特許第5693757号(P5693757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693757
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】動弁装置及び支持部材
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/18 20060101AFI20150312BHJP
   F01M 9/10 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   F01L1/18 B
   F01L1/18 G
   F01L1/18 N
   F01M9/10 B
   F01M9/10 G
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-9532(P2014-9532)
(22)【出願日】2014年1月22日
(62)【分割の表示】特願2010-29871(P2010-29871)の分割
【原出願日】2010年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-66253(P2014-66253A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2014年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊征
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−044411(JP,A)
【文献】 特開2009−281170(JP,A)
【文献】 実開平07−038602(JP,U)
【文献】 特開2004−076707(JP,A)
【文献】 特開2004−052637(JP,A)
【文献】 米国特許第04881497(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/18
F01M 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に開口する取付孔を有するとともに、内部に、前記取付孔の内面に開口するオイルギャラリー及び吸排気のための通気孔を有するシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドにおいて前記通気路を開閉可能に組み込まれるバルブと、 前記取付孔内に挿入され、内部に前記オイルギャラリーからオイルが流入するオイル空間を有する中空筒状の支持部材と、
第1端部から第2端部にかけて延びるアーム本体を有し、前記アーム本体が、前記第1端部で前記支持部材に支持されるとともに、前記第2端部で前記バルブに支持され、かつ前記第1、第2端部間にローラが回転可能に組み込まれている形態とされていて、カムと連動して前記ローラが回転することにより、前記アーム本体が、前記第1端部を略支点として揺動するとともに、前記第2端部を介して前記バルブの開閉を行うロッカアームとを備えた動弁装置であって、
前記支持部材には、この支持部材が前記ロッカアームを支持した状態で、一端がこの支持部材の内面に開口して前記オイル空間に臨むとともに、他端がこの支持部材の外面に開口して大気に臨む通油部が形成され、
前記通油部が、前記支持部材の周壁において、前記オイル空間から前記ローラの位置する側へ向けて延びる部分を有する貫通孔とされていることを特徴とする動弁装置。
【請求項2】
シリンダヘッドの取付孔内に挿入され、内部にオイルギャラリーからのオイルが流入するオイル空間を有する中空筒状をなし、かつローラを介してカムと連動することによってバルブの開閉を行うロッカアームを、揺動可能に支持する支持部材であって、
前記ロッカアームを支持した状態で、一端が内面に開口して前記オイル空間に臨むとともに、他端が外面に開口して大気に臨む通油部を有し、
前記通油部が、周壁において、前記オイル空間から前記ローラの位置する側へ向けて延びる部分を有する貫通孔とされていることを特徴とする支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動弁装置及び支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動弁装置が、特許文献1に開示されている。このものは、シリンダヘッド、バルブ、ピボット、及びロッカアームを備えて構成される。シリンダヘッドの外面には、取付孔が開口して形成され、ここにピボットが挿入されている。ピボット内には、取付孔の内面に開口するオイルギャラリーが形成されている。また、ピボット内には、吸気又は排気を行うための通気路が形成されている。バルブは、シリンダヘッドにおいて通気路を開閉可能に組み込まれている。
【0003】
ピボットは、無底の中空筒状をなし、その内部にオイルギャラリーからのオイルが流入するオイル空間が形成されている。ピボットの頂部は支承部とされ、その頂部に給油孔が貫通して形成されている。
【0004】
ロッカアームは、前後方向に延出するアーム本体を有している。アーム本体の前端部はバルブの端部に支持され、アーム本体の後端部はピボットの支承部に支持されている。また、アーム本体の前後方向中間部には、アーム本体の上方に配置されたカムと当接するローラが回転可能に組み込まれている。
【0005】
ここで、ローラがカムに連動して回転すると、アーム本体が支承部を略支点として揺動し、それに伴ってバルブが通気路に対する開閉動作を繰り返すようになっている。この場合、ピボットのオイル空間内に流入したオイルは、給油孔を通してアーム本体の後端部に付着し、ピボットとロッカアームの両摺動面を潤滑するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−52637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の動弁装置では、支承部にアーム本体の後端部が覆い被さり、給油孔の出口(外側開口)が実質的に塞がって、ピボットから流出するオイル量が制限されるという事情があった。一方、ピボットの底面が開口しているため、取付孔の内底面には大きな油圧が加わることとなった。このため、ピボットが上記油圧によって取付孔から突き出るように浮き上がることがあった。こうして浮き上がったピボットがカムに押されて取付孔の内底面に着座すると、オイル空間内のオイルが圧縮され、圧縮されたオイルがオイルギャラリー内に逆流して、隣接する気筒のピボットが押し上げられ、もってバルブが早開きする等といった問題があった。
【0008】
これに鑑み、例えば、ピボットの底面開口をプラグで封止すれば、オイル空間内の油圧上昇を回避できるものの、その場合、部品点数、組み付け工数が増えるため、さらなる改善が希求されていた。
【0009】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、動弁機構の性能低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、外面に開口する取付孔を有するとともに、内部に、前記取付孔の内面に開口するオイルギャラリー及び吸排気のための通気孔を有するシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドにおいて前記通気路を開閉可能に組み込まれるバルブと、前記取付孔内に挿入され、内部に前記オイルギャラリーからオイルが流入するオイル空間を有する中空筒状の支持部材と、第1端部から第2端部にかけて延びるアーム本体を有し、前記アーム本体が、前記第1端部で前記支持部材に支持されるとともに、前記第2端部で前記バルブに支持され、かつ前記第1、第2端部間にローラが回転可能に組み込まれている形態とされていて、カムと連動して前記ローラが回転することにより、前記アーム本体が、前記第1端部を略支点として揺動するとともに、前記第2端部を介して前記バルブの開閉を行うロッカアームとを備えた動弁装置であって、前記支持部材には、この支持部材が前記ロッカアームを支持した状態で、一端がこの支持部材の内面に開口して前記オイル空間に臨むとともに、他端がこの支持部材の外面に開口して大気に臨む通油部が形成され、前記通油部が、前記支持部材の周壁において、前記オイル空間から前記ローラの位置する側へ向けて延びる部分を有する貫通孔とされているところに特徴を有する。
【0011】
請求項2の発明は、シリンダヘッドの取付孔内に挿入され、内部にオイルギャラリーからのオイルが流入するオイル空間を有する中空筒状をなし、かつローラを介してカムと連動することによってバルブの開閉を行うロッカアームを、揺動可能に支持する支持部材であって、前記ロッカアームを支持した状態で、一端が内面に開口して前記オイル空間に臨むとともに、他端が外面に開口して大気に臨む通油部を有し、前記通油部が、周壁において、前記オイル空間から前記ローラの位置する側へ向けて延びる部分を有する貫通孔とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1又は2の発明>
支持部材のオイル空間内に流入するオイルの油圧が通気路を通して大気へ放出されるから、オイル空間内におけるオイルの過剰な圧縮が回避される。その結果、上記油圧に起因する支持部材の浮き上がりが阻止され、ひいては動弁機構の性能低下が防止される。また、通油部が支持部材の周壁においてオイル空間からローラの位置する側へ向けて延びる部分を有する貫通孔とされているから、貫通孔の他端から流出するオイルによってローラを潤滑させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る動弁装置の全体図である。
図2】ピボット及びロッカアームの要部拡大断面図である。
図3】ピボットの平面図である。
図4】参考例1に係る動弁装置において、ピボット及びロッカアームの要部拡大断面図である。
図5】ピボットの平面図である。
図6】参考例2の動弁装置において、かしめ部及びピボットの要部拡大平面図である。
図7】かしめ部及びピボットの要部拡大断面図である。
図8】参考例3の動弁装置において、リング及びピボットの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3によって説明する。実施形態1に係る動弁装置は、シリンダヘッド10、バルブ30、ロッカアーム40、及び支持部材としてのピボット60を備えて構成される。
【0015】
図1に示すように、シリンダヘッド10には、吸気ポート又は排気ポートからなる通気路11、及び通気路11と交差連通するガイド孔12が形成されている。ガイド孔12は高さ方向に延びてシリンダヘッド10の外面に開口する形態とされ、その内部に、バルブ30のバルブステム31が移動可能に組み込まれている。バルブステム31は、シリンダヘッド10の外面から突出する最上端位置に突端部32を有している。シリンダヘッド10の外面と突端部32との間には、バルブステム31の周りを取り囲むバルブスプリング33が介挿されている。バルブ30は、バルブスプリング33によって常には通気路11を閉止する方向(閉弁方向)に付勢されている。
【0016】
また、シリンダヘッド10の外面には、有底の取付孔13が開口して形成されている。取付孔13内には、ピボット60が上方から挿入される。シリンダヘッド10の内部には、動弁装置における各摺動部位への潤滑等のためのオイルが流通するオイルギャラリー14が形成されている。オイルギャラリー14は、取付孔13の内周面に開口している。
【0017】
ロッカアーム40は金属製であって、アーム本体41と、アーム本体41に組み付けられるローラ42とからなる。アーム本体41は、前後方向に長い左右一対の側壁部43と、両側壁部43の後端部(本発明の第1端部に相当)同士を連結する支点部44と、両側壁部43の前端部(本発明の第2端部に相当)同士を連結するパッド部45とから一体に構成されている。支点部44は、略半球状の嵌合部46を有している。嵌合部46の内面は、ピボット60の頭部64(後述する)と摺動可能に当接する摺動面47とされている。パッド部45は、バルブステム31の突端部32と当接しており、前方へ向けてややせり上がった形態とされている。
【0018】
両側壁部43間で、かつ支点部44とパッド部45との間には、ローラ42の収容空間48が開口している。収容空間48に収容されたローラ42は、左右方向の支持軸49を中心として、アーム本体41に回転可能に支持されている。ローラ42は、アーム本体41の上面から上方に突出する部分を有し、その上端部の外周面に、ローラ42の回転中心と平行な回転軸91を有する略卵形のカム90が当接している。
【0019】
ピボット60は、金属製であって無底の中空筒状をなし、周壁61によって構成されている。図2に示すように、周壁61は、胴部62、肩部63、及び頭部64からなる。胴部62は、底面から同径で立ち上がる円筒状をなし、肩部63は、胴部62の上端から上方へ向けて縮径するテーパ状をなし、頭部64は、肩部63の上端から同径で立ち上がったあと上端(頂端)へ向けて弧状に窄む先端略半球状をなしている。ピボット60が取付孔13内に挿入された状態では、頭部64と肩部63がシリンダヘッド10の外部に露出して配置されるようになっている。
【0020】
胴部62の高さ方向略中央部には、環状溝65が周回して形成されている。また、胴部62の高さ方向略中央部には、環状溝65の溝面に開口する導油孔66が幅方向に貫通して形成されている。周壁61の内部には、導油孔66を通してオイルギャラリー14からのオイルが流入するオイル空間67が形成されている。なお、導油孔66がオイルギャラリー14に正対していなくても、環状溝65を介して導油孔66にオイルが流入可能とされている。
【0021】
頭部64は、ロッカアーム40を揺動可能に支持する支承部としての役割をはたす。頭部64の外面における球面部分は、嵌合部46の摺動面47と摺動可能に当接する摺動面68とされている。頭部64の上端には、給油孔69が高さ方向に貫通して形成されている。オイル空間67内のオイルは、給油孔69を通して嵌合部46と頭部64の両摺動面47、68に供給されるようになっている。なお、嵌合部46の内面には、給油孔69の出口(外側開口)と対向する位置に、凹球面状の窪み部51が形成されている。
【0022】
肩部63には、貫通孔52が貫通して形成されている。貫通孔52は、導油孔66とは反対側の位置を含め、図3に示すように、肩部63の周方向に等間隔をあけた複数箇所(図示する場合は120度間隔で3箇所)に設置されている。各貫通孔52は、断面略楕円形をなし、導油孔66及び給油孔69よりも小径で直線状に延びる形態とされている。各貫通孔52の延出方向は、肩部63の厚み方向とほぼ同一とされ、水平軸に対して傾斜する方向に向けられている。
【0023】
貫通孔52の内側開口は、肩部63の内周面に開口し、オイル空間67に臨んでいる。また、各貫通孔52の外側開口は、肩部63の外周面に直交して開口し、ピボット60がロッカアーム40を支持した状態で常に大気に臨んでいる。そして、各貫通孔52のうちの1つの貫通孔52をその延出方向に延長した位置には、ローラ42が配置されている。つまり、この貫通孔52は、オイル空間67からローラ42の位置する側へ向けて直線状に延びる形態とされている。
【0024】
なお、ピボット60が取付孔13内に挿入された状態では、ピボット60の底面開口が取付孔13の内底面によって実質的に塞がり、導油孔66の外側開口がオイルギャラリー14に臨み、給油孔69の出口がロッカアーム40によって実質的に塞がるため、オイル空間67は貫通孔52を通してのみ大気と連通するものとなる。
【0025】
続いて、動弁装置の動作について簡単に説明する。
カム90が回転すると、ローラ42が連動して回転し、それに伴ってロッカアーム40のアーム本体41が頭部64及び嵌合部46を略支点として高さ方向に揺動する。かかるロッカアーム40の揺動変位により、バルブ30が、バルブスプリング33のばね力に抗して開弁方向に変位する動作と、バルブスプリング33のばね力に従って閉弁方向に変位する動作とを交互に繰り返す。
【0026】
次に、動弁装置への給油経路について説明する。
オイルギャラリー14内を流通するオイルが導油孔66を通してピボット60のオイル空間67内に流入し、オイル空間67内にオイルが充填される。続いて、オイル空間67内のオイルの一部が、給油孔69を通して嵌合部46と頭部64との間(窪み部51)に至り、ロッカアーム40の揺動変位に伴って両摺動面47、68の略全体に付着する。これとは別に、オイル空間67内のオイルの一部が、貫通孔52を通して大気に噴出され、さらにその噴出の勢いにのってローラ42の外周面の下部に至り、ローラ42の回転変位に伴ってローラ42とカム90の両外周面の略全体に付着する。こうしてオイル空間67内のオイルが貫通孔52を通して大気へ流出することにより、オイル空間67内の油圧が開放される。
【0027】
その後、例えば、スラントエンジン等においては、オイルがアーム本体41の前端部の下面を伝ってパッド部45に至り、パッド部45とバルブステム31の突端部32の両摺動面に付着する。かくして、オイル空間67内に流入したオイルによって、嵌合部46とピボット60との間、ローラ42とカム90との間、及びパッド部45とバルブ30との間が順次潤滑される。
【0028】
なお、オイルギャラリー14から流出するオイルによってピボット60が取付孔13内で軸周りに回転しても、各貫通孔52のうちのいずれか1つの貫通孔52がローラ42の外周面と対向する位置に配置されることにより、ローラ42への給油が可能となる。
【0029】
以上説明したように、実施形態1によれば、ピボット60のオイル空間67内に流入するオイルの油圧が貫通孔52を通して大気へ放出されるから、オイル空間67内におけるオイルの過剰な圧縮が回避される。したがって、前記油圧に起因してピボット60が取付孔13から突き出るように浮き上がるのが阻止され、ひいては動弁機構の性能低下が防止される。この場合、ピボット60の底面開口をプラグ等によって封止する必要がないため、部品点数及び組み付け工数の削減を図ることができる。
【0030】
また、オイルギャラリー14から流出するオイルによってピボット60が軸周りに回転しても、いずれかの貫通孔52がローラ42と対向して配置されるから、この貫通孔52の出口から流出するオイルによってローラ42とカム90とを潤滑させることができる。
【0031】
<参考例1>
図4及び図5は、本発明の参考例1を示す。参考例1では、実施形態1における貫通孔52に代わって、通油孔53及び通油溝54が形成されている。その他は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の構成には同一符合を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
通油孔53は、実施形態1における給油孔69に相当する部分であって、周壁61を高さ方向に貫通し、頭部64の上端に開口する形態とされている。通油孔53の出口(外側開口)は、ラッパ状に拡開され、ピボット60Aがロッカアーム40を支持した状態で、嵌合部46の窪み部51に臨んでいる。
【0033】
通油溝54は、頭部64の摺動面68に沿って高さ方向に延びる形態とされ、その入り口が通油孔53の出口に連通し、その出口(延出端)が摺動面68の下端に至っている。通油溝54の出口は、ピボット60Aがロッカアーム40を支持した状態で、大気に臨むことが可能とされている。通油溝54は、断面略3角形状をなし、頭部64の摺動面68において、周方向に等間隔をあけて複数(図示する場合は120度間隔で3つ)設置されている。
【0034】
参考例1によれば、オイルギャラリー14のオイルが導油孔66からピボット60Aのオイル空間67を経て通油孔53を通して頭部64と嵌合部46との間(窪み部51)に至り、ロッカアーム40の揺動変位に伴って、両摺動面47、68の略全体に付着する。このため、ピボット60Aとロッカアーム40との間が潤滑される。また、通油孔53からのオイルは通油溝54を通して大気に流出する。このため、オイル空間67内のオイルが通油孔53の出口で塞き止められることがなく、オイル空間67内の油圧が開放される。さらに、スラントエンジン等においては、通油溝54の出口から流出するオイルがアーム本体41の下面を伝って、ローラ42の外周面及びパッド部45にも付着することとなり、ローラ42とカム90との間、及びパッド部45とバルブ30との間も潤滑される。
【0035】
<参考例2>
図6及び図7は、参考例2を示す。参考例2では、ピボット60Bの浮き上がりを阻止する手段として、貫通孔52に代わって、かしめ部19を用いている。その他は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の構成には同一符合を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
ピボット60Bは、オイル空間67、導油孔66及び給油孔69を有する中空筒状をなし、貫通孔52の省略に起因して、ロッカアーム40を支持した状態では、オイル空間67が大気に開放されていない。
【0037】
かしめ部19は、シリンダヘッド10の外面における取付孔13の開口縁部において、周方向に間隔をあけて複数(図示する場合はピボット60Bの片側に90度間隔をあけて3つ)設置されている。各かしめ部19は、シリンダへッド10の外面から上方に起立する突片状をなし、非かしめ位置とかしめ位置とに変位可能とされている。非かしめ位置では、各かしめ部19が略垂直に切り立って、取付孔13内へのピボット60Bの挿入を許容し、かしめ位置では、各かしめ部19がピボット60B側に傾倒して肩部63に上方からかしめ付けられる。こうして各かしめ部19がかしめ位置にて肩部63を上方から押さえ付けることにより、ピボット60Bの浮き上がりが強制的に抑えられる。
【0038】
<参考例3>
図8は、参考例3を示す。参考例3では、ピボット60Bの浮き上がりを阻止する手段として、貫通孔52に代わって、リング70を用いている。その他は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の構成には同一符合を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
ピボット60Bは、参考例2と同様であって、オイル空間67、導油孔66及び給油孔69を有する中空筒状をなし、ロッカアーム40を支持した状態では、オイル空間67が大気に開放されていない。
【0040】
リング70は、樹脂製又は金属製であってC字状をなし、C字の切れ目を狭める向きに縮径変形可能とされている。シリンダヘッド10における取付孔13の内周面には、リング70が弾性的に嵌る環状の嵌合溝18が周回して形成されている。
【0041】
シリンダヘッド10の取付孔13内にピボット60Bが挿入された後、嵌合溝18にリング70が嵌め付けられる。すると、ピボット60Bの肩部63に上方からリング70が押え付け可能に配置され、もってピボット60Bの浮き上がりが強制的に抑えられる。なお、リングは、撓み可能な無端環状のOリングであってもよい。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)通油部は、ピボットの周壁を貫通することにより、オイル空間と大気とを連通させる形態であればよく、例えば、頭部の下端部を略水平に貫通する形態であってもよい。
(2)本発明は、ピボットの底面開口をプラグで封止することを否定するものではない。
【符号の説明】
【0043】
10…シリンダヘッド
11…通気路
13…取付孔
14…オイルギャラリー
30…バルブ
40…ロッカアーム
41…アーム本体
42…ローラ
52…貫通孔(通油部)
53…通油孔
54…通油溝
60、60A…ピボット
61…周壁
67…オイル空間
90…カム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8