(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693788
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】自動車搭載電気システム、及び、自動車搭載電気システムの駆動方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20150312BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20150312BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
B60R16/02 645A
B60R16/02 650R
F02N11/08 L
F02N11/04 D
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-510681(P2014-510681)
(86)(22)【出願日】2012年4月30日
(65)【公表番号】特表2014-518806(P2014-518806A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012001865
(87)【国際公開番号】WO2012156028
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年12月12日
(31)【優先権主張番号】102011101531.4
(32)【優先日】2011年5月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フオルクスヴアーゲン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Volkswagen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クリンキッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー フライシャー
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−072880(JP,A)
【文献】
特開2004−328988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
F02N 11/04
F02N 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車搭載電気システム(1)であって、
内燃機関用のスタータ(S)と、前記自動車搭載電気システム(1)の第1の領域に配置された第1のエネルギ蓄積器(2)と、ジェネレータ(G)と、前記自動車搭載電気システム(1)の第2の領域に配置された第2のエネルギ蓄積器(3)とを備え、
前記自動車搭載電気システム(1)の前記第1の領域と前記第2の領域との間に少なくとも2つの切り替え状態を有するスイッチング素子(4)が配置されており、第1の切り替え状態では、前記第1の領域から前記第2の領域へ向かう方向の電流の流れのみが可能となるか又は両方向での電流の流れが抑圧され、第2の切り替え状態では、前記第1の領域と前記第2の領域とが相互に導通するように接続され、
前記スイッチング素子(4)は対応する少なくとも1つの第1の制御ユニット(9)の制御信号(S1)によって駆動可能であり、
前記第2のエネルギ蓄積器(3)はDC/DC変換器(7)を介して前記ジェネレータ(G)に接続されており、
前記第1の制御ユニット(9)により内燃機関に対するスタートストップ命令(S‐S‐B)を検出可能であるかもしくは決定可能であり、
前記スタートストップ命令(S‐S‐B)が検出又は決定された場合、前記スイッチング素子(4)が前記第1の切り替え状態へ切り替えられ、前記スイッチング素子(4)に接続されているDC/DC出力側の電圧が第2の制御ユニットの制御命令(S2)によって高められ、測定ユニットにより前記スイッチング素子(4)を介した電圧の大きさが検出及び評価され、該評価に基づいて第3の制御ユニット(9)の制御命令(S3)により前記スタートストップ命令が実行されるかもしくは実行されない
ことを特徴とする自動車搭載電気システム。
【請求項2】
個々の制御ユニット又は全ての制御ユニットが共通の制御ユニット(9)に統合されている、請求項1記載の自動車搭載電気システム。
【請求項3】
前記スイッチング素子(4)は、パワー半導体スイッチもしくはパワーリレーもしくは並列接続されたダイオードを含むパワーリレーとして構成されている、請求項1又は2記載の自動車搭載電気システム。
【請求項4】
前記測定ユニットは電圧及び/又は電圧勾配を検出及び評価する、請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車搭載電気システム。
【請求項5】
前記第2のエネルギ蓄積器(3)の目標電圧は、前記第1のエネルギ蓄積器(2)の目標電圧よりも大きい、請求項1から4までのいずれか1項記載の自動車搭載電気システム。
【請求項6】
自動車搭載電気システム(1)の駆動方法であって、
前記自動車搭載電気システム(1)は、内燃機関用のスタータ(S)と、前記自動車搭載電気システム(1)の第1の領域に配置された第1のエネルギ蓄積器(2)と、ジェネレータ(G)と、前記自動車搭載電気システム(1)の第2の領域に配置された第2のエネルギ蓄積器(3)とを備え、前記自動車搭載電気システム(1)の前記第1の領域と前記第2の領域との間に少なくとも2つの切り替え状態を有するスイッチング素子(4)が配置されており、第1の切り替え状態では、前記第1の領域から前記第2の領域へ向かう方向の電流の流れのみが可能となるか又は両方向での電流の流れが抑圧され、第2の切り替え状態では、前記第1の領域と前記第2の領域とが相互に導通するように接続され、前記スイッチング素子(4)は対応する少なくとも1つの第1の制御ユニット(9)の制御信号(S1)によって駆動され、
前記第2のエネルギ蓄積器(3)はDC/DC変換器(7)を介して前記ジェネレータ(G)に接続されており、
前記第1の制御ユニット(9)により内燃機関に対するスタートストップ命令(S‐S‐B)を検出もしくは決定し、
前記スタートストップ命令(S‐S‐B)が検出又は決定された場合に、前記スイッチング素子(4)を前記第1の切り替え状態へ切り替え、前記スイッチング素子(4)に接続されているDC/DC出力側の電圧を第2の制御ユニットの制御命令(S2)によって高め、前記スイッチング素子(4)を介した電圧の大きさを測定ユニットにより検出及び評価し、該評価に基づいて第3の制御ユニットの制御命令(S3)により前記スタートストップ命令を実行するかもしくは実行しない
ことを特徴とする自動車搭載電気システムの駆動方法。
【請求項7】
前記電圧の大きさに基づいて、前記スイッチング素子(4)が前記第1の切り替え状態へ切り替えられたか否かを確認する、請求項6記載の自動車搭載電気システムの駆動方法。
【請求項8】
前記測定ユニットにより電圧及び/又は電圧勾配を検出及び評価し、該電圧に基づいて前記第1のエネルギ蓄積器(2)内の遮断又は前記第1のエネルギ蓄積器(2)へ通じる線路の遮断を検出する、及び/又は、該電圧勾配に基づいて、内部でのセル短絡及び/又は極端子の腐食を検出する、請求項6又は7記載の自動車搭載電気システムの駆動方法。
【請求項9】
前記スタートストップ命令が実行されないことを報知する、請求項6から8までのいずれか1項記載の自動車搭載電気システムの駆動方法。
【請求項10】
スタータバッテリ(2)の故障及び前記スタートストップ命令が実行されないことが検出された場合、前記スイッチング素子(4)を前記第1の切り替え状態にとどめる、請求項6から9までのいずれか1項記載の自動車搭載電気システムの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車搭載電気システム、及び、自動車搭載電気システムの駆動方法に関する。
【0002】
今日の自動車は、アイドリング時のCO
2排出の問題のためにスタートストップ機能を備えるものが増えてきている。スタートストップ機能とは、例えば自動車が信号で停止される際に、燃料節約及びCO
2排出を低減する目的で、機関を停止させるものである。さらなる走行に際しては機関がスタータを介して再始動される。スタータは機関を動かし始めるために800Aまでの電流を使うので、自動車バッテリの内部抵抗で6Vまでの電圧降下が生じる。よって、搭載電気システムで利用可能なクランプ電圧は、短時間で12V−6V=6Vへ低下する。信号でのスタートストップ動作のほか、走行中の自動車においても、不要時に機関(内燃機関)を停止できることが知られている(「アイドリングストップ」「スタートストップオンザムーブ」)。ただし、いずれの場合にも自動車の再始動は保証されなければならない。
【0003】
独国出願第102008054885号明細書から、自動車の搭載電気システムにおけるエネルギ供給を制御する装置が公知である。当該装置は負荷に接続可能であり、スタータに電気エネルギを供給するための第1のエネルギ蓄積器と、ジェネレータ電圧を形成するジェネレータと、制御可能な第1のスイッチング素子とを含む。第1のスイッチング素子は、第1のエネルギ蓄積器とジェネレータとの間に配置されており、自動車の駆動中、第1のエネルギ蓄積器からジェネレータへ向かう方向のみに電流を流れさせるように構成されている。このスイッチング素子は、導体のようにふるまう別の切り替え状態も有している。
【0004】
有利には、制御可能なスイッチング素子は、電界効果トランジスタ、特にMOSFETである。電界効果トランジスタは小さなゲート電圧及び最小の時間遅延で切り替えることができるので、制御可能なスイッチング素子を介して電流の流れを迅速に変更できるし、また、搭載電気システムにおける大きな電圧変動に迅速に対応できる。例えば、1つの電界効果トランジスタもしくは相互に並列接続された複数の電界効果トランジスタは、内部の1つ又は複数のダイオードの導通方向が第1のエネルギ蓄積器からジェネレータへ向かう方向に一致するように配置される。これにより、トランジスタが阻止されている場合、電流がジェネレータから第1のエネルギ蓄積器へは流れないことが保証される。他方で、トランジスタが阻止されている場合に、第1のエネルギ蓄積器から搭載電気システムへ流れる電流の一部が電界効果トランジスタの内部ダイオードを通って流れるように構成することもできる。
【0005】
また、上述の装置は、負荷に電気エネルギを供給する第2のエネルギ蓄積器を備えている。第2のエネルギ蓄積器は、第1の制御可能なスイッチング素子が一方では第1のエネルギ蓄積器と第2のエネルギ蓄積器との間に、他方ではジェネレータと第2のエネルギ蓄積器との間に位置するように配置されている。さらに、自動車の駆動中、第1のエネルギ蓄積器を電圧UE1まで充電するように構成されたチャージ回路が設けられている。この電圧UE1は、第2のエネルギ蓄積器の電圧UE2と同じかこれより大きく、ジェネレータ電圧より小さい。有利には、第1のエネルギ蓄積器は2重層コンデンサとして構成され、第2のエネルギ蓄積器はバッテリとして構成される。第1のエネルギ蓄積器は、ウォームスタート時に電気エネルギをスタータへ供給し、及び/又は、負荷による電圧変動を緩和する。第2のエネルギ蓄積器は、コールドスタート時に電気エネルギをスタータへ供給する。
【0006】
本発明の基礎とする技術的課題は、冒頭に言及した形式の自動車搭載電気システムにスタートストップ機能を設けること、及び、スタートストップ機能を有する自動車搭載電気システムの駆動方法を提供することである。
【0007】
この技術的課題は、請求項1,6に記載された特徴によって解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項から得られる。
【0008】
ここで、自動車搭載電気システムは、内燃機関用のスタータと、第1の領域に配置された第1のエネルギ蓄積器と、ジェネレータと、第2の領域に配置された第2のエネルギ蓄積器と、第1の領域と第2の領域との間に配置された少なくとも2つの切り替え状態を有するスイッチング素子とを含む。第1の切り替え状態では、第1の領域から第2の領域へ向かう方向の電流の流れのみが可能となるか又は両方向での電流の流れが抑圧され、第2の切り替え状態では、第1の領域と第2の領域とが相互に導通するように接続される。ここで、スイッチング素子は対応する少なくとも1つの第1の制御ユニットの制御信号によって駆動可能であり、第2のエネルギ蓄積器はDC/DC変換器を介してジェネレータに接続されている。
【0009】
第1の制御ユニットにより、内燃機関に対するスタートストップ命令を検出可能であるかもしくは決定可能である。スタートストップ命令が検出もしくは決定された場合、スイッチング素子が第1の切り替え状態へ切り替えられ、又は、第1の切り替え状態への切り替えを促す制御命令が形成される。さらに、別の制御ユニット(場合により第2の制御ユニット)の制御命令により、スイッチング素子に接続されているDC/DC出力側の電圧が高められ、測定ユニットによりスイッチング素子を介した電圧の大きさが検出されて評価され、この評価に基づいて、スタートストップ命令が、別の制御ユニット(場合により第3の制御ユニット)の制御命令によって実行されるかもしくは実行されない。
【0010】
本発明によれば、内燃機関を再始動可能であること及び/又は他の電気システム(特に第2の領域の電気システム)への影響が小さいことが確実である場合にのみスタートストップ命令が実行されることを簡単な手段で保証できる。本発明ではスイッチング素子の第1の切り替え状態によってフィードバック作用が阻止される。つまり、高い始動電流のためにスタータバッテリで電圧不足が生じると、第2の切り替え状態において第2の領域でも電圧不足が生じるが、DC/DC変換器の出力側での電圧が高められることにより、次の2つの効果が達成されるのである。すなわち、
・一方では、スタータバッテリの平滑化作用が第1の切り替え状態で省略され、電圧の大きなリップルが発生する。DC/DC変換器の出力側電圧を意図的に増大することにより、電圧不足が補償され、第2の領域が安定化される。
・他方では、DC/DC変換器の出力側電圧がスタータバッテリの定格電圧よりも大きいことから、一時的な電圧増大によって、正常動作時にスイッチング素子を介した電圧差が必然的に低下する。
【0011】
スイッチング素子を介した電圧の大きさに基づいて、一方では、スイッチング素子が第1の切り替え状態にあるか否かが検査され、他方では、スタータバッテリが内燃機関を再始動できる状態にあるか否かが検査される。内燃機関が再始動可能であることが保証されない場合、スタートストップ命令は実行されない。
【0012】
有利な実施形態では、個々の制御ユニット又は全ての制御ユニット(第1,第2,第3の制御ユニット)が共通の制御ユニットに統合される。また、測定ユニットをいずれかの制御ユニット又は共通の制御ユニットに統合することもできる。この場合、スタートストップ命令は、自動車搭載電気システムの1つ乃至複数の制御ユニットによって形成される。又は、スタートストップ命令は、上位のエネルギ管理部もしくは機関制御装置によって形成されて制御ユニットへ伝送され、そこで検出される。
【0013】
別の実施形態では、スイッチング素子は、パワー半導体スイッチもしくはパワーリレーもしくは並列接続されたダイオードを含むパワーリレーとして構成される。ここでのパワー半導体スイッチは、例えば、それぞれ少なくとも1つの内部ダイオードを含むMOSFETもしくはIGBTとして構成される。ダイオードは、この場合、第1の切り替え状態において電流を整流する作用を有する。
【0014】
別の実施形態では、測定ユニットにより、電圧及び/又は電圧勾配が検出及び評価される。ここで、定格電圧は、第1の切り替え状態が発生したか否かを表す尺度となる。なぜなら、電圧差が存在しないケースは導通接続(第2の切り替え状態)に相当するからである。電圧差が大きい場合には、スタータバッテリ内の遮断もしくはスタータバッテリへ通じる線路の遮断が推定される。また、電圧勾配の測定によれば、スタータバッテリの内部のセル短絡もしくは極端子の腐食を推定できる。電圧勾配はスタータバッテリでの電位の時間変化に関連するからである。
【0015】
別の実施形態では、スタートストップ命令が実行されないことが、例えば表示ユニットで表示されることによって報知される。こうして、いったん停止された自動車が再始動不能であることが運転者に示される。
【0016】
別の実施形態では、スタータバッテリの故障及びスタートストップ命令が実行されないことが検出された場合、スイッチング素子が第1の切り替え状態にとどめられる。
【0017】
別の実施形態では、第2のエネルギ蓄積器の目標電圧もしくは定格電圧は、第1のエネルギ蓄積器(スタータバッテリ)の目標電圧もしくは定格電圧よりも大きい。
【0018】
第1のエネルギ蓄積器は例えば鉛酸蓄電池もしくはリチウムイオンバッテリとして構成できる。第2のエネルギ蓄積器は例えば二重層コンデンサもしくはリチウムイオンセルとして構成できる。後者のほうが高いエネルギ密度を有するのでより有利である。
【0019】
本発明を以下に有利な実施例に則して詳細に説明する。
図1には自動車搭載電気システムの概略的なブロック図が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】自動車搭載電気システムの概略的なブロック図である。
【0021】
自動車搭載電気システム1は図示されていない内燃機関に対するスタータSと第1のエネルギ蓄積器2(以下スタータバッテリ2とも称する)とを含む。スタータS及びスタータバッテリ2は自動車搭載電気システム1の第1の領域に配置されている。さらに、自動車搭載電気システム1はジェネレータGと第2のエネルギ蓄積器3とを含み、これらは自動車搭載電気システム1の第2の領域に配置されている。
【0022】
自動車搭載電気システム1の第1の領域と第2の領域との間には少なくとも2つの切り替え状態を含むスイッチング素子4が配置されており、第1の切り替え状態では第1の領域から第2の領域へ向かう方向にのみ電流が流れることができ、第2の切り替え状態では第1の領域と第2の領域とが相互に導通するように接続される。スイッチング素子4は、図ではスイッチ5及び並列接続されたダイオード6によって表されており、例えばMOSFETとして構成される。このスイッチング素子4は、導通時には閉成されたスイッチ5のように機能し、阻止時には内部ダイオードに基づいてダイオード6のように機能する。
【0023】
第2のエネルギ蓄積器3は、DC/DC変換器7を介して、ジェネレータG及びスイッチング素子4に接続されている。ここで、有利には、第2のエネルギ蓄積器3の定格電圧はスタータバッテリ2の定格電圧よりも大きい。したがって、DC/DC変換器7は、ジェネレータの方向では降圧変換器として動作し、第2のエネルギ蓄積器3の方向では昇圧変換器として動作する。また、自動車搭載電気システム1の第2の領域には電気負荷8が配置されており、これは例えば光源、制御装置、電気機械式操舵装置及び/又は電気機械式制動装置などであってよい。第2のエネルギ蓄積器3は、図示の実施例では、部分的に並列又は部分的に直列に接続された複数のセル3.1−3.6から成っており、これにより所望の容量のもとで定格電圧を実現することができる。さらに、自動車搭載電気システム1は、例えば搭載電気システム用制御装置内に組み込まれた制御ユニット9と、スタータバッテリ2とアースとの間に配置されたバッテリ管理モジュール10とを含む。
【0024】
通常動作時、内燃機関はまずスタータSによって始動される。このとき、スイッチ5は図示のように開放されている。その後、内燃機関が動作して特にジェネレータGを駆動し、自動車搭載電気システムの負荷8へ給電させる。なお、昇圧変換器として駆動されるDC/DC変換器7を介して、第2のエネルギ蓄積器3が充電される。始動後には、閉成されるスイッチ5を介して、ジェネレータGがスタータバッテリ2を充電する。
【0025】
走行動作中にスタートストップ過程が実行される場合、いったん停止された内燃機関を再始動できることが保証されなければならない。制御ユニット9がスタートストップ命令S‐S‐Bを受信するかもしくは自身でスタートストップ命令を決定すると、第1のステップで制御信号S1によりスイッチ5が開放される。ついで、制御ユニット9の第2の制御命令S2により、DC/DC変換器7の出力側の電圧が高められる。その後、制御ユニット9はKL30端子の電位とKL30Z端子の電位とを比較する。DC/DC変換器7の出力側電圧が高められているので、スイッチ5が開放されれば、KL30端子の電位とKL30Z端子の電位との電位差ΔUが生じる。理想的にはこの電位差ΔUはDC/DC変換器7の出力側電圧の増大分に相当する。対して、電圧降下がゼロである場合、これは、例えば制御信号S1が阻害されたり、もしくは、スイッチング素子4が故障したりしたために、スイッチ5が閉成されたままであることを意味する。スイッチ5が閉成されている場合、自動車搭載電気システム1の第2の領域に影響を及ぼさずに内燃機関を始動させることは不可能となるので、制御ユニット9は例えば次のように応働する:
・スタートストップ命令を実行しないという制御信号S3が形成される。この場合、制御信号S3は有利には例えばエラーメッセージもしくは警報として相応に表示ユニットで報知される。
・制限された数のスタートストップ命令が実行される。つまり、制限されたスタートストップ動作のみが維持される。この場合には、スタートストップ命令S‐S‐Bはスタートストップ問い合わせ信号として解釈され、制御信号S3が本来のスタートストップ命令(イエスもしくはノー)を表す。
【0026】
制御ユニット9での評価によって電位差の存在が識別されたとすると、ここでスイッチ5が開放される。続いて、制御ユニット9はさらに電位差の大きさを評価する。電位差の大きさがDC/DC変換器7の出力側電圧の増大分よりも大きい場合、このことはKL30Z端子の電位の欠落を表している。原因は例えばスタータバッテリ2内での遮断もしくはスタータバッテリ2へ通じる線路の遮断である。この場合、スタータバッテリ2は再始動を保証できない。よって、制御ユニット9はスタートストップ命令を実行しないという制御信号S3を形成する。この場合、有利には、スタータバッテリ2の故障の影響が自動車搭載電気システム1の第2の領域に及ばないよう、スイッチ5は開放状態にとどめられる。また、制御ユニット9はKL30Z端子での電位の勾配時間特性も評価する。KL30Z端子の電位が短時間だけ欠落し、その後再びスタータバッテリ2の定格電圧まで上昇したことを制御ユニット9が検出した場合、このことは(スタータバッテリ2が個々のバッテリセルから成る構造での)スタータバッテリ2内での内部のセル短絡、又は、極端子の腐食を示唆している。この場合も同様に、スタートストップ命令は実行されないか又は制限された状態で実行され、スイッチ5は開放状態にとどめられる。
【0027】
対して、スタータバッテリ2に故障が存在しないと評価された場合、つまり、KL30端子の電位とKL30Z端子の電位との電位差がΔU以下である場合、制御ユニット9はスタートストップ命令を実行せよという別の制御信号S3を形成し、内燃機関を停止させる。
【0028】
バッテリ管理モジュール10はスタータバッテリ2の充放電電流を検出する。ここからバッテリ管理モジュール10は例えばスタータバッテリ2の内部抵抗及び/又はスタータバッテリ2の充電状態(ステートオブチャージSOC)もしくは経時劣化状態(ステートオブヘルスSOH)を求める。この場合、例えば内部抵抗の変化に基づいて内部のセル短絡又は類似のエラーを推定することができる。バッテリ管理モジュール10は、スタータバッテリ2の個々のパラメータもしくは全てのパラメータを考慮した信号S4を制御ユニット9へ伝送する。この場合、制御ユニット9は、スタートストップ命令を実行すべきか否かを判断する際に当該信号S4の情報を考慮し、例えば、内部抵抗が所定の閾値より大きい場合にスタートストップ命令を実行しないようにする。
【0029】
なお、ダイオード6の機能は本発明の方法にとって必須ではない。ただし、ダイオード6により、DC/DC変換器7及び/又は第2のエネルギ蓄積器3が故障した場合に負荷8への給電を保証することができる。