgO、0.8重量%のLi
2O、5.6重量%のNa
2O、および4.1重量%のP
2O
5である。合成ヘクトライト(例えば、上に記載されるもの)の粒径は、代表的に、平均直径が1ナノメートル〜30ナノメートルである。
【0015】
特定の実施形態において、合成ヘクトライト粘土は、本発明の方法において使用される組成物中に少なくとも1重量%の量、例えば、少なくとも2重量%の量、またはいくつかの場合において、少なくとも3重量%の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。特定の実施形態において、合成ヘクトライト粘土は、本発明の方法において使用される組成物中に10重量%以下の量、例えば、6重量%以下の量、またはいくつかの場合において、5重量%以下の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。
【0016】
特定の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、塩化物イオン源をさらに含む。塩化物イオン源の存在は、ミルスケールの除去が必要とされるか、または所望される場合に、特に有益であり得る。適切な塩化物源としては、例えば、とりわけ、塩酸、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、および塩化カリウムが挙げられる。
【0017】
特定の実施形態において、塩化物源は、本発明の方法において使用される組成物中に少なくとも1重量%の量、例えば、少なくとも2重量%の量、またはいくつかの場合において、少なくとも3重量%の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。特定の実施形態において、塩化物源は、本発明の方法において使用される組成物中に10重量%以下の量、例えば、8重量%以下の量、またはいくつかの場合において、6重量%以下の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。
【0018】
特定の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、有機溶媒(例えば、水混和性有機溶媒)をさらに含む。適切なそのような溶媒としては、エチレングリコールもしくはジエチレングリコールのモノアルキルエーテルもしくはジアルキルエーテル、またはトリエチレングリコールのモノアルキルエーテル、ジアルキルエーテル、もしくはトリアルキルエーテル、およびそれらのアセテート誘導体が挙げられる。アルキル基は、しばしば、1個〜4個の炭素原子の範囲に及ぶ。適切な例は、少なくとも4個の炭素原子を含む飽和グリコール、または式I:
【0019】
【化1】
(式中、Rは、独立して、水素、1個〜4個の炭素原子のアルキル、および−(O)C−CH
3からなる群から選択され;R
1は、独立して、−CH
2、−CH
2−CH−、−CH
2−CH(CH
3)−、および−CH(CH
2OH)−からなる群から選択され;R
2は、独立して、1個〜4個の炭素原子のアルキル、1個〜4個の炭素原子のヒドロキシル置換アルキル、および−(O)C−CH
3からなる群から選択される)
を含む化合物である。
【0020】
例示的な溶媒は、Cellosolve(エチレングリコールのモノエチルエーテルに対する商標)、メチルCellosolve、ブチルCellosolve、イソブチルCellosolve、ヘキシルCellosolve、Carbitol(ジエチレングリコールのモノエチルエーテルに対する商標)、ブチルCarbitol、ヘキシルCarbitol、プロピレングリコールのモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノプロピルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールのモノメチルエーテル、ブトキシトリグリコールC
4H
9O(C
2H
4−O)
3H、メトキシトリグリコールCH
3O(C
2H
4−O−)
3H、エトキシトリグリコールC
2H
5O(C
2H
4O)
3H、1,ブトキシエトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2000までの分子量を有するポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、2エチル−1,3−ヘキサンジオール;1,5−ペンタンジオール、およびエステルジオール−204(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル2,2−ジメチル−3−ヒドロキシルプロピオネート)などである。
【0021】
本発明に用いられ得る適切な水混和性アルコールは、1個〜8個の炭素原子を有する(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、およびメチルアミルアルコールなど)。
【0022】
本発明に用いられ得る適切な水混和性脂肪族ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メトキシアセトン、シクロヘキサノン、メチルn−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、ジアセトンアルコール(CH
3)
2C(OH)CH
2C(O)CH
3である。
【0023】
特定の実施形態において、有機溶媒は、本発明の方法において使用される組成物中に少なくとも1重量%の量、例えば、少なくとも2重量%の量、またはいくつかの場合において、少なくとも3重量%の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。特定の実施形態において、塩化物源は、本発明の方法において使用される組成物中に10重量%以下の量、例えば、8重量%以下の量、またはいくつかの場合において、6重量%以下の量で存在し、重量%は、上記組成物の総重量に基づく。
【0024】
本発明の方法において使用される組成物は、多様な任意選択の成分(例えば、着色料、界面活性剤、腐食防止剤、保存剤、充填剤、研磨剤、緩衝剤、および芳香剤など)のうちの任意のものも含み得る。
【0025】
本発明の方法において使用される組成物の残りのものは、一般に水(例えば、脱イオン水など)である。
【0026】
特定の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、環境的に望ましくない副産物(例えば、リン酸および/または硫酸)を生成する強酸を実質的に含まないか、または完全に含まない。本明細書中で用いられる場合、「実質的に含まない」は、本明細書中に記載される組成物中の強酸の非存在に関して使用される場合、上記組成物は、1重量%未満の強酸、例えば、0.1重量%未満の強酸を含むことを意味する。本明細書中で用いられる場合、「完全に含まない」は、上記組成物中に強酸が全くないことを意味する。
【0027】
特定の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、少なくとも1,000Pa・s、例えば、少なくとも2,000Pa・s、またはいくつかの場合において、少なくとも4,000Pa・sまたは少なくとも5,000Pa・sの低ずり粘度(本明細書中で用いられる場合、「低ずり粘度」は、CP50−1/TGスピンドルを備えたPhysica MCR301粘度計において、0.01s
(−1)のずり速度および23℃にて、70秒間測定された粘度を指す)を有する。特定の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、0.50Pa・s以下、例えば、0.1Pa・s以下、またはいくつかの場合において、0.01Pa・s以下の高ずり粘度(本明細書中で用いられる場合、「高ずり粘度」は、CP50−1/TGスピンドルを備えたPhysica MCR301粘度計において、23℃にて10
(4)s
(−1)のずり速度で5秒間測定された粘度を指す)を有する。
【0028】
特定の実施形態において、本発明の方法において使用される組成物は、6.0以下のpH、例えば、2.0〜5.0のpH、またはいくつかの場合において、3.0〜4.0のpHを有する。
【0029】
本発明の方法において、上記組成物は、多様な方法(例えば、とりわけ、ブラッシング、スプレー、またはディッピング)のうちの任意のものによって、金属含有表面と接触させられる。本明細書中に記載される組成物は、従来の圧力ポット装置またはHVLP装置を用いたスプレーによる適用に特に適している。本明細書中に記載される組成物の揺変性性質に起因して、本発明の方法は、例えば、大きな構造物(例えば、とりわけ、貯蔵タンク、橋、船および他の乗り物)にはよくあり得ることであるような、実質的に垂直に配向された鉄金属含有表面と使用するために適している場合がある。
【0030】
上記組成物は、適用されると、所望されるかまたは必要とされる程度まで錆を取り除くために、金属含有表面上にとどまることを可能にされる。接触時間は、錆の激しさ、およびクリーニングが行われる温度に依存して、少なくとも5分〜数時間の範囲に及び、しばしば、少なくとも30分、いくつかの場合において、少なくとも3時間または4時間に及ぶ。錆が除去された表面は、次に、本明細書中に記載される組成物、ゆるめられた(loosened)錆、および溶解した錆を除去するために水で洗浄され得る。いくつかの場合において、本明細書中に記載される組成物の、1回より多くの適用が所望され得る。例えば、本明細書中に記載される組成物の適用前に、ワイヤーブラッシングによって、ゆるい錆およびスケールを機械的に除去することも所望され得る。
【0031】
本発明は、とりわけ、本発明の方法によって処理された金属表面にも関する。
【0032】
以下の実施例は、本発明を例示し、それらの実施例は、本発明をそれらの詳細に限定するものとして考えられるべきではない。実施例中、ならびに本明細書にわたって、全ての部および百分率は、別段示されない限り重量によるものである。
【実施例】
【0033】
実施例1
5つの溶液を、表1に列挙される成分および量(グラム)を用いて調製した。3×4インチの露出した冷間圧延鋼パネル(ACT Test Panels LLC 273 Industrial Dr.Hillsdale,MI 49242から入手可能)を市販のアルカリ性クリーナー(PPG Industries,Inc.から市販のCK2010)でクリーニングし、次にそのパネルを塩スプレーチャンバーに4時間置くことによって、錆びついたパネルを調製した。上記パネルを脱イオン水ですすぎ、上記溶液の適用前に周囲条件下で空気乾燥させた。
【0034】
【表1】
1Laponite RDは、Southern Clay Products,Inc.から市販されている。実施例1Aにおいて、製造者の推奨に従って、Laponite RDを水の中に混ぜた。次にその溶液を撹拌しながらクエン酸をゆっくりと加えた。
【0035】
2Klucel Mは、Hercules Inc.から入手可能なヒドロキシルプロピルセルロース(約850,000のM
w)である。実施例1Bにおいて、撹拌しながら、Klucel M物質を水の中へふるい入れた。上記物質が溶解した後、撹拌しながらクエン酸をゆっくりと加えた。
【0036】
3Klucel Hは、Hercules Inc.から入手可能なヒドロキシルプロピルセルロース(約1,150,000のM
w)である。実施例1Cにおいて、撹拌しながら、Klucel H物質を水の中へふるい入れた。上記物質が溶解した後、撹拌しながらクエン酸をゆっくりと加えた。
【0037】
4Sigma−Aldrich Co.から市販されているポリビニルピロリドンは、約1,300,000の平均M
wを有する。実施例1Dにおいて、撹拌しながら、ポリビニルピロリドンを水の中へふるい入れた。その物質が溶解した後、撹拌しながらクエン酸をゆっくりと加えた。
【0038】
5ゼラチンは、Sigma−Aldrich Co.から市販されている。実施例1Eにおいて、撹拌しながら、ゼラチンを水の中へふるい入れた。その物質が溶解した後、撹拌しながらクエン酸をゆっくりと加えた。
【0039】
試験基材
水平面から約80°の角度で配置された1セットの錆びた鋼パネルの上に、上記溶液の各々の一部分をピペットによって適用した。2時間後、パネルを脱イオン水ですすぎ、取り除かれた錆のおおよその百分率を調査した。結果は、表2にある。
【0040】
【表2】
実施例2
3つの溶液を、表3に列挙される成分および量(グラム)を用いて調製した。各実施例において、撹拌しながら、粘土を水の中へふるい入れた。Laponite RD含有物質は、混合後数分後に粘度の増大を示した。20分以内に、その溶液は、可視可能な粒子なく透明になった。ベントナイト溶液は、水への添加後、粘度において非常にわずかな変化を示し、その物質は、不透明な青緑色のままであった。カオリン物質は、添加後の粘度において全く変化を示さなかった。各粘土が加えられた後、溶液を約20分間撹拌し、クエン酸を加え、得られた混合物を約10分間撹拌した。
【0041】
【表3】
1Southern Clay Products,Inc.から市販されている。
2VWR International,LLCから市販されている。
【0042】
錆びついたパネルを実施例1に記載されるように調製した。3つの溶液を、水平面から約80°の角度で配置されたパネルに庭用噴霧器を用いてスプレーにより適用した。1時間後、上記パネルを水で洗浄し、錆除去の量を視覚により評価した。おおよそ100%の錆が実施例2Aの溶液で取り除かれたが、実施例2Bも2Cも錆除去を全く示さなかった。
【0043】
CP50−1/TGスピンドルを備えたPaar−Physica MCR 301 Rheometerを用いて、様々なずり速度で23℃にて3つの溶液のレオロジーを測定した。結果を、表4に明記する。
【0044】
【表4】
実施例3
表5に列挙される成分および量(グラム)を用いて、同じ理論上の量の塩化物を含む3つの溶液を調製した。それぞれの場合において、製造者の推奨に従って、Laponite RDを水の中に混ぜた。次に、溶液を撹拌しながらクエン酸をゆっくりと加えた。次に、実施例3Aについて、撹拌しながら塩酸を滴下して加えた。次に、実施例3Bについて、撹拌しながら塩化ナトリウムを加えた。次に、実施例3Cについて、撹拌しながら塩化アンモニウムを加えた。
【0045】
【表5】
1VWR International,LLCから市販されている。
【0046】
錆びついたパネルを実施例1におけるのと同様に調製した。3つの溶液を、水平面から約80°の角度で配置されたパネルに適用した。1時間後、上記パネルを水で洗浄し、錆除去の量を視覚により評価した。おおよそ100%の錆が3つ全ての溶液で取り除かれた。
【0047】
実施例4
表6に列挙される成分および量(グラム)を用いて、同じ理論上の量のカルボン酸含有化合物を含む3つの溶液を調製した。それぞれの場合において、製造者の推奨に従って、Laponite RDを水の中に混ぜた。次に、溶液を撹拌しながら、酸をゆっくりと加えた。
【0048】
【表6】
1VWR International,LLCから市販されている。
【0049】
錆びついたパネルを実施例1におけるのと同様に調製した。3つの溶液を、水平面から約80°の角度で配置されたパネルに適用した。1時間後、上記パネルを水で洗浄し、錆除去の量を視覚により評価した。おおよそ100%の錆が3つ全ての溶液で取り除かれた。
【0050】
上に記載された実施形態に対して、その広い発明の概念から外れることなく、変更がなされ得ることが当業者によって認識される。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の趣旨および範囲内にある改変を含むことが意図されることが理解される。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
鉄金属含有表面から錆を取り除くための方法であって、該方法は、該表面を、
(a)カルボン酸;
(b)合成ヘクトライト粘土;および
(c)水
を含む組成物と接触させることを含む、方法。
(項2)
請求項1の方法によって処理された鉄金属含有表面。
(項3)
前記錆は、酸化鉄および/または水酸化鉄を含む、請求項1に記載の方法。
(項4)
前記鉄金属は鋼を含む、請求項1に記載の方法。
(項5)
前記鋼は軟鋼を含む、請求項1に記載の方法。
(項6)
前記カルボン酸は、脂肪族ヒドロキシ酸を含む、請求項1に記載の方法。
(項7)
前記脂肪族ヒドロキシル酸は、クエン酸を含む、請求項6に記載の方法。
(項8)
前記カルボン酸は、前記組成物の総重量に基づいて、該組成物中に少なくとも10重量%の量、および30重量%以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
(項9)
前記合成ヘクトライト粘土は、化学式NaO3(Mg,Li)3Si4O10(F,OH)2を有する、請求項1に記載の方法。
(項10)
前記合成ヘクトライトの平均直径は、1ナノメートル〜30ナノメートルである、請求項1に記載の方法。
(項11)
前記合成ヘクトライト粘土は、前記組成物の総重量に基づいて、該組成物中に少なくとも1重量%の量、および10重量%以下の量で存在する、請求項1に記載の方法。
(項12)
前記組成物は、塩化物イオン源をさらに含む、請求項1に記載の方法。
(項13)
前記組成物は、少なくとも1,000Pa・sの低ずり粘度、および0.50Pa・s以下の高ずり粘度を有する、請求項1に記載の方法。
(項14)
前記組成物は、少なくとも4,000Pa・sの低ずり粘度、および0.01Pa・s以下の高ずり粘度を有する、請求項13に記載の方法。
(項15)
前記組成物は、6.0以下のpHを有する、請求項1に記載の方法。
(項16)
前記接触させることは、前記金属含有表面の上に前記組成物をスプレーすることを含む、請求項1に記載の方法。
(項17)
前記鉄金属含有表面は、実質的に垂直に配向される、請求項17に記載の方法。
(項18)
鉄金属含有表面から錆を取り除くための方法であって、該方法は、前記鉄金属含有表面の少なくとも一部分の上に組成物をスプレーにより適用することを含み、該組成物は、
(a)カルボン酸;
(b)合成ヘクトライト粘土;および
(c)水
を含み、
(i)該鉄金属含有表面は、実質的に垂直に配向され、(ii)該組成物は、少なくとも1,000Pa・sの低ずり粘度、および0.50Pa・s以下の高ずり粘度を有する、
方法。
(項19)
前記組成物は、塩化物イオン源をさらに含む、請求項18に記載の方法。
(項20)
前記カルボン酸は、クエン酸を含む、請求項18に記載の方法。