(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、上記従来の作業車両の旋回装置では、以下に示すような問題点を有している。
上記旋回装置を製造する際に、シール部材を第2ピニオン軸の周囲に組み付けるとシール部材が弾性変形し、そのリップ部の角度が変化する場合があった。又、第2軸受け部を覆っているケースによって、製造の際にシール部材の当接状態を視認出来ない。
このため、リップ部の角度が極端に変化した場合には、製造後の旋回装置においてシール部材のリップ部が適切な位置に配置されず、シール性を損ねる場合があった。
本発明の目的は、従来の作業車両の旋回装置の課題を考慮し、より確実にシール性を確保することが可能な作業車両の旋回装置及びその製造方法を提供することである。
【0006】
(課題を解決するための手段)
第1の発明に係る作業車両の旋回装置は、駆動部と、減速部と、出力ピニオンと、第1ピニオン軸と、第2ピニオン軸と、軸受け部と、ケース部と、支持リングと、シール部材とを備えている。駆動部は、旋回の回転駆動力を発生する。減速部は、駆動部の下方に配置され、駆動部の回転を減速する。出力ピニオンは、減速部の下方に配置され、減速部によって減速された駆動部の回転を出力する。第1ピニオン軸は、出力ピニオンの上面から上方に向かって設けられ、減速部を介して駆動部の回転が伝達される。第2ピニオン軸は、出力ピニオンの下面から下方に向かって設けられている。軸受け部は、第2ピニオン軸を回転可能に支持する。ケース部は、軸受け部の下側及び周囲を覆うように設けられている。支持リングは、第2ピニオン軸の軸受け部と出力ピニオンの間に配置され、軸受け部と出力ピニオンの夫々に当接して出力ピニオンを軸受け部の上方に支持する。シール部材は、支持リングの外周に配置される装着部と、装着部から径方向外側に向かって突出して形成され軸受け部の上側を封止するリップ部とを有する。支持リングは、その下端から径方向外側に向かって突出して設けられた突出部を有している。装着部は、突出部よりも上側に配置され、リップ部は、
突出部の上側に当接して突出部よりも外側に突出している。
軸受け部は、内輪と、外輪と、転動体とを有している。内輪は、第2ピニオン軸に当接し、第2ピニオン軸とともに回転する。外輪は、内輪の外周側に配置され、ケース部に固定されている、転動体は、内輪と外輪の間に転動可能に配置されている。リップ部は、外輪の上端面に上方から当接することにより、軸受け部の上側を封止する。
【0007】
作業車両の旋回装置を製造する際には、シール部材が支持リングの外周に嵌められるが、その際にシール部材は弾性を有しているため弾性変形し、リップ部の角度が変化する場合がある。
しかしながら、上記のように突出部を設けることにより、リップ部の角度が変化する場合であってもリップ部が突出部に当接して角度変化が抑制される。
そのため、例えケース部によって視認できない場合であってもシール部材のリップ部を適切な位置に配置することができる。
これにより、より確実にシール性を確保することが可能となる。
【0008】
このように、シール部材のリップ部が外輪の上端面に当接することにより、支持リングとシール部材によって軸受け部の上側、特に外輪と内輪の間を上方から覆って封止することが出来、グリースの飛散、異物の侵入を防ぐことが可能となる。
【0009】
第
2の発明に係る作業車両の旋回装置は、第1の発明の作業車両の旋回装置であって、突出部は、支持リングの全周に渡って設けられている。
これによって、シール部材を支持リングに嵌めることによるリップ部の角度の変化が全周に渡って抑制され、リップ部による封止位置を適切な位置に定めることが出来る。
【0010】
第
3の発明に係る作業車両の旋回装置の製造方法は、第2の発明の作業車両の旋回装置の製造方法であって、第1ユニット組立工程と、第2ユニット組立工程と、装着工程とを備えている。第1ユニット組立工程は、第1取付け動作と、第2取り付け動作を有し、減速部、第1ピニオン軸、出力ピニオン、第2ピニオン軸、支持リング、シール部材、及び内輪を有する第1ユニットを組み立てる。第1
取付け動作は、第2ピニオン軸の周囲に支持リング、シール部材、及び内輪を取り付ける。第2取り付け動作は、減速部に第1ピニオン軸、出力ピニオン及び第2ピニオン軸を取り付ける。第2ユニット組立工程は、ケース部に外輪及び転動体を取り付けて第2ユニットを組み立てる。装着工程は、上下逆に配置された第1ユニットの上側から、上下逆に配置された第2ユニットを、内輪の外側に外輪が配置されるように装着する。突起部の先端の径は外輪の内径よりも小さく、
第2ユニットを第1ユニットに装着する前であって支持リングの周囲に取り付けられた状態におけるリップ部の先端の径は外輪の内径よりも大きい。
このように、支持リングの周囲にシール部材が取り付けられて、リップ部の角度が変化する場合であってもリップ部が突出部に当接して角度変化が抑制されるため、リップ部の先端の径は外輪の内径よりも大きくなっている。そのため、装着工程において、ケース部によってシール部材の当接状態が視認できない場合であっても、リップ部を外輪の上端面により確実に当接させることができ、シール性を確保することが可能となる。
【0011】
(発明の効果)
本発明によれば、より確実にシール性を確保することが可能な作業車両の旋回装置及びその製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る作業車両の旋回装置について、図面を参照しながら以下に説明する。
(実施形態)
<1.構成>
図1は、本実施の形態の油圧ショベルの側面図である。
図2は、本実施の形態の油圧ショベルの作業機を除く部分平面図である。
【0014】
図1に示すように、作業車両の一例としての油圧ショベル1は、進行方向の左右両端部に設けられた履帯20を有する下部走行体2と、下部走行体2の上部に配置された上部旋回体3を備えている。上部旋回体3には、作業機30、運転室31、エンジンルーム32、及びカウンタウエイト33等が設けられている。この作業機30は、中央部分で屈曲したブーム301と、ブーム301の先端に取り付けられたアーム302と、アーム302の先端に取り付けられたバケット303を有している。又、
図2に示すように作業機30を取り付けるための作業機支持軸34が設けられている。
そして、
図2に示すように、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回させるために、上部旋回体3には旋回装置10が設けられている。また、上部旋回体3の周囲近傍には通路4が設けられている。この通路4は、メンテナンス等のために油圧ショベル1の各部分に作業者が安全に行き来可能なように設置されている。
【0015】
(旋回装置10の構造)
図3は、本実施の形態1の旋回装置10の側面図である。
図2及び
図3に示すように、上部旋回体3の旋回装置10は、その上部に設けられた駆動部11と、駆動部11の下側に設けられたスイングマシナリ12と、駆動部11から入力された動力を出力するために、スイングマシナリ12の下側に設けられた出力部13を備えている。この駆動部11には、油圧モータであるスイングモータ及び油圧モータを制御する制御弁等が配置されている。
【0016】
一方、下部走行体2には、
図2及び
図3に示すように外周に歯を有するスイングサークル21が設けられており、出力部13に設けられている出力ピニオン101がスイングサークル21と噛合っている。
スイングモータの回転が、スイングマシナリ12の内部に配置されている減速部によって減速されて出力ピニオン101に伝達されて出力ピニオン101が回転する。この回転によって旋回装置10は、スイングサークル21の外周を回転し、旋回装置10が固定されている上部旋回体3が下部走行体2に対して旋回する。
【0017】
図4は、旋回装置10の要部を示す断面図であり、スイングマシナリ12及び出力部13の要部を示す断面図である。
図4に示すように、スイングマシナリ12には、軸結合部14と、ブレーキ部15と、減速部16が、上方から下方に向かって連続して設けられている。
軸結合部14では、駆動部11に配置されているスイングモータとスイングマシナリ12の駆動軸17との機械的結合が行なわれる。ブレーキ部15は、駆動軸17の回転を制動する。減速部16では、内部の減速機構によって駆動軸17の回転が減速されて出力ピニオン101へと出力される。
【0018】
このように、旋回装置10の一例には、上方から下方に向かって縦方向に、制御弁及びスイングモータを含む駆動部11と、軸結合部14、ブレーキ部15及び減速部16を含むスイングマシナリ12と、出力部13が連続して配置されているため、旋回装置10は縦長の形状となっている。
【0019】
(出力部13)
出力部13は、出力ピニオン101と、第1ピニオン軸102と、第2ピニオン軸103と、第1軸受け部104と、第2軸受け部105と、ケース部106と、支持リング107と、シール部材108(後述する
図5参照)とを有している。
出力ピニオン101は、上下方向に回転軸を有しており、スイングサークル21と噛み合う。
第1ピニオン軸102は、出力ピニオン101の上面101aから上方に向かって設けられている。第2ピニオン軸103は、出力ピニオン101の下面101bから下方に向かって設けられている。出力ピニオン101は、第1ピニオン軸102及び第2ピニオン軸103を回転軸として一体的に回転する。
【0020】
第1軸受け部104は、第1ピニオン軸102を回転可能に支持する。また、第2軸受け部105は、第2ピニオン軸103を回転可能に支持する。すなわち、出力ピニオン101は、その上側及び下側の両方において軸支されている。
ケース部106は、第2軸受け部105の周囲及び下側を覆うように形成されている。このケース部106内には、第2軸受け部105の潤滑のためのグリースが充填されている。
【0021】
図5は、第2軸受け部105の周辺を示す断面図であり、
図6は、
図5のW部拡大図である。第2軸受け部105は、インナーレース110と、アウターレース111と、コロ112と、コロ112を保持する保持器113とを有している。
インナーレース110は、
図6及び
図7に示すように第2ピニオン軸103の周囲に第2ピニオン軸103に当接して設けられており、第2ピニオン軸103とともに回転する。
【0022】
アウターレース111は、
図5及び
図6に示すようにインナーレース110の外側に配置されておりケース部106に固定されている。
コロ112は、
図6に示すように、インナーレース110とアウターレース111の間に保持器113によって転動可能に保持されて配置されている。
支持リング107が、
図6に示すように、第2ピニオン軸103のインナーレース110の上端面110aと出力ピニオン101の下面101bの間に、上端面110a及び下面101bと当接して配置されている。支持リング107が配置されることによって出力ピニオン101の位置を、インナーレース110から支持リング107の上下方向の高さ分上方に位置させることができる。これにより、出力ピニオン101を、ケース部106と接触しないようにケース部106の上方の位置に支持することができる。
【0023】
この支持リング107は第2ピニオン軸103とともに回転する。支持リング107の下端107uには、その外周面107aから外側に向かって突出した突出部117が設けられている。突出部117は、支持リング107の全周にわたって形成されている。
シール部材108は、ゴム等の樹脂によって形成された弾性を有する部材であり、
図6に示すように支持リング107の外周面107aに装着されている。詳細には、シール部材108は、支持リング107の外周面107aに当接して装着される筒状の装着部181と、装着部181の下端から外側に向かって突出して形成されたリップ部182とを有している。リップ部182は、シール部材108の全周に渡って形成されている。
【0024】
装着部181は、支持リング107の突出部117の上側に装着されている。リップ部182は、突出部117よりも外側に突出するとともに、下方に向かって傾斜しており、その先端182aがアウターレース111の上端面111aを押圧している。尚、シール部材108は、支持リング107とともに第2ピニオン軸103と同時に回転する。
また、
図6に示すように、リップ部182が突出部117と当接部分117aにおいて当接するとともに、リップ部182と突出部117の間に隙間Sが形成されている。より詳細には、
図6のV部拡大図に示すように支持リング107の下端107uに設けられている突出部117の先端近傍の上側に、リップ部182が当接している当接部分117が形成されている。また、隙間Sは、突出部117の根元部分117bから当接部分117aまでの上側117sと、リップ部182の間に形成されている。
このリップ部182の先端182aがアウターレース111の上端面111aを押圧することによって、第2軸受け部105の上側は支持リング107及びシール部材108によって覆われて封止されているため、グリースの外部への飛散、異物の侵入を防ぐことができる。
【0025】
<2.旋回装置の製造方法>
次に、本実施形態の旋回装置の製造方法について説明する。
図7は、本実施形態の旋回装置の製造方法を説明するためのフロー図である。
図8は、本実施形態の旋回装置の製造方法を説明するための図である。尚、
図8では、旋回装置の各構成が使用時と上下逆に配置されているが、以下の説明の際に記載する上下方向とは、使用時の際の配置を基準に説明する。すなわち、
図8における上方が、使用時における下方となる。以下、上下逆に配置された状態を示す図面においても同様である。
【0026】
本実施形態の旋回装置の製造では、第1ユニット1000及び第2ユニット1001が組み立てられる。
はじめに、第1工程S1において、第2ピニオン軸103の周囲に支持リング107、シール部材108及びインナーレース110が取り付けられる。シール部材108は、第2ピニオン軸103に支持リング107を取り付ける前又は取り付けた後に支持リング107の外周面107aにシール部材108が装着される。そして、インナーレース110は、支持リング207に当接するように、第2ピニオン軸103に取り付けられる。
【0027】
次に、第2工程S2において、減速部16に第1ピニオン軸102、出力ピニオン101及び第2ピニオン軸103が取り付けられる。この取り付けの際には、減速部16は上下逆の状態で配置されており、減速部16の上方から第1ピニオン軸102、出力ピニオン101及び第2ピニオン軸103取り付けられる。
この第1工程S1及び第2工程S2によって、減速部16、第1ピニオン軸102、出力ピニオン101、第2ピニオン軸103、支持リング107、シール部材108、及びインナーレース110を有する第1ユニット1000が組み立てられる(
図8参照)。
【0028】
次に、第3工程S3において、ケース部106にアウターレース111、コロ112及び保持器113が取り付けられた第2ユニット1001が組み立てられる。
次に、第4工程S4において、第1ユニット1000に第2ユニット1001が上方から装着される。
図8に示すように、第1ユニット1000は、上下逆に配置されており、第2ピニオン軸103が上方に向かって突出している。第2ユニット1001も上下逆に配置されており、第2ピニオン軸103に取り付けられているインナーレース110の周囲にアウターレース111が配置されるように、第1ユニット1000に装着される。この際、
図8に示すように、インナーレース110の中心軸(図中A参照)とアウターレース111の中心軸(図中A参照)が略一致した状態で上方から第2ユニット1001が下方に移動される。
【0029】
図9(a)は、第2ユニット1001を第1ユニット1000に装着する前のシール部材108の状態を示す図である。
図9(b)は、第2ユニット1001を第1ユニット1000に装着した後のシール部材108の状態を示す図である。また、
図10(a)は、
図9(a)のT部拡大図であり、
図10(b)は、支持リング107に取り付ける前のシール部材108の状態を示す断面図である。
【0030】
図10(b)に示すように、シール部材108のリップ部182は、シール部材108の中心軸Aの垂直方向よりも下方に向けて斜めに突出している。このようなシール部材108が、支持リング107に取り付けられると、
図10(a)に示すように、弾性変形してリップ部182はその先端182aが中心軸A側に近づくように更に斜めに移動する(矢印B参照)。この移動は、リップ部182が突出部117に当接することによって停止される。
図9及び
図10の状態では、支持リング107及びシール部材108は上下逆に配置されているが、上述したように使用時の上下方向を基準にして説明すると、
図6の状態と同様に支持リング107の下端に設けられている突出部117の先端近傍の上側にリップ部182が当接している当接部分117aが形成されている。また、突出部117の根元部分117bから当接部分117aまでの上側117sと、リップ部182の間には隙間Sが形成されている。
【0031】
このようにシール部材108が、支持リング107との間に隙間Sを設けるとともにリップ部182が突出部117に当接するように支持リング107に取り付けられるほうが、突出部117の上側117sに沿わせるようにリップ部182を配置するよりも、リップ部182の先端182aの位置を調整しやすい。
また、この当接部分117aでは、突出部117の表面には2段階のR形状が施されており、リップ部182に傷か付かないように形成されている。詳細には、
図10(c)の拡大図に示すように、突出部117の上側117sは正面視において外周面107aから外周面107aに対して垂直方向に所定の長さ(図中aで示している)まで直線に形成されており、そこから半径R1でR形状が形成され、続いて半径R2でR形状が形成されている。
【0032】
尚、R1の中心位置O1は、外周面107aから外周面107aに対して垂直方向に所定の長さa移動した位置から、突起部117の下端面117vに対して垂直な線L1上であって、下端面117vから下方に長さbだけ移動した位置である。このR1からR2へ切り替わる部分の近傍にリップ部182が当接する当接部分117aが位置する。また、R1の方がR2よりも大きい径となっている。
【0033】
一方、R2の中心位置O2について説明すると、中心位置O2は、
図10(c)に示す直線117Lに正接するように設けられている。
より詳しく説明すると、
図10(c)に示すように、支持リング107の外周面107aと突出部117の上側117sの交点が、Aとして示されている。一方、
図10(b)に示すように、支持リング107に取り付けられていない状態のシール部材108のリップ部182の下端側の直線が182Lで示されている。そして、Aを通り、直線182Lの傾きを有する直線が117Lとして示されている。この直線117Lに正接するように半径R2の円の中心位置O2が設けられている。尚、直線117Lと、先端117dの延長線の交点がBで示されている。
【0034】
図10(a)の状態、すなわち、シール部材108が支持リング107に組みつけられてリップ部182が突出部117に当接した状態では、
図9(a)に示すように、リップ部182の先端182aの径Raは、突出部117の先端117dの径Rcよりも長く、アウターレース111の内径Rb(内周面が111bとして示されている)よりも長くなっている。
【0035】
このため、
図8に示すように、インナーレース110の中心軸とアウターレース111の中心軸を略一致させた状態では、
図9(a)に示すように、リップ部182の先端182aの位置は、アウターレース111の内周面111bより外側であって、上端面111aの下方に位置することになる。
この状態で、第2ユニット1001を下方に移動させると、リップ部182の先端182aは、アウターレース111の上端面111aに当接し、第2軸受け部105の上側をシールすることが出来る。尚、この第4工程S4において、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、ケース部106がシール部材108の外側に配置されているため、シール部材108のシール状態を目視では確認しにくいが、本実施形態では、リップ部182の先端位置がアウターレース111の上端面111aと対向する位置に配置されているため、たとえ目視できなくても、確実にシール性を確保することができる。
尚、
図6において説明したように製造された状態の旋回装置10においても、リップ部182が突出部117と当接部117aにおいて当接するとともに、リップ部182と突出部117の間に隙間Sが形成されている。
【0036】
<3.特徴>
(3−1)
本実施形態の作業車両の旋回装置10は、駆動部11と、減速部16と、出力ピニオン101と、第1ピニオン軸102と、第2ピニオン軸103と、第2軸受け部105(軸受け部の一例)と、ケース部106と、支持リング107と、シール部材108とを備えている。減速部16は、駆動部16の下方に配置され、駆動部16の回転を減速する。出力ピニオン101は、減速部16の下方に配置され、減速部16によって減速された駆動部16の回転を出力する。第1ピニオン軸102は、出力ピニオン101の上面101aから上方に向かって設けられている。第2ピニオン軸103は、出力ピニオンの下面101bから下方に向かって設けられている。第2軸受け部105は、第2ピニオン軸103を回転可能に支持する。ケース部106は、第2軸受け部105の下側及び周囲を覆うように設けられている。支持リング107は、第2ピニオン軸103の第2軸受け部105と出力ピニオン101の間に配置され、第2軸受け部105と出力ピニオン101の夫々に当接して出力ピニオン101を第2軸受け部105の上方に支持する。シール部材108は、支持リング107の外周面107aに配置される装着部181と、装着部181から径方向外側に向かって突出して形成され第2軸受け部105の上側を封止するリップ部182とを有する。支持リング107は、その下端107uから径方向外側に向かって突出して設けられた突出部117を有している。装着部181は、突出部117よりも上側に配置され、リップ部182は、突出部117よりも外側に突出している。
【0037】
作業車両の旋回装置10を製造する際には、シール部材108が支持リング107の外周に嵌められるが、その際にシール部材108は弾性を有しているため弾性変形し、リップ部182の角度が変化する場合がある。
例えば、
図11は、突出部117が形成されていない支持リング1070を用いた場合に、第2ユニット1001を第1ユニット1000に装着する状態を示す図である。
図11に示すように、突出部117が設けられていないため、リップ部182が弾性変形によって上方に移動しすぎているため、リップ部182の先端182aが、アウターレース111の上端面111aの内周面111b側の端111c近傍に対向しているため、アウターレース111の上端面111aに当接させ難い場合がある。
【0038】
しかしながら、上記のように突出部117を設けることにより、リップ部182の角度が変化する場合であってもリップ部182が突出部117に当接して角度変化が抑制される。
そのため、例えケース部106によって視認できない場合であってもシール部材108のリップ部182を適切な位置(上端面111a)に配置することができる。
これにより、より確実にシール性を確保することが可能となる。
【0039】
(3−2)
本実施形態の作業車両の旋回装置10では、第2軸受け部105は、インナーレース110(内輪の一例)と、アウターレース111(外輪の一例)と、コロ112(転動体の一例)とを有している。アウターレース111は、第2ピニオン軸103に当接し、第2ピニオン軸103とともに回転する。アウターレース111は、インナーレース110の外周側に配置され、ケース部106に固定されている、コロ112は、インナーレース110とアウターレース111の間に転動可能に配置されている。リップ部182は、アウターレース111の上端面111aに当接している。
このように、シール部材109のリップ部182がアウターレース111の上端面111aに当接することにより、支持リング107とシール部材108によって第2軸受け部105の上側、特にアウターレース111とインナーレース110の間を上方から覆って封止することが出来、グリースの飛散、異物の侵入を防ぐことが可能となる。
【0040】
(3−3)
本実施形態の作業車両の旋回装置10では、突出部117は、支持リング107の全周に渡って設けられている。
これによって、シール部材108を支持リング107に嵌めることによるリップ部182の角度の変化をより確実に抑制でき、リップ部182による封止位置を適切な位置に定めることが出来る。
【0041】
(3−4)
本実施形態の作業車両の旋回装置10の製造方法は、第1工程S1及び第2工程S2(第1ユニット組立工程の一例)と、第3工程S3(第2ユニット組立工程の一例)と、第4工程(装着工程の一例)とを備えている。第1工程S1及び第2工程S2では、減速部16、第1ピニオン軸102、出力ピニオン101、第2ピニオン軸103、支持リング107、シール部材108、及びインナーレース110を有する第1ユニット1000を組み立てる。第1工程S1(第1取り付け動作の一例)では、第2ピニオン軸103の周囲に支持リング107、シール部材108、及びインナーレース110を取り付ける。第2工程S2(第2取り付け動作の一例)では、減速部16に第1ピニオン軸102、出力ピニオン101及び第2ピニオン軸103を取り付ける。第3工程S3では、ケース部106にアウターレース111及びコロ112を取り付けて第2ユニット1001を組み立てる。第4工程S4は、上下逆に配置された第1ユニット1000の上側から、上下逆に配置された第2ユニット1001を、インナーレース110の外側にアウターレース111が配置されるように装着する。突出部117の先端117dの径Rcはアウターレース111の内径Rbよりも小さく、支持リング107の周囲に取り付けられた状態におけるリップ部182の先端182aの径Raはアウターレース111の内径Rbよりも大きい。
【0042】
このように、支持リング107の周囲にシール部材108が取り付けられた状態において、たとえリップ部182の角度が変化する場合であってもリップ部182が突出部117に当接して角度変化が抑制されるため、リップ部182の先端182aの径Raはアウターレース111の内径Rbよりも大きくなっている。そのため、第4工程S4において、ケース部106によってシール部材108の当接状態が視認できない場合であっても、リップ部106をアウターレース111の上端面111aに、より確実に当接させることができ、シール性を確保することが可能となる。
【0043】
<4.他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態における支持リング107では、突出部117は、
図12(a)に示すように、支持リング107の全周に渡って設けられていたが、全周に渡って設けられていなくてもよい。
例えば、
図12(b)の支持リング107´に示すように、分割して複数の突出部117´が形成されており、突出部117´の間に隙間Qが形成されていてもよい。
【0044】
(B)
上記実施形態では、シール部材108のリップ部182の先端182aは、アウターレース111の上端面111aに当接していたが、アウターレース111の上端面111aに限られなくてもよい。例えば、
図13に示すように、ケース部106´がアウターレース111側に延びた庇部106b´を有している場合、その延びた庇部106b´の上面106a´にリップ部182の先端182aが当接していてもよい。
この場合であっても、第2軸受け部105からのグリースの飛び出し若しくは、第2軸受け部105への異物の侵入を防ぐことができる。
【0045】
(C)
又、上記実施の形態では、スイングサークル21の外側に歯が形成され、旋回装置10がスイングサークル21の外側を回転する構成であるが、スイングサークル21の内側に歯が形成され、旋回装置10がスイングサークル21の内側を回転する構成であってもよい。
【0046】
(D)
上記実施形態では、第1工程S1の後に第2工程S2を行っていたが、第2工程S2を第1工程S1の前に行なっても良い。すなわち、第1ピニオン軸102、出力ピニオン101、及び第2ピニオン軸103を減速部16に取り付けた後に、支持リング107、シール部材108及びインナーレース110を第2ピニオン軸103の取り付けても良い。
【0047】
(E)
上記実施形態では、製造する前の状態(
図10(a)参照)と製造後の旋回装置10の状態(
図6参照)の両方において、リップ部182が突出部117と当接しているが、製造後の状態では、リップ部182が突出部117と当接していなくてもよい。
(F)
上記実施の形態では、油圧ショベルの旋回装置を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、油圧ショベルに限らず他の車体に旋回部を持つ作業車両に対しても、本発明の適用は可能である。
本発明の作業車両の旋回装置(10)では、支持リング(107)は、第2ピニオン軸(103)の第2軸受け部(105)と出力ピニオン(101)の間に配置され、第2軸受け部(105)と出力ピニオン(101)の夫々に当接して出力ピニオン(101)を第2軸受け部(105)の上方に支持する。シール部材(108)は、支持リング(107)の外周面(107a)に配置される装着部(181)と、装着部(181)から径方向外側に向かって突出して形成され第2軸受け部(105)の上側を封止するリップ部(182)とを有する。支持リング(107)は、その下端から径方向外側に向かって突出して設けられた突出部(117)を有している。装着部(181)は、突出部(117)よりも上側に配置され、リップ部(182)は、突出部(117)よりも外側に突出している。