特許第5693795号(P5693795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5693795圧延機レイングヘッドの交換可能な摩耗要素
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693795
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】圧延機レイングヘッドの交換可能な摩耗要素
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/14 20060101AFI20150312BHJP
   B21C 47/02 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B21C47/14
   B21C47/02 A
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-527161(P2014-527161)
(86)(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公表番号】特表2014-524356(P2014-524356A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012049816
(87)【国際公開番号】WO2013028345
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2014年5月13日
(31)【優先権主張番号】13/217,404
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510002268
【氏名又は名称】シーメンス インダストリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Industry, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ジー. タイタス
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ピー. ドフィネ
(72)【発明者】
【氏名】ダリル エル. ムーア
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−530050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 47/00−47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延細長材料をコイリングするレイングヘッドシステムにおいて、前記システムが、細長材料を連続コイル状にガイドして送り出す略環状のエンドリングを有し、前記エンドリングが、前記細長材料を半径方向および軸方向に囲むエンドリング内径を有するとともに前記細長材料を送り出すクイルに近い近位軸面および前記クイルから遠い遠位軸面をそれぞれ画定しており、前記エンドリング内径の少なくとも一部を裏打ちする選択的に交換可能なガイド面であって、
前記ガイド面の少なくとも一部を画定する湾曲内面と、
前記エンドリング内径と一致するプロファイルを有し、前記エンドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面と、
前記エンドリングに結合された締結要素と嵌め合い係合するように構成された係合面と、
を有する摩耗要素体を備え、前記摩耗要素体は、前記締結要素および前記エンドリングと係合させた場合に前記ガイド面の少なくとも一部を形成する、交換可能なガイド面。
【請求項2】
前記摩耗要素体に隣接し、前記遠位軸面と結合するように構成されたフランジをさらに備えた、請求項1に記載の交換可能なガイド面。
【請求項3】
前記エンドリング内で前記エンドリング内径に沿って隣接して結合した場合に連結係合するように構成された連結要素をそれぞれ有する第1および第2の摩耗要素体をさらに備えた、請求項1に記載の交換可能なガイド面。
【請求項4】
前記エンドリング内径の内側に設けられた補完的な第3の係合面と連結係合するように構成された前記摩耗要素体の外面上の第2の係合面をさらに備えた、請求項1に記載の交換可能なガイド面。
【請求項5】
前記摩耗要素体が、前記エンドリングとの結合時に前記ガイド面全体を集合的に形成するように構成された複数の摩耗要素体を含む、請求項1に記載の交換可能なガイド面。
【請求項6】
前記係合面が、ネジ、ネジ締付機構、および油圧締付機構から成る群から選択される締結要素と嵌め合い係合するように構成された、請求項1に記載の交換可能なガイド面。
【請求項7】
前記摩耗要素体が、旋回トリッパー機構と近位配向するように構成された前記エンドリングの前記遠位軸面近傍の間隙切欠を画定する、請求項1に記載の交換可能なガイド面。
【請求項8】
熱間圧延細長材料をコイリングするレイングヘッドシステムにおいて、前記システムが、細長材料を連続コイル状にガイドして送り出す略環状のエンドリングを有し、前記エンドリングが、前記細長材料を半径方向および軸方向に囲むエンドリング内径を有するとともに前記細長材料を送り出すクイルに近い近位軸面および前記クイルから遠い遠位軸面をそれぞれ画定しており、前記エンドリング内径の少なくとも一部を裏打ちするガイド面を選択的に交換する方法であって、
摩耗要素体を提供するステップであって、前記摩耗要素体は、
前記ガイド面の少なくとも一部を画定する湾曲内面と、
前記エンドリング内径と一致するプロファイルを有し、前記エンドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面と、
前記エンドリングに結合された締結要素と嵌め合い係合するように構成された係合面と、
を有、前記締結要素および前記エンドリングと係合させた場合に前記ガイド面の一部を形成する、摩耗要素体を提供するステップと、
前記摩耗要素体の外面を前記エンドリング内径の対応する面と嵌め合わせるステップと、
締結要素を前記エンドリングおよび前記摩耗要素体の係合面に締結することによって、前記摩耗要素体の内面により前記エンドリングのガイド面の少なくとも一部を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記嵌め合いステップが、前記エンドリングを前記レイングヘッドシステムから分離させることなく、前記遠位軸面から前記摩耗要素体を前記エンドリングに挿入することによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記締結ステップが、
ネジ、ネジ締付機構、および油圧締付機構から成る群から選択される締結要素を提供し、
前記摩耗要素体の係合面に前記締結要素を挿入し、
前記エンドリングの外側から前記締結要素を前記エンドリング内径まで通過させ、
前記締結要素を締めることにより前記摩耗要素体を前記エンドリングに結合させる、
ことによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
旋回軸を有するトリッパーパドル機構を備えた旋回トリッパーを提供し、前記クイルから遠い遠位軸端近傍において前記エンドリングの外側から前記トリッパー機構を結合するステップと、
前記トリッパーパドル機構を前記レイングヘッドシステムから分離させることなく、前記エンドリングの外側から前記トリッパーパドルまたは摩耗要素体を選択的に交換するステップと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記交換可能な摩耗要素体および前記締結要素を受け取るように前記エンドリング内径を作成し、前記締結要素により前記摩耗要素体を前記エンドリングに結合させることによって、前記選択的に交換可能な摩耗要素の裏打ちを含むように前記エンドリングを改良するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
熱間圧延細長材料をコイリングするレイングヘッドシステムにおいて、
長材料を連続コイル状にガイドする略環状のエンドリングであって、前記細長材料を半径方向および軸方向に囲むエンドリング内径を有するとともに前記細長材料を送り出すクイルに近い近位軸面および前記クイルから遠い遠位軸面をそれぞれ画定するエンドリングと、
前記エンドリングに結合された締結要素と、
摩耗要素体であって、
前記ガイド面の少なくとも一部を画定する湾曲内面と、
前記エンドリング内径と一致するプロファイルを有し、前記エンドリング内径に結合された外面と、
前記締結要素に結合された係合面と、
を有し、前記締結要素および前記エンドリングと係合させた場合に、前記ガイド面の一部を形成する選択的に交換可能なガイド面の摩耗要素体と、
を備えたシステム。
【請求項14】
前記摩耗要素体に隣接し、前記遠位軸面と結合するように構成されたフランジをさらに備えた、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記エンドリング内で前記エンドリング内径に沿って隣接して結合した場合に連結係合するように構成された連結要素をそれぞれ有する第1および第2の摩耗要素体をさらに備えた、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記エンドリング内径の内側に設けられた補完的な第3の係合面と連結係合した前記摩耗要素体の外面上の第2の係合面をさらに備えた、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記摩耗要素体が、前記エンドリングのガイド面全体を集合的に形成する複数の摩耗要素体を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記締結要素が、ネジ、ネジ締付機構、および油圧締付機構から成る群から選択される、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
旋回軸を有し、前クイルから遠い遠位軸端近傍において前記エンドリングに結合された旋回トリッパー機構と、
記遠位軸面近傍において前記摩耗要素体により画定され、前記トリッパー機構の旋回軸と近位配向するように構成された間隙切欠と、
をさらに備えた、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記トリッパー機構が、前記エンドリングの外側から前記旋回軸に沿って、取り外し可能な締結具により前記トリッパーに結合された選択的に交換可能なトリッパーパドルをさらに備えた、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
【0002】
1.分野
【0003】
本発明の実施形態は、圧延機レイングヘッドに関し、より具体的には、レイングヘッドにおけるガイドリングシュラウドの交換可能な摩耗要素に関する。
【0004】
2.従来技術の説明
【0005】
圧延機レイングヘッドは、移動する細長圧延材料を一連の螺旋状連続ループリングとして形成する。これらのリングは、さらに下流での処理としてバンドリングすることにより、所望の螺旋巻数のコイルとしてもよい。既知のレイングヘッドは、米国特許第5,312,065号、第6,769,641号、および第7,011,264号に概略記載されており、それぞれの全開示内容を漏れなく本明細書中に参考として援用する。
【0006】
これらの特許に記載されている通り、圧延機レイングヘッドは、細長材料を半径方向外方に広がった部位に送り出す回転クイルを備える。その入力端では、例えば中空環状のレイングパイプ等の細長中空構造として材料を受け取る。このレイングパイプ等の細長中空構造は、クイルの広がり部位に囲まれた湾曲中間部と、クイルの回転軸から半径方向外方の略接線方向に突出した端部とを有する。回転クイルとレイングパイプの細長中空構造との組み合わせにより、圧延材料は螺旋状の湾曲形状となる。レイングパイプ等の細長中空構造は、レイングヘッドを再構成して異なる寸法の細長圧延材料を受け入れられるように、異なるプロファイルおよび/または直径のものと置き換えてもよい。
【0007】
圧延材料は、材料を外周上に受け取るトラフを備えた回転ヘリカルガイドにおいて、さらに螺旋プロファイリングを行う。米国特許第6,769,641号に記載のヘリカルガイドは、セグメント化された扇形のモジュール式リム構成であって、周方向トラフがリム扇形部内に形成されている。レイングヘッドを再構成して異なる寸法の細長圧延材料を受け入れられるようにしたい場合は、新たな材料をコイリングするのに必要な異なるトラフプロファイルおよび/または螺旋ピッチを有する別のセットにより、すべてのリム扇形部を置き換える。利用時に特定のトラフセグメントが摩耗した場合には、リム扇形部の構造部材全体を新品と交換する。
【0008】
一般的にエンドリングまたはガイドリングとも称する略環状のリングまたはシュラウドは、レイングパイプの送り出し端およびヘリカルガイドを囲むガイド面を有する。このため、細長材料は、完全にコイリングした構成でコンベヤベルトに送り出した後にバンドリング等の処理を行うことから、送り出し時点では軸方向および半径方向に制限される。クイルの遠位側であるエンドリング/シュラウドの略6時位置すなわち底部位置には、1または複数のトリッパーパドルを含む旋回トリッパー機構を配置してもよい。リング/シュラウドの内径面に対するトリッパー機構の旋回仰角を変化させると、たとえば細長材料の塑性厚さ、組成、圧延速度、および断面構造等の変動を補償できるため、細長材料のコイリングの制御に有効である。トリッパーパドルの上面は、細長圧延材料がレイングヘッドを通過して送り出しコンベヤ構造に向かう際に圧延材料と摩擦接触する制御面である。このような摩擦接触により、パドルの摩耗または消耗が発生する。従来、トリッパー機構は、エンドリングの取り外しおよび交換を行うため、レイングヘッドから離れている必要があった。
【0009】
エンドリングすなわちシュラウドは、定期的に交換する必要がある。その内径ガイド面もまた、細長圧延材料がレイングヘッドを通過して送り出しコンベヤ構造に向かう際に圧延材料と摩擦接触する摩耗表面である。このような摩擦接触により、リング内側ガイド面の摩耗または消耗が発生する。エンドリングの摩耗パターンは、一様でない場合が多い。種々の条件下において、摩耗は、リングおよびトリッパー機構上の6時位置近傍において、リングのその他の周方向部分よりも顕著であることが分かっている。耐摩耗性の観点からは、相対的に硬質の鋼でリングの摩耗表面を形成するのが望ましい。また、表面の硬化および熱処理をさらに行うのがより望ましい。ただし、そのような耐摩耗処理ステップは、リング製造の容易性およびコストとバランスを取る必要がある。
【0010】
リング/シュラウド構造は、軸方向において外方に広がった直線円筒状または切頭円錐状の周方向壁を有する略環状の平面形状に圧延された鋼板で製造される場合が多い。この環状リングには、追加の補強用のフランジ、リング、およびガセットが付加されている。設計上のトレードオフとしては、リング材料の耐摩耗特性と製造の容易性/コストとの間の妥協が必要となる。一般的に、鋼の硬度が高くなると、圧延により環状に加工するのが難しくなる。また、加工後に熱処理等の硬化処理を行うと、加工したエンドリングが変形してしまう場合もある。あるいは、エンドリングの一部を鋳物で形成するのが望ましい場合であっても、その表面硬化は、同等の加工構成品よりも困難である。
【0011】
従来、摩耗したガイドエンドリング/シュラウドの摩耗表面を修復するには、エンドリング全体を取り外して新品と交換するしかなかった。摩耗した表面を除くエンドリングのその他の部分は、機能上も構造上も継続して利用可能である。エンドリングは大きな構造体であり、レイングヘッドの他の構成要素との相互作用に応じて、ガイドリングの交換には大きなコストが掛かり、交換作業時にはレイングヘッドの稼働を長時間にわたって停止させる必要がある。
【0012】
発明の概要
【0013】
したがって、本発明の実施形態は、レイングヘッドのエンドリング内径の内側に設置された当該エンドリング用の選択的に交換可能なガイドリング摩耗要素体を含む。この摩耗要素体は、ガイドリングに設置された場合、リング内に拘束される細長材料のガイド面を形成する。摩耗要素体の交換が必要と考えられる場合は、エンドリング内径から古いものを取り外して新品と交換する。エンドリング内径の1または複数の部分に関して、複数の摩耗要素体を設置してもよく、これらがガイド面を形成する。また、これら摩耗要素体のサイズ、構成、および材料特性は、エンドリング内径の内側におけるリングガイドのガイド面内の部分ごとに異なっていてもよい。たとえば、リングガイド内径の内側における6時位置に設置するよう意図された摩耗要素体は、リングガイドの他の部分用の摩耗要素体に比べて、より硬質の材料特性もしくは大きな厚さ、および/または迅速な取り外しならびに再設置を可能とする構成を有していてもよい。また、エンドリングの一部が交換可能な摩耗要素を備えておらず、他の周方向部分が交換可能な摩耗要素を内蔵していてもよい。本発明の別の実施形態に係る摩耗要素として、トリッパー機構の制御面を形成するトリッパーパドルがある。エンドリング内径の内側の摩耗要素体およびトリッパーパドルは、レイングヘッドからトリッパー機構を取り外すことなく、エンドリングの外側から交換可能である。
【0014】
別の例示的な一実施形態としては、レイングヘッドのガイドリングの選択的に交換可能なガイドリング摩耗表面が挙げられ、リング内径の内側に配向されたガイド面の少なくとも一部を規定する湾曲内面を有する摩耗要素体を備える。この摩耗要素体は、ガイドリング内径と一致するプロファイルを有し、当該ガイドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面を有する。また、この摩耗要素体は、エンドリングに結合された締結要素と嵌め合い係合するように構成された係合面を有する。摩耗要素体は、締結要素およびエンドリングと係合させた場合にエンドリング内径の内側におけるガイドリング摩耗表面の一部を形成する。一部の実施形態において、ガイドリングおよび/またはその交換可能な摩耗表面は、トリッパーパドルの交換を容易化するとともにトリッパー機能動作用の間隙となる間隙切欠を備える。この摩耗要素表面は、レイングヘッドシステムからトリッパー機構を取り外すことなく交換するようにしてもよい。
【0015】
別の例示的な一実施形態としては、レイングヘッドのガイドリング内径の内側に規定されたガイドリング摩耗表面を選択的に交換する方法であって、ガイド面の少なくとも一部を規定する湾曲内面と、ガイドリング内径と一致するプロファイルを有し、当該ガイドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面と、エンドリングに結合された締結要素と嵌め合い係合するように構成された係合面とを有する摩耗要素体を提供することによる方法が挙げられる。摩耗要素体は、締結要素およびエンドリングと係合させた場合にガイドリング摩耗表面の一部を形成する。さらに、上記方法では、摩耗体の外面をエンドリング内径の対応する面と嵌め合わせる。この嵌め合いステップの後には、締結要素をエンドリングおよび摩耗体の係合面に締結することによって、摩耗体内径の内側におけるエンドリング摩耗表面の少なくとも一部を形成する。
【0016】
別の例示的な一実施形態としては、熱間圧延細長材料をコイリングするレイングヘッドシステムが挙げられ、軸周りに回転して細長材料を送り出すクイルを備える。このクイルの回転軸と、パイプ支持部とは同軸である。このパイプ支持部には、細長材料を通過させるレイングパイプ等の細長中空部材が結合されている。レイングパイプは、クイルの回転軸と略一致し、クイルから送り出された細長材料を受け取る第1の端部と、回転軸から半径方向に離間し、回転軸に対して略接線方向に細長材料を送り出す第2の端部とを有する。また、このシステムは、クイルの回転軸と同軸であって、レイングパイプの第2の端部から送り出された細長材料を連続コイル状にガイドして送り出す略環状のエンドリングを備えている。ガイドリングは、レイングパイプの第2の端部を半径方向および軸方向に囲むとともに、それぞれクイルの近位軸面および遠位軸面を規定する内径を有する。エンドリングには、遠位軸面に沿って、エンドリング内径の略接線方向である旋回軸により旋回トリッパーが結合されており、当該トリッパーとエンドリング間の旋回角度を変化させることで、エンドリングから送り出された細長材料コイルを選択的に配向させる。トリッパー機構は、隣接するエンドリングと協働して、待機中のコンベヤ上に送り出された細長材料を定形ループ状にガイドするトリッパー制御面を有する。また、このシステムのガイドリングは、エンドリング内径を裏打ちするガイドリング摩耗表面の摩耗要素体であって、ガイド面の少なくとも一部を規定する湾曲内面と、ガイドリング内径と一致するプロファイルを有し、当該ガイドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面とを有する選択的に交換可能なガイドリング摩耗表面の摩耗要素体を有する。この摩耗表面要素体は、係合面も有する。摩耗要素体は、摩耗表面要素体の係合面およびエンドリングと係合した締結要素によってエンドリングに結合されるため、摩耗表面要素体の湾曲内面は、エンドリング内径の内側においてガイドリング摩耗表面の一部を形成する。トリッパー機構の制御面は、エンドリングの外側から選択的に交換可能なトリッパーパドルである。このトリッパー機構は、摩耗要素体またはトリッパーパドルの交換に際して、レイングヘッドから取り外す必要がない。
【0017】
上記およびその他の実施形態は、軸周りに回転して細長材料を送り出すクイルを備え、熱間圧延細長材料をコイリングするレイングヘッドシステムにより、本発明に従って実現可能である。このクイルの回転軸と、パイプ支持部とは同軸である。このパイプ支持部には、細長材料を通過させるレイングパイプ等の細長中空部材が結合されている。レイングパイプは、クイルの回転軸と略一致し、クイルから送り出された細長材料を受け取る第1の端部と、回転軸から半径方向に離間し、回転軸に対して略接線方向に細長材料を送り出す第2の端部とを有する。また、このシステムにおいて、クイルの回転軸と、レイングパイプの第2の端部から送り出された細長材料を連続コイル状にガイドして送り出す略環状のエンドリングとは同軸である。この環状のエンドリング/シュラウドは、レイングパイプの第2の端部を半径方向および軸方向に囲むとともに、それぞれクイルの近位軸面ならびに遠位軸面および軸方向の差し込み切欠を規定する内径を有する。この差し込み切欠は、切欠面の表面をさらに規定する。本実施形態は、遠位軸面に沿って、エンドリング内径の略接線方向である旋回軸によりエンドリングに結合された旋回トリッパーを含む。このトリッパーは、当該トリッパーとガイド面間の旋回角度を変化させることによって、エンドリングから送り出された細長材料コイルを選択的に配向させる。トリッパーは、エンドリングの切欠に差し込まれるとともに隣接し、隣接する切欠面と協働して、送り出された細長材料を定形ループ状にガイドするトリッパー制御面を有する。また、本実施形態に係るシステムのガイドリング/シュラウドは、ガイド面および切欠面の少なくとも一部を規定する湾曲内面を有する選択的に交換可能なガイドリング摩耗表面の摩耗要素体を有する。また、この摩耗要素体は、ガイドリング内径と一致するプロファイルを有し、当該ガイドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面と、係合面とを有する。本実施形態に係るシステムにおいては、締結要素を摩耗表面要素体の係合面およびエンドリングに係合させて摩耗要素体をエンドリングに結合させるため、摩耗表面要素体の湾曲内面は、ガイドリング摩耗表面の一部を形成する。
【0018】
本発明の実施形態の特徴は、当業者が任意の組み合わせまたは副次的な組み合わせにより、一体的または別個に適用するようにしてもよい。本発明の実施形態のさらに別の特徴およびその効果については、添付の図面に示した具体的な実施形態を参照して、以下に詳しく説明する。図中、類似の構成要素には、同様の参照符号を付している。
【0019】
本発明の教示内容は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することにより、容易に理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の例示的な一実施形態に係る、レイングヘッドシステムの側面図である。
図2】本発明の例示的な一実施形態に係る、図1のレイングヘッドシステムの上面図である。
図3】本発明の例示的な一実施形態に係る、エンドリングおよびトリッパー機構を含む図1のレイングヘッドシステムの立断面図である。
図4】本発明の例示的な一実施形態に係る、エンドリングおよびトリッパー機構を含む図1のレイングヘッドシステムの送り出し端の立面図である。
図5】本発明の例示的な一実施形態に係る、摩耗要素体を含まないレイングヘッドシステムのエンドリングの遠位端すなわち送り出し端の立面図である。
図6】本発明の例示的な一実施形態に係る、摩耗要素体を設置した図5のレイングヘッドシステムのエンドリングの遠位端すなわち送り出し端の斜視図である。
図7】本発明の例示的な一実施形態に係る、図6中の7−7線に沿ったレイングヘッドシステムのエンドリングの断面図である。
図8】本発明の例示的な一実施形態に係る、図6中の8−8線に沿ったレイングヘッドシステムのエンドリングの断面図である。
図9】本発明の例示的な一実施形態に係る、トリッパー機構の間隙切欠を含む図6のエンドリングの下部の部分詳細立面図である。
図10】本発明の例示的な一実施形態に係る、トリッパー機構の間隙切欠を含む図6のエンドリングの部分詳細底面斜視図である。
図11】本発明の例示的な一実施形態に係る、図7のエンドリングの底面図である。
図12】本発明の例示的な一実施形態に係る、図6中の12−12線に沿ったエンドリングの部分断面図であって、交換可能な摩耗体要素を保持する締結要素を示した図である。
図13】本発明の例示的な一実施形態に係る、図12と類似のエンドリングの部分断面図であって、交換可能な摩耗体要素を保持する別の実施形態に係る締結要素を示した図である。
図14】本発明の例示的な一実施形態に係る、図12と類似のエンドリングの部分断面図であって、交換可能な摩耗体要素を保持する別の実施形態に係るネジ締付式締結要素を示した図である。
図15】本発明の例示的な一実施形態に係る、図12と類似のエンドリングの部分断面図であって、交換可能な摩耗体要素を保持する別の実施形態に係る油圧作動締付式締結要素を示した図である。
図16】本発明の例示的な一実施形態に係る、レイングヘッドシステムのエンドリングにおける別の実施形態に係る交換可能な摩耗体要素の遠位端すなわち送り出し端の立面図である。
図17】本発明の例示的な一実施形態に係る、図16中の17−17線に沿ったエンドリングおよび摩耗体要素の部分断面図である。
図18】本発明の例示的な一実施形態に係る、横方向に連結した一連の摩耗体要素を含むレイングヘッドシステムのエンドリングにおける別の実施形態に係る交換可能な摩耗体要素の立面斜視図である。
図18A】本発明の例示的な一実施形態に係る、図18の交換可能な摩耗体要素の詳細図である。
図19】本発明の例示的な一実施形態に係る、図18中の19−19線に沿ったレイングヘッドシステムのエンドリングにおける交換可能な摩耗体要素の断面図である。
図20図18中の20−20線に沿ったレイングヘッドシステムのエンドリングにおける交換可能な摩耗体要素の断面図であって、連結用軸方向補強リブを示した図である。
【0021】
理解を容易化するため、図中で共通の同一構成要素には、可能であれば同じ参照符号を付している。
【0022】
発明を実施するための形態
【0023】
以下の説明を考慮することにより、当業者であれば、本発明の教示内容が圧延機レイングヘッド、より具体的にはレイングヘッドにおけるガイドリングシュラウドの交換可能な摩耗要素に容易に利用可能であることが明確に理解されよう。本発明によれば、ガイドリング全体を交換することなく、モジュール式の摩耗体要素を取り外して交換することにより、ガイドリングシュラウドの摩耗部分を迅速かつ効率的に選択交換可能となる。
【0024】
レイングヘッドシステムの概要
【0025】
図1図4を概略参照して、本発明のレイングヘッドシステム30は、例えば熱間圧延鋼鉄筋等の圧延細長材料Mをコイリングする。最大およそ500フィート/秒(150m/秒)の速度Sで進行する細長材料Mは、レイングヘッドシステム30の受け入れ端32で受け取られ、送り出し端34で一連の連続コイルループ状に送り出される。その直後に、コイルはコンベヤ40に載せられる。
【0026】
レイングヘッドシステム30は、軸周りに回転する略角状のクイル50を備える。中空のレイングパイプ60は、半径が増加する略螺旋状の軸方向プロファイルを有し、その第1の端部62は、クイル50の回転軸と一致しており、クイルから送り出された細長材料を受け取る。レイングパイプ60は、クイル50の回転軸から半径方向外方に離間し、回転軸の略接線方向であって、回転クイルの概略接線方向に細長材料を送り出す第2の端部を有する。また、レイングパイプ60は、クイル50に同軸結合されたパイプ支持部70に結合されているため、これら3つの構成要素はすべて、クイルの回転軸周りに同期回転する。クイル50の回転速度は、数ある因子の中で特に、細長材料Mの構造寸法ならびに材料特性、進行速度S、および所望のコイル径に基づいて選択される。
【0027】
本実施形態においては、細長材料Mがレイングパイプの第2の端部64から送り出され、共同所有の米国特許第6,769,641号に記載されたような螺旋状ピッチプロファイルを有するガイドトラフチャネル84が形成されたガイドリムセグメント82を有するリングガイド80へと送られる。細長材料Mは、リングガイド80中を進行すると、連続ループ螺旋状になる。
【0028】
’641特許に記載の通り、セグメント化されたリングガイドは、当該リングガイドの螺旋状ピッチを比較的容易に再構成可能であって、リングガイド80全体を分解および交換することなくリムセグメント82を変更することにより、異なる細長材料を受け入れる。あるいは、レイングヘッドシステムを固定構造のリングガイドで構成してもよいし、リングガイドを一切用いなくてもよい。
【0029】
前述の通り、細長材料Mは、リングガイド80の螺旋状トラフチャネル84に載せると、連続ループコイル状に構成される。リングガイド80は、パイプ支持部70に結合されており、クイル50と同軸に回転する。螺旋状トラフ84の進行回転速度は、細長材料Mの進行速度Sと一致しているため、これら2つの隣接物体間における相対線形運動の速度はほとんどなく、コイリング材料に接触するトラフ84表面の摩擦による摩耗は抑えられる。
【0030】
固定エンドリング90は、クイル50の回転軸と同軸で、レイングパイプ60の第2の端部62およびリングガイド80を囲む内径を有する。エンドリング90は、レイングパイプ60の第2の端部62から送り出された細長材料Mに掛かる遠心力に抗して、エンドリング内径のガイド面内において材料を半径方向に拘束することにより、リングガイド80の螺旋状トラフチャネル84に沿って進行する。進行する細長材料Mと固定エンドリング90間の相対速度が高いことから、エンドリング内径のガイド面には、摩擦による摩耗が生じる。
【0031】
図1を参照して、レイングヘッドシステム30から送り出された細長材料Mは、システムの送り出し端34における下方傾斜したクイルの回転軸の補助作用によって、重力により連続ループ状にコンベヤ40上に降下する。トリッパー機構150は、エンドリング90のガイド面の遠位軸面に隣接した軸周りに旋回する。その旋回軸は、運動の旋回範囲θに関して、エンドリング90内径のガイド面の略接線方向である。既知の通り、コイリング材料Mのコイリング特性およびコンベヤ40上の配置は、旋回角θを変化させることによって制御可能である。
【0032】
エンドリングの構造
【0033】
図5および図6を参照して、エンドリング90は、円筒状プロファイルあるいはリングの遠位軸端すなわち送り出し軸端に向かって外方に広がる切頭円錐状プロファイルの環状支持リング92を備える。エンドリング90の遠位周縁は、トリッパー機構150を収容するリング左側切欠94、リング底部切欠96、およびリング右側切欠98を規定している。エンドリング90の構造的完全性は、遠位ならびに近位周方向フランジ100、102および一連の軸方向ガセット104、106により与えられている。
【0034】
図6図12に示した実施形態に係るガイドエンドリング90は、レイングパイプ60の送り出し側の第2の端部62および螺旋状のリングガイド80を囲む細長材料Mの周方向ガイド面を規定する選択的に交換可能な摩耗表面110を備える。レイングヘッドシステム30の動作時、摩耗要素110は、細長材料Mとの高速摩擦によって摩耗するが、摩耗要素を裏張りしている環状の支持リング92は損傷を受けない。このため、ガイド面を規定するエンドリング90の内径が摩耗した場合に、その構造全体を交換する必要はない。本発明の摩耗要素110は、レイングヘッドシステム30からエンドリング90全体を取り外すことなく、現場で効率的に交換できるように構成されている。
【0035】
図6図10を参照して、交換可能な摩耗要素110は、リング90の内径の全周360°を囲む下側および上側の環状分割リング摩耗要素体112、114を有する。環状摩耗要素体112、114はそれぞれ、エンドリング90のガイド面を規定し、細長材料Mを拘束する湾曲内径と、ガイドリングの環状支持部92の内径形状と一致したプロファイルを有する外径とを有する。図中には、摩耗要素110とガイドリングの環状支持部92との間の環状嵌め合いプロファイルを示しているが、当然のことながら、本発明の実施においては、他の嵌め合いプロファイルも採用可能である。たとえば、1または複数の摩耗要素110およびエンドリング90が、多角形の嵌め合いプロファイルを有していてもよい。同様に、単一の環状支持リングを有する代わりに、複数の扇形部またはその他の加工された嵌め合いまたは鋳物セグメントでエンドリングを構成してもよい。組み立てたセグメントは、レイングヘッドの送り出し端で細長材料を囲む内径の周方向ガイド面を形成する。
【0036】
図6図8に示すように、摩耗要素体は、環状支持リング92の各遠位軸端および下側/上側環状分割リング摩耗要素112、114に隣接して結合された上側、左側、および右型の摩耗要素フランジ116、118、120を備える。このような隣接結合によって、エンドリング90の構造的完全性が向上するとともに、レイングヘッド30から送り出される細長材料との摩耗接触から環状支持リング92の内側リップが保護される。本実施形態において、左側、底部、および右側切欠94、96、98近傍の環状支持リングの下側扇形部は、トリッパー機構で覆われていることから、当該扇形部では同様な摩耗の心配はない。
【0037】
例示的な本実施形態においては、トリッパー機構150の旋回運動用の間隙を提供するため、下側の環状分割リング摩耗要素112はそれぞれ、環状支持リングの対応する切欠94、96、98に隣接した左側、底部、および右側の間隙切欠122、124、126を有する。本発明の実施において、トリッパー機構用の間隙切欠を摩耗要素体110またはリング90もしくはそれら両者に備えるか否かは、任意に選択可能である。
【0038】
摩耗要素体110の上側および下側の環状分割リング摩耗要素112、114は、締結要素と嵌め合い係合するように構成された締結具係合面130を備えており、これによって、摩耗体がエンドリング90に剛結合されている。図11および図12を参照して、環状支持リング92の外周には、接線方向に平面132が研削形成されている。この平面は、ネジ締結具136および嵌め合い六角ナット138を収容する貫通開口134を備えている。ネジ締結具136は、嵌め合いにより隣接して接触する摩耗体および環状支持リング92に形成された嵌め合い締結具係合面ボア130を介して、下側の環状分割リング摩耗要素112を捕捉する。ネジ締結具136を使用することで、切断トーチTを用いてネジの露出外側端およびその嵌め合いナット138を取り外すことにより、摩耗した摩耗要素112を容易に取り外すことができる。
【0039】
摩耗要素体112とエンドリング90とを結合する別の方法を図13図15に示す。図13に示すように、スペーサスリーブ140は、環状支持リング92の外径に一致した近位面と、六角ナット138に隣接する平坦な遠位面とを有する。このスペーサスリーブ140により、図12の実施形態で行った環状支持リングにおける平面132の研削形成が不要となる。また、スペーサスリーブ140により、六角ナット138と環状支持リング92の外周面との間の隔離距離が大きくなり、それに伴って、摩耗表面の交換時に切断トーチTで支持リングが損傷を受ける可能性は低くなる。
【0040】
摩耗要素体112をエンドリング90に結合するさらに別の方法では、締付ネジ142および締付ナット144等の締付機構141を利用する。締付ナットを回転させると、摩耗要素112と環状支持リング間の締付力Fが増大する。摩耗要素体112の交換が必要な場合は、締付機構141を緩めることによって取り外す。同様に、図15の例示的な実施形態に係る締結では、油圧締付機構の利用により、摩耗要素の迅速な取り外しおよび交換が可能である。締結具136は、制御弁147および加圧流体源148と順次流体連通した加圧油圧または空気圧シリンダ146に結合されている。摩耗要素体112は、締付力Fによって、エンドリング90内に保持される。
【0041】
摩耗体110の例示的な結合機構を任意に組み合わせて、エンドリング90に利用するようにしてもよい。たとえば、摩耗体110の1または複数の部位を他の部位よりも頻繁に変更することが予想される場合は、これらの部位において、図14または図15の締付ネジまたは油圧シリンダによる摩耗要素体保持機構を利用するのが好都合と考えられる。図12または図13の実施形態に係るネジ締結具よりも迅速に取り外すことができるためである。一方、交換の所要頻度が低い摩耗要素体110の部位には、より単純なネジ締結具が適当と考えられる。
【0042】
別の実施形態に係る摩耗要素体110’を図16および図17に示す。本実施形態において、エンドリング90は、リングの最下部を保護する部分摩耗要素112’を有する。エンドリング90の上部には摩耗要素体が存在せず、環状支持リング92とレイングヘッド内にコイリングされた細長材料とが直接接触する。図17に示すように、摩耗要素体112’の遠位軸端、近位軸端、および周方向終端は、テーパー形状により細長材料と滑らかに移動接触するため、環状支持リング92と摩耗要素体とが段差状に移動することはない。
【0043】
さらに別の実施形態に係るエンドリング90’を図18図20に示す。この場合、摩耗要素体110’は、環状支持リング92’に関して、複数の扇形状部位112A’〜112N’(Nは部位数)を有する。図18Aおよび図19に示すように、隣接する摩耗要素継手は、補完的な連結突起要素170’、172’を有しており、それぞれの接合部分において構造的完全性が向上する。補完的な連結構造は、他の形態を利用してもよい。また、図18には3つの摩耗要素フランジ116’、118’、120’を示しているが、その数は増やしても減らしてもよい。環状支持リング92’には、図20の嵌め合い摩耗要素体112’およびリング92’に示すように、摩耗要素体110’内に形成された半径方向突出リブ182’を収容するチャネル180’が形成されている。この補完的な連結チャネル180’およびリブ182’により、軸方向および半径接線方向のいずれにおいても、結合した摩耗要素体110’とエンドリング90’間の構造的完全性が向上するため、都合が良い。エンドリング90と摩耗体110との間には、他の形態の協働補助連結構成を利用してもよい。たとえば、リブとチャネルを入れ替えて、摩耗要素体110’にチャネルを形成し、エンドリング90’にリブを形成するようにしてもよい。
【0044】
交換可能な摩耗要素体110、110’を使用すると、摩耗特性の最適化が容易になるとともに、エンドリング90、90’内における製造の効率性が向上する。摩耗要素体は、相対的に硬質の材料による構成および/または熱処理による環状支持リング92等のエンドリング90の構造要素を超える硬質化が可能である。一般的に、より硬質の材料から構成要素を製造するのは困難であり、熱処理プロセスは、ワークピースの歪みのリスクが増大する。本発明の実施においては、環状支持リング92等のエンドリング90の構造要素の製造を容易化するため、これらをより軟質の鋼および/または鋳物で構成することも可能である。これに合わせて、摩耗要素110は、より硬質の潜在的に高価な材料による構成および/または純粋に構造的な支持要素に対するよりも多くの熱処理等の表面処理の付加が可能である。たとえば、摩耗要素は、冷間圧延1020シリーズ鋼で構成して、熱処理することも可能である。熱処理による歪みのリスクは、エンドリング内に複数の扇形状摩耗要素を用いることによって低減可能であるため、個々の小さな要素の歪みの変動が摩耗リングの最終組み立ての妨げになることはない。あるいは、AR800シリーズ鋼等のより硬質の材料で摩耗要素110を構成することも可能である。軟質の鋼よりも製造は相対的に困難となるが、エンドリング90、90’全体の製造に要する労力は相対的に抑えられる。
【0045】
エンドリング/トリッパー機構の接合部分
【0046】
図1および図4に示すように、トリッパー機構150は、エンドリング90の基部において、レイングヘッドシステム30に結合されている。このトリッパー機構150は、3つのトリッパーパドル152、154、156を備え、それぞれの上面は、レイングヘッド30から送り出された細長材料Mを配向させる制御面である。各トリッパーパドルの上面とエンドリング内径のガイド面との間の旋回角θをそれぞれのトリッパー駆動機構153、155、157により独立して変化させると、レイングヘッドの送り出し端34における下方傾斜が変化するため、細長材料Mのコイルループのコンベヤ上への降下の態様も変化する。
【0047】
また、エンドリング90およびトリッパー機構150によって、エンドリングからトリッパー駆動機構を取り外すことなく、摩耗したトリッパーパドル152、154、156を迅速に交換可能である。たとえば、中央のトリッパーパドル152は、取り外し可能な締結具158(小ネジおよびナット等)によって中央のトリッパー駆動機構153に結合されている。パドル152はその旋回軸に沿って、環状支持リング92および摩耗要素体112にそれぞれ形成されたアンダーカットリング底部切欠96および摩耗要素体底部切欠124(図10参照)の近傍に配向される。このため、細長材料Mは、エンドリング90のガイド面とトリッパー機構150との間を滑らかに摺動する。また、トリッパーパドル152とエンドリング90の対応する切欠96、124との間の構造的な協働によって、エンドリングからトリッパー駆動機構153を取り外すことなく、レイングヘッド30の開口した送り出し端34から締結具158を直接取り外すことによってトリッパーパドルの動作、取り外し、および交換のための間隙が与えられる。図4および図10を参照して、パドル154、156、それぞれの関連する駆動機構およびエンドリングの間隙切欠の間にも、同様の構造的協働が存在する。本発明は、3つのトリッパーパドル152、154、156を使用することに限定されない。トリッパー機構150には、1または複数のトリッパーパドルを備えていてもよい。あるいは、トリッパー機構を一切備えずに、本発明のエンドリングを用いてレイングヘッドを構成するようにしてもよい。
【0048】
レイングヘッドの保守
【0049】
本発明によれば、1または複数の交換可能なモジュール式レイングパイプ60、螺旋状リング80のリムセグメント82、エンドリング90の摩耗要素体110、およびトリッパー機構150のパドル152、154、156の組み合わせによって、レイングヘッドシステム30を比較的容易に現場で修復および保守可能である。このレイングヘッドシステムでは、これらモジュール式構成要素のいずれかを交換するために全体を分解する必要がない。より具体的には、クイル50の全体構造、パイプ支持部70、螺旋状リング80、またはエンドリング90を分解することなく、レイングパイプ60を交換可能である。リムセグメント82は、螺旋状リング80の全体構造を取り外すことなく、一体的または別個に交換可能である。同様に、摩耗要素体110のセグメント112、114、112’、または112A〜N’等およびトリッパーパドル152、154、156は、エンドリング90の全体構造またはトリッパー機構150を取り外すことなく、レイングヘッド30の送り出し端34から取り外し可能である。
【0050】
既存のエンドリングは、未使用であっても現場での使用により摩耗していても、本発明の設置方法を用いて、摩耗要素体で既存の環状リング内径を裏打ちすることにより、交換可能なガイド面で改良可能である。既存のリング内径は、交換金属パッチの設置、溶接ビードの積層等の既知の修復技術を用いるか、または高温プラズマ蒸着とその後の研削による所望の表面仕上げによって、再生により摩耗表面を交換可能である。既存のエンドリングが相対的にほとんど摩耗していない場合は、リングを再生することなく摩耗要素体を設置可能である。既存のリングには、貫通開口を形成して、摩耗要素体の裏打ちをリング内径に容易に締結可能である。
【0051】
熱間圧延細長材料をコイリングするレイングヘッドシステムのガイドリングのガイド面を選択的に交換する方法。このシステムは、軸周りに回転して細長材料を送り出すクイルと、クイルの回転軸と同軸のパイプ支持部と、細長材料を通過させるレイングパイプ等のパイプ支持部に結合された細長中空部材とを有する。このレイングパイプ等の細長中空部材は、クイルの回転軸と略一致し、クイルから送り出された細長材料を受け取る第1の端部と、回転軸から半径方向に離間し、回転軸に対して略接線方向に細長材料を送り出す第2の端部とを有する。また、このシステムは、クイルの回転軸と同軸であって、レイングパイプの第2の端部から送り出された細長材料を連続コイル状にガイドして送り出す略環状のエンドリングを有する。さらに、エンドリングは、レイングパイプの第2の端部を半径方向および軸方向に囲むとともに、それぞれクイルの近位軸面および遠位軸面を規定する内径を有する。また、エンドリングは、その遠位面内に軸方向の差し込み切欠を規定する。この差し込み切欠は、切欠面の表面をさらに規定する。エンドリングには、遠位面に沿って、エンドリング内径の略接線方向である旋回軸により旋回トリッパーが結合されており、当該トリッパーとエンドリング間の旋回角度を変化させることで、エンドリングから送り出された細長材料コイルを選択的に配向させる。トリッパーは、エンドリングの切欠に差し込まれるとともに隣接し、隣接する切欠面と協働して、送り出された細長材料を定形ループ状にガイドするトリッパー制御面を有する。ガイド面を選択的に交換するこの方法は、ガイド面および切欠面の少なくとも一部を規定する湾曲内面と、ガイドリング内径と一致するプロファイルを有し、当該ガイドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面と、エンドリングに結合された締結要素と嵌め合い係合するように構成された係合面とを有する摩耗要素体であって、締結要素およびエンドリングと係合させた場合にガイドリング摩耗表面の一部を形成する、摩耗要素体を提供するステップを含む。この方法は、摩耗体の外面をエンドリング内径の対応する面と嵌め合わせるステップと、締結要素をエンドリングおよび前記摩耗体の係合面に締結することによって、摩耗体の内面によりエンドリングのガイド摩耗表面の少なくとも一部を形成するステップとをさらに含む。
【0052】
熱間圧延細長材料をコイリングするレイングヘッドシステムにおける選択的に交換可能な摩耗表面。このシステムは、軸周りに回転して細長材料を送り出すクイルと、クイルの回転軸と同軸のパイプ支持部と、細長材料を通過させるレイングパイプ等のパイプ支持部に結合された細長中空部材とを有する。この細長中空レイングパイプは、クイルの回転軸と略一致し、クイルから送り出された細長材料を受け取る第1の端部と、回転軸から半径方向に離間し、回転軸に対して略接線方向に細長材料を送り出す第2の端部とを有する。クイルの回転軸と、レイングパイプの第2の端部から送り出された細長材料を連続コイル状にガイドして送り出す略環状のエンドリングとは同軸である。このエンドリングは、細長中空部材であるレイングパイプの第2の端部を半径方向および軸方向に囲むとともに、それぞれクイルの近位軸面および遠位軸面を規定する内径と、ガイド面の遠位面近傍のエンドリング内に規定された軸方向の差し込み切欠とを有する。この差し込み切欠は、切欠面の表面をさらに規定する。エンドリングには、ガイド面の遠位面に沿って、エンドリング内径の略接線方向である旋回軸により旋回トリッパー機構が結合されており、当該トリッパーとエンドリング間の旋回角度を変化させることで、エンドリングから送り出された細長材料コイルを選択的に配向させる。トリッパーは、エンドリングの切欠に差し込まれるとともに隣接し、隣接するエンドリング内径と協働して、送り出された細長材料を定形ループ状にガイドするトリッパー制御面を有する。この選択的に交換可能なレイングヘッドの摩耗表面は、ガイド面および切欠面の少なくとも一部を規定する湾曲内面と、ガイドリング内径と一致するプロファイルを有し、当該ガイドリング内径と嵌め合い結合するように構成された外面と、エンドリングに結合された締結要素と嵌め合い係合するように構成された係合面とを有するエンドリング摩耗要素体を含む。摩耗要素体は、締結要素およびエンドリングと係合させた場合にガイドリングの交換可能な摩耗表面の一部を形成する。また、選択的に交換可能な摩耗表面は、エンドリングの外側からトリッパー機構に結合されたトリッパー制御面を規定するトリッパーパドルを有するトリッパー摩耗要素と、トリッパーパドルをトリッパー機構に結合しており、エンドリングの外側からアクセスして取り外しできる選択的に取り外し可能なトリッパー締結具とをさらに含んでいてもよい。
【0053】
以上、本発明の教示内容を包含する種々実施形態を詳細に示して説明したが、当業者であれば、これら教示内容を包含しつつ、その他多くの様々な実施形態を容易に考案可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図18A
図19
図20