(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693811
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】尿素からアンモニアを製造するための改良方法
(51)【国際特許分類】
C01C 1/08 20060101AFI20150312BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
C01C1/08ZAB
B01D53/34 129B
【請求項の数】25
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2008-312567(P2008-312567)
(22)【出願日】2008年12月8日
(65)【公開番号】特開2009-149504(P2009-149504A)
(43)【公開日】2009年7月9日
【審査請求日】2011年12月8日
(31)【優先権主張番号】11/999952
(32)【優先日】2007年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502229314
【氏名又は名称】イーシーアンドシー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート・ダブリュー・スペンサー・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】エイチ・ジェイムズ・ピーターズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジー・ハンキンス
(72)【発明者】
【氏名】藤田 環
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−518047(JP,A)
【文献】
特表2004−507428(JP,A)
【文献】
特表2006−507209(JP,A)
【文献】
特開2002−068734(JP,A)
【文献】
特開2002−068735(JP,A)
【文献】
特開2003−001058(JP,A)
【文献】
特開2005−288397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 1/00−3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素からアンモニアを製造するための方法において、
(a)加水分解反応器内で、尿素又は尿素混合物の水溶液であってビウレット若しくはカルバミン酸アンモニウムを含有するものを含む液相反応媒体をその場で加熱し、尿素、ビウレット又はカルバミン酸アンモニウムを実質的に含まない加圧ガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を得;
(b)該ガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を該液相反応媒体からその運転圧力で分離し;
(c)該液相反応媒体を、ガス状アンモニア及び二酸化炭素にさらに転化させるために反応器内で保持し、及び/又は該反応媒体の少なくとも一部分を尿素溶解槽である該反応器に戻して再循環させ、若しくは該供給溶液をさらなる転化のために該反応器に再循環させ;そして
(d)工程(b)で分離されたガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を、変化するアンモニアの需要要求を満たすように制御された速度で取り出すこと;
を含み、
該反応器の運転圧力を、該反応器内で該反応に対して過剰の水を維持し、かつ、該ガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物の露点が該反応器の運転温度よりも低くなるように設定又は調節することを特徴とする、尿素からアンモニアを製造するための方法。
【請求項2】
前記生成ガスと平衡な状態における前記反応器内の溶液濃度を、該生成ガス温度が常に生成ガスの露点よりも上となるように圧力−温度の関係によって維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給溶液が20〜72%尿素の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液を、前記反応器内で尿素又は濃縮尿素のいずれかと別個の水源とを供給することによって作製する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応器への尿素供給溶液を作製するために使用又は混合する目的で前記反応器から溶液を取り出す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記運転温度を230°F(110℃)から550°F(287.78℃)まで変更する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記尿素供給物がホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド化合物を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記尿素供給物がホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド化合物を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
尿素からアンモニアを製造するための方法において、
(a)加水分解反応器内で、尿素又は尿素混合物の水溶液であってビウレット若しくはカルバミン酸アンモニウムを含有するものを含む液相反応媒体をその場で加熱し、尿素、ビウレット又はカルバミン酸アンモニウムを実質的に含まない加圧ガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を得;
(b)該ガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を該液相反応媒体からその運転圧力で分離し;
(c)該液相反応媒体を、ガス状アンモニア及び二酸化炭素にさらに転化させるために反応器内で保持し、及び/又は該反応媒体の少なくとも一部分を尿素溶解槽である該反応器に戻して再循環させ、若しくは該供給溶液をさらなる転化のために該反応器に再循環させ;そして
(d)工程(b)で分離されたガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を、変化するアンモニアの需要要求を満たすように制御された速度で取り出すこと;
を含み、
該反応器内の圧力を最大値から最小値の範囲内で保持し、該範囲内で運転圧力をアンモニア需要の変化に応じて新たな設定点に変更し、そして入熱を調節して該圧力設定点を維持し、その際に該温度を該需要に合致するように変更し、それによって該反応器内でさらに一定の水分平衡を維持することを特徴とする、尿素からアンモニアを製造するための方法。
【請求項10】
前記生成ガスと平衡な状態における前記反応器内の溶液濃度を、該生成ガス温度が常に生成ガスの露点よりも上となるように圧力−温度の関係によって維持する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記供給溶液が20〜72%尿素の範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液を、前記反応器内で尿素又は濃縮尿素のいずれかと別個の水源とを供給することによって作製する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記反応器への尿素供給溶液を作製するために使用又は混合する目的で前記反応器から溶液を取り出す、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記運転温度を230°F(110℃)から550°F(287.78℃)まで変更する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記尿素供給物がホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド化合物を有しない、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記尿素供給物がホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド化合物を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
尿素からアンモニアを製造するための方法において、
(a)加水分解反応器内で、尿素又は尿素混合物の水溶液であってビウレット若しくはカルバミン酸アンモニウムを含有するものを含む液相反応媒体をその場で加熱し、尿素、ビウレット又はカルバミン酸アンモニウムを実質的に含まない加圧ガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を得;
(b)該ガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を該液相反応媒体からその運転圧力で分離し;
(c)該液相反応媒体を、ガス状アンモニア及び二酸化炭素にさらに転化させるために反応器内で保持し、及び/又は該反応媒体の少なくとも一部分を尿素溶解槽である該反応器に戻して再循環させ、若しくは該供給溶液をさらなる転化のために該反応器に再循環させ;そして
(d)工程(b)で分離されたガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を、変化するアンモニアの需要要求を満たすように制御された速度で取り出すこと;
を含み、
該反応器内の圧力を最大値から最小値の範囲内で保持し、該範囲内で運転圧力を温度との関連で新たな設定点に変更し、そして入熱を調節して温度に変化を生じさせて該反応器の圧力を該新たな設定点に合致させ、そして該範囲内でこの手順を反復して該反応器内で所望量の又は既定量の水を維持することを特徴とする、尿素からアンモニアを製造するための方法。
【請求項18】
圧力−温度の関係が前記供給物の濃度及び前記反応器内の所望の過剰量の水に応じたものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生成ガスと平衡な状態における前記反応器内の溶液濃度を、該生成ガス温度が常に生成ガスの露点よりも上となるように圧力−温度の関係によって維持する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記供給溶液が20〜72%尿素の範囲にある、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記溶液を、前記反応器内で尿素又は濃縮尿素のいずれかと別個の水源とを供給することによって作製する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記反応器への尿素供給溶液を作製するために使用又は混合する目的で前記反応器から溶液を取り出す、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記運転温度を230°F(110℃)から550°F(287.78℃)まで変更する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記尿素供給物がホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド化合物を有しない、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記尿素供給物がホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド化合物を有する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、尿素からアンモニアを製造するための改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
この方法は、尿素水溶液を加水分解装置(反応器)に供給すること又は当該加水分解装置内で尿素水溶液を作製し、当該反応器においてこれを加圧下で加熱してアンモニアと水と二酸化炭素とのアンモニアガス混合物を生じさせることを伴う。本発明では、圧力及び温度を管理する反応器は、アンモニアの需要基準に合わせて変更することが可能である。反応器の圧力は、アンモニア需要量や反応器の操作温度によりいろいろと設定される。この運転圧力は、通常の運転中に、これらのガスの濃度が反応器内の溶液の組成と平衡状態を保持し、かつ、供給組成物の転化生成物に等しくなるように変更される。典型的な方法では、この供給溶液は、水に対して40〜50重量%の尿素の範囲である。
【0003】
関連技術の簡単な説明
公益事業者及び建築設計事務所は、尿素からアンモニアへの転化技術に強い関心を示している。公共事業者は、そのSCRプロジェクトのために無水アンモニア及び水性アンモニアに対する好ましい代替物として尿素をますます採用するようになっているところ、いくつかの主要な公共事業者が尿素からアンモニアへの代替にコミットし、また、多くの潜在的なユーザーが現在及び将来のプロジェクトのためにシステムを積極的に評価している。他の方法、例えばアンモニアによるSO
2除去は、尿素からアンモニアまでの効果を評価する。本発明の改良は、尿素からアンモニアを製造するための必要熱量を有意に低減させる手段を提供することによってこれをさらに実現可能なものにする。また、他の応用は、アンモニアの現場保管を減少させるためのアンモニア製造の効果も評価する。
【0004】
尿素からアンモニアへの変換(尿素〜アンモニア)技術の開発は、公共事業者がNOx排出を規制するための要件の著しい拡大と、還元剤としてアンモニアを必要とするSCRプロジェクトを当該事業者が履行することに応えるものである。水性アンモニアは、有害で且つ毒性の化学物質であるとみなされているため、EPA並びにOSHAによって課せられた厳重な規制を受けている。水性アンモニアは、さほど高濃度でなくても同様の危険性を有し、また、ますます規制されつつあり又は地方自治体による規制を受けている。無水アンモニアの代わりに水性アンモニアを使用すると、化学物質及びエネルギーについての操業コストがかなり増加し、また輸送及び保管の要求も増大する。これらの不利益は、希釈水溶液を考慮すると、さらに大きくなる。
【0005】
尿素〜アンモニア系及び他のオンデマンド尿素〜アンモニア系は、原料化学物質として尿素を使用するので、アンモニアの輸送と保管に関連するリスクを完全に回避する。この方法は、NOx規制系及びアンモニアを使用する他の系の動的な要件を満たすように、要求に応じて尿素溶液をアンモニアガス混合物に変換する。
【0006】
初期の系は、40%の尿素供給濃度で300°F(148.89℃)の運転温度及び60〜80psigの運転圧力として設計された。尿素供給濃度がそれよりも高ければ、供給溶液中の水を蒸発させるのに必要なエネルギーが低下し、操業コストが減少する。市場が成熟するにつれて、さらに高い温度設計及びさらに高い50%の尿素供給濃度により、当該系の資本コストを削減できるだけでなく、エネルギー消費も低減できる。
【0007】
尿素の加水分解速度は過剰の水で増加するので、この方法には反応器内に十分な水を維持することが必須である。しかしながら、50%以上の尿素供給については、反応のために水を消失するのでアンモニア生成速度が低下する可能性を考慮しなければならない。Spencer外の論文「Design Considerations for Generating Ammonia from Urea for NOx Control with SCRs」,AWMA 2007 Conferenceには、反応器を一定の圧力に維持すると、反応に利用できる水が温度の上昇と共に減少することが示されている。
【0008】
Brooks外の米国特許第6,761,868号には、温度と圧力の両方を制御することによってこの課題を解決する手段が記載されている。本発明では、反応器温度は制御されず、しかも圧力はアンモニア需要量又は温度に応じて調節される。このBrooks特許は、反応器内の濃度を供給物の濃度に維持するための圧力及び温度を示してはいるものの、本願において示すように、いかにして反応器内の濃度を供給物濃度とは無関係の所望の値に維持することができるのかについては全く示していない。
【0009】
Cooper外の米国特許第6,077,491号には、温度と圧力を熱によって維持して生成ガスを生じさせる方法が開示されているが、反応器内の液体濃度をほぼ一定の値に維持する方法は示されていない。
【0010】
Cooper特許もBrooks特許も、反応器内の圧力を需要量に応じて又は温度に応じて変更する利点を示していない。
【0011】
第2の問題は、より高濃度の尿素溶液を維持するのに必要な追加熱である。40%尿素濃度では、尿素供給系の外部加熱の要件は緩和されるが、反応器のエネルギー消費量は増加する。
【特許文献1】米国特許第6,761,868号明細書
【特許文献2】米国特許第6,077,491号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、反応器内において水分平衡を維持するために考慮することが必要な設計指針を特定するものである。これには、生成ガスの組成がガス生成速度の変化の間にほぼ一定のままであるという利益がある。本発明の別の利益は、全ての需要条件について、生成ガス温度が尿素からアンモニアを生成する方法についてのガス露点計算値よりも常に高くなるように反応器を操作することができることである。これは、腐食が少なく、反応器の耐久性が長くなるという結果をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概略
簡潔にいうと、本発明は、尿素からアンモニアを製造するための方法であって
(a)加水分解反応器内で、尿素又は尿素混合物の水溶液であってビウレット又はカルバミン酸アンモニウムを含有するものをその場で加熱し、尿素、ビウレット又はカルバミン酸アンモニウムを実質的に含まないガス状アンモニア含有生成物を得、ここで、その温度及び圧力を、該反応器に熱を与えることによって維持し;
(b)該ガス状アンモニア含有生成物を液相水性反応媒体からその運転圧力で分離し;
(c)該液相反応媒体を、ガス状アンモニア及び二酸化炭素にさらに転化させるために反応器内で保持し、及び/又は該反応媒体の少なくとも一部分を尿素溶解槽である該反応器に戻して再循環させ、若しくは該供給溶液をさらなる転化のために該反応器に再循環させ;そして
(d)工程(b)で分離されたガス状アンモニア及び二酸化炭素含有生成物を、需要要求を満たすように制御された速度で取り出すこと;
を含み、該加水分解反応器内の温度を制御しないが、ただしアンモニアに対する需要要求に適合するように変更し、該圧力を、アンモニア又は反応器の運転温度に対する需要要求応じて変更することを特徴とする方法を含む。
【0014】
本発明は、燃焼ガス流から窒素酸化物を除去する方法であって、
(a)加水分解反応器内で、尿素又は尿素混合物の水溶液であってビウレット又はカルバミン酸アンモニウムを含有するものをその場で加熱し、尿素、ビウレット又はカルバミン酸アンモニウムを実質的に含まないガス状アンモニア含有生成物を得、ここで、その温度及び圧力を、該反応器に熱を与えることによって維持し;
(b)該ガス状アンモニア含有生成物を液相水性反応媒体からその運転圧力で分離し;
(c)該液相反応媒体を、ガス状アンモニア及び二酸化炭素にさらに転化させるために反応器内で保持し、及び/又は該反応媒体の少なくとも一部分を尿素溶解槽である該反応器に戻して再循環させ、若しくは該供給溶液をさらなる転化のために該反応器に再循環させ;
(d)工程(b)で分離したガス状アンモニアと二酸化炭素含有生成物とを制御した速度で取り出し;そして
(e)該ガス状アンモニア含有生成物と該燃焼ガス流とを該燃焼ガス流中における窒素酸化物の除去の需要要求に本質的に見合う速度で接触させること
を含み、該加水分解反応器内の温度を制御しないが、ただしアンモニアに対する需要要求に適合するように変更し、該圧力を、アンモニア又は反応器の運転温度に対する需要要求に応じて変更することを特徴とする、燃焼ガス流から窒素酸化物を除去する方法をさらに含む。
【0015】
加水分解反応器に加えられる熱を調節することによって、温度をアンモニアに対する需要要求に合致させる。アンモニアを消費する化学反応のようなアンモニアに対する需要源、例えば、NOxを含有する燃焼ガス流を、当該反応器からの排出管上の制限を開放し及び閉鎖して生成ガスの流れをアンモニア需要要求に合致させるのを可能にするために使用する。
【0016】
アンモニアに対する需要要求が増加する場合、例えば、燃焼ガス流によって与えられるNOx量が増加する場合には、典型的には加水分解反応器からのアンモニアガス排出ライン内の弁を開いてガスの流れを増加させる。同様に、需要が減少する場合には、この弁を閉じる。所定の運転温度に対する需要の増加により反応器内の圧力が減少し、需要の減少により圧力が増加するであろう。
【0017】
この時点では、圧力が減少した場合には反応器への入熱を増加させ、圧力が増加した場合には減少させる。この反応プロセスの吸熱特性及び水の蒸発の熱のため、入熱の減少が反応器温度を低下させ、入熱の増加が反応器温度を上昇させるであろう。本発明以前には、この圧力は、反応器への入熱を制御することによって運転温度又は需要の変化により一定の値に維持されていた。この特許出願のこの改良方法では、圧力は一定には維持されないが、アンモニア需要又は反応器温度に従って調節される。実際には、これは、圧力設定点を確立することによって行うことができる。従来技術では、圧力は、一定に維持される。これに対し、本発明の改良方法では、この圧力設定点を加水分解反応器内にある水の所望量又は所定量を維持するために温度又はアンモニア需要に対して変更する。入熱は、この新たな設定点と合致する反応器圧力となるように調節する(このときに温度の変化が生じる)。実際には、反応器内でほぼ一定の水分平衡をもたらす反復手順を策定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次の議論は、本発明が提供する改良の意義をさらに明らかにするのに役立つ。
【0019】
図面の簡単な説明
図1は、温度の関数としてのアンモニア生成速度及び温度に応じた急激な増加のグラフ図を示している。
図2及び3は、40%及び50%の尿素供給溶液についての尿素−カルバメート平衡濃度を示している。
図4はフガシティーあり及びなしの40%供給溶液及び50%供給溶液についての露点を示している。基準として水の露点線を示している。
図5は、典型的な反応器の断面を示している。
図6は、本発明を実施するためのプロセス制御の形態を示している。
図7及び8は、40%及び50%供給溶液について、反応器内で一定の20%、30%、40%及び50%濃度を維持するのに要する圧力を温度の関数として示している。
図9は、圧力設定点についての操作ラインの例を示している。
【0020】
水分平衡
250〜400°F(121.11〜204.44℃)の運転温度及び30〜180psigの範囲の運転圧力では、反応器の溶液中に保持されるアンモニアと二酸化炭素の濃度は比較的低い。理想気体挙動を前提にすると、ラウールの法則及びダルトンの法則を使用して当該溶液の平衡を理解することができる。
【0021】
ラウールの法則は、理想溶液中における各成分の蒸気圧が個々の成分の蒸気圧と該溶液中に存在する成分のモル分率とに関連するというものである。この溶液が化学平衡状態にある場合には、該溶液の全蒸気圧は、
P
solution=(P
1)
pureX
1+(P
2)
pureX
2……
(ここで、(P
i)
pureは、純粋成分の蒸気圧であり、X
iは、溶液状態の成分のモル分率である。)
である。
【0022】
アンモニア生成方法の水分平衡を算出するためには、反応器の溶液に溶解した尿素及びアンモニアカルバメートを、ゼロの蒸気圧を有するようなものとして扱う。
【0023】
ダルトンの法則は、ガス混合物の全圧力が当該混合物における各ガスの分圧の合計であるというものである。ダルトンの法則は、P=P
A+P
B+・・・(ここで、P
JはガスJの分圧であり、Pは混合物の全圧力である。)として表すことができる。
【0024】
この分圧は、
P
J=y
JP
(ここで、y
Jは、ガスJのモル分率、すなわち、混合物中に存在するガス分子の全モル数に対するそのモル量の比である。)と定義される。この定義では、任意の種類のガスの混合物の全圧力は、それらの分圧の合計である。
P
total=P
1+P
2+P
3……=y
1P
total+y
2P
total+y
2P
total+……
【0025】
上記に基づき、反応器の溶液中における尿素−カルバメートの平衡濃度を所定範囲の温度について推定できる。
図2及び3は、尿素〜アンモニア反応器についての典型的な運転圧力及び運転温度に対する、40%及び50%尿素供給溶液についての平衡尿素−カルバメート濃度の推定値を示している。
【0026】
これらの図は、反応器の運転温度が上昇すると、加水分解反応を促進させ続けるために公称運転圧力を増加させて反応器内に過剰の水を保持しなければならないことを示している。
【0027】
40%尿素供給濃度及び60psigの運転圧力により315°F(157.22℃)の最大温度で稼働するように設計された尿素〜アンモニア反応器に関して、
図2は、尿素−カルバメート濃度が反応器内の溶液のおよそ50%であろうことを示している。最小の充填量(10%)及びさらに低い反応器温度では、尿素−カルバメート濃度は、60psigの運転圧力についておよそ20%まで減少する。
【0028】
周期的使用において最も実用的な用途において、典型的な制御範囲は、約33%〜100%の充填量であり、この場合には、反応器溶液の尿素−カルバメート濃度は、38%から50%まで変化し、過剰の水(62%〜50%)は維持される。80psigの一定の圧力設定点、36%尿素供給量及び295°F(146.11℃)の典型的な最大運転温度で稼働するアレゲーニー・エネルギー社の市販のデモンストレーション装置については、尿素−カルバメート濃度は、15〜25%の範囲であった。別の商業プラントでの稼働1年目においては、尿素、カルバメート及び尿素−ホルムアルデヒド化合物の測定濃度は、40%供給溶液により305°F(151.67℃)までの温度で操作して及び60psiの一定の圧力設定点で操作して、44〜57%の範囲であった。これらの装置の両方は、典型的な日循環式ボイラーであり、現場測定は、推定水分平衡と十分に一致する。
【0029】
運転圧力が低下すると、尿素−カルバメート濃度は増加する一方で、水は不十分な水の限界にまで減少する。この場合には、加水分解反応の速度も減少するので、アンモニア生成を維持するためにはさらに高い温度の操作が必要である。この状態については、反応器運転圧力を上昇させることが必要であると同時に、次の項で議論するような生成ガス露点温度に及ぼす圧力の影響をも考慮することが必要である。
【0030】
尿素〜アンモニア反応器:露点
露点の考察
尿素〜アンモニア反応器を露点が通常の最小運転温度未満である圧力で操作するように設定して、この系において全体的な腐食速度を増加させる縮合生成物を回避すべきである。通常の設計に含まれる腐食許容度は、露点よりも下で長い操作を可能にするが、露点よりも上で操作を維持することが推奨される。本発明の操作手順は、これまで得ることができたよりも広範囲の操作でこれを行うことを可能にする。NH
3−CO
2−H
2Oガス系について相平衡を検討すると、以下に説明するように、露点温度を圧力及び濃度に応じて決定することが可能になる。
【0031】
ガス状混合物についての露点の推定
以下に与えるアルゴリズムにより、NH
3−CO
2−H
2Oのガス混合物から凝縮のための露点温度を算出するために適用できる手順が得られる。
【0032】
特性推定のための方程式は、NH
3−CO
2−H
2Oについての技術論文及び尿素生成に特化した文献に見いだされるが、これは尿素〜アンモニア系において直面する温度及び圧力を含めて広範囲のものに有効である。
【0033】
生成ガスと反応器の液体との平衡について、液相濃度の定量から、当該液体中における尿素、カルバメート及び尿素ホルムアルデヒド種の存在により追加の非理想物が導入されない、すなわち、あたかも水のみが当該液体中に存在していたかのように、尿素水溶液が同じ態様でアンモニアと相互作用するものと推定される。これらの試算をさらに洗練させるためには、尿素及び他のイオン種についての活量係数を導入しなければならないであろう。
【0034】
この提示したアルゴリズムは以下の通りである。
T及びyを割り当て、P及びxの値を求めなければならない。次の方程式から出発する:
x
iγ
iP
isat=y
iФ
iP
ここで:
y
iは、気相中における成分の濃度であり、
Ф
iは、気相中における成分iのフガシティー係数(y、P及びTの関数)であり、
Pは、全圧力であり、
x
iは、液相中における成分iの濃度であり、
γ
iは、液相中における成分iの活量係数(xとTの関数)であり、
P
isatは、温度Tでの成分iの飽和蒸気圧である。
【0035】
P
satは、成分がそれらの臨界状態よりも下である場合にのみ有効である。アンモニアは臨界温度及び臨界圧力よりも上であるので、Ф
iを導入するフガシティー方程式を使用しなければならない。フガシティーあり及びなしの露点についての曲線を含む
図4に示すデータをもたらすMATLAB6.5を使用して反復解を構築した(MATLAB6.5はフガシティーありである)。
【0036】
フガシティーなしの露点
また、露点を、フガシティーを考慮することなく、さらに単純にラウールの法則を使用して推定した。両方の結果を次の
図4における水の露点と比較する。予想されるように、尿素からのアンモニア生成の反応ガスの露点は純水未満である。水と、アンモニアと、二酸化炭素との相互作用を明らかにするためにフガシティーを考慮する場合には、わずかに高い露点が推定される。
【0037】
尿素〜アンモニア反応器の操作環境
ほとんどの尿素〜アンモニア反応器は、制御された一定の液体レベルで稼働し、
図5において以下に示すような一定の液体空間及び蒸気空間が生じる。反応器内の圧力は名目上40〜120psigで制御される一方で、温度は250〜315°F(121.11〜157.22℃)の生成速度で変化する。
【0038】
反応器の液体は、通常、15〜50%の尿素、0〜18%の高級尿素誘導体及び3〜6%のアンモニアを含有する。250°F(121.11℃)よりも高い温度では、当該液体中で形成された任意のカルバミン酸アンモニウムは、アンモニアと二酸化炭素とに直ちに分解するため、当該反応器の液体中には非常に低濃度(1〜2%)のカルバミン酸アンモニウムが存在するであろう。残りは水である。
【0039】
図2のグラフから、生成ガスが80psig(40%尿素溶液供給物について)である場合には、ガスは、296°F(146.67℃)よりも高くない限り凝縮しないであろうと推論できる。一方、50%尿素供給溶液については、そのガスの組成は様々であり、また、この生成物(80psigで)は、その温度が275°F(135℃)よりも高くない限り凝縮し始めないであろう。
【0040】
低い充填量では、反応器内での生成ガス温度[250〜275°F](121.11〜135℃)は、80psigの運転圧力でガス混合物の露点よりも下で操作できる。この操作範囲内で、弱アンモニア性水溶液は、冷たい表面と接触するたびにガス流れから凝縮する。反応器内部の検査から、ガス側の反応器表面上にこのような液体凝縮汚れが示されている。また、冷表面上におけるこれらの凝縮性蒸気は、ガス側表面上でのわずかに高い腐食速度にも寄与するため、可能であれば運転圧力を調節することによって最小化すべきである。本発明の手順を使用することによって、凝縮が回避される。
【0041】
露点を避けるためのガス側条件及び400°F(204.44℃)未満の温度で作動するように尿素〜アンモニア反応器を設計することによって、反応器の容器及び配管については316L SS材料で、いくつかの計測装置及び弁についてはヒートシンクの考慮によりさらに特殊な材料で、3ミル/年未満という満足のいく腐食速度が得られた。本発明により、腐食を防止する操作範囲が広がる。
【0042】
圧力を維持するために反応プロセスに熱が供給されるが、この場合、圧力は、温度又はアンモニア需要に応じて設定される。また、圧力は、反応器の温度がアンモニア需要に応じるものであるという関係を用いることによる需要シグナルを使用して設定することもできる。すなわち、温度Tは次の関係に従うであろう:
T=−b/k(ln(G/A))
ここで、Gは生成速度(時間当たりの量)であり、B、k及びAは定数である。
【0043】
圧力設定点は、次の関係:P=f(T)(ここで、この関数は、反応器内において溶解固形物を比較的一定の濃度に維持するように選択される)につき調節される。一定の溶液濃度を維持するための圧力と温度との理論的関係を
図7及び8に示す。関数f(T)は、これらの曲線から又は温度と圧力の関数としての測定濃度から展開できる。パイロットテストのデータから、一層高い溶液濃度付近での操作により、反応が水欠乏状態になる点までの所定の反応器の液体の体積について一層大きい生成速度が得られることが示された。78%を超えるいかなる溶液も、加水分解を完了させるには水が不十分であろう。
【0044】
発明の詳細な説明
尿素溶液を加水分解反応器内に供給し又は当該反応器内で作製し、そしてこの尿素を定量的にアンモニアと二酸化炭素とに転化させ、当該転化供給溶液に化学量論的に等しいアンモニア、二酸化炭素及び水蒸気の生成ガスを生じさせる。反応器内の温度と圧力とを維持するために熱を加える。本発明における改良点は、反応器内の圧力を生成速度又は反応器内の温度のいずれかに応じて調節することである。圧力は、アンモニア生成速度を変化させながら反応器内における過剰の水が比較的均一な値にとどまるような方法で調節され、ここで、温度は、アンモニア需要を満足するように調節することが可能である。
【0045】
次の実施例は、単なる例示の目的である。
【実施例】
【0046】
例
例1
例1では、40%供給溶液を反応器に供給し、又は尿素、濃縮尿素及び水の別々の流れ若しくは蒸気を供給することによって反応器内で作製する(乾燥尿素は、通常、小粒化され、ホルムアルデヒド被覆されている。)。当該反応器には、当該溶液を加熱するためにヒーターが備えられている。反応器内の圧力を設定圧力に維持するために入熱を調節する。最初に、圧力設定を30psiaよりも高い開始値に設定する。この反応器を、30psiaでガスを発生するまで加熱したら、この圧力設定点を、
図7に示すデータに従う反応器温度に相当する圧力に設定する。これは、テーブル索引のような様々な手段や
図7のデータを適合させる方程式から計算する手段によって行うことができる。最初に、このプロセスのために所望の溶解定数、例えば30%を設定する。これは、尿素に対して大過剰の水を与え、かつ、当該反応器内の溶液について低い塩析温度を与えるであろう。反応器の排出弁を開いて又は閉じて所望のアンモニア生成速度と釣り合わせる。反応器への入熱を適宜増加又は減少させて反応器を圧力設定点に維持する。ガスを高負荷量で発生させるには一層高い温度が必要なので、より高い需要ではさらに熱を加えることが必要であるところ、反応器の温度は、圧力を圧力設定点に維持するように自動的に調整される。反応器から取り出されるガスの速度を変更し、この圧力設定点を需要速度に従って又は反応器の温度に応じて新たな値に調節する。温度が上昇するとこの圧力設定点は増大するが、これによって反応器に多くの熱が供給され、これは当該系にこの新たな高い生成速度を迅速にもたらすのに役立つであろう。需要が増加する場合には、圧力の上昇を開始し、入熱を減少させる。熱はこのプロセスにより使用される。というのは、このプロセスの反応は吸熱的であるため及び水の蒸発のためである。熱を使用すると反応器温度は低下する。そのときに、これにより圧力設定点が引き下げられるであろう。設定した圧力設定点が引き下げられるので、入熱の制御により反応器への入熱がさらに減少し、これにより温度がさらに低下して、新たな需要要求に合致するようにガス生成速度を減少させることが可能となるであろう。
【0047】
この例では、一定の供給物濃度を反応器に供給し又は反応器内で創り出し、当該反応器の操作温度を、アンモニア需要要求を満たすように変更することが可能である。
【0048】
この例において提示した態様によって操作することにはいくつかの利点がある。一つは、排出ガスの組成がアンモニア需要の増加及び減少によりほぼ一定の状態を維持できることである。反応器を一定の圧力及び一定の供給物濃度で作動させると、通常、反応器内に新たな水分平衡が得られるまで、負荷量が増加する間にはガス生成物中に過剰の水が存在し、負荷量が減少する間には生成ガス中の水が不十分となるであろう。徐々に緩やかに変化させるだけでは、この水は一定の圧力設定点と釣り合ったままである。この圧力を運転温度と合致するように調節することによって、反応器を抜けるガスの組成は、反応器に供給され又は反応器内で創り出される供給物濃度に対して平衡値の組成で維持できる。この手法では、反応器内でさらに一定の水分平衡が維持され、それによりBrooks外によって説明されるように供給物の濃度を変更する必要なしさらに一定の排出ガス組成が得られる。尿素と水とを混合しかつ溶解させるための時間及び必要熱量だけでは、供給物濃度を条件に一致させるように変更することは困難である。
【0049】
別の利点は、所定の流通弁についてより広い動的制御範囲が得られることである。基本的な弁流動方程式は、Q=K√ΔP(ここで、Qは流量であり、ΔPは弁を横切る圧力降下であり、Kは、Kが弁の開放の関数であるように弁係数Crと関連する定数である。)である。所定の例のために、Kを10倍ずつ変更できる排出制御弁については、流量は、10倍の範囲で正確に制御できるにすぎない。例えば、100%の流量は、利用できる反応器の寸法についてアンモニアを生成するためには311°F(155℃)の温度を必要とし、30%の水分平衡を維持するためには、
図7に従って80psigの圧力が必要である。ここで、需要要求は、15.7倍減少するといえる。このときには、この流れは、弁の制御範囲を下回る。この新たな流量では、温度と圧力は、圧力が30psigにまで低下し、温度が270°F(132.22℃)まで低下するように低下するであろう。100%の流れでは、必要なK値は80psigで11.2である。この減少した流れでは、圧力が80psigで保持された場合には、0.71のK値が必要となるため、異なる弁が必要となるであろう。圧力をこの例で説明した操作態様と同様に30psigまで低下させることによって、1.2のK値が必要となるが、これは、この例における弁の動的範囲の10倍以内になお包含される。この例では、弁が大気圧まで開放され、温度の影響が無視されたと推測された。
【0050】
モバイルアプリケーションの場合と同様に需要シグナルが供給順方向シグナルである場合には、反応器内の圧力を測定し、所望の流れに必要な弁の開放を計算することができる。
【0051】
この方法の別の利点は、生成ガス温度を常にガス露点よりも上にすることができることである。例えば、生成ガスの露点は、40%供給溶液については80psigで296°F(146.67℃)である。需要が低下すると、このガスの温度は、この例では270°F(132.22℃)まで低下するが、これは露点よりも下である。これにより、反応器のガス側で腐食が生じ得る。ただし、圧力がこの例と同様に需要又は反応器温度と共に30psigまで減少する場合には、そのときに270°F(132.22℃)の温度である生成ガスは、圧力が減少した生成ガスの露点がそのときに256°F(124.44℃)であるため、露点よりも上である。
【0052】
例2
例2は例1と同様であるが、ただし、この場合には、圧力−アンモニア需要−負荷量曲線を
図1における温度需要関係図と、
図7及び8に示すような反応器内における一定の水分平衡に関する温度圧力関係図とから作製する。本願で説明した手順を使用して、他の供給物濃度について同様の曲線及び関係図を作製することができ、又は温度若しくはアンモニア生成速度の関数として圧力設定点を設定するための関係図は、当業者が一定の供給物濃度で機能する様々な圧力と温度についての反応器溶液温度の測定値から決定できることに留意すべきである。実際には、運転圧力設定点は、様々な固定負荷量と測定された反応器溶液濃度とに対して手作業で調節できた。密度の測定を使用して溶液濃度の基準を得ることができた。この例では、圧力設定点は、反応器温度の代わりに需要シグナルによって設定される。これは、反応器及び反応器内の液体の質量のため需要の変化を遅らせ得る温度を超える利点がある。この反応プロセスは、尿素の加水分解及び水の蒸発の熱を利用するため、反応器の温度は、需要要求に密接に従うことに留意すべきである。
【0053】
例3
現在の技術の利用者のいくらかは、尿素製造時の球状化又は造粒の前に得られる公称70%尿素溶液を使用する。通常、この70%は、40%〜50%の供給物濃度に希釈される。例3では、70%の供給物を反応器に供給する。反応器には、最初に水が装入されているので、溶液による70%の初期充填により反応器内に初期溶液、すなわち40%尿素が生じるであろう。生成排ガスは、70%供給物の組成と同等であろう。反応器の圧力は、この例では、反応器内の水分平衡を供給濃度よりも低い40%濃度に維持するように調節する。この方法の利点は、水を蒸発させるための熱が有意に低下することである。この場合には、熱消費量は、4526Btu/lbの生成アンモニアから2193But/lbのアンモニアにまで低下する。不利益は、70%供給溶液の塩析温度が40%供給溶液については30.5°F(−0.83℃)であるのに対して133°F(56.11℃)であることである。供給溶液を高温、例えば133°F(56.11℃)で維持する場合には、尿素のいくらかはビウレットに転化するであろう。反応器供給物中のビウレットは、アンモニア生成にとって必要な反応器の運転温度を上昇させる。
図7及び8に示す関係は、水分平衡を維持するのには一層高い運転圧力が必要であることを示している。この例に従って操作すれば、高ビウレット含有量に対処するように運転圧力が自動的に修正されるであろう。
【0054】
例4
例4では、単純な操作ラインを
図9に示す。この例については、直線を示している。また、べき関数も使用できるであろう。4つの設定点、すなわち低圧(p1)及び低温(t1)並びに高圧(p2)及び高温(t2)を確立し、(t1)より下では、圧力を(p1)以上で保持し、(t2)より上では、圧力を(p2)に保持する。中間では、圧力設定点の圧力は、低い点と高い点との間にある計算変数である。Pset=p1+(p2−p1)
*(t−t1)/(t2−t1)。このプロセスに熱を加えて反応器をこの圧力設定点で維持する。操作ラインを、この例では、反応器内に20%の溶液を維持するためにラウールの法則で作製された温度−圧力関係図に密接に従うように選択した。実際には、運転データから、反応速度を増加させるには、さらに高い濃度を維持すべきであることが示される。理論的には、溶液濃度は、反応器内で尿素の加水分解を完了させるのに十分な水を得るためには、76.9%よりも下で保持されなければならない。実際には、より低い濃度を維持しなければならない。運転データから、最適濃度は、ある程度尿素の純度に依存して30〜50%の範囲にあることが示されている。本願において説明した操作手順は、作業者が反応器内の溶液濃度を最大にし、かつ、所望のアンモニア生成範囲にわたりほぼ一定の濃度を維持することを可能にする。これによって、液体平衡及び水分平衡の制御が従来得ることができたものよりも良好に維持されるようになる。
【0055】
上記説明は、もっぱら明快な理解のために与えているにすぎず、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明の範囲内での変更は、当業者には明白である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】温度の関数としてのアンモニア生成速度及び温度に応じた急激な増加のグラフ図である。
【
図2】40%の尿素供給溶液についての尿素−カルバメート平衡濃度を示す図である。
【
図3】50%の尿素供給溶液についての尿素−カルバメート平衡濃度を示す図である。
【
図4】フガシティーあり及びなしの40%供給溶液及び50%供給溶液についての露点を示す図である。
【
図6】本発明を実施するためのプロセス制御の形態を示す図である。
【
図7】40%供給溶液について、反応器内で一定の20%、30%、40%及び50%濃度を維持するのに要する圧力を温度の関数として示す図である。
【
図8】50%供給溶液について、反応器内で一定の20%、30%、40%及び50%濃度を維持するのに要する圧力を温度の関数として示す図である。
【
図9】圧力設定点についての操作ラインの例を示す図である。